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  • 特許-非接地系統の一線地絡過電圧抑制装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】非接地系統の一線地絡過電圧抑制装置
(51)【国際特許分類】
   H02H 9/04 20060101AFI20221018BHJP
【FI】
H02H9/04 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019129985
(22)【出願日】2019-07-12
(65)【公開番号】P2021016256
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-06-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】久保 敏裕
【審査官】佐藤 卓馬
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-59538(JP,U)
【文献】特開平2-17828(JP,A)
【文献】特開2013-113632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02H 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接地系統の一線地絡により生じる過電圧を抑制するものであり、
前記非接地系統の母線側に直列接続された負担抵抗器及びシャント抵抗器を備え、前記シャント抵抗器に一次側が並列接続された鉄心を有する変圧器又は鉄心入りリアクトルを備え、
前記一線地絡により生じる過電圧によって前記変圧器又は前記リアクトルが磁気飽和することにより、前記シャント抵抗器がバイパスされて前記過電圧が抑制される、一線地絡過電圧抑制装置。
【請求項2】
前記負担抵抗器及び前記シャント抵抗器と、前記変圧器又は前記リアクトルとは、前記母線に接続された接地形計器用変圧器の三次側オープンデルタ回路に接続されている、請求項1記載の一線地絡過電圧抑制装置。
【請求項3】
前記変圧器又はリアクトルに対して直列接続された逆並列ダイオードをさらに備える、請求項1乃至2に記載の一線地絡過電圧抑制装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接地系統の間歇アーク地絡等により生じる過電圧を抑制する一線地絡過電圧抑制装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、非接地系統における一線地絡を検出する地絡検出方法として、特許文献1に示すように、非接地系統の母線に接地形計器用変圧器(EVT)、各フィーダに零相変流器(ZCT)を設けたものが考えられている。
【0003】
この地絡検出方法では、非接地系統に微地絡(継電器が動作に至らない微小な地絡)又は間歇アーク地絡(周期的に発生する一線地絡)が発生した場合に、EVTの三次側オープンデルタ回路に電圧が現れることを利用して、その場合のZCTの検出値により、地絡フィーダを特定している。
【0004】
しかしながら、微地絡又は間歇アーク地絡が発生した場合に、その地絡が短時間で解消されると、上記の構成であってもその検出が困難な場合がある。また、上記の方法では、地絡の検出のみを対象としており、地絡発生時の過電圧を抑制することはできない。さらに、非接地系統の需要家において、ケーブル増設などの対地充電電流増加によって間歇アーク地絡の懸念が発生した場合に、接地方式を抵抗接地方式に変更すると、全面的な保護方式の変更が必要となってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-113632号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】北島弘:「三相対称座標法を考える 第2回 低圧回路の対称座標法計算とEVT回路の検討」、電気計算 2006年9月号、電気書院
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、間歇アーク地絡等の短時間の一線地絡により生じる過電圧を受動素子のみにより抑制することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
通常、非接地系統には、地絡が発生した際にこれを検出するためのEVTが設けられている。本発明に係る非接地系統の一線地絡過電圧抑制装置は、非接地系統の一線地絡により生じる過電圧を抑制するものであり、前記EVTのオープンデルタ回路にて直列接続された負担抵抗器及びシャント抵抗器を備え、前記シャント抵抗器に一次側が並列接続された鉄心を有する変圧器又は鉄心を有するリアクトルを備え、前記一線地絡により生じる過電圧によって前記変圧器又は前記リアクトルが磁気飽和することにより、前記シャント抵抗器がバイパスされてオープンデルタ側抵抗値が低下し、負担容量としては増加することで前記過電圧が抑制されることを特徴とする。
【0009】
このような非接地系統の一線地絡過電圧抑制装置であれば、一線地絡により生じる過電圧によって変圧器が磁気飽和することにより抵抗負担が増加して過電圧を抑制するので、例えば間歇アーク地絡等の短時間の一線地絡により生じる過電圧の検出及び抑制を一挙に受動素子のみで実現することができる。また、過電圧がなくなると、磁気飽和が解消して抵抗器が復帰された高抵抗状態となるので、正常運転時には、非接地系統の利点である誘導障害防止等を維持することができる。
【0010】
正常時における電圧変動を誤検出しないようにするためには、前記変圧器に対して直接接続された逆並列ダイオードをさらに備えることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
このように構成した本発明によれば、間歇アーク地絡等の短時間の一線地絡により生じる過電圧を受動素子のみにより抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態の一線地絡過電圧抑制装置の構成を示す模式図である。
図2】従来の非接地系統における一線地絡回路を示す模式図である。
図3】間歇アーク地絡時の(A)相電圧及び(B)零相電圧の電圧上昇波形を示す図である。
図4】変形実施形態の一線地絡過電圧抑制装置の構成を示す模式図である。
図5】変形実施形態の一線地絡過電圧抑制装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る非接地系統の一線地絡過電圧抑制装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
本実施形態の非接地系統の一線地絡過電圧抑制装置100は、図1に示すように、例えば6.6kV配電線等の非接地系統における間歇アーク地絡等の一線地絡により生じる過電圧を抑制するものである。
【0015】
具体的に一線地絡過電圧抑制装置100は、非接地系統の母線10側に接続された接地形計器用変圧器(EVT)4のオープンデルタ回路41に一次側が接続された鉄心21を有する変圧器2と、変圧器2の一次側に並列接続されたシャント抵抗器6とを備えている。
【0016】
詳細には、接地形計器用変圧器4の三次側オープンデルタ回路41には、負担抵抗器5及びシャント抵抗器6が直列に接続されている。
【0017】
ここで、変圧器2の飽和特性は、通常の一線地絡においてシャント抵抗器6に印加される分圧では変圧器2の鉄心21が磁気飽和せず、間歇アーク地絡等により生じるそれ以上の異常電圧発生時によって磁気飽和するように設計されている。また、シャント抵抗器6の抵抗値は、負担抵抗器5の抵抗値と同程度(例えば1/2~2倍程度)で、且つ、異常電圧発生時に変圧器2の鉄心21を磁気飽和させる程度の分圧を確保できる値である。例えば、負担抵抗器5の抵抗値は50~100Ωであり(上記の非特許文献1)、シャント抵抗器6の抵抗値も同程度である。
【0018】
そして、この一線地絡過電圧抑制装置100は、一線地絡により生じる過電圧によって変圧器2の鉄心21が磁気飽和することにより抵抗器6がバイパスされて負担が上昇し、過電圧が抑制される。つまり、変圧器2がスイッチとしての機能を発揮して、抵抗器6の挿入の有無を切り替える。
【0019】
ここで、非接地系統に対地静電容量Cstが存在する場合(図2参照)、これと同じ系統に存在するインダクタンスと抵抗の定数による判別式が不足制動(電圧が振動性)となる場合、間歇アーク地絡(一線地絡が周期的に発生)により、正規電圧の5倍程度の振幅を持つ相電圧が現れることが知られている(図3(A)参照)。
【0020】
EVT4の三次側オープンデルタ回路41には、母線10の零相電圧に比例する電圧が現れる。この電圧のシャント抵抗器6に対する分圧を積分すると変圧器4の磁束となる。正常運転時は、零相電圧が無いために何も起こらないが、間歇アーク地絡では零相電圧が階段状に増加するため(図3(B)参照)、振幅の大きな零相電圧が一定時間継続することで磁束が飽和して、インダクタンスが急減する。
【0021】
これにより、変圧器2の一次側に接続された抵抗器6は、バイパスされた状態となる。例えば、抵抗器5と抵抗器6の抵抗値が同じ場合は、負担が一時的に2倍となる。これにより、零相電圧がビルドアップするのに必要な高周波振動が抑制されて過電圧が抑制される。
【0022】
なお、変圧器2のインダクタンスが急減して短絡状態となっても、接地形計器用変圧器4の三次側のオープンデルタ回路41には負担抵抗器5が接続されているので、短絡事故になることは無い。また、間歇地絡は短時間で解消される現象のため、負担抵抗器5は抵抗器6がバイパスされた際の短時間定格に耐える熱容量を有しておれば良い。
【0023】
このように構成した本実施形態の非接地系統の一線地絡過電圧抑制装置100によれば、一線地絡により生じる過電圧によって変圧器2が磁気飽和することにより抵抗器6がバイパスされ、抵抗器5の負担が強められ過電圧を抑制するので、例えば間歇アーク地絡等の短時間の一線地絡により生じる過電圧の検出及び抑制を一挙に受動素子のみで実現することができる。また、過電圧がなくなると、磁気飽和が解消して抵抗器が復帰された高抵抗状態となるので、正常運転時には、非接地系統の利点である誘導障害防止等を維持することができる。
【0024】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0025】
例えば、図4に示すように、変圧器2の二次側に、EVTと同じ母線に接続された変圧器3の一次側Y結線31の中性点に接続された中性点接地抵抗器7(例えば数kΩ)を直列接続して構成してもよい。この場合には、零相電圧の放電回路が形成されて、過電圧が抑制される。
【0026】
さらに、図5に示すように、変圧器2に対して直接接続された逆並列ダイオード8を設けてもよい。この構成であれば、ダイオード8の動作開始電圧(Vth)以下の電圧変動では回路が開放となり、変圧器2に電圧が印加されずに飽和しない。よって、正常運転時の三相不平衡により現れる零相電圧より前記動作開始電圧を高く設定すれば、正常運転時の不要動作を避けることができる。
【0027】
その上、変圧器2の二次側に何も接続しない場合には、変圧器2の代わりに鉄心を有するリアクトルを用いても良い。
【0028】
前記実施形態の一線地絡過電圧抑制装置は、三巻線のEVTにおける三次側オープンデルタ回路を用いて構成されていたが、二巻線のEVT(Y-オープンΔ)における二次側オープンデルタ回路を用いて構成しても良い。
【0029】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0030】
100・・・一線地絡過電圧抑制装置
10 ・・・母線
2 ・・・変圧器
4 ・・・接地形計器用変圧器
41 ・・・三次側オープンデルタ回路
5 ・・・負担抵抗器
6 ・・・シャント抵抗器
8 ・・・逆並列ダイオード
図1
図2
図3
図4
図5