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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】インダクタアレイ部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20221018BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20221018BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20221018BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
H01F17/04 F
H01F17/04 A
H01F27/29 123
H01F27/00 R
H01F27/24 J
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019201834
(22)【出願日】2019-11-06
(65)【公開番号】P2021077714
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2021-04-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 由雅
(72)【発明者】
【氏名】野尾 直矢
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-121780(JP,A)
【文献】特開2000-021633(JP,A)
【文献】特開2019-046993(JP,A)
【文献】特開平02-098907(JP,A)
【文献】特開平09-246080(JP,A)
【文献】特開2003-142793(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/04
H01F 27/29
H01F 27/00
H01F 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素体と、前記素体内の同一平面上に配置された第1ストレート配線および第2ストレート配線とを備え、
前記素体は、前記第1ストレート配線または前記第2ストレート配線に対して前記平面の法線方向の第1側に位置する第1領域と、前記第1ストレート配線または前記第2ストレート配線に対して前記平面の前記法線方向の第2側に位置する第2領域と、前記第1ストレート配線と前記第2ストレート配線との間に位置する第3領域とを備え、
前記第1領域の磁気抵抗および前記第2領域の磁気抵抗のうち大きい方が、前記第3領域の磁気抵抗以上であり、
前記第1ストレート配線および前記第2ストレート配線は、前記第1ストレート配線および前記第2ストレート配線の延在する方向に垂直な断面において、前記第1領域に対向する上面と、前記第2領域に対向する底面と、前記第3領域に対向する内側面とを有し、
前記上面、前記底面および前記内側面のうち少なくとも1つの面に接するように配置される絶縁体をさらに備え、
前記第1領域の磁気抵抗、前記第2領域の磁気抵抗、および前記第3領域の磁気抵抗のうち最も磁気抵抗が大きい領域以外の領域に接する面に、前記絶縁体が配置される、インダクタアレイ部品。
【請求項2】
前記第1領域の厚みをB1、前記第2領域の厚みをB2、前記第3領域の幅をAとし、
前記第1領域の実効比透磁率をμB1、前記第2領域の実効比透磁率をμB2、前記第3領域の実効比透磁率をμとし、
前記インダクタアレイ部品の厚みをTとし、
前記第1ストレート配線および前記第2ストレート配線の幅に関して、小さくない方をwとし、
前記第1ストレート配線および前記第2ストレート配線の厚みに関して、小さくない方をtとし、
B1≦(μB2/μB1)×B2のとき、
【数1】
を満たし、
B1>(μB2/μB1)×B2のとき、
【数2】
を満たし、
かついずれの場合においても、
【数3】
を満たす、請求項1に記載のインダクタアレイ部品。
【請求項3】
前記インダクタアレイ部品の厚みTは0.3mm以下である、請求項2に記載のインダクタアレイ部品。
【請求項4】
前記第1領域の前記厚みB1と前記第2領域の前記厚みB2とが等しく、前記第1領域の前記実効比透磁率μB1と前記第2領域の前記実効比透磁率μB2とが等しく、式(1)および式(2)の両方を満たす、請求項2または請求項3に記載のインダクタアレイ部品。
【請求項5】
前記第1ストレート配線および前記第2ストレート配線の前記幅が等しく、前記第1ストレート配線および前記第2ストレート配線の前記厚みが等しい、請求項2から4の何れか一つに記載のインダクタアレイ部品。
【請求項6】
前記第3領域の磁気抵抗は、前記第1領域の磁気抵抗および前記第2領域の磁気抵抗のうちの少なくとも一方よりも小さく、
前記絶縁体は、前記第1ストレート配線と前記第2ストレート配線との間の少なくとも一部に配置されている、請求項1から5の何れか一つに記載のインダクタアレイ部品。
【請求項7】
前記第1ストレート配線および前記第2ストレート配線は、それぞれ、互いに対向する側面を有し、
前記絶縁体は、前記第1ストレート配線および前記第2ストレート配線の少なくとも一方の前記側面に接し、
前記絶縁体の前記側面に接する部分の幅は前記第3領域の前記幅よりも小さい、請求項6に記載のインダクタアレイ部品。
【請求項8】
前記第1ストレート配線および前記第2ストレート配線は、それぞれ、上面および底面を有し、
前記絶縁体は、前記上面および前記底面の少なくとも一方に接し、
前記絶縁体の前記上面および前記底面の少なくとも一方に接する部分の厚みは、前記第1領域の前記厚みB1および前記第2領域の前記厚みB2よりも小さい、請求項6または請求項7に記載のインダクタアレイ部品。
【請求項9】
前記絶縁体は、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂またはこれらの混合物から構成される、請求項から8の何れか一つに記載のインダクタアレイ部品。
【請求項10】
前記第1領域、前記第2領域、および前記第3領域は、同一の磁性材料から構成されている、請求項1から9の何れか一つに記載のインダクタアレイ部品。
【請求項11】
前記第1ストレート配線および前記第2ストレート配線は、それぞれ、前記法線方向に積層される複数の導体層から構成される、請求項1から10の何れか一つに記載のインダクタアレイ部品。
【請求項12】
前記素体の主面上に被覆層をさらに備える、請求項1から11の何れか一つに記載のインダクタアレイ部品。
【請求項13】
前記素体の主面上に外部端子をさらに備え、
前記外部端子は、Cu、Ag、Ni、AuおよびSnの少なくとも一つ、またはそれらの合金から構成される、請求項1から12の何れか一つに記載のインダクタアレイ部品。
【請求項14】
前記素体は、焼結体である、請求項1から13の何れか一つに記載のインダクタアレイ部品。
【請求項15】
前記素体は、樹脂と、前記樹脂に含有される磁性粉とを含む、請求項1から13の何れか一つに記載のインダクタアレイ部品。
【請求項16】
前記素体は、絶縁物からなる非磁性粉をさらに含む、請求項15に記載のインダクタアレイ部品。
【請求項17】
前記磁性粉はフェライト粉を含む、請求項15または請求項16に記載のインダクタアレイ部品。
【請求項18】
前記樹脂は、エポキシ樹脂およびアクリル樹脂の少なくとも1つから構成される、請求項15から17の何れか一つに記載のインダクタアレイ部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタアレイ部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インダクタアレイ部品としては、特開2000-21633号公報(特許文献1)に記載されたものがある。このインダクタアレイ部品は、複数のインダクタ配線(内部導体)を表面に設けたフェライト等の絶縁性シートを積み重ねて積層体を構成している。このインダクタアレイ部品では、複数のインダクタ配線により発生する各磁束の磁路の磁気抵抗の差異を、インダクタ配線の形状の差異によって補償し、インダクタンス値のばらつきを低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-21633公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のインダクタアレイ部品では、インダクタ配線間に位置する領域の幅を変えずに積層体の外形を小さくすることを前提としているが、当該領域の幅も調整要素に含めて考慮することが好ましい。また、特許文献1のインダクタアレイ部品では、平面方向の小型化のみを想定しているが、インダクタアレイ部品の実装方法の多様化に伴い、厚み方向の小型化、すなわち薄型化も考慮することが好ましい。
【0005】
そこで、本開示の課題は、配線間に位置する領域も考慮した上で効率的に薄型化を実現できるインダクタアレイ部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本開示の一態様であるインダクタアレイ部品は、
素体と、前記素体内の同一平面上に配置された第1ストレート配線および第2ストレート配線とを備え、
前記素体は、前記第1ストレート配線または前記第2ストレート配線に対して前記平面の法線方向の第1側に位置する第1領域と、前記第1ストレート配線または前記第2ストレート配線に対して前記平面の前記法線方向の第2側に位置する第2領域と、前記第1ストレート配線と前記第2ストレート配線との間に位置する第3領域とを備え、
前記第1領域の磁気抵抗および前記第2領域の磁気抵抗のうち大きい方が、前記第3領域の磁気抵抗以上である。
【0007】
上記態様によれば、素体の第1領域および第2領域のうち、厚みが薄い側、すなわち磁気抵抗が大きい側について、厚みが必要以上とされていないため、効率的に薄型化を実現できる。
【0008】
また、インダクタアレイ部品の一実施形態では、
前記第1領域の厚みをB1、前記第2領域の厚みをB2、前記第3領域の幅をAとし、
前記第1領域の実効比透磁率をμB1、前記第2領域の実効比透磁率をμB2、前記第3領域の実効比透磁率をμとし、
前記インダクタアレイ部品の厚みをTとし、
前記第1ストレート配線および前記第2ストレート配線の幅に関して、小さくない方をwとし、
前記第1ストレート配線および前記第2ストレート配線の厚みに関して、小さくない方をtとし、
B1≦(μB2/μB1)×B2のとき、
【数1】
を満たし、
B1>(μB2/μB1)×B2のとき、
【数2】
を満たし、
かついずれの場合においても、
【数3】
を満たす。
【0009】
前記実施形態によれば、式(1)に示すように第1領域の厚みB1を(w/t)×(μ/μB1)×A以下とするか、または式(2)に示すように第2領域の厚みB2を(w/t)×(μ/μB2)×A以下とすることで、素体の第1領域および第2領域のうち、磁気抵抗が大きい側が、第3領域の磁気抵抗より小さくならず、磁気特性に与える影響が小さい必要以上の厚みが存在しないため、より効率的に薄型化を実現できる。
また、式(3)に示すように、第1領域の厚みB1または第2領域の厚みB2を(T/10)×(1/2)以上とすることで、加工ばらつきを考慮しても第1領域または第2領域を確保できる。したがって、ストレート配線が露出して、開磁路となることを防止することができる。
【0010】
また、インダクタアレイ部品の一実施形態では、
前記インダクタアレイ部品の前記厚みTは0.3mm以下である。
【0011】
前記実施形態によれば、厚みTが0.3mm以下の場合、厚みに余裕がなくなるため、第1領域または第2領域が第3領域に比べて磁気飽和しやすく、厚みを必要以上に厚くしない効果が効率的に発揮される。また、インダクタアレイ部品が薄いため、例えば、インダクタアレイ部品を基板に埋め込むことが可能となる。
【0012】
また、インダクタアレイ部品の一実施形態では、
前記第1領域の前記厚みB1と前記第2領域の前記厚みB2とが等しく、前記第1領域の前記実効比透磁率μB1と前記第2領域の前記実効比透磁率μB2とが等しく、式(1)および式(2)の両方を満たす。
【0013】
前記実施形態によれば、第1領域、第2領域のいずれについても、磁気特性に与える影響が小さい必要以上の厚みが存在しないため、より効率的に薄型化を実現できる。
【0014】
また、インダクタアレイ部品の一実施形態では、
前記第1ストレート配線および前記第2ストレート配線の前記幅が等しく、前記第1ストレート配線および前記第2ストレート配線の前記厚みが等しい。
【0015】
前記実施形態によれば、第1ストレート配線および第2ストレート配線の両方に対して、第1領域または第2領域について、磁気特性に与える影響が小さい必要以上の厚みが存在しないため、より効率的に薄型化を実現できる。
【0016】
また、インダクタアレイ部品の一実施形態では、
前記第1ストレート配線と前記第2ストレート配線との間の少なくとも一部に配置された絶縁体をさらに備える。
【0017】
前記実施形態によれば、第1ストレート配線と第2ストレート配線との間の絶縁性を高めることができる。
【0018】
また、インダクタアレイ部品の一実施形態では、
前記第1ストレート配線および前記第2ストレート配線は、それぞれ、互いに対向する側面を有し、
前記絶縁体は、前記第1ストレート配線および前記第2ストレート配線の少なくとも一方の前記側面に接し、
前記絶縁体の前記側面に接する部分の幅は前記第3領域の前記幅よりも小さい。
【0019】
前記実施形態によれば、第1ストレート配線と第2ストレート配線との間の絶縁性をさらに高めることができる。また、素体の第3領域の非絶縁体部分の体積が確保されるため、インダクタンスの取得効率が高いインダクタアレイ部品を提供することができる。
【0020】
また、インダクタアレイ部品の一実施形態では、
前記第1ストレート配線および前記第2ストレート配線は、それぞれ、上面および底面を有し、
前記絶縁体は、前記上面および前記底面の少なくとも一方に接し、
前記絶縁体の前記上面および前記底面の少なくとも一方に接する部分の厚みは、前記第1領域の前記厚みB1および前記第2領域の前記厚みB2よりも小さい。
【0021】
前記実施形態によれば、第1ストレート配線と第2ストレート配線との間の絶縁性をさらに高めることができる。また、素体の第1領域および第2領域の非絶縁体部分の体積が確保されるため、インダクタンスの取得効率が高いインダクタアレイ部品を提供することができる。
【0022】
また、インダクタアレイ部品の一実施形態では、
前記絶縁体は、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂またはこれらの混合物から構成される。
【0023】
前記実施形態によれば、絶縁体として所定の絶縁性有機樹脂を使用することにより第1ストレート配線および第2ストレート配線のうちの少なくとも一方と素体との密着力を向上させることができる。また、これら絶縁性有機樹脂は、無機系絶縁体に比べ柔らかいため、素体に柔軟性を付与することができ、外部応力に対する機械的強度を高めることができる。
【0024】
また、インダクタアレイ部品の一実施形態では、
前記第1領域、前記第2領域、および前記第3領域は、同一の磁性材料から構成されている。
【0025】
前記実施形態によれば、第1領域、第2領域、および第3領域が同一の磁性材料から構成されているため、コストを低減することができ、量産性に優れる。また、第1領域、第2領域、および第3領域における素体の機械的強度が同一であるため、インダクタアレイ部品内での応力差が発生しにくく、インダクタアレイ部品の反りや歪みの発生を抑制することができる。
【0026】
また、インダクタアレイ部品の一実施形態では、
前記第1ストレート配線および前記第2ストレート配線は、それぞれ、前記法線方向に積層される複数の導体層から構成される。
【0027】
前記実施形態によれば、インダクタンスを高くすることができる。
【0028】
また、インダクタアレイ部品の一実施形態では、
前記素体の主面上に被覆層をさらに備える。
【0029】
前記実施形態によれば、素体の主面上に被覆層を備えることにより素体の主面の絶縁性を確保でき、例えば、主面に外部端子を設ける場合、外部端子間の絶縁性を高めることができる。
【0030】
また、インダクタアレイ部品の一実施形態では、
前記素体の主面上に外部端子をさらに備え、
前記外部端子は、Cu、Ag、Ni、AuおよびSnの少なくとも一つ、またはそれらの合金から構成される。
【0031】
前記実施形態によれば、外部端子が電気抵抗の低いCuまたはAgを含むことで外部端子の導電性が向上し、インダクタアレイ部品の品質が向上する。外部端子がNiを含むことではんだに対する外部端子のバリア性が向上し、インダクタアレイ部品の品質が向上する。外部端子が防錆性を有するAuまたはSnを含むことで外部端子の濡れ性を確保でき、インダクタアレイ部品の安定した実装が可能となる。
【0032】
また、インダクタアレイ部品の一実施形態では、
前記素体は、焼結体である。
【0033】
前記実施形態によれば、インダクタアレイ部品を簡易に製造できる。
【0034】
また、インダクタアレイ部品の一実施形態では、
前記素体は、樹脂と、前記樹脂に含有される磁性粉とを含む。
【0035】
前記実施形態によれば、磁性粉を含むため、インダクタンスを向上させることができる。
【0036】
また、インダクタアレイ部品の一実施形態では、
前記素体は、絶縁物からなる非磁性粉をさらに含む。
【0037】
前記実施形態によれば、素体が絶縁物(例えば、シリカフィラー)からなる非磁性粉を含むと、素体の絶縁性を高めることができる。
【0038】
また、インダクタアレイ部品の一実施形態では、
前記磁性粉はフェライト粉を含む。
【0039】
前記実施形態によれば、磁性粉としてフェライト粉を使用することにより、インダクタアレイ部品のインダクタンスを高めることができる。フェライト粉は金属磁性粉に比べ絶縁性が高いため、素体の絶縁性を高めることができる。
【0040】
また、インダクタアレイ部品の一実施形態では、
前記樹脂は、エポキシ樹脂およびアクリル樹脂の少なくとも1つから構成される。
【0041】
前記実施形態によれば、素体の絶縁性を高めることができる。また、樹脂による応力緩和効果で素体の機械的強度を向上できる。
【発明の効果】
【0042】
本開示の一態様によれば、配線間に位置する領域も考慮した上で効率的に薄型化を実現できるインダクタアレイ部品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1A】インダクタアレイ部品の第1実施形態を示す透視平面図である。
図1B図1AのA-A断面図である。
図1C図1AのB-B断面図である。
図2】インダクタアレイ部品の第2実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本開示の一態様であるインダクタアレイ部品を図示の実施の形態により詳細に説明する。なお、図面は一部模式的なものを含み、実際の寸法や比率を反映していない場合がある。
【0045】
(第1実施形態)
(構成)
図1Aは、インダクタアレイ部品の第1実施形態を示す透視平面図である。図1Bは、図1AのA-A断面図である。
【0046】
インダクタアレイ部品1は、例えば、パソコン、DVDプレーヤー、デジタルカメラ、TV、携帯電話、カーエレクトロニクスなどの電子機器に搭載され、例えば全体として直方体形状の部品である。ただし、インダクタアレイ部品1の形状は、特に限定されず、円柱状や多角形柱状、円錐台形状、多角形錐台形状であってもよい。
【0047】
図1Aおよび図1Bに示すように、インダクタアレイ部品1は、磁性層11,12が積層された直方体形状の素体10と、素体10内の同一平面上に配置された第1ストレート配線21および第2ストレート配線22と、素体10の第1主面10aに設けられた外部端子41~44および被覆層50と、ストレート配線21,22と外部端子41~44とを電気的に接続する柱状配線31~34とを備える。ここで、磁性層11,12の積層方向をインダクタアレイ部品1の厚み方向とすると、インダクタアレイ部品1の外表面は、厚み方向に直交し、互いに対向する長方形状の第1主面10aおよび第2主面10fを有する。さらに、厚み方向に垂直な方向であって、第1ストレート配線21、第2ストレート配線22の延びる方向をインダクタアレイ部品1の長さ方向とし、厚み方向および長さ方向の両方に垂直な方向をインダクタアレイ部品1の幅方向とすると、当該外表面は、第1主面10aと第2主面10fとの間に接続され、互いに対向し、かつ幅方向に平行な第1側面10bおよび第2側面10cと、第1側面10bと第2側面10cとの間に接続され、互いに対向し、かつ長さ方向に平行な第3側面10dおよび第4側面10eとを有する。図示するように、インダクタアレイ部品1の厚み方向をZ方向とし、順Z方向を上側、逆Z方向を下側とする。インダクタアレイ部品1のZ方向に直交する平面において、インダクタアレイ部品1の長さ方向をX方向とし、インダクタアレイ部品1の幅方向をY方向とする。また、長さ方向(X方向)の寸法は「長さ」、幅方向(Y方向)の寸法は「幅」、厚み方向(Z方向)の寸法は「厚み」、と表現する。インダクタアレイ部品1では、第1主面10aの長方形状の長辺方向、短辺方向が、それぞれ長さ方向(X方向)、幅方向(Y方向)に一致しているが、これに限られない。例えば、第1ストレート配線21、第2ストレート配線22が第1主面10aの短辺方向に延びる場合は、第1主面10aの短辺方向、長辺方向が、それぞれ長さ方向(X方向)、幅方向(Y方向)に一致する。
【0048】
第1主面10aは、長方形状の短辺に相当する直線状に伸びる第1端縁101、第2端縁102を有する。第1端縁101、第2端縁102は、それぞれ素体10の第1側面10b、第2側面10cに続く第1主面10aの端縁である。素体10の第1主面10aに直交する方向からみて、素体10の第1側面10bおよび第2側面10cは、それぞれY方向に沿った面であり、第1端縁101および第2端縁102と一致する。ただし、第1主面10aと第1側面10bおよび第2側面10cとの間に曲面や傾斜面が存在することにより、第1側面10b、第2側面10cはそれぞれ、第1端縁101、第2端縁102と一致していなくても良い。素体10の第1主面10aに直交する方向からみて、素体10の第3側面10dおよび第4側面10eは、X方向に沿った面である。
【0049】
素体10は、複数の磁性層11,12からなる多層構造(2層構造)である。具体的には、素体10は、第1磁性層11と、第1磁性層11の上面11aに配置され、第1ストレート配線21および第2ストレート配線22を覆う第2磁性層12とを有する。素体10の第1主面10aは、第2磁性層12の上面に相当する。さらに、第1,第2磁性層11,12は、それぞれ複数の層からなってよい。例えば、第2磁性層12は、第1,第2ストレート配線21,22と同一層である第1層と、第1層上に位置する第2層とからなっていてもよい。なお、素体10は、複数の磁性層からなる多層構造であるが、これに限定されない。素体10は、少なくとも磁性層のみの1層構造であってもよい。また、素体10は複数の磁性層からなる多層構造であったものが、製造の過程で層間の界面が消失したり判別できなくなったりして1層構造のように見えるものであってもよい。
【0050】
素体10は、複数の磁性層11,12からなる焼結体である。素体10が焼結体であると、インダクタアレイ部品1を簡易に製造できる。焼結体は、例えば、Ni-Znフェライト、Mn-Znフェライト、ウィルマイト、アルミナ、およびガラスである。焼結体は、例えば、後述するインダクタアレイ部品1の製造方法におけるシート積層法または印刷積層法により作製することができる。
【0051】
なお、素体10は、焼結体であるが、これに限定されない。素体10は、樹脂と、樹脂に含有される磁性粉とを含んでもよい。つまり、第1磁性層11および第2磁性層12は、磁性粉を含有する樹脂からなる磁性樹脂層であってもよい。樹脂は、例えば、エポキシ系樹脂、アクリル樹脂やビスマレイミド、液晶ポリマ、ポリイミドなどからなる有機絶縁材料である。これらの樹脂の中でも、樹脂は、好ましくはエポキシ樹脂およびアクリル樹脂の少なくとも1つから構成される。樹脂がエポキシ樹脂およびアクリル樹脂の少なくとも1つから構成されると、素体10の絶縁性を高めることができる。また、樹脂による応力緩和効果で素体10の機械的強度を向上できる。
【0052】
素体10が磁性粉を含む場合、インダクタアレイ部品1のインダクタンスを向上させることができる。磁性粉は、例えば、NiZn系やMnZn系などのフェライト粉や金属磁性粉である。磁性粉としてフェライト粉を使用することにより(磁性粉がフェライト粉を含むことにより)、インダクタアレイ部品のインダクタンスを高めることができる。また、フェライト粉は金属磁性粉に比べ絶縁性が高いため、素体10の絶縁性を高めることができる。金属磁性粉は、例えば、FeSiCrなどのFeSi系合金、FeCo系合金、NiFeなどのFe系合金、または、それらのアモルファス合金の粉末、もしくはそれらの混合物などである。磁性粉の含有率は、好ましくは、磁性層全体に対して、20Vol%以上70Vol%以下である。磁性粉の平均粒径は、例えば0.1μm以上5μm以下である。インダクタアレイ部品1の製造段階においては、磁性粉の平均粒径を、レーザ回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%に相当する粒径として算出することができる。また、インダクタアレイ部品1の完成品の状態では、磁性粉の平均粒径は、素体10の中心を通る断面のSEM画像を用いて測定する。具体的には、15個以上の磁性粉が確認できる倍率のSEM画像において、各磁性粉の面積を測定し、円相当径から算出した上で、その算術平均値を磁性粉の平均粒径とする。磁性粉の平均粒径が5μm以下である場合、直流重畳特性がより向上し、微粉によって高周波での鉄損を低減できる。なお、素体10は、磁性粉としてフェライト粉および金属磁性粉の両方を含んでいてもよい。
【0053】
素体10は、絶縁物からなる非磁性粉をさらに含んでもよい。素体10が絶縁物(例えば、シリカフィラー)からなる非磁性粉を含むと、素体10の絶縁性を高めることができる。
【0054】
第1ストレート配線21と第2ストレート配線22は、素体10内の同一平面(第1平面13)上に配置されている。これにより、インダクタアレイ部品1の低背化を実現できる。具体的に述べると、第1平面13は、第1磁性層11の上面11aに相当する(第1平面13の詳細は後述する)。第1ストレート配線21と第2ストレート配線22は、第1磁性層11の上方側、つまり、第1磁性層11の上面11aにのみ形成され、第2磁性層12に覆われている。なお、インダクタアレイ部品1の第1ストレート配線21と第2ストレート配線22は全く同じ形状であるが、異なる形状であってもよい。
【0055】
第1、第2ストレート配線21,22は、Z方向からみて、互いに重ならず、互いに平行に配置されている。なお、本明細書における平行とは、厳密な平行に限定されず、現実的なばらつきの範囲を考慮して、実質的な平行も含む。
【0056】
第1、第2ストレート配線21,22は、Z方向から見たときに、曲線部を含まない直線状である。すなわち、第1、第2ストレート配線21,22は、直線状の配線である。ただし、直線状は厳密な直線形状に限定されず、多少の曲線形状や蛇行形状を含んでいてもよい。なお、上記の場合に、第1、第2ストレート配線21,22の延びる方向(長さ方向)は、曲線形状や蛇行形状を無視し、全体の直線形状から判断される。例えば、第1、第2ストレート配線21、22の第1端、第2端を結ぶ直線方向を、第1、第2ストレート配線の延びる方向とすればよい。
【0057】
第1、第2ストレート配線21,22の厚みは、例えば、40μm以上120μm以下であることが好ましい。第1、第2ストレート配線21,22の実施例として、厚みが45μm、配線幅が40μm、配線間スペース(後述する第3領域の幅)が10μmである。第3領域の幅は3μm以上20μm以下が好ましい。
【0058】
第1、第2ストレート配線21,22は、導電性材料からなり、例えばCu、Ag,Auなどの低電気抵抗な金属材料からなる。本実施形態では、インダクタアレイ部品1は、第1、第2ストレート配線21,22を1層のみ備えており、インダクタアレイ部品1の低背化を実現できる。
【0059】
第1,第2ストレート配線21,22は、それぞれ1層の導体層から構成されてもよいし、法線方向に積層される複数の導体層から構成されてもよい。第1,第2ストレート配線21,22がそれぞれ法線方向に積層される複数の導体層から構成される場合、インダクタアレイ部品1のインダクタンスを高くすることができる。
【0060】
第1ストレート配線21は、第1端、第2端がそれぞれ外側に位置する第1柱状配線31、第2柱状配線32に電気的に接続される。つまり、第1ストレート配線21は、その両端に直線形状部分よりも線幅の大きいパッド部を有し、パッド部において、第1,第2柱状配線31,32と直接接続されている。
【0061】
同様に、第2ストレート配線22は、第1端、第2端がそれぞれ外側に位置する第3柱状配線33、第4柱状配線34に電気的に接続される。つまり、第2ストレート配線22は、その両端に直線形状部分よりも線幅の大きいパッド部を有し、パッド部において、第3,第4柱状配線33,34と直接接続されている。
【0062】
第1から第4柱状配線31~34は、各ストレート配線21,22からZ方向に延在し、第2磁性層12の内部を貫通している。第1柱状配線31は、第1ストレート配線21の一端の上面から上側に延在し、第1柱状配線31の端面が、素体10の第1主面10aから露出する。第2柱状配線32は、第1ストレート配線21の他端の上面から上側に延在し、第2柱状配線32の端面が、素体10の第1主面10aから露出する。第3柱状配線33は、第2ストレート配線22の一端の上面から上側に延在し、第3柱状配線33の端面が、素体10の第1主面10aから露出する。第4柱状配線34は、第2ストレート配線22の他端の上面から上側に延在し、第4柱状配線34の端面が、素体10の第1主面10aから露出する。
【0063】
つまり、第1から第4柱状配線31~34は、第1ストレート配線21、第2ストレート配線22から上記第1主面10aから露出する端面まで、当該端面に直交する方向に直線状に伸びる。これにより、第1外部端子41、第2外部端子42、第3外部端子43、第4外部端子44と、第1ストレート配線21、第2ストレート配線22とをより短い距離で接続することができ、インダクタアレイ部品1の低抵抗化や高インダクタンス化を実現できる。第1から第4柱状配線31~34は、導電性材料からなり、例えば、ストレート配線21,22と同様の材料からなる。
【0064】
第1から第4外部端子41~44は、素体10の第1主面10a(第2磁性層12の上面)に設けられている。第1外部端子41と第3外部端子43は、Z方向からインダクタアレイ部品1を平面視したときに、素体10の第1側面10bに沿って配列され、第2外部端子42と第4外部端子44は、素体10の第2側面10cに沿って配列されている。第1外部端子41と第3外部端子43の配列方向は、第1外部端子41の中心と第3外部端子43の中心を結ぶ方向とし、第2外部端子42と第4外部端子44の配列方向は、第2外部端子42の中心と第4外部端子44の中心を結ぶ方向とする。
【0065】
第1外部端子41は、第1柱状配線31の素体10の第1主面10aから露出する端面に接触し、第1柱状配線31と電気的に接続されている。これにより、第1外部端子41は、第1ストレート配線21の一端に電気的に接続される。第2外部端子42は、第2柱状配線32の素体10の第1主面10aから露出する端面に接触し、第2柱状配線32と電気的に接続されている。これにより、第2外部端子42は、第1ストレート配線21の他端に電気的に接続される。第3外部端子43は、第3柱状配線33の端面に接触し、第3柱状配線33と電気的に接続されて、第2ストレート配線22の一端に電気的に接続される。第4外部端子44は、第4柱状配線34の端面に接触し、第4柱状配線34と電気的に接続されて、第2ストレート配線22の他端に電気的に接続される。
【0066】
第1から第4外部端子41~44は、導電性材料から構成される。導電性材料は、例えば、Cu、Ag、Ni、AuおよびSnの少なくとも一つ、またはそれらの合金である。第1から第4外部端子41~44が電気抵抗の低いCuまたはAgを含むことで、第1から第4外部端子41~44の導電性が向上し、インダクタアレイ部品1の品質が向上する。第1から第4外部端子41~44がNiを含むことで、はんだに対する第1から第4外部端子41~44のバリア性が向上し、インダクタアレイ部品1の品質が向上する。第1から第4外部端子41~44が防錆性を有するAuまたはSnを含むことで、第1から第4外部端子41~44の濡れ性を確保でき、インダクタアレイ部品1の安定した実装が可能となる。また、第1から第4外部端子41~44は、上記材料から構成される複数の金属膜が積層した多層金属膜であってもよい。多層金属膜は、2以上の複数の金属膜からなり、例えば、低電気抵抗かつ耐応力性に優れたCu、耐食性に優れたNi、はんだ濡れ性と信頼性に優れたAuが内側から外側に向かってこの順に並ぶ3層構成の金属膜である。
【0067】
第1~第4外部端子41~44は、被覆層50よりも上側に突出している。すなわち、第1~第4外部端子41~44の厚みは、被覆層50の膜厚よりも大きく、これにより、インダクタアレイ部品1を実装するとき、実装安定性を向上できる。
【0068】
被覆層50は、素体10の第1主面10aにおける第1から第4外部端子41~44が設けられていない部分に設けられている。つまり、素体10は、主面10a上に被覆層50を備える。このようにインダクタアレイ部品1が素体10の主面10a上に被覆層50を備えると、素体10の主面10aの絶縁性を確保でき、例えば、第1外部端子41と第2外部端子42との間の絶縁性を高めることができる。
ただし、被覆層50は、第1から第4外部端子41~44の端部が乗り上げることで、第1から第4外部端子41~44と重なっていてもよい。被覆層50は、例えば、アクリル樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド等の電気絶縁性が高い樹脂材料から構成される。これにより、第1から第4外部端子41~44の間の絶縁性を向上できる。また、被覆層50が第1から第4外部端子41~44のパターン形成時のマスク代わりとなり、製造効率が向上する。また、被覆層50は、例えば、素体10から金属磁性粉が露出していた場合に、当該露出する金属磁性粉を覆うことで、金属磁性粉の外部への露出を防止することができる。なお、被覆層50は、絶縁材料からなるフィラーを含有してもよい。
【0069】
インダクタアレイ部品1では、第1柱状配線31の端面における第1外部端子41と接触していない部分、および、第3柱状配線33の端面における第3外部端子43と接触していない部分は、被覆層50で覆われている。
【0070】
図1Cは、図1AのB-B断面図である。図1AのB-B断面は、インダクタアレイ部品1をZ方向から見た場合に、インダクタアレイ部品1の長さ方向(X方向)の中央で幅方向(Y方向)に沿って切断したときに形成されるYZ平面に平行な断面である。
【0071】
図1Cに示すように、素体10は、第1ストレート配線21または第2ストレート配線22に対して第1平面13の法線方向の第1側(順Z方向)に位置する第1領域a1と、第1ストレート配線21または第2ストレート配線22に対して第1平面13の法線方向の第2側(逆Z方向)に位置する第2領域a2と、第1ストレート配線21と第2ストレート配線22との間に位置する第3領域a3とを備える。第1領域a1、第2領域a2、第3領域a3は、図1Cに示す断面における領域である。また、第1領域a1、第2領域a2、第3領域a3は、第1ストレート配線21、第2ストレート配線22を流れる電流によって発生する磁束が主に通過する領域である。第1領域a1、第2領域a2では、当該磁束がY方向に沿って通過し、第3領域a3では、当該磁束がZ方向に沿って通過する。
ここで、第1平面13は、第1ストレート配線21および第2ストレート配線22が配置された同一平面であって、XY平面に平行な素体10内の平面であり、第1実施形態では第1磁性層11の上面11aに相当する。
【0072】
第1側は、第1ストレート配線21および第2ストレート配線22が配置された第1平面13の法線方向の上側(順Z方向の側)である。第2側は、第1ストレート配線21および第2ストレート配線22が配置された第1平面13の法線方向の下側(逆Z方向の側)である。
【0073】
第1領域a1は、第1ストレート配線21または第2ストレート配線22に対して第1平面13の法線方向の第1側に位置する。具体的には、第1領域a1は、第1ストレート配線21の真上に位置する素体10内の領域a11、または第2ストレート配線22の真上に位置する素体10内の領域a12である。つまり、領域a11は、第2平面14と、素体10の第1主面10aと、第1ストレート配線21の第1内側面b11および第1外側面b12が第1側に延在する線とで囲まれた領域である。領域a12は、第2平面14と、素体10の第1主面10aと、第2ストレート配線22の第2内側面b21および第2外側面b22が第1側に延在する線とで囲まれた領域である。領域a11の幅は、第1ストレート配線21の幅w1に相当し、領域a21の幅は、第2ストレート配線22の幅w2に相当する。
【0074】
第2領域a2は、第1ストレート配線21または第2ストレート配線22に対して第1平面13の法線方向の第2側に位置する。具体的には、第2領域a2は、第1ストレート配線21の真下に位置する素体10内の領域a21、または第2ストレート配線22の真下に位置する素体10内の領域a22である。つまり、領域a21は、第1平面13と、素体10の第2主面10fと、第1内側面b11および第1外側面b12が第2側に延在する線とで囲まれた領域である。領域a22は、第1平面13と、素体10の第2主面10fと、第2内側面b21および第2外側面b22が第2側に延在する線とで囲まれた領域である。領域a21の幅は、第1ストレート配線21の幅w21に相当し、領域a22の幅は、第2ストレート配線22の幅w2に相当する。
【0075】
第3領域a3は、第1ストレート配線21と第2ストレート配線22との間に位置する。具体的には、第3領域a3は、第1、第2平面13,14と、第1、第2内側面b11,b21とで囲まれた領域である。第3領域a3の厚みは、第1,第2ストレート配線21,22の厚みtに相当する。
【0076】
なお、第1,第2ストレート配線21,22は、互いに同じ断面形状(略矩形)を有する。第1,第2ストレート配線21,22の断面形状は、互いに同じ向きに配置されている。具体的には、それらの断面形状の上面および下面は、互いに同一平面上に配置され、それらの断面形状の側面は互いに平行である。第1,第2ストレート配線21,22の断面形状は、互いに同じ寸法を有する。また、第1,第2ストレート配線21,22の周囲における第1磁性層11、第2磁性層12の構成も互いに同じである。
したがって、インダクタアレイ部品1では、第1領域a1、第2領域a2は、第1ストレート配線21側と第2ストレート配線22側にそれぞれ存在するが、互いに同じであるため、以下では第1領域a1、第2領域a2は、第1ストレート配線21側の領域として説明する。
【0077】
(作用効果)
インダクタアレイ部品1では、第1領域a1の磁気抵抗Rおよび第2領域a2の磁気抵抗Rのうち大きい方が、第3領域a3の磁気抵抗R以上である。磁気抵抗R~Rは、第1ストレート配線21の長さL、幅w1、厚みt、第1領域a1の厚みB1、第2領域a2の厚みB2、第3領域a3の幅A、第1領域a1の実効比透磁率をμB1、第2領域a2の実効比透磁率をμB2、第3領域a3の実効比透磁率をμとして、次のように計算することができる。
=w1/(μB1×B1×L)
=w1/(μB2×B2×L)
=t/(μ×A×L)
上記計算式から分かるように、第1領域a1の磁気抵抗R、第2領域a2の磁気抵抗Rのうち大きい方とは、例えば、第1領域a1および第2領域a2の実効比透磁率が同じ(μB1=μB2)である場合、厚みB1,B2の薄い側の領域である。したがって、かかる場合は、厚みの薄い側の領域の磁気抵抗が第3領域a3の磁気抵抗以上である。
仮に、第1領域a1の磁気抵抗R、第2領域a2の磁気抵抗Rの何れもが、第3領域a3の磁気抵抗Rより小さい場合、第1、第2ストレート配線21、22に流れる電流を大きくしていくと、第1領域a1および第2領域a2よりも第3領域a3が先に磁気飽和する。これはつまり、第1領域a1および第2領域a2の飽和磁束密度が余分に確保されていることを意味し、引いては特性に影響なく第1磁性層11および第2磁性層12を薄くできる余地がまだあるということになる。
一方、インダクタアレイ部品1では、第1領域a1、第2領域a2の少なくとも一方(磁気抵抗が大きい方)が、第3領域a3より先にまたは同時に磁気飽和する。これはつまり、第1磁性層11、第2磁性層12の少なくとも一方が、特性に影響する限界と同等またはそれ以上に薄くされていることを意味し、第3領域a3の幅Aに応じて適切な薄型化が実現されていることになる。したがって、インダクタアレイ部品1では、配線(第1、第2ストレート配線21,22)間に位置する第3領域a3も考慮した上で効率的に薄型化を実現できる。
なお、インダクタアレイ部品1では、RおよびRが、Rより大きいことが好ましく、この場合、第1磁性層11、第2磁性層12の両方について特性に影響する限界と同等またはそれ以上に薄くされていることを意味する。
【0078】
上記のように、第1~第3領域a1~a3の磁気抵抗の大きさは、第1~第3領域a1~a3の実効比透磁率、磁束が通過する長さ(より具体的には、第1、第2領域a1,a2については幅w1、第3領域a3については厚みt)および磁束が通過する断面積(より具体的には、第1、第2領域a1,a2については長さLと厚みB1,B2との積、第3領域については長さLと厚みAとの積)により算出される。第1~第3領域a1~a3の実効比透磁率は、例えば、第1~第3領域a1~a3の材質により算出することができる。ただし、上記磁気抵抗については、相対関係が判断できればよいため、第1~第3領域a1~a3が実質的に単一の層からなる場合や、同じ材質からなる場合であれば、実効比透磁率を考慮せず、断面積のみを比較すればよい。
【0079】
第1~第3領域a1~a3の幅は、それぞれ第1~第3領域a1~a3のY方向の長さである。第1~第3領域a1~a3の厚みは、第1~第3領域a1~a3のZ方向の長さである。
【0080】
第1領域a1の厚みをB1、第2領域a2の厚みをB2、第3領域a3の幅をAとし、
第1領域a1の実効比透磁率をμB1、第2領域a2の実効比透磁率をμB2、第3領域a3の実効比透磁率をμとし、
インダクタアレイ部品1の厚みをTとし、
第1ストレート配線21および第2ストレート配線22の幅に関して、小さくない方をwとし、
第1ストレート配線21および第2ストレート配線22の厚みに関して、小さくない方をtとし、
B1≦(μB2/μB1)×B2のとき、
【数1】
を満たし、
B1>(μB2/μB1)×B2のとき、
【数2】
を満たし、
かついずれの場合においても、
【数3】
を満たすことが好ましい。
【0081】
第1領域a1の厚みB1は、図1Cに示すインダクタアレイ部品1の断面において、第1領域a1のZ方向の厚みである。第1領域a1の厚みB1は、第2平面14と第2磁性層12の上面(素体10の第1主面10a)との間の長さである。
【0082】
第2領域a2の厚みB2は、図1Cに示すインダクタアレイ部品1の断面において、第2領域a2のZ方向の厚みである。第2領域a2の厚みB2は、第1平面13と第1磁性層11の下面(素体10の第2主面10f)との間の長さである。
【0083】
第3領域a3の幅Aは、図1Cに示すインダクタアレイ部品1の断面において、第3領域a3のY方向の幅である。第3領域a3の幅Aは、第3領域a3における第1平面13と第2平面14との間の長さである。
【0084】
インダクタアレイ部品1の厚みTは、インダクタアレイ部品1のZ方向の最大厚みである。図1Cでは、インダクタアレイ部品1の厚みTは、素体10の第2主面10fから第1外部端子41または第2外部端子42までのZ方向の厚みに相当する。
【0085】
ストレート配線の幅wは、第1ストレート配線21の幅w1および第2ストレート配線22の幅w2に関して、小さくない方である。第1ストレート配線21の幅w1は、図1Cに示すインダクタアレイ部品1の断面において、第1ストレート配線21のY方向の最大幅である。第2ストレート配線22の幅w2は、図1Cに示すインダクタアレイ部品1の断面において、第2ストレート配線22のY方向の最大幅である。
【0086】
ストレート配線の厚みtは、第1ストレート配線21の厚みt1および第2ストレート配線22の厚みt2に関して、小さくない方である。第1ストレート配線21の厚みt1は、図1Cに示すインダクタアレイ部品1の断面において、第1ストレート配線21のZ方向の最大幅である。第2ストレート配線22の厚みt2は、図1Cに示すインダクタアレイ部品1の断面において、第2ストレート配線22のZ方向の最大厚みである。
なお、上記寸法の測定において、測定領域に一定の範囲が存在する場合は、当該一定の範囲の中央で測定すればよい。例えば、第3領域a3の幅Aの測定では、厚み方向(Z方向)にストレート配線の厚みt分の測定範囲が存在するが、この場合は、厚みtのZ方向における中央を通り幅方向(Y方向)に平行な寸法を測定すればよい。
【0087】
(作用効果)
式(1)に示すように第1領域a1の厚みB1を(w/t)×(μ/μB1)×A以下とするか、または式(2)に示すように第2領域a2の厚みB2を(w/t)×(μ/μB2)×A以下とすることで、素体10の第1領域a1および第2領域a2のうち、磁気抵抗が大きい側が、第3領域a3の磁気抵抗Rより小さくならず、磁気特性に与える影響が小さい必要以上の厚みが存在しないため、より効率的に薄型化を実現できる。
また、式(3)に示すように、第1領域a1の厚みB1および第2領域a2の厚みB2を(T/10)×(1/2)以上とすることで、加工ばらつきを考慮しても第1領域a1または第2領域a2を確保できる。したがって、第1,第2ストレート配線21,22が露出して、開磁路となることを防止することができる。
【0088】
インダクタアレイ部品1の厚みTは、インダクタアレイ部品1をさらに効率的に薄型化する観点からは、0.3mm以下であることが好ましい。インダクタアレイ部品1の厚みTが0.3mm以下であると、厚みに余裕がなくなるため、第1領域a1または第2領域a2が第3領域a3に比べて磁気飽和しやすく、厚みを必要以上に厚くしない効果が効率的に発揮される。また、インダクタアレイ部品1が薄いため、例えば、インダクタアレイ部品1を基板に埋め込むことが可能となる。
【0089】
第1領域a1の厚みB1と第2領域a2の厚みB2とが等しく、第1領域a1の実効比透磁率μB1と第2領域a2の実効比透磁率μB2とが等しく、式(1)および式(2)の両方を満たすことが好ましい。かかる場合、第1領域a1、第2領域a2のいずれについても、磁気特性に与える影響が小さい必要以上の厚みが存在しないため、より効率的に薄型化を実現できる。
なお、実効比透磁率μB1と実効比透磁率μB2とは異なってもよい。例えば、第1,第2磁性層11,12が複数の磁性層からなる場合、第1,第2磁性層11,12の複数の磁性層のうち少なくとも1つの磁性層は、異なる材質からなる。
【0090】
上述のように、第1ストレート配線21の幅w1と第2ストレート配線22の幅w2とが等しく、第1ストレート配線21の厚みt1と第2ストレート配線22の厚みt2とが等しいことが好ましい。かかる場合、第1ストレート配線21および第2ストレート配線22の両方に対して、第1領域a1または第2領域a2について、磁気特性に与える影響が小さい必要以上の厚みが存在しないため、より効率的に薄型化を実現できる。
【0091】
第1領域a1、第2領域a2、および第3領域a3は、同一の磁性材料から構成されてもよいし、異なる磁性材料から構成されてもよい。第1~第3領域a1~a3が同一の磁性材料から構成されている場合、コストを削減することができ、量産性に優れる。また、第1~第3領域a1~a3が同一の磁性材料から構成されている場合、第1~第3領域a1~a3における素体10の機械的強度が同一である。このため、インダクタアレイ部品1の反りや歪みの発生を抑制することができる。
【0092】
(製造方法)
次に、インダクタアレイ部品1の製造方法の一例について説明する。
インダクタアレイ部品1の製造方法は、例えば、シート積層法を用いた場合、焼成前の磁性シートに配線を形成することにより、グリーンシートを形成するグリーンシート形成工程と、グリーンシートを積層圧着して積層体を形成する積層体形成工程と、積層体を焼成する積層体焼成工程とを含む。
【0093】
グリーンシート形成工程では、例えば、フェライトなどの磁性体材料の粉末と当該粉末を含有するバインダ樹脂とからなる磁性ペーストをシート状に成形した磁性シート(第1磁性層11となる部分)の主面上に、Agなどの導体材料の粉末と当該粉末を含有するバインダ樹脂とからなる導体ペーストをスクリーン印刷などにより直線状に塗布し、ストレート配線21,22となる部分を形成し、第1グリーンシートを形成する。
次に、上記磁性ペーストをシート状に成形した磁性シート(第2磁性層12となる部分)に、レーザやブラストなどにより貫通孔を形成し、当該貫通孔に上記導体ペーストを充填することにより、柱状配線31~34となる部分を形成し、第2グリーンシートを形成する。
なお、ストレート配線21,22は、絶縁シートの上面上に、1つの導体層から構成されてもよいし、絶縁シートの法線方向に積層される複数の導体層から構成されてもよい。
【0094】
その後、積層体形成工程では、第2グリーンシートを第1グリーンシートの上面に積層圧着して積層体を形成する。この積層体では、柱状配線31~34となる導体ペーストが積層体の表面に露出している。
その後、積層体焼成工程では、積層体を焼成する。これにより、第1、第2グリーンシートからバインダ樹脂が飛散、酸化するとともに、磁性ペースト中の磁性体材料の粉末、導体ペースト中の導体材料の粉末がそれぞれ焼結し、第1磁性層11、第2磁性層12、ストレート配線21,22、柱状配線31~34が形成される。
【0095】
その後、第2磁性層12の上面に、ソルダーレジストを塗布するなどにより、被覆層50を形成する。さらに、フォトリソグラフィなどにより、被覆層50における外部端子41~44を形成する領域に、柱状配線31~34の端面および第2磁性層12が露出する貫通孔を形成する。
なお、本製造方法では、グリーンシート1層に第2磁性層12を積層したインダクタアレイ部品1を説明したが、2層以上のグリーンシートを積層させてインダクタアレイ部品を製造してもよい。
【0096】
その後、無電解めっきにより、柱状配線31~34から被覆層50の貫通孔内に成長する外部端子41~44を形成する。このようにして積層体を形成する。
【0097】
上記のように、インダクタアレイ部品1における素体10は焼結体である。素体10が焼結体であると、インダクタアレイ部品1を簡易に製造することができる。
【0098】
また、インダクタアレイ部品1の製造方法は、上記シート積層法に限られない。例えば、ストレート配線21,22や柱状配線31~34となる部分を形成する方法をスパッタリングやめっきなどにより金属膜を直接形成してもよい。また、印刷積層法のように、第1グリーンシート上に直接磁性ペースト、導体ペーストを塗布して第2グリーンシートを形成してもよい。
【0099】
インダクタアレイ部品1は露出部200を有するため、インダクタアレイ部品1の製造方法において、めっきを有効に使用することができる。
具体的に述べると、第1、第2ストレート配線21,22の第1から第4柱状配線31~34との接続位置からチップの外側に向かってさらに配線が伸びて、この配線はチップの外側に露出している。つまり、第1、第2ストレート配線21,22は、インダクタアレイ部品1の積層方向に平行な側面から外部に露出している露出部200を有する。
【0100】
この配線は、インダクタアレイ部品1の製造過程において、第1、第2ストレート配線21,22の形状を形成後、追加で電解めっきを行う際の給電配線と接続される配線である。この給電配線によりインダクタアレイ部品1を個片化する前のインダクタ基板状態において、追加で電解めっきを容易に行うことができ、配線間距離を狭くすることができる。また、追加で電解めっきを行うことで、第1、第2ストレート配線21,22の配線間距離を狭くすることにより、第1、第2ストレート配線21,22の磁気結合を高めることができる。
【0101】
第1,第2ストレート配線21,22は、露出部200を有するので、インダクタ基板の加工時の静電気破壊耐性を確保できる。各ストレート配線21,22において、露出部200の露出面200aの厚みは、好ましくは、各ストレート配線21,22の厚み以下で、かつ、45μm以上である。これによれば、露出面200aの厚みがストレート配線21,22の厚み以下であることにより、磁性層11,12の割合を増やすことができ、インダクタンスを向上できる。また、露出面200aの厚みが45μm以上であることにより、断線の発生を低減できる。露出面200aは、好ましくは、酸化膜である。これによれば、インダクタアレイ部品1とその隣接部品との間でショートを抑制できる。
【0102】
(第2実施形態)
図2は、インダクタアレイ部品の第2実施形態を示す断面図である。第2実施形態は、第1実施形態とは、第1ストレート配線21と第2ストレート配線22との間の少なくとも一部に配置された絶縁体61,62をさらに備える点で相違する。この相違する構成を以下で説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同一の符号は、第1実施形態を同じ構成であるため、その説明を省略する。
【0103】
図2に示すように、第2実施形態のインダクタアレイ部品1Aは、第1ストレート配線21と第2ストレート配線22との間の少なくとも一部に配置された第1絶縁体61,第2絶縁体62をさらに備える。具体的には、第1,第2ストレート配線21,22は、略正方形の断面形状を有する。正方形の断面は、互いに対向する上面および底面、ならびに互いに対向する2つの側面(内側面および外側面)を有する。第1,第2絶縁体61,62は、それぞれ第1,第2ストレート配線21,22の底面および両側面を被覆する凹部形状を有する。
インダクタアレイ部品1が第1,第2ストレート配線21,22との間の少なくとも一部に配置された第1,第2絶縁体61,62をさらに備えると、第1ストレート配線21と第2ストレート配線22との間の絶縁性をさらに高めることができる。特に、磁性層12が金属磁性粉含有樹脂などからなる場合に効果的である。
【0104】
第1,第2絶縁体61,62は、第1ストレート配線21および第2ストレート配線22の少なくとも一方の側面に接する。この場合、第1ストレート配線21と第2ストレート配線22との間の絶縁性をさらに高めることができる。また、素体10の第3領域a3の非絶縁体部分の体積が確保されるため、インダクタンスの取得効率が高いインダクタアレイ部品1Aを提供することができる。
【0105】
第1,第2絶縁体61,62は、第1ストレート配線21および第2ストレート配線22の上面および底面の少なくとも一方に接する。第1ストレート配線21および第2ストレート配線22の上面および底面の少なくとも一方に接する部分の第1,第2絶縁体61,62の厚みは、第1領域a1の厚みB1および第2領域の厚みB2よりも小さい。この場合、第1ストレート配線21と第2ストレート配線22との間の絶縁性をさらに高めることができる。また、素体10の第1領域a1および第2領域a2の非絶縁体部分の体積が確保されるため、インダクタンスの取得効率が高いインダクタアレイ部品1を提供することができる。
【0106】
第2領域a2は、第1ストレート配線21の底面を被覆する第1絶縁体61の真下に位置する素体10内の領域a21、または第2ストレート配線22の底面を被覆する第2絶縁体62の真下に位置する素体10内の領域a22である、つまり、領域a21は、第1絶縁体61の底面(第1磁性層11の上面11a)と、素体10の第2主面10fと、第1内側面b11および第1外側面b12が第2側に延在する線とで囲まれた領域である。領域a22は、第1絶縁体61の底面と、素体10の第2主面10fと、第2内側面b21および第2外側面b22が第2側に延在する線とで囲まれた領域である。
【0107】
第3領域a3は、第1平面13と、第2平面14と、第1内側面b11を被覆する第1絶縁体61の第3内側面b31と、第2内側面b21を被覆する第2絶縁体62の第4内側面b41とで囲まれた領域である。なお、第1~第3領域a1~a3には、絶縁体61,62は含まれない。
【0108】
第3領域a3の幅Aは、第1絶縁体61の第3内側面b31と第2絶縁体62の第4内側面b41との間の長さ(Y方向の長さ)である。第2領域a2の厚みB2は、第1,第2絶縁体61,62の底面と、第2主面10fとの間の長さ(Z方向の長さ)である。
【0109】
第1領域a1と第2領域a2とが同一の磁性材料から構成される場合、第1領域a1の厚みB1は第2領域a2の厚みB2に比べ小さいため、第1領域a1の磁気抵抗Rは第2領域a2の磁気抵抗Rよりも大きい。
【0110】
第1,第2絶縁体61,62の第1,第2ストレート配線21,22の第1、第2内側面b11,b21に接する部分の幅w3,w4は、第1,第2領域の厚みB1,B2および第3領域の幅Aよりも小さい。この場合、第1ストレート配線21と第2ストレート配線22との間の絶縁性をさらに高めることができる。また、素体10の第1領域a1および第2領域a2の非絶縁体部分の体積を確保できるため、インダクタンスの取得効率の高いインダクタアレイ部品1Aを提供することができる。
【0111】
第1,第2絶縁体61,62は、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、ビニルエーテル系樹脂またはこれらの混合物から構成されてもよい。第1,第2絶縁体61,62が上記樹脂(絶縁性有機樹脂)から構成されると、絶縁体61,62として所定の絶縁性有機樹脂を使用することにより第1ストレート配線21および第2ストレート配線22のうち少なくとも一方と素体10との密着力を向上させることができる。また、これら絶縁性有機樹脂は、無機系絶縁体に比べ柔らかいため、素体10に柔軟性を付与することができ、外部応力に対するインダクタアレイ部品1の機械的強度を高めることができる。
【0112】
(製造方法)
インダクタアレイ部品1Aは、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、フェライトなどの磁性体の焼結体からなる基板上に、樹脂を塗布して絶縁層を形成し、フォトリソグラフィなどにより、絶縁体61,62の底面部分に相当する部分が残るようにパターニングする。次に、パターニングされた絶縁層上にSAP工法などによりストレート配線21,22を形成する。次に、ストレート配線21,22を覆うように樹脂を塗布して絶縁層を形成し、フォトリソグラフィなどにより、ストレート配線21,22の周囲のみに絶縁層が残るようにパターニングする。次に、レーザ加工、研磨や研削などにより、パターニングされた絶縁層を削り、ストレート配線21,22の上面を露出させる。これにより、絶縁体61,62が形成される。なお、絶縁体61,62は樹脂の電着工法により形成してもよい。
【0113】
次に、ストレート配線21,22の露出した上面に、SAP工法などにより柱状配線31~34を形成する。次に、柱状配線31~34を形成した基材上に、磁性体を含有する樹脂からなる磁性樹脂シートを圧着し、磁性樹脂シートを研磨、研削などにより削り、柱状配線31~34を露出させる。これにより、第2磁性層12が形成される。次に、第1実施形態と同様にして、被覆層50及び外部端子41~44を形成する。さらに、基板の底面側を研磨、研削などにより削り、第1磁性層11を形成すれば、インダクタアレイ部品1Aが完成する。なお、第1磁性層11はフェライトの焼結体からなる基板ではなく、第2磁性層と同様に、磁性樹脂シートで形成してもよい。
【0114】
本開示は上述の実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。また、第1,第2実施形態の特徴的を様々に組み合わせてよい。例えば、第2実施形態のインダクタアレイ部品1Aは、フェライトの焼結体からなる素体を備えることができる。
【符号の説明】
【0115】
1,1A インダクタアレイ部品
10 素体
21 第1ストレート配線
22 第2ストレート配線
41 第1外部端子
42 第2外部端子
43 第3外部端子
44 第4外部端子
50 被覆層
61 第1絶縁体
62 第2絶縁体
a11,a12 第1領域
a21,a22 第2領域
a3 第3領域
A 第3領域の幅
B1 第1領域の厚み
B2 第2領域の厚み
T インダクタアレイ部品の厚み
t ストレート配線の厚み
w1 第1ストレート配線の幅
w2 第2ストレート配線の幅
図1A
図1B
図1C
図2