(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20221018BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20221018BHJP
H01G 4/232 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
H01F27/29 123
H01G4/30 201G
H01G4/30 516
H01G4/30 513
H01G4/30 201F
H01G4/232 B
(21)【出願番号】P 2019230017
(22)【出願日】2019-12-20
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087985
【氏名又は名称】福井 宏司
(72)【発明者】
【氏名】同前 友宏
(72)【発明者】
【氏名】松本 康夫
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特許第7031574(JP,B2)
【文献】特開2000-077253(JP,A)
【文献】特開2012-054330(JP,A)
【文献】特開平04-334007(JP,A)
【文献】特開平08-203769(JP,A)
【文献】特開平04-329891(JP,A)
【文献】特開平02-150009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/29
H01G 4/30
H01G 4/232
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品本体と、
前記部品本体から表面が露出するとともに、少なくとも銀及び銅の少なくとも一方を含む下地電極と、
前記下地電極の前記表面上に積層される合金めっき層と、
前記合金めっき層の表面上に積層されるニッケルめっき層と、を備え、
前記合金めっき層の材質は、ニッケル及び錫を含む合金であ
り、
前記合金めっき層のニッケルは、モル比において、錫の2.5倍以上3.5倍以下である
電子部品。
【請求項2】
部品本体と、
前記部品本体から表面が露出するとともに、少なくとも銀及び銅の少なくとも一方を含む下地電極と、
前記下地電極の前記表面上に積層される合金めっき層と、
前記合金めっき層の表面上に積層されるニッケルめっき層と、を備え、
前記合金めっき層の材質は、ニッケル及び錫を含む合金であり、
前記合金めっき層は、
化合物としてのNi
3Snを含む
電子部品。
【請求項3】
部品本体と、
前記部品本体から表面が露出するとともに、少なくとも銀及び銅の少なくとも一方を含む下地電極と、
前記下地電極の前記表面上に積層される合金めっき層と、
前記合金めっき層の表面上に積層されるニッケルめっき層と、を備え、
前記合金めっき層の材質は、ニッケル及び錫を含む合金であり、
前記下地電極は、ガラスを含む
電子部品。
【請求項4】
部品本体と、
前記部品本体から表面が露出するとともに、少なくとも銀及び銅の少なくとも一方を含む下地電極と、
前記下地電極の前記表面上に積層される合金めっき層と、
前記合金めっき層の表面上に積層されるニッケルめっき層と、を備え、
前記合金めっき層の材質は、ニッケル及び錫を含む合金であり、
前記下地電極のうち、少なくとも前記合金めっき層側の一部は、錫を含む
電子部品。
【請求項5】
前記合金めっき層の厚さは、0.3μm以上である
請求項1~請求項
4のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項6】
前記下地電極は、銀を含む
請求項1~請求項
5のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項7】
前記ニッケルめっき層の表面上には、錫めっき層又は金めっき層が積層されている
請求項1~請求項
6のいずれか1項に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の電子部品では、部品本体の表面上に、下地電極が積層されている。下地電極の材質は、銀を含んでいる。また、下地電極の表面上には、ニッケルめっき層が積層されている。さらに、ニッケルめっき層の表面上には、錫めっき層が積層されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような電子部品において、電子部品に過度の応力が加わると、下地電極からニッケルめっき層が剥がれる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本開示の電子部品の一態様は、部品本体と、前記部品本体から表面が露出するとともに、少なくとも銀及び銅の少なくとも一方を含む下地電極と、前記下地電極の前記表面上に積層される合金めっき層と、前記合金めっき層の表面上に積層されるニッケルめっき層と、を備え、前記合金めっき層の材質は、ニッケル及び錫を含む合金である電子部品である。
【0006】
上記構成によれば、下地電極とニッケルめっき層との間に、合金めっき層が介在している。そのため、下地電極とニッケルめっき層との界面を存在させずに、下地電極の表面側にニッケルめっき層を積層できる。また、合金めっき層が、下地電極とニッケルめっき層とのいずれにも密着性が相応に高いことで、層間での剥がれを抑制できる。
【発明の効果】
【0007】
下地電極からニッケルめっき層が剥がれることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、電子部品の一実施形態について説明する。なお、図面は理解を容易にするために構成要素を拡大して示している場合がある。構成要素の寸法比率は実際のものと、又は別の図中のものと異なる場合がある。
【0010】
図1に示すように、電子部品は、例えばインダクタ部品10である。インダクタ部品10は、部品本体20を備えている。部品本体20は、略直方体状となっている。図示は省略するが、部品本体20は、導電性材料で形成されたインダクタ配線を、磁性材料で形成された磁性体が覆うようにして構成されている。また、部品本体20は焼結体となっている。インダクタ配線は、磁性体の内部で延びており、インダクタ配線の第1端は、部品本体20の長手方向第1端側の端面において、磁性体から露出している。また、インダクタ配線の第2端は、部品本体の長手方向第2端側の端面において、磁性体から露出している。
【0011】
図1に示すように、部品本体20の長手方向において、中央より第1端側の表面には、電極部30が積層されている。また、同様に、部品本体20の長手方向において、中央より第2端側の表面には、電極部30が積層されている。すなわち、電極部30は、5つの面を覆ういわゆる5面電極となっている。2つの電極部30は、いずれも部品本体20の長手方向の中央にまでは至っていない。したがって、2つの電極部30は、互いに接触してなく、長手方向に離れている。
【0012】
図2に示すように、電極部30は、部品本体20側から順に、下地電極40と、合金めっき層50と、ニッケルめっき層60と、錫めっき層70と、を備えている。
部品本体20の表面には、下地電極40が積層されている。下地電極40の材質は、銀とガラスの混合体であり、部品本体20の磁性体よりも導電性が高い。なお、下地電極40の材質としては銀の他に銅であってもよい。図示は省略するが、下地電極40は、部品本体20のインダクタ配線と接続されている。下地電極40の表面の一部においてはガラスが露出しており、そのガラスの粒子が、部分的に突出している。また、下地電極40の表面の一部においては銀が露出しており、その銀の粒子が、部分的に突出している。そのため、下地電極40の表面は、微視的には凸凹している。さらに、下地電極40の表面側の一部には、錫が含まれている。
【0013】
下地電極40の表面には、合金めっき層50が積層されている。合金めっき層50は、下地電極40の表面全てを覆っている。合金めっき層50は、Ni
3Snとなっている。すなわち、合金めっき層50の合金は、ニッケル及び錫の合金であり、ニッケルと錫との組成比は、3:1である。よって、合金めっき層50のニッケルは、モル比において、錫の2.5倍以上3.5倍以下となっている。また、合金めっき層50の厚さは、0.3μm以上である。なお、
図2においては、合金めっき層50の厚さは、拡大して図示されている。合金めっき層50の厚さは、部品本体20の端面を含む部品本体20の長手方向に沿う断面において、部品本体20の稜線上を除いて、合金めっき層50の積層方向の寸法を3点測定し、これら3点の寸法の平均値として定められる。
【0014】
合金めっき層50の表面には、ニッケルめっき層60が積層されている。ニッケルめっき層60は、合金めっき層50の表面全てを覆っている。ニッケルめっき層60の材質は、ニッケルとなっている。そのため、本実施形態では、ニッケルめっき層60におけるニッケルの比率が略100%であり、合金めっき層50におけるニッケルの比率よりも大きくなっている。また、ニッケルめっき層60の厚さは、4.0μmである。なお、上でいうニッケルの比率が略100%とは、ニッケル以外に不純物程度の他の物質が含有されることを許容するものである。
【0015】
ニッケルめっき層60の表面には、錫めっき層70が積層されている。錫めっき層70は、ニッケルめっき層60の表面全てを覆っている。錫めっき層70の材質は、錫となっている。錫めっき層70の厚さは、6.0μmである。
【0016】
次に、インダクタ部品10の電極部30の成膜方法について説明する。
先ず、部品本体20の第1端部及び第2端部に、銀、ガラス及び有機溶媒からなる導電性ペーストを塗布し、高温とする焼付処理を行う。焼付処理により有機溶媒が揮発するとともに銀及びガラスが焼結される。これにより、銀及びガラスからなる下地電極40が、部品本体20の第1端部に積層される。
【0017】
次に、電解めっき法により下地電極40の表面に、合金めっき層50を形成する。具体的には、下地電極40が積層された部品本体20を、錫を溶解させたニッケルのめっき溶液に浸して、所定の電流を流すことで、下地電極40の表面に、合金めっき層50が積層される。また、下地電極40の表面側の一部には、錫を拡散させている。そのため、下地電極40の表面側の一部には、錫が含まれる部分が形成される。なお、合金めっき層50は、インダクタ部品10の製造工程における熱処理後には、Ni3Snとなっている。
【0018】
次に、電解めっき法により合金めっき層50の表面に、ニッケルめっき層60を形成する。具体的には、合金めっき層50が積層された部品本体20を、錫を溶解させていないニッケルのめっき溶液に浸して、所定の電流を流すことで、合金めっき層50の表面に、ニッケルめっき層60が積層される。
【0019】
そして、電解めっき法によりニッケルめっき層60の表面に、錫めっき層70を形成する。具体的には、ニッケルめっき層60が積層された部品本体20を、錫のめっき溶液に浸して、所定の電流を流すことで、ニッケルめっき層60の表面に、錫めっき層70が積層される。
【0020】
ここで、上述した電極部30の成膜方法によって、成膜した電極部30について、以下のように分析した。
先ず、
図2に示すように、インダクタ部品10の第1端側の端面に垂直な断面について、SEM(Scanning Electron Microscope:走査電子顕微鏡)画像を用いて観察した。そして、観察されたSEM画像の範囲について、EDX分析(Energy dispersive X-ray spectrometry:エネルギー分散型X線分析)を行うことにより、各層の組成を分析した。EDX分析によると、例えば、下地電極40には、銀が含まれており、下地電極40の合金めっき層50側の一部には、錫が含まれていることを確認できた。また、合金めっき層50には、ニッケルと錫とが含まれており、合金めっき層50のニッケルは、モル比において、錫の2.5倍以上3.5倍以下であることを確認できた。
【0021】
また、上述した合金めっき層50の化合物を特定するために、上述したEDX分析に加えて、粉末X線回折法を行うことにより、電極部30に含まれる物質の結晶構造を分析した。具体的には、インダクタ部品10の電極部30を削り取って、粉末状の試料にX線を照射させることで、回折ピークを検出した。次に、予め得られているデータベースにおける、EDX分析で得られた各層に含まれている元素及び各元素からなる化合物についての回折ピークと照合した。そして、検出された回折ピークと、データベースの回折ピークとを比較して、粉末に含まれる化合物を同定した。その結果、合金めっき層50の化合物は、Ni3Snであることを確認できた。
【0022】
なお、例えば、合金めっき層50の化合物を同定するうえでは、他の層を混在しないように粉末状の試料を準備することが好ましいが、合金めっき層50のみを削り取ることが困難である場合には、他の層が混在していてもよい。この場合、X線を照射させることで得られる回折ピークから、下地電極40や、ニッケルめっき層60、錫めっき層70由来のピークを除いた部分を分析することで、合金めっき層50が同定できる。またさらに、X線を照射させることで得られた回折ピークから、下地電極40や、ニッケルめっき層60、錫めっき層70由来の回折ピークを除いて、合金めっき層50由来の回折ピークを選択した際に、Ni3Sn由来の回折ピーク以外が存在する場合に、他の化合物が混在していることを確認できる。
【0023】
さらに、
図2に示すように、各層の積層方向に垂直な断面について、10000倍の倍率でSEM画像を測定した。そして、測定されたSEM画像の範囲において、各層の厚みは、各層の積層方向の寸法を3点測定し、これらの平均となっている。
【0024】
次に、インダクタ部品10の電極部30における層間の剥がれについて、以下のように評価した。
図3に示すように、インダクタ部品10の特性であるインダクタンス及びQ値を測定するために、測定装置80が用いられる。測定装置80の装置本体81には、2つの測定端子82が接続されている。測定端子82は、全体として棒状となっており、互いに平行に延びている。測定端子82の先端面は、先端側ほど測定端子82間の間隔が広がるように傾斜した傾斜面となっている。
【0025】
図4に示すように、インダクタンス及びQ値を測定する際には、2つの測定端子82を、所定の押圧力にてインダクタ部品10の電極部30に接触させて、インダクタ部品10のインダクタンス及びQ値を測定する。具体的には、電極部30の測定端子82に接触する面が変形する程度に測定端子82を電極部30に押し当てて、装置本体81から所定の電流を測定端子82間に流す。
【0026】
図5に示すように、インダクタンス及びQ値の測定を終えると、測定端子82をインダクタ部品10から離す。そして、インダクタンス及びQ値の測定を終えた後の試料について、電極部30における層間の剥がれの有無を断面観察によって評価する。具体的には、上記物性測定を終えたインダクタ部品10について、インダクタ部品10の断面観察を行った。この際に観察する断面は、インダクタ部品10の長手方向の中心軸線を通るとともに、測定端子82によって押圧される方向と平行な面である。
【0027】
ここで、上記の断面観察による電極部30における層間の剥がれの有無の試験について説明する。
先ず、合金めっき層50の厚さが異なるインダクタ部品10をそれぞれ所定のN数だけ用意し、上述したインダクタンス及びQ値を測定する。そして、インダクタンス及びQ値の測定を終えた後の試料について、電極部30における層間の剥がれの有無を評価した。
図6に示すように、合金めっき層50の厚さが0μm、すなわち、合金めっき層50が存在せず、電極部30が下地電極40と、ニッケルめっき層60と、錫めっき層70との3層構造となっている場合に、剥がれている割合である剥がれ不良率は23%となった。一方で、本実施形態の合金めっき層50の厚さが0.3μm、0.4μm、0.8μm及び1.1μmである場合には、剥がれ不良率は0%となった。よって、合金めっき層50が形成されている場合には、電極部30における層間剥がれは防止できた。さらに、合金めっき層50の厚さが0.3μm以上である場合には、電極部30における層間剥がれが全く発生していないことが確認できた。
【0028】
次に、上記実施形態の作用について説明する。
上記実施形態では、下地電極40の表面には、合金めっき層50が積層されており、合金めっき層50の表面にはニッケルめっき層60が積層されている。下地電極40の銀又は銅に対して、ニッケルめっき層60のニッケルの密着性は比較的に低い。ここで、合金めっき層50に含まれる錫は、銀及び銅に対して拡散しやすいと考えられる。また、錫は、ニッケルと比較的容易に合金を形成でき、ニッケルを比較的に多く含んだ合金めっき層50とニッケルからなるニッケルめっき層60とは親和性が比較的に高いため、密着性が相応に高いと考えられる。その結果、下地電極40とニッケルめっき層60との間に合金めっき層50が介在することで、密着性が比較的に低い銀とニッケルとの界面を減らすようにしている。
【0029】
次に、上記実施形態の効果について説明する。
(1)インダクタ部品10のインダクタンス及びQ値を測定する際には、上述したように、測定端子82がインダクタ部品10の電極部30に所定の押圧力にて接触される。そのため、インダクタ部品10は、測定時に、相応の応力が加えられる。
【0030】
仮に、インダクタ部品10の電極部30が、
図6に示すように、合金めっき層50を備えず、下地電極40と、ニッケルめっき層60と、錫めっき層70との3層構造となっている場合、測定装置80による特性測定が終わった後に、ニッケルめっき層60と錫めっき層70とが剥離する場合がある。上記実施形態によれば、合金めっき層50が、下地電極40とニッケルめっき層60との間に介在することで下地電極40とニッケルめっき層60との界面を存在させずに、下地電極40の表面側にニッケルめっき層60を積層できる。また、合金めっき層50が、下地電極40とニッケルめっき層60とのいずれにも密着性が相応に高いことで、層間での剥がれを抑制できる。
【0031】
(2)本実施形態によれば、合金めっき層50のニッケルは、モル比において、錫の2.5倍以上3.5倍以下となっている。そのため、ニッケルと錫との合金を比較的に製造しやすい組成比となっている。また、相応の量のニッケルが含まれていることにより、ニッケルめっき層60との密着性が高められていると考えられる。
【0032】
(3)本実施形態によれば、合金めっき層50は、Ni3Snとなっている。合金めっき層50は、ニッケルと錫との合金からなっており、主成分がニッケル及び錫となっている。そのため、不純物が過度に含まれることによる下地電極40とニッケルめっき層60との密着性への大きな影響を回避できる。
【0033】
(4)本実施形態によれば、合金めっき層50の厚さは、0.3μm以上である。そのため、特性測定による応力がインダクタ部品10に加わったときに、剥がれ不良率を大幅に低下できる。
【0034】
(5)本実施形態によれば、下地電極40は、銀を含んでいる。ニッケルめっき層60が、仮に銀の下地電極40の表面上に積層されているとすると、ニッケルめっき層60は、銀に対して特に剥がれやすいため、合金めっき層50の構成を適用するうえで好適である。
【0035】
(6)本実施形態によれば、下地電極40は、ガラスを含んでいる。そのため、下地電極40の表面が凸凹していることで、下地電極40と合金めっき層50との接触面積が大きくなり、合金めっき層50の下地電極40に対する密着性が高まる。
【0036】
(7)本実施形態によれば、下地電極40の合金めっき層50側の一部は、錫を含んでいる。そのため、下地電極40と合金めっき層50との密着性がさらに高まっている。これは、下地電極40と合金めっき層50とに、錫が拡散していることで、下地電極40と合金めっき層50との密着性が高まっているものと考えられる。
【0037】
(8)本実施形態によれば、ニッケルめっき層60の表面には、錫めっき層70が積層されている。そのため、インダクタ部品10にはんだ付けをする際の、はんだ濡れ性を確保しやすい。
【0038】
上記実施形態は以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態において、電子部品は、インダクタ部品10に限られない。例えば、コンデンサ部品や、サーミスタ部品であってもよい。少なくとも、電極部30の表面が露出する部品本体20を備えていればよい。
【0039】
・上記実施形態において、インダクタ配線とは、電流が流れた場合に磁性層に磁束を発生させることによって、インダクタ部品にインダクタンスを付与できるものであれば、どのようなものであってもよい。
【0040】
・上記実施形態において、部品本体20の形状は、上記実施形態の例に限られない。円柱状であってもよいし、多角形状であってもよいし、球状であってもよい。
・上記実施形態において、部品本体20の材質は、上記実施形態の例に限られない。例えば、非磁性体のガラスやアルミナ、樹脂であってもよい。
【0041】
・上記実施形態において、部品本体20は焼結体に限られず、樹脂を硬化させた成形体であってもよい。なお、部品本体20が焼結体である場合には、下地電極40との密着性が向上する。
【0042】
・上記実施形態において、下地電極40は部品本体20の表面に積層されてなくてもよい。下地電極40の表面が部品本体20から露出していれば、下地電極40が部品本体20に埋め込まれていてもよい。この場合、下地電極40の形状も問わない。
【0043】
・上記実施形態において、電極部30が積層される位置は、上記実施形態の例に限られない。例えば、長手方向の第1端側の端面及び第2端側の端面だけであってもよいし、長手方向の第1端側の端面と当該端面に接続する4つの面のうち1つの面とにまたがってL字状に配置されていてもよい。なお、下地電極40が部品本体20に埋め込まれており、下地電極40の表面が部品本体20から露出する場合における露出箇所についても同様である。
【0044】
・上記実施形態において、下地電極40の材質は、銀に限られない。例えば、下地電極40の材質は、銀とパラジウムとの合金であってもよいし、上述したように銅であってもよい。また、下地電極40の材質にガラスが含まれていなくてもよい。
【0045】
・上記実施形態において、下地電極40の合金めっき層50側の一部には、錫が含まれていなくてもよい。錫が拡散されていると、密着性を向上させることができるため好ましいが、例えば、下地電極40は全て銀であり、銀の上に合金めっき層50が積層されていても、剥がれを抑制する効果は得られる。
【0046】
・上記実施形態において、下地電極40は、部品本体20の第1端部及び第2端部を塗布してから焼付処理を行うことで形成したが、先ず、部品本体20の第1端部に導電性ペーストを塗布して焼付処理を行い、次に、部品本体20の第2端部に導電性ペーストを塗布して焼付処理を行ってもよい。
【0047】
・上記実施形態において、合金めっき層50のNi3Snは、インダクタ部品10の製造工程における熱処理によってNi3Snとなっているが、合金めっき層50を形成した際に、Ni3Snとなっていてもよい。
【0048】
・上記実施形態において、合金めっき層50には、Ni3Snと他の合金とが含まれていてもよい。例えば、Ni3Snに加えて他の組成比の合金が含まれていてもよい。
・上記実施形態において、合金めっき層50の合金は、Ni3Snに限られず、ニッケルと錫との合金であればよい。また、ニッケル及び錫に加えて他の元素が含まれていてもよい。なお、ニッケル及び錫に加えて他の元素が含まれていたとしても、合金めっき層50のニッケルは、モル比において、錫の2.5倍以上3.5倍以下であることもある。
【0049】
・上記実施形態において、合金めっき層50の厚さは、上記実施形態の例に限られない。例えば、合金めっき層50の厚さは、0.3μm未満であっても、剥がれ不良率を合金めっき層50の厚さが0.0μmの場合よりは減少させることができる。また、例えば合金めっき層50の厚さが5.0μm以下であれば、相応に合金めっき層50の厚さは相応に小さく、合金めっき層50を積層する製造工程における時間が過度に長くなることを抑制できる。
【0050】
・上記実施形態において、ニッケルめっき層60の厚さは、上記実施形態の例に限られない。ニッケルめっき層60の厚さは、2.5μm以上7.2μm以下であれば、錫めっき層70にはんだ付けによって下地電極40が溶けてしまうことを抑制できるとともに、インダクタ部品10が過度に大型化することを抑制する。
【0051】
・上記実施形態において、錫めっき層70の代わりに、ニッケルめっき層60の表面には、金めっき層が積層されていてもよいし、錫や金を含む合金のめっき層であってもよい。
【0052】
・上述した剥がれの評価例に限らず、電極部30の層間の剥がれは、他の方法によっても評価できる。例えば、熱をインダクタ部品10に与えることで熱応力を与えた後に、インダクタ部品10の断面観察を行うことで評価もできる。また、電極部30の層間の剥がれを抑制する効果は、電気的特性の測定を起因とする場合以外にも有効である。
【0053】
・電極部30の各層の化合物の同定は、上述した測定方法を用いるべきだが、上述した測定方法が使用できない場合に限っては、他の方法によっても行うことができる。例えば、X線光電分光法(XPS)によって、化合物の同定及び定量を行うことができる。
【符号の説明】
【0054】
10…インダクタ部品
20…部品本体
30…電極部
40…下地電極
50…合金めっき層
60…ニッケルめっき層
70…錫めっき層
80…測定装置
81…装置本体
82…測定端子