(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】検査装置及び検査方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20221018BHJP
G01R 31/50 20200101ALN20221018BHJP
【FI】
G01B11/00 B
G01R31/50
(21)【出願番号】P 2019562871
(86)(22)【出願日】2018-11-27
(86)【国際出願番号】 JP2018043597
(87)【国際公開番号】W WO2019130952
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2017253918
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】392019709
【氏名又は名称】日本電産リード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】岩見 功司
(72)【発明者】
【氏名】岸田 陽一
【審査官】九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-163902(JP,A)
【文献】特開2012-225710(JP,A)
【文献】米国特許第5150041(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00
G01R 31/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一面と第二面とを備えた薄板状の検査対象物である被検査基板を、前記第一面側から近接する第一治具と、前記第二面側から近接する第二治具と、で挟み込んで導通検査を行う検査装置であって、
前記第一治具と一体的に、前記第二治具側に向けて固定される、第一測距センサと、
前記第二治具と一体的に、前記第一治具側に向けて固定される、第二測距センサと、
前記第一測距センサで計測した前記第一面までの距離である第一基板距離と、前記第一測距センサで計測した前記第二治具までの距離である第二治具距離と、に基づいて、前記第二治具と前記第一面との距離である第二距離を算出する、第二距離算出部と、
前記第二測距センサで計測した前記第二面までの距離である第二基板距離と、前記第二測距センサで計測した前記第一治具までの距離である第一治具距離と、に基づいて、前記第一治具と前記第二面との距離である第一距離を算出する、第一距離算出部と、
前記第一距離及び前記第二距離に基づいて、前記第一治具及び前記第二治具の、前記被検査基板に対する変位量を設定する、変位量設定部と、を備える、検査装置。
【請求項2】
前記被検査基板の高さ位置データと、前記第一治具及び前記第二治具の高さ位置データと、に基づいて、前記第一治具及び前記第二治具の、前記被検査基板に対する初期変位量を設定する、初期設定部を備え、
前記変位量設定部は、前記初期変位量と、前記第一距離及び前記第二距離と、に基づいて、前記第一治具及び前記第二治具の、前記被検査基板に対する変位量を設定する、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記第二距離算出部は、前記第一基板距離と前記第二治具距離との差分により、前記第二距離を算出し、
前記第一距離算出部は、前記第二基板距離と前記第一治具距離との差分により、前記第一距離を算出する、請求項1又は請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記第一治具及び前記第二治具の先端部にはそれぞれ、平面視で矩形状に形成された検査面が備えられ、
前記第二距離算出部は、前記第一測距センサで計測した前記第二治具の検査面における四隅までの距離の平均値で前記第二治具距離を算出し、
前記第一距離算出部は、前記第二測距センサで計測した前記第一治具の検査面における四隅までの距離の平均値で前記第一治具距離を算出する、請求項1から請求項3の何れか1項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記被検査基板には、一対の第一単位領域及び第二単位領域が複数対形成され、前記第二単位領域は、対応する前記第一単位領域に対して平面視で180度反転されて点対称に配置され、
前記第一治具と前記第二治具とが通常の姿勢で挟み込んで前記第一単位領域を導通検査する第一の検査と、前記第一治具と前記第二治具とを平面視で180度反転させた姿勢で挟み込んで前記第二単位領域を導通検査する第二の検査と、を行う検査装置であって、
前記第二距離算出部は、前記第一の検査の際には、前記通常の姿勢の前記第二治具までの距離を計測した前記第二治具距離に基づいて前記第二距離を算出し、前記第二の検査の際には、前記反転させた姿勢の前記第二治具までの距離を計測した前記第二治具距離に基づいて前記第二距離を算出し、
前記第一距離算出部は、前記第一の検査の際には、前記通常の姿勢の前記第一治具までの距離を計測した前記第一治具距離に基づいて前記第一距離を算出し、前記第二の検査の際には、前記反転させた姿勢の前記第一治具までの距離を計測した前記第一治具距離に基づいて前記第一距離を算出する、請求項1から請求項4の何れか1項に記載の検査装置。
【請求項6】
前記第一治具及び前記第一測距センサと、前記第二治具及び前記第二測距センサとは、前記第一治具と前記第二治具とを結ぶ直線と直交する方向視で互いに180度反転させた位置に設けられ、前記第一測距センサと前記第二測距センサとにより、前記第一治具距離及び前記第二治具距離の計測を同時に行う、請求項1又は請求項5の何れか1項に記載の検査装置。
【請求項7】
第一面と第二面とを備えた薄板状の検査対象物である被検査基板を、前記第一面側から近接する第一治具と、前記第二面側から近接する第二治具と、で挟み込んで導通検査をする検査装置で行う検査方法であって、
前記検査装置は、前記第一治具と一体的に、前記第二治具側に向けて固定される、第一測距センサと、前記第二治具と一体的に、前記第一治具側に向けて固定される、第二測距センサと、を備え、
前記第一測距センサで計測した前記第一面までの距離である第一基板距離と、前記第一測距センサで計測した前記第二治具までの距離である第二治具距離と、に基づいて、前記第二治具と前記第一面との距離である第二距離を算出する、第二距離算出工程と、
前記第二測距センサで計測した前記第二面までの距離である第二基板距離と、前記第二測距センサで計測した前記第一治具までの距離である第一治具距離と、に基づいて、前記第一治具と前記第二面との距離である第一距離を算出する、第一距離算出工程と、
前記第一距離及び前記第二距離に基づいて、前記第一治具及び前記第二治具の、前記被検査基板に対する変位量を設定する、変位量設定工程と、を備える、検査方法。
【請求項8】
前記被検査基板の高さ位置データと、前記第一治具及び前記第二治具の高さ位置データと、に基づいて、前記第一治具及び前記第二治具の、前記被検査基板に対する初期変位量を設定する、初期設定工程を備え、
前記変位量設定工程において、前記初期変位量と、前記第一距離及び前記第二距離と、に基づいて、前記第一治具及び前記第二治具の、前記被検査基板に対する変位量を設定する、請求項7に記載の検査方法。
【請求項9】
前記第二距離算出工程では、前記第一基板距離と前記第二治具距離との差分により、前記第二距離を算出し、
前記第一距離算出工程では、前記第二基板距離と前記第一治具距離との差分により、前記第一距離を算出する、請求項7又は請求項8に記載の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は検査装置及び検査方法に関し、詳細には、薄板状の被検査基板を検査治具で両面側から挟み込んで導通検査を行う検査装置及び検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被検査基板であるプリント基板に形成された配線パターンに検査治具のプローブを接触させて、配線パターンを導通検査する検査装置が知られている。これらの検査装置においては、上側の検査治具と下側の検査治具との間に被検査基板を配置し、それぞれの検査治具で被検査基板を挟み込むことによってプローブを被検査基板に当接させている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
上記のような検査装置において、各検査治具を被検査基板に近接させる際の変位量(距離)の設定に際しては、被検査基板の高さ位置に関するデータを検査装置に入力し、当該データと、予め設定されている各検査治具の高さ位置データに基づいて各検査治具の変位量を設定する。そして、各検査治具が被検査基板に当接した際に受ける反力をフィードバックすることにより、検査装置が各検査治具の変位量を制御していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
上記の如く構成された検査装置においては、被検査基板の種類毎に、被検査基板の固定高さや検査治具の大きさも異なる。このため、被検査基板の種類を変更して検査を行う際に、検査精度にばらつきが生じる可能性が生じていた。
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、被検査基板の種類を変更して検査を行う場合でも、高い検査精度を確保することのできる検査装置及び検査方法を提供することである。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、以下に構成する検査装置及び検査方法を提供する。
【0008】
本発明の一例に係る検査装置は、第一面と第二面とを備えた薄板状の検査対象物である被検査基板を、前記第一面側から近接する第一治具と、前記第二面側から近接する第二治具と、で挟み込んで導通検査を行う検査装置であって、前記第一治具と一体的に、前記第二治具側に向けて固定される、第一測距センサと、前記第二治具と一体的に、前記第一治具側に向けて固定される、第二測距センサと、前記第一測距センサで計測した前記第一面までの距離である第一基板距離と、前記第一測距センサで計測した前記第二治具までの距離である第二治具距離と、に基づいて、前記第二治具と前記第一面との距離である第二距離を算出する、第二距離算出部と、前記第二測距センサで計測した前記第二面までの距離である第二基板距離と、前記第二測距センサで計測した前記第一治具までの距離である第一治具距離と、に基づいて、前記第一治具と前記第二面との距離である第一距離を算出する、第一距離算出部と、前記第一距離及び前記第二距離に基づいて、前記第一治具及び前記第二治具の、前記被検査基板に対する変位量を設定する、変位量設定部と、を備えるものである。
【0009】
また、本発明の一例に係る検査方法は、第一面と第二面とを備えた薄板状の検査対象物である被検査基板を、前記第一面側から近接する第一治具と、前記第二面側から近接する第二治具と、で挟み込んで導通検査をする検査装置で行う検査方法であって、前記検査装置は、前記第一治具と一体的に、前記第二治具側に向けて固定される、第一測距センサと、前記第二治具と一体的に、前記第一治具側に向けて固定される、第二測距センサと、を備え、前記第一測距センサで計測した前記第一面までの距離である第一基板距離と、前記第一測距センサで計測した前記第二治具までの距離である第二治具距離と、に基づいて、前記第二治具と前記第一面との距離である第二距離を算出する、第二距離算出工程と、前記第二測距センサで計測した前記第二面までの距離である第二基板距離と、前記第二測距センサで計測した前記第一治具までの距離である第一治具距離と、に基づいて、前記第一治具と前記第二面との距離である第一距離を算出する、第一距離算出工程と、前記第一距離及び前記第二距離に基づいて、前記第一治具及び前記第二治具の、前記被検査基板に対する変位量を設定する、変位量設定工程と、を備えるものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る検査装置において被検査基板までの距離を計測している状態を示す概略図。
【
図3】検査装置において対向する治具までの距離を計測している状態を示す概略図。
【
図4】検査装置においてワークの支持面までの距離を計測している状態を示す概略図。
【
図5】検査装置において治具から被検査基板までの距離を示す概略図。
【
図6】検査装置において治具の変位量を示す概略図。
【
図7】治具を反転させた状態の検査装置を示す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<検査装置1>
以下、本発明の一実施形態に係る検査装置1の全体構成について、
図1を用いて説明する。
図1に示す検査装置1は、薄板状の検査対象物である被検査基板(以下、単に「基板」と記載する)100に形成された配線パターンを検査するための装置である。基板100は、第一面である上面101と、第二面である下面102と、を備えており、上面101と下面102とのそれぞれに配線パターンが形成されている。
図1においては、検査装置1の紙面左右方向をX軸方向、紙面奥行き方向をY軸方向、紙面上下方向をZ軸方向として方向を示している。
【0012】
基板100は、例えばフレキシブル基板、ガラスエポキシ等のリジッド基板、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ用の電極板、及び半導体パッケージ用のパッケージ基板やフィルムキャリアなど種々の基板であってもよい。本実施形態における基板100は、将来的に分離される複数の単位基板の集合体である組基板として形成されている。本実施形態では
図2に示す如く、基板100においてそれぞれの単位基板を形成する領域を「第一単位領域Rf・第二単位領域Rr」と記載する。基板100においては一対の第一単位領域Rf及び第二単位領域Rrが複数対形成されている。また、第二単位領域Rrは、隣接して対応する第一単位領域Rfに対して平面視で(Z軸回りに)180度反転されて点対称に配置されている。なお、検査装置1の検査対象物としては、組基板ではない基板を用いることも可能である。
【0013】
基板100において、それぞれの第一・第二単位領域Rf・Rrには同一の配線パターンが形成されている。また、それぞれの第一・第二単位領域Rf・Rrには、配線パターンの導通、断線、短絡等を検査するための検査点が設定されており、検査点として、配線パターンの所定箇所、パッド、ランド、電極等が適宜設定されている。
【0014】
図1に示す検査装置1は、検査装置本体2と、検査治具である第一治具31及び第二治具32と、を備えている。第一治具31と第二治具32とは互いに対向する位置に設けられる。すなわち、検査装置本体2は、検査装置1から第一・第二治具31・32を取り外した部分に相当している。それぞれの第一・第二治具31・32の先端部には、図示しないプローブを有して平面視で矩形状に形成された検査面31P・32Pが備えられている。本実施形態において、第一治具31は基板100の上方から上面101に近接し、第二治具32は基板100の下方から下面102に近接するように構成されている。
【0015】
検査装置本体2は、検査部4U・4D、検査治具駆動機構5U・5D、基板固定装置6、検査部駆動機構7U・7D、制御部9、及びこれらの各部を収容する筐体8を主に備えている。基板固定装置6は、検査対象の基板100を所定の位置に固定するように構成されている。基板固定装置6は、筐体8に支持されるワーク支持部61と、ワーク支持部61に対して回動可能とされるクランプ部62とを備える。
図1に示す如く、基板固定装置6は、ワーク支持部61の上面に形成されたワーク支持面6c(
図3を参照)に基板100が載置された状態で、ワーク支持部61とクランプ部62とで基板100を挟持することにより、基板100を固定する。本実施形態において、基板100は平面視で矩形状に形成されており、基板固定装置6は基板100の四箇所の被クランプ部100c(
図2を参照)を挟持することにより基板100を固定している。
【0016】
制御部9は、例えばプローブに検査用の電流や電圧を供給する電源回路、プローブで検出された電圧又は電流信号を検出する検出回路、及びマイクロコンピュータ等を用いて構成されており、所定の制御プログラムを実行することによって、検査装置1の各部の動作を制御し、基板100の検査を実行する。制御部9は、プローブを介して例えば各検査点に電圧又は電流を供給し、プローブによって各検査点から検出された電圧信号又は電流信号を検出し、これら検出値や検出値から算出された抵抗値等を予め記憶された基準値と比較することによって、基板100の導通検査を行う。制御部9は
図1に示す如く、初期設定部90、第一距離算出部91、第二距離算出部92、及び、変位量設定部93を備える。制御部9を構成する各部は、後述する検査方法で行う各工程に対応する演算を実行する。
【0017】
検査部4Uは、基板固定装置6に固定された基板100の上方に位置し、第一治具31が組付けられる。検査部4Dは、基板固定装置6に固定された基板100の下方に位置し、第二治具32が組付けられる。検査部駆動機構7Uは検査部4UをX軸方向とY軸方向とに移動させる移動機構である。検査部駆動機構7Dは検査部4DをX軸方向とY軸方向とに移動させる移動機構である。検査部駆動機構7U・7Dは、制御部9からの制御信号に応じて検査部4U・4DをX-Y平面上の任意の位置に移動可能にされている。以下、検査部駆動機構7U・7Dを総称して検査部駆動機構7と称する。
【0018】
検査部4Uと検査部4Dとは、上下反転していること以外は同様に構成されているので、以下検査部4U・4Dを総称して検査部4と称し、検査治具駆動機構5U・5Dを総称して検査治具駆動機構5と称し、第一・第二治具31・32を総称して検査治具3と称し、以下、総称により検査部4U・4Dの各部の構成について一括して説明する。
【0019】
検査治具駆動機構5は、検査装置本体2に対してX軸方向に検査治具3を移動させるX治具駆動部5Xと、X治具駆動部5Xに連結されて検査治具3をY軸方向に移動させるY治具駆動部5Yと、Y治具駆動部5Yに連結されて検査治具3をZ軸回りに回転移動させるθ治具駆動部5θと、θ治具駆動部5θに連結されて検査治具3をZ軸方向に移動させるZ治具駆動部5Zとで構成されている。
【0020】
これにより、検査治具駆動機構5は、制御部9からの制御信号に応じて、検査治具3を基板100に対して相対的に位置決めしたり、検査治具3を上下方向(Z軸方向)に昇降させて検査治具3に取り付けられプローブを基板100に形成された配線パターン上の検査点に対して接触させたり、離間させたりすることができるように構成されている。
【0021】
上記の如く構成された検査装置1においては、検査治具駆動機構5を駆動させることにより、第一治具31を基板100の上方から上面101に近接させ、第二治具32を基板100の下方から下面102に近接させる。そして、第一治具31と第二治具32とで基板100を挟み込み、第一治具31の検査面31Pを上面101に当接させ、第二治具32の検査面32Pを下面102に当接させた状態で導通検査を行う。本実施形態において、第一・第二治具31・32による導通検査は基板100の単位領域ごとに行われる。なお、本実施形態に係る検査装置1においては、第一治具31と第二治具32とを基板100に接触させて検査を行う構成としているが、各治具を基板に接触させずに、非接触で検査を行う構成とすることも可能である。
【0022】
本実施形態に係る基板100においては、対応する単位領域Rfと単位領域Rrとを平面視で(Z軸回りに)180度反転させて点対称に配置している。検査装置1でこのような基板100を検査する場合、
図1から
図6に示す如く第一・第二治具31・32を用いて通常の姿勢で単位領域Rfの検査(第一の検査)をした後に、
図7に示す如く第一・第二治具31・32を平面視で180度回転して単位領域Rrの検査(第二の検査)を行う。
【0023】
図1に示す如く、第一治具31には第二治具32側である下方に向けて第一測距センサ11が固定されている。また、第二治具32には、第一治具31側である上方に向けて第二測距センサ12が固定されている。本実施形態において、第一測距センサ11及び第二測距センサ12には赤外線センサ等の光学式センサが採用されている。
【0024】
本実施形態に係る検査装置1においては
図1に示す如く、第一測距センサ11は第一治具31の左側方に配置され、第二測距センサ12は第二治具32の右側方に配置されている。即ち、第一治具31及び第一測距センサ11と、第二治具32及び第二測距センサ12とは、正面視で(Y軸回りに)互いに180度反転させた位置関係となるように設けられている。
【0025】
<検査方法(第一実施例)>
次に、本実施形態に係る検査装置1を用いた検査方法のうち、第一実施例について説明する。検査装置1においては、基板100の種類を変更する際に、第一・第二治具31・32から基板100(詳細には上面101及び下面102)までの距離である、第一・第二治具31・32の変位量の設定が行われる。以下、第一・第二治具31・32の変位量を設定する手法について説明する。
【0026】
検査装置1において、基板100の種類を変更する場合、第一治具31及び第二治具32も基板100の種類に対応して変更される。この際、
図3に示す如く、第一測距センサ11により、第二治具32の検査面32Pまでの距離である第二治具距離Dj2を予め計測しておく。また、第二測距センサ12により、第一治具31の検査面31Pまでの距離である第一治具距離Dj1を予め計測しておく。本実施形態において、第一治具距離Dj1及び第二治具距離Dj2の計測に際しては、それぞれの検査面31P・32Pにおける四隅までの距離の平均値を算出している。これにより、検査装置1における第一治具距離Dj1及び第二治具距離Dj2の計測精度を向上させている。
【0027】
本実施形態に係る検査装置1においては
図1に示す如く、第一治具31及び第一測距センサ11と、第二治具32及び第二測距センサ12とは、正面視(第一治具31と第二治具32とを結ぶ直線と直交する方向視)で互いに180度反転させた位置関係となるように設けられている。このため、第一測距センサ11と第二測距センサ12とにより、第一治具距離Dj1及び第二治具距離Dj2の計測を同時に行うことができ、検査装置1における検査効率を向上させることが可能となる。
【0028】
また、
図4に示す如く、第一測距センサ11により、ワーク支持部61のワーク支持面6cまでの距離を計測することにより、第一測距センサ11と基板100の下面102との距離であるクランプ距離Dcを予め算出しておく。本実施形態において、クランプ距離Dcの算出は、四個のワーク支持面6cの高さの位置関係に基づいて、それぞれの第一・第二単位領域Rf・Rrごとに行われる。具体的には、X方向に隣り合う二個のワーク支持面6c・6cを結んだ直線上で、当該単位領域のX座標に位置する二点の高さをそれぞれ算出する。その後、この二点を結んだ直線上で、当該単位領域のY座標に位置する点の高さを算出することにより、当該単位領域におけるクランプ距離Dcを算出する。
【0029】
本実施例のように、第一・第二治具31・32を反転させた第二の検査を行う必要のある基板100を検査対象とする場合、第一の検査のために、通常の姿勢における第一・第二治具31・32までの距離である第一治具距離Dj1及び第二治具距離Dj2を計測し、第二の検査のために、第一・第二治具31・32を平面視で180度回転させた状態での第一治具距離Dj1及び第二治具距離Dj2も計測する。これにより、検査装置1において第一・第二治具31・32を反転させて検査を行う場合の検査精度を向上させることを可能としている。
【0030】
さらに、検査装置1において基板100の導通検査を開始する際に、
図1に示す如く、第一測距センサ11により、基板100の上面101までの距離である第一基板距離Db1を計測する。また、第二測距センサ12により、基板100の下面102までの距離である第二基板距離Db2を計測する。第一基板距離Db1及び第二基板距離Db2の計測に際しては、基板100におけるそれぞれの第一・第二単位領域Rf・Rrごとに計測される。
【0031】
そして、第二距離算出部92が、第一基板距離Db1と、第二治具距離Dj2と、に基づいて、第二治具32の検査面32Pと上面101との距離である第二距離D2を算出する(第二距離算出工程)。具体的には、第一基板距離Db1と、第二治具距離Dj2と、の差分により、第二治具32の検査面32Pと上面101との距離である第二距離D2を算出するのである(
図5を参照)。
【0032】
また、第一距離算出部91が、第二基板距離Db2と、第一治具距離Dj1と、に基づいて、第一治具31の検査面31Pと下面102との距離である第一距離D1を算出する(第一距離算出工程)。具体的には、第二基板距離Db2と、第一治具距離Dj1と、の差分により、第一治具31の検査面31Pと下面102との距離である第一距離D1を算出するのである(
図5を参照)。
【0033】
さらに、変位量設定部93が、第一距離D1及び第二距離D2に基づいて、第一治具31及び第二治具32の基板100に対する変位量である第一変位量M1及び第二変位量M2(
図6を参照)を設定する(変位量設定工程)。具体的には、第一基板距離Db1とクランプ距離Dcとの差分により、第一・第二単位領域Rf・Rrごとに基板厚さTbを算出する。そして、第一距離D1と基板厚さTbとの差分により、基板100に対する第一治具31の変位量である第一変位量M1を算出するのである。また、第二距離D2と基板厚さTbとの差分により、基板100に対する第二治具32の変位量である第二変位量M2を算出するのである。なお、第二治具距離Dj2とクランプ距離Dcとの差分により第二変位量M2を算出することも可能である。また、基板厚さTbとして、第一基板距離Db1とクランプ距離Dcとより算出した値でなく、基板100の厚さの設計値を採用することも可能である。
【0034】
本実施形態に係る検査装置1においては、基板100の種類を変更する際に、実際の第一治具31及び第二治具32の基板100に対する位置関係に基づいて、第一変位量M1及び第二変位量M2を設定している。このため、基板100の固定高さや検査治具の大きさが変わった場合でも、第一治具31及び第二治具32と基板100との実際の距離に対応して第一治具31及び第二治具32を変位させることができる。即ち、本実施形態に係る検査装置1によれば、基板100種類を変更して検査を行う場合でも、高い検査精度を確保することが可能となるのである。
【0035】
<検査方法(第二実施例)>
次に、本実施形態に係る検査装置1を用いた検査方法のうち、第二実施例について説明する。本実施例における検査方法においては、前記第一実施例に係る検査方法と異なる部分を中心に説明する。
【0036】
本実施例においては、第一・第二治具31・32の変位量の設定の前に、初期設定部90が、基板100の高さ位置データと、第一・第二治具31・32の高さ位置データと、に基づいて、基板100に対する第一治具31の初期変位量Md1、及び、・基板100に対するの第二治具32の初期変位量Md2を設定する(初期設定工程)。
【0037】
具体的には、検査部4Dに、第二治具32と同じ高さ位置になるようにプリセットゲージを設置する。そして、基板固定装置6に基板100を固定した状態で、検査部4Dを正のZ方向に変位させて、プリセットゲージの上面が下面102に当接するまでの検査部4Dの変位量を測定し、この変位量を初期変位量Md2として設定するのである。なお、初期変位量Md2の設定に際しては、下面102までの変位量ではなく、ワーク支持部61の下面までの変位量に、ワーク支持部61の厚さを加えたものを初期変位量Md2とすることも可能である。
【0038】
さらに、検査部4Uに、第一治具31と同じ高さ位置になるように基準治具を設置する。そして、検査部4Dに設置したプリセットゲージの上面が下面102と同じ高さになるように検査部4Dを変位させた状態で、検査部4Uを負のZ方向に変位させて、基準治具の下面がプリセットゲージの上面に当接するまでの検査部4Uの変位量を測定する。さらに、この変位量から基板100の厚さ(設計値)を減じた値を初期変位量Md1として設定するのである。
【0039】
なお、初期変位量Md1・Md2の設定に関しては、上記と異なる手法を採用することも可能である。例えば、検査部4U及び検査部4Dに、第一治具31及び第二治具32と同じ高さ位置になるようにそれぞれ基準治具を設置し、基板100との距離をブロックゲージで測定した値を初期変位量Md1・Md2とすることも可能である。また、基準治具を同様に設置し、基板100との距離を二点間距離ゲージで測定した値を初期変位量Md1・Md2とすることも可能である。
【0040】
次に、前記実施例と同様に、第二距離算出部92が、第一基板距離Db1と、第二治具距離Dj2と、に基づいて、第二治具32の検査面32Pと上面101との距離である第二距離D2を算出する(第二距離算出工程)。また、第一距離算出部91が、第二基板距離Db2と、第一治具距離Dj1と、に基づいて、第一治具31の検査面31Pと下面102との距離である第一距離D1を算出する(第一距離算出工程)。
【0041】
そして、本実施例においては、変位量設定部93が、初期設定部90で設定された初期変位量Md1・Md2と、第一距離D1及び第二距離D2に基づいて、第一治具31及び第二治具32の基板100に対する変位量である第一変位量M1及び第二変位量M2を設定する(変位量設定工程)。具体的には、初期変位量Md1と、第一距離D1と基板厚さTbとの差分と、を比較し、その乖離量に応じて基板100に対する第一治具31の変位量である第一変位量M1を設定するのである。また、初期変位量Md2と、第二距離D2と基板厚さTbとの差分と、を比較し、その乖離量に応じて基板100に対する第二治具32の変位量である第二変位量M2を設定するのである。
【0042】
本実施例に係る検査方法においては、基板100の種類を変更する際に、第一治具31及び第二治具32を基板100に近接させるために設定した初期変位量Md1・Md2を、第一治具31及び第二治具32と基板100との実際の距離に基づいて調整することができる。即ち、本実施例に係る検査方法によれば、基板100種類を変更して検査を行う場合でも、高い検査精度を確保することが可能となるのである。
【0043】
上記の如く、本発明の一例に係る検査装置は、第一面と第二面とを備えた薄板状の検査対象物である被検査基板を、前記第一面側から近接する第一治具と、前記第二面側から近接する第二治具と、で挟み込んで導通検査を行う検査装置であって、前記第一治具と一体的に、前記第二治具側に向けて固定される、第一測距センサと、前記第二治具と一体的に、前記第一治具側に向けて固定される、第二測距センサと、前記第一測距センサで計測した前記第一面までの距離である第一基板距離と、前記第一測距センサで計測した前記第二治具までの距離である第二治具距離と、に基づいて、前記第二治具と前記第一面との距離である第二距離を算出する、第二距離算出部と、前記第二測距センサで計測した前記第二面までの距離である第二基板距離と、前記第二測距センサで計測した前記第一治具までの距離である第一治具距離と、に基づいて、前記第一治具と前記第二面との距離である第一距離を算出する、第一距離算出部と、前記第一距離及び前記第二距離に基づいて、前記第一治具及び前記第二治具の、前記被検査基板に対する変位量を設定する、変位量設定部と、を備えるものである。
【0044】
この構成によれば、検査治具と被検査基板との実際の距離に基づいて各検査治具を被検査基板に近接させる際の変位量を設定することができるため、高い検査精度を確保することが可能となる。
【0045】
また、前記被検査基板の高さ位置データと、前記第一治具及び前記第二治具の高さ位置データと、に基づいて、前記第一治具及び前記第二治具の、前記被検査基板に対する初期変位量を設定する、初期設定部を備え、前記変位量設定部は、前記初期変位量と、前記第一距離及び前記第二距離と、に基づいて、前記第一治具及び前記第二治具の、前記被検査基板に対する変位量を設定するものである。
【0046】
この構成によれば、各検査治具を被検査基板に近接させるために設定した初期変位量を、検査治具と被検査基板との実際の距離に基づいて調整することができるため、高い検査精度を確保することが可能となる。
【0047】
また、前記第二距離算出部は、前記第一基板距離と前記第二治具距離との差分により、前記第二距離を算出し、前記第一距離算出部は、前記第二基板距離と前記第一治具距離との差分により、前記第一距離を算出することが好ましい。
【0048】
この構成によれば、検査治具と被検査基板との実際の距離に基づいて各検査治具を被検査基板に近接させる際の変位量を設定することができるため、高い検査精度を確保することが可能となる。
【0049】
また、前記第一治具及び前記第二治具の先端部にはそれぞれ、平面視で矩形状に形成された検査面が備えられ、前記第二距離算出部は、前記第一測距センサで計測した前記第二治具の検査面における四隅までの距離の平均値で前記第二治具距離を算出し、前記第一距離算出部は、前記第二測距センサで計測した前記第一治具の検査面における四隅までの距離の平均値で前記第一治具距離を算出することが好ましい。
【0050】
この構成によれば、第一治具距離及び第二治具距離の計測精度を向上させることが可能となる。
【0051】
また、前記被検査基板には、一対の第一単位領域及び第二単位領域が複数対形成され、前記第二単位領域は、対応する前記第一単位領域に対して平面視で180度反転されて点対称に配置され、前記第一治具と前記第二治具とが通常の姿勢で挟み込んで前記第一単位領域を導通検査する第一の検査と、前記第一治具と前記第二治具とを平面視で180度反転させた姿勢で挟み込んで前記第二単位領域を導通検査する第二の検査と、を行う検査装置であって、前記第二距離算出部は、前記第一の検査の際には、前記通常の姿勢の前記第二治具までの距離を計測した前記第二治具距離に基づいて前記第二距離を算出し、前記第二の検査の際には、前記反転させた姿勢の前記第二治具までの距離を計測した前記第二治具距離に基づいて前記第二距離を算出し、前記第一距離算出部は、前記第一の検査の際には、前記通常の姿勢の前記第一治具までの距離を計測した前記第一治具距離に基づいて前記第一距離を算出し、前記第二の検査の際には、前記反転させた姿勢の前記第一治具までの距離を計測した前記第一治具距離に基づいて前記第一距離を算出することが好ましい。
【0052】
この構成によれば、検査装置において治具を反転させて検査を行う場合の検査精度を向上させることが可能となる。
【0053】
また、前記第一治具及び前記第一測距センサと、前記第二治具及び前記第二測距センサとは、前記第一治具と前記第二治具とを結ぶ直線と直交する方向視で互いに180度反転させた位置に設けられ、前記第一測距センサと前記第二測距センサとにより、前記第一治具距離及び前記第二治具距離の計測を同時に行うことが好ましい。
【0054】
この構成によれば、検査装置における検査効率を向上させることが可能となる。
【0055】
また、本発明の一例に係る検査方法は、第一面と第二面とを備えた薄板状の検査対象物である被検査基板を、前記第一面側から近接する第一治具と、前記第二面側から近接する第二治具と、で挟み込んで導通検査をする検査装置で行う検査方法であって、前記検査装置は、前記第一治具と一体的に、前記第二治具側に向けて固定される、第一測距センサと、前記第二治具と一体的に、前記第一治具側に向けて固定される、第二測距センサと、を備え、前記第一測距センサで計測した前記第一面までの距離である第一基板距離と、前記第一測距センサで計測した前記第二治具までの距離である第二治具距離と、に基づいて、前記第二治具と前記第一面との距離である第二距離を算出する、第二距離算出工程と、前記第二測距センサで計測した前記第二面までの距離である第二基板距離と、前記第二測距センサで計測した前記第一治具までの距離である第一治具距離と、に基づいて、前記第一治具と前記第二面との距離である第一距離を算出する、第一距離算出工程と、前記第一距離及び前記第二距離に基づいて、前記第一治具及び前記第二治具の、前記被検査基板に対する変位量を設定する、変位量設定工程と、を備えるものである。
【0056】
この構成によれば、検査治具と被検査基板との実際の距離に基づいて各検査治具を被検査基板に近接させる際の変位量を設定することができるため、高い検査精度を確保することが可能となる。
【0057】
また、前記被検査基板の高さ位置データと、前記第一治具及び前記第二治具の高さ位置データと、に基づいて、前記第一治具及び前記第二治具の、前記被検査基板に対する初期変位量を設定する、初期設定工程を備え、前記変位量設定工程において、前記初期変位量と、前記第一距離及び前記第二距離と、に基づいて、前記第一治具及び前記第二治具の、前記被検査基板に対する変位量を設定するものである。
【0058】
この構成によれば、各検査治具を被検査基板に近接させる際に設定した初期変位量を、検査治具と被検査基板との実際の距離に基づいて調整することができるため、高い検査精度を確保することが可能となる。
【0059】
また、前記第二距離算出工程では、前記第一基板距離と前記第二治具距離との差分により、前記第二距離を算出し、前記第一距離算出工程では、前記第二基板距離と前記第一治具距離との差分により、前記第一距離を算出することが好ましい。
【0060】
この構成によれば、検査治具と被検査基板との実際の距離に基づいて各検査治具を被検査基板に近接させる際の変位量を設定することができるため、高い検査精度を確保することが可能となる。
【0061】
このような検査装置及び検査方法によれば、検査治具と被検査基板との実際の距離に基づいて各検査治具を被検査基板に近接させる際の変位量を設定することができるため、高い検査精度を確保することが可能となる。
【0062】
この出願は、2017年12月28日に出願された日本国特許出願特願2017-253918を基礎とするものであり、その内容は、本願に含まれるものである。なお、発明を実施するための形態の項においてなされた具体的な実施態様又は実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、本発明は、そのような具体例のみに限定して狭義に解釈されるべきものではない。
【符号の説明】
【0063】
1 検査装置 2 検査装置本体
3 検査治具 4 検査部
4U 検査部 4D 検査部
5 検査治具駆動機構 5U 検査治具駆動機構
5D 検査治具駆動機構 5X X治具駆動部
5Y Y治具駆動部 5θ θ治具駆動部
5Z Z治具駆動部 6 基板固定装置
6c ワーク支持面 7 検査部駆動機構
7U 検査部駆動機構 7D 検査部駆動機構
8 筐体 9 制御部
11 第一測距センサ 12 第二測距センサ
31 第一治具 31P 検査面
32 第二治具 32P 検査面
61 ワーク支持部 62 クランプ部
90 初期設定部 91 第一距離算出部
92 第二距離算出部 93 変位量設定部
100 被検査基板(基板) 100c 被クランプ部
101 上面(第一面) 102 下面(第二面)
D1 第一距離 D2 第二距離
Dj1 第一治具距離 Dj2 第二治具距離
Db1 第一基板距離 Db2 第二基板距離
Dc クランプ距離 Db2 第二基板距離
Rf 第一単位領域 Rr 第二単位領域
Tb 基板厚さ M1 第一変位量
M2 第二変位量