(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】精米運転システム
(51)【国際特許分類】
B02B 7/00 20060101AFI20221018BHJP
【FI】
B02B7/00 101A
(21)【出願番号】P 2020212556
(22)【出願日】2020-12-22
(62)【分割の表示】P 2017092494の分割
【原出願日】2017-05-08
【審査請求日】2021-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川端 英臣
(72)【発明者】
【氏名】高橋 努
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-088123(JP,A)
【文献】特開2010-274197(JP,A)
【文献】特開2005-316688(JP,A)
【文献】特開2015-123391(JP,A)
【文献】特表2014-508989(JP,A)
【文献】国際公開第2016/147365(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105964327(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02B 1/00 - 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋内に精米機を備え、制御部が精米機を駆動制御して玄米を精米処理する料金式の精米設備には、利用者の携帯端末と通信可能とする通信設備を備え、携帯端末で精米運転用のアプリケーションを介して精米運転を行うものであって、
アプリケーションを介する精米運転の運転時間は、利用者が取得したポイントに対応するものであって、
前記ポイントは現金を料金投入口に投入してチャージスイッチの操作により取得するものであって、
精米運転が異常停止したとき、利用者の携帯端末からアプリケーションを通じて管理者の携帯端末に当該異常の旨を送信すると、新たなポイントが付与されることを特徴とする精米設備の精米運転システム。
【請求項2】
玄米を投入する投入ホッパの投入口を開閉する開閉扉を設け、前記携帯端末で前記アプリケーションを開くと開閉扉が開放動作して玄米を投入ホッパに投入可能にしたことを特徴とする請求項1記載の精米設備の精米運転システム。
【請求項3】
アプリケーションを介する精米運転の運転時間は、利用者が取得したポイントに対応するものであって、当該ポイントが残存する場合に、アプリケーションを開くと開閉扉が開放動作することを特徴とする請求項2記載の精米設備の精米運転システム。
【請求項4】
現金を料金投入口に投入してポイントを取得するためのチャージスイッチを設け、チャージスイッチON時の現金の投入時には開閉扉の開閉動作を規制することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の精米設備の精米運転システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、料金を投入して精米する精米設備に関する。
【背景技術】
【0002】
コインを投入して料金による精米運転を行う以外に、携帯端末を精米運転にかざして携帯端末から料金を引き落とす技術が特許文献1及び特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-123391号公報
【文献】特許第5560656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、近年、発達した携帯端末のアプリケーションに基づく精米運転を行うことで、精米設備の使用利便性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決するために、請求項1記載の発明は、
建屋内に精米機を備え、制御部が精米機を駆動制御して玄米を精米処理する料金式の精米設備には、利用者の携帯端末と通信可能とする通信設備を備え、携帯端末で精米運転用のアプリケーションを介して精米運転を行うものであって、
アプリケーションを介する精米運転の運転時間は、利用者が取得したポイントに対応するものであって、
前記ポイントは現金を料金投入口に投入してチャージスイッチの操作により取得するものであって、
精米運転が異常停止したとき、利用者の携帯端末からアプリケーションを通じて管理者の携帯端末に当該異常の旨を送信すると、新たなポイントが付与されることを特徴とする精米設備の精米運転システムとする。
【0006】
これにより、利用者による異常停止の通報の促進を図り、管理者による迅速な対応が可能となる。
【0007】
請求項2記載の発明は、玄米を投入する投入ホッパの投入口を開閉する開閉扉を設け、前記携帯端末で前記アプリケーションを開くと開閉扉が開放動作して玄米を投入ホッパに投入可能にしたことを特徴とする請求項1記載の精米設備の精米運転システムとする。
【0008】
これにより、利用者が玄米を投入ホッパに投入し易い。
【0009】
請求項3記載の発明は、アプリケーションを介する精米運転の運転時間は、利用者が取得したポイントに対応するものであって、当該ポイントが残存する場合に、アプリケーションを開くと開閉扉が開放動作することを特徴とする請求項2記載の精米設備の精米運転システムとする。
【0010】
これにより、真の利用者と判断した場合に開閉扉を開放動作することができる。
【0011】
請求項4記載の発明は、
現金を料金投入口に投入してポイントを取得するためのチャージスイッチを設け、チャージスイッチON時の現金の投入時には開閉扉の開閉動作を規制することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の精米設備の精米運転システムとする。
【0012】
これにより、利用者は、精米運転の度に現金を投入する手間を省くことができる。また、精米運転を行わないときに開閉扉の不要な開放動作を規制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、利便性のよい精米設備を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態の料金式精米設備について以下説明する。
【0016】
図2に示すように建屋1を仕切壁2で前後方向に機械室3と客室4に仕切る。本実施例では客室4側を前側と呼び機械室3側を後側と呼ぶ。
【0017】
利用者が持参した玄米を収容する投入ホッパ5と、投入ホッパ5内の玄米を繰り出すロータリバルブ6と、玄米を揚穀する昇降機7と、玄米から石を抜く石抜機8と、玄米を精米する精米機9と、精白米を収容する白米タンク10を設ける。
【0018】
投入ホッパ5と白米タンク10は客室4側に設け、昇降機7・石抜機8・精米機9は機械室3側に設ける。投入ホッパ5は客室4の左右一側に設け、白米タンク10は客室4の左右他側に設ける。投入ホッパ5と白米タンク10の間には精白度を設定する精白度選択スイッチ11と、料金を投入する料金投入口12、及び釣銭返却口15を設ける。投入ホッパ5の前側には、投入ホッパ5の投入口を閉鎖・開放する開閉扉13を設ける。料金投入口の近傍にはQRコード(登録商標)dを設ける。
【0019】
図4に示すように精米運転を制御する制御部14を設け、制御部14には、利用者の携帯端末Kと通信可能な通信機器15を接続する。投入ホッパ5内には投入玄米の有無を検出する玄米有無検出センサ16を設ける。玄米有無検出センサ16は投入ホッパ5以外でも精米機9の前工程側であれば取り付け可能である。制御部14は利用者の情報を格納するクラウドCと通信可能に構成する。クラウドCは、
図4に示すように複数の精米設備とそれぞれ通信可能に構成し、それぞれの精米設備の情報を格納している。
【0020】
次に、料金投入口12に現金を投入して精米運転を行う手順について説明する。
【0021】
利用者は、料金投入口12に料金を投入したことを料金投入検出センサ17が検出すると開閉扉13が開放動作をする。利用者は、持参した玄米を投入ホッパ5に投入して精白度選択スイッチ11で所望の精白度(例えば無洗米・標準・分搗き)を選択すると、装置各部が運転を開始する。
【0022】
ロータリバルブ6で投入ホッパ5内の玄米を繰り出し、昇降機7で搬送し、石抜機8で石抜処理し、精米機9で精米処理されて精白米となり白米タンク10に排出される。料金に対応する運転時間が経過するか、精米機9に供給される玄米が無くなったことを玄米有無検出センサ16が検出するとその所定時間後に精米運転は終了する。精米運転の終了から設定時間が経過すると、開閉扉13が閉鎖する。
【0023】
次に、アプリケーションAによる精米運転について説明する。
【0024】
利用者は、携帯端末KをQRコード(登録商標)dにかざすと、アプリケーションAのあるサイト(ホームページ等)と通信接続し、アプリケーションAを取得する。アプリケーションAは無料で取得できる。そして、アプリケーションAに氏名等の登録名と電話番号、メールアドレス等の情報を登録すると(
図5のA及びF参照)アプリケーションAの設定が完了する。クラウドCには、利用者情報及びポイント情報が格納される。精米運転時はアプリケーションAを開いた状態で前述の料金による精米運転を行うと、利用した料金に応じてポイントが付与される。ポイントが付与されると、ポイントを利用して精米運転が可能となる。あるいは、設定以上のポイントが累積されると精米運転を可能としても良い。
【0025】
次に、ポイントと料金を併用して精米運転をする場合について説明する。
【0026】
例えば、玄米10kgを精米運転毎に100円又は100ポイントが必要で、投入料金100円利用した毎に10ポイントが付与されるとする。ポイントはこのとき、150ポイントが既に付与されていたとする。
【0027】
利用者は、料金を料金投入口12に投入するか、又はアプリケーションAを開けると、開閉扉13が開放作動する。このとき、アプリケーションAにポイントが残存している場合には開閉扉13が開放動作する構成にしても良い。利用者は持参した玄米を投入ホッパ5に投入し、利用者はアプリケーションAで利用するポイントを設定し、精白度選択スイッチ11を選択すると、制御部14が精米運転を開始する。本実施の形態では、持参した玄米が約30kgで、投入料金が300円、設定したポイントが100ポイント(
図5のC参照)であったとする。
【0028】
精米運転では、まず、設定したポイントから減算処理がなされ、ポイント分の精米運転時間が経過したら投入料金から減算処理される。30kg精米処理するのに100ポイントと200円を順次減算処理し、精米機9に供給される玄米が無くなったことを検出すると、精米運転は終了し、釣銭100円が釣銭返却口から返却される。
【0029】
そして、アプリケーションAには、今回の使用したポイント(100ポイント)状況及び付与されたポイント(投入料金200円により20ポイント)が表示される(
図5のD参照)。
【0030】
次に、利用可能なポイントが150ポイントで、投入した料金が100円で、設定したポイントが100ポイントであり、利用者が持参した玄米が約25kgであった場合について説明する。
【0031】
精米運転開始後、前述の通りまず、設定した100ポイント、次に投入した料金100円分が減算処理され、通常、このとき、約20kgの玄米が精米処理される。この100ポイント及び100円分の精米運転時間が経過した時点で玄米有無検出センサ16が玄米有を検出していると、残りの50ポイントを利用するか否かを携帯端末Kに表示し、利用者に選択してもらう。このとき、精米運転は一旦停止する。利用者がポイントを使用することを選択すると、精米運転が再開し、ポイントによる精米運転を継続する。あるいは新たに投入料金を投入して精米運転を再開してもよい。あるいは、残りの50ポイントを継続して使用して精米運転する構成でも良い。
【0032】
現金の場合100円単位で減算されるよう構成する精米設備において、ポイントの場合には、1ポイント毎に減算する構成としても良い。すなわち、100ポイントで10Kgの玄米を精米処理できる構成の場合、1ポイントで100g単位の精米処理が可能となる。これにより、現金10円単位の高価なコインメックが必要とされず、100円単位の安価なコインメックを使用しながら、少量単位の玄米をポイントにより精米処理することができる。
【0033】
次に、料金を投入しないでポイントで精米運転を開始した場合について説明する。
【0034】
利用者が客室4内で既に携帯端末Kに設定されているアプリケーションAを開くと開閉扉13が開放する。利用者が玄米を投入ホッパ5に投入して精白度選択スイッチ11を選択すると精米運転が開始する。利用可能なポイントに対応する運転時間が経過したときに、玄米有無検出センサ16が玄米有を検出すると、精米運転は一旦停止し、利用者に新たに投入料金を投入することを促すよう携帯端末に表示する。
【0035】
本実施の形態のアプリケーションAのポイントは設定ポイント(例えば100ポイント)に到達すると精米運転の開始から利用できるようにし、設定ポイント未満の端数のポイントについては、精米運転開始後に途中でポイント及び料金に到達し、かつ、玄米有無検出センサ16が玄米を検出しているときに、利用できるようにしても良い。すなわち、前述の利用可能なポイントが150ポイントで、投入した料金が100円で、設定したポイントが100ポイントであり、利用者が持参した玄米が約25kgであった場合に、20kgを現金100円と100ポイントで精米処理し、残りの5kgを50ポイントで精米処理できる。
【0036】
次に、精米運転中に、精米機9が異常停止した場合の処理について説明する。
【0037】
精米運転が異常停止したとき、アプリケーションAを通じて管理者の携帯端末Tに例えばメールで送信する旨の表示がなされる(
図5のG参照)。利用者がその旨を送信すると、設定のポイントが付与される。これにより、利用者による異常停止の通報の促進を図り、管理者による迅速な対応が可能となる。
【0038】
図5の利用者の携帯端末Kの画面について、以下説明する。
【0039】
図5の(A)は精米運転前の利用状況の表示及びポイントの利用の設定のスイッチを設けている。
図5の(B)は、利用者の携帯端末Kと制御部14が通信できなかった時の表示である。本実施の形態の通信は建屋1の近傍で通信可能な通信機器を使用している。
図5の(C)はポイント数の設定の画面。
図5の(D)は精米運転後のポイントの利用状況を示す画面。
図5の(E)は、精米運転の利用したことの領収証の一例を示す画面。
図5の(F)は利用者情報の登録を設定する画面。
図5の(G)は精米運転中に異常停止したことを表示する画面。
図5の(H)は利用者が送信して管理者の携帯端末Tに表示されるメールの画面である。
【0040】
アプリケーションAを利用した精米運転のポイントについて
図6に基づいて説明する。
【0041】
例えば、前述のとおり、10kgで100円で10ポイントであるが、例えば、連続で30Kgより多い玄米量を精米運転する場合には、ポイントを加算しても良い。すなわち、例えば40kgで400円分を運転すると、30kgで300円分は100円につき10ポイントで30ポイントと、残りの100円につき20ポイントとして合計50ポイントにする(精米運転時のポイント付与例)。あるいは、400円分を連続で精米運転すると100円につき20ポイントとして合計で80ポイントにしても良い。これにより、多量の精米運転をする大口の利用者による利用を促進することができる。
【0042】
次に、精米運転を行わないで、現金をポイントに変える方法について説明する。
【0043】
利用者がアプリケーションAを開いた状態で、チャージスイッチ20を操作して現金を料金投入口12に投入すると精米運転は行わないで、投入した料金に対応するポイントとして、
図6にチャージスイッチ20がON時のポイント付与例を示している。チャージスイッチによる現金投入時には精米運転を行わないので100円に対応する100ポイントに加算ポイントが付与される。
【0044】
チャージスイッチ20のON時のポイント付与例は100円毎に10ポイントの加算ポイントが付き、400円以上投入すると20ポイントの加算ポイントが付く。
【0045】
これにより、利用者は一度に多くの料金をポイント化することで、ポイントの加算による精米運転可能時間を多くすることができる。また、精米運転の度に現金を投入する手間を省くことができる。また、前述のとおり、ポイントは現金よりも少量単位の玄米を精米処理できるので、効率の良い精米運転を行うことができる。
【0046】
なお、チャージスイッチ20を操作して現金を投入する時は開閉扉13を開放動作しないか、又は、アプリケーションAを開けて開閉扉13が開いた後にチャージスイッチ20を操作すると開閉扉13を閉じる構成にしても良い。
【0047】
次に、アプリケーションAで精米運転すると、当該精米運転を行った時の精白度を利用者情報として記憶しておく。そして、次回の精米運転において、アプリケーションAを開けて開閉扉13が開いて玄米を投入したことを玄米有無検出センサ16が検出すると自動的に精米運転を開始する構成にしても良い。
【0048】
これにより、精米運転の度に精白度選択スイッチ11を操作する手間を省くことができる。
【符号の説明】
【0049】
1 建屋
5 投入ホッパ
9 精米機
13 開閉扉
14 制御部
15 通信機器
A アプリケーション
K (利用者の)携帯端末