(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】車載通信システム、スイッチ装置、通信制御方法および通信制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H04L 12/28 20060101AFI20221018BHJP
H04L 43/0823 20220101ALI20221018BHJP
H04L 69/18 20220101ALI20221018BHJP
B60R 16/023 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
H04L12/28 100A
H04L43/0823
H04L69/18
B60R16/023 P
(21)【出願番号】P 2020510327
(86)(22)【出願日】2019-01-31
(86)【国際出願番号】 JP2019003299
(87)【国際公開番号】W WO2019187613
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2018058761
(32)【優先日】2018-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】弁理士法人ワンディ-IPパ-トナ-ズ
(72)【発明者】
【氏名】川内 偉博
(72)【発明者】
【氏名】岩田 章人
(72)【発明者】
【氏名】萩原 剛志
(72)【発明者】
【氏名】藪内 靖弘
(72)【発明者】
【氏名】咸 元俊
(72)【発明者】
【氏名】真下 誠
【審査官】安藤 一道
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-171910(JP,A)
【文献】特開2010-272971(JP,A)
【文献】特開2014-232997(JP,A)
【文献】特開2016-134717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/28
H04L 43/0823
H04L 69/18
B60R 16/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される複数の機能部間のデータを中継する1または複数のスイッチ装置を備える車載通信システムであって、
前記機能部は、複数レイヤを有するモデルに従って動作し、
前記機能部
の通信に関する異常を検知する検知部と、
前記検知部によって異常が検知された場合、前記異常が検知された前記機能部に対して、使用するプロトコルを
、前記複数レイヤのうちの同じレイヤにおいて用いられる他のプロトコルに変更させるか、または、前記複数レイヤのうち、前記機能部が使用しているプロトコルより下位のレイヤにおいて用いられるプロトコルに従う通信を行わせる、プロトコル変更処理を行う変更部とを備える、車載通信システム。
【請求項2】
前記検知部は、前記機能部とのTCP(Transmission Control Protocol)に従う所定の情報の送受信に失敗した場合、前記機能部がTCP異常であると判断し、
前記変更部は、前記プロトコル変更処理として、前記TCP異常であると判断された前記機能部に対して、使用するプロトコルを、前記複数レイヤのうちの同じレイヤにおいて用いられる他のプロトコルに変更させる、請求項1に記載の車載通信システム。
【請求項3】
前記検知部は、前記スイッチ装置によって前記機能部へ送信されたping(Packet INternet Groper)に対する所定の情報が前記機能部から受信できない場合、前記機能部がping異常であると判断し、
前記変更部は、前記プロトコル変更処理として、前記ping異常であると判断された前記機能部に対して、前記複数レイヤのうち、前記機能部が使用しているプロトコルより下位のレイヤにおいて用いられるプロトコルに従う通信を行わせる、請求項1または請求項2に記載の車載通信システム。
【請求項4】
前記検知部は、自己の前記スイッチ装置および他の前記スイッチ装置間の通信経路における異常である通信異常を検知し、
前記車載通信システムは、さらに、
前記通信異常の検知された前記通信経路を、異なる前記スイッチ装置を経由する他の通信経路へ切り替える経路変更処理を行う経路制御部を備える、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車載通信システム。
【請求項5】
前記車両は、自動運転を行う車両である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車載通信システム。
【請求項6】
車両に搭載され
、複数レイヤを有するモデルに従って動作する複数の機能部間のデータを中継するスイッチ部と、
前記機能部
の通信に関する異常を検知する検知部と、
前記検知部によって異常が検知された場合、前記異常が検知された前記機能部に対して、使用するプロトコルを
、前記複数レイヤのうちの同じレイヤにおいて用いられる他のプロトコルに変更させるか、または、前記複数レイヤのうち、前記機能部が使用しているプロトコルより下位のレイヤにおいて用いられるプロトコルに従う通信を行わせる、プロトコル変更処理を行う変更部とを備える、スイッチ装置。
【請求項7】
車両に搭載され
、複数レイヤを有するモデルに従って動作する複数の機能部間のデータを中継する1または複数のスイッチ装置を備える車載通信システムにおける通信制御方法であって、
前記機能部
の通信に関する異常を検知するステップと、
前
記異常を検知した場合、前記異常が検知された前記機能部に対して、使用するプロトコルを
、前記複数レイヤのうちの同じレイヤにおいて用いられる他のプロトコルに変更させるか、または、前記複数レイヤのうち、前記機能部が使用しているプロトコルより下位のレイヤにおいて用いられるプロトコルに従う通信を行わせる、プロトコル変更処理を行うステップとを含む、通信制御方法。
【請求項8】
コンピュータを備えるスイッチ装置であって車両に搭載される複数の機能部間のデータを中継するスイッチ装置において用いられる通信制御プログラムであって、
前記機能部は、複数レイヤを有するモデルに従って動作し、
前記コンピュータを、
前記機能部
の通信に関する異常を検知する検知部と、
前記検知部によって異常が検知された場合、前記異常が検知された前記機能部に対して、使用するプロトコルを
、前記複数レイヤのうちの同じレイヤにおいて用いられる他のプロトコルに変更させるか、または、前記複数レイヤのうち、前記機能部が使用しているプロトコルより下位のレイヤにおいて用いられるプロトコルに従う通信を行わせる、プロトコル変更処理を行う変更部、
として機能させるための、通信制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載通信システム、スイッチ装置、通信制御方法および通信制御プログラムに関する。
この出願は、2018年3月26日に出願された日本出願特願2018-58761号を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開2013-168865号公報)には、以下のような車載ネットワークシステムが開示されている。すなわち、車載ネットワークシステムは、車載ネットワーク上で用いられる通信規約のうち前記車載ネットワーク上における実装に依拠する部分を定義する定義データを格納するメモリを備えた車載制御装置と、前記車載制御装置に対して前記定義データを発行する通信規約発行装置とを備える。前記通信規約発行装置は、前記車載制御装置を前記車載ネットワークに参加させる登録装置から、前記車載制御装置を前記車載ネットワークに参加させるよう要求する登録要求を受け取ると、前記登録装置に対する認証を実施した上で、前記車載ネットワークに上における実装に準拠した前記定義データを作成して前記登録装置に返信する。前記登録装置は、前記通信規約発行装置が送信した前記定義データを受け取り、受け取った前記定義データを前記メモリ上に格納するよう前記車載制御装置に対して要求する。そして、前記車載制御装置は、前記登録装置から定義データを受け取って前記メモリ上に格納し、前記定義データが定義する前記部分にしたがって、前記通信規約に準拠して前記車載ネットワークを用いて通信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
(1)本開示の車載通信システムは、車両に搭載される複数の機能部間のデータを中継する1または複数のスイッチ装置を備える車載通信システムであって、前記機能部に関する異常を検知する検知部と、前記検知部によって異常が検知された場合、前記異常が検知された前記機能部に対して、使用するプロトコルを変更させるプロトコル変更処理を行う変更部とを備える。
【0005】
(6)本開示のスイッチ装置は、車両に搭載される複数の機能部間のデータを中継するスイッチ部と、前記機能部に関する異常を検知する検知部と、前記検知部によって異常が検知された場合、前記異常が検知された前記機能部に対して、使用するプロトコルを変更させるプロトコル変更処理を行う変更部とを備える。
【0006】
(7)本開示の通信制御方法は、車両に搭載される複数の機能部間のデータを中継する1または複数のスイッチ装置を備える車載通信システムにおける通信制御方法であって、前記機能部に関する異常を検知するステップと、前記機能部に関する異常を検知した場合、前記異常が検知された前記機能部に対して、使用するプロトコルを変更させるプロトコル変更処理を行うステップとを含む。
【0007】
(8)本開示の通信制御プログラムは、コンピュータを備えるスイッチ装置であって車両に搭載される複数の機能部間のデータを中継するスイッチ装置において用いられる通信制御プログラムであって、前記コンピュータを、前記機能部に関する異常を検知する検知部と、前記検知部によって異常が検知された場合、前記異常が検知された前記機能部に対して、使用するプロトコルを変更させるプロトコル変更処理を行う変更部、として機能させるためのプログラムである。
【0008】
本開示の一態様は、このような特徴的な処理部を備える車載通信システムとして実現され得るだけでなく、かかる特徴的な処理のステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現され得る。また、本開示の一態様は、車載通信システムの一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得る。
【0009】
本開示の一態様は、このような特徴的な処理部を備えるスイッチ装置として実現され得るだけでなく、かかる特徴的な処理をステップとする方法として実現され得る。また、本開示の一態様は、スイッチ装置の一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る車載通信システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施の形態に係るスイッチ装置の構成を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態に係るスイッチ装置が用いるOAMフレームの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施の形態に係るスイッチ装置が、機能部に関する異常を検知し、異常が検知された機能部に対する変更処理のシーケンスを示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施の形態に係るスイッチ装置が、TCP異常を判定する際の動作手順を定めたフローチャートである。
【
図6】
図6は、本発明の実施の形態に係るスイッチ装置が、ping異常を判定する際の動作手順を定めたフローチャートである。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態に係るスイッチ装置が、変更処理を行う際の動作手順を定めたフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
従来、車載ネットワークにおけるセキュリティを向上させるための車載ネットワークシステムが開発されている。
【0012】
[本開示が解決しようとする課題]
特許文献1に記載の車載ネットワークでは、車載ECU(Electronic Control Unit)間で送受信される通信データを中継する通信ゲートウェイが設けられる。
【0013】
たとえば特許文献1に記載の車載ネットワークにおいて車載ECUの異常を検知する方法として、通信ゲートウェイが車載ECUの異常を検知する方法が考えられる。
【0014】
しかしながら、車載ECUの異常を検知しても、当該車載ECUが復旧するまでに時間を要する場合、異常状態の継続により、運転支援または自動運転に用いるデータの処理に支障が生じる可能性がある。
【0015】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、車載ネットワークにおいてより安定した処理を実現することが可能な車載通信システム、スイッチ装置、通信制御方法および通信制御プログラムを提供することである。
【0016】
[本開示の効果]
本開示によれば、車載ネットワークにおいてより安定した処理を実現することができる。
【0017】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に、本発明の実施形態の内容を列記して説明する。
【0018】
(1)本発明の実施の形態に係る車載通信システムは、車両に搭載される複数の機能部間のデータを中継する1または複数のスイッチ装置を備える車載通信システムであって、前記機能部に関する異常を検知する検知部と、前記検知部によって異常が検知された場合、前記異常が検知された前記機能部に対して、使用するプロトコルを変更させるプロトコル変更処理を行う変更部とを備える。
【0019】
このように、異常が検知された機能部である異常機能部が使用するプロトコルを変更させる構成により、異常機能部と他の機能部との通信に使用するプロトコルを変更し、変更後のプロトコルに従って当該他の機能部が異常機能部と通信を行うことができるため、異常機能部との通信を継続させることができる。したがって、車載ネットワークにおいてより安定した処理を実現することができる。
【0020】
(2)好ましくは、前記機能部は、複数レイヤを有するモデルに従って動作し、前記検知部は、前記機能部とのTCP(Transmission Control Protocol)に従う所定の情報の送受信に失敗した場合、前記機能部がTCP異常であると判断し、前記変更部は、前記プロトコル変更処理として、前記TCP異常であると判断された前記機能部に対して、使用するプロトコルを、前記複数レイヤのうちの同じレイヤにおいて用いられる他のプロトコルに変更させる。
【0021】
このような構成により、TCPを用いた通信に異常がある一方で、異なるプロトコルでは通信可能な場合において、変更後のプロトコルを使用して異常機能部との通信を継続させることができる。
【0022】
(3)より好ましくは、前記機能部は、複数レイヤを有するモデルに従って動作し、前記検知部は、前記スイッチ装置によって前記機能部へ送信されたping(Packet INternet Groper)に対する所定の情報が前記機能部から受信できない場合、前記機能部がping異常であると判断し、前記変更部は、前記プロトコル変更処理として、前記ping異常であると判断された前記機能部に対して、前記複数レイヤのうち、前記機能部が使用しているプロトコルより下位のレイヤにおいて用いられるプロトコルに従う通信を行わせる。
【0023】
このような構成により、同一レイヤにおいては通信不能である一方で、異なるレイヤにおいては通信可能な場合において、変更後のプロトコルを使用して異常機能部との通信を継続させることができる。
【0024】
(4)好ましくは、前記検知部は、自己の前記スイッチ装置および他の前記スイッチ装置間の通信経路における異常である通信異常を検知し、前記車載通信システムは、さらに、前記通信異常の検知された前記通信経路を、異なる前記スイッチ装置を経由する他の通信経路へ切り替える経路変更処理を行う経路制御部を備える。
【0025】
このような構成により、異なるスイッチ装置を経由してデータを伝送し、通信異常である通信経路を避けて通信を継続させることができる。
【0026】
(5)好ましくは、前記車両は、自動運転を行う車両である。
【0027】
このような構成により、車両において、機能部間の通信を継続させることにより、自動運転を安定して継続することができる。
【0028】
(6)本発明の実施の形態に係るスイッチ装置は、車両に搭載される複数の機能部間のデータを中継するスイッチ部と、前記機能部に関する異常を検知する検知部と、前記検知部によって異常が検知された場合、前記異常が検知された前記機能部に対して、使用するプロトコルを変更させるプロトコル変更処理を行う変更部とを備える。
【0029】
このように、異常が検知された機能部である異常機能部が使用するプロトコルを変更させる構成により、異常機能部と他の機能部との通信に使用するプロトコルを変更し、変更後のプロトコルに従って当該他の機能部が異常機能部と通信を行うことができるため、異常機能部との通信を継続させることができる。したがって、車載ネットワークにおいてより安定した処理を実現することができる。
【0030】
(7)本発明の実施の形態に係る通信制御方法は、車両に搭載される複数の機能部間のデータを中継する1または複数のスイッチ装置を備える車載通信システムにおける通信制御方法であって、前記機能部に関する異常を検知するステップと、前記機能部に関する異常を検知した場合、前記異常が検知された前記機能部に対して、使用するプロトコルを変更させるプロトコル変更処理を行うステップとを含む。
【0031】
このように、異常が検知された機能部である異常機能部が使用するプロトコルを変更させる構成により、異常機能部と他の機能部との通信に使用するプロトコルを変更し、変更後のプロトコルに従って当該他の機能部が異常機能部と通信を行うことができるため、異常機能部との通信を継続させることができる。したがって、車載ネットワークにおいてより安定した処理を実現することができる。
【0032】
(8)本発明の実施の形態に係る通信制御プログラムは、コンピュータを備えるスイッチ装置であって車両に搭載される複数の機能部間のデータを中継するスイッチ装置において用いられる通信制御プログラムであって、前記コンピュータを、前記機能部に関する異常を検知する検知部と、前記検知部によって異常が検知された場合、前記異常が検知された前記機能部に対して、使用するプロトコルを変更させるプロトコル変更処理を行う変更部、として機能させるためのプログラムである。
【0033】
このように、異常が検知された機能部である異常機能部が使用するプロトコルを変更させる構成により、異常機能部と他の機能部との通信に使用するプロトコルを変更し、変更後のプロトコルに従って当該他の機能部が異常機能部と通信を行うことができるため、異常機能部との通信を継続させることができる。したがって、車載ネットワークにおいてより安定した処理を実現することができる。
【0034】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0035】
[構成および基本動作]
図1は、本発明の実施の形態に係る車載通信システムの構成を示す図である。
【0036】
図1を参照して、車載通信システム301は、スイッチ装置101A,101B,101Cと、機能部111A,111B,111C,111D,111E,111Fとを備える。車載通信システム301は、車両1に搭載される。
【0037】
以下、スイッチ装置101A,101B,101Cの各々を、スイッチ装置101とも称し、機能部111A,111B,111C,111D,111E,111Fの各々を、機能部111とも称する。
【0038】
以下、特定の各スイッチ装置101の動作を代表的に説明するが、他のスイッチ装置101の動作についても同様である。
【0039】
以下、特定の各機能部111の動作を代表的に説明するが、他の機能部111の動作についても同様である。
【0040】
なお、車載通信システム301は、3つのスイッチ装置101を備える構成に限らず、1つ、2つ、または4つ以上のスイッチ装置101を備える構成であってもよい。
【0041】
また、車載通信システム301は、3つの機能部111を備える構成に限らず、2つ、4つ、または5つ以上の機能部111を備える構成であってもよい。
【0042】
機能部111は、たとえば、自動運転ECU(Electronic Control Unit)、運転支援装置およびセンサ等であり、スイッチ装置101と通信を行うことが可能である。これにより、車両1は、たとえば自動運転を行うことができる。
【0043】
車両1の車載通信システム301における各スイッチ装置101および各機能部111の接続関係は、たとえば固定されている。
【0044】
スイッチ装置101および機能部111は、たとえば、車載のイーサネット(登録商標)通信用のケーブル(以下、イーサネットケーブルとも称する。)10により互いに接続されている。
【0045】
たとえば、機能部111は、OSI(Open Systems Interconnection)参照モデル等、複数レイヤを有するモデルに従って動作する。スイッチ装置101および機能部111は、イーサネットケーブル10を用いて互いに通信する。スイッチ装置101および機能部111間では、たとえば、IEEE802.3に従うイーサネットフレームを用いて通信データのやり取りが行われる。
【0046】
車載通信システム301において、たとえば、機能部111A,111Bと、機能部111C,111Cと、機能部111E,111Fとは、それぞれ互いに異なるVLAN(Virtual Local Area Network)に属する。
【0047】
[課題]
車載通信システム301において、たとえば、1000BASE-T1が用いられる場合、スイッチ装置101は、OAM(Operations Administration Maintenance)フレームを利用した機能部111の故障通知を行うことができる。
【0048】
OAMフレームは、既存のフレームであるため、通信帯域を逼迫することなく、かつ短時間で故障に係るプロトコルまたはレイヤを通知することができる。
【0049】
しかしながら、機能部111の復旧には時間を要する場合も多く、車両1の各種処理への影響が大きくなる可能性がある。
【0050】
これに対して、本発明の実施の形態に係る車載通信システムでは、以下のような構成および動作により、上記課題を解決する。
【0051】
[スイッチ装置の構成]
【0052】
図2は、本発明の実施の形態に係るスイッチ装置の構成を示す図である。
【0053】
図2を参照して、スイッチ装置101は、スイッチ部51と、検知部52と、記憶部53と、複数の通信ポート54と、変更部56と、経路制御部57とを備える。
【0054】
より詳細には、
図1に示すスイッチ装置101Aは、スイッチ部51Aと、検知部52Aと、記憶部53Aと、複数の通信ポート54Aと、変更部56Aと、経路制御部57Aとを備える。スイッチ装置101Bは、スイッチ部51Bと、検知部52Bと、記憶部53Bと、複数の通信ポート54Bと、変更部56Bと、経路制御部57Bとを備える。スイッチ装置101Cは、スイッチ部51Cと、検知部52Cと、記憶部53Cと、複数の通信ポート54Cと、変更部56Cと、経路制御部57Cとを備える。
【0055】
スイッチ部51は、車両1に搭載される複数の機能部111間のイーサネットフレームを中継する
【0056】
より詳細には、スイッチ部51は、L2(レイヤ2)スイッチとして動作し、同じVLANに属する機能部111間のイーサネットフレームを中継する。
【0057】
具体的には、スイッチ部51は、たとえば、通信ポート54のポート番号とVLANのIDおよび接続先装置のMACアドレスとの対応関係を示すアドレステーブルを保持する。
【0058】
スイッチ部51は、たとえば、機能部111からイーサネットフレームを受信すると、受信したイーサネットフレームを記憶部53に保存するとともに当該イーサネットフレームの宛先MACアドレスを確認する。
【0059】
スイッチ部51は、アドレステーブルを参照することにより、確認した宛先MACアドレスに対応する通信ポート54を特定する。
【0060】
そして、スイッチ部51は、当該イーサネットフレームを記憶部53から取得し、取得したイーサネットフレームを、特定した通信ポート54経由で宛先の機能部111へ送信する。
【0061】
また、スイッチ部51は、たとえば、L3(レイヤ3)スイッチまたはL4(レイヤ4)スイッチとして動作し、異なるVLANに属する機能部111間の通信データを中継する。
【0062】
具体的には、スイッチ部51は、たとえばVLANのIDとネットワークアドレスとの対応関係を示すネットワークテーブルを保持する。また、スイッチ部51は、たとえば、IPアドレスとMACアドレスとの対応関係を示すARP(Address Resolution Protocol)テーブルをVLANのIDごとに保持する。
【0063】
たとえば、スイッチ装置101Aにおいて、スイッチ部51Aは、機能部111Aからイーサネットフレームを受信すると、宛先MACアドレスが自己のMACアドレスであることを確認し、受信したイーサネットフレームからIPパケットを取り出す。
【0064】
スイッチ部51Aは、ネットワークテーブルを参照することにより、IPパケットに含まれる宛先IPアドレスに対応するVLANのIDを特定する。
【0065】
そして、スイッチ部51Aは、特定したVLANのIDに対応するARPテーブルを参照することにより、宛先IPアドレスに対応するVLANのゲートウェイのMACアドレスを取得する。
【0066】
スイッチ部51Aは、取得したMACアドレスを宛先MACアドレスとして含みかつ当該IPパケットを含むイーサネットフレームを作成して記憶部53Aに保存する。
【0067】
スイッチ部51Aは、アドレステーブルを参照することにより、当該宛先MACアドレスに対応する通信ポート54すなわちスイッチ装置101Bに接続される通信ポート54を特定する。
【0068】
そして、スイッチ部51Aは、当該イーサネットフレームを記憶部53Aから取得し、取得したイーサネットフレームを、特定した通信ポート54経由でスイッチ装置101Bへ送信する。
【0069】
スイッチ装置101Bは、スイッチ装置101Aから送信されたイーサネットフレームに対してL2スイッチとして動作し、機能部111Cへ当該イーサネットフレームを中継する。
【0070】
検知部52は、機能部111に関する異常を検知する。以下、検知部52の行う異常検知の例である異常検知1~3について説明する。なお、以下、異常が検知された機能部111を異常機能部とも称する。
【0071】
[異常検知1]
たとえば、検知部52は、機能部111とのTCP(Transmission Control Protocol)に従う所定の情報の送受信に失敗した場合、当該機能部111がTCP異常であると判断する。
【0072】
より詳細には、
図1に示すスイッチ装置101Aが、TCPを使用して機能部111Cと通信を行う場合、たとえば、3wayハンドシェイクによる接続確認を行う。
【0073】
具体的には、スイッチ装置101Aにおけるスイッチ部51Aは、宛先IPアドレスとして機能部111CのIPアドレスを含み、かつTCPヘッダ内のSYNフラグビットが「1」であるIPパケット(以下、SYNパケットとも称する。)を含むイーサネットフレームを生成し、生成したイーサネットフレームをスイッチ装置101Bへ送信する。
【0074】
スイッチ装置101Bは、スイッチ装置101Aから送信されたイーサネットフレームを機能部111Cへ中継する。
【0075】
機能部111Cは、スイッチ装置101Aから送信されたSYNパケットを含むイーサネットフレームをスイッチ装置101B経由で受信すると、宛先IPアドレスとしてスイッチ装置101AのIPアドレスを含み、かつSYNフラグビットおよびACKフラグビットが「1」であるIPパケット(以下、SYN ACKパケットとも称する。)を含むイーサネットフレームを生成してスイッチ装置101Bへ送信する。
【0076】
スイッチ装置101Bは、機能部111Cから送信されたイーサネットフレームをスイッチ装置101Aへ中継する。
【0077】
スイッチ装置101Aにおけるスイッチ部51Aは、機能部111Cから送信されたSYN ACKパケットを含むイーサネットフレームをスイッチ装置101B経由で受信し、受信したイーサネットフレームを記憶部53Aに保存する。
【0078】
スイッチ部51Aは、記憶部53Aに保存されたイーサネットフレームに含まれるSYN ACKパケットを取得すると、宛先IPアドレスとして機能部111CのIPアドレスを含み、かつTCPヘッダ内のACKフラグビットが「1」であるIPパケット(以下、ACKパケットとも称する。)を含むイーサネットフレームを生成し、生成したイーサネットフレームをスイッチ装置101Bへ送信する。
【0079】
スイッチ装置101Bは、スイッチ装置101Aから送信されたイーサネットフレームを機能部111Cへ中継する。
【0080】
スイッチ部51Aは、たとえば、SYNパケットを送信してから所定時間が経過してもSYN ACKパケットを取得できない場合、3wayハンドシェイクに失敗したと判断し、TCP異常を示すTCP異常通知および接続確認を行う相手である機能部111CのIPアドレスを検知部52Aへ出力する。
【0081】
検知部52Aは、スイッチ部51AからTCP異常通知を受けて、異常機能部である機能部111CへTCP異常を通知するためのOAMフレームを生成する。
【0082】
図3は、本発明の実施の形態に係るスイッチ装置が用いるOAMフレームの一例を示す図である。
【0083】
図3を参照して、OAMフレームは、Symbol0~Symbol11の12のSymbolにより構成される。1Symbolのデータ列は、8ビットである。
【0084】
Symbol0およびSymbol1には、予約データおよび所定の各種データが格納される。
【0085】
Symbol2~Symbol9におけるメッセージフィールドには、たとえば、ユーザが任意のデータを設定可能である。
【0086】
Symbol10およびSymbol11には、誤り検出に用いられるデータ列であるCRC(cyclic redundancy check)が格納される。
【0087】
検知部52Aは、OAMフレームにおけるメッセージフィールドを用いて、機能部111Cが接続されているスイッチ装置101Bへ異常を通知する。
【0088】
より詳細には、検知部52Aは、TCP異常通知および機能部111CのIPアドレスをメッセージフィールドにおいて含むOAMフレームを生成し、スイッチ部51Aへ出力する。
【0089】
スイッチ部51Aは、ネットワークテーブルを参照することにより、検知部52Aから受けたOAMフレームに含まれるIPアドレスに対応するVLANのIDを特定する。
【0090】
そして、スイッチ部51Aは、特定したVLANのIDに対応するARPテーブルを参照することにより、当該IPアドレスに対応するVLANのゲートウェイであるスイッチ装置101BのMACアドレスを取得する。
【0091】
スイッチ部51Aは、取得したMACアドレスを宛先MACアドレスとして含み、かつ当該OAMフレームを含むイーサネットフレームを作成して記憶部53Aに保存する。
【0092】
スイッチ部51Aは、アドレステーブルを参照することにより、当該宛先MACアドレスに対応する通信ポート54Aすなわちスイッチ装置101Bに接続される通信ポート54Aを特定する。
【0093】
そして、スイッチ部51Aは、当該イーサネットフレームを記憶部53Aから取得し、取得したイーサネットフレームを、特定した通信ポート54A経由でスイッチ装置101Bへ送信する。
【0094】
スイッチ装置101Bにおけるスイッチ部51Bは、スイッチ装置101Aから送信されたイーサネットフレーム受信し、受信したイーサネットフレームを記憶部53Bに保存する。
【0095】
変更部56は、検知部52によって異常が検知された場合、異常が検知された機能部111に対して、使用するプロトコルを変更させるプロトコル変更処理を行う。
【0096】
たとえば、変更部56Bは、プロトコル変更処理として、TCP異常であると判断された機能部111Cに対して、使用するプロトコルを、上記複数レイヤのうちの同じレイヤにおいて用いられる他のプロトコルに変更させる。
【0097】
より詳細には、変更部56Bは、記憶部53Bに保存されたイーサネットフレームにOAMフレームが含まれる場合、当該OAMフレームに含まれる機能部111CのIPアドレスおよびTCP異常通知を取得する。
【0098】
変更部56Bは、TCP異常通知を取得すると、併せて取得した機能部111CのIPアドレスを宛先IPアドレスとして含み、かつ機能部111Cが使用するプロトコルをたとえばUDP(User Datagram Protocol)に変更させるプロトコル変更要求PC1を含むIPパケットを生成し、スイッチ部51Bへ出力する。
【0099】
スイッチ部51Bは、ネットワークテーブルを参照することにより、変更部56Bから受けたIPパケットに含まれるIPアドレスに対応するVLANのIDを特定する。
【0100】
そして、スイッチ部51Bは、特定したVLANのIDに対応するARPテーブルを参照することにより、当該IPアドレスに対応する機能部111のMACアドレスである機能部111CのMACアドレスを取得する。
【0101】
スイッチ部51Bは、取得した機能部111CのMACアドレスを宛先MACアドレスとして含み、かつ当該IPパケットを含むイーサネットフレームを作成して記憶部53Bに保存する。
【0102】
スイッチ部51Bは、アドレステーブルを参照することにより、当該宛先MACアドレスに対応する通信ポート54Bを特定する。
【0103】
そして、スイッチ部51Bは、当該イーサネットフレームを記憶部53Bから取得し、取得したイーサネットフレームを、特定した通信ポート54B経由で機能部111Cへ送信する。
【0104】
機能部111Cは、101Bから送信されたイーサネットフレームに含まれるプロトコル変更要求PC1を受けて、自己の使用するプロトコルをTCPからUDPに変更する。
【0105】
[異常検知例2]
たとえば、検知部52は、自己のスイッチ装置101によって機能部111へ送信されたping(Packet INternet Groper)に対する所定の情報が当該機能部111から受信できない場合、当該機能部111がping異常であると判断する。
【0106】
より詳細には、たとえば、
図1に示すスイッチ装置101Aは、L3における接続確認方法として、pingコマンドを用いて機能部111Cと定期的に接続確認を行う。
【0107】
具体的には、スイッチ部51Aは、宛先IPアドレスとして機能部111CのIPアドレス、およびICMP(Internet Control Message Protocol)のecho requestを含むイーサネットフレームを生成し、生成したイーサネットフレームをスイッチ装置101Bへ送信する。
【0108】
スイッチ装置101Bは、スイッチ装置101Aから送信されたイーサネットフレームを機能部111Cへ中継する。
【0109】
機能部111Cは、スイッチ装置101Aから送信されたイーサネットフレームに含まれるecho requestをスイッチ装置101B経由で受信すると、宛先IPアドレスとしてスイッチ装置101AのIPアドレス、およびecho replyを含むイーサネットフレームを生成してスイッチ装置101Bへ送信する。
【0110】
スイッチ装置101Bは、機能部111Cから送信されたイーサネットフレームをスイッチ装置101Aへ中継する。
【0111】
スイッチ装置101Aにおけるスイッチ部51Aは、機能部111Cから送信されたecho replyを含むイーサネットフレームをスイッチ装置101B経由で受信し、受信したイーサネットフレームを記憶部53Aに保存する。
【0112】
スイッチ部51Aは、記憶部53Aに保存されたイーサネットフレームに含まれるecho replyを取得する。
【0113】
スイッチ部51Aは、たとえば、echo requestを送信してから所定時間が経過してもecho replyを取得できない場合、またはecho replyを取得してから所定時間が経過しても機能部111Cからの新たなイーサネットフレームを受信できない場合、機能部111Cと通信不能であるping異常と判断し、ping異常を示すping異常通知および接続確認を行う相手である機能部111すなわち異常機能部のIPアドレスを検知部52Aへ出力する。
【0114】
検知部52Aは、スイッチ部51Aからping異常通知を受けて、異常機能部である機能部111Cへping異常を通知するためのOAMフレームを生成する。
【0115】
検知部52Aは、OAMフレームにおけるメッセージフィールドを用いて、機能部111Cが接続されているスイッチ装置101Bへ異常を通知する。
【0116】
より詳細には、検知部52Aは、ping異常通知および機能部111CのIPアドレスをメッセージフィールドにおいて含むOAMフレームを生成し、スイッチ部51Aへ出力する。
【0117】
スイッチ部51Aは、ネットワークテーブルを参照することにより、検知部52Aから受けたOAMフレームに含まれるIPアドレスに対応するVLANのIDを特定する。
【0118】
そして、スイッチ部51Aは、特定したVLANのIDに対応するARPテーブルを参照することにより、当該IPアドレスに対応するVLANのゲートウェイであるスイッチ装置101BのMACアドレスを取得する。
【0119】
スイッチ部51Aは、取得したMACアドレスを宛先MACアドレスとして含み、かつ当該OAMフレームを含むイーサネットフレームを作成して記憶部53Aに保存する。
【0120】
スイッチ部51Aは、アドレステーブルを参照することにより、当該宛先MACアドレスに対応する通信ポート54Aすなわちスイッチ装置101Bに接続される通信ポート54Aを特定する。
【0121】
そして、スイッチ部51Aは、当該イーサネットフレームを記憶部53Aから取得し、取得したイーサネットフレームを、特定した通信ポート54A経由でスイッチ装置101Bへ送信する。
【0122】
スイッチ装置101Bにおけるスイッチ部51Bは、スイッチ装置101Aから送信されたイーサネットフレーム受信し、受信したイーサネットフレームを記憶部53Bに保存する。
【0123】
変更部56は、検知部52によって異常が検知された場合、異常が検知された機能部111に対して、使用するプロトコルを変更させるプロトコル変更処理を行う。
【0124】
より詳細には、変更部56Bは、記憶部53Bに保存されたイーサネットフレームにOAMフレームが含まれる場合、当該OAMフレームに含まれる機能部111CのIPアドレスおよびping異常通知を取得する。
【0125】
たとえば、変更部56Bは、変更処理として、ping異常であると判断された機能部111に対して、上記複数レイヤのうち、当該機能部111が使用しているプロトコルより下位のレイヤにおいて用いられるプロトコルに従う通信を行わせる。
【0126】
変更部56Bは、ping異常通知を取得すると、併せて取得した機能部111CのIPアドレスを宛先IPアドレスとして含み、かつ機能部111Cが使用するプロトコルを下位のレイヤであるL2において用いられるプロトコルに変更させるプロトコル変更要求PC2を含むIPパケットを生成し、スイッチ部51Bへ出力する。
【0127】
スイッチ部51Bは、ネットワークテーブルを参照することにより、変更部56Bから受けたIPパケットに含まれるIPアドレスに対応するVLANのIDを特定する。
【0128】
そして、スイッチ部51Bは、特定したVLANのIDに対応するARPテーブルを参照することにより、当該IPアドレスに対応する機能部111のMACアドレスである機能部111CのMACアドレスを取得する。
【0129】
スイッチ部51Bは、取得した機能部111CのMACアドレスを宛先MACアドレスとして含み、かつ当該IPパケットを含むイーサネットフレームを作成して記憶部53Bに保存する。
【0130】
スイッチ部51Bは、アドレステーブルを参照することにより、当該宛先MACアドレスに対応する通信ポート54Bを特定する。
【0131】
そして、スイッチ部51Bは、当該イーサネットフレームを記憶部53Bから取得し、取得したイーサネットフレームを、特定した通信ポート54B経由で機能部111Cへ送信する。
【0132】
機能部111Cは、101Bから送信されたイーサネットフレームに含まれるプロトコル変更要求PC2を受けて、自己の使用するプロトコルをL2において用いられるプロトコルに変更する。
【0133】
[異常検知例3]
たとえば、検知部52は、自己のスイッチ装置101および他の前記スイッチ装置101間の通信経路における異常である通信異常を検知する。
【0134】
より詳細には、たとえば、
図1に示すスイッチ装置101Aは、通信品質を示すSQI(Signal Quality Indicator)を用いて機能部111との通信経路における通信品質を監視する。
【0135】
スイッチ装置101Aにおいて、たとえば、スイッチ部51Aは、スイッチ装置101Bから送信されたイーサネットフレームを受信すると、受信したイーサネットフレームに基づいてSQIを算出する。
【0136】
スイッチ部51Aは、算出したSQIが所定値以下の場合、通信異常であると判断し、通信異常を示す通信異常通知を検知部52Aへ出力する。
【0137】
このとき、スイッチ部51Aは、受信した当該イーサネットフレームから送信元MACアドレスを取得して検知部52Aへ出力する。
【0138】
検知部52Aは、スイッチ部51Aから受けた通信異常通知をメッセージフィールドにおいて含むOAMフレームを生成し、生成したOAMフレーム、およびスイッチ部51Aから受けた送信元MACアドレスをスイッチ部51Aへ出力する。
【0139】
スイッチ部51Aは、検知部52Aから受けた送信元MACアドレスを宛先MACアドレスとして含み、かつ当該OAMフレームを含むイーサネットフレームを作成して記憶部53Aに保存する。
【0140】
スイッチ部51Aは、アドレステーブルを参照することにより、当該宛先MACアドレスに対応する通信ポート54Aすなわちスイッチ装置101Bに接続される通信ポート54Aを特定する。
【0141】
そして、スイッチ部51Aは、当該イーサネットフレームを記憶部53Aから取得し、取得したイーサネットフレームを、特定した通信ポート54A経由でスイッチ装置101Bへ送信する。
【0142】
スイッチ装置101Bにおけるスイッチ部51Bは、スイッチ装置101Aから送信されたイーサネットフレーム受信して、受信したイーサネットフレームを記憶部53Bに保存する。
【0143】
より詳細には、変更部56Bは、記憶部53Bに保存されたイーサネットフレームにOAMフレームが含まれる場合、当該OAMフレームに含まれる通信異常通知を取得する。
【0144】
変更部56Bは、取得した通信異常通知を経路制御部57Bへ出力する。
【0145】
経路制御部57は、通信異常の検知された通信経路を、異なるスイッチ装置101Cを経由する他の通信経路へ切り替える経路変更処理を行う。
【0146】
より詳細には、経路制御部57Bは、変更部56Bから通信異常通知を受けて、記憶部53Bに保存された当該イーサネットフレームから送信元MACアドレスであるスイッチ装置101AのMACアドレスを取得する。
【0147】
そして、経路制御部57Bは、スイッチ装置101Aへのイーサネットフレームの送信を禁止する旨の送信禁止要求をスイッチ部51Bへ出力する。
【0148】
スイッチ部51Bは、経路制御部57Bから送信禁止要求を受けて、たとえば、自己に接続された機能部111から受信するイーサネットフレームの宛先MACアドレスがスイッチ装置101AのMACアドレスであるイーサネットフレームにおいて、宛先MACアドレスをスイッチ装置101CのMACアドレスに書き換える等の処理を行う。
【0149】
以下、TCP異常通知、ping異常通知および通信異常通知の各々を、単に異常通知とも称する。
【0150】
[動作の流れ]
車載通信システム301における各装置は、コンピュータを備え、当該コンピュータにおけるCPU等の演算処理部は、以下のシーケンス図またはフローチャートの各ステップの一部または全部を含むプログラムを図示しないメモリからそれぞれ読み出して実行する。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、外部からインストールすることができる。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、記録媒体に格納された状態で流通する。
【0151】
図4は、本発明の実施の形態に係るスイッチ装置が、機能部に関する異常を検知し、異常が検知された機能部に対する変更処理のシーケンスを示す図である。
図4は、スイッチ装置101Aおよびスイッチ装置101Bにおける処理を代表的に示している。
【0152】
図4を参照して、まず、スイッチ装置101Aは、機能部111に関する異常を検知する(ステップS101)。
【0153】
次に、スイッチ装置101Aは、各種異常を示す異常通知を含むOAMフレームを生成する(ステップS102)。
【0154】
次に、スイッチ装置101Aは、生成したOAMフレームをスイッチ装置101Bへ送信する(ステップS103)。
【0155】
次に、スイッチ装置101Bは、受信したOAMフレームから、異常通知の種類により異常の種類を判別する(ステップS104)。
【0156】
次に、スイッチ装置101Bは、判別した異常の種類に応じてプロトコル変更処理または経路変更処理を行う(ステップS105)。
【0157】
次に、スイッチ装置101Bは、プロトコル変更処理を行う場合、異常が検知された機能部111へプロトコル変更要求を送信する(ステップS106)。
【0158】
同様に、スイッチ装置101Aおよびスイッチ装置101Bは、スイッチ装置101Aにおいて機能部111に関する新たな異常が検知されるたびに、ステップS101~ステップS106の動作を行う。
【0159】
図5は、本発明の実施の形態に係るスイッチ装置が、TCP異常を判定する際の動作手順を定めたフローチャートである。
図5は、
図4に示すステップS101~ステップS103の動作の詳細を示す。
【0160】
図5を参照して、まず、スイッチ装置101は、TCPを使用して機能部111と通信を行う際、機能部111へSYNパケットを送信する(ステップS201)。
【0161】
次に、スイッチ装置101は、SYN ACKパケットの応答を待つ(ステップS202)。
【0162】
次に、スイッチ装置101は、SYN ACKパケットを受信した場合(ステップS202でYES)、ACKパケットを当該機能部111へ送信する(ステップS203)。
【0163】
一方、スイッチ装置101は、SYNパケットを送信してから所定時間が経過してもSYN ACKパケットを受信できない場合(ステップS202でNO)、TCP異常通知を含むOAMフレームを生成し(ステップS204)、他のスイッチ装置101へ送信する(ステップS205)。
【0164】
図6は、本発明の実施の形態に係るスイッチ装置が、ping異常を判定する際の動作手順を定めたフローチャートである。
図6は、
図4に示すステップS101~ステップS103の動作の詳細を示す。
【0165】
図6を参照して、まず、スイッチ装置101は、機能部111へecho requestを送信する(ステップS301)。
【0166】
次に、スイッチ装置101は、echo replyの応答を待つ(ステップS302)。
【0167】
次に、スイッチ装置101は、echo replyを受信した場合(ステップS302でYES)、機能部111からの次のイーサネットフレームを待つ(ステップS303)。
【0168】
次に、スイッチ装置101は、当該機能部111からのイーサネットフレームを受信した場合(ステップS303でYES)、当該機能部111からの新たなイーサネットフレームを待つ(ステップS303)。
【0169】
一方、スイッチ装置101は、echo requestを送信してから所定時間が経過してもecho replyを受信できない場合(ステップS302でNO)、またはecho replyを受信してから所定時間が経過しても当該機能部111からの新たなイーサネットフレームを受信できない場合(ステップS303でNO)、ping異常通知を含むOAMフレームを生成し(ステップS304)、他のスイッチ装置101へ送信する(ステップS305)。
【0170】
図7は、本発明の実施の形態に係るスイッチ装置が、変更処理を行う際の動作手順を定めたフローチャートである。
図7は、
図4に示すステップS104~ステップS106の動作の詳細を示す。
【0171】
図7を参照して、まず、スイッチ装置101は、他のスイッチ装置101から異常通知を含むOAMフレームを受信する(ステップS401)。
【0172】
次に、スイッチ装置101は、それぞれ、OAMフレームに含まれる異常通知の種類およびIPアドレスにより、異常の種類および異常機能部をそれぞれ判断する(ステップS402)。
【0173】
次に、スイッチ装置101は、OAMフレームにTCP異常通知が含まれる場合(ステップS403でYES)、プロトコル変更要求PC1を含むイーサネットフレームを生成し(ステップS404)、異常機能部へ送信する(ステップS405)。
【0174】
一方、スイッチ装置101は、OAMフレームにTCP異常通知が含まれず(ステップS403でNO)、ping異常通知が含まれる場合(ステップS406でYES)、プロトコル変更要求PC2を含むイーサネットフレームを生成し(ステップS407)、異常機能部へ送信する(ステップS405)。
【0175】
一方、スイッチ装置101は、OAMフレームにTCP異常通知が含まれず(ステップS403でNO)、かつping異常通知が含まれない場合(ステップS406でNO)、すなわちOAMフレームに通信異常通知が含まれる場合(ステップS408)、経路変更処理を行う(ステップS409)。
【0176】
なお、本発明の実施の形態に係る車載通信システムにおけるスイッチ装置では、異常検知1~3を行う構成であるとしたが、これに限定するものではない。スイッチ装置101は、異常検知1~3のうちの一部を行う構成であってもよい。
【0177】
また、本発明の実施の形態に係る車載通信システムにおけるスイッチ装置では、変更部56Bは、TCP異常であると判断された機能部111Cに対して、使用するプロトコルを、複数レイヤのうちの同じレイヤにおいて用いられる他のプロトコルに変更させる構成であるとしたが、これに限定するものではない。変更部56Bは、TCP異常であると判断された機能部111Cに対して、上記複数レイヤのうち、機能部111Cが使用しているプロトコルより下位のレイヤにおいて用いられるプロトコルに従う通信を行わせる構成であってもよい。
【0178】
また、本発明の実施の形態に係る車載通信システムにおけるスイッチ装置では、変更部56Bは、TCP異常であると判断された機能部111Cに対して、使用するプロトコルを、複数レイヤのうちの同じレイヤにおいて用いられる他のプロトコルに変更させる構成であるとしたが、これに限定するものではない。検知部52は、TCP異常以外の異常を検知し、使用するプロトコルを、上記複数レイヤのうちの同じレイヤにおいて用いられる他のプロトコルに変更させる構成であってもよい。
【0179】
また、本発明の実施の形態に係る車載通信システムにおけるスイッチ装置では、変更部56Bは、ping異常であると判断された機能部111Cに対して、上記複数レイヤのうち、機能部111Cが使用しているプロトコルより下位のレイヤにおいて用いられるプロトコルに従う通信を行わせる構成であるとしたが、これに限定するものではない。検知部52は、ping異常以外の異常を検知し、上記複数レイヤのうち、機能部111Cが使用しているプロトコルより下位のレイヤにおいて用いられるプロトコルに従う通信を行わせる構成であってもよい。
【0180】
また、本発明の実施の形態に係る車載通信システムでは、車両1は、自動運転を行う構成であるとしたが、これに限定するものではない。車両1は、自動運転を行わない構成であってもよい。
【0181】
また、本発明の実施の形態に係る車載通信システムでは、スイッチ装置101Aが機能部111に関する異常を検知し、スイッチ装置101Bがプロトコル変更処理を行う構成であるとしたが、これに限定するものではない。たとえば、スイッチ装置101Bが機能部111に関する異常を検知してプロトコル変更処理を行う構成であってもよい。この場合、スイッチ装置101Bにおいて、検知部52Bが機能部111に関する異常を検知し、変更部56Bがプロトコル変更処理を行う。
【0182】
ところで、たとえば特許文献1に記載の車載ネットワークにおいて車載ECUの異常を検知する方法として、通信ゲートウェイが車載ECUの異常を検知する方法が考えられる。
【0183】
しかしながら、車載ECUの異常を検知しても、当該車載ECUが復旧するまでに時間を要する場合、異常状態の継続により、運転支援または自動運転に用いるデータの処理に支障が生じる可能性がある。
【0184】
これに対して、本発明の実施の形態に係る車載通信システムでは、検知部52は、機能部111に関する異常を検知する。変更部56は、検知部52によって異常が検知された場合、異常が検知された機能部111に対して、使用するプロトコルを変更させるプロトコル変更処理を行う。
【0185】
このように、異常が検知された機能部111である異常機能部が使用するプロトコルを変更させる構成により、異常機能部と他の機能部111との通信に使用するプロトコルを変更し、変更後のプロトコルに従って当該他の機能部111が異常機能部と通信を行うことができるため、異常機能部との通信を継続させることができる。
【0186】
したがって、本発明の実施の形態に係る車載通信システムでは、車載ネットワークにおいてより安定した処理を実現することができる。
【0187】
また、本発明の実施の形態に係る車載通信システムでは、機能部111は、複数レイヤを有するモデルに従って動作する。検知部52は、機能部111とのTCPに従う所定の情報の送受信に失敗した場合、当該機能部111がTCP異常であると判断する。変更部56は、プロトコル変更処理として、TCP異常であると判断された機能部111に対して、使用するプロトコルを、複数レイヤのうちの同じレイヤにおいて用いられる他のプロトコルに変更させる。
【0188】
このような構成により、TCPを用いた通信に異常がある一方で、異なるプロトコルでは通信可能な場合において、変更後のプロトコルを使用して異常機能部との通信を継続させることができる。
【0189】
また、本発明の実施の形態に係る車載通信システムでは、機能部111は、複数レイヤを有するモデルに従って動作する。検知部52は、スイッチ装置101によって機能部111へ送信されたpingに対する所定の情報が当該機能部111から受信できない場合、当該機能部111がping異常であると判断する。変更部56は、プロトコル変更処理として、ping異常であると判断された機能部111に対して、複数レイヤのうち、当該機能部111が使用しているプロトコルより下位のレイヤにおいて用いられるプロトコルに従う通信を行わせる。
【0190】
このような構成により、同一レイヤにおいては通信不能である一方で、異なるレイヤにおいては通信可能な場合において、変更後のプロトコルを使用して異常機能部との通信を継続させることができる。
【0191】
また、本発明の実施の形態に係る車載通信システムでは、検知部52は、自己のスイッチ装置101および他のスイッチ装置101間の通信経路における異常である通信異常を検知する。経路制御部57は、通信異常の検知された通信経路を、異なるスイッチ装置101を経由する他の通信経路へ切り替える経路変更処理を行う。
【0192】
このような構成により、異なるスイッチ装置101を経由してデータを伝送し、通信異常である通信経路を避けて通信を継続させることができる。
【0193】
また、本発明の実施の形態に係る車載通信システムでは、車両1は、自動運転を行う。
【0194】
このような構成により、車両1において、機能部111間の通信を継続させることにより、自動運転を安定して継続することができる。
【0195】
また、本発明の実施の形態に係るスイッチ装置では、スイッチ部51は、車両1に搭載される複数の機能部111間のデータを中継する。検知部52は、機能部111に関する異常を検知する。変更部56は、検知部52によって異常が検知された場合、異常が検知された機能部111に対して、使用するプロトコルを変更させるプロトコル変更処理を行う。
【0196】
このように、異常が検知された機能部111である異常機能部が使用するプロトコルを変更させる構成により、異常機能部と他の機能部111との通信に使用するプロトコルを変更し、変更後のプロトコルに従って当該他の機能部111が異常機能部と通信を行うことができるため、異常機能部との通信を継続させることができる。
【0197】
したがって、本発明の実施の形態に係るスイッチ装置では、車載ネットワークにおいてより安定した処理を実現することができる。
【0198】
また、本発明の実施の形態に係る通信制御方法では、まず、機能部111に関する異常を検知する。次に、機能部111に関する異常を検知した場合、異常が検知された当該機能部111に対して、使用するプロトコルを変更させるプロトコル変更処理を行う。
【0199】
このように、異常が検知された機能部111である異常機能部が使用するプロトコルを変更させる構成により、異常機能部と他の機能部111との通信に使用するプロトコルを変更し、変更後のプロトコルに従って当該他の機能部111が異常機能部と通信を行うことができるため、異常機能部との通信を継続させることができる。
【0200】
したがって、本発明の実施の形態に係る通信制御方法では、車載ネットワークにおいてより安定した処理を実現することができる。
【0201】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0202】
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
車両に搭載される複数の機能部間のデータを中継するスイッチ装置と、
前記機能部に関する異常を検知する検知部と、
前記検知部によって異常が検知された場合、前記異常が検知された前記機能部に対して、使用するプロトコルを変更させるプロトコル変更処理を行う変更部とを備え、
前記検知部は、OAMフレームを用いて、検知した前記異常を他の前記スイッチ装置へ通知する、車載通信システム。
【0203】
[付記2]
車両に搭載される複数の機能部間のデータを中継するスイッチ部と、
前記機能部に関する異常を検知する検知部と、
前記検知部によって異常が検知された場合、前記異常が検知された前記機能部に対して、使用するプロトコルを変更させるプロトコル変更処理を行う変更部とを備え、
前記検知部は、OAMフレームを用いて、検知した前記異常を他の前記スイッチ装置へ通知する、スイッチ装置。
【符号の説明】
【0204】
1 車両
10 イーサネットケーブル
51 スイッチ部
52 検知部
53 記憶部
54 通信ポート
56 変更部
57 経路制御部
101 スイッチ装置
111 機能部
301 車載通信システム