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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/42 20100101AFI20221018BHJP
   F16H 59/54 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
F16H61/42
F16H59/54
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021060132
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022156439
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2021-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】長友 伸晃
【審査官】糟谷 瑛
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-94073(JP,A)
【文献】特開2007-92808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 59/00-61/12
F16H 61/16-61/24
F16H 61/66-61/70
F16H 63/40-63/50
A01D 69/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置(3)への動力伝動系に可変油圧ポンプ(40)と可変油圧モータ(41)で構成される静油圧式無段変速装置(14)を設け、変速操作具(15)にて静油圧式無段変速装置(14)を変速操作すると共に、走行装置(3)を制動する駐車ブレーキ操作具(18)を設けた作業車両において、機体が駐車状態であることを検出する駐車状態検出手段(43,44)を設け、該駐車状態検出手段(43,44)が機体の駐車状態を検出すると、変速操作具(15)の操作位置に関わらず、可変油圧ポンプ(40)のポンプ容積を最小にし、可変油圧モータ(41)のモータ容積を最大にし、
駐車状態検出手段(43,44)が駐車ブレーキ操作具(18)の駐車ブレーキ作動操作を検出する駐車センサ(43)と作業機(5,8)への駆動の切り操作を検出する作業系クラッチセンサ(44)であることを特徴とする業車両。
【請求項2】
低速の作業速度の範囲内で変速操作具(15)が中立位置(N)から増速されている時は、可変油圧モータ(41)のモータ容積を走行モードステートのままで、変速操作具(15)の増速側への操作量に比例させて可変油圧ポンプ(40)のポンプ容積のみを増加させて増速し、高速の路上速度の範囲内で変速操作具(15)が増速されている時は、変速操作具(15)の増速側への操作量に比例させて可変油圧モータ(41)のモータ容積を走行モードステートから減少させ、可変油圧ポンプ(40)のポンプ容積を増加させて増速することを特徴とする請求項に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧変速モータと油圧変速ポンプを備えた静油圧式無段変速装置を走行装置の動力伝動系に設けたコンバインやトラクタ等の作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインやトラクタ及びブルドーザ等の作業車両においては、エンジンから走行装置への走行駆動力伝動経路に静油圧式無段変速装置を装備し、変速レバー等の変速操作具の操作にて無段で変速できるようにしている。(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-264521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
機体を駐車している時は、変速レバー等の変速操作具を中立位置にしているが、搭乗者の身体が変速操作具に接当して誤って中立位置から増速操作してしまったり、変速操作具からの操作連携手段が故障して変速操作具は中立位置であるのに静油圧式無段変速装置が作動して機体が急発進してしまう恐れがあった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、駐車時に不用意な変速操作具の操作等に起因して静油圧式無段変速装置が作動しても、機体が急発進することを防止した作業車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明は、走行装置(3)への動力伝動系に可変油圧ポンプ(40)と可変油圧モータ(41)で構成される静油圧式無段変速装置(14)を設け、変速操作具(15)にて静油圧式無段変速装置(14)を変速操作すると共に、走行装置(3)を制動する駐車ブレーキ操作具(18)を設けた作業車両において、機体が駐車状態であることを検出する駐車状態検出手段(43,44)を設け、該駐車状態検出手段(43,44)が機体の駐車状態を検出すると、変速操作具(15)の操作位置に関わらず、可変油圧ポンプ(40)のポンプ容積を最小にし、可変油圧モータ(41)のモータ容積を最大にし、
駐車状態検出手段(43,44)が駐車ブレーキ操作具(18)の駐車ブレーキ作動操作を検出する駐車センサ(43)と作業機(5,8)への駆動の切り操作を検出する作業系クラッチセンサ(44)であることを特徴とする作業車両である。
請求項1記載の本発明によれば、駐車ブレーキで機体は停止状態を維持するか、仮に移動したとしても超微速移動しかせず安全である。
請求項2記載の本発明は、低速の作業速度の範囲内で変速操作具(15)が中立位置(N)から増速されている時は、可変油圧モータ(41)のモータ容積を走行モードステートのままで、変速操作具(15)の増速側への操作量に比例させて可変油圧ポンプ(40)のポンプ容積のみを増加させて増速し、高速の路上速度の範囲内で変速操作具(15)が増速されている時は、変速操作具(15)の増速側への操作量に比例させて可変油圧モータ(41)のモータ容積を走行モードステートから減少させ、可変油圧ポンプ(40)のポンプ容積を増加させて増速することを特徴とする請求項1記載の本発明の作業車両である。
本発明に関連する第1の発明は、走行装置3への動力伝動系に可変油圧ポンプ40と可変油圧モータ41で構成される静油圧式無段変速装置14を設け、変速操作具15にて静油圧式無段変速装置14を変速操作すると共に、走行装置3を制動する駐車ブレーキ操作具18を設けた作業車両において、機体が駐車状態であることを検出する駐車状態検出手段43,44を設け、該駐車状態検出手段43,44が機体の駐車状態を検出すると、変速操作具15の操作位置に関わらず、可変油圧ポンプ40のポンプ容積を最小にし、可変油圧モータ41のモータ容積を最大にする作業車両である。
【0007】
本発明に関連する第1の発明によれば、機体が駐車状態であることを検出する駐車状態検出手段43,44を設け、該駐車状態検出手段43,44が機体の駐車状態を検出すると、変速操作具15の操作位置に関わらず、可変油圧ポンプ40のポンプ容積を最小にし、可変油圧モータ41のモータ容積を最大にするので、駐車している時に搭乗者の身体が変速操作具15に接当して誤って中立位置から増速操作してしまったり、変速操作具15からの操作連携手段が故障して変速操作具15は中立位置であるのに静油圧式無段変速装置14が作動しても、可変油圧ポンプ40のポンプ容積が最小で可変油圧モータ41のモータ容積が最大であるから、駐車ブレーキで機体は停止状態を維持するか、仮に移動したとしても超微速移動しかせず安全である。
【0008】
本発明に関連する第2の発明は、走行装置3への動力伝動系に可変油圧ポンプ40と可変油圧モータ41で構成される静油圧式無段変速装置14を設け、変速操作具15にて静油圧式無段変速装置14を変速操作すると共に、走行装置3を制動する駐車ブレーキ操作具18を設けた作業車両において、機体が駐車状態であることを検出する駐車状態検出手段43,44を設け、該駐車状態検出手段43,44が機体の駐車状態を検出しないで、変速操作具15が中立位置Nに操作されている時、可変油圧ポンプ40のポンプ容積を最小にし、可変油圧モータ41のモータ容積を比較的小さい容積である走行モードステートに設定する作業車両である。
【0009】
本発明に関連する第2の発明によれば、機体が駐車状態であることを検出する駐車状態検出手段43,44を設け、該駐車状態検出手段43,44が機体の駐車状態を検出しないで、変速操作具15が中立位置Nに操作されている時、可変油圧ポンプ40のポンプ容積を最小にし、可変油圧モータ41のモータ容積を比較的小さい容積である走行モードステートに設定するので、変速操作具15を中立位置Nから増速すると、可変油圧モータ41の負荷が適正となりコンバインの走り出しがスムーズになる。
【0010】
本発明に関連する第3の発明は、駐車状態検出手段43,44が駐車ブレーキ操作具18の駐車ブレーキ作動操作を検出する駐車センサ43と作業機5,8への駆動の切り操作を検出する作業系クラッチセンサ44である本発明に関連する第1または第2の発明の作業車両である。
【0011】
本発明に関連する第4の発明は、低速の作業速度の範囲内で変速操作具15が中立位置Nから増速されている時は、可変油圧モータ41のモータ容積を走行モードステートのままで、変速操作具15の増速側への操作量に比例させて可変油圧ポンプ40のポンプ容積のみを増加させて増速し、高速の路上速度の範囲内で変速操作具15が増速されている時は、変速操作具15の増速側への操作量に比例させて可変油圧モータ41のモータ容積を走行モードステートから減少させ、可変油圧ポンプ40のポンプ容積を増加させて増速する本発明に関連する第2または第3の発明の作業車両である。
【0012】
本発明に関連する第5の発明は、走行装置3への動力伝動系に可変油圧ポンプ40と可変油圧モータ41で構成される静油圧式無段変速装置14を設け、変速操作具15にて静油圧式無段変速装置14を変速操作する作業車両において、変速操作具15が前進側に最大操作量操作され、その最大操作量操作が所定時間以上継続した時は、可変油圧モータ41のモータ容積を走行可能な最小の容積のクルーズモードステートに設定する作業車両である。
【0013】
本発明に関連する第5の発明によれば、変速操作具15が前進側に最大操作量操作され、その最大操作量操作が所定時間以上継続した時は、可変油圧モータ41のモータ容積を走行可能な最小の容積のクルーズモードステートに設定するので、高速走行継続時に、慣性を利用して可変油圧モータ41からの出力を最小とすることで、エネルギーを節減することができる。
【0014】
本発明に関連する第6の発明は、作業容器9内に設けた満杯センサにより、作業容器9内が満杯であることを検出した場合には、クルーズモードステートに設定することを規制する本発明に関連する第5の発明の作業車両である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明における実施の形態のコンバインの側面図である。
図2】本発明における実施の形態のコンバインの正面図である。
図3】本発明における実施の形態のコンバインの動力伝動線図である。
図4】本発明における実施の形態の自動制御のブロック図である。
図5】本発明における実施の形態の可変油圧ポンプと可変油圧モータの容積変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本願の開示する実施形態であるコンバインを詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0017】
<全体構成>
コンバインは、車体1の下部側に土壌面を走行する左右一対の走行クローラ2,2を有するクローラ走行装置3を配設し、車体1の前端側に分草杆4を備えた作業機としての刈取部5が設けられている。刈取部5の後方には、操縦席6を備えた操縦部7があり、また車体1の上方には刈取部5から搬送されてくる穀桿を引き継いで搬送して脱穀・選別する作業機としての脱穀部8が操縦部7の左後方に設けられ、該脱穀部8で脱穀選別された穀粒を一時貯溜する作業容器としてのグレンタンク9が脱穀部8の右側に配置されている。グレンタンク9の後部に排出オーガ10を起伏可能に連接して、グレンタンク9内の穀粒をコンバインの外部に排出する構成としている。
【0018】
<操縦部7>
操縦部7の前側及び側部の操作パネル11には、左右走行クローラ2,2のサイドクラッチ及びサイドブレーキを操作して機体の操向操作を行なう操向レバー12と、左右走行クローラ2,2へディーゼルエンジン13からの駆動力を変速して伝達する静油圧式無段変速装置(以下、走行HSTという)14を中立及び前後進変速操作する変速操作具としての変速レバー15と、刈取部5及び脱穀部8への駆動を入り切り操作する刈脱クラッチレバー16と、左右走行クローラ2,2や刈取部5を駆動させずに脱穀クラッチを入りにして脱穀部8のみを駆動させる手扱ぎ作業に切り換える手扱ぎレバーと、脱穀部8で脱穀した穀粒を貯留するグレンタンク9内の穀粒を機外に排出する排出オーガ10を入り切り操作するオーガ排出レバーとが設けられている。
【0019】
そして、ディーゼルエンジン13からの駆動力を変速して伝達する走行HST14から駆動力が伝達される左右駆動軸2a,2aにて左右走行クローラ2,2の駆動スプロケット2b,2bが駆動回転されて、左右走行クローラ2,2は駆動回転する。
【0020】
また、ステップフロア17には、左右駆動軸2a,2aの駐車ブレーキを作動させる駐車ブレーキ操作具としての駐車ブレーキペダル18が設けられている。
【0021】
<刈取部5>
刈取部5は、立毛穀稈を引き起す引起し装置19と、引起し後の穀稈を刈り取る刈取装置20と、刈取後の穀稈の株元部を挟持して揚上搬送する株元搬送チエン及び穀稈の穂先側を係止保持して揚上搬送する穂先搬送チエンとからなる構成としている。
【0022】
<脱穀部8>
脱穀部8は、扱胴21を内装軸架した扱室の下半周部に沿って受網を張設している。扱室の上方部を覆う扱胴カバーは、扱胴軸方向に平行な軸芯回りに揺動開閉可能に構成している。
【0023】
扱室の扱口側一側には穀稈を挟持搬送するフイ-ドチエンとこの上側に対設する挟持レ-ルを配設している。この挟持レ-ルは扱胴カバー側に装着して該扱胴カバーと共に揺動開閉する構成としている。扱室のフイ-ドチエン側とは反対側他側には2番処理胴を内装軸架した2番処理室を並設している。また、前記2番処理胴の後方にはこれと同一軸芯上において排塵処理胴を内装軸架した排塵処理室を構成して設けている。
【0024】
扱室の下方及び排塵選別室の下方には揺動可能に架設した揺動選別装置(揺動選別棚)が設けられてあり、更に、その下方には選別方向の上手側から順に、唐箕と、1番移送螺旋、2番移送螺旋と、その上方に前記排塵フアンを配置して選別室を構成している。なお、1番揚穀装置は1番移送螺旋で回収された穀物を揚送してグレンタンク9内に収容し、グレンタンク9内の穀粒はオーガ排出レバーにて入り切り操作される排出オーガ10によって取り出すことができるようになっている。また、2番揚穀装置は2番移送螺旋で回収された2番処理物を2番処理胴の室内へ還元するようになっている。
【0025】
そして、揺動選別装置は、扱室からの脱穀処理後の処理物、つまり、被処理物を受け入れて揺動移送しながらふるい選別する構成であり、選別方向上手側から移送棚、チャフシ-ブ、ストロ-ラックの順に配置し、且つ、前記チャフシ-ブの下方にグレンシ-ブ及び1番戻し棚を配置して一体的に設け、唐箕及び排塵フアンによる選別風と揺動との共同作用によって扱室から漏下してきた処理物を受け入れて揺動移送しながらふるい選別処理するように構成している。
【0026】
<動力伝動機構>
図3に示すように、ディーゼルエンジン13の一方の出力軸22から走行HST14の入力軸23へベルト伝動によって動力が伝動され、走行HST14からミッションケース24へ伝動され、ミッションケース24から左右に突出する左右駆動軸2a,2aにて左右走行クローラ2,2の駆動スプロケット2b,2bが駆動回転されて、左右走行クローラ2,2は駆動回転する。
【0027】
そして、出力軸22から第一脱穀・刈取ケース25の入力軸26にベルト伝動で動力が伝動される。
【0028】
第一脱穀・刈取ケース25から脱穀部8の扱胴21等へ伝動する出力軸27が駆動され、第二脱穀・刈取ケース28へ伝動される。
【0029】
第二脱穀・刈取ケース28からは直接脱穀カウンタ軸29が駆動され、刈取変速用HST30を介して刈取駆動軸31が駆動される。刈取駆動軸31は刈取入力軸32へ伝動する。この刈取変速用HST30は、例えば、走行HST14が低速にされて低速で刈取り作業を行う場合に、高速で刈取駆動軸31を駆動するようにして、倒伏した穀稈の刈取に適した状態に自動で変速するようにする。
【0030】
ディーゼルエンジン13の他方の出力軸33からカウンタケース34の入力軸35へ伝動され、入力軸35から直接コンプレッサー36が駆動され、カウンタケース34の出力軸37からグレンタンク9の底部に設ける螺旋軸38を駆動する。
【0031】
<変速機構>
操縦部7側部の操作パネル11に設けた変速レバー15の操作にて、ディーゼルエンジン13の動力をミッションケース24に付設の走行HST14で変速し、左右の走行クローラ2,2に動力を伝動して任意の速度で走行する。
【0032】
走行HST14は、可変油圧ポンプ40と可変油圧モータ41で構成されており、変速レバー15の操作にて可変油圧ポンプ40のポンプ容積と可変油圧モータ41のポンプ容積を変更して変速する。
【0033】
可変油圧ポンプ40は、油圧ポンプ40aと該油圧ポンプ40aのポンプ容積を変更するポンプアクチュエータ40b(ソレノイド等の電磁的アクチュエータ)から構成され、コントローラ42からの出力でポンプアクチュエータ40b(ソレノイド等の電磁的アクチュエータ)が作動して油圧ポンプ40aのポンプ容積が変更される。
【0034】
可変油圧モータ41は、油圧モータ41aと該油圧モータ41aのモータ容積を変更するモータアクチュエータ41bから構成され、コントローラ42からの出力でモータアクチュエータ41bが作動して油圧モータ41aのモータ容積が変更される。
【0035】
詳細に説明すると、変速レバー15の回動枢支軸部に変速レバーポテンショメータ15aを設けて、変速レバー15の操作量を検出して、コントローラ42に入力する。なお、変速レバー15が中立位置Nでは、可変油圧ポンプ40から可変油圧モータ41にオイルが送られないので走行が停止され、変速レバー15の中立位置Nからの操作量が多いほど高速となる。
【0036】
一方、駐車ブレーキを作動させる駐車ブレーキペダル18の踏み込み操作による駐車ブレーキ作動操作を検出する駐車状態検出手段である駐車ペダルスイッチ43を設け、該駐車ペダルスイッチ43が駐車ブレーキペダル18の踏み込み操作による駐車ブレーキ作動操作を検出して、コントローラ42に入力する。
【0037】
また、刈脱クラッチレバー16にて刈取部5及び脱穀部8への駆動を切り操作したことを検出する駐車状態検出手段である作業系クラッチスイッチ44を設け、該作業系クラッチスイッチ44が刈脱クラッチレバー16の操作による刈取部5及び脱穀部8への駆動の入り操作を検出して、コントローラ42に入力する。
【0038】
そして、以下の各モードに記載するように、変速レバー15の回動操作により、コントローラ42は走行HST14を制御する。
【0039】
1.駐車モード(駐車ペダルスイッチ43が駐車ブレーキペダル18の踏み込み操作による駐車ブレーキ作動操作を検出し、作業系クラッチスイッチ44が刈脱クラッチレバー16の操作による刈取部5及び脱穀部8への駆動の切り操作を検出している場合)。
【0040】
変速レバー15の操作位置(回動操作量)の如何にかかわらず、ポンプアクチュエータ40bを作動させて油圧ポンプ40aのポンプ容積を最小にし、モータアクチュエータ41bを作動させて油圧モータ41aのモータ容積を最大にする。
【0041】
即ち、コントローラ42は、駐車ペダルスイッチ43の駐車ブレーキ作動操作検出と作業系クラッチスイッチ44の刈取部5及び脱穀部8への駆動の切り操作検出の出力で機体が駐車状態であることを認識し、ポンプアクチュエータ40bを作動させて油圧ポンプ40aのポンプ容積を最小にし、モータアクチュエータ41bを作動させて油圧モータ41aのモータ容積を最大にする。
【0042】
従って、駐車状態で通常は変速レバー15が中立位置Nにされているが、作業者の身体が変速レバー15に接当して誤って回動操作してしまった時や変速レバーポテンショメータ15aが故障して中立位置Nからの回動操作出力をした時に、油圧ポンプ40aのポンプ容積が最小で油圧モータ41aのモータ容積が最大であるから、変速レバー15が最高速度に変速操作された出力がされても機体は微速移動しかせず安全である。
【0043】
2.走行モード(駐車ペダルスイッチ43が駐車ブレーキペダル18の踏み込み操作されておらず駐車ブレーキ作動操作が検出されてなく、作業系クラッチスイッチ44が刈脱クラッチレバー16の操作による刈取部5及び脱穀部8への駆動の切り操作が検出されている場合)。
【0044】
(1)変速レバー15が中立位置N(変速レバーポテンショメータ15aが変速レバー15の中立位置を検出)。
【0045】
ポンプアクチュエータ40bを作動させて油圧ポンプ40aのポンプ容積を最小にし、モータアクチュエータ41bを作動させて油圧モータ41aのモータ容積を「走行モードステート」に設定する。図5に示すように、走行モードステートは、モータアクチュエータ41bを作動させて油圧モータ41aのモータ容積を比較的小さい容積(回転数が速い)に設定する。
【0046】
即ち、コントローラ42は、駐車ペダルスイッチ43の駐車ブレーキ作動操作が検出されていないことと作業系クラッチスイッチ44の刈取部5及び脱穀部8への駆動の切り操作検出の出力で機体が走行状態であることを認識し、ポンプアクチュエータ40bを作動させて油圧ポンプ40aのポンプ容積を最小にし、モータアクチュエータ41bを作動させて油圧モータ41aのモータ容積を比較的小さい容積(回転数が速い)の「走行モードステート」に設定する。
【0047】
従って、変速レバー15を中立位置Nから増速すると、油圧ポンプ40aのポンプ容積が最小で油圧モータ41aのモータ容積が比較的小さい容積(回転数が速い)の「走行モードステート」であるから、油圧モータ41aの負荷が適正となりコンバインの走り出しがスムーズになる。
【0048】
(2)変速レバー15が中立位置Nから増速(変速レバーポテンショメータ15aが変速レバー15の中立位置から増速側に操作されたことを検出)。
【0049】
1)圃場内でコンバインが収穫作業を行なう作業速度(低速走行)の範囲内で変速レバー15が中立位置Nから増速されていることを変速レバーポテンショメータ15aが検出している時は、油圧モータ41aのモータ容積を「走行モードステート」のままで、変速レバー15の増速側への操作量に比例させて油圧ポンプ40aのポンプ容積のみを増加させて増速する。
【0050】
コンバインが路上速度(高速走行=作業速度よりも早い速度)の範囲内で変速レバー15が増速されていることを変速レバーポテンショメータ15aが検出している時は、変速レバー15の増速側への操作量に比例させて油圧モータ41aのモータ容積を「走行モードステート」から減少させ、油圧ポンプ40aのポンプ容積を増加させて増速する。
【0051】
従って、コンバインの圃場内での作業速度(低速走行)での走行と路上での路上速度(高速走行=作業速度よりも早い速度)での走行が、いずれの場合も油圧モータ41aの負荷が適正となり良好な収穫作業及び路上走行が行なえる。
【0052】
2)変速レバー15が前進側に最大操作量操作され(変速レバーポテンショメータ15aが変速レバー15の前進側への最大操作量を検出)、その最大操作量操作が所定時間以上継続した時は、モータアクチュエータ41bを作動させて油圧モータ41aのモータ容積を走行可能な最小の容積(回転数が最速)の「クルーズモードステート」に設定する。
【0053】
従って、高速走行継続時に、慣性を利用して油圧モータ41aからの出力を最小とすることで、エネルギーを節減することができる。
【0054】
なお、グレンタンク9内に設けた満杯センサにより、グレンタンク9内に収穫物が満杯であることを検出した場合には、上記「クルーズモードステート」に設定することを規制し、安全性の向上を図ると共に、出力不足の防止を図る。
【0055】
3)駐車ペダルスイッチ43が駐車ブレーキペダル18の踏み込み操作されておらず駐車ブレーキ作動操作が検出されてなく、作業系クラッチスイッチ44が刈脱クラッチレバー16の操作による刈取部5及び脱穀部8への駆動の入り操作が検出され、変速レバーポテンショメータ15aが変速レバー15の中立位置を検出している時は、ポンプアクチュエータ40bを作動させて油圧ポンプ40aのポンプ容積を最小にし、モータアクチュエータ41bを作動させて油圧モータ41aのモータ容積を比較的大きい容積(回転数が遅い)「作業モードステート」に設定する。
【0056】
従って、変速レバー15を中立位置Nから増速して収穫作業を開始する前に、油圧モータ41aの負荷を収穫作業に適したものにすることができ、適切な収穫作業が行なえる。
【0057】
4)上記3)において、圃場内でコンバインが収穫作業を行なう作業速度の範囲内において低速作業速度で変速レバー15が中立位置Nから増速されていることを変速レバーポテンショメータ15aが検出している時は、油圧モータ41aのモータ容積を「作業モードステート」のままで、変速レバー15の増速側への操作量に比例させて油圧ポンプ40aのポンプ容積のみを増加させて増速する。
【0058】
圃場内でコンバインが収穫作業を行なう作業速度の範囲内において高速作業速度で変速レバー15が中立位置Nから増速されていることを変速レバーポテンショメータ15aが検出している時は、変速レバー15の増速側への操作量に比例させて油圧ポンプ40aのポンプ容積を増加させ、変速レバー15の増速側への操作量に比例させて油圧モータ41aのモータ容積を「作業モードステート」から減少させて、増速する。
【0059】
従って、コンバインの圃場内での低速作業速度及び高速作業速度のいずれの場合も油圧モータ41aの負荷が適正となりエネルギーを節減して良好な収穫作業が行なえる。
【0060】
5)上記4)において、操作パネル11に湿田モードスイッチ50を設け、圃場が湿田の場合に作業者が該湿田モードスイッチ50を操作して湿田モードにすると、変速レバー15を中立位置Nから増速操作した場合、油圧モータ41aのモータ容積を「作業モードステート」のままで、変速レバー15の増速側への操作量に比例させて油圧ポンプ40aのポンプ容積のみを増加させて増速する。
【0061】
従って、湿田圃場内で走行負荷がかかることによるエンジン過負荷を防止でき、湿田圃場内でのコンバインの作業性能を維持できる。
【0062】
6)上記4)において、エンジンECU60からエンジン過負荷の判定出力がコントローラ42に入力された時は、変速レバー15を中立位置Nから増速操作すると、油圧モータ41aのモータ容積を「作業モードステート」のままで、変速レバー15の増速側への操作量に比例させて油圧ポンプ40aのポンプ容積のみを増加させて増速する。
【0063】
従って、エンジン過負荷を防止でき、コンバインの作業性能を維持できる。
【0064】
7)上記4)において、脱穀部8の処理量を検出するセンサを設けて、該センサから脱穀部過負荷の判定出力がコントローラ42に入力された時は、変速レバー15を中立位置Nから増速操作すると、油圧モータ41aのモータ容積を「作業モードステート」のままで、変速レバー15の増速側への操作量に比例させて油圧ポンプ40aのポンプ容積のみを増加させて増速する。
【0065】
従って、脱穀部過負荷による脱穀性能の低下を防止できる。
【0066】
8)上記3)において、操作パネル11に倒伏スイッチ51を設け、圃場の穀稈が倒伏している場合に作業者が該倒伏スイッチ51を操作して倒伏モードにすると、油圧モータ41aのモータ容積を作業モードステートよりも大きい容積(回転数が更に遅い)「倒伏モードステート」に設定し、油圧ポンプ40aのポンプ容積を最小にする。
【0067】
従って、変速レバー15を中立位置Nから増速して収穫作業を開始する前に、油圧モータ41aの負荷を収穫作業に適したものにすることができ、コンバインの走り出しがスムーズとなり、遅い回転数を設定することで倒伏圃場での急な走り出しを防ぐことができる。
【0068】
9)上記8)において、変速レバー15を中立位置Nから増速操作すると、油圧モータ41aのモータ容積を「倒伏モードステート」のままで、変速レバー15の増速側への操作量に比例させて油圧ポンプ40aのポンプ容積のみを増加させて増速する。
【0069】
従って、倒伏穀稈の処理によるエンジン過負荷を防止することができ、倒伏穀稈の収穫作業時の作業性能を維持できる。
【0070】
10)上記4)において、エンジンECU60から出力されるエンジン負荷率が閾値未満の場合は、図5に示す「作業モードステート」の設定値とし、負荷率が閾値以上の時は、閾値との差に応じて「作業モードステート」の設定値を油圧モータ41aのモータ容積が増加する方向に調整する。
【0071】
従って、エンジン過負率に応じて走行負荷を調節し、車速を落とすことによってコンバイン全体の負荷を自動的に軽減することができ、エネルギーの節減になる。
【0072】
11)上記4)において、走行HST14の内圧値を検出するセンサを設けて、該センサから出力される走行HST14の内圧値が閾値未満の場合は、図5に示す「作業モードステート」の設定値とし、内圧値が閾値以上の時は、閾値との差に応じて「作業モードステート」の設定値を油圧モータ41aのモータ容積が増加する方向に調整する。
【0073】
従って、過負荷状態での走行負荷を軽減し、車速を落とすことによってコンバイン全体の負荷を自動的に軽減することができ、エネルギーの節減になる。
【0074】
12)上記4)において、脱穀部8の処理量を検出するセンサを設けて、該センサから出力される処理量が閾値未満の場合は、図5に示す「作業モードステート」の設定値とし、処理量が閾値以上の時は、閾値との差に応じて「作業モードステート」の設定値を油圧モータ41aのモータ容積が増加する方向に調整する。
【0075】
従って、過負荷状態での走行負荷を軽減し、車速を落とすことによってコンバイン全体の負荷を自動的に軽減することができ、エネルギーの節減になる。
【符号の説明】
【0076】
3 走行装置(クローラ走行装置)
5 作業機(刈取部)
8 作業機(脱穀部)
9 作業容器(グレンタンク)
14 静油圧式無段変速装置
15 変速操作具(変速レバー)
18 駐車ブレーキ操作具(駐車ブレーキペダル)
40 可変油圧ポンプ
41 可変油圧モータ
43 駐車状態検出手段(駐車センサ、駐車ペダルスイッチ)
44 駐車状態検出手段(作業系クラッチセンサ、作業系クラッチスイッチ)
N 中立位置
図1
図2
図3
図4
図5