(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 9/04 20060101AFI20221018BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20221018BHJP
B60C 11/00 20060101ALI20221018BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20221018BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20221018BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20221018BHJP
C08L 9/06 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
B60C9/04 D
B60C1/00 C
B60C11/00 D
B60C9/00 B
B60C9/00 A
C08K3/04
C08L7/00
C08L9/06
(21)【出願番号】P 2021522818
(86)(22)【出願日】2020-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2020020941
(87)【国際公開番号】W WO2020241695
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2021-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2019102117
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 裕記
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 誠人
(72)【発明者】
【氏名】清水 克典
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-016924(JP,A)
【文献】特開2016-113513(JP,A)
【文献】特開2006-168595(JP,A)
【文献】特開平01-168506(JP,A)
【文献】特開2009-006983(JP,A)
【文献】特開2012-017048(JP,A)
【文献】特開2016-155925(JP,A)
【文献】特開2016-041521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00- 19/12
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1枚のカーカスプライと、前記カーカスプライをコートするカーカスコート用ゴムと、前記カーカスプライのタイヤ径方向外側に配置されるキャップトレッドゴムと、を備える空気入りタイヤにおいて、
前記1枚のカーカスプライの厚みが0.50mm~2.00mmであり、
前記カーカスコート用ゴムは、ジエン系ゴムとして天然ゴムおよびスチレン-ブタジエン共重合体ゴムと、充填剤として窒素吸着比表面積(N
2SA)が35~140m
2/g
であるカーボンブラックとを含有し、
前記ジエン系ゴム100質量部に対し、
前記スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの配合割合が60質量部未満であり、かつ前記ジエン系ゴムの残部が前記天然ゴムであり、かつ前記カーボンブラックの配合割合が25質量部以上であり、かつ
前記キャップトレッドゴムの20℃における硬度(Hs cap)と、前記カーカスコート用ゴムの20℃における貯蔵弾性率(E’carcass)とが、下記式を満たす
ことを特徴とする空気入りタイヤ。
5≦(Hs cap)/(E’carcass)≦15
【請求項2】
前記ジエン系ゴム100質量部に対し、前記カーボンブラックの配合割合が30~75質量部であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ジエン系ゴム100質量部に対し、前記カーボンブラックの配合割合が35~70質量部であることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N
2SA)が50~140m
2/gであることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記カーカスプライが有機繊維を含み、前記有機繊維が、ポリエチレンテレフタレートまたはレーヨンであることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記1枚のカーカスプライの厚みが0.70mm~1.80mmであることを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記キャップトレッドゴムの20℃における硬度(Hs cap)と、前記カーカスコート用ゴムの20℃における貯蔵弾性率(E’carcass)とが、下記式を満たすことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
5≦(Hs cap)/(E’carcass)≦14
【請求項8】
前記キャップトレッドゴムの20℃における硬度(Hs cap)と、前記カーカスコート用ゴムの20℃における貯蔵弾性率(E’carcass)とが、下記式を満たすことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
5≦(Hs cap)/(E’carcass)≦13
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関するものであり、詳しくは、ロードノイズの低減および操縦安定性の向上を両立し得る空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤは左右一対のビード部およびサイドウォール部と、両サイドウォール部に連なるとともにキャップトレッドとアンダートレッドとからなるトレッド部から主に構成されている。タイヤの内側にはカーカスプライが設けられ、カーカスプライの両端部はビードコアをタイヤ内側から外側へ包みこむように折り返されている。
【0003】
ところで、モータを動力源として走行する電気自動車は、内燃機関を動力源として走行する自動車と比較して、車両由来の騒音が大きく低減されている。そのため車両走行におけるノイズ源としてタイヤ由来の騒音(ロードノイズ)がクローズアップされており、さらなるロードノイズの低減が求められている。
【0004】
ロードノイズを低減するには、例えばキャップトレッドゴム等のタイヤを構成する部材を柔らかくすることによって、タイヤのバネ特性を低下させる手法が知られている。しかし、例えばキャップトレッドゴムを柔らかくするとタイヤの剛性が低下することで操縦安定性が低下する問題点があり、ロードノイズの低減と操縦安定性の向上は、二律背反の関係にある。
【0005】
なお、ロードノイズの低減と操縦安定性の向上を図る技術としては、例えば特許文献1~3に開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-253708号公報
【文献】特開2014-80074号公報
【文献】国際公開WO2014/002631号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって本発明の目的は、ロードノイズの低減および操縦安定性の向上を両立し得る空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、カーカスプライの厚み、カーカスプライをコートするカーカスコート用ゴムの組成、およびキャップトレッドゴムの硬度とカーカスコート用ゴムの貯蔵弾性率の比を特定化することにより、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成することができた。
【0009】
本発明は、少なくとも1枚のカーカスプライと、前記カーカスプライをコートするカーカスコート用ゴムと、前記カーカスプライのタイヤ径方向外側に配置されるキャップトレッドゴムと、を備える空気入りタイヤにおいて、
前記1枚のカーカスプライの厚みが0.50mm~2.00mmであり、
前記カーカスコート用ゴムは、ジエン系ゴムとして天然ゴムおよびスチレン-ブタジエン共重合体ゴムと、充填剤として窒素吸着比表面積(N2SA)が35~140m2/gカーボンブラックとを含有し、
前記ジエン系ゴム100質量部に対し、前記天然ゴムの配合割合が20質量部以上であり、かつ前記カーボンブラックの配合割合が25質量部以上であり、かつ
前記キャップトレッドゴムの20℃における硬度(Hs cap)と、前記カーカスコート用ゴムの20℃における貯蔵弾性率(E’carcass)とが、下記式を満たす
ことを特徴とする空気入りタイヤを提供するものである。
5≦(Hs cap)/(E’carcass)≦15
【発明の効果】
【0010】
本発明の空気入りタイヤは、少なくとも1枚のカーカスプライと、前記カーカスプライをコートするカーカスコート用ゴムと、前記カーカスプライのタイヤ径方向外側に配置されるキャップトレッドゴムと、を備え、前記1枚のカーカスプライの厚みが0.50mm~2.00mmであり、前記カーカスコート用ゴムは、ジエン系ゴムとして天然ゴムおよびスチレン-ブタジエン共重合体ゴムと、充填剤として窒素吸着比表面積(N2SA)が35~140m2/gカーボンブラックとを含有し、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、前記天然ゴムの配合割合が20質量部以上であり、かつ前記カーボンブラックの配合割合が25質量部以上であり、かつ前記キャップトレッドゴムの20℃における硬度(Hs cap)と、前記カーカスコート用ゴムの20℃における貯蔵弾性率(E’carcass)とが、5≦(Hs cap)/(E’carcass)≦15を満たすことを特徴としているので、ロードノイズの低減および操縦安定性の向上を両立し得る空気入りタイヤを提供することができる。
【0011】
上述のように、ロードノイズを低減するには、キャップトレッドゴムを柔らかくすることが有効であるが、その反面、操縦安定性が低下してしまう。本発明では、カーカスプライの厚み、カーカスプライをコートするカーカスコート用ゴムの組成、およびキャップトレッドゴムの硬度とカーカスコート用ゴムの貯蔵弾性率の比を特定化することにより、キャップトレッドゴムがロードノイズの改善を担い操縦安定性を減じた場合でも、カーカスコート用ゴムが操縦安定性を補完する役割を果たし、結果として二律背反の関係にあるロードノイズの低減と操縦安定性の向上を同時に達成することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0013】
(カーカスプライ)
本発明の空気入りタイヤに用いられるカーカスプライは、タイヤ幅方向両側のビードコア間に架け渡されてタイヤの骨格を形成する部材である。なお、タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸と平行な方向を指す。本発明において、1枚のカーカスプライの厚みは、0.50mm~2.00mmであることが必要である。1枚のカーカスプライの厚みがこの範囲外であると、ロードノイズの低減と操縦安定性の向上を同時に達成することができない。
【0014】
1枚のカーカスプライの厚みは、0.70mm~1.80mmであることがさらに好ましい。更に0.80mm~1.50mmがより好ましい。
【0015】
カーカスプライの種類はとくに制限されず公知のものの中から適宜選択することができるが、本発明の効果がさらに向上するという観点から、カーカスプライは有機繊維を含むことが好ましい。有機繊維としては、例えばポリエステル繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリアクリレート繊維、ビニロン繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維、ポリウレタン繊維、レーヨン繊維、リヨセル繊維等を例示することができるが、中でも、ポリエステル繊維としてポリエチレンテレフタレート繊維、レーヨンが好適である。
【0016】
また、カーカスプライを形成するカーカスコードの、タイヤ周方向に対する角度(カーカス角度)は、90°が一般であるが、操縦安定性向上を目的として90°~70°等の低い角度を選択してもよい。このようにカーカス角度を設定することにより、操縦安定性をさらに高めることができる。なお、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心軸とする周り方向を指す。
【0017】
なお、本発明の空気入りタイヤに用いられるカーカスプライは、1枚であるものに制限されず、1枚を超える複数枚であってもよい。その場合も、1枚のカーカスプライの厚みが0.50mm~2.00mmであるという本発明の要件が適用される。
【0018】
本発明では、カーカスプライをコートするカーカスコート用ゴムの組成が特定される。すなわち、カーカスコート用ゴムは、ジエン系ゴムとして天然ゴム(NR)およびスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)と、充填剤として窒素吸着比表面積(N2SA)が35~140m2/gカーボンブラックとを含有し、前記ジエン系ゴム100質量部に対し、前記NRの配合割合が20質量部以上であり、前記カーボンブラックの配合割合が25質量部以上である。
【0019】
前記SBRを配合しない場合、前記NRの配合割合が20質量部未満である場合、前記カーボンブラックの配合割合が25質量部未満である場合、および/または、前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)が35~140m2/gの範囲外である場合は、ロードノイズの低減と操縦安定性の向上を同時に達成することができない。
【0020】
ここで、本発明の効果向上の観点から、下記の形態が好ましい。
(1)前記ジエン系ゴム100質量部に対し、前記NRの配合割合は30~90質量部が好ましく、50~90質量部がさらに好ましい。
(2)前記ジエン系ゴム100質量部に対し、SBRの配合割合は、60質量部未満が好ましい。
(3)前記ジエン系ゴム100質量部に対し、前記カーボンブラックの配合割合は30~75質量部が好ましく、35~70質量部がさらに好ましく、35~65質量部がとくに好ましい。
(4)前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は50~140m2/gが好ましく、70~140m2/gがさらに好ましい。
なお本発明でいうNRは、合成イソプレンゴム(IR)を含むものとする。また窒素吸着比表面積(N2SA)は、JIS K 6217-2:2001「第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」にしたがって測定した値である。
【0021】
本発明で使用されるジエン系ゴムは、NR、SBR以外のジエン系ゴムを必要に応じて併用することもできる。例えば、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ゴム(NBR)等が挙げられる。本発明で使用されるジエン系ゴムは、その分子量やミクロ構造はとくに制限されず、アミン、アミド、シリル、アルコキシシリル、カルボキシル、ヒドロキシル基等で末端変性されていても、エポキシ化されていてもよい。
【0022】
また、前記カーカスコート用ゴムには、前記した成分に加えて、各種充填剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤、酸化亜鉛などのカーカスコート用ゴムに一般的に配合されている各種添加剤を配合することができる。また加硫の際は、公知の加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤を制限なく使用できる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0023】
本発明の空気入りタイヤにおけるキャップトレッドゴムは、カーカスプライのタイヤ径方向外側に配置される。なおタイヤ径方向外側とはタイヤ径方向(空気入りタイヤの回転軸と直交する方向)において回転軸から離れる側をいう。
【0024】
本発明において、キャップトレッドゴムの組成は、下記で説明する(Hs cap)/(E’carcass)の関係を満たすことができれば、とくに制限されず、適宜選択することができる。
例えば、ジエン系ゴム、シリカやカーボンブラック等の各種充填剤、カップリング剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤、酸化亜鉛などのキャップトレッドゴムに一般的に配合されている各種成分を配合することができる。また加硫の際は、公知の加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤を制限なく使用できる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0025】
加硫後のキャップトレッドゴムの最大厚み(アンダートレッドとの接触面からタイヤ径方向におけるタイヤ表面までの最大長さ)はとくに制限されないが、例えば2mm~20mmであり、2mm~15mmが好ましい。
【0026】
また、本発明の空気入りタイヤにおけるその他の部材、例えばビード部やサイドウォール部等を構成する部材についても、各成分の配合割合はとくに制限されず、適宜選択することができる。
例えばその他の部材のゴム組成物として、ジエン系ゴム、各種充填剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤、酸化亜鉛等の一般的に配合されている各種成分を配合することができる。また加硫の際は、公知の加硫又は架橋剤、加硫又は架橋促進剤を制限なく使用できる。これらの添加剤の配合量も、本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0027】
本発明の空気入りタイヤは、前記キャップトレッドゴムの20℃における硬度(Hs cap)と、前記カーカスコート用ゴムの20℃における貯蔵弾性率(E’carcass)とが、下記式を満たすことが必要である。
【0028】
5≦(Hs cap)/(E’carcass)≦15
【0029】
すなわち、(Hs cap)/(E’carcass)が5~15の範囲であることにより、上述のように、キャップトレッドゴムがロードノイズの改善を担い操縦安定性を減じた場合でも、カーカスコート用ゴムが操縦安定性を補完する役割を果たし、結果として二律背反の関係にあるロードノイズの低減と操縦安定性の向上を同時に達成することが可能となる。
【0030】
本発明で言う前記キャップトレッドゴムの20℃における硬度(Hs cap)は、JIS K6253に準拠し、デュロメータのタイプAにより温度20℃で測定されたゴム硬度である。
また本発明で言う前記カーカスコート用ゴムの20℃における貯蔵弾性率(E’carcass)は、JIS K6394に準拠し、初期歪10%、振幅±2%、周波数20Hzの条件下で、東洋精機製作所製粘弾性スペクトロメータにより20℃で測定された貯蔵弾性率である。
【0031】
前記キャップトレッドゴムの20℃における硬度(Hs cap)及び前記カーカスコート用ゴムの20℃における貯蔵弾性率(E’carcass)の調整は、例えば可塑剤、充填剤、加硫剤または架橋剤の増減により可能である。
【0032】
なお本発明の効果が一層向上するという観点から、前記(Hs cap)/(E’carcass)は、5~14であることが好ましく、5~13であることがさらに好ましく、5~12であることがとくに好ましい。
【0033】
また本発明の空気入りタイヤは、従来の空気入りタイヤの製造方法に従って製造が可能であり、例えば乗用車用途が好ましい。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0035】
実施例1~2および比較例1~3
表1に示す配合(質量部)において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を16リットルの密閉式バンバリーミキサーで5分間混練し、ゴムをミキサー外に放出して室温冷却した。次いで、該ゴムを同ミキサーに再度入れ、加硫促進剤および硫黄を加えてさらに混練し、各種カーカスコート用ゴム組成物を得た。
【0036】
次に、カーカスプライを形成するカーカスコードとしてポリエステル繊維を用い、常法にしたがい該コードを該ゴム組成物で被覆し、加硫を行った。カーカスプライの厚みは、表1で示す通りであり、カーカスコート用ゴムの平均厚み(カーカスコート用ゴムのタイヤ径方向における厚みの平均値)は0.4mmであり、単位幅50mmあたりのカーカスコードの本数は50本であった。
【0037】
一方、キャップトレッドゴムを常法にしたがい調製し、可塑剤もしくは充填剤の量を増減することにより、表1に示す各種硬度を有するキャップトレッドゴムを得た。
【0038】
キャップトレッドゴムの20℃における硬度(Hs cap)は、JIS K6253に準拠し、デュロメータのタイプAにより温度20℃で測定した。
カーカスコート用ゴム組成物の20℃における貯蔵弾性率(E’carcass)は、JIS K6394に準拠し、初期歪10%、振幅±2%、周波数20Hzの条件下で、東洋精機製作所製粘弾性スペクトロメータにより20℃で測定した。結果を表1に示す。
【0039】
前記カーカスコート用ゴムでコートされたカーカスプライの1枚と、前記キャップトレッドゴムとを組み込み、タイヤサイズ245/40R18の各種空気入りタイヤを製造した。なお、カーカス角度は、90°とした。またカーカスプライおよびキャップトレッドゴム以外の各部材の条件は、各種空気入りタイヤ間で同一とした。
【0040】
得られた各種空気入りタイヤについて、下記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0041】
操縦安定性:各試験タイヤをリムサイズ18×8.5Jのホイールに組み付けて試験車両に装着し、空気圧240kPaの条件にて、舗装路からなるテストコースにおいてテストドライバーによる官能評価を実施した。評価は5段階評価とし、「3」点を基準とし、相対評価した。
5:「3」点に対し、操縦安定性に顕著な向上が見られる。
4:「3」点に対し、操縦安定性に向上が見られる。
3:基準
2:「3」点に対し、操縦安定性に劣っていた。
1:「3」点に対し、操縦安定性に顕著に劣っていた。
【0042】
ロードノイズ:各試験タイヤをリムサイズ18×8.5Jのホイールに組み付けて試験車両に装着し、空気圧240kPaの条件にて、走行時のロードノイズについてテストドライバーによる官能評価を行った。評価は5段階評価とし、「3」点を基準とし、相対評価した。
5:「3」点に対し、ロードノイズに顕著な改善が見られる。
4:「3」点に対し、ロードノイズに改善が見られる。
3:基準
2:「3」点に対し、ロードノイズが感じられる。
1:「3」点に対し、ロードノイズが顕著に感じられる。
【0043】
【0044】
*1:NR(TSR20)
*2:SBR(日本ゼオン(株)製 NIPOL 1502)
*3:カーボンブラック1(東海カーボン(株)製 シーストN、N2SA=74m2/g)
*4:カーボンブラック2(東海カーボン(株)製 シーストV、N2SA=27m2/g)
*5:酸化亜鉛(正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種)
*6:ステアリン酸(日油(株)製ステアリン酸YR)
*7:老化防止剤(FLEXSYS社製SANTOFLEX 6PPD)
*8:アロマオイル(出光興産(株)製ダイアナプロセスNH-60)
*9:加硫促進剤(大内新興化学工業(株)製ノクセラー NS-P)
*10:硫黄(四国化成工業(株)製ミュークロンOT-20)
【0045】
上記の表1から明らかなように、比較例1では、(Hs cap)/(E’carcass)が本発明で規定する上限を超えているので、ロードノイズおよび操縦安定性が両立できていない。
実施例1~2で調製された空気入りタイヤは、カーカスプライの厚み、カーカスプライをコートするカーカスコート用ゴムの組成、およびキャップトレッドゴムの硬度とカーカスコート用ゴムの貯蔵弾性率の比を特定化したので、比較例1に比べ、ロードノイズの低減および操縦安定性の向上が両立している。
比較例2は、カーカスコート用ゴムにおけるNRの配合割合が本発明で規定する下限未満であるので、ロードノイズを向上できなかった。
比較例3は、カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)が本発明で規定する範囲外であるので、操縦安定性が悪化した。
【0046】
比較例4および実施例3、4
上記実施例1~2および比較例1~3において、カーカスコート用ゴムでコートされたカーカスプライを2枚使用し、製造した空気入りタイヤのタイヤサイズを195/65R15、リムサイズ15x6J,空気圧230kPaとしたこと以外は、上記例を繰り返した。結果を表2に示す。
【0047】
【0048】
表2の結果から、実施例3~4で調製された空気入りタイヤは、カーカスプライの厚み、カーカスプライをコートするカーカスコート用ゴムの組成、およびキャップトレッドゴムの硬度とカーカスコート用ゴムの貯蔵弾性率の比を特定化したので、比較例4に比べ、操縦安定性を向上、もしくは維持しながらロードノイズを低減している。