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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20221018BHJP
【FI】
H02M7/48 R
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021563539
(86)(22)【出願日】2019-12-12
(86)【国際出願番号】 JP2019048741
(87)【国際公開番号】W WO2021117192
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝倉 朋也
(72)【発明者】
【氏名】多和田 義大
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/69960(WO,A1)
【文献】特開2011-193685(JP,A)
【文献】特開2012-75299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池パネルに接続される直流端子と交流電力系統に接続される交流端子とを備え、前記太陽電池パネルで発電した直流電力を交流電力に変換し、前記交流電力を前記交流電力系統に供給する電力変換回路と、
前記太陽電池パネルと前記電力変換回路との間を流れる直流電流を検知する電流検知手段と、
前記太陽電池パネルが発電した前記直流電力の有効電力を前記交流電力系統に出力するように前記電力変換回路を制御する発電モードと、無効電力を前記交流電力系統へ出力させるように前記電力変換回路を制御する無効電力補償モードと、を備え、前記電流検知手段で検出した前記直流電流の大きさに基づいて前記発電モードと前記無効電力補償モードとの間のモード切替を実施する制御回路と、
を備える電力変換装置。
【請求項2】
前記モード切替は、前記発電モードから前記無効電力補償モードへの切り替えである日没モード切替を含み、
前記制御回路は、前記直流電流の大きさが予め定めた日没判定電流値を下回っている時間の長さに基づいて、前記日没モード切替を実施する請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記太陽電池パネルと前記電力変換装置との間に設けられ、前記太陽電池パネルの側への電力の逆流を抑制する整流素子をさらに備え、
前記電流検知手段は、前記太陽電池パネルから前記電力変換回路へ流れ込む電流をプラス電流として検知し、
前記制御回路は、前記直流電流の値が前記日没判定電流値を下回っている前記時間の長さが予め定めた日没判定時間に達した場合に前記日没モード切替を実施し、
前記日没判定時間は、2分以上の予め定めた時間である請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記制御回路は、前記直流電流の大きさの絶対値を予め定めた判定値と比較した結果に基づいて前記モード切替を実施する請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記モード切替は、前記無効電力補償モードから前記発電モードへの切り替えである日出モード切替を含み、
前記制御回路は、前記直流電流の値が予め定めた日出判定電流値を上回っている時間の長さに基づいて、前記日出モード切替を実施する請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記電力変換回路の前記直流端子に入力される直流電圧が印加される直流コンデンサをさらに備え、
前記制御回路は、前記電力変換回路が停止している状態において、前記直流コンデンサの電圧値が予め定めた起動判定値を上回っている時間の長さに基づいて前記電力変換回路の駆動を開始する請求項1に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば日本特許第6462969号に記載されているように、直流電源からの直流電圧に基づいて電力変換回路の動作を切り替える電力変換装置が知られている。当該特許公報における段落0043によれば、直流電圧が下限電圧未満になった場合に日没と判定され、その後にSVC運転モードが開始される。これにより、夜間の無効電力補償が実施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本特許第6462969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
太陽電池パネルの出力直流電圧は、日中に太陽電池パネルに雲がかかると大幅に低下する。上記従来の技術では、そのような電圧低下が起きると、日没であると誤って判定される可能性がある。日没判定精度が低いと、通常発電モードを維持すべきであるにも関わらず運転モードが無効電力補償モードへと切り替わる可能性があるという問題がある。
【0005】
また、日の出を判定する際にも類似する問題がある。日の出の時刻を過ぎても太陽電池パネルに雲があたり出力直流電圧が不十分である場合、未だ夜間であると誤って判定される可能性がある。日の出の判定精度が低い場合にも、モード切り替えが適切に行われない問題がある。
【0006】
本出願は、上述のような課題を解決するためになされたもので、太陽電池パネルの発電状況に応じたモード切替を適切に実施するように改良された電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願にかかる電力変換装置は、
太陽電池パネルに接続される直流端子と交流電力系統に接続される交流端子とを備え、前記太陽電池パネルで発電した直流電力を交流電力に変換し、前記交流電力を前記交流電力系統に供給する電力変換回路と、
前記太陽電池パネルと前記電力変換回路との間を流れる直流電流を検知する電流検知手段と、
前記太陽電池パネルが発電した前記直流電力の有効電力を前記交流電力系統に出力するように前記電力変換回路を制御する発電モードと、無効電力を前記交流電力系統へ出力させるように前記電力変換回路を制御する無効電力補償モードと、を備え、前記電流検知手段で検出した前記直流電流の大きさに基づいて前記発電モードと前記無効電力補償モードとの間のモード切替を実施する制御回路と、
を備える。
【0008】
前記制御回路は、前記直流電流の大きさに基づいて、「日没判定」と「日出判定」とのうち少なくとも一方の判定を実施してもよい。前記モード切替は、前記発電モードから前記無効電力補償モードへのモード切替である「日没モード切替」と、前記無効電力補償モードから前記発電モードへのモード切替である「日出モード切替」とのうち少なくとも一方を含んでもよい。前記制御回路は、前記日没判定の結果に基づいて前記日没モード切替を実施してもよい。前記制御回路は、前記日出判定の結果に基づいて前記日出モード切替を実施してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本出願によれば、太陽電池パネルからの直流電流の大きさに基づいて太陽電池パネルの発電状況を精度良く判定できるので、モード切替を適切に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。
図2】実施の形態に係る電力変換装置の動作を模式的に表すフローチャートである。
図3】実施の形態に係る電力変換装置の効果を説明するために示す比較例(関連技術)の動作を模式的に表すフローチャートである。
図4】実施の形態の変形例に係る電力変換装置の動作を模式的に表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態の装置およびシステムの構成.
図1は、実施の形態に係る電力変換装置を模式的に表すブロック図である。図1に表したように、電力変換装置10は、電力変換回路12と、直流コンデンサ14と、フィルタ回路16と、直流電圧検出器18と、直流電流検出器20と、複数の交流電圧検出器22a~22cと、複数の交流電流検出器24a~24cと、複数の直流開閉器26a、26bと、複数の交流開閉器28a~28cと、整流素子30と、制御回路34と、を備える。
【0012】
電力変換装置10は、直流電源としての太陽電池パネル2と交流の電力系統4とに接続される。電力変換装置10は、例えば、変圧器6を介して電力系統4に接続される。太陽電池パネル2は、直流電力を電力変換装置10に供給する。電力変換装置10は、太陽電池パネル2から入力された直流電力を交流電力に変換し、変換後の交流電力を電力系統4に供給する。
【0013】
電力変換装置10は、電力系統4に有効電力、及び多少の無効電力を供給する。電力変換装置10は、例えば、太陽電池パネル2を分散型電源として機能させる。また、電力変換装置10は、電力系統4に無効電力を供給することにより、電力系統4の電圧変動を抑制する無効電力補償を行う。電力変換装置10は、例えば、日中などの太陽電池パネル2の発電量の高い時間帯において、有効電力、及び多少の無効電力を供給する動作を行う。そして、電力変換装置10は、例えば、夜間などの太陽電池パネル2の発電量の低い時間帯において、無効電力を供給する動作を行う。
【0014】
このように、電力変換装置10は、電力系統4に有効電力、及び多少の無効電力を供給する「発電運転モード」と、電力系統4に無効電力を供給する「無効電力補償モード」とを備える。無効電力補償モードをSVC(Static Var Compensator)運転モードとも称する。
【0015】
この例では、太陽電池パネル2を直流電源として示している。この例において、電力系統4の交流電力は、三相交流電力である。電力変換装置10は、直流電力を三相交流電力に変換し、電力系統4に供給する。電力系統4の交流電力は、三相交流電力に限ることなく、単相交流電力などでもよい。電力系統4の交流電圧は、例えば、100V(実効値)であってもよい。電力系統4の交流電力の周波数は、例えば、50Hzまたは60Hzであってもよい。
【0016】
電力変換回路12は、太陽電池パネル2に接続される一対の直流端子d1、d2と、電力系統4に接続される複数の交流端子a1~a3と、を有する。直流端子d1は、高圧側の直流端子であり、直流端子d2は、低圧側の直流端子である。これとは反対に、直流端子d1を低圧側、直流端子d2を高圧側としてもよい。
【0017】
この例において、電力変換回路12は、三相交流電力の各相に対応した3つの交流端子a1~a3を有する。例えば、電力系統4の交流電力が単相交流電力である場合には、交流端子の数は、2つでもよい。交流端子の数は、交流電力の形式などに応じて適宜設定すればよい。
【0018】
電力変換回路12は、太陽電池パネル2の直流電力を電力系統4に対応した交流電力に変換し、交流電力を電力系統4に供給する。電力変換回路12は、例えば、複数のスイッチング素子12aと、各スイッチング素子12aのそれぞれに逆並列に接続された複数の整流素子12bと、を有する。電力変換回路12は、各スイッチング素子12aのオン・オフにより、直流電力を交流電力に変換する。電力変換回路12は、いわゆる三相電圧型インバータである。
【0019】
電力変換回路12は、例えば、三相ブリッジ接続された6つのスイッチング素子12aを有し、各スイッチング素子12aのオン・オフにより、直流電力を三相交流電力に変換する。各スイッチング素子12aには、例えば、GTO(Gate Turn-Off thyristor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの自己消弧型の半導体素子が用いられる。
【0020】
直流コンデンサ14は、一対の直流端子d1、d2の間に接続される。直流コンデンサ14は、例えば、太陽電池パネル2の直流電圧を平滑化する。直流コンデンサ14は、換言すれば、平滑コンデンサである。
【0021】
フィルタ回路16は、各交流端子a1~a3と電力系統4との間に設けられる。フィルタ回路16は、各交流端子a1~a3に接続されている。フィルタ回路16は、例えば、インダクタ16aと、コンデンサ16bと、を有する。インダクタ16a及びコンデンサ16bは、例えば、交流電力の相毎に設けられる。フィルタ回路16は、電力変換回路12から出力された交流電力の高調波成分を抑制し、出力波形をより正弦波に近付ける。
【0022】
直流電圧検出器18は、直流コンデンサ14の直流電圧値Vdcを検出する。換言すれば、直流電圧検出器18は、太陽電池パネル2の直流電圧の電圧値を検出する。また、直流電圧検出器18は、制御回路34に接続され、検出した直流電圧値Vdcを制御回路34に入力する。
【0023】
直流電流検出器20は、太陽電池パネル2と電力変換回路12との間に設けられる。直流電流検出器20は、電力変換回路12に入力される直流電流の大きさを表す直流電流値Idcを検出する。直流電流検出器20は、制御回路34に接続され、検出した電流値を制御回路34に入力する。
【0024】
各交流電圧検出器22a~22cは、フィルタ回路16を介して各交流端子a1~a3のそれぞれに接続されている。各交流電圧検出器22a~22cは、電力変換回路12から出力された交流電力の電圧値を検出する。換言すれば、各交流電圧検出器22a~22cは、電力系統4の交流電圧の電圧値を検出する。各交流電圧検出器22a~22cは、例えば、三相交流電力の各相の電圧値(相電圧)を検出する。各交流電圧検出器22a~22cは、制御回路34に接続されており、検出した電圧値を制御回路34に入力する。
【0025】
各交流電流検出器24a~24cは、フィルタ回路16と電力系統4との間に設けられる。各交流電流検出器24a~24cは、電力変換回路12から出力された交流電力の電流値を検出する。換言すれば、各交流電流検出器24a~24cは、電力系統4の交流電流の電流値を検出する。各交流電流検出器24a~24cは、三相交流電力の各相の電流値(相電流)を検出する。各交流電流検出器24a~24cは、制御回路34に接続されており、検出した電流値を制御回路34に入力する。
【0026】
各直流開閉器26a、26bは、太陽電池パネル2と電力変換回路12との間に設けられる。各直流開閉器26a、26bは、例えば手動式であってもよい。各直流開閉器26a、26bは、通常は投入状態であり何らかの異常が生じたとき制御回路34の働き等により自動的に解放される。
【0027】
各交流開閉器28a~28cは、電力系統4と電力変換回路12との間に設けられる。交流電圧検出器22a~22bで検出された電圧値と、変圧器側電圧検出器(図示せず)により変圧器6の電力変換装置側の端子電圧が所定の範囲内で等しいとみなされた場合に、各交流開閉器28a~28cは、例えば、制御回路34の働きにより自動的に投入される。
【0028】
各直流開閉器26a、26bおよび各交流開閉器28a~28cは例えばメンテナンスの際などに開放され、この開放により電力変換回路12が太陽電池パネル2及び電力系統4から切り離される。各直流開閉器26a、26bおよび各交流開閉器28a~28cを投入することにより、電力変換回路12が太陽電池パネル2及び電力系統4に接続される。
【0029】
整流素子30は、直流コンデンサ14と太陽電池パネル2との間に設けられる。整流素子30は一例として逆流防止ダイオードである。整流素子30のアノードは、直流開閉器26aを介して太陽電池パネル2の高圧側の出力端子2aに接続されている。整流素子30のカソードは、電力変換回路12の高圧側の直流端子d1に接続されている。これにより、整流素子30は、電力変換回路12及び直流コンデンサ14から太陽電池パネル2への電力の逆流を抑制する。整流素子30は、太陽電池パネル2の低圧側の出力端子2bと電力変換回路12の低圧側の直流端子d2との間に設けてもよい。
【0030】
制御回路34は、電力変換回路12の動作を制御する。制御回路34は、電力変換回路12による電力の変換を制御する。制御回路34は、例えば、各スイッチング素子12aのゲート信号端子に接続されている。制御回路34は、各スイッチング素子12aのオン・オフを制御することにより、電力変換回路12による電力の変換を制御する。
【0031】
制御回路34は、「発電運転モード」の動作と、「SVC運転モード」の動作と、を有する。
【0032】
(発電運転モード)
制御回路34は、発電運転モードにおいて、例えば、電力系統4の交流電力に同期した交流電力に変換するように、電力変換回路12の各スイッチング素子12aのオン・オフを制御する。制御回路34は、例えば、各交流電圧検出器22a~22c及び各交流電流検出器24a~24cのそれぞれの検出結果を基に、電力系統4の交流電力の電圧、周波数、及び位相などを検出し、電力変換回路12によって変換される交流電力の電圧、周波数及び位相などを、電力系統4の交流電力に合わせる。これにより、電力変換回路12によって変換された交流電力が、有効電力として電力系統4に出力される。
【0033】
また、制御回路34は、発電運転モードの場合、例えば、直流電力を太陽電池パネル2の最大電力点に追従させるMPPT(Maximum Power Point Tracking)方式の制御を行う。制御回路34は、例えば、直流電圧検出器18によって検出された直流コンデンサ14の直流電圧値Vdcと、直流電流検出器20によって検出された直流電流の電流値と、に基づいて、太陽電池パネル2の最大電力点(最適動作点)を抽出する。制御回路34は、この抽出した最大電力点に応じて電力変換回路12の動作を制御する。
【0034】
(無効電力補償モードすなわちSVC運転モード)
制御回路34は、無効電力補償モード(つまりSVC運転モード)の場合、電力変換回路12が電力系統4に出力する無効電力を決定する。無効電力の決定は、例えば、各交流電圧検出器22a~22c及び各交流電流検出器24a~24cのそれぞれの検出結果に基づいて行われる。制御回路34は、決定した無効電力に応じて電力変換回路12の各スイッチング素子12aのオン・オフを制御する。このオン・オフ制御により、電力変換回路12によって変換された交流電力が、無効電力として電力系統4に出力される。これにより、例えば電力系統4の無効電力を制御することができ、例えば電力系統4の安定度を高めることができる。
【0035】
SVC運転モードにおいては、直流コンデンサ14の直流電圧が、電力変換回路12によって交流電圧に変換される。また、SVC運転モードにおいては、電力変換回路12の各スイッチング素子12aのオン・オフにより、電力系統4側から直流コンデンサ14が充電される。制御回路34は、SVC運転モードの場合、直流コンデンサ14の電圧値が所定の値で実質的に一定になるように、電力変換回路12の各スイッチング素子12aのオン・オフを制御する。SVC運転モードでは直流コンデンサ電圧を維持するため有効電力を電力系統4から直流コンデンサ14に供給する方向には制御するが、有効電力を直流コンデンサ14から電力系統4に供給する方向には制御しないように、制御回路34が有効電力を制御してもよい。
【0036】
実施の形態にかかるSVC運転モードは、有効電力を電力変換回路12から電力系統4に供給しない。制御回路34は、SVC運転モードにおいては、直流コンデンサ14の直流電圧値Vdcが、所定電圧VSVCで実質的に一定になるように、電力変換回路12の動作を制御してもよい。所定電圧VSVCは、例えば、MPPT制御の上限電圧Vmax_mppと下限電圧Vmin_mppとの間に設定されてもよい。また、SVC運転モードでは制御回路34は電力変換回路12の動作に伴う損失の発生による直流コンデンサ14の電圧低下を補い、所定の電圧VSVCを維持するため多少の有効電力を電力系統4から電力変換回路12に取り入れてもよい。
【0037】
変形例として、太陽電池パネル2への電力の逆流を抑制する整流素子30は、逆流防止ダイオードの代わりにサイリスタであってもよい。この変形例では、サイリスタのゲート端子は、制御回路34に接続されている。制御回路34は、サイリスタのオン・オフを制御することで、太陽電池パネル2への電力の逆流を抑制することができる。整流素子30は、太陽電池パネル2から電力変換回路12に直流電力を供給可能で、太陽電池パネル2への電力の逆流を抑制可能な任意の素子でよい。
【0038】
実施の形態の具体的処理.
図2は、実施の形態に係る電力変換装置10の動作を模式的に表すフローチャートである。図2のルーチンは、制御回路34によって実行される。図2のルーチンは、電力変換装置10の設置後初回運転で実行されてもよく、メンテナンス等の理由で電力変換装置10が一旦停止された後に再起動をする場面で実行されてもよい。
【0039】
なお、図2は一例として直流電圧容量が1500Vの実機についての運転シーケンスを例示する。下記の各ステップで例示する具体的数値は、電力変換装置10が少なくとも容量1500Vを持つ場合に適用されてもよい。
【0040】
図2のルーチンのスタート時点では、各交流遮断器28a~28cがオフ(開放)とされており、各直流遮断器26a、26bはオン(投入)とされている。各直流遮断器26a、26bは、遅くともステップS102が到来するよりも前にオン(投入)とされる。
【0041】
図2のルーチンでは、まず、電力変換装置10の電力変換回路12が停止されている状態で処理が進む(ステップS100)。
【0042】
次に、「起動判定」が実施される(ステップS102)。起動判定は、直流電圧値Vdcの大きさに基づいて、電力変換回路12の運転を開始するかどうかを決定するものである。起動判定は、直流電圧値Vdcが予め定めた起動判定電圧値Vstatを上回っている時間の長さを計測し、計測した時間長が予め定めた起動判定時間Tstatに達したか否かを判定する。実施の形態では、具体的には、起動判定電圧値Vstatは一例として1000Vであり、起動判定時間Tstatは一例として2秒である。よって、「Vdc>1000V」が成立している時間が2秒間継続した場合には、ステップS102の判定結果は肯定(YES)となる。ステップS102の判定結果が否定(NO)である期間は、電力変換回路12は停止状態とされる。
【0043】
ステップS102で判定結果が肯定となったら、次に、各交流遮断器28a~28cがオン(投入)とされる(ステップS104)。
【0044】
次に、発電運転が開始される(ステップS106)。このステップでは、制御回路34が電力変換回路12を駆動することで発電運転モードの運転が達成される。
【0045】
実施の形態では、上記のステップS100~S106までの一連の処理を、起動ルーチン(ステップS10)とも称する。
【0046】
次に、「日没判定」が行われる(ステップS108)。日没判定は、直流電流値Idcの大きさに基づいて、日没が到来したか否かを判定する。具体的には、ステップS108の処理は、直流電流値Idcが予め定めた日没判定電流値Issを下回っている時間の長さを計測し、計測した時間長が予め定めた日没判定時間Tssに達したか否かを判定する。実施の形態では、具体的には、日没判定電流値Issは一例として電力変換装置10の入力定格電流の1%であり、日没判定時間Tssは一例として10分である。よって、「Idc<入力定格電流の1%」が成立している時間が10分間継続した場合には、ステップS108の判定結果は肯定(YES)となる。ステップS108の判定結果が否定(NO)である期間は、電力変換回路12は発電運転モードで引き続き駆動される。
【0047】
ステップS108で判定結果が肯定(YES)となったら、次に、制御回路34は、夜間SVC運転を行うために、SVC運転モードで電力変換回路12を駆動する(ステップS110)。ステップS108およびS110は、発電運転モードからSVC運転モードへの切り替えである「日没モード切替」を達成している。
【0048】
次に、「日出判定」が行われる(ステップS112)。日出判定は、直流電流値Idcの大きさに基づいて日の出が到来したか否かを判定する。具体的には、ステップS112の処理は、直流電流値Idcが予め定めた日出判定電流値Isrを上回っている時間の長さを計測し、計測した時間長が予め定めた日出判定時間Tsrに達したか否かを判定する。実施の形態では、具体的には、日出判定電流値Isrは一例として電力変換装置10の入力定格電流の3%であり、日出判定時間Tsrは一例として2秒である。よって、「Idc>入力定格電流の3%」が成立している時間が2秒間継続した場合には、ステップS112の判定結果は肯定(YES)となる。ステップS112の判定結果が否定(NO)である期間は、電力変換回路12はSVC運転モードで引き続き駆動される。
【0049】
なお、上述した実施の形態の数値例では、一例として日出判定電流値Isrのほうが日没判定電流値Issよりも大きくされており、一例として日没判定時間Tssのほうが日出判定時間Tsrよりも長くされている。ただしこの大小関係は逆とされてもよい。
【0050】
ステップS112で判定結果が肯定(YES)となったら、次に、制御回路34は、発電運転モードで電力変換回路12を駆動する(ステップS106)。ステップS112およびS108は、SVC運転モードから発電運転モードへの切り替えである「日出モード切替」を達成している。
【0051】
その後、「日没→夜間→日の出→日中→日没・・・」のように時間が経過することに伴って、電力変換装置10はモード切替を繰り返し実施することができる。もし仮に、事故発生、故障発生あるいはメンテナンス発生に伴って電力変換装置10が停止されると、その後の再起動時に図2のルーチンが再実行される。
【0052】
以上説明したように、実施の形態にかかる制御回路34は、直流電流値Idcの大きさに基づいて、発電モードと無効電力補償モード(SVCモード)との間のモード切替を実施する。
【0053】
日の出から日中であれば、太陽電池パネル2に雲がかかっても、太陽電池パネル2の出力直流電流はある程度の大きさを保持する。太陽電池パネル2に雲がかかったとしても、太陽電池パネル2は例えば定格の10~20%程度の直流電流を出力することができる。一方、太陽電池パネル2の出力直流電流の大きさは、日没が到来すると微小となり、夜間にはゼロとなる。これらの事情から、直流電流値Idcの大きさは、日の出と日没とを区別しやすいという利点を持っている。この点、実施の形態によれば、太陽電池パネル2からの出力直流電流の大きさに基づいて太陽電池パネル2の発電状況を精度良く判定できるので、日没/夜間/日の出の移り変わりに応じたモード切替を適切に実施することができる。
【0054】
また、実施の形態において、制御回路34は、ステップS108で直流電流値Idcが日没判定電流値Issを下回っている時間の長さに基づいて、モード切替を実施する。このとき、プラス電流は太陽電池パネル2から電力変換回路12へ流れ込む電流であり、逆流電流はマイナス電流とされる。
【0055】
整流素子30が設けられていないと、昼間に直流地絡が発生したときに逆電流が流れる。直流地絡は、例えば太陽電池パネル2と各直流開閉器26a、26bとの間で発生する。電流の向きを区別するために、直流電流検出器20は逆電流の大きさをマイナス値として検知することがある。モード切替判定値をある程度小さな正の値として定めた場合において、制御回路34の判定ロジックは逆電流の大きさがモード切替判定値を下回ったと判定する。マイナス値はゼロ未満の値なので、逆電流の大きさの絶対値がある程度大きいときには、逆電流の大きさがモード切替判定値を下回ったと判定されてしまう。これは日没の誤判定につながるおそれがある。この点、直流電流値Idcに基づく日没判定ロジックに整流素子30を組み合わせることで、太陽電池パネル2への電力の逆流電流を抑制できるのみならず、直流地絡発生時の日没誤検出をも確実に防止できる利点がある。
【0056】
特に、実施の形態において、制御回路34は、ステップS108で直流電流値Idcの大きさが日没判定電流値Issを下回っている時間が日没判定時間Tssに達した場合には、モード切替が実施される。
【0057】
実施の形態では、一例としてステップS108の日没判定時間Tssを10分に設定している。しかしながら、日没判定時間Tssは、2分以上の予め定めた時間に変形されてもよい。実用上は、数分(つまり2分以上)の十分な日没判定時間Tssを確保することで高精度な日没判定を実施できる。なお、2分~10分の範囲内で日没判定時間Tssを設定してもよい。日没判定時間Tssが長過ぎると判定結果を得るまでの時間が長くなるからである。日没判定時間Tssは可変設定されてもよい。
【0058】
なお、ステップS108の日没判定時間Tssは、10分よりも短く設定されてもよく、例えば60秒~2分の任意の時間に設定されてもよく、2分~10分未満の任意の時間に設定されてもよい。前述したように、太陽電池パネル2に雲がかかったとしても、直流電流値Idcはある程度の大きさとなる。その一方で、日没時には、太陽電池パネル2の出力直流電流は大きく低下し、ほぼゼロとなる。このため直流電流値Idcに基づいて日没判定を行う場合には、必ずしも長時間の日没判定時間Tssを設定しなくともよい。
【0059】
また、実施の形態において、制御回路34は、起動処理(ステップS100)を備える。起動処理は、電力変換回路12が停止している状態において、直流コンデンサ14の電圧値が予め定めた起動判定値を上回っているときには電力変換回路12を起動するものである。
【0060】
電力変換装置10を設置した後において、初回起動時または再起動時に起動処理が実行される。再起動は、異常停止後またはメンテナンス停止後に行われる。
【0061】
実施の形態にかかる起動処理(ステップS102)では、直流電流ではなく直流電圧に基づく判定が実施される。その理由は、日没判定および日出判定と比較すると、起動処理は異なる事情を持つからである。すなわち、理由の一つは、日中に直流開閉器26a、26bを投入した状態であれば直流コンデンサ14が充電されて直流電流が流れなくなるので、直流電流値Idcに基づく検知ではなく直流コンデンサ14の直流電圧に基づく判定が有効だからである。また、他の理由として、直流電圧判定であっても誤動作リスクが低いからである。誤動作リスクが低いのは、仮に夜間に各直流開閉器26a、26bを投入した状態であっても、夜間には太陽電池パネル2の電圧が低いので、直流コンデンサ14の直流電圧が起動判定値を上回らないからである。
【0062】
なお、もし仮にステップS102を電流判定に置換する場合には、直流遮断器26a、26bの投入に応答して直流コンデンサ14に流れ込む直流電流値Idcを検出してもよい。この直流電流値Idcが予め定めた起動判定電流Istatを上回ったことが検出されれば、日の出以後であると判定されてもよい。
【0063】
(比較例:関連技術)
図3は、実施の形態に係る電力変換装置の効果を説明するために示す比較例(関連技術)の動作を模式的に表すフローチャートである。図3のルーチンでは、図2のルーチンと同様に、ステップS100、S102、S104,S106の順で処理が進む。
【0064】
図3のルーチンでは、ステップS106の後に、直流電圧値Vdcに基づく日没判定が実施される(ステップS308)。具体的には、「Vdc<900V」が成立している時間が60秒継続した場合には、日没であると判定される。日没判定結果が肯定(YES)である場合、各交流遮断器28a~28cがオフとされる(ステップS310)。その後、処理はステップS100へと戻り電力変換装置10が停止される。つまり図3の比較例では夜間SVC運転が行われない。
【0065】
その後、再び起動判定(ステップS102)が行われる。図3の比較例では、ステップS102が日出判定としても機能する。日の出が到来すると、処理はステップS102→S104→S106と進み、発電運転が開始される。
【0066】
ステップS308のような直流電圧値Vdcに基づく日没判定を行う場合には、60秒程度の日没判定時間は短すぎるという問題がある。日没判定時間が短すぎると、誤判定が起きる可能性が高まる。この点、実施の形態は、直流電流値Idcに基づく日没判定(ステップS108)でありしかも十分な日没判定時間Tssが設定されているので、判定精度が高いという利点がある。
【0067】
(実施の形態の具体的処理の変形例)
図4は、実施の形態の変形例に係る電力変換装置の動作を模式的に表すフローチャートである。実施の形態の変形例として、制御回路34は、直流電流値Idcの絶対値|Idc|を予め定めた判定値と比較した結果に基づいて、モード切替を実施してもよい。つまり、図2のステップS108、S112が、直流電流絶対値|Idc|についての比較判定を行うステップS208、S212にそれぞれ変形されてもよい。
【0068】
整流素子が設けられていないか、或いは整流素子の整流機能に何らかの機能低下が生じている場合には、昼間に直流地絡が発生したときに逆電流が流れる可能性がある。直流電流検出器20は、逆電流の値をマイナス値として検知する。この点、図4の変形例では、直流電流絶対値|Idc|を用いることで直流地絡発生時などの大きな逆電流を除外できるので、日没を精度良く検知することができる。
【0069】
なお、実施の形態の他の変形例として、上記ステップS108およびステップS112のうちいずれか一方が、直流電流値Idsではなく、直流電圧値Vdcと各種判定値との比較に基づく電圧検知に変形されてもよい。各種判定値は、予め定めた日没判定電圧値Vssまたは予め定めた日出判定電圧値Vsrとのいずれかであってもよい。この場合、整流素子30が設けられていることで逆流電流が抑制されることから、日没判定時間Tssを長くして判定精度を高めてもよい。日没判定時間Tssは、例えば2分以上でもよく、2分~10分の範囲内から定めた任意の時間でもよい。
【0070】
なお、上記ステップS108およびステップS112の両方が直流電圧値Vdcに基づく電圧検知に置換された「他の電力変換装置」が提供されてもよい。この場合、整流素子30が設けられていることで逆流電流が抑制されることから、日没判定時間Tssを長くしてもよい。日没判定時間Tssは、例えば2分以上の任意の時間でもよく、例えば2分~10分の範囲内から定めた任意の時間でもよい。
【符号の説明】
【0071】
2 太陽電池パネル、2a 出力端子、2b 出力端子、4 電力系統、6 変圧器、10 電力変換装置、12 電力変換回路、12a スイッチング素子、12b、30 整流素子、14 直流コンデンサ、16 フィルタ回路、16a インダクタ、16b コンデンサ、18 直流電圧検出器、20 直流電流検出器、22a~22c 交流電圧検出器、24a~24c 交流電流検出器、26a、26b 直流開閉器(直流遮断器)、28a~28c 交流開閉器(交流遮断器)、34 制御回路、Idc 直流電流値、Vdc 直流電圧値
図1
図2
図3
図4