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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】ディーゼルエンジン
(51)【国際特許分類】
   F02D 19/08 20060101AFI20221018BHJP
   F02B 37/18 20060101ALI20221018BHJP
   F02B 43/04 20060101ALI20221018BHJP
   F02D 41/04 20060101ALI20221018BHJP
   F02M 25/00 20060101ALI20221018BHJP
   F02M 67/14 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
F02D19/08 C
F02B37/18 Z
F02B43/04
F02D41/04
F02M25/00 F
F02M25/00 R
F02M25/00 S
F02M67/14
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022504561
(86)(22)【出願日】2022-01-20
(86)【国際出願番号】 JP2022001944
【審査請求日】2022-01-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002963
【氏名又は名称】弁理士法人MTS国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 明
(72)【発明者】
【氏名】桑原 隆晃
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-148198(JP,A)
【文献】国際公開第2011/136151(WO,A1)
【文献】特開2002-004917(JP,A)
【文献】特開2004-027861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 19/08
F02B 37/18
F02B 43/04
F02D 41/04
F02M 25/00
F02M 67/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室と、前記燃焼室内に点火源となる燃料油とガス状のアンモニアとを投入する燃料投入手段とを有し、前記燃料投入手段により前記燃焼室内に投入される燃料油とガス状のアンモニアとにより前記燃焼室内でアンモニア予混合気を形成して混合燃焼させるディーゼルエンジンであって、
アンモニアを含む燃料全体に対するアンモニアの熱量比率である アンモニア混合比率を互いに異なる複数の値に設定可能な設定手段と、
給気圧力を、 前記設定手段で設定される前記アンモニア混合比率値に対応付けられた前記投入手段で投入される燃料油及びアンモニアの総和における空気過剰率値と、所定の負荷率とに基づいて決定される給気圧力値となるように制御する制御手段を有し、
前記設定手段で設定される前記アンモニア混合比率の値は、15%以上85%以下の間で設定されるものであって、
前記制御手段は、
前記設定手段で設定される前記複数の値の内、第1の値として前記アンモニア混合比率の値が15%以上25%以下の値に設定された場合には、前記給気圧力を、前記空気過剰率値を燃料油のみによる運転時の空気過剰率値に対して1.0から1.5低くする値として対応付けられた第1の空気過剰率値と前記所定の負荷率とに基づいて決定される前記給気圧力値となるように制御し、
前記設定手段で設定される前記複数の値の内、前記第1の値とは異なる第2の値として前記アンモニア混合比率の値が65%以上の値に設定された場合には、前記給気圧力を、前記空気過剰率値を1.0以下の値として対応付けられた第2の空気過剰率値と前記所定の負荷率とに基づいて決定される前記給気圧力値となるように制御 することを特徴とするディーゼルエンジン。
【請求項2】
前記制御手段は、 前記設定手段で設定される前記アンモニア混合比率値が、前記第1の値から前記第2の値として前記第1の値よりアンモニア混合比率が高い値に変更された場合、前記給気圧力を、前記第1の前記空気過剰率値から、前記第1の前記空気過剰率値よりも小さい値として対応付けられた第2の前記空気過剰率値と前記所定の負荷率とに基づいて決定される前記給気圧力値となるように制御することを特徴とする請求項1に記載のディーゼルエンジン。
【請求項3】
前記給気圧力の制御は、過給機の排気バイパスに設けられた調整手段による空気量の調整により行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のディーゼルエンジン。
【請求項4】
前記アンモニアの投入は、燃焼室入側の給気ポートに対してアンモニアを噴射することにより行うことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のディーゼルエンジン。
【請求項5】
前記アンモニアの投入は、燃焼室内にアンモニアを直接噴射することにより行うことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のディーゼルエンジン。
【請求項6】
前記設定手段により設定されたアンモニア混合比率値に基づき、燃料油の流量及びアンモニアの流量をそれぞれ制御する流量制御手段と、
前記流量制御手段で調整された燃料油の流量及びアンモニアの流量をそれぞれ演算又は検出する流量演算手段と、
前記流量演算手段の演算結果からアンモニアの混合比率を演算する混合比率演算手段と、
前記設定手段で設定されたアンモニア混合比率値もしくは前記混合比率演算手段で演算して得られた前記アンモニア混合比率値のいずれかに対応する空気過剰率値を出力する空気過剰率出力手段と、
負荷率を検出する負荷率検出手段と、
空気過剰率毎に、前記負荷検出手段で検出される負荷率と前記負荷率に対応する給気圧力値を対応付けたテーブルを複数有するテーブル記憶手段と、
前記空気過剰率出力手段から出力される空気過剰率値に基づき前記テーブル記憶手段の中から選択されるテーブルを用いて、前記負荷率検出手段で検出された負荷率に対応する給気圧力の値を決定する給気圧力決定手段と、
前記給気圧力決定手段で決定した給気圧力の値になるよう空気量を制御する手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のディーゼルエンジン。
【請求項7】
前記テーブル記憶手段に記憶されるテーブルは、空気過剰率毎に任意の負荷率に対して対応する給気圧力の値を決定可能な曲線データに対応する値を記憶したものであることを特徴とする請求項に記載のディーゼルエンジン。
【請求項8】
前記テーブル記憶手段に記憶されるテーブルは、空気過剰率毎に所定の負荷率に対して対応する給気圧力の値を決定可能なルックアップテーブルであることを特徴とする請求項に記載のディーゼルエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンに係り、特に、重油や軽油等の燃料油を主燃料とする船舶用ディーゼルエンジンに用いるのに好適な、従来、燃料として使用されなかった、炭素(C)を含まないカーボンフリーであるアンモニアNH3を燃焼させ、温室効果ガスである二酸化炭素CO2削減に特に有効なディーゼルエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニアは燃焼させた場合、カーボンフリーであり、CO2の発生を伴わないため、内燃機関、特にディーゼルエンジンでの燃焼が試みられてきた。しかし、アンモニアは着火温度が例えば重油の250~380℃に比べて651℃と高く、難燃性であるため、燃焼率が悪く、投入アンモニアの20%以上が未燃分として排出されるのが現状であった。
【0003】
これを解決するために、アンモニアの一部を触媒など用いて改質、水素とし、これをアンモニアと同時に燃焼室に投入し、燃焼性に優れる水素を着火源としてアンモニア燃焼効率を上げる試みがなされている。
【0004】
例えば、特許文献1では、高温水素リッチアンモニアと燃焼用空気を燃焼させるため、水素リッチアンモニアの原料として尿素水を供給し、尿素水から高温のアンモニアを生成すると共に、アンモニアの一部を水素と窒素に添加して、高温の水素リッチガスを生成することによりカーボンフリー動力装置を構成している。つまり尿素水から高温のアンモニアを生成すると共に、アンモニアの一部を水素と窒素に添加して高温の水素リッチガスを生成する水素リッチアンモニア生成リアクタに関するものである。
【0005】
また、特許文献2では、アンモニアを改質して水素を含む改質ガスを生成し、アンモニアに加え改質ガスをアンモニア燃焼内燃機関の燃焼室内に供給するようにしている。
【0006】
更に、特許文献3には、燃焼室内空間で中心部より壁面側のアンモニア濃度が高くなるように調整することで水素等を混焼させることなく好適にCO2を削減可能なディーゼルエンジンが記載されており、アンモニアの投入量を所定比率に調整すること、具体的には、熱量比で燃料油の供給量の15%以上25%以下とすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5315493号公報
【文献】特許第5310945号公報
【文献】特許第6702475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、脱炭素がますます叫ばれており、よりアンモニア比率の高い燃料、例えばアンモニアを含む燃料全体に対するアンモニアの熱量比率が50%以上、更には80%もの燃料の混合比率を使ったディーゼルエンジンが期待される。
【0009】
しかし、これには課題がある。例えば特許文献3記載の発明で上記のようにアンモニアの熱量比率(ここではアンモニア混合比率という)を高めていくと、未燃アンモニア排出が増加するという問題があり、また、アンモニア混合比率を高めていくと排ガスNOx値と未燃アンモニア排出とはトレードオフの関係で変化するため、両者を低く抑えるためには何等かの条件調整が必要となる可能性があることが分かってきた。
【0010】
そして、このような条件設定は、アンモニア混合比率を可変に設定可能なディーゼルエンジンの場合、さらに困難を極める。
【0011】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、アンモニア混合比率を広い範囲で調整可能としつつ、排ガスNOx値と未燃アンモニアの両方を低く抑え、CO2を削減することができるディーゼルエンジンを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため本発明の第1の形態は、燃焼室と、前記燃焼室内に点火源となる燃料油とガス状のアンモニアとを投入する燃料投入手段とを有し、前記燃料投入手段により前記燃焼室内に投入される燃料油とガス状のアンモニアとにより前記燃焼室内でアンモニア予混合気を形成して混合燃焼させるディーゼルエンジンであって、アンモニアを含む燃料全体に対するアンモニアの熱量比率であるアンモニア混合比率を互いに異なる複数の値に設定可能な設定手段と、給気圧力を、前記設定手段で設定される前記アンモニア混合比率値に対応付けられた前記投入手段で投入される燃料油及びアンモニアの総和における空気過剰率値と、所定の負荷率とに基づいて決定される給気圧力値となるように制御する制御手段を有し、前記設定手段で設定される前記アンモニア混合比率の値は、15%以上85%以下の間で設定されるものであって、前記制御手段は、前記設定手段で設定される前記複数の値の内、第1の値として前記アンモニア混合比率の値が15%以上25%以下の値に設定された場合には、前記給気圧力を、前記空気過剰率値を燃料油のみによる運転時の空気過剰率値に対して1.0から1.5低くする値として対応付けられた第1の空気過剰率値と前記所定の負荷率とに基づいて決定される前記給気圧力値となるように制御し、前記設定手段で設定される前記複数の値の内、前記第1の値とは異なる第2の値として前記アンモニア混合比率の値が65%以上の値に設定された場合には、前記給気圧力を、前記空気過剰率値を1.0以下の値として対応付けられた第2の空気過剰率値と前記所定の負荷率とに基づいて決定される前記給気圧力値となるように制御することを特徴とするものである。
【0013】
これにより、アンモニア混合比率の広い範囲で排ガスNOx値を抑えつつ、未燃アンモニアを減少させてCO2を削減することができる。
【0015】
ましくは第の形態として、前記第1の形態において、前記制御手段は、前記設定手段で設定される前記アンモニア混合比率値が、前記第1の値から前記第2の値として前記第1の値よりアンモニア混合比率が高い値に変更された場合、前記給気圧力を、前記第1の前記空気過剰率値から、前記第1の前記空気過剰率値よりも小さい値として対応付けられた第2の前記空気過剰率値と前記所定の負荷率とに基づいて決定される前記給気圧力値となるように制御するようにしても良い。
【0018】
また好ましくは第の形態として、前記第1又はの形態において、前記給気圧力の制御は、過給機の排気バイパスに設けられた調整手段による空気量の調整により行うようにしても良い。
【0019】
また好ましくは第の形態として、前記第1乃至第の形態のいずかにおいて、前記アンモニアの投入は、燃焼室入側の給気ポートに対してアンモニアを噴射することにより行うようにしても良い。
【0020】
また好ましくは第の形態として、前記第1乃至第の形態のいずかにおいて、前記アンモニアの投入は、燃焼室内にアンモニアを直接噴射することにより行うようにしても良い。
【0021】
また、本発明の第の形態によれば、前記第1乃至第の形態のいずかにおいて、前記設定手段により設定されたアンモニア混合比率値に基づき、燃料油の流量及びアンモニアの流量をそれぞれ制御する流量制御手段と、前記流量制御手段で調整された燃料油の流量及びアンモニアの流量をそれぞれ演算又は検出する流量演算手段と、前記流量演算手段の演算結果からアンモニアの混合比率を演算する混合比率演算手段と、前記設定手段で設定されたアンモニア混合比率値もしくは前記混合比率演算手段で演算して得られた前記アンモニア混合比率値のいずれかに対応する空気過剰率値を出力する空気過剰率出力手段と、負荷率を検出する負荷率検出手段と、空気過剰率毎に、前記負荷検出手段で検出される負荷率と前記負荷率に対応する給気圧力値を対応付けたテーブルを複数有するテーブル記憶手段と、前記空気過剰率出力手段から出力される空気過剰率値に基づき前記テーブル記憶手段の中から選択されるテーブルを用いて、前記負荷率検出手段で検出された負荷率に対応する給気圧力の値を決定する給気圧力決定手段と、前記給気圧力決定手段で決定した給気圧力の値になるよう空気量を制御する手段と、を備えるものである。
【0022】
また好ましくは第の形態として、前記第の形態において、前記テーブル記憶手段に記憶されるテーブルは、空気過剰率毎に任意の負荷率に対して対応する給気圧力の値を決定可能な曲線データに対応する値を記憶したものであるようにしても良い。
【0023】
また好ましくは第の形態として、前記第の形態において、前記テーブル記憶手段に記憶されるテーブルは、空気過剰率毎に所定の負荷率に対して対応する給気圧力の値を決定可能なルックアップテーブルであるようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】アンモニア混合比率が20%の時と80%の時の混合気の状態を比較して示す図
図2】発明者の実験の結果得られたデータの例を示す図
図3図2のデータから得られた、アンモニア混合比率と空気過剰率及び未燃アンモニアの関係の例を示す図
図4】アンモニア混合比率が20%の時と80%の時の空気過剰率の違いにおける混合気の状態を示す図
図5】本発明の第1実施形態の全体構成を示す断面図
図6】同じくエンジン燃焼室周辺を拡大して示す断面図
図7A】同じく給気ポートにアンモニアガスを噴射するためのスペーサ周辺の構成を示す拡大斜視図
図7B】同じくスペーサ形状を示す拡大斜視図
図7C】同じくガス弁の構成を示す拡大斜視図
図8】同じくアンモニア噴射タイミングの例を示す図
図9】同じく制御手順を示す流れ図
図10】同じく空気過剰率と負荷率から給気圧力を決める方法の説明図
図11】本発明の第2実施形態における旋回流の発生例を示す拡大斜視図
図12】本発明の第3実施形態の全体構成を示す断面図
図13】本発明の第4実施形態のエンジン燃焼室周辺を示す断面図
図14A】同じくアンモニア供給系統を斜め上から見た斜視図
図14B】同じくアンモニア供給系統を斜め下から見た斜視図
図15】同じくアンモニア噴射穴の配置例を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態及び実施例に記載した内容により限定されるものではない。また、以下に記載した実施形態及び実施例における構成要件には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。更に、以下に記載した実施形態及び実施例で開示した構成要素は適宜組み合わせてもよいし、適宜選択して用いてもよい。
【0026】
アンモニアを含む燃料ディーゼルエンジンにおいて、未燃アンモニアの排出を極力抑えるためには、アンモニアと空気の混合気を、アンモニアを点火源である油燃焼の行われる高温部になるべく集中させる必要がある。この点、特許文献3記載の発明では、高温部となる燃焼室壁面付近にアンモニアが集中するようにしている。
【0027】
しかしながら、このような方法では、アンモニア混合比率をさらに高めていった場合に未燃アンモニアの排出を抑制することは難しい。なぜなら図1に示すようにアンモニア混合比率が高まっていくと、アンモニア分布が変化してくるからである。図1左側はアンモニア混合比率20%の場合のアンモニア分布を示しているが、この場合、高温部が壁面付近に集中し、その壁面付近に+70%の層状にアンモニアを集中させることが可能であり、これにより未燃アンモニアの排出を抑制できる。
【0028】
ところが図1右側のようにアンモニア混合比率をさらに高い混合比率、ここではアンモニア混合比率80%の場合を示しているが、その場合、比率増加によりアンモニアの層状度が減少して均一混合気に近くなっている。
【0029】
このことはアンモニアを高温部である壁面に集中させる割合が減少することを意味しており、その結果、未燃アンモニアが多く残る結果となる。
【0030】
つまり、アンモニア混合比率を増加させることで層状度が減少したアンモニアを含む燃料を用いる場合には、点火源となる燃料油を正常に燃焼させつつ、燃焼室の壁面部だけではなく燃焼室全体を高温化、つまりアンモニアと空気の混合気を熱分解促進に有効な温度レベル(約1500℃~約2000℃)に置くために適正な空気過剰率に調整する必要がある。
【0031】
本発明では、そのような燃料のアンモニア混合比率に適合した空気過剰率を実施例から検証した。以下にその実施例、比較例を説明する。
【0032】
なお、実施例、比較例共、対象となるディーゼルエンジンは、アンモニアを図6のように給気ポートに噴射する形式か、図13のようにアンモニアをエンジン燃焼室内に直接噴射する形式のいずれかであり、それぞれ以下の装置条件でアンモニア混合比率を変化させた場合の投入したアンモニアに対する未燃アンモニアの割合をシュミレーションし、図2のように評価した。
【0033】
数値解析の装置条件としてはシリンダ径400mm、ストローク500mm、行程容積62.8L、圧縮比14.5、回転数600rpm、4ストロークエンジンの給排気系、燃焼室をモデル化し解析を実施した。
【0034】
又、シュミレーションではアンモニア混合比率、空気過剰率、アンモニア投入時期、期間、投入位置、油燃料噴射量、噴射時期、噴射圧力、アンモニアと空気予混合気の層状度、等のパラメータを変更し実施し、出力として、図示効率、未燃NH3、NOx、CO,THC、PM、Pmax(燃焼最高圧力)、等を算出した。
【0035】
なお算出される値の評価基準は、NOxはIMO海洋NOx規制 TierIIレベルに基づき、濃度900ppm以下を、未燃アンモニア比率については、内閣府国家プロジェクトである戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の課題名「エネルギーキャリア」、研究開発テーマ「アンモニア直接燃焼」における目標値である5%以下を◎(優)とし、それに準ずるレベルであるNOx濃度が1000ppm以下、未燃アンモニア比率7%以下を〇(良)、これにも満たないものは×(不可)とした。
【0036】
なおCO2については、アンモニアは燃料として用いる場合、炭素(C)を含まないカーボンフリーであるため、重油との混合比率に相当するCO2削減効果が得られるので、ここでの評価値算出は割愛した。つまりアンモニアを熱量比80%で重油と混焼させた場合、80%のCO2削減となり、アンモニア混合比率を高めれば高めるほどCO2削減効果が増大するためである。
【0037】
<参考例、実施例1~15>
(参考例)上記装置条件の下、燃料として重油100%、すなわちアンモニアを混合させない燃料とし、燃料油の噴射時期を上死点TDCに対して-9.5、空気過剰率を3.2となるように給気圧力を設定し、その時のNOx濃度、未燃アンモニア比率を算出した。その結果は図2の表のとおりであった。
【0038】
(実施例1~3)上記参考例と同一の装置条件の下、燃料として重油80%、アンモニア20%とし、アンモニア熱量混合比率20%に調製した燃料を実施例1、3では図6に示す給気ポートに噴射する形式で投入、実施例2では図13に示す燃焼室に直接噴射する形式で投入した。各実施例の燃料油の噴射時期を上死点TDCに対して、実施例1:-19.5、実施例2:-19.0、実施例3:-18.0でそれぞれ噴射し、空気過剰率を2.0となるように給気圧力を設定し、参考例と同様の方法でNOx濃度、未燃アンモニア比率を算出した。その結果は図2の実施例1~3の通りであった。
【0039】
(実施例4~6)上記参考例と同一の装置条件の下、燃料として重油50%、アンモニア50%とし、アンモニア熱量混合比率50%に調製した燃料を実施例4~6いずれも図6に示す給気ポートに噴射する形式で投入した。各実施例の燃料油の噴射時期を上死点TDCに対して、実施例4:-21.5、実施例5:-19.0、実施例6:-17.5でそれぞれ噴射し、空気過剰率を実施例1~3より下げた1.6となるように給気圧力を設定し、参考例と同様の方法でNOx濃度、未燃アンモニア比率を算出した。その結果は図2の実施例4~6の通りであった。
【0040】
(実施例7~9)上記参考例と同一の装置条件の下、燃料として重油40%、アンモニア60%とし、アンモニア熱量混合比率60%に調製した燃料を上述した実施例4~6と同様、いずれも図6に示す給気ポートに噴射する形式で投入した。各実施例の燃料油の噴射時期を上死点TDCに対して、実施例7:-19.0、実施例8:-16.0、実施例9:-13.0でそれぞれ噴射し、空気過剰率を実施例4~6より下げて実施例7:1.1、実施例8:1.2、実施例9:1.3となるように給気圧力を設定し、参考例と同様の方法でNOx濃度、未燃アンモニア比率を算出した。その結果は図2の実施例7~9の通りであった。
【0041】
(実施例10~12)上記参考例と同一の装置条件の下、燃料として重油30%、アンモニア70%とし、アンモニア熱量混合比率70%に調製した燃料を上述した実施例4~6と同様、いずれも図6に示す給気ポートに噴射する形式で投入した。各実施例の燃料油の噴射時期を上死点TDCに対して、実施例10:-16.5、実施例11:-16.0、実施例12:-15.0でそれぞれ噴射し、空気過剰率を実施例7~9より更に下げて実施例10:1.0、実施例11:0.9、実施例12:1.0となるように給気圧力を設定し同様の方法でNOx濃度、未燃アンモニア比率を算出した。その結果は図2の実施例10~12の通りであった。
【0042】
(実施例13~15)上記参考例と同一の装置条件の下、燃料として重油20%、アンモニア80%とし、アンモニア熱量混合比率80%に調製した燃料を上述した実施例4~6と同様、いずれも図6に示す給気ポートに噴射する形式で投入した。各実施例の燃料油の噴射時期を上死点TDCに対して、実施例13:-17.0、実施例14:-16.0、実施例15:-15.0でそれぞれ噴射し、空気過剰率を実施例10~12より更に下げて実施例13~15は全て0.8となるように給気圧力を設定し同様の方法でNOx濃度、未燃アンモニア比率を算出した。その結果は図2の実施例10~12の通りであった。
【0043】
ちなみに、上記実施例1~6のようにアンモニアを含む燃料として、アンモニアの熱量混合比率を20%、50%に変更した場合でも、空気過剰率を2.0で固定とした場合、アンモニア混合比率20%では未燃NH3が0.7%、NOxが890ppmとなるのに対し、アンモニア混合比率50%では、未燃NH3が23%と上記評価基準を大きく下回る形となり、これではたとえNOxは350ppm程度まで低減できたとしてもエンジンを運転することはできない。
【0044】
発明者がシュミレーションした実施例1~15により得られた図2に基づきNOx値を900ppm以下とするための、アンモニアと燃料油の混合比率に対する空気過剰率λの最適条件を図3に示す。図3の縦軸に空気過剰率λ、横軸にアンモニア熱量比混合比率を示す。
【0045】
これによれば、アンモニアの燃焼は、図3に示すように、アンモニア混合比率50%程度までは燃料油が正常に燃焼する範疇で、燃焼場を高温にすべく空気過剰率は徐々に下げることが望ましい。
【0046】
但し、アンモニア混合比率が50%を超える範囲より、95%以上の燃焼率を得るためには、アンモニアと空気の混合気を1500℃~2000℃レベルの高温環境に置いて、アンモニアの熱分解反応を優先させることが必要となり、アンモニア混合比率が65%以上では図4に示すように、空気過剰率を例えば1.0以下の過濃側とし、燃料油の点火及びその後の燃料油、アンモニアの燃焼による燃焼室温度を高温とする必要があることが分かった。
【0047】
これは、すべてのアンモニアが完全燃焼である次式
4NH3+3O2=2N2+6H2
を辿らず、素反応式上、中間生成物で留まるものでも、発熱反応によりエネルギは取り出せるためと考えられアンモニアが前式のように完全にすべて反応しなくても、熱分解反応で分解してアンモニアとして留まらず未燃アンモニアとならないことが推定される。つまり、アンモニアと燃料油との混合比率を可変とし、その比率に最適な空気過剰率になるよう制御を行うが、アンモニア混合比率を高めるほど空気過剰率を下げ、特にアンモニア混合比率が65%以上のものにおいては、通常は燃料油を完全燃焼させるのに必要な空気過剰率1.0より下げる、即ちアンモニアの熱分解反応の促進を優先させるために空気過剰率を1.0以下とすることが未燃アンモニアを抑制するためには必要な条件となる。
【0048】
なお、これは、燃焼室形状や流動条件により若干差が出ると考えられ、この曲線関係には例えばアンモニア混合比率に±5%程度の幅を持たせることが望ましいが、この曲線に沿った空気過剰率の制御を行うことが燃焼率95%以上を得るために好ましい。
【0049】
制御の手法としては、従来の燃焼では排ガス中残存O2濃度の監視で、空気過剰率の制御を行うことが可能であったが、本発明の燃焼方法ではアンモニアは熱分解の中間生成物で留まらせるので、理論的な排ガス中残存O2濃度にはならない。例えば空気過剰率0.8での燃焼においても、残存O2は存在する。
【0050】
これより、必要な空気量を給気圧力値として割り出し、例えば過給機の排気バイパス量の制御により必要な給気圧力に調整することができる。
【0051】
本発明が対象とするディーゼルエンジンは、図5に示す如く、シリンダ10と、該シリンダ10内を上下動するピストン12と、前記シリンダ10の上部に装着されるシリンダヘッド14と、該シリンダヘッド14に装着され、ピストン12上部のエンジン燃焼室10A内に給気を供給するための給気弁16と、エンジン燃焼室10Aから燃焼後の排ガスを排出するための排気弁18と、前記シリンダヘッド14に給気を供給するための給気管20と、前記シリンダヘッド14から排ガスを排出するための排気管22と、エンジン燃焼室10A内に燃料油を噴射するための燃料噴射弁24と、該燃料噴射弁24に燃料油を供給するための燃料油ライン30を構成する、燃料油タンク32、燃料供給ポンプ34及び電磁弁36と、該電磁弁36を開閉するための燃料油噴射制御装置38と、前記給気管20に給気を供給すると共に前記排気管22からの排ガスが排出される給排気系60を構成する、給気ライン62、排ガスにより回転される排気タービン64Aにより、該給気ライン62に供給される空気を圧縮するための給気タービン64Bを備えた過給機64及び前記排気管22から過給機64の排気タービン64Aに供給される排ガスをバイパスライン67を介してバイパスする量を調整するための排気バイパス弁68と、を主に備えている。
【0052】
前記ディーゼルエンジンには、更に、アンモニアを燃焼させるためのアンモニアライン80が設けられている。このアンモニアライン80には、アンモニアタンク82と、アンモニアガス遮断弁84と、アンモニアガス調圧弁86と、前記給気管20内の給気ポート20Aにアンモニアガスを噴射するためのアンモニアガス噴射弁(以下、単にガス弁とも称する)88と、アンモニアガス弁制御装置90が備えられている。
【0053】
そして、前記燃料油ライン30の燃料油噴射制御装置38、前記給排気系60の排気バイパス弁68、及び前記アンモニアライン80のアンモニアガス弁制御装置90は、統括制御装置100によって制御されている。
【0054】
ここで、前記燃料油噴射制御装置38、前記アンモニアガス弁制御装置90、前記排気バイパス弁68、前記統括制御装置100により制御手段が構成される。
【0055】
前記ガス弁88は、図5に示した本発明の第1実施形態では、図6に詳細に示す如く、機械式または電子制御式燃料噴射装置を備えたディーゼルエンジンにおいて、アンモニアをガス弁であるアンモニアガス噴射弁88から給気管20内の給気ポート20Aに噴霧し、エンジン給気と混合させてアンモニア-空気予混合気(単に予混合気とも称する)を作り、燃料噴射弁24から噴射した主燃料である重油や軽油などの燃料油を点火源として混合燃焼させる。
【0056】
図7Aに示す如く、前記給気管20と前記シリンダヘッド14の間にはガス弁88を取り付けるためのスペーサ92が設けられている。このスペーサ92には、図7Bに示す如く、ガス弁取付穴92Aと、ガス弁88から噴射されたアンモニアが直接給気ポート20A内に噴射されないようにするための干渉板92Bが設けられている。従来のディーゼルエンジンでは給気ポート内に残留したアンモニアと空気の混合気が排気行程において燃焼室内の未燃NH3と合算され排出され得るが、本実施例では、ガス弁より給気ポートにNH3を供給する機構に干渉板92Bを設けているため、NH3を給気ポートに極力残留させないようにしている。これにより、未燃NH3は概ね燃焼行程において発生するものに限定される。
【0057】
前記ガス弁88は、図7Cに示す如く、電磁弁88Aにより開閉されている。
【0058】
アンモニアは、アンモニアタンク82に液状で貯留されるが、気化され、ガス態にて供給される。ガス調圧弁86でガス圧が調整され、ガス弁88で流量調整され、図8に例示する所定の給気タイミング内にて開弁期間調整されエンジンに供給される。
【0059】
本実施形態では、更に、前記燃料油ライン30の途中に配設された油流量計102と、該油流量計102の出力に基いて燃料油流量を演算する油流量演算器104と、前記アンモニアライン80の途中に配設されたアンモニア流量計106と、該アンモニア流量計106の出力に基いてアンモニア流量を演算するアンモニア流量演算器108と、前記油流量演算器104で演算された燃料油流量及び前記アンモニア流量演算器108で演算されたアンモニア流量からアンモニア混合比率を演算するアンモニア混合比率演算器110と、該アンモニア混合比率演算器110の出力に基いて必要な給気圧力を演算し、給気管20の途中に配設された給気圧力センサ122で検出される給気圧力が目標値となるように前記排気バイパス弁68を制御する給気圧力演算器120とを備えている。
【0060】
前記統括制御装置100は、予め設定されたアンモニア混合比率の設定比率値とアンモニア混合比率演算器110による演算比率値を比較して、所定範囲外であれば燃料油噴射制御装置38とアンモニアガス弁制御装置90により燃料油流量及び/又はアンモニア流量をフィードバック制御して、実際の比率(実比率と称する)が設定比率の所定範囲内に収まるようにする。
【0061】
以下、図9を参照して制御手順を説明する。
【0062】
まずステップ1000で統括制御装置100にアンモニア混合比率の目標値(設定比率)を設定し、この設定比率に対応する燃料油流量、アンモニア流量をそれぞれ算出すると共に、エンジン負荷を検出し、ガス弁88と燃料噴射弁24の制御を行う。なお設定するアンモニア混合比率は変更可能に構成されている。
【0063】
次いでステップ1100で、燃料流量、即ち燃料油とアンモニアの流量を検出する。ここで、燃料油の流量は油流量計102の出力から検出し、アンモニアの流量はアンモニア流量計106の出力から検出する。
【0064】
ステップ1100で検出された燃料油とアンモニアの流量からステップ1200でアンモニア混合比率を算定する。
【0065】
ステップ1200で演算して得られたアンモニア混合比率値の実際の値(実比率)と、最初の設定で設定したアンモニア混合比率値(設定比率)とをステップ1210で比較し、所定範囲内であれば演算した実比率をステップ1300で用いる。一方、所定範囲を超える差が生じているようであれば、ステップ1220で再度燃料油流量とアンモニア流量を所定範囲内に収めるようにフィードバック制御する。例えば検出した燃料油流量とアンモニア流量が設定したアンモニア70%、燃料油30%などのアンモニア混合比率となるような調整を行う。なお、ステップ1210で所定範囲内と判断された場合、燃料油流量とアンモニア流量の更なる調整は不要のため、最初に設定したアンモニア混合比率値(設定比率)を用いても良いが、実測演算値(実比率)の方がより正確と考えられるため、演算比率値(実比率)の方がより好ましい。
【0066】
次いでステップ1300に進み、その時の負荷率に応じて、図10のような関係を用いて、ステップ1200で算定されるか、ステップ1000で設定された、その時のアンモニア混合比率(実比率又は設定比率)に対応する空気過剰率λに必要な給気圧力を設定する。例えば負荷率がaの場合で空気過剰率λが1.0の場合、必要な給気圧力はbとなる。なお、図中に矢印Aで示す如く、負荷率上昇に伴い、同一空気過剰率λをとる場合、必要な給気圧力は上昇する。一方、空気量減、空気過剰率λ減に伴い、図中に矢印Bで示す如く、必要な給気圧力は下降する。制御に必要な図10のようなデータは、予めテーブルとして給気圧力演算器120に記憶しておくことができる。なおここで記憶されるテーブルは、空気過剰率毎に任意の負荷率に対して対応する給気圧力を決定可能な曲線データを記憶するものであっても良いし、空気過剰率毎に所定の負荷率に対して対応する給気圧力を決定可能な数値をLUT(ルックアップテーブル)の形で記憶しておくものであっても良い。前者の場合、曲線データであるため、任意の負荷率に対して対応する空気過剰率を決定することができる点で好ましく、後者はある程度決められた離散的な負荷率に対して対応する空気過剰率を記憶手段の記憶容量を節約しながら決定できる点で好ましい。
【0067】
そして、ステップ1400に進み、排気バイパス弁68の開度を制御して、給気圧力センサ122で検出される給気圧力が設定値となるように調整する。
【0068】
最終的な設定出力、回転数維持のガバニングは、アンモニア混合比率の低い時には燃料油流量の調整にて、またアンモニア混合比率の高い時にはアンモニア流量の調整にて行い、どちらの燃料にて最終ガバニングするかは任意に設定することができる。
【0069】
なお、前記第1実施形態においては、給気管20に直交する方向からアンモニアガスを噴射していたが、図11に示す第2実施形態のように、給気ポート20Aへアンモニアガスを噴射する際に給気管20と平行な方向からアンモニアガスを噴射して、エンジン燃焼室10A内に旋回流Cを発生強化させるようにして、給気ポート20A内へのアンモニア残留を削減することができる。
【0070】
また、前記第1実施形態では、燃料油とアンモニアの流量を油流量計102とアンモニア流量計106を用いて、それぞれ直接検出していたが、図12に示す第3実施形態のように、油流量演算器104で燃料油噴射制御装置38の出力の燃料噴射信号を積算して燃料油流量を計算したり、アンモニアライン80に設けたアンモニアの圧力を検出するアンモニア圧力センサ130及びアンモニア温度センサ132と、アンモニアガス弁制御装置90から入力されるガス弁88の開度に応じてアンモニア流量演算器108でアンモニア流量を演算してもよい。
【0071】
この第3実施形態によれば、流量計を設けることなく燃料油流量とアンモニア流量を演算することができる。なお、いずれか一方のラインに第1実施形態と同様の流量計102又は106を設けて、一方の流量を直接検出するように構成することも可能である。
【0072】
また、前記実施形態においては、いずれもアンモニアガスが給気ポート20Aに供給されていたが、アンモニアガスをエンジン燃焼室10Aに供給する方法はこれに限定されず、特許文献3と同様の図13に示す第4実施形態のように、アンモニアライン80の出側に図14A図14Bに示すようなパイプ200、逆止弁202、コネクタ204を設けて、エンジン燃焼室10Aの内側壁面側の複数個所(実施形態では図15に示す2箇所)に形成したアンモニア噴射穴206から気化したアンモニアガスをエンジン燃焼室10A内に直接投入することもできる。
【0073】
本実施形態のガス弁88は各シリンダ10に装備され、該ガス弁88により制御されるアンモニアは、図14A図14Bに示すパイプ200で分配され、コネクタ204を通って複数の噴射穴206に送られる。該コネクタ204の部分には、燃焼時に燃焼ガスが逆流しないように逆止弁202が設けられている。
【0074】
なお、前記実施形態においては、本発明が重油を燃料とする船舶用のディーゼルエンジンに用いられていたが、本発明の適用対象はこれに限定されず、軽油を燃料とするディーゼルエンジンや、ディーゼルエンジンのような圧縮着火と、ガソリンエンジンのような火花着火を組み合わせたエンジンにも同様に適用できる。燃料油ライン、アンモニアライン、給排気系の構成も実施形態に限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0075】
アンモニアを輸送するアンモニアタンカーのエンジンとして用いるのに特に有効であるが、適用対象はこれに限定されない。
【符号の説明】
【0076】
10…シリンダ
10A…エンジン燃焼室
12…ピストン
14…シリンダヘッド
16…給気弁
18…排気弁
20…給気管
20A…給気ポート
22…排気管
24…燃焼噴射弁
30…燃料油ライン
32…燃料油タンク
34…燃料供給ポンプ
36…電磁弁
38…燃料油噴射制御装置
60…給排気系
62…給気ライン
64…過給機
64A…排気タービン
64B…給気タービン
66…排気ライン
68…排気バイパス弁
80…アンモニアライン
82…アンモニアタンク
84…ガス遮断弁
86…ガス調圧弁
88…ガス弁(アンモニア噴射弁)
90…アンモニアガス弁制御装置
100…統括制御装置
102…油流量計
104…油流量演算器
106…アンモニア流量計
108…アンモニア流量演算器
110…アンモニア混合比率演算器
120…給気圧力演算器
122…給気圧力センサ
130…アンモニア圧力センサ
132…アンモニア温度センサ
【要約】
燃焼室と、前記燃焼室内に点火源となる燃料油とガス状のアンモニアとを投入する燃料投入手段とを有し、前記燃料投入手段により前記燃焼室内に投入される燃料油とガス状のアンモニアとにより前記燃焼室内でアンモニア予混合気を形成して混合燃焼させるディーゼルエンジンであって、複数の異なるアンモニア混合比率値を設定可能な設定手段と、前記設定手段で設定される前記アンモニア混合比率値に基づいて、前記投入手段で投入される燃料油及びアンモニアの総和における空気過剰率値を調整する制御手段を有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15