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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】吸着パッド
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/06 20060101AFI20221018BHJP
   B66C 1/02 20060101ALN20221018BHJP
【FI】
B25J15/06 A
B66C1/02 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018149076
(22)【出願日】2018-08-08
(65)【公開番号】P2020023022
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】中山 徹
(72)【発明者】
【氏名】杉山 亨
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 則行
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 優
(72)【発明者】
【氏名】後藤 幸也
【審査官】木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-046090(JP,A)
【文献】特開平07-178691(JP,A)
【文献】特開平08-073176(JP,A)
【文献】特開平08-229865(JP,A)
【文献】特開2018-065194(JP,A)
【文献】特開平10-034579(JP,A)
【文献】特開2010-188465(JP,A)
【文献】米国特許第06193291(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/06
B66C 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負圧流体の供給される通路を内部に有したボディの端部に固定され、ワークを吸着する吸着部の吸着面にリブを有した吸着パッドであって、
前記リブは前記ワーク側に向かって突出し、前記通路の外周側に形成され、径方向外側に向かって延在する複数の第1リブ部と、
前記第1リブ部の外周側に形成され該第1リブ部に対して周方向にオフセットして配置され、且つ、前記第1リブ部の径方向外側に重なるように配置され前記第1リブ部と径方向に対向する複数の第2リブ部と、
から構成され、
隣接する前記第1リブ部の間には前記負圧流体の流通する供給路が形成され、前記第2リブ部の少なくとも一部が前記供給路の延在方向に臨むように配置されると共に、
前記ワークの形状に追従するように前記吸着パッドが変形したとき、前記第1リブ部と前記第2リブ部とが当接し、前記第1リブ部と前記第2リブ部とによって前記供給路を囲む、吸着パッド。
【請求項2】
請求項1記載の吸着パッドにおいて、
前記第1及び第2リブ部は、前記吸着部の周方向に沿って互いに等間隔離間するように設けられる、吸着パッド。
【請求項3】
請求項1又は2記載の吸着パッドにおいて、
前記第1リブ部は、前記吸着部の外周側に向かって開口した断面凹状に形成され、前記第2リブ部は、前記第1リブ部側となる内周側に向かって開口した断面凹状に形成される、吸着パッド。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の吸着パッドにおいて、
前記吸着部は、中央に設けられ前記負圧流体の供給されるアタッチメントと、
弾性変形可能であり該アタッチメントの外周側に設けられ前記ワークを吸着可能な吸着面を有したスカートと、
を備え、
前記スカートは、前記アタッチメントを支点として撓曲自在に設けられる、吸着パッド。
【請求項5】
請求項記載の吸着パッドにおいて、
前記スカートは環状に形成され、複数の前記第1リブ部の周方向に沿った長さの合計が、前記スカートの内周に対して40%~70%の範囲内となるように設定され、且つ、前記第2リブ部の外周側端部に接する外接面の円周に対して40%以下となるように設定されると共に、前記ボディ及び前記吸着部の軸方向から見た前記第1及び第2リブ部の面積の合計が、前記スカートの面積に対して5%~40%の範囲内となるように設定される、吸着パッド。
【請求項6】
請求項記載の吸着パッドにおいて、
前記吸着部は、蛇腹状に形成され軸方向に伸縮自在なベローズ部を備え、前記ベローズ部の端部に前記ワークを吸着するスカートが一体的に形成されると共に、且つ、前記ベローズ部と前記スカートとが別の材質から形成される、吸着パッド。
【請求項7】
請求項記載の吸着パッドにおいて、
前記ベローズ部の硬度が前記スカートの硬度よりも高く設定される、吸着パッド。
【請求項8】
請求項記載の吸着パッドにおいて、
前記アタッチメントには、前記ボディの通路と連通した連通孔が形成され、前記連通孔には、前記スカート側となる外周側に向かって延在して連通したガイド溝が形成される、吸着パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負圧流体の供給作用下にワークを吸着して搬送することが可能な吸着装置に用いられる吸着パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、供給された負圧流体によってワークを吸着して搬送するための吸着パッドを有した吸着装置が知られており、このような吸着装置では、例えば、フィルムから袋状に形成され流動性の内容物が充填されたワークを搬送する場合、該内容物がワーク内で移動してワークが変形した際、その変形に吸着パッドが追従できずに吸着不良となってしまうことがある。
【0003】
そこで、上述したような課題を解決するために、特許文献1に開示された吸着パッドでは、中央に吸引通路を有した支持体と、該支持体の下部に設けられワークに当接するスカート部とを備え、スカート部は円錐台形状に形成され、その内部空間には、中心から外周側に向かって放射状に延在し、且つ、ワーク側に向かって突出した複数のリブ部を備えている。
【0004】
また、スカート部の内部空間には、その中心に負圧流体の供給される吸引路が開口し、この吸引路に臨み、且つ、各リブ部の内側となる位置に断面扇状の凸面部がワーク側に突出するように形成されている。
【0005】
そして、内部に内容物が充填された袋状のワークを吸着パッドで吸着する際、前記ワークの表面にスカート部の傾斜面を密着させ、吸引路を通じて内部空間へと負圧流体を供給することで、前記スカート部が弾性変形してワークの表面に密着し、前記負圧流体が凸面部の間を通じて各リブ部の間へと供給されることで吸着がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-65194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した吸着パッドでは、ワークの吸着時において内容物の流動等によって該ワークが変形した際、各凸面部の間を通じてスカート部の外周側へと供給されて各リブ部の間を流れる負圧流体が、外周側に向かって直線的に流れることで、開放されている前記リブ部の外周側から外部へと漏出してしまい吸着力が低下して吸着不良となることが懸念される。
【0008】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、内容物が流動して変形する袋状のワークに追従させて確実且つ安定的にワークを吸着することが可能な吸着パッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明の態様は、負圧流体の供給される通路を内部に有したボディの端部に固定され、ワークを吸着する吸着部の吸着面にリブを有した吸着パッドであって、
リブはワーク側に向かって突出し、通路の外周側に形成され径方向外側に向かって延在する複数の第1リブ部と、
第1リブ部の外周側に形成され第1リブ部に対して周方向にオフセットして配置され、且つ、第1リブ部の径方向外側に重なるように配置され第1リブ部と径方向に対向する複数の第2リブ部と、
から構成され、
隣接する第1リブ部の間には負圧流体の流通する供給路が形成され、第2リブ部の少なくとも一部が供給路の延在方向に臨むように配置されると共に、
ワークの形状に追従するように吸着パッドが変形したとき、第1リブ部と第2リブ部とが当接し、第1リブ部と第2リブ部とによって供給路を囲む
【0010】
本発明によれば、ワークを吸着する吸着パッドの吸着面には、ワーク側に向かって突出したリブを有し、このリブは、ボディに形成される通路の外周側に形成され、径方向外側に向かって延在する複数の第1リブ部と、第1リブ部のさらに外周側に形成され第1リブ部に対して周方向にオフセットし、第1リブ部の径方向外側に重なるように配置され第1リブ部と径方向に対向する複数の第2リブ部とを備え、隣接する第1リブ部の間に負圧流体の流通する供給路が形成されている。
【0011】
そして、例えば、流動性の内容物が収納された袋状のワークを吸着パッドで吸着して搬送する際、内容物の移動や重力の影響等によってワークの形状が変化した場合でも、ワークの形状に追従するように吸着パッドが変形し、且つ、この変形に伴って第1リブ部と第2リブ部とが当接することで、径方向に対向する第1及び第2リブ部によって供給路を囲んで、供給路の内部に負圧流体を好適に保持することができる。また、吸着パッドの径方向において第1及び第2リブ部によって負圧流体の供給路が非直線状に構成されるため、従来技術に係る吸着パッドと比較して負圧流体の外部への漏出を防止することが可能となる。
【0012】
従って、吸着されているワークの形状が変化した場合でも、吸着パッドを追従させるように変形させ、且つ、供給路に保持された負圧流体によって安定した吸着力でワークを確実に吸着することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0014】
すなわち、吸着パッドの吸着面に形成されるリブは、ボディに形成された通路の外周側に形成され、径方向外側に向かって延在する複数の第1リブ部と、第1リブ部のさらに外周側に形成され第1リブ部に対して周方向にオフセットした複数の第2リブ部とを備え、隣接する第1リブ部の間に負圧流体の流通する供給路が形成され、例えば、流動性の内容物が収納された袋状のワークを吸着パッドで吸着して搬送する際、ワークの形状が変化した場合でも吸着パッドが追従するように変形し、それに伴って第1リブ部と第2リブ部とが当接することで、径方向に対向する第1リブ部と第2リブ部とによって供給路が囲まれ負圧流体が内部へ好適に保持される。また、第1及び第2リブ部によって負圧流体の供給路が非直線状となるため、従来技術に係る吸着パッドと比較して負圧流体の外部への漏出が防止される。
【0015】
その結果、吸着中において袋状のワークが変形した場合でも、ワークに追従するように吸着パッドを変形させ、供給路内に保持された負圧流体によってワークに対する吸着力が安定的に維持されるため、ワークを確実に吸着することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る吸着パッドを含む吸着装置の全体断面図である。
図2図1の吸着装置におけるパッド部の拡大断面図である。
図3図2のパッド部側から見た吸着装置の正面図である。
図4図1に示す吸着装置の外観斜視図である。
図5図5Aは、載置されたワークに対して吸着装置のパッド部を当接させた状態を示す動作説明図であり、図5Bは、図5Aの吸着装置によってワークを吸着して上方へと移動させた状態を示す動作説明図である。
図6図5Bのワークを吸着した状態におけるパッド部の正面図である。
図7】本発明の第2の実施の形態に係る吸着パッドを含む吸着装置の全体断面図である。
図8図7に示す吸着装置の外観斜視図である。
図9図9Aは、変形例に係る吸着装置をパッド部側から見た正面図であり、図9Bは、図9Aの吸着装置によってワークを吸着した際の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る吸着パッドについて好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。図1において、参照符号10は、本発明の第1の実施の形態に係る吸着装置を示す。
【0018】
この吸着装置10は、図1図4に示されるように、図示しない負圧供給装置に配管を介して接続されるアダプタ(ボディ)12と、該アダプタ12の下端部に連結されるベローズ(べローズ部)14と、該ベローズ14の先端(下端部)に形成されたパッド部(吸着部)16とを含む。
【0019】
アダプタ12は、例えば、金属製材料から円筒状に形成され、その下端部にはベローズ14の連結される連結部18が形成され、上端部には継手20の接続されるねじ部22が形成されると共に、前記連結部18と前記ねじ部22との間には、軸方向と直交方向に突出したフランジ部24が形成されている。そして、フランジ部24には、ねじ部22側となる端面に環状溝を介してシールリング26が装着されている。そして、アダプタ12に対して継手20を接続する際、前記継手20がシールリング26へと当接することで、両者の間を通じた負圧流体の漏出が防止される。
【0020】
また、アダプタ12の内部には、連結部18、フランジ部24及びねじ部22を貫通するように軸方向(矢印A、B方向)に沿って供給通路(通路)28が形成され、この供給通路28には、前記ねじ部22に接続された継手20及び配管を通じて負圧供給装置(図示せず)から負圧流体が供給される。
【0021】
ベローズ14は、例えば、弾性を有したゴム等から円筒状に形成され、伸縮及び屈曲自在な蛇腹構造を有している。ベローズ14の上端には、一定径で円筒状に形成された筒部30を有し、該筒部30がアダプタ12の連結部18を覆うように装着されることで、該アダプタ12の下端部に対して同軸上に連結される。
【0022】
また、ベローズ14には、その軸方向(矢印A、B方向)に沿って交互となるように拡径した環状山部32と縮径した環状谷部34とが形成され、その下端部にはワークW(図5A参照)に対して接触して吸着するパッド部16が一体的に形成されている。
【0023】
なお、中空状に形成されたベローズ14の内部は、負圧流体が供給され流通する流路として機能する。
【0024】
パッド部16はベローズ14の下端部に設けられ、略中央部に設けられるアタッチメント36と、該アタッチメント36の外周側に設けられるスカート38とから構成される。
【0025】
アタッチメント36は、その上端部が上方(矢印A方向)に向かって徐々に拡径した円錐状に形成され、ベローズ14における最も下方の環状山部32に係合されることで該ベローズ14の下端部中央に一体的に保持される。
【0026】
また、アタッチメント36の下端部中央は、ワークWから離間する方向(矢印A方向)に向かって凸状となる断面円弧状に形成され、第1連通孔40と複数の第2連通孔42とが軸方向(矢印A、B方向)に貫通するように形成されている。
【0027】
図3及び図4に示されるように、第1連通孔40はアタッチメント36の軸中心に設けられ、第2連通孔42は、第1連通孔40を中心とした所定直径の円周上に互いに等間隔離間して6個設けられている。すなわち、アダプタ12には合計で7個の連通孔が設けられている。なお、第2連通孔42の数量は上述した6個に限定されるものではない。
【0028】
さらに、アタッチメント36の下端部には、各第2連通孔42からそれぞれ径方向外側に延在したガイド溝44が形成され、このガイド溝44は、ワークW側(矢印B方向)に向かって開口した断面U字状に形成され、各第2連通孔42とアタッチメント36の外周側に設けられるスカート38とを連通するように設けられている。換言すれば、ガイド溝44は、アタッチメント36の下面よりも上方(矢印A方向)へと窪んで形成されている。
【0029】
スカート38は、例えば、ベローズ14と同様の弾性を有したゴム等から薄膜状で環状に形成され、下方に向かって斜め方向に拡開するように形成されると共に撓曲自在に形成される。なお、スカート38は、ベローズ14とは別の材質で2色成形等によって形成してもよい。
【0030】
また、スカート38は、その先端がワークWに対して接触する部位となり、該ワークW側(矢印B方向)となる内面(吸着面)38aには、アタッチメント36の外縁部に臨むように形成された複数の第1リブ(第1リブ部)46と、該第1リブ46に対して外周側に設けられる複数の第2リブ(第2リブ部)48とが設けられる。この第1及び第2リブ46、48は、スカート38の内面38aに対してワークW側へとそれぞれ所定高さだけ突出して形成される。なお、ここでは、15個の第1及び第2リブ46、48がスカート38にそれぞれ設けられる場合について説明する。
【0031】
第1リブ46は、図3に示されるように吸着装置10の軸方向から見て、スカート38の内周側に底部を有し外周側に開口した断面V字状(凹状)に形成され、外周側の二股状となった外周側端部には、中央の凹部46a側に向かって傾斜した傾斜部50が形成されている。すなわち、第1リブ46は、凹部46aを挟んで一方の傾斜部50と他方の傾斜部50とが対称形状で対となるように形成されている。
【0032】
そして、複数の第1リブ46は、スカート38の周方向(矢印D方向)に沿って互いに等間隔離間するように配置され、隣接する2つの第1リブ46の間に負圧流体の供給される供給路52がそれぞれ形成される。この第1リブ46及び供給路52は、スカート38の径方向に沿って放射状となるように延在している。
【0033】
また、第1リブ46及び供給路52の内側に臨むようにアタッチメント36のガイド溝44が配置されている。
【0034】
第2リブ48は、図3に示されるように吸着装置10の軸方向から見て、スカート38の外周側に向かって突出して折曲された断面V字状(凹状)に形成され、隣接して配置される2つの第1リブ46のうち、一方の第1リブ46の外周側端部と他方の第1リブ46の外周側端部とに跨るように配置されている。すなわち、第2リブ48は、隣接する第1リブ46の間に形成された供給路52に臨んだ中央部が最もスカート38の外周側へと突出した頂部48aとなり、この頂部48aから両端に向かって徐々に第1リブ46の外周側端部へと接近するようにそれぞれ径方向内側へ傾斜して形成される。
【0035】
なお、第2リブ48の頂部48aを中心とした傾斜角度は、第1リブ46における傾斜部50の傾斜角度と略同一角度となるように形成されている。
【0036】
また、図3に示されるように、第1リブ46における内周側端部(底部)の周方向に沿った長さLの合計長さが、スカート38の内周(長さ)C1に対して40%~70%の範囲内となるように設定されると共に、前記第2リブ48において最も外周となる頂部48aを通る外接円の円周(長さ)C2に対して40%以下となるように設定される。
【0037】
さらに、吸着装置10の軸方向から見た第1及び第2リブ46、48の面積の合計が、スカート38の表面積に対して5%~40%の範囲内となるように設定される。
【0038】
本発明の第1の実施の形態に係る吸着装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。なお、ここでは、図5A及び図5Bに示されるように、薄膜のフィルムを袋状として内部に流動性の内容物を収納したワークWを吸着して搬送する場合について説明する。
【0039】
先ず、吸着装置10を図示しない搬送装置のアーム等に装着して変位自在に設けると共に、図示しない負圧供給装置に対して配管及び継手20を介してアダプタ12を接続しておく。
【0040】
このような準備作業を経た後、図5Aに示されるように図示しない搬送装置のアームの操作に基づいて吸着装置10を下方(矢印B方向)へと変位させ、スカート38を載置されたワークWの上部に対して密着させると共に、図示しない負圧供給装置から配管及び継手20を介してアダプタ12の供給通路28へと負圧流体を供給する。
【0041】
この際、ワークWは床面等に載置されているため、吸着装置10に臨む上面が略平坦状であり、例えば、ワークWが傾いていたり、該ワークWの上部が平坦でない場合でも、前記ワークWに応じてベローズ14が伸縮動作することで、前記ワークWに追従してパッド部16を確実に密着させることが可能となる。
【0042】
これにより、パッド部16のスカート38がワークWの表面に密着し、アダプタ12の供給通路28へと供給された負圧流体が、ベローズ14の内部を通じてアタッチメント36の第1及び第2連通孔40、42からパッド部16の内部空間へと供給され、前記第2連通孔42へ供給された負圧流体の一部が、ガイド溝44を通じて外周側となるスカート38側へと流れ、各供給路52に沿って外周側へと流れる。その結果、スカート38の密着したワークWの上部が負圧流体によってパッド部16に対して吸着されると同時に、ベローズ14が軸方向に収縮する。この際、スカート38の外縁部が平坦状のワークWの上部へと密着しているため、各供給路52に沿って外周側へと供給される負圧流体が外部へと漏出してしまうことがなく、ワークWに対する吸着力が維持される。
【0043】
そして、図5Bに示されるように、吸着装置10でワークWを吸着した状態で図示しない搬送装置のアームによって該ワークWを上方(矢印A方向)へと移動させることで、前記ワークWは内容物の重量によって重力方向下方(矢印B方向)へと撓むように変形し、それに伴って、前記スカート38が、吸着している前記ワークWの上部形状に追従するように弾性変形して下方に向かって撓曲した湾曲形状となる。
【0044】
このようにワークWの搬送中に該ワークWの形状が変化した場合、スカート38の弾性変形に伴って、図6に示されるように、複数の各第1リブ46が互いに周方向(矢印D方向)に接近し、且つ、第2リブ48が前記第1リブ46の外周側端部側へと接近して該外周側端部と当接すると共に、前記第1リブ46と前記第2リブ48とが互いに径方向へも接近することで、供給路52の外周側が前記第2リブ48によって塞がれた状態となる。
【0045】
さらに、スカート38の弾性変形に伴って、第2リブ48の両端が互いに接近するように曲がることで、第1リブ46の傾斜部50へと当接して供給路52を塞ぐことも可能である。
【0046】
そのため、スカート38において各供給路52を通じて外周側へと供給される負圧流体が、第2リブ48によって該供給路52からさらに外周側へと流れることがなく、前記第2リブ48、第1リブ46に囲まれた供給路52内に保持され、各供給路52内に保持された負圧流体によって変形したワークWの上部が確実且つ好適に吸着される。
【0047】
換言すれば、ワークWの形状変更に応じてスカート38を弾性変形させ、各供給路52内の負圧流体によってワークWを吸着することで吸着力の低下を防止して吸着不良を回避することができる。
【0048】
また、吸着したワークWによってアタッチメント36の下面が覆われた場合でも、第2連通孔42と連通して外周側へと延在したガイド溝44によって負圧流体が確実にスカート38の各供給路52へと供給されることで、ワークWに対する吸着力が維持される。
【0049】
そして、ワークWの吸着された吸着装置10を搬送装置のアームによって所定位置へと搬送した後、供給路52に対する負圧流体の供給を停止することで、吸着装置10のパッド部16によるワークWの吸着状態が解除される。
【0050】
以上のように、第1の実施の形態では、吸着装置10を構成するパッド部16には、負圧流体の供給されるアタッチメント36と、該アタッチメント36の外周側に設けられ弾性変形可能な薄膜状のスカート38とを備え、ワークWを吸着するスカート38の内面38aには、前記アタッチメント36の外周側に形成され径方向に延在する複数の第1リブ46と、該第1リブ46のさらに外周側に形成され該第1リブ46に対して周方向(矢印D方向)にオフセット配置された複数の第2リブ48とを備えると共に、前記第1及び第2リブ46、48が前記ワークW側に向かって突出して形成される。
【0051】
これにより、例えば、流動性の内容物が収納された袋状のワークWを吸着装置10で吸着して搬送する際、搬送中において該内容物の移動や重力の影響等によって前記ワークWの形状が変化した場合でも、前記ワークWに追従するようにスカート38が弾性変形し、且つ、該弾性変形に伴って第2リブ48が第1リブ46の外周側端部を覆うことで、前記第1リブ46の間に形成された各供給路52に供給される負圧流体がスカート38の外周側へと流れて外部へと漏出してしまうことが防止される。
【0052】
その結果、吸着装置10による搬送途中において、ワークWの形状が変化した場合でも、この形状変化に対応してスカート38を変形させることで前記ワークWに対して確実に密着させ、且つ、第2リブ48によって外周側を塞いで閉鎖空間とした供給路52に負圧流体を確実に保持できるため、ワークWに対する吸着力を維持して前記ワークWを確実且つ安定的に吸着し続けることが可能となる。
【0053】
また、スカート38において、第1リブ46と第2リブ48とが径方向に重複するように配置されているため、吸着され搬送途中にあるワークWが変形し、それに伴って前記スカート38が変形した場合に、前記第1リブ46の外周側端部と前記第2リブ48とを好適に当接させて両者の間に設けられた供給路52を確実に塞いで負圧流体を内部に保持することができる。そのため、吸着されているワークWが変形した場合でも、その吸着力が低下してしまうことがなく確実に吸着して搬送することができる。
【0054】
さらに、断面V字状に形成された第1リブ46の外周側端部に傾斜部50を設け、該第1リブ46に臨む第2リブ48を内周側に向かって開口した断面V字状とすることにより、吸着されているワークWが変形し、それに伴ってスカート38が変形した場合、前記第1リブ46の傾斜部50を前記第2リブ48に対して確実に密着させて供給路52を塞ぐことができる。
【0055】
そのため、供給路52の内部の負圧流体の漏出をより確実に防止してワークWに対する吸着力を高めることができる。
【0056】
またさらに、第1及び第2リブ46、48をそれぞれ断面V字状とすることで、スカート38が変形する際に曲がりやすく、しかも、第1及び第2リブ46、48を周方向(矢印D方向)に沿って分割させ複数設けることで、単一の第1及び第2リブを設けた場合と比較して、前記スカート38の変形を容易にすることができ、ワークWの形状変化に追従するように前記スカート38を円滑且つ自在に変形させることが可能となる。
【0057】
さらにまた、アタッチメント36には、各第2連通孔42と連通して径方向外側へと延在した断面U字状のガイド溝44を備えているため、ワークWの吸着時に薄膜状のワークWの一部が前記アタッチメント36を覆うように密着し第2連通孔42が塞がれた場合でも、前記第2連通孔42へ供給された負圧流体をガイド溝44を通じて確実且つ安定的に外周側のスカート38へと供給できるため、ワークWの吸着力を維持することができ吸着不良を回避できる。
【0058】
またさらに、スカート38に対して複数の第1及び第2リブ46、48を設けることで、該スカート38の剛性を高めることができ、それに伴って、第1及び第2連通孔40、42に対する該スカート38自身の吸い込みを防止することができる。
【0059】
また、アダプタ12とパッド部16との間にベローズ14を設ける構成とすることで、ワークWに対して吸着装置10を接触させる際の衝撃を好適に緩和することが可能となる。
【0060】
さらに、スカート38とベローズ14とを別体としてそれぞれ異なる材質から形成すると共に、前記ベローズ14の硬度が前記スカート38の硬度よりも高くなるように設定してもよい。
【0061】
次に、第2の実施の形態に係る吸着装置70を図7及び図8に示す。なお、上述した第1の実施の形態に係る吸着装置10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0062】
この第2の実施の形態に係る吸着装置70では、アダプタ12の下端部に対して吸着パッド72が直接連結されている点で、第1の実施の形態に係る吸着装置10と相違している。
【0063】
この吸着装置70は、アダプタ12の下端部に設けられた連結部18に対し、弾性材料からなる吸着パッド72が連結されている。なお、アダプタ12に関しては、第1の実施の形態に係る吸着装置10と同一の構成であるため、その詳細な説明は省略する。
【0064】
吸着パッド72は、その上端部に円筒状に形成された筒部74を有し、該筒部74がアダプタ12の連結部18を覆うように装着されることで、該アダプタ12の下端部に対して同軸上に連結される。
【0065】
また、吸着パッド72の下端部にはワークWを吸着するパッド部76が形成され、このパッド部76は、略中央部に設けられるアタッチメント36と、該アタッチメント36の外周側に設けられるスカート38とから構成され、前記スカート38には、複数の第1及び第2リブ46、48が設けられている。このスカート38に関しては、第1の実施の形態に係る吸着装置10と同一の構成であるため、その詳細な説明は省略する。
【0066】
以上のように、第2の実施の形態に係る吸着装置70では、第1の実施の形態に係る吸着装置10と比較し、蛇腹状のベローズ14を有していないため、軸方向(矢印A、B方向)に小型化することができる。
【0067】
また、吸着装置10、70のスカート38に設けられる第1及び第2リブ46、48は、上述した形状に限定されるものではなく、例えば、図9A及び図9Bに示される吸着装置100のように、スカート38の中心となるアタッチメント36側から径方向外側に向かって直線状に延在する複数の第1リブ102と、該第1リブ102の外周側に配置され、隣接する第1リブ102の間の供給路52に臨むように配置された複数の第2リブ104とから構成するようにしてもよい。
【0068】
この第1リブ102と第2リブ104とは、スカート38の径方向において一部が重複するように設けられている。
【0069】
この場合でも、吸着装置100によってワークWを吸着した状態において、図9Bに示されるように、該ワークWの形状変化に伴ってスカート38が変形した場合、隣接する2つの第1リブ102の外周側端部に対して第2リブ104が当接することで、前記第1リブ102の間に設けられ負圧流体の供給された供給路52の外周側を確実に塞いで負圧流体を好適に内部に維持することができる。
【0070】
その結果、ワークWを吸着して搬送する際、該ワークWの形状が変化した場合でも、供給路52の内部に保持された負圧流体によって吸着力を安定的に維持することができ、吸着不良を発生させることなく確実にワークWを吸着した状態で搬送することが可能となる。
【0071】
すなわち、第1リブ46、102及び第2リブ48、104は、上述した形状に限定されるものではなく、ワークWの形状変化に応じてスカート38が弾性変形した際、前記第1リブ46、102の外周側端部を第2リブ48、104によって塞いで供給路52内に負圧流体を保持可能な構成であればよい。
【0072】
なお、本発明に係る吸着パッドは、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0073】
10、70、100…吸着装置 12…アダプタ
14…ベローズ 16、76…パッド部
28…供給通路 36…アタッチメント
38…スカート 44…ガイド溝
46、102…第1リブ 48、104…第2リブ
50…傾斜部 52…供給路
72…吸着パッド W…ワーク
図1
図2
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図5
図6
図7
図8
図9