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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】吸着装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 15/06 20060101AFI20221018BHJP
【FI】
B25J15/06 H
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018149077
(22)【出願日】2018-08-08
(65)【公開番号】P2020023023
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】中山 徹
(72)【発明者】
【氏名】杉山 亨
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 則行
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 優
(72)【発明者】
【氏名】後藤 幸也
【審査官】木原 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-063083(JP,A)
【文献】特開2002-046090(JP,A)
【文献】実開昭48-109380(JP,U)
【文献】特開平07-228370(JP,A)
【文献】特開2006-212718(JP,A)
【文献】実開平02-117885(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
負圧流体の供給される通路を内部に有したボディと、該ボディの端部に連結されるベローズと、該ベローズの端部に設けられワークを吸着する吸着部とを有し、前記通路及び前記ベローズを通じて前記吸着部へと供給される前記負圧流体によって前記ワークを吸着する吸着装置において、
前記ベローズの内部には、該ベローズの軸線に対して傾動自在な傾動部材が設けられ、該傾動部材は、軸方向に沿った一端部が前記吸着部において前記ワークを吸着する吸着面に臨むように設けられ、他端部が前記ワークの吸着時に前記通路内へ挿入されると共に、前記吸着面と連通し前記負圧流体の流通する流路を内部に備え、
前記負圧流体が前記吸着部に供給されていない前記ワークの非吸着時において、前記傾動部材の前記他端部が前記通路に挿入されずに前記ベローズの内部に収容され、
前記吸着部によって前記ワークを吸着するとき、前記傾動部材の前記他端部が前記ベローズの内部から前記通路の内部へと移動する、吸着装置。
【請求項2】
請求項1記載の吸着装置において、
前記傾動部材の他端部には、略球面状に形成され前記通路の内周面に当接可能な球面部を有する、吸着装置。
【請求項3】
請求項2記載の吸着装置において、
前記通路には、前記ベローズ側に向かって徐々に拡径するテーパ部を有し、前記テーパ部に対して前記球面部が当接する、吸着装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の吸着装置において、
前記傾動部材は、前記一端部側が前記ベローズの端部に係合される、吸着装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の吸着装置において、
前記傾動部材の他端部側には軸方向に沿って延在する軸部を有し、前記軸部が、前記ベローズの内周部に対して所定間隔離間して設けられる、吸着装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の吸着装置において、
前記吸着部の吸着面には、前記ワーク側に向かって突出した複数のリブを備える、吸着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負圧流体の供給作用下にワークを吸着して搬送することが可能な吸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、供給された負圧流体によってワークを吸着して搬送するための吸着装置が知られており、この吸着装置では、例えば、吸着パッドに対して傾いたワークを吸着することがあり、このような場合には、該吸着パッドが前記ワークに密着せずに負圧流体が該ワークに対して有効に作用せずに吸着不良となることがある。
【0003】
そこで、上述したような課題を解決するために、特許文献1に開示された吸着装置では、取付具の下端に中空状の接続ねじが接続され、その下端部に球状のボールジョイントが設けられている。そして、吸着パッドを保持するボールサポートが、ボールジョイントに対して回動自在に保持される。これにより、ワークが吸着パッドに対して傾いている場合でも、ボールジョイントを介してボールサポートと共に吸着パッドが傾動することで前記ワークへと密着させて吸着できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実公平5-35973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような吸着装置において、例えば、フィルムから袋状に形成され流動性を有した内容物の充填されたワークを搬送する場合には、搬送時に働く慣性によって内容物がワーク内で移動し、それに伴って、前記ワークが吸着パッドに対して揺動することがある。これにより、例えば、ワークに働く慣性力が吸着パッドによる吸着力に対して大きい場合には、前記吸着パッドに対して前記ワークがすべってしまい位置ずれが生じたり、前記ワークが高速で搬送される場合は、吸着パッドから前記ワークが脱落してしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、搬送時におけるワークの位置ずれや脱落を確実に防止することが可能な吸着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、本発明の態様は、負圧流体の供給される通路を内部に有したボディと、ボディの端部に連結されるベローズと、ベローズの端部に設けられワークを吸着する吸着部とを有し、通路及びベローズを通じて吸着部へと供給される負圧流体によってワークを吸着する吸着装置において、
ベローズの内部には、ベローズの軸線に対して傾動自在な傾動部材が設けられ、傾動部材は、軸方向に沿った一端部が吸着部においてワークを吸着する吸着面に臨むように設けられ、他端部がワークの吸着時に通路内へ挿入されると共に、吸着面と連通し負圧流体の流通する流路を内部に備え
負圧流体が吸着部に供給されていないワークの非吸着時において、傾動部材の他端部が通路に挿入されずにベローズの内部に収容され、
吸着部によってワークを吸着するとき、傾動部材の他端部がベローズの内部から通路の内部へと移動する
【0008】
本発明によれば、吸着装置においてボディと吸着部との間に設けられたベローズの内部には、ベローズの軸線に対して傾動自在な傾動部材が設けられ、傾動部材は、軸方向に沿った一端部が吸着部においてワークを吸着する吸着面に臨むように設けられ、他端部がワークの吸着時に通路内へ挿入されると共に、その内部には吸着面と連通し負圧流体が流通する流路を備えている。また、負圧流体が吸着部に供給されていないワークの非吸着時において、傾動部材の他端部が通路に挿入されずにベローズの内部に収容される。吸着部によってワークを吸着するとき、傾動部材の他端部がベローズの内部から通路の内部へと移動する。
【0009】
従って、流動性の内容物が収納されたワークを吸着装置によって吸着して搬送する際に、ワークに対して働く慣性力によって内容物が移動してワークの形状(重心位置)が変化した場合でも、ワークの重心位置の変化に追従して傾動部材がベローズ内で傾動することで対応させることができると共に、他端部が通路内でボディに当接することで傾動量が規制される。
【0010】
その結果、吸着装置で吸着されたワークの搬送途中において、ワークに対して慣性力が働いて形状及び重心位置が変化した場合でも、傾動部材の傾動動作によって吸着装置に対するワークの脱落や位置ずれが確実に防止され、ワークの吸着状態を確実に維持したままで所定の位置へと搬送することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0012】
すなわち、ボディと吸着部との間に設けられたベローズの内部には、ベローズの軸線に対して傾動自在な傾動部材を備え、軸方向に沿った一端部を吸着部の吸着面に臨むように設け、他端部をワークの吸着時に通路内へ挿入するように設けることで、流動性の内容物が収納されたワークを吸着装置によって吸着して搬送する際に、慣性力によってワークの重心位置が変化して形状が変化した場合でも、傾動部材がベローズ内で傾動することでワークの重心位置の変化に対応させることができると共に、他端部が通路内でボディに当接することで傾動量が好適に規制される。
【0013】
その結果、吸着装置で吸着されたワークの搬送途中において、ワークに対して慣性力が働いた場合でも、傾動部材が好適に傾動動作することでワークの脱落や位置ずれが確実に防止される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る吸着装置の全体断面図である。
図2図1の吸着装置におけるパッド部及びアタッチメント近傍の拡大断面図である。
図3図1の吸着装置によってワークを吸着して上方へと移動させた状態を示す動作説明図である。
図4図3の吸着装置において搬送途中にワークに慣性が働いて揺動した状態を示す動作説明図である。
図5】本発明の第2の実施の形態に係る吸着装置の全体断面図である。
図6図5のパッド部側から見た吸着装置の正面図である。
図7図6の吸着装置においてワークを吸着した状態のパッド部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る吸着装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。図1において、参照符号10は、本発明の第1の実施の形態に係る吸着装置を示す。
【0016】
この吸着装置10は、図1図4に示されるように、図示しない負圧供給装置に配管を介して接続されるアダプタ(ボディ)12と、該アダプタ12の下端部に連結されるベローズ14と、該ベローズ14の下端部(先端)に形成されたパッド部(吸着部)16と、前記ベローズ14及びパッド部16の内部に収納されるアタッチメント(傾動部材)18とを含む。
【0017】
アダプタ12は、例えば、金属製材料から円筒状に形成され、その下端部にはベローズ14の連結される連結部20が形成され、上端部には継手22の接続されるねじ部24が形成されると共に、前記連結部20と前記ねじ部24との間には、軸方向(矢印A、B方向)と直交方向に突出したフランジ部26が形成されている。
【0018】
そして、フランジ部26には、ねじ部24側(矢印A方向)となる端面に環状溝を介してシールリング28が装着されている。そして、アダプタ12に対して継手22を接続する際、前記継手22がシールリング28へと当接することで、両者の間を通じた負圧流体の漏出が防止される。
【0019】
また、アダプタ12の内部には、連結部20、フランジ部26及びねじ部24を貫通するように軸方向(矢印A、B方向)に沿って供給通路(通路)30が形成され、この供給通路30には、前記ねじ部24に接続された継手22及び配管を通じて負圧供給装置(図示せず)から負圧流体が供給される。さらに、供給通路30には、連結部20の内側となる位置に下方となるベローズ14側(矢印B方向)に向かって徐々に拡径したテーパ部32が形成される。
【0020】
ベローズ14は、例えば、弾性を有したゴム等から円筒状に形成され、軸方向に伸縮及び屈曲自在な蛇腹構造を有している。ベローズ14の上端には、一定径で円筒状に形成された筒部34を有し、該筒部34がアダプタ12の連結部20を覆うように装着されることで、該アダプタ12の下端部に対して同軸上に連結される。
【0021】
また、ベローズ14には、その軸方向(矢印A、B方向)に沿って交互となるように拡径した環状山部36と縮径した環状谷部(内周部)38とが形成され、その下端にはワークW(図3及び図4参照)に対して接触して吸着するパッド部16が一体的に形成されている。
【0022】
なお、中空状に形成されたベローズ14の内部は、負圧流体が供給され流通する流路として機能し、前記負圧流体の供給作用下にアダプタ12側(矢印A方向)に向かって軸方向に収縮する。
【0023】
パッド部16は、ベローズ14の下端に設けられるスカート40を有し、前記スカート40は、例えば、ベローズ14と同様の弾性を有したゴム等から薄膜状で環状に形成され、下方(矢印B方向)に向かって斜め方向に拡開するように形成されると共に撓曲自在に形成される。そして、スカート40は、その先端がワークW(図3参照)に対して接触する部位となる。なお、このスカート40は、ベローズ14とは別の材質で2色成形等によって形成してもよい。
【0024】
アタッチメント18は、例えば、樹脂製材料から形成され、パッド部16側(矢印B方向)となるベローズ14の先端に係合される本体部42と、該本体部42の中心からアダプタ12側(矢印A方向)に向かって延在するシャフト部(軸部)44とを有する。この本体部42及びシャフト部44は、吸着装置10の軸方向(矢印A、B方向)に沿って一直線状に形成されている。
【0025】
本体部42は、パッド部16側となる一端部側からシャフト部44側(矢印A方向)に向かって徐々に拡径した円錐状に形成され、ベローズ14における最も下方(矢印B方向)の環状山部36の内側に係合されることで該ベローズ14の下端部中央に一体的に保持される。
【0026】
また、本体部42の一端部中央は、ワークWから離間する方向(矢印A方向)に向かって凹状となる断面円弧状に形成され、中央に開口した第1連通孔46と、該第1連通孔46の外周側に開口した複数の第2連通孔48とを有し、前記第1及び第2連通孔46、48は、本体部42を軸方向(矢印A、B方向)に貫通するように形成されている。
【0027】
シャフト部44は、図1及び図2に示されるように、負圧流体の供給されていないワークWの非吸着時において、ベローズ14の内部に収納され、該ベローズ14の環状谷部38に対して径方向に所定間隔離間して設けられ、本体部42の中央から所定長さだけ軸方向に突出するように形成されている。
【0028】
また、シャフト部44の上端部には略球面状に形成された球面部50が形成され、図3及び図4に示されるように、負圧流体が供給されたワークWの吸着時において、ベローズ14が軸方向(矢印A方向)に収縮することで、前記上端部がアダプタ12の供給通路30内に挿入され、球面部50がテーパ部32に臨む位置となる。
【0029】
さらに、シャフト部44の中心には軸方向(矢印A、B方向)に沿って貫通した貫通孔52が形成され、第1連通孔46とベローズ14の内部とが前記貫通孔52によって連通している。
【0030】
また、シャフト部44の外周面には、径方向内側に向かって窪んだ複数の連通溝54が形成され、この連通溝54は軸方向に沿って延在し、ベローズ14の内部と本体部42の第2連通孔48とを連通させている。
【0031】
そして、アタッチメント18は、ベローズ14及びパッド部16の内部において、吸着装置10の軸線Lに対して所定角度θ(図4参照)だけ傾動自在に設けられている。
【0032】
本発明の第1の実施の形態に係る吸着装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。なお、ここでは、図3及び図4に示されるように、薄膜のフィルムを袋状として内部に流動性の内容物を収納したワークWを吸着して搬送する場合について説明する。
【0033】
先ず、吸着装置10を図示しない搬送装置のアーム等に装着して移動自在に設けると共に、図示しない負圧供給装置に対して配管及び継手22を介してアダプタ12を接続しておく。
【0034】
このような準備作業を経た後、図示しない搬送装置のアームの操作に基づいて吸着装置10を下方(矢印B方向)へと変位させ、床面等に載置されたワークWの上部に対してスカート40を密着させると共に、図示しない負圧供給装置から配管及び継手22を介してアダプタ12の供給通路30へと負圧流体を供給する。
【0035】
この際、ワークWが傾いていたり、該ワークWの上部が平坦でない場合でも、前記ワークWに応じてベローズ14が伸縮動作したり、パッド部16が弾性変形することで、前記ワークWの傾き等に追従して前記パッド部16を確実に密着させることが可能となる。
【0036】
そして、パッド部16のスカート40がワークWの表面に密着し、アダプタ12の供給通路30へと供給された負圧流体が、ベローズ14の内部を通じてアタッチメント18の貫通孔52、連通溝54から第1及び第2連通孔46、48を通じてパッド部16の内部空間へと供給される。
【0037】
これにより、図3に示されるように、スカート40の吸着面40aとワークWとの間に供給された負圧流体によって前記ワークWの上部がスカート40及びアタッチメント18の本体部42の下端部に沿うように上方に向かって凸状に変形して吸着されると同時に、ベローズ14が軸方向に沿って上方(矢印A方向)へと収縮し、アタッチメント18の上端部がアダプタ12の供給通路30内へと挿入される。
【0038】
そして、図3に示されるように、吸着装置10でワークWを吸着した状態で図示しない搬送装置のアームによって上方(矢印A方向)へと移動させることで、前記ワークWは、その内容物の重量によって重力方向下方(矢印B方向)へと撓むように変形し、それに伴って、前記スカート40が、吸着している前記ワークWの上部形状に追従するように弾性変形して下方に向かって撓曲した湾曲形状となる。
【0039】
このワークWの吸着された吸着装置10を、例えば、搬送装置によって略水平方向に移動させて所定位置へと搬送する。この際、図4に示されるように、搬送中における吸着装置10(ワークW)の搬送方向(矢印C方向)とは反対方向(矢印D方向)に生じる慣性によってワークWの内部で内容物が移動し、それに伴って、袋状のワークWが変形すると同時に重心位置が変化する。
【0040】
すなわち、ワークWに対して慣性力が働くことで、吸着装置10に吸着されていないワークWの重心位置が慣性の働く方向(矢印D方向)へと移動し、それに伴って、前記ワークWの下部が前記慣性の働く方向へと変形する。
【0041】
このワークWの変形(重心位置の変化)に伴って、慣性の働いている方向(矢印D方向)へとスカート40がさらに弾性変形すると共に、アタッチメント18の本体部42が前記ワークWを吸着した状態で、吸着装置10の軸線Lに対して前記ワークWの移動方向(慣性の働いている方向)に所定角度θだけ傾斜するように傾動する。また、アタッチメント18の傾動に伴って、慣性の働いている方向(矢印D方向)のベローズ14がさらに軸方向に圧縮され、慣性の働いている方向とは反対方向、すなわち、吸着装置10の移動方向(矢印方向)となるベローズ14が若干だけ軸方向に伸長するように変形する。
【0042】
これにより、パッド部16及びアタッチメント18と共にベローズ14も若干だけ吸着装置10の軸線Lに対して傾斜している。
【0043】
このように、ワークWの重心位置が移動して形状変化した場合でも、前記ワークWを吸着しているパッド部16及びアタッチメント18を好適に慣性力の働く方向(矢印D方向)へと追従させることができるため、前記パッド部16及びアタッチメント18がワークWの上部に密着して吸着した状態を確実に維持することが可能となり、搬送途中においてワークWに働く慣性力によってパッド部16における所定の吸着位置から該ワークWが滑って位置ずれしてしまったり脱落してしまうことが防止される。
【0044】
また、搬送中に働く慣性によってワークWが変形してアタッチメント18が傾動した際、シャフト部44の球面部50がアダプタ12のテーパ部32へと接触することでさらなる傾動動作が規制されるため、前記ワークWの慣性による移動量(変形量)で抑制して保持することができる。換言すれば、アタッチメント18を傾動させて該ワークWを揺動可能とすることで、ワークWに働く慣性力を吸収することが可能となる。
【0045】
そして、ワークWが所定位置へと到達した後に、供給通路30に対する負圧流体の供給を停止することで、吸着装置10のパッド部16によるワークWの吸着状態が解除される。
【0046】
以上のように、第1の実施の形態では、吸着装置10を構成するベローズ14の内部にアタッチメント18を傾動自在に収納し、前記アタッチメント18の一端部に設けられた本体部42をパッド部16の吸着面40aに臨むように設け、他端部に形成されたシャフト部44を、前記ワークWの吸着時にアダプタ12の供給通路30内に挿入可能としている。
【0047】
従って、流動性の内容物を収納した袋状のワークWを吸着装置10で吸着してアタッチメント18が傾動した場合に、前記ワークWに対して付与される慣性力によって内容物が移動して該ワークWの重心位置が変化して形状変化した場合でも、パッド部16のスカート40が弾性変形すると同時にアタッチメント18がベローズ14内で傾動することで、前記ワークWの重心位置の変化に追従させ形状の変化に対応させることができる。
【0048】
その結果、吸着装置10で吸着されたワークWの搬送途中において、前記ワークWに対して大きな慣性力が働いた場合でも、ワークWに対してパッド部16を密着させて吸着した状態を維持できるため、前記ワークWの脱落やパッド部16に対する位置ずれが確実に防止され、吸着状態を確実に維持して所定の位置へと搬送することができる。
【0049】
また、アタッチメント18のシャフト部44には、アダプタ12における供給通路30のテーパ部32へと当接可能な球面部50を有している。そのため、ワークWに慣性力が働くことで前記球面部50がテーパ部32へと当接することで、該アタッチメント18のさらなる傾動動作を規制することができる。その結果、慣性によるワークWの過大な形状変化及び慣性の働く方向への移動が好適に防止される。
【0050】
さらに、アタッチメント18のシャフト部44の外周面に複数の連通溝54を設けることで、貫通孔52のみを通じて負圧流体をパッド部16へと供給する場合と比較し、ベローズ14内に供給された負圧流体のパッド部16への供給量を増加させることができるため、前記パッド部16におけるワークWの吸着性能を高めることができる。
【0051】
さらにまた、アタッチメント18における本体部42の一端部(下端部)を、上方に向かって凹状となる断面円弧状の曲面とすることで、ワークWを吸着した際に第1及び第2連通孔46、48への吸い込みを防止することができ、吸着不良の発生を確実に回避することができる。
【0052】
またさらに、吸着装置10において、ベローズ14の内部にアタッチメント18のシャフト部44を設けることにより、慣性によってワークWが揺動して前記ベローズ14が前記吸着装置10の軸線Lに対して傾動した場合でも、その環状谷部38が前記アタッチメント18のシャフト部44へと接触することで、前記ベローズ14のさらなる変形が規制される。すなわち、アタッチメント18のシャフト部44を設けることで、該シャフト部44を設けていない場合と比較して、ワークWが揺動した際のベローズ14の変形量を抑制することが可能となる。なお、ベローズ14における環状谷部38とシャフト部44の径方向のクリアランスは、両者が接触することがない程度に適宜設定するとよい。
【0053】
また、上述したようにワークWの搬送中におけるベローズ14の変形を防止可能な構成とすることで、パッド部16の変形も抑制され、それに伴って、前記パッド部16に対するワークWの位置ずれを防止することが可能となる。
【0054】
次に、第2の実施の形態に係る吸着装置70を図5図7に示す。なお、上述した第1の実施の形態に係る吸着装置10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0055】
この第2の実施の形態に係る吸着装置70では、パッド部72においてワークWを吸着するスカート74の吸着面74aに複数の第1及び第2リブ76、78が設けられている点で、第1の実施の形態に係る吸着装置10と相違している。
【0056】
この吸着装置70では、図5図7に示されるように、パッド部72を構成するスカート74において、該ワークW側(矢印B方向)となる吸着面74aに、アタッチメント18の本体部42の外縁部に臨むように形成された複数の第1リブ76と、該第1リブ76に対して外周側に設けられる複数の第2リブ78とを備える。
【0057】
この第1及び第2リブ76、78は、スカート74の吸着面74aに対してワークW側へとそれぞれ所定高さだけ突出して形成される。なお、ここでは、15個の第1及び第2リブ76、78がスカート74にそれぞれ設けられる場合について説明する。
【0058】
第1リブ76は、図6に示されるように吸着装置70の軸方向から見て、スカート74の内周側に底部を有し外周側に開口した断面V字状に形成され、外周側の二股状となった外周側端部には、中央の凹部80側に向かって傾斜した傾斜部82が形成されている。すなわち、第1リブ76は、凹部80を挟んで一方の傾斜部82と他方の傾斜部82とが対称形状で対となるように形成されている。
【0059】
そして、複数の第1リブ76は、スカート74の周方向(矢印E方向)に沿って互いに等間隔離間するように配置され、隣接する2つの第1リブ76の間に負圧流体の供給される供給路84がそれぞれ形成される。この第1リブ76及び供給路84は、スカート74の径方向に沿って放射状となるように延在している。
【0060】
また、第1リブ76及び供給路84の内側に臨むようにアタッチメント18のガイド溝86が配置されている。
【0061】
第2リブ78は、図6に示されるように吸着装置70の軸方向から見て、スカート74の外周側に向かって突出して折曲された断面V字状に形成され、隣接して配置される2つの第1リブ76のうち、一方の第1リブ76の外周側端部と他方の第1リブ76の外周側端部とに跨るように配置されている。
【0062】
すなわち、第2リブ78は、隣接する第1リブ76の間に形成された供給路84に臨んだ中央部が最もスカート74の外周側へと突出した頂部88となり、この頂部88から両端に向かって徐々に第1リブ76の外周側端部へと接近するようにそれぞれ径方向内側へ傾斜して形成される。
【0063】
なお、第2リブ78の頂部88を中心とした傾斜角度は、第1リブ76における傾斜部82の角度と略同一角度となるように形成されている。
【0064】
次に、上述した吸着装置70でワークWを吸着する場合について説明する。ここでも、薄膜のフィルムを袋状として内部に流動性の内容物を収納したワークWを吸着して搬送する場合について説明する。
【0065】
先ず、この吸着装置70に対して図示しない負圧供給装置から配管及び継手22を介してアダプタ12の供給通路30へと負圧流体を供給すると共に、パッド部72のスカート74をワークWの表面に密着させることで、アダプタ12の供給通路30へと供給された負圧流体が、ベローズ14の内部を通じてアタッチメント18の第1及び第2連通孔46、48からパッド部72の内部空間へと供給される。そして、第2連通孔48へ供給された負圧流体の一部が、ガイド溝86を通じて外周側となるスカート74側へと流れ、各供給路84に沿って外周側へと流れる。
【0066】
その結果、スカート74の密着したワークWの上部が負圧流体によってパッド部72に対して吸着されると同時に、ベローズ14が軸方向に収縮する。この際、スカート74の外縁部が平坦状のワークWの上部へと密着しているため、各供給路84に沿って外周側へと供給される負圧流体が外部へと漏出してしまうことがなく、ワークWに対する吸着力が維持される。
【0067】
また、ワークWの搬送中において内容物の移動によって形状が変化した場合、スカート74の弾性変形に伴って、図7に示されるように、複数の各第1リブ76が互いに周方向(矢印E方向)に接近し、且つ、第2リブ78が前記第1リブ76の外周側端部側へと接近して該外周側端部と当接すると共に、前記第1リブ76と前記第2リブ78とが互いに径方向にも接近することで、供給路84の外周側が前記第2リブ78によって塞がれた状態となる。
【0068】
さらに、スカート74の弾性変形に伴って、第2リブ78の両端が互いに接近するように曲がることで、第1リブ76の傾斜部82へと当接して供給路84が塞がれる。
【0069】
そのため、スカート74において各供給路84を通じて外周側へと供給される負圧流体が、第2リブ78によって該供給路84からさらに外周側へと流れることがなく、前記第2リブ78、第1リブ76に囲まれた供給路84内に保持され、各供給路84内に保持された負圧流体によって変形したワークWの上部が確実且つ好適に吸着される。
【0070】
また、吸着したワークWによってアタッチメント18の下面が覆われた場合でも、第2連通孔48と連通して外周側へと延在したガイド溝86によって負圧流体が確実にスカート74の各供給路84へと供給されることで、ワークWに対する吸着力が維持される。
【0071】
以上のように、第2の実施の形態では、吸着装置70を構成するパッド部72の吸着面74aに、ワークW側に向かって突出した複数の第1及び第2リブ76、78を設けることで、搬送途中にワークWの形状が変化した場合でも、スカート74の弾性変形に伴って第2リブ78が第1リブ76の外周側端部を覆うことで各供給路84の外側を塞いで負圧流体の漏出を防止できる。そのため、ワークWに対してスカート74を密着させた状態で負圧流体を確実に保持できるため、前記ワークWに対する吸着力を維持して確実且つ安定的に吸着し続けることが可能となる。
【0072】
さらに、ワークWを搬送させる際に該ワークWに対して慣性力が働いた場合でも、アタッチメント18をベローズ14の内部で軸線に対して傾動させることで前記ワークWの重心位置の変化に追従させ形状の変化に対応させることができ、常にパッド部72をワークWに対して密着させ吸着した状態とすることで、前記ワークWの脱落や位置ずれを確実に防止して吸着状態を維持しながら所定の位置へと搬送することが可能となる。
【0073】
なお、本発明に係る吸着装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0074】
10、70…吸着装置 12…アダプタ
14…ベローズ 16、72…パッド部
18…アタッチメント 30…供給通路
32…テーパ部 40、74…スカート
42…本体部 44…シャフト部
50…球面部 54…連通溝
76…第1リブ 78…第2リブ
84…供給路 86…ガイド溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7