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7160263情報処理システム、情報処理装置およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】情報処理システム、情報処理装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/15 20060101AFI20221018BHJP
   G06F 13/00 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
H04N7/15 170
G06F13/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020187756
(22)【出願日】2020-11-11
(65)【公開番号】P2022007893
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】P 2020087176
(32)【優先日】2020-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020110871
(32)【優先日】2020-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020137271
(32)【優先日】2020-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】520175189
【氏名又は名称】oVice株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207619
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 知晴
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・セーヒョン
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 博和
【審査官】益戸 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-187063(JP,A)
【文献】特開2014-204412(JP,A)
【文献】特開2020-031303(JP,A)
【文献】特開2003-304350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/14-7/173
H04N 21/00-21/858
G06F 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ユーザが送信を希望する情報の入力に利用される第1装置と、
第2ユーザにより前記情報の受信に利用され得る第2装置と、
サーバと、
を含むように構成される情報処理システムであって、
前記第1装置は、
入力された前記情報を、入力情報として受け付ける入力情報受付手段を備え、
前記第2装置は、
前記入力情報を取得する第2入力情報取得手段と、
前記入力情報に基づいて、前記第2ユーザに出力する出力情報を生成する出力情報生成手段を備え、
前記サーバは、
仮想空間内における、前記第1ユーザおよび前記第2ユーザの夫々に対応するオブジェクトの位置を特定するオブジェクト位置特定手段と、
前記入力情報を取得する第1入力情報取得手段と、
前記オブジェクト位置特定手段により特定された前記オブジェクトの夫々の位置に基づいて、前記第1ユーザと前記第2ユーザの夫々との距離に関する距離情報を取得する距離情報取得手段と、
前記距離情報および前記入力情報に基づいて、前記第2ユーザの夫々に出力する出力情報を生成する条件を決定する条件決定手段と、
リレー方式による中継手段を含む前記情報の送受信において、前記距離情報取得手段により取得された前記距離情報に応じて、中継する情報処理端末の順番を決定する通信順序手段と
を備える情報処理システム。
【請求項2】
情報の送信を希望する第1ユーザおよび当該情報を受信し得る第2ユーザとの仮想空間を介したやり取りに利用され得る情報処理装置であって、
前記仮想空間における、前記第1ユーザおよび前記第2ユーザの夫々に対応するオブジェクトの位置を特定するオブジェクト位置特定手段と、
前記第1ユーザに関する入力情報を取得する入力情報取得手段と、
前記オブジェクト位置特定手段により特定された前記オブジェクトの夫々の位置に基づいて、前記第1ユーザと前記第2ユーザの夫々との距離に関する距離情報を取得する距離情報取得手段と、
前記距離情報および前記入力情報に基づいて、前記第2ユーザの夫々に出力する出力情報を生成する条件を決定する条件決定手段と、
リレー方式による中継手段を含む前記情報の送受信において、前記距離情報取得手段により取得された前記距離情報に応じて、中継する情報処理端末の順番を決定する通信順序手段と
を備える情報処理装置。
【請求項3】
前記仮想空間の所定の範囲内の画像を優先的に処理する第1優先処理手段と、
をさらに備える請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記距離情報取得手段により取得された距離に関する情報に基づいて、描画処理を実行する優先順位を決定する第2優先処理手段と、
をさらに備える請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記条件決定手段は、前記第1ユーザと前記第2ユーザの距離が一定以上であった場合、前記第2ユーザに対する前記出力情報の出力を禁止する条件を決定することを含む、
請求項2乃至4のうちいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記条件決定手段は、前記仮想空間における他のオブジェクトの存在の有無又は前記仮想空間における他のオブジェクトの位置に基づいて、前記出力情報を生成する前記条件を決定する、
請求項2乃至5のうちいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記条件決定手段は、さらに前記オブジェクトの向きを含み、前記条件を決定する、
請求項2乃至6のうちいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記オブジェクト位置特定手段は、撮像された画像から取得可能な情報に基づいて、前記オブジェクトの夫々の位置を特定する、
請求項2乃至7のうちいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
情報の送信を希望する第1ユーザおよび当該情報を受信し得る第2ユーザとの仮想空間を介したやり取りに利用され得る情報処理装置が実行する情報処理方法であって、
前記仮想空間における、前記第1ユーザおよび前記第2ユーザの夫々に対応するオブジェクトの位置を特定するオブジェクト位置特定ステップと、
前記第1ユーザに関する入力情報を取得する入力情報取得ステップと、
前記オブジェクト位置特定ステップにより特定された前記オブジェクトの夫々の位置に基づいて、前記第1ユーザと前記第2ユーザの夫々との距離に関する距離情報を取得する距離情報取得ステップと、
前記距離情報および前記入力情報に基づいて、前記第2ユーザの夫々に出力する出力情報を生成する条件を決定する条件決定ステップと、
リレー方式による中継手段を含む前記情報の送受信において、前記距離情報取得ステップにより取得された前記距離情報に応じて、中継する情報処理端末の順番を決定する通信順序ステップと、
を含む情報処理方法。
【請求項10】
情報の送信を希望する第1ユーザおよび当該情報を受信し得る第2ユーザとの仮想空間を介したやり取りに利用され得るコンピュータを、
前記仮想空間における、前記第1ユーザおよび前記第2ユーザの夫々に対応するオブジェクトの位置を特定するオブジェクト位置特定ステップと、
前記第1ユーザが送信を希望して入力された入力情報を取得する入力情報取得ステップと、
前記オブジェクト位置特定ステップにより特定された前記オブジェクトの夫々の位置に基づいて、前記第1ユーザと前記第2ユーザの夫々との距離に関する距離情報を取得する距離情報取得ステップと、
前記距離情報および前記入力情報に基づいて、前記第2ユーザの夫々に出力する出力情報を生成する条件を決定する条件決定ステップと、
リレー方式による中継手段を含む前記情報の送受信において、前記距離情報取得ステップにより取得された前記距離情報に応じて、中継する情報処理端末の順番を決定する通信順序ステップと
して機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、情報処理装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の社会的な事情により、いわゆるリモートワークが普及しつつある。このような中、いわゆるWEB会議など、ネットワークを介して音声や動画像を参加者が共有できる環境を提供可能とする技術は従来から存在する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-176386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1を含む従来技術では、いわゆるWEB会議の参加者の存在は、参加者の夫々が利用するデバイスに内蔵され、または接続されたマイクやカメラに入力された情報でしか判断せざるを得なかった。換言すると、音声もしくは映像の入出力の一次元のみから、その参加者の存在を他の参加者が確認することが可能となる。
このような技術的背景の下、いわゆるリモートワークの利用者同士が、現実世界のオフィスに勤務するレベルでのコミュニケーションを確保することは困難な状況にある。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、より利便性が高く簡便なコミュニケーションに関する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様の情報処理システムは、
第1ユーザが送信を希望する情報の入力に利用される第1装置と、
第2ユーザにより前記情報の受信に利用され得る第2装置と、
サーバと、
を含むように構成される情報処理システムであって、
前記第1装置は、
入力された前記情報を、入力情報として受け付ける入力情報受付手段を備え、
前記第2装置は、
前記入力情報を取得する第2入力情報取得手段と、
前記入力情報に基づいて、前記第2ユーザに出力する出力情報を生成する出力情報生成手段を備え、
前記サーバは、
仮想空間内における、前記第1ユーザおよび前記第2ユーザの夫々に対応するオブジェクトの位置を特定するオブジェクト位置特定手段と、
前記入力情報を取得する第1入力情報取得手段と、
前記オブジェクト位置特定手段により特定された前記オブジェクトの夫々の位置に基づいて、前記第1ユーザと前記第2ユーザの夫々との距離に関する距離情報を取得する距離情報取得手段と、
前記距離情報および前記入力情報に基づいて、前記第2ユーザの夫々に出力する出力情報を生成する条件を決定する条件決定手段と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、より利便性が高く簡便なコミュニケーションに関する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態にかかる情報処理システムの構成の一例を示すブロック図である。
図2図1の情報処理システムのうちサーバのハードウェア構成の一例を示す図である。
図3図1の情報処理システムの適用対象となるサービスの概要を示す図である。
図4図2のサーバ、図1の第1ユーザ端末および第2ユーザ端末の機能的構成のうち、音声送信処理を実行するための機能的構成の一例を示す機能ブロック図である。
図5図4の第1ユーザ端末および第2ユーザ端末に表示される画像の一例を示す図である。
図6図4の第1ユーザ端末および第2ユーザ端末に表示される画像の一例であり、図5の例とは異なる例を示す図である。
図7図4の機能的構成を有するサーバの処理のうち、音声送信処理の流れの一例を説明するフローチャートである。
図8図4の第1ユーザ端末および第2ユーザ端末に表示される画像の一例であり、図5および6の例とは異なる例を示す図である。
図9図4の第1ユーザ端末および第2ユーザ端末に表示される画像の一例であり、図5、6および8の例とは異なる例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
【0010】
まず、図1を参照して、本発明の一実施形態にかかる情報処理システムの構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態にかかる情報処理システムの構成の一例を示すブロック図である。
【0011】
図1に示す情報処理システム(以下、「本システム」と呼ぶ)は、サーバ1と、第1ユーザ端末2と、第2ユーザ端末3-1乃至3-n(nは1以上の任意の整数値)とを含む。
サーバ1と、第1ユーザ端末2と、第2ユーザ端末3-1乃至3-nとは、インターネット等のネットワークNを介して相互に接続されている。なお、ネットワークNは、その形態は特に限定されず、例えば、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi、LAN(Local Area Network)、インターネット等を採用することができる。
【0012】
サーバ1は、サービス提供者Gにより管理される情報処理装置である。サーバ1は、第1ユーザ端末2、および第2ユーザ端末3-1乃至3-nと適宜通信をしながら、後述する本サービスを実現するための各種処理を実行する。
【0013】
第1ユーザ端末2は、所定の情報の送信を希望する第1ユーザUaにより操作される情報処理装置である。第1ユーザ端末2は、例えばパーソナルコンピュータ、スマートフォンやタブレット等で構成される。
【0014】
第2ユーザ端末3-1乃至3-nの夫々は、第1ユーザ端末2から送信された所定の情報を受信し得る第2ユーザUb1乃至Ubnの夫々により操作される情報処理装置である。第2ユーザ端末3-1乃至3-nは、例えばパーソナルコンピュータ、スマートフォンやタブレット等で構成される。
以下、第2ユーザ端末3-1乃至3-nの夫々を個々に区別する必要がない場合、これらをまとめて「第2ユーザ端末3」と呼ぶ。また、第2ユーザUb1乃至Ubnの夫々を個々に区別する必要がない場合、これらをまとめて「第2ユーザUb」と呼ぶ。
【0015】
図2は、図1の情報処理システムのうちサーバのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0016】
サーバ1は、制御部11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、バス14と、入出力インターフェース15と、出力部16と、入力部17と、記憶部18と、通信部19と、ドライブ20とを備えている。
【0017】
制御部11は、CPUやGPUおよび半導体メモリを含むマイクロコンピュータ等で構成され、ROM12に記録されているプログラム、または記憶部18からRAM13にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。
RAM13には、制御部11が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
【0018】
制御部11、ROM12およびRAM13は、バス14を介して相互に接続されている。このバス14にはまた、入出力インターフェース15も接続されている。入出力インターフェース15には、出力部16、入力部17、記憶部18、通信部19およびドライブ20が接続されている。
【0019】
出力部16は、ディスプレイやスピーカ等で構成され、各種情報を画像や音声として出力する。
入力部17は、キーボードやマウス等で構成され、各種情報を入力する。
記憶部18は、ハードディスクやDRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成され、各種データを記憶する。
通信部19は、インターネットを含むネットワークNを介して他の装置(例えば図1の第1ユーザ端末2や第2ユーザ端末3)との間で通信を行う。
【0020】
ドライブ20は、必要に応じて設けられる。ドライブ20には、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリ等よりなる、リムーバブルメディア31が適宜装着される。ドライブ20によってリムーバブルメディア31から読み出されたプログラムは、必要に応じて記憶部18にインストールされる。また、リムーバブルメディア31は、記憶部18に記憶されている各種データも、記憶部18と同様に記憶することができる。
【0021】
なお、図示はしないが、図1の第1ユーザ端末2および第2ユーザ端末3も、図2に示すサーバ1のハードウェア構成と基本的に同様とすることができので、ここでは説明を省略する。
【0022】
このような図2のサーバ1を含む、本システムを構成する各種ハードウェアと各種ソフトウェアとの協働により、本システムにおける各種の処理の実行が可能になる。
【0023】
次に、図3を参照しながら、本システムの適用対象となるサービス(以下、「本サービス」と呼ぶ)の概要を簡単に説明する。
図3は、本システムにより実現可能となる本サービスの概要を示す図である。
【0024】
本サービスは、サービス提供者Gから第1ユーザUaおよび第2ユーザUbに対して提供されるコミュニケーションの支援サービスである。具体的に例えば、本サービスは、仮想空間を利用して、現実世界と近いコミュニケーションを実現するコミュニケーションの支援サービスである。
すなわち、本サービスは、音声の送信を希望する第1ユーザUaと、その音声を受信する第2ユーザUbに合わせて利用され、仮想空間を利用しながら現実世界さながらのコミュニケーションを実現する。なお、以下、第1ユーザUaと第2ユーザUbとを特に区別して説明する必要がない場合、これらをまとめて「ユーザU」と呼ぶ場合がある。
【0025】
なお、第1ユーザUaおよび第2ユーザUbは、第1ユーザ端末2および第2ユーザ端末3の夫々にインストールされた専用のアプリケーションソフトウェア(以下、「専用アプリ」と呼ぶ)を操作する、または第1ユーザ端末2および第2ユーザ端末3の夫々のブラウザ機能により表示される専用のウェブサイト(以下、「専用サイト」と呼ぶ)にアクセスすることにより本サービスの提供を受けることができる。
すなわち、以下、「第1ユーザUaが第1ユーザ端末2を操作する」とは、第1ユーザUaが専用アプリまたは専用サイトから本サービスを利用することを意味する。また、同様に、「第2ユーザUbが第2ユーザ端末3を操作する」とは、第2ユーザUbが専用アプリまたは専用サイトから本サービスを利用することを意味する。
【0026】
図3は、第1ユーザ端末2および第2ユーザ端末3の夫々の図示せぬ表示部に表示される画像の一例である。
図3の例では、実世界の一般的なオフィス空間を模した仮想空間(以下、「オフィス空間S」と呼ぶ)が表示されている。そのため、図3に示すオフィス空間Sには、現実世界のオフィス空間と同様に、事務用机、事務用椅子、応接セット(ソファ、テーブル、コーヒー入りのカップ)、観葉植物、給湯コーナー等がアイコンによって表示されている。また、施錠可能な会議室(3部屋)と、施錠できない会議室(1部屋)が表示されている。
また、オフィス空間Sには、第1ユーザUaを示すアイコンAと、第2ユーザUb1乃至Ub3の夫々を示すアイコンB乃至Dの夫々が表示されている。このうち、アイコンAおよびBは、応接セットの付近に表示されている。また、アイコンCおよびDは、夫々の事務用椅子の上に表示されている。
【0027】
ここで、第1ユーザUaの夫々は、第1ユーザ端末2の夫々を操作することで、自身が送信を希望する各種情報を入力することができる。具体的に例えば、各種情報は、音声、テキスト、動画像などである。なお、本実施形態では、第1ユーザUaの音声が入力されたものとして説明を行う。
さらに、本サービスでは、第1ユーザUaにより入力された情報は、第1ユーザUaのアイコンと第2ユーザUbのアイコンとの、仮想空間における距離に応じた補正が加えられ、第2ユーザ端末3により出力される。
すなわち、例えば、第1ユーザUaとオフィス空間S内の距離が近い第2ユーザUbには、入力された大きさ(デシベル)とそれほど変わりない大きさで音声が出力される。これに対して、第1ユーザUaとオフィス空間S内の距離が遠い第2ユーザUbには、小さい大きさの音声のみが出力される。なお、第1ユーザUaと第2ユーザUbの距離が一定以上離れている場合には、例えば、第2ユーザ端末3から音声は出力されない。
なお、入力された情報がテキストや動画像の場合、例えば、オフィス空間S内の距離に応じた「透明度」による補正が加えられてもよい。
【0028】
図3の例を見ると、アイコンAとアイコンBは、互いに近い位置にアイコンが配置されているのに対して、アイコンAとアイコンCは比較的離れた位置にアイコンが配置されている。アイコンAとアイコンDは、さらに離れた位置にアイコンが配置されている。
上述の通り、本サービスでは、音声の発信者との距離に応じて、出力される発信者の音声の大きさが変化する。すなわち、「C」のアイコンに対応する第2ユーザ端末3では、「B」のアイコンに対応する第2ユーザ端末3で出力される音声よりも小さい音声が出力されることになる。
また、図3における点線は、第1ユーザUaの発信する音声に対する可聴域を示している。すなわち、アイコンDは、第1ユーザUaの音声の可聴域外に存在する。そのため、アイコンDに対応する第2ユーザ端末3では、第1ユーザUaの音声は出力されない。
なお、図3の例において、アイコンAの表示は、アイコンB乃至Dとは異なり、発光や模様等によって強調表示されている。これは、アイコンAに対応する第1ユーザUaが音声を発している(話をしている)ことを示している。これにより、第2ユーザUbの夫々は、画面上に表示されたアイコンを見るだけで誰が音声を発している(話をしている)かを、把握することができる。
【0029】
また、第1ユーザUaおよび第2ユーザUbの夫々は、自身に対応するアイコンをオフィス空間S内で自由に移動させることができる。なお、アイコンを移動させる手法は特に限定されず、例えばアイコンをドラッグする操作によって移動させてもよい。
【0030】
そのため、例えば、第2ユーザUbは、会話を希望する第1ユーザUaの近くにアイコンを配置して、会話を行うことができる。他方、例えば、第2ユーザUbが仕事に集中したい場合であれば、敢えて第1ユーザUaと遠い距離(可聴域外)にアイコンを配置することで、第1ユーザUaの音声が出力されないように設定してもよい。
具体的に図3の例で言えば、アイコンAに対応する第1ユーザUaと、アイコンBに対応する第2ユーザUb1とは、あたかも現実世界に存在するソファに座り、コーヒーを飲みながら打合せをしているような感覚で互いにコミュニケーションをとることができる。
同様に、アイコンCに対応する第2ユーザUb2と、アイコンDに対応する第2ユーザUb3とは、事務用椅子に座り、あたかも現実世界のオフィスで事務用机に向かうような感覚で仕事に集中することができる。さらに、必要に応じて互いに雑談し合うこともできる。
すなわち、第1ユーザUaおよび第2ユーザUbの夫々は、仮想空間内で自身に対応するアイコンを任意の場所に配置することにより、仮想空間内に配置されたアイコンの位置(位置関係)に応じて、あたかも現実世界でのコミュニケーションと同様に、多種多様なコミュニケーションの態様を実現することができる。
【0031】
図4は、図2のサーバ1、図1の第1ユーザ端末2および第2ユーザ端末3の機能的構成のうち、音声送信処理を実行するための機能的構成の一例を示す機能ブロック図である。
まずは、サーバ1の機能的構成の一例について説明する。
図4に示す通り、サーバ1の制御部11は、各種プログラム等を実行することにより、仮想空間管理部60と、アイコン位置取得部61と、送信側音声取得部62と、距離計算部63と、補正率決定部64と、受信側音声等送信制御部65として機能する。
また、サーバ1の記憶部18の一領域には、マップDB400が設けられている。マップDB400には、各種仮想空間の候補となるオフィス空間Sの画像などが格納されている。
【0032】
サーバ1の仮想空間管理部60は、マップDB400に格納された画像などに基づいて、第1ユーザUaおよび第2ユーザUbの夫々に提示し得る仮想空間を生成し、その情報を管理する。
すなわち、仮想空間管理部60は、マップDB400に格納された画像などに基づいて、第1ユーザUaおよび第2ユーザUbの夫々に提示し得る仮想空間を生成し、生成した仮想空間に関する情報(以下、「仮想空間情報」と呼ぶ)を第1ユーザ端末2および第2ユーザ端末3の夫々に送信する。
【0033】
ここで、第1ユーザ端末2および第2ユーザ端末3の夫々に送信された仮想空間情報は、第1ユーザ端末2および第2ユーザ端末3の夫々で取得され、図示せぬ表示部などを介して、第1ユーザUaおよび第2ユーザUbの夫々に提示される。
そして、仮想空間情報を提示された第1ユーザUaおよび第2ユーザUbの夫々は、仮想空間内の状況や自身の目的などに応じて、自身に対応するアイコンを仮想空間内の任意の位置に配置することができる。また、このようにして配置された各アイコンの仮想空間内における位置情報(「アイコン位置情報」と呼ぶ)は、第1ユーザ端末2および第2ユーザ端末3の夫々で取得され、第1ユーザ端末2および第2ユーザ端末3の夫々からサーバ1へと送信されてくる。
そこで、アイコン位置取得部61は、第1ユーザ端末2および第2ユーザ端末3の夫々から送信されてきた第1ユーザUaおよび第2ユーザUbの夫々のアイコン位置情報を、通信部19を介して取得する。
すなわち、アイコン位置取得部61は、仮想空間内における、前記第1ユーザUaおよび前記第2ユーザUbの夫々に対応するオブジェクトの位置を特定する。
【0034】
またここで、第1ユーザ端末2は、第1ユーザUaが第2ユーザUbの夫々に送信を希望する音声に関する情報(以下、「送信側音声情報」と呼ぶ)が取得され、送信側音声情報は、第1ユーザ端末2からサーバ1へと送信されてくる。
そこで、送信側音声取得部62は、第1ユーザ端末2から送信されてきた送信側音声情報を、通信部19を介して取得する。
すなわち、送信側音声取得部62は、第1ユーザUaに関する入力情報を取得する。
【0035】
距離計算部63は、アイコン位置取得部61で取得された第1ユーザおよび第2ユーザの夫々に対応するアイコンの仮想空間内における位置に基づいて、各アイコン間の距離を計算する。
すなわち、距離計算部63は、オブジェクト位置特定手段により特定されたオブジェクトの夫々の仮想空間内における位置に基づいて、第1ユーザUaと第2ユーザUbとの仮想空間内における距離に関する距離情報を取得する。
【0036】
補正率決定部64は、距離計算部63で計算された各アイコン間の距離に基づいて、送信側音声情報に対する出力情報の補正の条件(以下、「補正率」と呼ぶ)を決定する。
すなわち、補正率決定部64は、前記距離情報および前記入力情報に基づいて、前記第2ユーザの夫々に出力する出力情報を生成する条件を決定する。
ここで、補正とは、送信側音声情報を減衰させる補正である。上述の通り、本システムでは、第1ユーザUaにより入力された送信側音声情報は、第1ユーザUaと第2ユーザUbとの仮想空間内における距離に応じた補正が加えられ、第2ユーザ端末3の夫々から出力される。つまり、補正率とは、典型的には入力された音声情報に対する減衰率である。
なお、補正率の決定の方法は、仮想空間内における各アイコン間の距離を考慮して決定されていればよく、特に限定されない。サーバ1は、各アイコン間の位置や可聴域の概念に加えて、任意の方法や基準を採用することができる。具体的に採用可能な方法や基準については、例えば、図5および6などを参照しつつ後述する。
【0037】
受信側音声等送信制御部65は、送信側音声取得部62で取得された送信側音声情報および補正率決定部64で決定された補正率を、第2ユーザ端末3の夫々に送信する。
【0038】
次に、第1ユーザ端末2の機能的構成の一例について説明する。
図4に示す通り、第1ユーザ端末2の制御部200は、各種プログラム等を実行することにより、仮想空間管理部240と、アイコン位置管理部241と、送信側音声管理部242として機能する。
仮想空間管理部240は、サーバ1から送信されてきた仮想空間情報を、通信部210を介して取得する。仮想空間管理部240は、取得した仮想空間情報を第1ユーザUaに提示する。
【0039】
アイコン位置管理部241は、仮想空間情報を提示された第1ユーザUaの操作に基づく、第1ユーザUaに対応するアイコン(例えば、アイコンA)のアイコン位置情報を取得する。また、アイコン位置管理部241は、取得したアイコンAのアイコン位置情報を、サーバ1へ送信する。
【0040】
送信側音声管理部242は、第1ユーザUaが送信を希望する音声に関する送信側音声情報を取得する。送信側音声管理部242は、取得した送信側音声情報を、サーバ1へ送信する。
【0041】
続いて、第2ユーザ端末3の機能的構成の一例について説明する。
図4に示す通り、第2ユーザ端末3の制御部300は、各種プログラム等を実行することにより、仮想空間管理部340と、アイコン位置管理部341と、受信側音声等取得部342、出力情報生成部343として機能する。
仮想空間管理部340は、サーバ1から送信されてきた仮想空間情報を、通信部310を介して取得する。仮想空間管理部340は、取得した仮想空間情報を第2ユーザUbの夫々に提示する。
【0042】
アイコン位置管理部341は、仮想空間情報を提示された第2ユーザUbの夫々の操作に基づく、第2ユーザUbの夫々に対応するアイコン(例えば、アイコンB乃至D)のアイコン位置情報を取得する。また、アイコン位置管理部341は、取得したアイコン(例えば、アイコンB乃至D)の夫々のアイコン位置情報を、サーバ1へ送信する。
【0043】
受信側音声等取得部342は、サーバ1から送信されてきた送信側音声情報および補正率を、通信部310を介して取得する。
【0044】
出力情報生成部343は、受信側音声等取得部342で取得された送信側音声情報および補正率に基づいて、第2ユーザUbの夫々に出力する出力情報を生成する。
【0045】
続いて、図5を参照しつつ、本サービスの一機能として提供可能な障害物の概念について説明する。
図5は、図4の第1ユーザ端末および第2ユーザ端末に表示される画像の一例を示す図である。
【0046】
図5の例では、第1ユーザUaに対応するアイコンAと、第2ユーザUb2およびUb3の夫々に対応するアイコンCおよびDの夫々との間に障害オブジェクトJが配置されている。
障害オブジェクトJは、現実世界における壁などの障害物を模したオブジェクトである。本サービスでは、例えば、このような障害物の存在を考慮して補正率の決定を行うことができる。
具体的に例えば、「補正率」=「障害物距離」/「可聴域」×「透過率」×(「目標距離」-「障害物距離」)/(「可聴域」-「障害物距離」)の式を用いて「補正率」の値を算出してもよい。
図5の例では、セメント壁(透過率0%)が配置された例が示されている。また、壁の材質を設定できるようにしてもよい。例えば、いわゆるパーテーションのようなすりガラス製の壁(例えば透過率70%)を配置してもよい。これにより、仮想空間のオフィス空間Sを、あたかも現実世界のオフィス空間のように利用することができる。
【0047】
続いて、図6を参照しつつ、本サービスの一機能として提供可能な会議室の概念について説明する。
図6は、図4の第1ユーザ端末および第2ユーザ端末に表示される画像の一例であり、図5の例とは異なる例を示す図である。
【0048】
図6の例では、施錠可能な会議室(3部屋)と、施錠できない会議室(1部屋)が配置されている。これらの会議室は、アイコンA乃至Dの夫々が移動して入室することで、現実世界の会議室のように使用することができる。会議室内では、ビデオ会議やプロジェクターの映写等を行うことができる。このうち、施錠可能な会議室(3部屋)は、施錠することで、限られた者だけが入室して会議に参加できるようにできる。また、施錠できない会議室(1部屋)は、誰でも入室可能なフリースペースとして利用することができる。
【0049】
図7は、図4の機能的構成を有するサーバの処理のうち、音声送信処理の流れの一例を説明するフローチャートである。
ステップS1において、サーバ1の仮想空間管理部60は、マップDB400に格納された画像などに基づいて、第1ユーザUaおよび第2ユーザUbの夫々に提示し得る仮想空間を生成し、その情報を管理する。
すなわち、仮想空間管理部60は、マップDB400に格納された画像などに基づいて、第1ユーザUaおよび第2ユーザUbの夫々に提示し得る仮想空間を生成し、生成した仮想空間情報を第1ユーザUaおよび第2ユーザUbの夫々に提示する。
【0050】
ステップS2において、アイコン位置取得部61は、第1ユーザ端末2および第2ユーザ端末3の夫々から送信されてきた第1ユーザUaおよび第2ユーザUbの夫々のアイコン位置情報を、通信部19を介して取得する。
すなわち、アイコン位置取得部61は、仮想空間内における、前記第1ユーザUaおよび前記第2ユーザUbの夫々に対応するオブジェクトの位置を特定する。
【0051】
ステップS3において、送信側音声取得部62は、第1ユーザ端末2から送信されてきた送信側音声情報を、通信部19を介して取得する。
【0052】
ステップS4において、距離計算部63は、ステップS2で取得された第1ユーザUaおよび第2ユーザUbの夫々に対応するアイコンの仮想空間内における位置に基づいて、各アイコン間の距離を計算する。
【0053】
ステップS5において、補正率決定部64は、ステップS4で計算された各アイコン間の距離に基づいて補正率を決定する。
【0054】
ステップS6において、受信側音声等送信制御部65は、ステップS3で取得された送信側音声情報およびステップS5で決定された補正率を、第2ユーザ端末3の夫々に送信する。
【0055】
以上本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0056】
ここで、図8を参照しつつ、本サービスの一機能として、さらに提供可能な視野(向き)の概念について説明する。
図8は、図4の第1ユーザ端末および第2ユーザ端末に表示される画像の一例であり、図5および6の例とは異なる例を示す図である。
図8の(A)を見ると、第2ユーザUbの夫々に対応するアイコンEおよびFが表示され、両アイコンの夫々の付近には、アイコンPEおよびPFが表示されている。
ここで、アイコンPEおよびPFは、アイコンEおよびFの夫々のオブジェクトの「視野(向き)」を示している。図8の(A)の例では、アイコンEがアイコンFの方向を向いており、アイコンFがアイコンEの方向に向いている。すなわち、図8の(A)の状況は、例えば、現実世界で言うところの、互いのユーザが注目し、向かい合って話をしている状況と考えることができる。
このような場合、例えば、アイコンEおよびFに対応する第1ユーザ端末2および第2ユーザ端末3の夫々では、視野(向き)の表示がない場合と比較して、大きい音声が出力される。なお、入力側についても同様である。すなわち、入力も視野に応じて見ている方向がよく聞こえてもよい。
他方、図8の(B)の例では、アイコンPEおよびPFは、互いに逆向きの方向を示している。アイコンPEは、アイコンEからアイコンFの方向と逆の方向を向いており、また、アイコンPFはアイコンFからアイコンEの方向とは逆の方向を向いている。
このような場合、例えば、アイコンEおよびFに対応する第1ユーザ端末2および第2ユーザ端末3の夫々では、視野(向き)の表示がない場合と比較して、小さい音声が出力される。
【0057】
以上をまとめると、本サービスに適用可能な「視野(向き)」の概念とは、オブジェクトの方向についての概念である。例えば、第1ユーザUaのアイコンの向きに存在する第2ユーザ端末3では、より大きい音声が出力される。他方、オブジェクトの向いている方向と異なる方向に表示されているオブジェクトに対応する第2ユーザ端末3では、より小さい音声が出力される。これにより、第1ユーザUaおよび第2ユーザUbは、現実世界のルールを反映したコミュニケーションを実現することができる。
【0058】
また、図9を参照しつつ、本サービスの一機能として、さらに提供可能な静的オブジェクトの概念について説明する。
図9は、図4の第1ユーザ端末および第2ユーザ端末に表示される画像の一例であり、図5、6および8の例とは異なる例を示す図である。
上述の実施形態では説明を省略したが、サーバ1は、第1ユーザUaおよび第2ユーザUbが共通して利用可能なオブジェクト(以下、「共有オブジェクト」と呼ぶ)を採用し、仮想空間内の任意の場所に配置させてもよい。
具体的に例えば、図9の例では、アイコンEおよびF、そしてアイコンMが表示されている。アイコンMは、動画像の再生に関する共有オブジェクトであり、例えば、第1ユーザUaおよび第2ユーザUbの夫々が、アイコンMをクリックすると、第1ユーザ端末2および第2ユーザ端末3の夫々で所定の動画像が再生される。なお、アイコンMは、本サービスの提供時点から仮想空間内の同じ場所に固定されて表示されている。
本サービスでは、このように任意の第1ユーザUaおよび第2ユーザUbに共通して利用される共有オブジェクトという概念を採用することで、所定のコンテンツを複数のユーザU間で自由に共有させることが可能となる。これにより、参加した第1ユーザUaおよび第2ユーザUbの夫々は、さらに現実世界に近いコミュニケーションを実現することができる。
なお、共有オブジェクトは、動画像の再生に関するものだけに限らない。例えば、各種ゲーム(将棋、オセロ、人狼ゲームなど)への参加、動画像の共有(カメラ画像やPC画像など)、広告の再生など、本サービスは、あらゆる内容の共有オブジェクトを採用することができる。
【0059】
また、共有オブジェクトは、仮想空間内の同じ場所に固定される静的オブジェクトと、任意の場所に移動可能な動的オブジェクトとを含むことができる。なお、例えば、静的オブジェクトは仮想空間内に配置された備え付けのテレビやプロジェクター、動的オブジェクトは各ユーザのノートパソコンなどをイメージすると分かりやすい。
【0060】
ここで、上述の実施形態における本サービスのさらなる利点について、簡単に補足する。
本サービスの利点の一つは、上述の通り、リモートワークを行うユーザUが、あたかも現実世界のオフィスに勤務しているような環境でコミュニケーションをとり合うことができる点にある。
しかし、本サービスのさらなる利点はこれに留まらない。即ち、本サービスの利点の一つは、多数のユーザUがWEB会議を行うに際して、その多数のユーザ同士の位置関係や会話の内容が聴こえているユーザUの範囲を明確にして、直感的に認識できる点にある。従来のWEB会議などのサービスにおいても、音声の発信者が音声の受信者に対して音声を聴かせない機能(いわゆるミュート機能)などは実装されているものの、いずれもユーザU毎に個別の設定ができるに過ぎず不便なものであった。これに対して、本サービスは、WEB会議などにおいて、多数のユーザUのうちのどのユーザUに会話を聴かせて、どのユーザUに会話を聴かせない(若しくは聴き取り難い設定とする)といった細かなニーズの管理を明瞭かつ一括して行うことを可能にするものである。
【0061】
さらに言えば、近年のリモートワークなどの普及により、数時間に渡りWEB会議を継続するような状況も想定される。このような環境では、単に音声が聴こえるか、聴こえないか、という点だけが重要とは言えない。即ち、別に他者の会話が聴こえていても構わない(むしろ完全にシャットダウンはしたくない)が、作業の邪魔にならない程度の音量に抑えて自身の仕事にも集中できる環境を維持したいというようなニーズも存在する。本サービスは、このようなニーズを含むWEB会議などに関する幅広いニーズを広く解決するツールとして有用である。
また、本サービスの追求する方向性の一つは、オンライン上での空間(次元)の構築にある。即ち、例えば、従来のWEB会議などは一次元(データの入出力のオン/オフ)のみであるのに対して、本サービスはさらに移動という二次元の概念を含むものである。さらに言えば、プラグインなどを通じて近隣の人同士がインタラクションできるという三次元以上の概念をも含むことができる。つまり、言い換えれば本サービスにかかる情報処理システムは、空間の概念を取り入れて二次元のコミュニケーションを可能とする情報処理システムである。
【0062】
さらに、本サービスにおいて採用可能なストリーミングソケットの概念について説明する。
例えば、上述の実施形態(特に図3)のアイコンCのように発信者の可聴域内にアイコンが存在しない場合、発信者の音声を聴き取ることができなくなる。
即ち、距離計算ソケットによるアイコン間の距離の計算の結果、第2ユーザUbを示すアイコンが、第1ユーザUaを示すアイコンを発信源とする音声の届く領域(以下、「可聴域」と呼ぶ)から外れた場合、可聴域を外れたアイコンに対応する第2ユーザUbのストリーミングソケットが切断される。その結果、第1ユーザUaを示すアイコンの可聴域を外れたアイコンに対応する第2ユーザUbは、第1ユーザUaを示すアイコンを発信源とする音声を聴き取ることができなくなる。
これに対して、距離計算ソケットによるアイコン間の距離の計算の結果、第2ユーザUbを示すアイコンが、第1ユーザUaを示すアイコンの可聴域から外れない場合には、第2ユーザUbのストリーミングソケットが構築される。なお、第2ユーザUbを示すアイコンが移動した結果、第1ユーザUaを示すアイコンの可聴域の外から内に入った場合にもストリーミングソケットが構築される。
ストリーミングソケットが構築される場合、第1ユーザUaを示すアイコンと、第2ユーザUbを示すアイコンとの距離に応じて、第1ユーザUaを示すアイコンを発信源とする音声を減衰させる補正が加えられる。
【0063】
さらに、本サービスにおいて採用可能な通信方法の概念を説明する。
近年、特にP2P(Peer to Peer)技術などを利用した動画像の配信において、動画像の配信を低価格かつ効率的に行うことを目的として、受信した映像や音声をリレー方式に中継する手法が採用されている。この点は、例えば、次の非特許文献1を参照することができる。
[非特許文献1]P2P技術を活用したインターネット上での動画配信プラットフォームの開発―個人・コミュニティの映像配信のニーズに応える―[2020年10月30日検索],インターネット<https://www.ipa.go.jp/about/jigyoseika/04fy-pro/chusho/2004-306d.pdf>
しかし、このようなリレー方式の手法を採用する場合、それぞれのユーザのリレーにおける順番によって異なる遅延時間が生じることになる。そのため、例えば、上述のサービスを含みユーザ同士がリアルタイムでやり取りを行う場合、お互いに違う画像等を見ながらコミュニケーションを行うことになってしまう。
これに対して、本サービスは、このようなリレー方式と「距離」の概念を関連付けてもよい。すなわち、具体的に例えば、本サービスにおいて、オブジェクトを中心としたそれぞれのユーザとの距離に基づいて、リレーの順番を決定してもよい。ここで、本サービスの性質上、互いに近い距離にいるユーザほどリアルタイムで会話などを行っている可能性が高いため、仮にリレー方式により生じる遅延時間が異なっていても、近い距離に存在するユーザ群の遅延時間は概ね同程度になると期待できる。これにより、本サービスを利用するユーザはさらに良好なコミュニケーションを実現することができる。
【0064】
また例えば、本サービスには、ユーザの視野に応じた描画の最適化に関する技術を応用することができる。
ここで、本サービス含む多くの仮想空間を利用したコミュニケーションサービスなどにおいて、多数のユーザが同一の画面上に存在する場合、全てのユーザの動きを描画するとユーザの使用するメモリなどを大幅に圧迫することになる。
したがって、例えば、本サービスでは、ユーザにより指定された所定の範囲内にユーザが入った場合にのみ描画する仕様を採用してもよい。すなわち、本サービスにおいて利用される距離に関する通信情報に基づいて描画の対象を決定し、メモリの使用を最適化する。
また例えば、背景などを分割してアップロードし、所定の範囲内の画像を優先的にダウンロードすることで、アクセスにかかる時間を圧縮できる仕様が採用されてもよい。
【0065】
また、本サービスは、音声コマンドにより操作を行うこともできる。具体的には例えば、第2ユーザUbが第2ユーザ端末3に向かって「音声をミュートにして」と話しかけると、APIとして機能するコマンドソケットを介して音声が認識されてアクションが実行される。なお、本サービスでは、あくまでも出力されるデジタルデータに対して補正をかけることにより実現されるため、音声がミュートの状態やユーザUが可聴域外に存在する場合であっても、このような音声コマンドを実現することができる。
【0066】
また、本サービスは、AR(Augmented Reality)などの技術を利用することで、オフライン環境でも快適に利用することができる。
具体的に例えば、本サービスは、アクセスポイントとして、例えば、スマートスピーカーなどのプログラミング可能な音声装置を採用する。アクセスポイントは、オフライン環境とオンライン環境とを繋ぐ窓口として機能する。
即ち、多数のユーザUがオンライン環境でWEB会議などに参加する中、少数のユーザUがオフライン環境でWEB会議などに参加する場合がある。このような場合、オフライン環境のユーザUがオンライン環境のユーザU間のコミュニケーションにうまく馴染めないことがある。
このような場合、例えば、オフライン環境のユーザUの仮想的な位置を反映させたアクセスポイントからオンライン環境のユーザUの音声が聴こえてくるような状況にすれば、オンライン環境のユーザUが多く参加するWEB会議などでも、オフライン環境のユーザUの存在を常に意識しながら進行させることができる。その結果、通信環境を問わず良好なコミュニケーションが期待できる。
また同様に、例えば、オフィス空間Sに2台以上のアクセスポイントを配置された場合、アクセスポイントで取得された情報に基づき音声認識や距離測定などの技術を応用することで、オフライン環境のユーザUのオフィス空間S内の位置を自動で取得し、オンライン環境で開催されているWEB会議などに自動で反映させる(音声の入力やアイコンの配置など)こともできる。
【0067】
具体的に例えば、オフライン環境のユーザUからアクセスポイントに入力された音声等のデジタルデータには、イコライザーによる音質等の改善、特定の周波数帯域の強調や減衰等、即ち、距離測定(三角測量)、エコー補正、ノイズ補正、ハウリング抑制等の技術を利用した補正が加えられることが考えられる。
また例えば、音声認証によって音声の発信主の特定が行われる。具体的に例えば、音声の発信主の音声データが既に本サービスに登録されている場合には、声紋等の解析と照合とが行われて、音声の発信主がどのユーザUであるのかが特定される。
【0068】
また例えば、ARなどの技術を利用する方法としては、360度に対応可能なデジタルカメラや複数の汎用的なカメラを設置する方法などが想定される。
具体的に例えば、本サービスは、カメラに撮像された画像に画像認識などの手法を組み合わせることで、オフライン上に存在するユーザを認識し、それぞれのユーザに対応するアイコンを自動でオンライン上(例えば、オフィス空間S)に配置してもよい。
さらに言えば、360度に対応可能なデジタルカメラを会議室などに設置する場合であれば、より容易にそれぞれのユーザの位置関係を正確に把握し、オンライン上(例えば、上述の会議室)のアイコンの位置に反映することもできる。
【0069】
また、本サービスは、上述の実施形態で示すアイコンの他、図示はしないが、メガフォン、マイク、ドア等を示すアイコンを任意の位置に配置することができる。このうち、メガフォンは、会議室に入室しているユーザU以外の全てのユーザUに音声を届かせる必要があるときに利用するアイコンである。また、マイクは、自身が発する音声のミュートのONとOFFとを切り替えるときに利用するアイコンである。また、ドアは、オフィス空間Sを退室してロビー(図示せず)に移動する際に利用するアイコンである。
【0070】
また、本発明の一実施形態にかかる本システムによれば、上述のサービスの他にも、例えば以下のようなサービスを実現させることができる。
【0071】
即ち、上述したように、オフィス空間Sは、現実世界のオフィス空間と同様に、近くにいるユーザUの話し声はクリアに聴こえるが、遠くにいるユーザUの話し声は全く聴き取れないか、または僅かに聴こえる程度である。これは、アイコン同士の距離に応じて、出力されるデジタルデータに減衰等の補正が加えられるからである。その一方で、本サービスでは、用途に応じて、出力される音声の大きさを強制的に調整することができる。例えば、ユーザUの端末(第1ユーザ端末2および第2ユーザ端末3)毎にミュートのONとOFFとを設定することもできる。
【0072】
また、図示はしないが、オフィス空間Sの出入口(エントランス)を設けて、外部からオフィス空間S内のユーザUを呼び出せるようにすることもできる。これにより、訪問者への対応など、さらに現実世界のオフィスに近付けることができる。
【0073】
また、図示はしないが、オフィス空間Sの所定の位置に、動画像が埋め込まれたアイコンを配置することもできる。例えばモニタやテレビジョンを模したアイコンをオフィス空間Sの所定の位置に配置して、そのアイコンに動画像を埋め込んでもよい。そして、さらに、そのアイコンからユーザUを示すアイコンまでの距離や、直線距離上に存在する壁等の障害物の有無に応じて、動画像の見え方や、動画像とともに出力される音声(例えば話し声やBGM)の聴こえ方に補正を加えてもよい。これにより、さらに現実世界のオフィス空間に近いオフィス空間を実現させることができる。
【0074】
また例えば、上述の実施形態では、第1ユーザUaが第1ユーザ端末2を操作して情報(音声データ等)を送信し、第2ユーザUbが第2ユーザ端末3を操作して情報を受信する構成となっている。ただし、第1ユーザUaと第2ユーザUbは固定されているわけではなく、本サービスを利用するユーザUは、第1ユーザUaになる場合もあれば第2ユーザUbになる場合もある。即ち、本サービスを利用するユーザUは、オフィス空間Sで音声等の送信側となる場合には第1ユーザUaとなり、音声等の受信側となる場合には第2ユーザUbとなる。
すなわち、第1ユーザ端末2であっても第2ユーザ端末3の各機能を有し情報の受信に利用することもできるし、逆に、第2ユーザ端末3であっても第1ユーザ端末2の各機能を有し情報の送信に利用することもできる。
【0075】
また例えば、上述の実施形態では、本サービスの適用対象となる仮想空間としてオフィス空間Sが採用されているが、特にこれに限定されない。他のあらゆる仮想空間を採用してもよい。具体的には例えば、イベント会場、パーティールーム、レストラン、お見合い会場など各種各様の仮想空間を採用してもよい。
ここで、本サービスの適用対象となる仮想空間としてイベント会場を採用する場合の詳細について補足する。一般的にイベント会場では、多数のユーザが任意の行動を行うため、多種多様なコミュニケーションがリアルタイムで発生する。本サービスでは、直感的に認識可能なUIのみにより、このような現実世界においてリアルタイムに発生し得る多種多様なコミュニケーションをリアルタイムで再現することが可能になる。
【0076】
また例えば、上述の実施形態において、オフィス空間Sは1部屋となっているが、複数のオフィス空間が隣り合うように配列させて、ユーザUが互いに行き来できるようにしてもよい。
【0077】
また例えば、図1に示すシステム構成、および図2に示すサーバ1のハードウェア構成は、本発明の目的を達成するための例示に過ぎず、特に限定されない。
【0078】
また例えば、上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるし、ソフトウェアにより実行させることもできる。
【0079】
また例えば、本システムを構成する各種ハードウェア(サーバ1、第1ユーザ端末2、および第2ユーザ端末3)の数や使用者は任意であるし、他のハードウェア等を含み構成されてもよい。さらに言えば、上述の各種ハードウェアには、同一のコンピュータ等が採用されてもよい。
【0080】
また例えば、一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータ等にネットワークや記録媒体からインストールされる。
コンピュータは、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータであっても良い。
また、コンピュータは、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能なコンピュータ、例えばサーバの他汎用のスマートフォンやパーソナルコンピュータであってもよい。
即ち、例えば、上述の実施形態における各種ハードウェア(サーバ1、第1ユーザ端末2、および第2ユーザ端末3)には、任意のコンピュータ、任意のスマートフォン等の携帯端末等が自由に採用されてもよい。さらに言えば、各種入力部や各種出力部等の種別や内容についても任意の組み合わせが採用されてもよい。
さらに言えば、上述の各種ハードウェアは、コンピュータ等の採用は任意であり、特に限定されない。
【0081】
また例えば、このようなプログラムを含む記録媒体は、ユーザにプログラムを提供するために装置本体とは別に提供される図示せぬリムーバブルメディアにより構成されるだけでなく、装置本体に予め組み込まれた状態でユーザに提供される記録媒体等で構成される。
【0082】
なお、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、その順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的或いは個別に実行される処理をも含むものである。
また、本明細書において、システムの用語は、複数の装置や複数の手段等より構成される全体的な装置を意味するものとする。
【0083】
以上をまとめると、本発明が適用される情報処理システムは、次のような構成を有する各種各様の実施形態を取ることができる。
即ち、本発明が適用される情報処理システムは、
第1ユーザが送信を希望する情報の入力に利用される第1装置(例えば、第1ユーザ端末2)と、
第2ユーザにより前記情報の受信に利用され得る第2装置(例えば、第2ユーザ端末3)と、
サーバ(例えば、サーバ1)と、
を含むように構成される情報処理システムであって、
前記第1装置は、
入力された前記情報を、入力情報として受け付ける入力情報受付手段(例えば、送信側音声管理部242)を備え、
前記第2装置は、
前記入力情報を取得する第2入力情報取得手段(例えば、受信側音声等取得部342)と、
前記入力情報に基づいて、前記第2ユーザに出力する出力情報を生成する出力情報生成手段(例えば、出力情報生成部343)を備え、
前記サーバは、
仮想空間内における、前記第1ユーザおよび前記第2ユーザの夫々に対応するオブジェクトの位置を特定するオブジェクト位置特定手段(例えば、アイコン位置取得部61)と、
前記入力情報を取得する第1入力情報取得手段(例えば、送信側音声取得部62)と、
前記オブジェクト位置特定手段により特定された前記オブジェクトの夫々の位置に基づいて、前記第1ユーザと前記第2ユーザの夫々との距離に関する距離情報を取得する距離情報取得手段(例えば、距離計算部63)と、
前記距離情報および前記入力情報に基づいて、前記第2ユーザの夫々に出力する出力情報を生成する条件を決定する条件決定手段(例えば、補正率決定部64)と、
を備えることができる。
【符号の説明】
【0084】
1 サーバ
11 制御部
60 仮想空間管理部
61 アイコン位置取得部
62 送信側音声取得部
63 距離計算部
64 補正率決定部
65 受信側音声等送信制御部
400 マップDB
2 第1ユーザ端末
200 制御部
240 仮想空間管理部
241 アイコン位置管理部
242 送信側音声管理部
3 第2ユーザ端末
300 制御部
340 仮想空間管理部
341 アイコン位置管理部
342 受信側音声等取得部
343 出力情報生成部
S オフィス空間
Ua 第1ユーザ
Ub 第2ユーザ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9