(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】建物
(51)【国際特許分類】
E04H 1/02 20060101AFI20221018BHJP
E04H 1/12 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
E04H1/02
E04H1/12 301
(21)【出願番号】P 2022042168
(22)【出願日】2022-03-17
【審査請求日】2022-03-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515134184
【氏名又は名称】株式会社PASIO
(73)【特許権者】
【識別番号】519382628
【氏名又は名称】株式会社コモドデザイン
(74)【代理人】
【識別番号】100074273
【氏名又は名称】藤本 英夫
(74)【代理人】
【識別番号】100173222
【氏名又は名称】藤本 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100151149
【氏名又は名称】西村 幸城
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 富夢
(72)【発明者】
【氏名】内山 里江
【審査官】沖原 有里奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-294259(JP,A)
【文献】特開2017-025614(JP,A)
【文献】特許第6901077(JP,B1)
【文献】特開2001-303776(JP,A)
【文献】[錦糸町再興]屋外サウナ×外気浴×BBQ!コロナの不安を”笑顔”に変えるサウナを,2020年08月14日,1-7,https://web.archive.org/web/20200814040320/https://camp-fire.jp/projects/view/299423
【文献】SAUNA CONSTRUCTION サウナ・ジャグジー施工,2016年03月31日,1-2,https://web.archive.org/web/20160331134545/https://www.land53.co.jp/sauna.html
【文献】自宅でテントサウナを作るための調達メモ,2021年01月02日,1-8,https://kaburelife.me/tent-sauna-procurement/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/00-1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁で囲まれた屋外領域を
、居住スペースから繋がる外の空間にあるルーフバルコニ
ーに設け、該屋外領域の壁際にサウナを配し
、
前記屋外領域を囲む前記壁を前記サウナの壁に兼用した建物。
【請求項2】
前記サウナを前記屋外領域のコーナー部に配し
、このコーナー部を構成する2辺の壁を前記サウナの壁に兼用した請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記屋外領域は、有天井エリアと無天井エリアとを有する請求項1または2に記載の建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、サウナを楽しむことのできる屋外領域を有する建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅に設置されるサウナは、サウナから出た後、すぐに汗を洗い流せるようにするために、専ら屋内における浴室の近くに配されることが多い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】タナカカツキ著 「マンガ サ道~マンガで読むサウナ道~1」株式会社講談社 2016年1月22日
【文献】“[医学的に徹底解明!]「ととのってみたい」と願うあなたに贈る!サウナで「ととのう」は、ウソ?本当?”,[online],株式会社講談社,[令和4年3月11日検索],インターネット<URL: https://morning.kodansha.co.jp/c/mangasadou/totonoukiji.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで近年のサウナブームのきっかけとなったタナカカツキ氏によるエッセイ『サ道』の書籍化、漫画化(非特許文献1参照)及びドラマ化等により、高温のサウナで身体を温め、水風呂やシャワーで身体を冷やし、外気浴をするという工程を1セットとして繰り返すサウナの入浴法が、「ととのう」と表現されるトランス(恍惚)状態に至ることを可能とするものとして広く知られるようになった。
【0005】
神経系を専門分野とする加藤容祟医師によれば、そのメカニズムは以下のように説明される(非特許文献2参照)。高温のサウナに入ると自律神経がその熱さによる負荷に適応しようとして交感神経が活発化し、アドレナリン(興奮物質)の血中濃度も上昇し、続いて水風呂でも交感神経は活発になるが、水風呂から上がって外気浴をしていると今度は副交感神経が優位になる。自律神経は反応が早いから交感神経から副交感神経へは一瞬で切り替わるが、血中のアドレナリンは体中をめぐっていて、肝臓で代謝されて徐々に効果が低下し、半減するのに2分くらいかかる。つまり、水風呂から上がった直後というのは「副交感神経によるリラックス」と「アドレナリンによる興奮」が共存するという、日常ではまず起こり得ない異常な状態になっており、これが「ととのう」の正体と考えられ、最大限に「ととのう」ためにはこの2分間が非常に重要となる。
【0006】
また、「ととのう」と、アルファ波の正常化によりリラックス感が得られる一方、ベータ波は脳において発想やインスピレーションを司る部分でだけ大きくなり、人間の意識が低下すると反比例して増大するデルタ波は減弱している(脳は覚醒した状態になっている)。つまり、脳科学的に「ととのう」とは、リラックスしているが眠くはなく頭は覚醒していて、発想が活発になっている状態のことと言える。
【0007】
しかし、上記従来のサウナは屋内における浴室近くにあるが、通常、浴室は屋内において屋外にすぐに出ることのできる位置には設けられない。そのため、サウナから出て浴室で身体を冷やした後すぐに外気浴ができず、そこから屋外にまで移動するのに時間が掛かり、容易に「ととのう」ことのできる環境が得られ難いという問題がある。また、浴室から濡れた身体のまま屋内を移動すると拭き掃除等の後始末が必要になり、これを避けるために身体を拭いてから移動するようにすると、屋外に移動するまでの時間が長く掛かるようになってやはり「ととのい」難くなる上、身体に付着している水分の気化潜熱を利用した身体冷却が行えなくなるので、特に夏場に「ととのう」ための機会を逸し易くなるという問題もある。
【0008】
本発明は上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、「ととのう」ことの容易化を図り、拭き掃除等の後始末も不要とすることのできる建物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る建物は、壁で囲まれた屋外領域を、居住スペースから繋がる外の空間にあるルーフバルコニーに設け、該屋外領域の壁際にサウナを配し、前記屋外領域を囲む前記壁を前記サウナの壁に兼用した(請求項1)。ここで、本明細書では、屋根部分にある点で共通するルーフバルコニーと屋上とにつき、同じフロアに居住スペースがあるもの(建物からせり出すバルコニーとは異なり、階下の屋根部分に位置し、居住スペースから繋がる外の空間にあるもの)を「ルーフバルコニー」といい、同じフロアに居住スペースがないもの(建物からせり出すバルコニーとは異なり、建物の屋根部分に位置するもの)を「屋上」という。
【0010】
上記建物において、前記サウナを前記屋外領域のコーナー部に配し、このコーナー部を構成する2辺の壁を前記サウナの壁に兼用してもよい(請求項2)。
【0011】
上記建物において、前記屋外領域は、有天井エリアと無天井エリアとを有していてもよい(請求項3)。
【発明の効果】
【0012】
本願発明では、「ととのう」ことの容易化を図り、拭き掃除等の後始末も不要とすることのできる建物が得られる。
【0013】
すなわち、本願の各請求項に係る発明の建物では、サウナを配する屋外領域に身体冷却用設備(例えば水風呂やシャワー設備等)や外気浴用設備(例えば寝転ぶことが可能な簀の子やリクライニングチェア等)を併せて設置しておくことにより、サウナを出て身体を冷やした後、すぐに外気浴を行うことができ、「ととのう」ことの容易化を図ることができる。また、一般に、ルーフバルコニーや屋上は防水されているので、そこに設けた屋外領域において濡れたままの身体で移動した場合でも、拭き掃除等の後始末を不要とすることができる。
【0014】
さらに、本発明の建物では、屋外領域を壁で囲み、その壁際にサウナを設置するので、サウナに出入りする様子等を外から見られ難くすることができ、サウナの利用者は一層リラックスし易く、ひいては「ととのい」易くなる。
【0015】
加えて、屋外領域を囲む壁の一部をサウナの壁に兼用することにより、構成簡素化と省スペース化とを図ることができる。
【0016】
サウナを屋外領域のコーナー部に配する請求項2に係る発明の建物では、サウナに出入りする様子等が外からより見られ難くなる上、屋外領域のコーナー部を構成する2辺の壁をサウナの壁に兼用することにより、構成簡素化及び省スペース化の点で更なる向上を図ることができる。
【0017】
屋外領域に有天井エリアと無天井エリアとを設ける請求項3に係る発明の建物では、有天井エリアと無天井エリアのうち、そのときの気分や天候・気温等に応じ、例えばよりリラックスできる方で外気浴を行うといったことが可能となり、つまりは「ととのう」のに非常に優れた環境が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る建物の2階の平面図である。
【
図2】(A)は、前記建物の2階を模式的に示す平面図、(B)~(D)はそれぞれ、本発明の変形例に係る建物の2階を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について以下に説明する。
【0020】
本実施の形態に係る建物は、例えば木造の2階建て(複数階建ての一例)の建物であり、
図1に示すように、2階(最上階)に、居住スペース(屋内スペース)1と、この居住スペース1から繋がる(居住スペース1に連なる)外の空間にあるルーフバルコニー2とを具備する。
【0021】
居住スペース1には、1階からの昇降を可能とする階段3、トイレ4、リモートブース(ワークスペース)5、リビング・ダイニング・キッチン(LDK)6等があり、居住スペース1を囲む四方の壁7(7a~7d)のうち、ルーフバルコニー2に面する位置にある壁7dにはルーフバルコニー2への出入り口となる掃き出し窓8を設けてある。
【0022】
ルーフバルコニー2は、その全体を壁7dと壁9(9a~9c)とで囲んだ屋外領域Rとしてあり、屋外領域Rのおよそ左半分を無天井エリアR1、およそ右半分を有天井エリアR2とし、無天井エリアR1には、サウナ10、バスタブ(身体冷却用設備の一例)11、簀の子(外気浴用設備の一例)12等を、有天井エリアR2には、ローダイニングテーブル13、ローダイニングソファ14、ローダイニングチェア15、バーベキューグリル16等を配置してある。なお、有天井エリアR2は例えば軒下空間として構成してあり、掃き出し窓8からは無天井エリアR1,有天井エリアR2の両方に直接出入り可能である。また、無天井エリアR1と有天井エリアR2の境界に壁等の遮蔽物はなく、両エリアR1,R2間を自由に行き来できるようにしてある。
【0023】
また、壁9bの内側に沿わせてスクリーン17を配してあるとともに、このスクリーン17に映像を投射するためのプロジェクター(図示していない)を有天井エリアR2の適宜の箇所(例えば軒天付近)に設けてある。
【0024】
ここで、居住スペース1を囲む壁7は、例えば住宅の一般的な外壁と同様の構成とすることができ、居住スペース1を囲まない壁9は、例えば窯業系サイディングのような外壁材で構成することが考えられる。
【0025】
本例の建物では、サウナ10を配する屋外領域Rに身体冷却用設備(水風呂11)や外気浴用設備(簀の子12)を併せて設置してあるので、サウナ10を出て身体を冷やした後、すぐに外気浴を行うことができ、「ととのう」ことの容易化を図ることができる。また、一般に、ルーフバルコニーは防水されているので、そこに設けた屋外領域Rにおいて濡れたままの身体で移動した場合でも、拭き掃除等の後始末を不要とすることができる。
【0026】
さらに、本例の建物では、
図1に示すように屋外領域Rを壁7dと壁9(9a~9c)とで囲み、その壁際にサウナ10を設置するので、サウナ10に出入りする様子等を外から見られ難くすることができ、サウナ10の利用者は一層リラックスし易く、ひいては「ととのい」易くなる。外から見られ難くするという効果を高めるために、バスタブの上方等の適宜の箇所に目隠しを兼ねたシェードを配するようにしてもよい。
【0027】
特に、本例の建物では、サウナ10を屋外領域Rのコーナー部に配してあり、このコーナー部を構成する2辺の壁9a、9cをサウナ10の壁に兼用することにより、構成簡素化と省スペース化とを大いに図ることができる。
【0028】
しかも、屋外領域Rに無天井エリアR1と有天井エリアR2とを設ける本例の建物では、両エリアR1,R2のうち、そのときの気分や天候・気温等に応じ、例えばよりリラックスできる方で外気浴を行うといったことが可能となり、つまりは「ととのう」のに非常に優れた環境が得られる。
【0029】
加えて、本例の建物では、例えば水を張ったバスタブ11に浸かりながら、あるいは簀の子12上に横たわって外気浴をしながら、スクリーン17に投射された映像を鑑賞する、といったことも可能であり、屋外領域Rの娯楽性や快適性を高めたものとなっている。
【0030】
なお、本発明は、上記の実施の形態に何ら限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々に変形して実施し得ることは勿論である。例えば、以下のような変形例を挙げることができる。
【0031】
図1の例では、居住スペース1を囲む1枚の壁7dと、居住スペース1を囲まない3枚の壁9a~9cとで屋外領域Rを囲むようにしてあるが(
図2(A)参照)、これに限らず、例えば
図2(B)に示すように、居住スペース1を囲む2枚の壁7e,7fと、居住スペース1を囲まない2枚の壁9a,9cとで屋外領域Rを囲むようにしてもよく、
図2(C)に示すように、居住スペース1を囲む3枚の壁7e,7f,7gと、居住スペース1を囲まない1枚の壁9cとで屋外領域Rを囲むようにしてもよい。
【0032】
また、例えばルーフバルコニー2ではなく屋上18に屋外領域Rを設けてもよく、この場合は当然、
図2(D)に示すように、屋外領域Rを囲む壁9a~9dはいずれも居住スペース1を囲まない。なお、
図2(D)において、符号19は屋上18の階下から屋上18への昇降を可能とする階段室として利用される塔屋である。
【0033】
図1の例では、ルーフバルコニー2の全体を屋外領域Rとしてあるが、ルーフバルコニー2の一部のみを屋外領域Rとしてもよい。また、
図2(D)の例では、屋上18の一部を屋外領域Rとしてあるが、屋上18の全体を屋外領域Rとしてもよい。
【0034】
図1の例では、サウナ10を屋外領域Rのコーナー部に配してあるが、これに限らず、例えば
図2(C)に示すように、サウナ10を屋外領域Rの壁際であってコーナー部を避けた位置に設けてもよい。
【0035】
図1の例では、サウナ10を他の部分からやや出っ張るように設けているが、出っ張らないように設けてもよい。
【0036】
図1の例では、屋外領域Rに無天井エリアR1と有天井エリアR2とを設けてあるが、これに限らず、屋外領域Rに無天井エリアR1、有天井エリアR2の何れか一方のみを設けるようにしてもよい。
【0037】
なお、上記変形例どうしを適宜組み合わせてもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0038】
1 居住スペース
2 ルーフバルコニー
3 階段
4 トイレ
5 リモートブース
6 リビング・ダイニング・キッチン
7 壁(7a~7g)
8 掃き出し窓
9 壁(9a~9d)
10 サウナ
11 バスタブ
12 簀の子
13 ローダイニングテーブル
14 ローダイニングソファ
15 ローダイニングチェア
16 バーベキューグリル
17 スクリーン
18 屋上
19 塔屋
R 屋外領域
R1 無天井エリア
R2 有天井エリア
【要約】
【課題】本発明は、「ととのう」ことの容易化を図り、拭き掃除等の後始末も不要とすることのできる建物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の建物は、壁7d、9a~9cで囲まれた屋外領域Rをルーフバルコニー2又は屋上に設け、該屋外領域Rの壁際にサウナ10を配した。ここで、前記サウナ10を前記屋外領域Rのコーナー部に配してもよい。また、前記屋外領域Rは、有天井エリアR2と無天井エリアR1とを有していてもよい。
【選択図】
図1