(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】有害節足動物防除樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 25/00 20060101AFI20221018BHJP
A01N 25/30 20060101ALI20221018BHJP
A01N 25/34 20060101ALI20221018BHJP
A01N 53/08 20060101ALI20221018BHJP
A01P 7/04 20060101ALI20221018BHJP
D06M 13/224 20060101ALI20221018BHJP
A47G 27/02 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
A01N25/00 101
A01N25/30
A01N25/34 B
A01N53/08 125
A01N53/08 110
A01P7/04
D06M13/224
A47G27/02 B
(21)【出願番号】P 2017251491
(22)【出願日】2017-12-27
【審査請求日】2020-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】390000527
【氏名又は名称】住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】相奈良 賢治
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/190433(WO,A1)
【文献】特開昭59-027801(JP,A)
【文献】特表2012-532840(JP,A)
【文献】特開2005-297208(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N 25/
A01N 53/
A01P 7/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペルメトリン、フェノトリン、シフェノトリンから選ばれる少なくとも一種類の殺虫成分、ラテックスエマルション及び界面活性剤を含有
し、さらに、25℃における蒸気圧が10mmHg以下である溶剤から選ばれる少なくとも一種を含有することを特徴とする有害節足動物防除組成物であって、
前記ラテックスエマルションがスチレン-ブタジエン系ラテックスであり、
前記界面活性剤が構造にベンゼン環を含む骨格を有する界面活性剤、及びスルホサクシネート塩型の界面活性剤からなる群より選ばれる少なくとも一種であり、
防除対象とする有害節足動物がチャタテムシ類またはダニ類である有害節足動物防除組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の有害節足動物防除組成物で加工した繊維製品。
【請求項3】
繊維製品が、カーペット、絨毯、カーマット、カーシート、マット、敷物のいずれかであることを特徴とする、請求項2に記載の有害節足動物防除組成物で加工した繊維製品。
【請求項4】
請求項3または4に記載の繊維製品を用いて有害節足動物を防除する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺虫成分を含有する有害節足動物防除組成物及びその使用、前記有害節足動物防除組成物を用いた有害節足動物防除方法、有害節足動物防除組成物を加工した繊維製品、特に有害節足動物防除組成物を加工したカーペット、絨毯、カーマット、カーシート、マット、敷物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅環境や車内環境の変化により室内の気密性が向上し、有害節足動物、とりわけチャタテムシ類やコナダニ、ヒョウヒダニ、ツメダニなどの屋内で見られるダニ類が発生しやすい状況となっている。これらの有害節足動物は、時に大量発生し、不快感を与えるだけではなく、食材の食害被害を引き起こしたり、アレルギー性喘息や鼻炎などを引き起したりするといった問題を生じさせる。
そこで、これら有害節足動物の防除に有効な防除剤や防除方法として、エアゾール、燻煙剤などの使用が提案されてきたが、屋内では直接肌に接触する機会が多いため、より安全性の高い薬剤や処理方法が求められている。
【0003】
エアゾールや燻煙剤を使用しない方法として、繊維表面に抗菌剤、防ダニ剤をスチレン・アクリル酸系エステル共重合体により固着させた抗菌・防ダニ繊維や、ダニ駆除剤を含む抗菌性化合物を繊維材料の表面に適用する方法などが開示されている。また、繊維表面に処理しない方法として、ラテックスエマルション中に防虫成分を混合し、絨毯、カーペット、マットに対する防虫性を付与する防虫ラテックス組成物や、自動車用内装材の結着や成形性付与に使用される合成樹脂に防虫剤を添加する方法などが開示されている。このうち、繊維表面に抗菌剤、防ダニ剤を固着させたる、あるいは、ダニ駆除剤を含む抗菌性化合物を繊維表面に適用する場合、繊維表面の抗菌剤等が直接肌に触れる場合があり、安全面で問題点があった。また、ラテックスエマルションや合成樹脂に添加した場合は、必ずしも効果が十分とは言えなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-199177
【文献】特開2011-063605
【文献】特開昭59-027801
【文献】WO2011/045950
【非特許文献】
【0005】
【文献】「都市害虫百貨」、1993年、朝倉書店発行、第180~200頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の各請求項にかかる課題は、チャタテムシ類やダニ類に代表される有害節足動物が生息しやすい場所、例えばカーペットやカーシートの基部などに対し、容易に加工することが可能であり、ラテックスエマルションに添加された殺虫成分であっても、その効果が十分に発揮される有害節足動物防除組成物を提供することである。また、安定性が良好な有害節足動物防除組成物を提供することも本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、ペルメトリン、フェノトリン、シフェノトリンから選ばれる少なくとも一種類の殺虫成分、ラテックスエマルション及び界面活性剤、場合によりさらに25℃における蒸気圧が10mmHg以下である溶剤から選ばれる少なくとも一種類の溶剤を含んでなる組成物が、飛躍的に高い有害節足動物防除効果を示すことを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち本発明は、(1)ペルメトリン、フェノトリン、シフェノトリンから選ばれる少なくとも一種類の殺虫成分、ラテックスエマルション及び界面活性剤を含有することを特徴とする有害節足動物防除組成物であり、(2)さらに、25℃における蒸気圧が10mmHg以下である溶剤から選ばれる少なくとも一種類を含有することを特徴とする有害節足動物防除組成物であり、(3)界面活性剤が、非イオン性界面活性剤、及び陰イオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも一種類であることを特徴とする有害節足動物防除組成物であり、(4)有害節足動物が、チャタテムシ類及びダニ類であることを特徴とする有害節足動物防除組成物であり、(5)上述(1)~(4)のいずれかに記載の有害節足動物防除組成物で加工した繊維製品であり、(6)繊維製品が、カーペット、絨毯、カーマット、カーシート、マット、敷物である上述(4)記載の有害節足動物防除組成物で加工した繊維製品であり、(7)上述(5)または(6)に記載の繊維製品を用いて有害節足動物を防除する方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の有害節足動物防除組成物にかかる発明は、有効成分である特定の殺虫成分、ラテックスエマルション及び界面活性剤、場合によりさらに特定の溶剤を含有する組成物によって、殺虫成分の有害節足動物防除効果が飛躍的に高まり、カーペット、カーシートなどの繊維製品の基部に加工したときに、有害節足動物防除性能を十分に発揮できる利点がある。
【0010】
特にバッキング剤として適用した場合に、対象となるチャタテムシ、ヒョウヒダニ、コナダニ、ツメダニ、マダニなどに代表される有害節足動物が生息しやすい場所に効率よく加工することができ、人体に直接殺虫成分が触れることがほとんどないにもかかわらず、非常に優れた有害節足動物防除効果が得られ、安全で実用的となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の有害節足動物防除組成物は、ラテックスエマルション及び、ペルメトリン、フェノトリン、シフェノトリンから選ばれる少なくとも一種類の殺虫成分、及び界面活性剤を含み、場合により25℃における蒸気圧が10mmHg以下である溶剤から選ばれる少なくとも一種類を含有することで、殺虫成分による有害節足動物防除効果を飛躍的に増強せしめたことを特徴とする。
【0012】
本発明の有害節足動物防除組成物に用いられる殺虫成分は、ペルメトリン、フェノトリン、シフェノトリンから選ばれる少なくとも一種類であり、殺虫成分の配合量としては、有害節足動物防除組成物中0.001~5重量%であることが好ましく、0.01~2重量%であればより好ましい。配合量が0.001%未満であると、有害節足動物に対する効力が十分でなく、5%を超えると経済性が悪くなる。
【0013】
本発明の有害節足動物防除組成物に使用されるラテックスエマルションは、例えばスチレン-ブタジエン系ラテックス、メチルメタアクリレート-ブタジエン系ラテックス、アクリロニトリル-ブタジエン系ラテックス、エチレン-酢酸ビニルエマルション、酢酸ビニルエマルション、クロロプレン、イソプレン、ポリブタジエンエマルション、アクリルエマルション、ポリウレタンエマルション、ポリエチレンエマルション、ポリエステルエマルション、天然ゴムなどが挙げられ、これらのラテックスエマルションを2種以上ブレンドして用いることもできる。これらのラテックスエマルションのうち、特にスチレン-ブタジエン系ラテックスが好ましい。
【0014】
本発明に用いられる界面活性剤は、特に限定されるものではないが、下記に示すような非イオン性もしくは陰イオン性界面活性剤が好ましく使用できる。例えば、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノ(ポリアリルフェニル)エーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマーアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンヒマシ油エーテル、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油エーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリンなどの非イオン性界面活性剤;アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンベンジル(またはスチリル)フェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、ジアルキルまたはジアルケニルスルホサクシネート、アルキルベンゼンスルホン酸塩、モノまたはジアルキルナフタレン酸スルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩ホルムアルデヒド縮合物、リグニンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンモノ(トリスチレン化フェニル)エーテルリン酸カリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホサクシネート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレンモノまたはジアルキルフェニルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレンベンジル(またはスチリル)フェニルエーテルホスフェート、ポリオキシエチレンベンジル(またはスチリル)フェニルエーテルホスフェートまたはポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマーホスフェートなどの陰イオン性界面活性剤が挙げられ、これらは単独でまたは二種以上を組み合わせて使用することができる。中でも特に、構造にベンゼン環を含む骨格を有する界面活性剤、及びスルホサクシネート塩型の界面活性剤を好適に用いることができる。
【0015】
本発明の有害節足動物防除組成物に用いられる界面活性剤の配合量としては、有害節足動物防除組成物中0.001~10重量%の範囲であることが好ましく、0.002重量部~5部の範囲であることがより好ましい。
【0016】
本発明の有害節足動物防除組成物には、さらに25℃における蒸気圧が10mmHg以下である溶剤を加えてもよい。25℃における蒸気圧が10mmHg以下の溶剤を加えることにより、有害節足動物に対する防除効力が飛躍的に向上する。
【0017】
本発明の有害節足動物防除組成物に用いられる溶剤としては、25℃における蒸気圧が10mmHg以下であれば特に限定されるものではないが、具体的には、芳香族または脂肪族炭化水素類(フェニルキシリルエタン、イソパラフィンなど)、アルコール類(ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェニルグリコールなど)、グリコールエーテル類(ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-2-エチルヘキシルエーテルなど)、エステル類(アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジオクチルなど)、スルホキシド類(ジメチルスルホキシドなど)、酸アミド類(N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドンなど)、炭酸アルキリデン類(炭酸プロピレンなど)、植物油(大豆油、綿実油など)などが挙げられる。これらの中でも特に、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、スルホキシド類、酸アミド類が好ましく、アルキルベンゼン、ジメチルスルホキシド、N-メチル-2-ピロリドン、イソパラフィンなどが特に好適に用いられる。これらは単独で用いられてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0018】
本発明の有害節足動物防除組成物において、溶剤を配合する場合の配合量としては、有害節足動物防除組成物中0.002~25重量%の範囲が適しており、より好ましくは0.005~20重量%の範囲である。
【0019】
本発明の有害節足動物防除組成物には、本発明の効果に支障をきたさない限りにおいて必要に応じ、他の殺虫成分を併用することもできる。併用可能な殺虫成分としては、ピレスロイド系化合物、フェニルピラゾール系化合物、有機リン系化合物、カーバメイト系化合物、ネオニコチノイド系化合物、IGR系化合物、幼弱ホルモン様化合物などが挙げられ、これらの化合物から一種類以上の化合物を選択することができる。この他、その他の機能性付与成分または添加剤などを併用することもでき、例えば、消臭剤、抗菌剤、防カビ剤、酸化防止剤、誤食防止剤、色素、pH調整剤、紫外線吸収剤、難燃剤、増粘剤などが挙げられる。
【0020】
また、本発明の有害節足動物防除組成物の製造方法は、ラテックスエマルションに殺虫成分、界面活性剤、場合により特定の溶剤を直接混合して製造してもよいが、あらかじめ殺虫成分、界面活性剤、場合により特定の溶剤を含有する製剤とし、その製剤を直接、または水で希釈してラテックスエマルションに混合する方法で製造することもできる。
あらかじめ殺虫成分、界面活性剤、場合により特定の溶剤を含む製剤とする場合、製剤の剤型としては、ラテックスエマルションに混合できる剤型であれば特に限定されないが、水に容易に分散する剤型であることが好ましい。具体的には、乳剤、水和剤、水溶剤などが挙げられる。
【0021】
あらかじめ殺虫成分、界面活性剤、場合により特定の溶剤を含む製剤とする場合の、界面活性剤の配合量としては、殺虫成分1重量部に対し0.1~10重量部が好ましく、0.2~5重量部とすることがより好ましい。特定の溶剤も配合する場合は、殺虫成分1重量部に対し0.1~50重量部が好ましく、0.2~20重量部がより好ましい。
【0022】
上記のようにして調製された有害節足動物防除組成物は、実用上の使用形態に制限はないが、特に接着用として種々の繊維製品に処理した後、乾燥硬化処理することによって繊維製品に防虫層を形成することができ、有害節足動物防除機能を有する繊維製品とすることができる。かかる繊維製品の具体例としては、例えばカーペット、絨毯、カーマット、カーシート、マット、敷物、玄関マット、バスマットなどが挙げられる。
【0023】
これらの繊維製品に対する本発明の有害節足動物防除組成物の処理量としては、100g~2000g/m2、より好ましくは400g~1000g/m2であり、殺虫成分としては、0.008g~40g/m2、より好ましくは0.08g~16g/m2となるように調節する。また、本発明の有害節足動物防除組成物は、他のラテックスエマルションと混合し、その混合物として使用、処理することも可能である。
【0024】
本発明の有害節足動物防除組成物の使用方法としては、ラテックスエマルション、殺虫成分及び界面活性剤、場合によりさらに特定の溶剤とを併用することにより飛躍的に有害節足動物防除効果を高めたことを特徴としていることから、カーマット、カーシート、カーペットなどの繊維製品の基部に、裏打ち剤やバッキング剤として対象の繊維製品に処理して使用することが望ましい。本発明における基部とは、通常カーペットやカーマット、カーシートなどの繊維製品の裏面に位置する、植毛層を支持する基布部分を指し、本発明の有害節足動物防除組成物を裏打ち剤やバッキング剤として使用することによって、繊維製品に、効率的に有害節足動物防除機能を付与することができる。
【0025】
本発明の有害節足動物防除組成が対象とする有害節足動物としては、有害な節足動物であれば特に限定されるわけではないが、ダニ類、チャタテムシ類、トビムシ類、キクイムシ類、シバンムシ類、ヒメマキムシ類、ハネカクシ類、ケシキスイ類、アリ類、カツオブシムシ類、シロアリ類、ゴキブリ類、イガ類、コイガ類、ヤスデ、ムカデ、ダンゴムシ、ワラジムシなどの多足類などを例示することができ、中でもチャタテムシ類及びダニ類に対して有効であり、さらにチャタテムシ類に対して特に有効である。
【0026】
ダニ類としては、フトツメダニ、ミナミツメダニなどのツメダニ類、ホコリダニ類、ヤドリダニ類、コナヒョウヒダニ、ヤケヒョウヒダニなどのヒョウヒダニ類、ケナガコナダニ、ムギコナダニなどのコナダニ類、ササラダニ類、イエダニ類、トリサシダニ類、ワクモ類などが、また、チャタテムシ類としては、コチャタテ、ヒラタチャタテ、カツブシチャタテ、ソウメンチャタテ、ヒメチャタテなどが例示でき、これらの有害節足動物に対しても十分な防除効果を発揮することができる。
【実施例】
【0027】
以下に実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0028】
(実施例1)
表1に示すように、スチレン-ブタジエン系ラテックスエマルション96重量部に、ペルメトリン2重量部、ニューカルゲン(登録商標)CP-120(竹本油脂株式会社製)2重量部を加えて合計100重量部とし、実施例1の有害節足動物防除組成物を得た。
【0029】
(実施例2)
表1に示すように、スチレン-ブタジエン系ラテックスエマルション96重量部に、ペルメトリン2重量部、ニューカルゲンEP-70G(竹本油脂株式会社製)2重量部を加えて合計100重量部とし、実施例2の有害節足動物防除組成物を得た。
【0030】
(実施例3)
表1に示すように、スチレン-ブタジエン系ラテックスエマルション96重量部に、ペルメトリン2重量部、ニューカルゲンKL-30(竹本油脂株式会社製)2重量部を加えて合計100重量部とし、実施例3の有害節足動物防除組成物を得た。
【0031】
(実施例4)
表1に示すように、スチレン-ブタジエン系ラテックスエマルション96重量部に、ペルメトリン2重量部、サニマル(登録商標)SFT(日本乳化剤株式会社製)2重量部を加えて合計100重量部とし、実施例4の有害節足動物防除組成物を得た。
【0032】
(実施例5)
表1に示すように、スチレン-ブタジエン系ラテックスエマルション95重量部に、あらかじめペルメトリン2重量部、ニューカルゲンCP-120(竹本油脂株式会社製)0.35重量部、ニューカルゲンKL-30(竹本油脂株式会社製)0.5重量部、アルキルベンゼン1.2重量部、イソパラフィン(38℃における蒸気圧:0.33mmHg)0.8重量部、N-メチル-2-ピロリドン0.15重量部を混合したものを加えて合計100重量部とし、実施例5の有害節足動物防除組成物を得た。
【0033】
(実施例6)
表1に示すように、スチレン-ブタジエン系ラテックスエマルション90.6重量部に、あらかじめフェノトリン4重量部、ソルポール(登録商標)SM-100PM(東邦化学工業株式会社製)4.4重量部、フェニルキシリルエタン1重量部を混合したものを加えて合計100重量部とし、実施例6の有害節足動物防除組成物を得た。
【0034】
(実施例7)
表1に示すように、スチレン-ブタジエン系ラテックスエマルション94重量部に、あらかじめシフェノトリン1重量部、ソルポールSM-100PM(東邦化学工業株式会社製)4.4重量部、アルキルベンゼン1重量部を混合したものを加えて合計100重量部とし、実施例7の有害節足動物防除組成物を得た。
【0035】
【0036】
(比較例1)
表2に示すように、スチレン-ブタジエン系ラテックスエマルション98重量部に、ニューカルゲンCP-120(竹本油脂株式会社製)2重量部を加えて合計100重量部とし、比較例1の有害節足動物防除組成物を得た。
【0037】
(比較例2)
表2に示すように、スチレン-ブタジエン系ラテックスエマルション98重量部に、ニューカルゲンKL-30(竹本油脂株式会社製)2重量部を加えて合計100重量部とし、比較例2の有害節足動物防除組成物を得た。
【0038】
(比較例3)
表2に示すように、スチレン-ブタジエン系ラテックスエマルション97重量部に、あらかじめニューカルゲンCP-120(竹本油脂株式会社製)0.35重量部、ニューカルゲンKL-30(竹本油脂株式会社製)0.5重量部、アルキルベンゼン1.2重量部、イソパラフィン(38℃における蒸気圧:0.33mmHg)0.8重量部、N-メチル-2-ピロリドン0.15重量部を混合したものを加えて合計100重量部とし、比較例3の有害節足動物防除組成物を得た。
【0039】
(比較例4)
表2に示すように、スチレン-ブタジエン系ラテックスエマルション94.6重量部に、あらかじめソルポールSM-100PM(東邦化学工業株式会社製)4.4重量部、フェニルキシリルエタン1重量部を混合したものを加えて合計100重量部とし、比較例4の有害節足動物防除組成物を得た。
【0040】
(比較例5)
表2に示すように、スチレン-ブタジエン系ラテックスエマルション95重量部に、あらかじめソルポールSM-100PM(東邦化学工業株式会社製)4.4重量部、アルキルベンゼン1重量部を混合したものを加えて合計100重量部とし、比較例5の有害節足動物防除組成物を得た。
【0041】
(比較例6)
表2に示すように、スチレン-ブタジエン系ラテックスエマルション98重量部に、ペルメトリン2重量部を混合して合計100重量部とし、比較例6の有害節足動物防除組成物を得た。
【0042】
(比較例7)
表2に示すように、スチレン-ブタジエン系ラテックスエマルション96重量部に、プロフルトリン2重量部、ニューカルゲンCP-120(竹本油脂株式会社製)2重量部を混合して合計100重量部とし、比較例7の有害節足動物防除組成物を得た。
【0043】
(比較例8)
表2に示すように、スチレン-ブタジエン系ラテックスエマルション96重量部に、エムペントリン2重量部、ニューカルゲンCP-120(竹本油脂株式会社製)2重量部を混合して合計100重量部とし、比較例8の有害節足動物防除組成物を得た。
【0044】
【0045】
(試験例1)
直径30mmのプラスチックシャーレに表1及び表2に記載の実施例1~7、比較例1~8をそれぞれ約2g入れ、常温で1昼夜乾燥させた。そのシャーレにヒラタチャタテ(Liposcelis bostrychophilus)を約50頭入れ、上部からふたをして脱出しないようにし、試験開始7日の時点で観察を行い、苦悶または死亡した個体数を計数し、以下の式により苦死虫率を算出した。
苦死虫率(%)=(苦悶または死亡した個体数/全個体数)×100
【0046】
【0047】
(試験例2)
直径90mmのろ紙に、表1及び表2のうち、実施例1、実施例3、実施例5、比較例1、比較例2、比較例3、比較例6をそれぞれ約1g塗布し、乾燥させた。そのろ紙を二つ折りにし、ろ紙の中にヤケヒョウヒダニ(Dermatophagoides pteronyssinus)約20頭を入れ、折り目以外の3方をクリップで完全に密封した。24時間後に、供試ダニの生存数、死亡数を計数し、以下の式により死亡率を算出した。
死虫率(%)=(死亡したダニ個体数/全ダニ数)×100
【0048】
【0049】
(試験例3)
(実用試験)
実施例5の有害節足動物防除組成物を、スチレン-ブタジエン系ラテックスエマルションに添加、混合し、有効成分であるペルメトリンとして0.5g/m2となるように、カーマットの基布に見立てた不織布に処理、乾燥させ、有害節足動物防除性能を付与した機能性不織布を得た。同様に、実施例6の有害節足動物防除組成物を、スチレン-ブタジエン系ラテックスエマルションに添加、混合し、有効成分であるフェノトリンとして0.25g/m2となるように、カーマットの基布に見立てた不織布に処理、乾燥させ、有害節足動物防除性能を付与した機能性不織布を得た。
【0050】
上記で得られた各機能性不織布を直径40mmの円形にカットし、それぞれ直径40mmのガラスシャーレ(小)に敷き、そのガラスシャーレ(小)を、ヤケヒョウヒダニ(Dermatophagoides pteronyssinus)約20000頭を含む培地をなるべく均一に入れた直径90mmのガラスシャーレ(大)の中央に設置し、相対湿度70~80%に調整した密閉容器に入れ、ガラスシャーレ(小)の中央に誘引用の飼料約0.05gを撒き、24時間後にガラスシャーレ(小)に誘引されたダニ数を計数し、次式によりダニ忌避率を算出した。なお、有効成分が処理されていない不織布として、スチレン-ブタジエン系ラテックスエマルションのみを塗布、乾燥した不織布をブランク不織布として同様に試験に供した。
【0051】
ダニ忌避率(%)={(A-B)/A}×100
ここで、Aは有効成分が含まれていないブランク不織布に誘引されたダニ数、Bは各機能性不織布に誘引されたダニ数である。
【0052】
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の有害節足動物防除組成物は、有害節足動物に対して優れた防除効果を有しており、カーマットやカーシートのバッキング剤などに特に好適に使用できる。