(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】有機無機複合材料
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20221018BHJP
C08K 9/00 20060101ALI20221018BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20221018BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20221018BHJP
C08G 64/04 20060101ALN20221018BHJP
【FI】
C08L69/00
C08K9/00
C08K3/22
C08K3/36
C08G64/04
(21)【出願番号】P 2018230139
(22)【出願日】2018-12-07
【審査請求日】2021-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】304036754
【氏名又は名称】国立大学法人山形大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【氏名又は名称】塩川 和哉
(72)【発明者】
【氏名】中▲崎▼ 智大
(72)【発明者】
【氏名】山中 克浩
(72)【発明者】
【氏名】太田 耀寛
(72)【発明者】
【氏名】川口 正剛
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-219818(JP,A)
【文献】特開2018-138626(JP,A)
【文献】特開2010-235658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 69/00
C08K 9/00
C08K 3/22
C08K 3/36
C08G 64/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される構造単位を含むポリカーボネート樹脂に、表面修飾剤により修飾されている無機微粒子が分散した有機無機複合材料
であって、
前記表面修飾剤が、スルホン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基およびカルボン酸基からなる群より選ばれる少なくとも1つの酸性官能基を有する、
有機無機複合材料。
【化1】
(式(1)において、R
1およびR
2はそれぞれ独立しても同一であってもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基およびシアノ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を表し、aおよびbはそれぞれ1~4の整数であり、Wは下記式(2)で表される結合基からなる群より選ばれる少なくとも1つの結合基である。
【化2】
(式(2)において、R
3は水素原子、アルキル基、アリール基およびアラルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を表し、R
4は単結合、アルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基およびエステル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を表す)
【請求項2】
式(1)で表される構造単位のモル比が、全カーボネート繰り返し単位100モル%に対して、0.5モル%以上20モル%以下である、請求項1に記載の有機無機複合材料。
【請求項3】
表面修飾剤の含有量が、無機微粒子に対して1~30重量%である請求項1
又は2に記載の有機無機複合材料。
【請求項4】
無機微粒子の平均粒子径が1~20nmである請求項1~
3のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
【請求項5】
無機微粒子の含有量が、ポリカーボネート樹脂に対して1~95重量%である請求項1~
4のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
【請求項6】
無機微粒子が、ZrO
2(酸化ジルコニウム)、TiO
2(酸化チタン)、SnO
2(酸化スズ)、SiO
2(酸化ケイ素)、またはAl
2O
3(酸化アルミニウム)である請求項1~
5のいずれか一項に記載の有機無機複合材料。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一項に記載の有機無機複合材料を用いて得られる成形品、フィルムまたはシート。
【請求項8】
請求項1~
6のいずれか一項に記載の有機無機複合材料の製造方法であって、前記式(1)で表される構造単位をもたらすジオール化合物と、カーボネート前駆物質とを反応させて前記ポリカーボネート樹脂を得ること、及び前記表面修飾剤により修飾されている無機微粒子を前記ポリカーボネート樹脂に分散させることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機微粒子がポリカーボネート樹脂中に均一に分散した有機無機複合材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学材料の開発が盛んに行われており、光学レンズ材料の分野においては、高屈折率、高アッベ数、耐熱性、透明性に優れた材料が求められている。従来用いられていたガラスは要求される様々な光学特性を実現することが可能であると共に、環境耐性に優れているが、加工性が悪いという問題があった。これに対し、ガラス材料に比べて安価であると共に加工性に優れる樹脂が光学部品に用いられてきている。しかし、樹脂はガラスに比べて一般的に屈折率が低いため、光学部品を薄肉化するには素材自体を高屈折率化することが求められている。
【0003】
高屈折率化する方法として、ポリマーの分子構造を設計して電子密度を向上させる方法が一般的に用いられている。また、他の方法として、酸化チタン、酸化ジルコニウム等の無機酸化物の微粒子を樹脂に均一分散させる方法が知られている。
【0004】
しかしながら、微粒子は、粒子表面エネルギーが大きいため、マトリクス樹脂に均一に分散させることは困難であり、これまで様々な検討がなされている。
【0005】
微粒子を樹脂に均一に分散させる手法として、粒子表面を表面修飾剤で化学修飾する手法がある。特定の化学構造で修飾した粒子と樹脂とを混合しマスターバッチを作製し、その後、当該熱可塑性樹脂とを溶融混錬し、透明な樹脂組成物を得る方法が公開されているが、無機粒子の含有量が少なく、高屈折率化の点から十分なものでないという課題を有する(特許文献1)。
【0006】
別の方法として、反応性の表面修飾剤を修飾した微粒子とモノマーとを混合した後、重合することで、微粒子とマトリクス樹脂と一体化する手法がある。(特許文献2、非特許文献1、2)しかし、マトリクス樹脂に応じて、適切な表面修飾剤を選択する必要があるという問題がある。
【0007】
その他の方法として、官能基を有するポリマーを用いる手法が公開されている。(特許文献3、4、非特許文献3)。しかし、この手法は、重合したポリマーを後工程にて変性させる必要があり、製造に手間がかかるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2011-38012号公報
【文献】特開2014-221866号公報
【文献】特開2002-177757号公報
【文献】特開2006-307199号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】“Macromolecules”,2017年,第50巻,p.9713~9725.
【文献】“ACS Appl. Mater. Interfaces”,2018年,第10巻,p.13985~13998.
【文献】“European Polymer Journal”, 2009年,第45巻,p.630~638.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ポリカーボネート樹脂を高屈折率化するために、ポリマーの分子構造を設計して電子密度を向上させる方法が一般的に用いられているものの、微粒子を樹脂に均一分散させて高屈折率化する方法は、実用上はほぼ用いられていない。これは、上述のように微粒子が均一に分散した樹脂組成物を得ることが難しいことに加えて、そのような樹脂組成物が得られたとしても、その樹脂組成物を成形した場合には、微粒子の分散状態が変化して、微粒子が凝集する場合があったことに起因する。
【0011】
そこで、本発明の目的は、成形後であっても光学樹脂として実用上利用可能な、無機微粒子がポリカーボネート樹脂中に均一に分散した有機無機複合材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、ポリカーボネート樹脂中に特定の構造単位を含有することにより、無機微粒子との分散性が大幅に改善できることを究明し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明によれば、発明の課題は、下記により達成される。
1.下記式(1)で表される構造単位を含むポリカーボネート樹脂に、表面修飾剤により修飾されている無機微粒子が分散した有機無機複合材料。
【化1】
(式(1)において、R
1およびR
2はそれぞれ独立しても同一であってもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基およびシアノ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を表し、aおよびbはそれぞれ1~4の整数であり、Wは下記式(2)で表される結合基からなる群より選ばれる少なくとも1つの結合基である。
【化2】
(式(2)において、R
3は水素原子、アルキル基、アリール基およびアラルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を表し、R
4は単結合、アルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基およびエステル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を表す)
2.式(1)で表される構造単位のモル比が、全カーボネート繰り返し単位100モル%に対して、0.5モル%以上20モル%以下である、前項1に記載の有機無機複合材料。
3.表面修飾剤が、酸性官能基を有する前項1または2に記載の有機無機複合材料。
4.酸性官能基が、スルホン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基およびカルボン酸基からなる群より選ばれる少なくとも1つの酸性官能基である前項3に記載の有機無機複合材料。
5.表面修飾剤の含有量が、無機微粒子に対して1~30重量%である前項1~4のいずれかに記載の有機無機複合材料。
6.無機微粒子の平均粒子径が1~20nmである前項1~5のいずれかに記載の有機無機複合材料。
7.無機微粒子の含有量が、ポリカーボネート樹脂に対して1~95重量%である前項1~6のいずれかに記載の有機無機複合材料。
8.無機微粒子が、ZrO
2(酸化ジルコニウム)、TiO
2(酸化チタン)、SnO
2(酸化スズ)、SiO
2(酸化ケイ素)、またはAl
2O
3(酸化アルミニウム)である前項1~7のいずれかに記載の有機無機複合材料。
9.前項1~8のいずれかに記載の有機無機複合材料を用いて得られる成形品、フィルムまたはシート。
10.前項1~9のいずれかに記載の有機無機複合材料の製造方法であって、前記式(1)で表される構造単位をもたらすジオール化合物と、カーボネート前駆物質とを反応させて前記ポリカーボネート樹脂を得ること、及び前記表面修飾剤により修飾されている無機微粒子を前記ポリカーボネート樹脂に分散させることを含む、方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、特定の構造単位を有するポリカーボネート樹脂を用いることで、無機微粒子の表面修飾剤の構造に依存することなく、無機微粒子をポリカーボネート樹脂に均一分散させた有機無機複合材料を提供することができる。また、本発明によれば、特定の構造単位を有するポリカーボネート樹脂を用いることで、後工程を簡略化でき、生産性良く、有機無機複合材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1の写真は、実施例17で製造された有機無機複合材料の外観を示す。
【
図2】
図2の写真は、比較例7で製造された有機無機複合材料の外観を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
《有機無機複合材料》
〈ポリカーボネート樹脂〉
本発明で用いるポリカーボネート樹脂は、下記式(1)で表される構造単位を有することを特徴とし、樹脂中の全カーボネート繰り返し単位100モル%に対して、前記式(1)で表される構造単位のモル比は、好ましくは0.1~20モル%、より好ましくは0.5~20モル%、さらに好ましくは1~20モル%である。0.1モル%以上であれば無機微粒子との分散性向上効果を発現しやすく、20モル%以下であれば流動性を維持しやすく好ましい。モル比は、日本電子社製JNM-AL400のプロトンNMRにて測定して算出することができる。
【0017】
【0018】
(式(1)において、R1およびR2はそれぞれ独立しても同一であってもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、アルケニル基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基、ニトロ基、アルデヒド基およびシアノ基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を表し、aおよびbはそれぞれ1~4の整数であり、Wは下記式(2)で表される結合基からなる群より選ばれる少なくとも1つの結合基である。
【0019】
【0020】
(式(2)において、R3は水素原子、アルキル基、アリール基およびアラルキル基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を表し、R4は単結合、アルキレン基、アリーレン基、およびアラルキレン基からなる群から選ばれる少なくとも1つの基を表す)
(式(1)および式(2)について)
【0021】
本発明者らは、ポリカーボネート樹脂にカルボン酸基を導入することによって、表面修飾した無機微粒子をマトリクス中に分散でき、樹脂の透明性等を維持しながら、その材料の屈折率を向上できることを見出した。
【0022】
前記式(1)および式(2)で表される、カルボキシル基を有するジオール化合物において、好ましくは、式(1)中のR1およびR2は、それぞれ独立しても同一であってもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~20のシクロアルキル基、炭素数6~20のシクロアルコキシ基、炭素数1~10のアルケニル基、炭素数6~10のアリール基、炭素数6~10のアリールオキシ基、炭素数7~20のアラルキル基、または炭素数7~20のアラルキルオキシ基である。より好ましくは、R1およびR2は、それぞれ独立しても同一であってもよく、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数6~20のシクロアルキル基、または炭素原子数6~10のアリール基である。
【0023】
また、好ましくは、式(1)中のaおよびbはそれぞれ1~2の整数であり、より好ましくは、aおよびbはそれぞれ1の整数である。
【0024】
好ましくは、式(2)中のR3は、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、または炭素数7~20のアラルキル基であり、より好ましくは、水素原子、炭素原子数1~6のアルキル基、炭素原子数6~10のアリール基、または炭素数7~12のアラルキル基である。
【0025】
好ましくは、式(2)中のR4は、単結合、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数6~10のアリーレン基、または炭素数7~20のアラルキレン基であり、より好ましくは、単結合、炭素数1~6のアルキレン基、炭素数6~10のアリーレン基、または炭素数7~12のアラルキレン基である。
【0026】
式(2)中のR4は、特に好ましく炭素数1~6のアルキレン基である。ポリカーボネート樹脂にカルボン酸基を導入すると、通常は、ポリカーボネート樹脂の加水分解耐性が低下する傾向にあり、これは光学用の樹脂として問題となる場合がある。それに対して、アルキレン基に結合しているカルボン酸基は、特に芳香族基に直接結合しているカルボン酸基等と比較して、酸性度が低いため、そのポリカーボネート樹脂の加水分解耐性が実質的には低下しない。そのため、そのようなポリカーボネート樹脂を用いた有機無機複合材料は、実用上、非常に有利である。ポリカーボネート樹脂にカルボン酸基を比較的多く導入することによって、無機微粒子の分散性をさらに高めることが可能になるが、それと引き換えに、複合材料の他の物性が低下する場合があるため、加水分解耐性を低下させない位置にカルボン酸基を導入することは非常に有利である。
【0027】
前記式(1)および(2)で表される、カルボキシル基を有するジオール化合物を例示すると、2,2’ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン酸(通常“ジフェノール酸”と称される)、4-(2-ヒドロキシフェニル)-4-(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン酸等が挙げられる。上記の中でも、安価に入手可能であるジフェノール酸が特に好ましい。これらは単独で使用してもよく、または二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0028】
(その他の単位)
一般式(1)以外のその他の単位としては、各種ジオール化合物が挙げられる。かかるジオール化合物としては、芳香族ジオール化合物、脂肪族ジオール化合物、脂環式ジオール化合物のいずれでも良く、国際公開第2004/111106号パンフレット、国際公開第2011/021720号パンフレットに記載のジオール化合物やジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのオキシアルキレングリコール類が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、または二種以上組み合わせて用いてもよい。以下にジオール成分の代表的具体例を示すが、本発明のその他の成分は、それらによって限定されるものではない。
【0029】
芳香族ジオール化合物としては、具体的には4,4’-ビフェノール、3,3’,5,5’-テトラフルオロ-4,4’-ビフェノール、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-o-ジイソプロピルベンゼン、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-m-ジイソプロピルベンゼン(通常“ビスフェノールM”と称される)、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-m-ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-イソプロピルシクロヘキサン、1,1-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)パーフルオロシクロヘキサン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエ-テル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルエ-テル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’-ジメチル-4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’-ジメチル-4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフォン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジフェニルスルホン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(通常“ビスフェノールA”と称される)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン(通常“ビスフェノールC”と称される)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシー3-フェニルフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-イソプロピル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、1,1-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)デカン、1,1-ビス(2,3-ジメチルー4-ヒドロキシフェニル)デカン、2,2-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-イソプロピルシクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン(通常“ビスフェノールAF”と称される)、6,6’-ジヒドロキシ-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン、7,7’-ジメチル-6,6’-ジヒドロキシ-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン、7,7’-ジフェニル-6,6’-ジヒドロキシ-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3-フルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、および2,2-ビス(3,5-ジフルオロ-4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(3,5-ジブロモー4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジクロロー4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチルー4-ヒドロキシフェニル)プロパン、および2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンなどが挙げられる。
【0030】
上記の中でも、ビスフェノールM、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、ビスフェノールA、ビスフェノールC、ビスフェノールAF、6,6’-ジヒドロキシ-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダンおよび1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカンが好ましい。さらには、安価に入手可能であるビスフェノールAが特に好ましい。
【0031】
脂肪族ジオール化合物としては、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1.9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサングリコール、1,2-オクチルグリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,3-ジイソブチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジイソアミル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオールなどが挙げられる。
【0032】
脂環式ジオール化合物としては、シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、アダマンタンジオール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、イソソルビド(1,4;3,6ージアンヒドローDーソルビトール)などが挙げられる。
【0033】
(ポリカーボネート樹脂の製造方法)
本発明で用いられるポリカーボネート樹脂は、通常のポリカーボネート樹脂を製造するそれ自体公知の反応手段、例えば上記のようなジオール成分に炭酸ジエステルなどのカーボネート前駆物質を反応させる方法により製造される。ジオール成分と、カーボネート前駆物質とを反応させてポリカーボネート樹脂を得る工程について、基本的な手段を簡単に説明する。
【0034】
カーボネート前駆物質として炭酸ジエステルを用いるエステル交換反応は、不活性ガス雰囲気下所定割合のジオール成分を炭酸ジエステルと加熱しながら撹拌して、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点などにより異なるが、通常120~300℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応を完結させる。また、必要に応じて末端停止剤、酸化防止剤等を加えてもよい。
【0035】
前記エステル交換反応に使用される炭酸ジエステルとしては、置換されてもよい炭素数6~12のアリール基、アラルキル基等のエステルが挙げられる。具体的には、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネートおよびm-クレジルカーボネート等が例示される。なかでもジフェニルカーボネートが特に好ましい。ジフェニルカーボネートの使用量は、ジヒドロキシ化合物の合計1モルに対して、好ましくは0.97~1.10モル、より好ましくは1.00~1.06モルである。
【0036】
また溶融重合法においては重合速度を速めるために、重合触媒を用いることができ、かかる重合触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、含窒素化合物、金属化合物等が挙げられる。
【0037】
このような化合物としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の、有機酸塩、無機塩、酸化物、水酸化物、水素化物、アルコキシド、4級アンモニウムヒドロキシド等が好ましく用いられ、これらの化合物は単独もしくは組み合わせて用いることができる。
【0038】
アルカリ金属化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸セシウム、酢酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸セシウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸セシウム、安息香酸リチウム、リン酸水素2ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸水素2リチウム、フェニルリン酸2ナトリウム、ビスフェノールAの2ナトリウム塩、2カリウム塩、2セシウム塩、2リチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、セシウム塩、リチウム塩等が例示される。
【0039】
アルカリ土類金属化合物としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、二酢酸マグネシウム、二酢酸カルシウム、二酢酸ストロンチウム、二酢酸バリウム、ステアリン酸バリウム等が例示される。
【0040】
含窒素化合物としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド等のアルキル、アリール基等を有する4級アンモニウムヒドロキシド類が挙げられる。また、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、トリフェニルアミン等の3級アミン類、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、ベンゾイミダゾール等のイミダゾール類が挙げられる。また、アンモニア、テトラメチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルアンモニウムテトラフェニルボレート等の塩基あるいは塩基性塩等が例示される。
金属化合物としては亜鉛アルミニウム化合物、ゲルマニウム化合物、有機スズ化合物、アンチモン化合物、マンガン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物等が例示される。これらの化合物は1種または2種以上併用してもよい。
【0041】
これらの重合触媒の使用量は、ジオール成分1モルに対し好ましくは1×10-9~1×10-2当量、好ましくは1×10-8~1×10-5当量、より好ましくは1×10-7~1×10-3当量の範囲で選ばれる。
【0042】
また、反応後期に触媒失活剤を添加することもできる。使用する触媒失活剤としては、公知の触媒失活剤が有効に使用されるが、この中でもスルホン酸のアンモニウム塩、ホスホニウム塩が好ましい。更にドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩等のドデシルベンゼンスルホン酸の塩類、パラトルエンスルホン酸テトラブチルアンモニウム塩等のパラトルエンスルホン酸の塩類が好ましい。
【0043】
またスルホン酸のエステルとして、ベンゼンスルホン酸メチル、ベンゼンスルホン酸エチル、ベンゼンスルホン酸ブチル、ベンゼンスルホン酸オクチル、ベンゼンスルホン酸フェニル、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル、パラトルエンスルホン酸ブチル、パラトルエンスルホン酸オクチル、パラトルエンスルホン酸フェニル等が好ましく用いられる。なかでも、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩が最も好ましく使用される。
【0044】
これらの触媒失活剤の使用量はアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物より選ばれた少なくとも1種の重合触媒を用いた場合、その触媒1モル当たり好ましくは0.5~50モルの割合で、より好ましくは0.5~10モルの割合で、更に好ましくは0.8~5モルの割合で使用することができる。
【0045】
(添加剤)
本発明で用いられるポリカーボネート樹脂には、必要に応じて、離型剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、ブルーイング剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、充填剤などの添加剤を適宜添加して用いることができる。
【0046】
離型剤としては、その90重量%以上がアルコールと脂肪酸のエステルからなるものが好ましい。アルコールと脂肪酸のエステルとしては、具体的には一価アルコールと脂肪酸のエステルおよび/または多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルが挙げられる。前記一価アルコールと脂肪酸のエステルとは、炭素原子数1~20の一価アルコールと炭素原子数10~30の飽和脂肪酸とのエステルが好ましい。また、多価アルコールと脂肪酸との部分エステルあるいは全エステルとは、炭素原子数1~25の多価アルコールと炭素原子数10~30の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルが好ましい。具体的に一価アルコールと飽和脂肪酸とエステルとしては、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート等があげられ、ステアリルステアレートが好ましい。
【0047】
具体的に多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ジグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート、プロピレングリコールモノステアレート、ビフェニルビフェネ-ト、ソルビタンモノステアレート、2-エチルヘキシルステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート等のジペンタエリスルトールの全エステルまたは部分エステル等が挙げられる。これらのエステルのなかでも、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸ト
リグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ステアリン酸トリグリセリドとステアリルステアレートの混合物が好ましく用いられる。
【0048】
離型剤中の前記エステルの量は、離型剤を100重量%とした時、90重量%以上が好ましく、95重量%以上がより好ましい。
【0049】
離型剤の含有量としては、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.005~2.0重量部の範囲が好ましく、0.01~0.6重量部の範囲がより好ましく、0.02~0.5重量部の範囲がさらに好ましい。
【0050】
熱安定剤としては、リン系熱安定剤、硫黄系熱安定剤およびヒンダードフェノール系熱安定剤が挙げられる。
【0051】
リン系熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステル等が挙げられる。具体的には、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェート、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピル、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイトおよびビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイト等が挙げられる。
なかでも、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4-フェニル-フェニルホスホナイトおよびビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3-フェニル-フェニルホスホナイトが好ましく使用される。特に好ましくはトリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイトが使用される。
【0052】
リン系熱安定剤の含有量としては、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.001~0.2重量部が好ましい。
【0053】
硫黄系熱安定剤としては、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ミリスチルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ステアリルチオプロピオネート)、ジラウリル-3、3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3、3’-チオジプロピオネート、ジステアリル-3、3’-チオジプロピオネート等が挙げられる。なかでもペンタエリスリトール-テトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトール-テトラキス(3-ミリスチルチオプロピオネート)、ジラウリル-3、3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3、3’-チオジプロピオネートが好ましい。特に好ましくはペンタエリスリトール-テトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)である。
【0054】
硫黄系熱安定剤の含有量としては、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.001~0.2重量部が好ましい。
【0055】
ヒンダードフェノール系熱安定剤としては、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-tert-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマイド)、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルホスホネート-ジエチルエステル、トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレートおよび3,9-ビス{1,1-ジメチル-2-[β-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどが挙げられる。なかでも、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]が特に好ましく用いられる。
【0056】
ヒンダードフェノール系熱安定剤の含有量としては、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.001~0.3重量部が好ましい。
【0057】
リン系熱安定剤とヒンダードフェノール系熱安定剤は、併用することもできる。
【0058】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、環状イミノエステル系紫外線吸収剤およびシアノアクリレート系からなる群より選ばれた少なくとも1種の紫外線吸収剤が好ましい。
【0059】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤において、より好ましくは、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ-ル、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]である。
【0060】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2-ヒドロキシ-4-n-ドデシルオキシベンソフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-2’-カルボキシベンゾフェノンが挙げられる。
【0061】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール、2-(4,6-ビス(2.4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(オクチル)オキシ]-フェノール等が挙げられる。
【0062】
環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては、特に2,2’-p-フェニレンビス(3,1-ベンゾオキサジン-4-オン)が好適である。
【0063】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、1,3-ビス-[(2’-シアノ-3’,3’-ジフェニルアクリロイル)オキシ]-2,2-ビス[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]メチル)プロパン、および1,3-ビス-[(2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリロイル)オキシ]ベンゼン等が挙げられる。
【0064】
紫外線吸収剤の配合量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して好ましくは0.01~3.0重量部であり、かかる配合量の範囲であれば、用途に応じ、熱可塑性樹脂成形品に十分な耐候性を付与することが可能である。
【0065】
ブルーイング剤としては、バイエル社のマクロレックスバイオレットBおよびマクロレックスブルーRR並びにクラリアント社のポリシンスレンブル-RLS等が挙げられる。ブルーイング剤は、熱可塑性樹脂の黄色味を消すために有効である。特に耐候性を付与した熱可塑性樹脂組成物の場合は、一定量の紫外線吸収剤が配合されているため「紫外線吸収剤の作用や色」によって樹脂組成物が黄色味を帯びやすい現実があり、レンズに自然な透明感を付与するためにはブルーイング剤の配合は非常に有効である。
【0066】
ブルーイング剤の配合量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して好ましくは0.05~1.5ppmであり、より好ましくは0.1~1.2ppmである。
【0067】
(比粘度:ηSP)
ポリカーボネート樹脂の比粘度(ηSP)は、0.2~1.5が好ましい。比粘度が下限以上では強度等が向上し、上限以下では成形加工特性が優れる。より好ましくは、0.2以上1.2以下であり、さらに好ましくは、0.2以上1.0以下、特に好ましくは、0.2以上0.5以下である。なお、本発明の効果を損なわない範囲で他の樹脂と併用してよい。
【0068】
本発明でいう比粘度は、20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求めた。
比粘度(ηSP)=(t-t0)/t0
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
【0069】
なお、具体的な比粘度の測定としては、例えば次の要領で行うことができる。まず、ポリカーボネート樹脂をその20~30倍重量の塩化メチレンに溶解し、可溶分をセライト濾過により採取した後、溶液を除去して十分に乾燥し、塩化メチレン可溶分の固体を得る。かかる固体0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から20℃における比粘度を、オストワルド粘度計を用いて求める。
【0070】
(分子量)
製造可能であるという観点から、本発明のポリカーボネート樹脂の個数平均分子量(Mn)は、5,000以上、8,000以上、10,000以上、15,000以上、又は20,000以上であってもよく、100,000以下、80,000以下、50,000以下、30,000以下、又は20,000以下であってもよい。例えば、Mnの範囲は、5,000以上100,000以下、又は10,000以上30,000以下の範囲である。
【0071】
同様に、本発明のポリカーボネート樹脂の重量平均分子量(Mw)は、8,000以上、10,000以上、15,000以上、20,000以上、又は30,000以上であってもよく、200,000以下、150,000以下、100,000以下、80,000以下、50,000以下、又は30,000以下であってもよい。例えば、Mwの範囲は、8,000以上200,000以下、又は10,000以上50,000以下の範囲である。
【0072】
本発明のポリカーボネート樹脂の分子量分布(Mw/Mn)は、2.0以上、2.25以上、2.5以上、3.0以上、4.0以上、又は5.0以上であってもよく、10.0以下、8.0以下、6.0以下、又は5.0以下であってもよい。例えば、Mw/Mnの範囲は、2.0以上10.0以下、又は3.0以上6.0以下の範囲であれば、製造が可能である。
【0073】
(ガラス転移温度:Tg)
ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは90~160℃、より好ましくは100~150℃である。Tgが上記範囲内であると、光学成形体として使用した際に、耐熱安定性及び成形性が良好であり好ましい。ガラス転移温度(Tg)はティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製2910型DSCを使用し、昇温速度20℃/minにて測定する。
【0074】
〈表面修飾無機微粒子〉
本発明で用いられる表面修飾剤により修飾されている無機微粒子は、その平均粒子径が好ましくは20nm以下のナノスケールの範囲にあり、酸性官能基を有する表面修飾剤で修飾されているものが好ましく使用できる。
【0075】
無機微粒子の種類としては、ZrO2(酸化ジルコニウム)、TiO2(酸化チタン)、SnO2(酸化スズ)、SiO2(酸化ケイ素)、Al2O3(酸化アルミニウム)等のものを例示することができる。中でも、本発明においては、光学部材、光学部品としての利用の観点からZrO2やTiO2が好ましく、ZrO2が特に好ましい。
【0076】
ここで、無機微粒子の平均粒子径は、動的光散乱測定(DLS)にて実施した。無機微粒子の平均粒子径が1~20nmの範囲が好ましく、その理由は、粒子径が1nm未満では、結晶性が乏しくなり、屈折率などの粒子特性を発現することが難しくなり、一方、平均粒子径が20nmを超えると、分散液や樹脂複合体とした場合に透明性が低下するからである。
【0077】
本発明での無機微粒子の表面修飾剤は、複合化するポリカーボネート樹脂などに対し、無機微粒子の分散性を確保できれば特に制限はないけれども、スルホン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、カルボン酸基のいずれかの酸性官能基を有することが分散性や屈折率向上効果に優れるため好ましい。以下に表面修飾剤の代表的具体例を示すが、本発明の表面修飾剤は、それらによって限定されるものではない。それらは単一で用いられても良く、また、複数種のものを混合して用いてもよい。特に、表面修飾処理後の無機微粒子を樹脂の分散する際に、樹脂の種類に応じて、当該樹脂との親和性を向上しやすい表面修飾剤を適宜選択して用いることが望ましい。
【0078】
スルホン酸としては、ブタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、ドデカンスルホン酸等のアルキルスルホン酸やベンゼンスルホン酸、メチルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等のアリールスルホン酸が挙げられる。中でも、樹脂への分散性、および屈折率向上効果を鑑みて、アリールスルホン酸が好ましい。
【0079】
ホスホン酸としては、プロパンホスホン酸等のアルキルホスホン酸、ベンゼンホスホン酸等のアリールホスホン酸が挙げられる。中でも、樹脂への分散性、および屈折率向上効果を鑑みて、アリールホスホン酸が好ましい。
【0080】
ホスフィン酸としては、ジメチルホスフィン酸、ジエチルホスフィン酸、ジ(2-エチルへキシル)ホスフィン酸等のアルキルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸等のアリールホスフィン酸が挙げられる。また、ホスフィン酸基を構成する酸素原子を硫黄原子で置換したチオホスフィン酸、ジチオホスフィン酸を用いることで、ホスフィン酸を用いる場合より屈折率の高い無機微粒子を得ることができる。中でも、樹脂への分散性、および屈折率向上効果を鑑みて、アリールホスフィン酸が好ましく、フェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸がさらに好ましく、ジフェニルホスフィン酸が特に好ましい。
【0081】
カルボン酸としては、ブタン酸、イソブタン酸、メタクリル酸、ヘキサン酸、オクタン酸、オレイン酸、リノール酸、ラウリル酸等のアルキルカルボン酸や、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、フェノキシ安息香酸等のアリールカルボン酸が挙げられる。また、カルボン酸のカルボキシル基を構成する酸素原子を硫黄原子で置換したチオカルボン酸、ジチオカルボン酸を用いることで、カルボン酸を用いる場合より屈折率の高い無機微粒子を得ることができる。中でも、樹脂への分散性、および屈折率向上効果を鑑みて、アリールカルボン酸が好ましく、オルトまたはメタまたはパラ位にフェノキシ基を有するフェノキシ安息香酸がさらに好ましく、パラフェノキシ安息香酸が特に好ましい。
【0082】
本発明における無機微粒子の表面修飾は、例えば以下のような工程により行われる。すなわち、平均粒子径20nm程度以下の親水性の無機微粒子が分散した透明の水分散液、およびメタノールの混合液に、酸性官能基を有する表面修飾剤を添加し、その後、水とメタノールを共沸により除去して、トルエンやジクロロメタンに溶媒置換することで表面修飾無機微粒子が分散した、トルエン分散液あるいはジクロロメタン分散液を調整できる。その後、溶媒留去することで表面修飾無機微粒子の白色粉末が得られる。
【0083】
表面修飾剤で修飾された無機微粒子における、表面修飾剤の含有量は、樹脂への分散性、および屈折率向上効果を鑑みて、無機微粒子に対して1~30重量%であることが好ましく、3~25重量%であることがより好ましく、5~20重量%であることが特に好ましい。樹脂複合体への分散性の観点からは、表面修飾剤の含有率は高いほど良く、屈折率の向上効果の観点からは、表面修飾剤の含有率は低いほど良い。表面修飾剤の含有率は、分散性および屈折率に応じて適宜調整することが望ましい。
【0084】
〈物性〉
(屈折率)
本発明の有機無機複合材料の25℃で測定した波長589nmの屈折率(以下nDと略すことがある)は、1.500~1.800であることが好ましい。屈折率が下限以上の場合、レンズの球面収差を低減でき、さらにレンズの焦点距離を短くすることができる。
【0085】
(透過率)
本発明の有機無機複合材料は透過率が高いことが好ましい。100μm厚の成形体のD線透過率70%以上であることが好ましく、D線透過率80%以上であることがより好ましい。かかる特性を満足することで光学レンズ用途や光学フィルム用途に好適に用いることができる。
【0086】
《有機無機複合材料の製造方法》
本発明の有機無機複合材料の製造方法は、式(1)で表される構造単位をもたらすジオール成分と、カーボネート前駆物質とを反応させてポリカーボネート樹脂を得ること、及び表面修飾剤で表面修飾された無機微粒子をそのポリカーボネート樹脂に分散させることを含む。このような方法は、重合したポリマーを後工程において変性させて、そのポリマーにカルボン酸基を導入する方法よりも、非常に簡易であるため好ましい。
【0087】
ポリカーボネート樹脂を得る工程については、ポリカーボネート樹脂の製造方法に関して上述したとおりである。
【0088】
無機微粒子をそのポリカーボネート樹脂に分散させる工程については、特に限定されるものではない。具体的には、ポリカーボネート樹脂溶液と、無機微粒子分散液を混合する方法、ポリカーボネート樹脂紛体と無機微粒子紛体を溶融混合する方法等を挙げることができ、これらのいずれの方法で作製してもよい。
【0089】
例えば、ポリカーボネート樹脂溶液と無機微粒子分散液を混合する方法では、ポリカーボネート樹脂溶液と、無機微粒子分散液を一気に混合してもよいし、ポリカーボネート樹脂溶液を、無機微粒子分散液に徐々に滴下し混合してもよい。また、可塑剤を存在させてもよく、このような可塑剤は樹脂溶液や無機微粒子分散液に予め添加しておいてもよいし、樹脂溶液と無機微粒子分散液の混合時に添加してもよい。
【0090】
本発明の有機無機複合材料における、無機微粒子の含有量は、好ましくは1~95重量%であり、より好ましくは1~65重量%であり、さらに好ましくは1~40重量%であり、特に好ましくは1~35重量%であり、もっとも好ましくは5~30重量%又は10~30重量%である。表面修飾無機微粒子が1重量%未満の場合は、無機微粒子を含有する効果が得られにくく、95重量%を超えると有機無機複合体の強度が低くなるためである。
【0091】
(成形方法)
本発明における有機無機複合材料の成形方法としては、射出成形、押出成形、圧縮成形、溶液キャスト法等、一般のポリカーボネート樹脂の成形法を採用することができる。有機無機複合材料の流動性の観点から、本発明では、圧縮成形およびキャスト成形することが好ましい。本発明の有機無機複合材料は、透明性、高屈折率に優れているので種々の成形体として利用することができる。殊に光学レンズ、光学ディスク、液晶パネル、光カード、シート、フィルム、光ファイバー、コネクター、蒸着プラスチック反射鏡、ディスプレイなどの光学部品の構造材料、パソコンや携帯電話の外装や前面板などの電気電子部品、自動車のヘッドランプや窓などの自動車用途、または機能材料用途に適した成形体として有利に使用することができ、特に光学レンズや光学フィルムに好適である。
【実施例】
【0092】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例中「部」とは「重量部」を意味する。実施例において使用したポリカーボネート樹脂、無機微粒子および各評価方法は以下のとおりである。
【0093】
(評価方法)
1.ポリマー組成比(NMR)
日本電子社製JNM-AL400のプロトンNMRにて各繰り返し単位を測定し、ポリマー組成比(モル比)を算出した。
【0094】
2.比粘度
20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求めた。
比粘度(ηSP)=(t-t0)/t0
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
【0095】
3.ガラス転移温度(Tg)
試料8mgを用いてティー・エイ・インスツルメント(株)製の熱分析システム DSC-2910を使用して、JIS K7121に準拠して窒素雰囲気下(窒素流量:40ml/min)、昇温速度:20℃/minの条件下で測定した。
【0096】
4.透過率
フィルムを日立製作所(株)製分光光度計U-3310を用いて測定した。
【0097】
5.屈折率
フィルムをATAGO製DR-M2アッベ屈折計を用いて、25℃における屈折率(波長:589nm)を測定した。
【0098】
6.透明性
目視により、白濁がない場合を透明性〇、白濁がある場合を透明性×として評価した。
【0099】
7.平均粒子径
表面修飾無機微粒子のジクロロメタン分散液を、動的光散乱測定(DLS)した値である。
【0100】
(ポリカーボネート樹脂)
PC1の製造方法:
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下BPA)50.0部、ジフェノール酸(以下BPAcid)0.6部、ジフェニルカーボネート(以下DPC)49.3部および触媒として、水酸化ナトリウム1.3×10-5部とテトラメチルアンモニウムヒドロキシド2.0×10-3部を、窒素雰囲気下200℃で加熱し溶融させた。その後、20分かけて220℃へ昇温し、減圧度を13.7kPaに調整した。その後、さらに40分かけて260℃へ昇温し、減圧度を1kPaに調整した。10分間その温度で保持した後、減圧度を133Pa以下とした。反応終了後、反応槽の底より窒素加圧下吐出し、水槽で冷却しながら、ペレタイザーでカットしてペレットを得た(PC1)。得られたペレットについて各種評価を行った。評価結果を表1に記載した。
【0101】
PC2 の製造方法:
BPA47.8部、BPAcid3.2部、DPC49.1部を原料として用いた他は、PC1の製造方法と同様の操作を行い、同様の評価を行った。その結果を表1に記載した。
【0102】
PC3の製造方法:
BPA50.6部、DPC49.4部を原料として用いた他は、実施例1と全く同様の操作を行い、同様の評価を行った。その結果を表1に記載した。
【0103】
(ジルコニア微粒子の表面修飾)
スターラーチップをセットした100mLナスフラスコに、ZrO2に対し10~30重量%に相当する量の表面修飾剤をとり、メタノール10gおよびトルエン15gに溶解させた溶液に、ZrO2水分散液(堺化学工業製:SZR-W、メジアン径:3nm)を滴下し混合した。混合液を1時間室温で撹拌した後、ロータリーエバポレーターにより3~5mL程度になるまで溶媒を留去した。留去は液相内で突沸が生じない程度の圧力に減圧することにより行った。
【0104】
その混合液に、さらにメタノール10g、トルエン15gを加えて再び界面がない透明な分散液とし、再度3~5mL程度になるまで溶媒を留去した。この操作を数回重ねることにより、水/メタノール/トルエン混合溶媒からジクロロメタンのみの溶媒に置換してZrO2微粒子のジクロロメタン分散液を得た。さらに、このジクロロメタン分散液を室温で24時間真空乾燥させて、ジクロロメタンを除去し、表面修飾ZrO2の粉末を得た。結果を表2に示した。
【0105】
(有機無機複合材料の製造方法)
(実施例1~16、比較例1~4)
前記表面修飾ジルコニア微粒子のジクロロメタン分散液に、前記ポリカーボネート樹脂のジクロロメタン溶液を5分かけて滴下し、これを30分撹拌した。この分散液をガラスシャーレ上にキャストし、室温で十分に乾燥させた後、100℃以下の温度にて12時間乾燥して、厚さ約100μmのフィルムを作製した。製造したフィルムの各種評価を行い、その結果を表3に記載した。使用した表面修飾剤の種類と無機成分としての添加量は、表3に示す通りとした。
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
比較例1~4のように、一般式(1)を含まないビスフェノールA型のポリカーボネート樹脂を用いた場合には、透過率が低く、アッベ屈折率計での屈折率測定が行えなかった。
【0110】
(実施例17)
実施例14と同様に作製した、表面修飾ジルコニア微粒子とポリカーボネートのジクロロメタン分散液を、80℃4時間乾燥してジクロロメタンを除去し、有機無機複合体のフレークを得た。このフレークを、真空熱プレス装置(神藤金属工業所(株)製 圧縮成形機:SFV-10、真空ポンプユニット:GXD-360)でプレス成形し、厚さ約1mmの成形板を得た。プレス成形条件は、金型温度220℃、1次圧:1MPa(30秒)、2次圧:1.5MPa(5分)とした。
【0111】
【0112】
(比較例7)
ポリカーボネート樹脂としてPC3を用いた以外は、実施例17と同様の方法で、厚さ約1mmの成形板を得た。
【0113】
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の有機無機複合材料は、高屈折率、透過率に優れており、また、無機微粒子の含有量により屈折率等の特性を任意に調整することができる。このため、本発明を用いて得られる成形品、フィルム、およびシートは各種分野に利用可能である。