(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】連結印
(51)【国際特許分類】
B41K 1/04 20060101AFI20221018BHJP
B41K 1/02 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
B41K1/04 B
B41K1/02 B
B41K1/02 E
B41K1/02 F
(21)【出願番号】P 2019005895
(22)【出願日】2019-01-17
【審査請求日】2021-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390017891
【氏名又は名称】シヤチハタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】230117259
【氏名又は名称】綿貫 敬典
(72)【発明者】
【氏名】安江 明哲
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-240407(JP,A)
【文献】特開2011-235603(JP,A)
【文献】実開昭62-071288(JP,U)
【文献】特開2003-298251(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0067992(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102014001355(DE,A1)
【文献】中国特許出願公開第102267296(CN,A)
【文献】特開2005-280315(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105383195(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/083853(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41K 1/00-3/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印面を有する直方体形状の印判本体と、
印面と直交して向かい合う一対の面の表側の表面に突出して取り付けられた結合片と、この結合片を形成した面の裏側の表面に形成された係合溝を有し、
前記結合片と他の印判本体にある係合溝とを連結自在とした連結印であって、
前記結合片は、前記係合溝に係止可能な鉤状部と、前記印判本体の側面に設けられ前記鉤状部を摺動させる押圧片部と、この押圧片部を前記印判本体の側面に向けて弾発する弾発部材を備えていることを特徴とする連結印。
【請求項2】
結合片を連結解除するように摺動させた場合に、係合溝と鉤状部の背面部とが当接する部分のいずれか一方または、両方に印判本体を引き離すように作用する傾斜面が形成されている請求項1に記載の連結印。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結状態にある連結印を容易に分離することができる連結印に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数個の印を連結し、まとめて押印できるようにした連結印が知られている。これらの印は、印面と直交して向かい合う一対の面の表側の表面に形成された結合片と、この結合片を形成した面の裏側の表面に形成された係合溝を嵌合することによって印判本体同士を連結する構造となっている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
しかしながら、前記結合片と係合溝との嵌合力が強く、また嵌合状態が精密で二つの印の間に指を引っ掛ける隙間もないため、両手で二つの印引き離すには強い力が必要で容易に分離できなかった。特に、板状の薄い印判を連結したものでは、印判を持つ面積が小さくて指先に力が入りにくく、連結を解除するのが困難であるという問題があった。また、分離するためにペンチやドライバを準備するのも面倒であった。
【0004】
一方、特許文献2に示されるように、連結した印判本体同士を連結解除する解除機構を備えた連結印が提案されている。しかし、特許文献2に記載の解除機構は、ヒンジ部を有する押圧板を押圧部材により押し込んだときに、前記ヒンジ部が屈曲して突出する構造であるため、ヒンジ部の頂点が摩耗するおそれがあるという問題や、ヒンジ部の頂点の位置調整が不可能で設計変更が難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3686000号公報
【文献】特許第5602490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような従来の問題点を解決して、連結状態にある連結印を強い力を必要とせず、またペンチ等の他の道具を用いることなく容易に分離することができ、また摩耗等の発生もなく長期間安定して使用することができる連結印を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明の連結印は、印面を有する直方体形状の印判本体と、
印面と直交して向かい合う一対の面の表側の表面に突出して取り付けられた結合片と、この結合片を形成した面の裏側の表面に形成された係合溝を有し、
前記結合片と他の印判本体にある係合溝とを連結自在とした連結印であって、
前記結合片は、前記係合溝に係止可能な鉤状部と、前記印判本体の側面に設けられ前記鉤状部を摺動させる押圧片部と、この押圧片部を前記印判本体の側面に向けて弾発する弾発部材を備えていることを特徴とするものであり、これを請求項1に係る発明とする。
【0008】
好ましい実施形態によれば、結合片を連結解除するように摺動させた場合に、係合溝と鉤状部の背面部とが当接する部分のいずれか一方または、両方に印判本体を引き離すように作用する傾斜面が形成されているものが好ましく、これを請求項2に係る発明とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明では、印面を有する直方体形状の印判本体と、印面と直交して向かい合う一対の面の表側の表面に突出して取り付けられた結合片と、この結合片を形成した面の裏側の表面に形成された係合溝を有し、前記結合片と他の印判本体にある係合溝とを連結自在とした連結印であって、前記結合片は、前記係合溝に係止可能な鉤状部と、前記印判本体の側面に設けられ前記鉤状部を摺動させる押圧片部と、この押圧片部を前記印判本体の側面に向けて弾発する弾発部材を備えているものとしたので、前記結合片を中央側へ押し込めば鉤状部と係合溝の係止状態を解除でき、二つの印判本体を容易に分離することができる。
【0010】
また、請求項2に係る発明では、結合片を連結解除するように摺動させた場合に、係合溝と鉤状部の背面部とが当接する部分のいずれか一方または、両方に印判本体を引き離すように作用する傾斜面が形成されているものとしたので、前記結合片を中央側へ押し込むと同時に、鉤状部の背面部と当接している係合溝の傾斜面が押し上げられ、この結果、他の印判本体が上側へ自動的に引き離されて隙間が生じることとなり、二つの印判本体をより容易に分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図5】結合片を摺動させて押し込んだ状態を示す要部の拡大断面図である。
【
図6】(a)はその他の結合片の平面図、(b)は斜視図である。
【
図7】その他の結合片を取り付けた状態を示す断面図である。
【
図8】その他の実施の形態を示す要部の拡大断面図である。
【
図9】
図8で結合片を押し込んだ状態を示す要部の拡大断面図である。
【
図10】
図9で結合片を更に押し込んだ状態を示す要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態を示す。
図1は本発明の実施の形態を示す正面図、
図2は斜視図である。また、
図3は二つの印判を連結した状態を示す断面図、
図4は要部の拡大断面図であり、
図5は結合片を摺動させて押し込んだ状態を示す要部の拡大断面図である。更に、
図6~10は、その他の実施の形態を示す断面図等である。
【0013】
図において、1は直方体形状の印判本体、2は印判本体1の底面に位置する印面である。この印面2と直交して向かい合う一対の面の表側の表面1aには、結合片3が突出するように取り付けられており、一方、この結合片3を形成した面の裏側の表面1bには係合溝4が形成されていて(
図4を参照)、前記結合片3と係合溝4を連結することにより複数の印判本体1、1を連結可能な連結印を構成している。図中の5は、前記結合片3を印判本体1から突出させるための孔部である。
【0014】
前記結合片3は、印判本体1の側面に露出する押圧片部3aと、この押圧片部3aの前方に立設した脚部3bと、この脚部3bの先端に形成した鉤状部3cから構成されており(
図6を参照)、前記鉤状部3cを他の印判本体1の係合溝4に係止させることで二つの印判本体1、1を連結する構造となっている。ここで、印判本体1の側面とは、前記表側の表面1a及び、前記裏側の表面1b以外の側面を指している。また、押圧片部3aの先端側と内部補強体7との間には弾発部材6(
図3のものではコイルバネ6a)が装着されており、前記鉤状部3cをコイルバネ6aの弾発下において左右に摺動可能な構造となっている。
【0015】
これにより、コイルバネ6aの弾発力によって、結合片3は常時は印判本体1の側面に向けて弾発されるため、鉤状部3cは係合溝4に係止した状態を保持することとなる。一方、押圧片部3aをコイルバネ6aの弾発力に反して内側へ押し込むと、前記鉤状部3cの係止が外れて連結状態を解除できることとなる。
【0016】
次に、二つの印判本体1、1が連結されている場合について説明する。
図4は連結状態を示す要部の拡大断面図、
図5は結合片を摺動させて押し込んだ状態を示す要部の拡大断面図である。
図4に示される状態では、結合片3の鉤状部3cは他の印判本体1にある係合溝4内へ挿入された状態にあり、また結合片3はコイルバネ6aの弾発力によって外側(図面では右側)へ押された状態にある。従って、鉤状部3cが係合溝4の端部に係止して二つの印判本体1、1を確実に連結しており、またコイルバネ6aに弾発されていて連結が外れるおそれもない。
【0017】
次に、連結を解除する場合について説明する。
図5に示されるように、結合片3の押圧片部3aを弾発力に反して内側(図面では左側)へ押し込むと、前記鉤状部3cが内側へ移動して係合溝4との係止を解除する。この状態で二つの印判本体1、1を引き離すと、鉤状部3cが係合溝4から抜けるため、二つの印判本体1、1を分離できることとなる。
【0018】
なお、前記弾発部材6としては、
図6に示されるように、板バネ6bを用いることもできる。この場合は、押圧片部3aの前方に弓状に湾曲した板バネ6bが、先端部を内部補強体7と接するように設けられており、この結果、板バネ6bの撓み力によって結合片3を常時、印判本体1の側面に向けて弾発させた状態としている。
この板バネ6bを用いた場合は、
図7に示されるように、板バネ6bの弾発力によって結合片3が常に印判本体1の側面に向けて弾発され、鉤状部3cは係合溝4に係止した状態を保持している。一方、押圧片部3aを板バネ6bの弾発力に反して内側へ押し込むと、前記鉤状部3cの係止が外れて連結状態を解除できる点は、前記のコイルバネ6aを用いた場合と同様である。
【0019】
また前記係合溝4には、
図8に示されるように、結合片3を連結解除するように摺動させた場合に、鉤状部3cの背面部と当接して印判本体1を引き離すように作用する傾斜面4aを形成することが好ましい。図示のものでは、前記傾斜面4aを直線状のものとしているが、曲線状であってもよいことは勿論である。
なお、前記傾斜面4aは、前記係合溝4と当接する鉤状部3cの背面部に設けてもよいし、両方に設けてもよい。
【0020】
この場合は、
図8に示されるように、結合片3の鉤状部3cが他の印判本体1にある係合溝4内へ挿入され、また結合片3がコイルバネ6aの弾発力によって外側(図面では右側)へ押された状態で二つの印判本体1、1が連結される点は、前述の
図4の場合と同様である。
【0021】
一方、連結を解除する場合は、
図9に示されるように、結合片3の押圧片部3aを弾発力に反して内側(図面では左側)へ押し込むと、前記鉤状部3cが内側へ移動して係合溝4との係止を解除した状態となる。更に、押圧片部3aを内側へ押し込むと、
図10に示されるように、係合溝4の傾斜面4aが前記鉤状部3cの背面部に沿って摺動しつつ上方へ向けて移動するので、他の印判本体1が上側へ自動的に引き離されて隙間(S)が生じることとなる。この結果、前記隙間(S)に指を掛けて二つの印判本体1、1を引き離せるので、容易に分離することができることとなる。
【0022】
以上の説明からも明らかなように、本発明は印面を有する直方体形状の印判本体と、印面と直交して向かい合う一対の面の表側の表面に突出して取り付けられた結合片と、この結合片を形成した面の裏側の表面に形成された係合溝を有し、前記結合片と他の印判本体にある係合溝とを連結自在とした連結印であって、前記結合片は、前記係合溝に係止可能な鉤状部と、前記印判本体の側面に設けられ前記鉤状部を摺動させる押圧片部と、この押圧片部を前記印判本体の側面に向けて弾発する弾発部材を備えている構造としたので、前記結合片を中央側へ押し込めば鉤状部と係合溝の係止状態を解除でき、二つの印判本体を容易に分離することができる。
また、結合片を連結解除するように摺動させた場合に、係合溝と鉤状部の背面部とが当接する部分のいずれか一方または、両方に印判本体を引き離すように作用する傾斜面が形成されているものでは、係止状態の解除と同時に、二つの印判を引き離すことができるため、より容易に分離することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 印判本体
1a 表側の表面
1b 裏側の表面
2 印面
3 結合片
3a 押圧片部
3b 脚部
3c 鉤状部
4 係合溝
4a 傾斜面
5 孔部
6 弾発部材
6a コイルバネ
6b 板バネ
7 内部補強体
S 隙間