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特許7160290遠心機、及びそれを用いた懸濁液調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】遠心機、及びそれを用いた懸濁液調製方法
(51)【国際特許分類】
   B02C 17/08 20060101AFI20221018BHJP
   B01F 23/50 20220101ALI20221018BHJP
   B01F 29/10 20220101ALI20221018BHJP
   B01F 29/15 20220101ALI20221018BHJP
【FI】
B02C17/08
B01F23/50
B01F29/10
B01F29/15
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021508870
(86)(22)【出願日】2020-03-01
(86)【国際出願番号】 JP2020008563
(87)【国際公開番号】W WO2020195556
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-12-18
(31)【優先権主張番号】P 2019056062
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】393030408
【氏名又は名称】株式会社シンキー
(74)【代理人】
【識別番号】100196014
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 直紀
(72)【発明者】
【氏名】橋本 直文
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 知子
【審査官】本間 友孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-043578(JP,A)
【文献】特開2002-320835(JP,A)
【文献】特開2004-053301(JP,A)
【文献】国際公開第2011/136023(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 1/00- 7/18、15/00-17/24
B01F 23/50、29/10、29/15、31/00-31/87
G01N 1/00- 1/44
B01L 1/00-99/00
A61K 9/00
B04B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理材料、粉砕媒体、及び液体を収容可能であり、前記被処理材料及び前記粉砕媒体の移動を許容する処理室と、該処理室と比べて小径に形成されて、当該処理室と連通し、当該処理室で前記被処理材料を処理することで調製した懸濁液を封止部材により押圧して排出する際に前記粉砕媒体を侵入させることで前記封止部材から退避させる退避室とを含む処理容器を保持可能に構成されて、自転軸線を中心に自転可能な自転体と、
転軸線を中心に回転可能な公転体であって、前記自転軸線と前記公転軸線とが交差するように前記自転体を保持する公転体と、
該公転体及び前記自転体に回転力を付与する駆動部と、
を含み、
前記自転体は、前記処理室及び前記退避室を結ぶ直線と、前記自転軸線とが一致又は平行となるように、かつ、前記処理室が、前記退避室より、前記公転軸線に対する遠心側に位置するように、前記処理容器を保持する、遠心機。
【請求項2】
前記自転体は、前記懸濁液の調製中、前記退避室の前記公転軸線に対する最も遠心側の部分より、前記処理室の前記公転軸線に対する最も遠心側の部分を、前記公転軸線に対して遠心側に位置させる、請求項1に記載の遠心機。
【請求項3】
記自転体は、前記処理容器の中心軸線が、前記自転軸線と一致又は平行となるように、前記処理容器を保持する、請求項1又は2に記載の遠心機。
【請求項4】
前記処理容器は、前記退避室を介して前記処理室と連通し、前記懸濁液を排出可能な第1開口部と、該第1開口部より大きく開口し、前記被処理材料及び前記粉砕媒体を前記処理室に投入可能であって、前記封止部材により封止可能な第2開口部とを含み、
前記自転体は、前記退避室及び前記第1開口部より、前記処理室及び前記封止部材を、前記公転軸線に対して遠心側に位置させる、請求項1~3の何れか1項に記載の遠心機。
【請求項5】
前記処理容器は、前記第2開口部の外縁に形成されるフランジ部を含み、
前記自転体は、支持部材を利用して前記処理容器を保持し、
前記支持部材は、前記処理容器を挿入される貫通孔と、前記自転体の底部に対向する当該支持部材の面側に形成されて、前記貫通孔に挿入された前記処理容器のフランジ部を受け入れる受入部を含む、請求項4に記載の遠心機。
【請求項6】
自転軸線を中心に自転可能な自転体と、公転軸線を中心に回転可能な公転体であって、前記自転軸線と前記公転軸線とが交差するように前記自転体を保持する公転体と、該公転体及び前記自転体に回転力を付与する駆動部とを含む遠心機を用いて、懸濁液を調製する方法であって、
被処理材料及び粉砕媒体の移動を許容する処理室と、該処理室と比べて小径に形成されて、当該処理室と連通し、当該処理室で前記被処理材料を処理することで調製した懸濁液を封止部材により押圧して排出する際に前記粉砕媒体を侵入させることで前記封止部材から退避させる退避室とを含む処理容器に、前記被処理材料、前記粉砕媒体、及び液体を収容させるステップと、
前記処理室及び前記退避室を結ぶ直線と、前記自転軸線とが一致又は平行となるように、かつ、前記処理室が、前記退避室より、前記公転軸線に対する遠心側に位置するように、前記自転体に前記処理容器を保持させるステップと、
前記駆動部により、前記公転体及び前記自転体に回転力を付与することで、前記公転体及び前記自転体を回転させるステップと、
を含む、懸濁液を調製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理材料を自転及び公転させることによって処理する遠心機、及び該遠心機を用いた懸濁液調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
処理容器を公転させながら自転させることによって、当該処理容器に収容された被処理材料に遠心力を作用させて処理する遠心機が知られている。この遠心機は、被処理材料の撹拌処理と脱泡処理とを同時に行う撹拌・脱泡装置や、被処理材料を乳化する乳化装置等として利用され、また、被処理材料を粉砕するボールミルとしても利用される(特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4084493号公報
【文献】特開2010-194470号公報
【文献】特開2002-143706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、医療の分野等においては、錠剤(カプセル剤等を含む。以下同様。)である薬剤を、水等の液体内で粉砕して懸濁液を調製することがある。遠心機を用いて、このような懸濁液の調製を行う場合には、シリンジ等の処理容器内に、薬剤(錠剤)、液体、及び粉砕媒体(金属ボールやジルコニアボール等)を封入して処理を行う。
【0005】
しかしながら、シリンジ等の処理容器には、調製された懸濁液の排出用の孔等、未粉砕の薬剤や粉砕媒体が嵌まり込み得る狭い空間が存在する。このような狭い空間に、未粉砕の薬剤や粉砕媒体が嵌まり込んだ場合、当該未粉砕の薬剤や粉砕媒体の遠心力による移動は妨げられる。その場合、遠心機を用いた懸濁液の調製は困難になり得る。
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みなされたものである。その目的は、シリンジ等の処理容器を用いて、被処理材料を粉砕して良好に懸濁液を調製できる遠心機を提供すること、及び、当該遠心機を用いて、懸濁液を良好に調製できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、以下に示す発明特定事項乃至は技術的特徴を含んで構成される。
【0008】
すなわち、ある観点に従う発明は、被処理材料、粉砕媒体、及び液体を収容可能であり、前記被処理材料及び前記粉砕媒体の移動を許容する処理室と、該処理室と連通した前記粉砕媒体の退避室とを含む処理容器を保持可能に構成されて、自転軸線を中心に自転可能な自転体と、該自転体を保持して、公転軸線を中心に回転可能な公転体と、該公転体及び前記自転体に回転力を付与する駆動部と、を含み、前記自転体は、前記処理室が、前記退避室より、前記公転軸線に対する遠心側に位置するように、前記処理容器を保持する、遠心機である。
【0009】
また、上記遠心機において、前記公転体は、前記自転軸線と前記公転軸線とが交差するように、前記自転体を保持し、前記自転体は、前記処理容器の中心軸線が、前記自転軸線と一致又は平行となるように、前記処理容器を保持し得る。
【0010】
また、上記遠心機において、前記処理容器は、前記処理室で前記被処理材料を処理することで調製した懸濁液を排出可能な第1開口部と、該第1開口部より大きく開口し、前記被処理材料及び前記粉砕媒体を前記処理室に投入可能であって、封止部材により封止可能な第2開口部とを含み、前記処理容器が自転体に保持されることで、前記処理室及び前記封止部材が、前記第1開口部より、前記公転軸線に対する遠心側に位置し得る。
【0011】
また、上記遠心機において、前記処理容器は、該第2開口部の外縁に形成されるフランジ部を含み、支持部材を用いて、前記自転体に保持され、前記支持部材は、前記フランジ部を受け入れる受入部を含み、前記受入部は、前記自転体の底部に対向する前記支持部材の面側に形成され得る。
【0012】
また、上記遠心機において、前記封止部材の前記処理容器の内部空間を向く面は、前記処理容器の中心軸線側が隆起した面とされ得る。
【0013】
また、ある観点に従う発明は、自転軸線を中心に自転可能な自転体と、該自転体を保持して、公転軸線を中心に回転可能な公転体と、該公転体及び前記自転体に回転力を付与する駆動部とを含む遠心機を用いて、懸濁液を調製する方法であって、被処理材料及び粉砕媒体の移動を許容する処理室と、該処理室と連通した前記粉砕媒体の退避室とを含む処理容器に、前記被処理材料、前記粉砕媒体、及び液体を収容させるステップと、前記処理室が、前記退避室より、前記公転軸線に対する遠心側に位置するように、前記自転体に前記処理容器を保持させるステップと、前記駆動部により、前記公転体及び前記自転体に回転力を付与することで、前記公転体及び前記自転体を回転させるステップと、を含む、懸濁液を調製する方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、シリンジ等の処理容器を用いて、被処理材料を粉砕して良好に懸濁液を調製できる遠心機を提供でき、また、当該遠心機を用いて、懸濁液を良好に調製できる方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る遠心機の概略断面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る処理容器及び支持部材の概略断面図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る懸濁液調製方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形(例えば各実施形態を組み合わせる等)して実施することができる。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付して表している。図面は模式的なものであり、必ずしも実際の寸法や比率等とは一致しない。図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることがある。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る遠心機の概略構成を示す断面図である。同図に示すように、遠心機1は、回転軸10と、公転体20と、自転ユニット30と、バランス錘40と、駆動部50と、支持基板60と、区画体70と、筐体80と、処理容器90と、支持部材120とを含み構成される。
【0018】
回転軸10は、支持基板60等を貫通して、仮想の直線である公転軸線L1を中心として回転するように構成されている。回転軸10は、図示するように鉛直に延びる公転軸線L1を中心として回転するように構成されてよい。ただし、回転軸10は、これに限定されるものでない。
【0019】
公転体20は、第1アーム22と、第2アーム24とを含み構成される。公転体20は、回転軸10に取り付けられて、該回転軸10と共に公転軸線L1を中心として回転するように構成される。
【0020】
第1アーム22は、公転軸線L1に直交する第1の方向に延びて、途中で屈曲するように構成され、自転ユニット30を取り付けられる。第2アーム24は、第1の方向と反対方向である第2の方向に延びて、バランス錘40を取り付けられる。
【0021】
自転ユニット30は、自転軸32と、自転体34とを含み構成される。
自転軸32は、ベアリング36を介して、公転体20の第1アーム22に回転可能に取り付けられる。自転軸32が取り付けられる位置は、第1アーム22の屈曲した部分を挟んで、公転軸線L1と反対側である。これにより、自転軸32は、公転体20の回転に伴って、公転軸線L1を中心に公転する。併せて、自転軸32は、公転体20を通る仮想の直線である自転軸線L2を中心として自転可能となる。なお、自転軸線L2は、自転軸32が、第1アーム22の屈曲した部分を挟んで、公転軸線L1と反対側の第1アーム22に取り付けられることに起因して、公転軸線L1と交差する。
【0022】
自転体34は、一端側が開口した有底形状であり、その底部を自転軸32の一端に取り付けられる。これにより、自転体34は、自転軸32と共に、公転軸線L1を中心に公転し、自転軸線L2を中心に自転する。また、自転体34は、開口した部分より支持部材120(処理容器90)を受け入れて保持する。なお、自転体34の底部には、図示しない滑り止め部材(例えばゴム等の弾性体シート)が配置されてよい。また、自転体34には、支持部材120と係合する図示しない係合機構が設けられてよい。これらは、自転体34の回転に伴い、当該自転体34と、支持部材120との間で滑りが発生することを防止又は抑止する。
【0023】
バランス錘40は、公転体20の第2アーム24に、公転軸線L1からの距離を変更可能に取り付けられる。バランス錘40は、公転体20のバランスを調整するものであり、遠心機1を安定して動作させることに寄与する。
【0024】
駆動部50は、駆動源51と、第1プーリー52と、第2プーリー53と、ベルト54と、自転駆動機構55とを含み構成される。駆動部50は、回転軸10と自転ユニット30の自転軸32とを回転させる。
【0025】
駆動源51は、支持基板60に固定されており、当該駆動源51の駆動軸に固定される第1プーリー52、回転軸10に固定される第2プーリー53、及び、第1プーリー52と第2プーリー53とに掛け回されるベルト54を利用して、回転軸10に回転力を付与する。
【0026】
自転駆動機構55は、自転ギヤ56と、自転力付与ギヤ57と、中間ギヤ58とを含み構成される。
自転ギヤ56は、自転ユニット30の自転軸32の他端側に固定されている。自転力付与ギヤ57は、回転軸10と同心となるように支持基板60に固定されている。中間ギヤ58は、ベアリング59を介して回転可能に公転体20に取り付けられている。中間ギヤ58は、自転ギヤ56と自転力付与ギヤ57との間で回転力の伝達を行う。
【0027】
自転ギヤ56、自転力付与ギヤ57、及び中間ギヤ58が上記のように構成されていることに基づき、自転ギヤ56及び自転力付与ギヤ57の回転角速度は関連付けられる。これにより、自転ギヤ56及び自転力付与ギヤ57は遊星歯車機構と同様の挙動を示す。したがって、自転ギヤ56は、駆動源51が駆動して回転軸10を回転させた際に回転し、自転ユニット30の自転軸32を回転させる。
【0028】
区画体70は、区画体本体72と、蓋体74とを含み構成される。
区画体本体72は、一端側に開口部を有して、公転体20等を収容する。蓋体74は、区画体本体72の開口部を閉塞する。また、蓋体74は、自転ユニット30の自転体34に処理容器90を着脱する場合等に、区画体本体72から取り外される。
【0029】
処理容器90は、被処理材料M、粉砕媒体Me、液体Fを収納可能に構成される。
支持部材120は、処理容器90を支持した状態で、自転体34に保持される。
なお、処理容器90及び支持部材120の詳細は後述する。
【0030】
被処理材料Mは、処理容器90に収納されるものであり、懸濁液を調製するための薬剤であればよく、特に錠剤である。なお、被処理材料Mの薬物特性は、特に限定されない。
【0031】
粉砕媒体Meは、被処理材料Mを粉砕するためのものであり、例えば、金属ボールやジルコニアボールであって良い。なお、図には、粉砕媒体Meを1つ使用する場合を示しているが、粉砕媒体Meは、複数使用されてもよい。
液体Fは、患者の体内(特に、消化管)に注入可能な液体であればよく、例えば、水であってよい。
【0032】
図2は、本発明の一実施形態に係る処理容器及び支持部材の概略断面図である。
【0033】
処理容器90は、シリンジの一種であってよく、その中心を通る中心軸CLに沿って筒状(例えば円筒状)に延びる側壁部92と、該側壁部92により画定される処理室94及び退避室96と、側壁部92の一端側に形成される第1開口部98と、側壁部92の他端側に形成される第2開口部100と、第2開口部100の外縁にあたる側壁部92に形成されるフランジ部102とを含み構成される。
【0034】
側壁部92は、樹脂やガラス等の材料により構成されて、その一端側が、その他端側と比べて縮径している。これは、退避室96及び第1開口部98を形成するためである。
処理室94は、側壁部92の他端側に形成されて、液体F内での被処理材料M及び粉砕媒体Meの移動を許容する。処理室94は、液体F内で粉砕媒体Meを使用して被処理材料Mを粉砕し、懸濁液を調製するための室である。
【0035】
退避室96は、側壁部92の一端側に形成されて、処理室94と連通するように構成される。退避室96は、粉砕媒体Meが侵入可能に形成されて、かつ、粉砕媒体Meの動きを規制する。すなわち、退避室96は、処理室94と比べて小径に形成される。退避室96は、調製後の懸濁液を、封止部材110により押圧して、第1開口部98から排出する際、粉砕媒体Meを侵入させる。これにより、退避室96は、封止部材110による懸濁液の押圧を、粉砕媒体Meが阻害することを防止する。
【0036】
第1開口部98は、側壁部92の一端側に形成されて、処理室94と連通しており、調製された懸濁液の排出を許容する。第1開口部98は、図示するように、退避室96を介して処理室94と連通してよい。また、第1開口部98と退避室96とをつなぐ経路は、退避室96と比べて小径に形成されてよい。
【0037】
第2開口部100は、第1開口部98より大きく開口し、側壁部92の他端側に形成されて、処理室94への被処理材料M、粉砕媒体Me、及び液体Fの投入を許容する。また、第2開口部100は、封止部材110を挿入可能に構成される。
フランジ部102は、第2開口部100の外縁にあたる側壁部92の外面から、中心軸CLに対する半径方向に突出するように形成される。
【0038】
封止部材110は、第2開口部100より処理室94内に挿入され、当該第2開口部100を封止する。封止部材110は、懸濁液調製中に、被処理材料M、粉砕媒体Me、及び液体Fが、処理室94から第2開口部100を介して漏れることを防止する。また、封止部材110は、その処理室94内を向く面が、被処理材料M及び粉砕媒体Meの移動を妨げないような形状とされる。例えば、封止部材110は、その処理室94内を向く面が、図示するように平面とされる。
【0039】
さらに、封止部材110は、処理室94内で、第1開口部98方向に移動可能である。この移動により、封止部材110は、調製後の懸濁液を押圧し、第1開口部98より排出させる。なお、封止部材110は、例えば、ゴム等により構成され、また、処理室94内で、移動させるための図示しないハンドルを取り付け可能に形成されてもよい。
【0040】
支持部材120は、円柱状の本体部122と、処理容器90を、その中心軸CLに沿って挿入可能な貫通孔124と、処理容器90のフランジ部102を受け入れ可能な受入部126とを含み構成される。支持部材120は、例えば、硬質の樹脂等により構成される。
【0041】
本体部122は、自転体34の開口した部分より当該自転体34に挿入可能に構成される(図1も参照)。
貫通孔124は、本体部122に形成されて、処理容器90の側壁部92の最大外径より、わずかに大径に開口して、処理容器90の挿入を可能とする。
【0042】
受入部126は、本体部122に形成されて、より具体的には、支持部材120が自転体34に挿入された際に、該自転軸32の底部(図示しない滑り止め部材が配置される場合は、該すべり止め部材を意味する。以下同様。)に対向する面側に形成されて、処理容器90のフランジ部102を受け入れる。受入部126は、フランジ部102を受け入れることで、該フランジ部102と係合するように構成してもよい。このようにすることで、受入部126は、処理容器90の支持部材120に対する回転を規制することができる。
【0043】
また、受入部126は、フランジ部102の厚みよりも、浅い凹部(わずかに浅い凹部であってよい。)として形成してよい。このようにすることで、受入部126(支持部材120)は、遠心機1を動作させることにより生じる遠心力を利用して、フランジ部102を、自転体34の底部に向かって押圧する。その結果、フランジ部102は、遠心機1の動作時において、該遠心機1の非動作時と比べて大きな力で、受入部126と自転体34の底部との間に挟まれることとなる。これにより、処理容器90は、強固に、自転体34に固定される。
【0044】
図3は、本発明の一実施形態に係る懸濁液調製方法を説明するためのフローチャートである。かかる懸濁液調製方法は、遠心機1において実行される。
【0045】
まず、遠心機1のユーザは、支持部材120に処理容器90を支持させる(S301)。本工程において、ユーザは、まず、処理容器90の処理室94内に、第2開口部100を介して、被処理材料M、粉砕媒体Me、及び液体Fを投入(収容)する。この際、処理容器90の第1開口部98には、図示しないキャップを取り付けてよい。次に、ユーザは、処理容器90の第2開口部100より処理室94内に、封止部材110を挿入する。次に、ユーザは、支持部材120の貫通孔124の受入部126側の開口より、処理容器90の第1開口部98が設けられる端部を挿入して、処理容器90のフランジ部102が支持部材120の受入部126に受け入れられるまで、処理容器90を支持部材120に対して移動させる。以上により本工程が完了する。
【0046】
なお、本工程は、ユーザに代わり、所定のロボットを用いて自動的に行っても良い。以下の各工程においても、同様に、ユーザが行う作業は、該ユーザに代わり、所定のロボットを用いて自動的に行っても良い。
【0047】
次に、ユーザは、蓋体74を区画体本体72から取り外して、自転ユニット30の自転体34に、処理容器90を支持した支持部材120を保持させる(S302)。ユーザは、支持部材120の受入部126が形成された面が、自転体34の底部に対向するように、支持部材120を、自転体34に装着する。これにより、処理容器90は、第1開口部98側より第2開口部100側が、つまり、退避室96及び第1開口部98より、処理室94及び封止部材110が、公転軸線L1に対する遠心側に位置するように、自転体34に保持される。また、処理容器90は、その中心軸CLが、自転軸線L2と一致又は平行となるように、自転体34に保持される(図1を参照)。これらにより、遠心機1の動作中においても、処理容器90は、常に、退避室96及び第1開口部98より、処理室94及び封止部材110が、公転軸線L1に対する遠心側に位置するように、自転体34に保持される。
【0048】
次に、ユーザは、蓋体74を区画体本体72に取り付け、遠心機1を動作させる(S303)。遠心機1が動作することにより、処理容器90は、公転軸線L1を中心に回転(公転)しながら、自転軸線L2を中心に自転する。これにより、処理容器90の処理室94内において、被処理材料Mが、液体F中で粉砕媒体Meにより粉砕され、懸濁液が調製される。
【0049】
懸濁液の調製後、ユーザは、遠心機1を停止させる(S304)。その後、ユーザは、遠心機1より支持部材120を取り出し、支持部材120から処理容器90を取り外すことで、処理容器90の処理室94内で調製された懸濁液を利用できる。
【0050】
ここで、遠心機1は、動作中常に、退避室96及び第1開口部98より、処理室94及び封止部材110が、公転軸線L1に対する遠心側に位置するように、処理容器90を自転体34に保持する。これにより、懸濁液の調製中に、被処理材料Mや粉砕媒体Meが、退避室96や第1開口部98側に移動することを防止できる。退避室96の内部及び第1開口部98付近の小径な部分に被処理材料Mや粉砕媒体Meが嵌まり込んだ場合、遠心機1を動作させることにより生じる遠心力に基づいた、被処理材料M及び粉砕媒体Meの運動(移動)は、妨げられる。したがって、処理容器90を上記のように保持する遠心機1は、退避室96の内部及び第1開口部98付近の小径な部分に、被処理材料Mや粉砕媒体Meが嵌まり込むことを防止でき、もって、懸濁液の調製に良好に行うことができる。
【0051】
また、遠心機1は、処理室94だけでなく、封止部材110の処理室94側を向く面も、被処理材料M及び粉砕媒体Meの移動を妨げないような形状とされる。したがって、遠心機1では、処理室94の内部表面や封止部材110の処理室94側を向く面も利用して(つまり、これらの面と粉砕媒体Meの間に被処理材料Mを挟み込み、粉砕する等して)、懸濁液の調製を促進することができる。なお、この効果は、封止部材110が、ゴム等の弾性を有する材料により構成される場合においても発揮されることを確認している。
【0052】
また、遠心機1は、該遠心機1を動作させることにより生じる遠心力を利用して、受入部126(支持部材120)により、処理容器90のフランジ部102を、自転体34の底部に向かって押圧できる。これにより、遠心機1では、該遠心機1の動作時において、処理容器90を、強固に、自転体34に固定でき、もって、当該遠心機1を動作させることにより生じる遠心力を、被処理材料Mや粉砕媒体Meに効率よく伝達して、懸濁液の調製を一層促進できる。
【0053】
上記各実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな形態で実施することができる。
【0054】
例えば、本明細書に開示される方法においては、その結果に矛盾が生じない限り、ステップ、動作又は機能を並行して又は異なる順に実施しても良い。説明されたステップ、動作及び機能は、単なる例として提供されており、ステップ、動作及び機能のうちのいくつかは、発明の要旨を逸脱しない範囲で、省略でき、また、互いに結合させることで一つのものとしてもよく、また、他のステップ、動作又は機能を追加してもよい。
【0055】
また、封止部材110は、処理容器90の中心軸CL側が、処理室94内部側に隆起するように構成してもよい。このように構成することで、遠心機1の動作中の、液体Fの対流を促進し、懸濁液の調製をより効率的なものとできる。なお、封止部材110の隆起した部分の表面形状は、例えば、実験により定めることができるが、少なくとも、遠心機1の動作中の被処理材料M及び粉砕媒体Meの運動(移動)を妨げないものとする必要がある。
【0056】
また、封止部材110は、処理容器90の中心軸CL側が、処理室94内部側で陥没、例えば球面状に陥没するように構成してもよい。このように構成することで、遠心機1の動作中の被処理材料M及び粉砕媒体Meの運動(移動)をより促進し、懸濁液の調製をより効果的なものとできる。なお、封止部材110の陥没した部分の形状は、少なくとも、被処理材料M及び粉砕媒体Meが嵌まり込まないものとする必要がある。
【0057】
また、支持部材120は、複数の処理容器90を支持できるように構成してもよい。
また、粉砕媒体Meは、被処理材料Mの種類に応じて、使用しない場合も想定される。
【0058】
また、本明細書では、さまざまな実施形態が開示されているが、一の実施形態における特定のフィーチャ(技術的事項)を、適宜改良しながら、他の実施形態に追加し、又は該他の実施形態における特定のフィーチャと置換することができ、そのような形態も本発明の要旨に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、自転公転式の遠心機の分野、及び懸濁液の調製に関する分野に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1:遠心機、10:回転軸、20:公転体、22:第1アーム、24:第2アーム、30:自転ユニット、32:自転軸、34:自転体、36:ベアリング、40:バランス錘、50:駆動部、51:駆動源、52:第1プーリー、53:第2プーリー、54:ベルト、55:自転駆動機構、56:自転ギヤ、57:自転力付与ギヤ、58:中間ギヤ、59:ベアリング、60:支持基板、70:区画体、72:区画体本体、74:蓋体、80:筐体、90:処理容器、92:側壁部、94:処理室、96:退避室、98:第1開口部、100:第2開口部、102:フランジ部、110:封止部材、120:支持部材、122:本体部、124:貫通孔、126:受入部、CL:中心軸、F:液体、L1:公転軸線、L2:自転軸線、M:被処理材料、Me:粉砕媒体
図1
図2
図3