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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】粉末製剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/047 20060101AFI20221018BHJP
   A23L 29/25 20160101ALI20221018BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20221018BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20221018BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20221018BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20221018BHJP
   C07C 29/76 20060101ALI20221018BHJP
   C07C 33/048 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
A61K31/047
A23L29/25
A23L33/105
A61K9/14
A61K47/36
A61K47/40
A61P25/00
A61P25/28
C07C29/76
C07C33/048
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022540699
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2022012976
【審査請求日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2021048187
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000119472
【氏名又は名称】一丸ファルコス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100116528
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 俊男
(72)【発明者】
【氏名】高橋 達治
(72)【発明者】
【氏名】小島 弘之
(72)【発明者】
【氏名】藤根 俊昭
【審査官】薄井 慎矢
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-295907(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101987192(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107970359(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107970401(CN,A)
【文献】国際公開第2015/046463(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第105213835(CN,A)
【文献】国際公開第2021/085232(WO,A1)
【文献】AZHAR, M. D. et al.,Materials Science and Engineering,2020年,Vol.736,Page 032017
【文献】CHENG, Wen-Ling et al.,Planta Medica,2011年,Vol.77,pp.164-168
【文献】訳 編 日本医薬品添加剤協会,改訂 医薬品添加物ハンドブック,第1刷,2007年,pp.241-244, 400-406, 590-592
【文献】津田 喜典,9 溶媒抽出 9・1 天然物の取り扱いにおける有機化合物の溶媒抽出,分析化学,1973年,Vol.22,pp.934-942
【文献】FUJIMORI, H. et al.,Journal of Pharmacological Sciences,2021年11月12日,Vol.148,pp.162-171
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K A61P A23L C07C
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アラリアジオール、デキストリン及びシクロデキストリンを含有する粉末製剤。
【請求項2】
高分子多糖類をさらに含む請求項1に記載の粉末製剤。
【請求項3】
前記シクロデキストリンが、粉末製剤の全量に対して20質量%以上含まれる請求項1又は2に記載の粉末製剤。
【請求項4】
前記シクロデキストリンが、γ-シクロデキストリンを含む請求項1~3のいずれか一項に記載の粉末製剤。
【請求項5】
前記高分子多糖類が、アラビアガム又はガティガムである請求項2~4のいずれか一項に記載の粉末製剤。
【請求項6】
有効成分としてのアラリアジオールを安定化するための請求項1~5のいずれか一項に記載の粉末製剤。
【請求項7】
ゴツコラの植物体を有機溶媒及び水の混合溶媒で抽出する工程と、
前記抽出工程で得られた抽出液を、疎水性合成吸着剤が充填されたカラムに通液してアラリアジオールを前記疎水性合成吸着剤に吸着させる工程と、
前記疎水性合成吸着剤に吸着した成分を有機溶媒及び水の混合溶媒で溶出してアラリアジオールを含む溶出画分を得る工程と、
を含む、アラリアジオールの製造方法。
【請求項8】
アラリアジオール、デキストリン及びシクロデキストリンを混合して混合液を得る工程と、
前記混合液を均質化して乳化液を調製する工程と、
前記乳化液を乾燥する工程と、
を含む、粉末製剤の製造方法。
【請求項9】
前記シクロデキストリンが、γ-シクロデキストリンを含む請求項8に記載の粉末製剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【クロスリファレンス】
【0001】
本出願は、日本国において、2021年3月23日に出願された特願2021-048187号に基づく優先権を主張するものであり、当該出願に記載された内容は全て、参照によりそのまま本明細書に援用される。また、本願において引用した全ての特許、特許出願及び文献に記載された内容は全て、参照によりそのまま本明細書に援用される。
【技術分野】
【0002】
本発明は、安定化されたアラリアジオール含有粉末製剤及びその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0003】
ゴツコラ(Centella asiatica;別名ツボクサともいう。)はインド、インドネシア、中国、東南アジアを原産としたハーブであり、インドの伝統医療であるアーユルベーダで用いられる植物である。解熱、鎮痛、抗炎症及び認知機能改善などの多岐にわたる作用を有することが知られている。例えば、ゴツゴラ抽出物をラットに投与した場合に、酸化ストレスの低減や認知機能の向上がみられ、アルツハイマー病の治療薬として期待されることが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
ところで、このような有効成分を医薬品や機能性食品として開発するためには、室温で一定期間以上安定して保存できることが望ましい。例えば、医薬品や食品に配合されるビタミン類とコエンザイムQ10を安定化するために、これらをシクロデキストリンに包接させて粉体組成物とする技術が報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Md Sahab Uddin et al.,Nootropic and Anti-Alzheimer’s Actions of Medicinal Plants:Molecular Insight into Therapeutic Potential to Alleviate Alzheimer’s Neuropathology. Mol Neurobiol.2019 Jul;56(7):4925-4944.
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-2005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らはゴツコラのエタノール抽出液からHPLCで精製した単一の化合物であるアラリアジオールが、神経変性疾患の予防及び/又は治療のための主な有効成分であることを見出し、すでに国際出願を行っている(PCT/JP2020/039361)。しかしながら、アラリアジオールを含む製剤の保存安定性については未だ知られていない。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、アラリアジオールを医薬品や機能性食品等として用いる場合の安定化された製剤及びその製造方法を提供することなど、とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、アラリアジオールと特定の賦形剤とを混合して粉末製剤とすることにより、上記課題が解決されることを見出した。すなわち、本発明は以下の実施形態を含む。
【0010】
[1]アラリアジオール、デキストリン及びシクロデキストリンを含有する粉末製剤。
[2]高分子多糖類をさらに含む[1]に記載の粉末製剤。
[3]シクロデキストリンが、粉末製剤の全量に対して20質量%以上含まれる[1]又は[2]に記載の粉末製剤。
[4]シクロデキストリンが、γ-シクロデキストリンを含む[1]~[3]のいずれか一項に記載の粉末製剤。
[5]高分子多糖類が、アラビアガム又はガティガムである[2]~[4]のいずれか一項に記載の粉末製剤。
[6]有効成分としてのアラリアジオールを安定化するための[1]~[5]のいずれか一項に記載の粉末製剤。
[7]ゴツコラの植物体を有機溶媒及び水の混合溶媒で抽出する工程と、抽出工程で得られた抽出液を、疎水性合成吸着剤が充填されたカラムに通液してアラリアジオールを疎水性合成吸着剤に吸着させる工程と、疎水性合成吸着剤に吸着した成分を有機溶媒及び水の混合溶媒で溶出してアラリアジオールを含む溶出画分を得る工程と、を含む、アラリアジオールの製造方法。
[8]アラリアジオール、デキストリン及びシクロデキストリンを混合して混合液を得る工程と、この混合液を均質化して乳化液を調製する工程と、この乳化液を乾燥する工程と、を含む、粉末製剤の製造方法。
[9]シクロデキストリンが、γ-シクロデキストリンを含む[8]に記載の粉末製剤の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アラリアジオールを医薬品や機能性食品等として用いる場合の安定化された製剤及びその製造方法を提供することなどができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、一実施形態におけるアラリアジオールの製造工程を示すフロー図である。
図2図2は、アラリアジオールを含む粉末製剤を製造する工程を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、アラリアジオールと、デキストリンと、シクロデキストリンとを少なくとも含有する粉末製剤に関し、好ましくはさらに高分子多糖類を含む粉末製剤に関する。以下、典型的な一実施形態の粉末製剤に含まれる各成分について説明する。
【0014】
(アラリアジオール)
本実施形態の製剤は、下記式(I):
【化1】
で表されるアラリアジオール(CAS No.1354638-93-9)を有効成分として含有する。上記式(I)で表される化合物は、3位と8位に不斉炭素原子を含み、かつ9位と10位の炭素原子間の二重結合はシス型(Z)の立体配座を有する。したがって、有効成分としては、これらの位置に関する光学異性体、ラセミ体および/または幾何異性体であってもよい。天然に存在するアラリアジオールは、ウド(Aralia cordata)の葉のエタノール抽出物からも単離され、ヒト乳癌細胞の増殖抑制活性を有することが報告されている(Cheng WL et al.(2011)Planta Med;77:164-168)。アラリアジオールは、ゴツコラ及びウドなどの薬用植物から有機溶媒抽出及びカラムクロマトグラフィーによる精製等により製造することができる。
【0015】
なお、この有効成分は塩又は誘導体の形態であってもよく、式(I)で表される化合物のヒドロキシ基が適度な酸性を有する場合の塩としては、例えば、アルミニウムのような金属塩、リチウム、ナトリウムまたはカリウムのようなアルカリ金属塩、カルシウムまたはマグネシウムのようなアルカリ土類金属塩、およびアンモニウムまたは置換アンモニウム塩、例えば、トリエチルアミンのような低級アルキルアミン、2-ヒドロキシエチルアミン、ビス-(2-ヒドロキシエチル)-アミンまたはトリ-(2-ヒドロキシエチル)-アミンのようなヒドロキシアルキルアミン、ビシクロヘキシルアミンのようなシクロアルキルアミンとの塩、またはプロカイン、ジベンジルピペリジン、N-ベンジル-β-フェネチルアミン、デヒドロアビエチルアミン、N,N’-ビスデヒドロアビエチルアミン、グルカミン、N-メチルグルカミン、またはピリジン、コリジン、キニンもしくはキノリンのようなピリジン型の塩基との塩が挙げられる。また、式(I)で表される化合物のヒドロキシ基がアシル化、アルキル化、リン酸化又はホウ素化された誘導体であってもよい。従って、本明細書において、用語「アラリアジオール」は、上記式(I)で表される化合物、その異性体若しくはその誘導体又はそれらの塩を含む。
【0016】
本実施形態の製剤中におけるアラリアジオールの含有量は特に限定されないが、例えば所望の効果(例えば脳機能の障害を呈する疾患又は状態の予防又は治療の効果など)を発揮するために有効量のアラリアジオールが含まれておればよく、例えば、製剤全体を100質量%とした場合、
・アラリアジオールの含有量の下限は、好ましくは1ppm(0.0001質量%)以上、より好ましくは10ppm以上(0.001質量%)、更に好ましくは100ppm(0.01質量%)以上、
・アラリアジオールの含有量の上限は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%、更に好ましくは30質量%以下、
である。
【0017】
(デキストリン)
デキストリンとは、デンプンを部分加水分解したものを指し、デンプンの部分加水分解の程度により、さまざまな分子量を有するデキストリンが存在する。デンプンの部分加水分解の程度(つまりデキストリンの分子量分布)を理解する指標に、DE(Dextrose Equivalent)値が一般的に用いられている。DEの数値が高いことは、デンプンの加水分解が進み平均分子量が小さくなり、ブドウ糖に似た特性を有することを意味し、DE値が低いことは分解程度が低くデンプンに近いことを意味する。DEは0~100までの値をとる。本明細書において、「DE」とは、ウイルシュテッターシューデル法により求められる値であり、[(直接還元糖(ブドウ糖としての表示)の質量)/(固形分の質量)]×100の式より算出される。
【0018】
本実施形態では、デキストリンの中でも、好ましくはDE20以下のデキストリンを用いる。このようにDE20以下のデキストリンを使用することによって、粉末製剤としたときの分散性や安定性の向上に寄与する。本発明で使用されるデキストリンとして、さらに好ましくはDE5以下のデキストリンが挙げられる。本発明で使用されるDE5以下のデキストリンは商業的に入手可能であり、商業的に入手可能なものとしては、例えば、DE4のコーン由来デキストリン(パインデックス#100:松谷化学工業(株)製)、サンデック#30(DE2~5:三和澱粉工業(株)製)等が挙げられる。
【0019】
デキストリンの含有量は特に限定されないが、本実施形態の製剤の全質量を100質量%とした場合、
・デキストリンの含有量の下限は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%、更に好ましくは20質量%、
・デキストリンの含有量の上限は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%、更に好ましくは40質量%以下、
である。
【0020】
(シクロデキストリン)
シクロデキストリンは、数分子のD-グルコースがα(1→4)グルコシド結合によって結合し環状構造をとった環状オリゴ糖の一種である。このシクロデキストリンは特に限定されず、例えば、α-シクロデキストリン(αCD、6員糖環分子)、β-シクロデキストリン(βCD、7員糖環分子)、γ-シクロデキストリン(γCD、8員糖環分子)等が挙げられるが、これらのうち特にγCDが好ましい。アラリアジオールをより高濃度に含有することができ、且つ安定性が高い粉末製剤を得ることができるからである。なお、これらは1種のみ含有していても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0021】
また、上記シクロデキストリンとしてグルコース、マルトースなどの分岐側鎖を有するもの(以下、単に「分岐シクロデキストリン」という。)、並びにメチル基、ヒドロキシプロピル基及びアセチル基等の置換基を有するシクロデキストリン等(以下、「シクロデキストリン誘導体」という。)を用いても良い。これらを含むことにより、水溶性がある粉末製剤が得られるからである。また、シクロデキストリンのみを用いても良いし、シクロデキストリン誘導体との混合物を用いても良いが、シクロデキストリンのみを用いることが好ましい。
【0022】
本実施形態の粉末製剤中のシクロデキストリンは、賦形剤として働くとともに有効成分の安定化剤としての作用も有する。本明細書において賦形剤とは、組成物の取扱い、成形の向上、服用を便利にするための添加剤である。特定の理論に拘束されるものではないが、シクロデキストリンの安定化剤としての作用は、有効成分であるアラリアジオールを包摂することにより、外界からの熱や光による酸化を抑止し、又は共存する物質による影響を受けにくくしているものと考えられる。
【0023】
アラリアジオールの保存安定性を向上する観点から、本実施形態の粉末製剤に含まれるシクロデキストリンの含量は20質量%以上であり、さらに好ましくは30質量%以上であり、さらになお好ましくは40質量%以上である。なお、シクロデキストリンの含量の上限は80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましい。シクロデキストリンの含量が多すぎると優れた流動性を有する粉末製剤を得ることが困難だからである。
【0024】
(高分子多糖類)
高分子多糖類としては、グアーガム、ローカストビーンガム、タラガム、タマリンドガム、グルコマンナン、キサンタンガム、大豆ファイバー、コーンファイバー、おからファイバー、アラビアガム、ガティガム、ペクチン、ジェランガム、プルラン、カードラン、寒天、アルギン酸ナトリウム、セルロース、カルボキシメチルセルロースなどの天然高分子多糖や合成高分子多糖類から広く選択することが可能であり、これらの中から1種以上を選択して使用することが可能である。なかでも、本実施形態では、アラビアガム、ガティガム、カラギナン、グアーガム、タマリンドガム、タラガム、グルコマンナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、コーンファイバーの中から1種以上を選択して用いることがより好ましい。
【0025】
1つの実施形態としてのアラビアガムは、Acacia senegal Willdenow又はその他同属植物(Leguminosae)の幹及び枝から得られるガム状の分泌物である。アラビアガムは、ガラクトース、アラビノース、ラムノース、グルクロン酸、4-O-メチルグルクロン酸等の糖類と、ヒドロキシプロリン、プロリン、セリン等のアミノ酸を含む約2%のタンパク質で構成される。アラビアガムは商業的に入手可能であり、商業的に入手可能なものとしては、例えば、アラビアガムHP粉末(DSP五協フード&ケミカル株式会社製)等が挙げられる。
【0026】
他の実施形態としてのガティガムは、インドの乾燥した落葉樹林地帯で見られるシクンシ科ガティノキ(Anogeissus latifolia)から得られる不定形で半透明の分泌物であり、l-アラビノース、d-ガラクトース、d-グルクロン酸などを構成糖とする酸性複合多糖類で約3%程度のタンパク質を含有する水溶性ガムである。ガティガムは、商業的に入手可能であり、商業的に入手可能なものとしては、例えば、ガティコールSS(三栄薬品貿易株式会社製)等が挙げられる。
【0027】
高分子多糖類の含有量は特に限定されないが、本実施形態の製剤の全質量を100質量%とした場合、
・高分子多糖類の含有量の下限は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは6質量%、より好ましくは7質量%、更に好ましくは8質量%、
・高分子多糖類の含有量の上限は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%、更に好ましくは12質量%以下、
である。
【0028】
(その他の添加剤)
本実施形態の有効成分であるアラリアジオールは、油溶性であり、そのままでは水への分散性が悪く飲食品に添加しづらいため、アラリアジオールを水混和性有機溶剤に溶解した溶液を油脂や界面活性剤等その他の添加剤と混合して乳化した後、乾燥して粉末製剤とすることができる。
【0029】
(1)油脂類
油脂類としては、アボガド油、アマニ油、アーモンド油、ウイキョウ油、エゴマ油、オリーブ油、オレンジ油、オレンジラファー油、カカオ脂、カミツレ油、カロット油、キューカンバー油、キョウニン油、ククイナッツ油、クルミ油、コムギ胚芽油、ゴマ油、コメ油、コメ糠油、サザンカ油、サフラワー油、サラダ油、シア脂、大豆油、茶油、月見草油、ツバキ油、トウモロコシ油、菜種油、パーシック油、ベニバナ油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ヘーゼルナッツ油、マカデミアナッツ油、綿実油、メドウフォーム油、落花生油、ローズヒップ油、タートル油、ミンク油、卵黄油、カカオ脂、パーム油、パーム核油、モクロウ、ヤシ油、魚油、鯨油、鮫油、肝油、牛脂、豚脂、鶏油、兎脂、羊脂、馬脂又はこれら油脂類の水素添加物又はその誘導体等が挙げられる。
【0030】
(2)界面活性剤
界面活性剤としては、ショ糖脂肪酸エステル及びポリグリセリン脂肪酸エステルのうち少なくとも1種を含むがこれらに限定されない。これらはいずれも界面活性剤として作用すると共に乳化組成物を調製したときの乳化粒子の平均粒子径をより小さいものにすることができる。
【0031】
本実施形態で用いられる、ショ糖脂肪酸エステルは、界面活性の観点から脂肪酸の炭素数が12以上のものが好ましく、12~20のものがより好ましい。炭素数12以上とすることにより、平均粒子径のより小さいエマルション粒子にすることができる場合がある。ショ糖脂肪酸エステルとしては、ショ糖ジオレイン酸エステル、ショ糖ジステアリン酸エステル、ショ糖ジパルミチン酸エステル、ショ糖ジミリスチン酸エステル、ショ糖ジラウリン酸エステル、ショ糖モノオレイン酸エステル、ショ糖モノステアリン酸エステル、ショ糖モノパルミチン酸エステル、ショ糖モノミリスチン酸エステル、ショ糖モノラウリン酸エステル等が挙げられ、これらの中でもショ糖モノエステルが好ましく、特に、ショ糖モノラウリン酸エステル、ショ糖モノオレイン酸エステルがより好ましい。本発明においては、これらのショ糖脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0032】
市販品としては、例えば、三菱化学ケミカルフーズ株式会社社製リョートーシュガーエステルS-070、S-170、S-270、S-370、S-370F、S-570、S-770、S-970、S-1170、S-1170F、S-1570、S-1670、P-070、P-170、P-1570、P-1670、M-1695、O-170、O-1570、第一工業製薬株式会社製の、DKエステルSS、F160、F140、F110、F90、F70、F50、F-A50、F-20W、F-10、F-A10E、コスメライクB-30、S-10、S-50、S-70、S-110、S-160、S-190、SA-10、SA-50、P-10、P-160、M-160、L-10、L-50、L-160、L-150A、L-160A、R-10、R-20、O-10、O-150等が挙げられる。
【0033】
本実施形態で用いられるポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、平均重合度が2以上、好ましくは6~15、より好ましくは8~10のポリグリセリンと、炭素数8~18の脂肪酸、例えばカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、及びリノール酸とのエステルを挙げることができる。ポリグリセリン脂肪酸エステルの好ましい例としては、ヘキサグリセリンモノオレイン酸エステル、ヘキサグリセリンモノステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンモノパルミチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノミリスチン酸エステル、ヘキサグリセリンモノラウリン酸エステル、デカグリセリンモノオレイン酸エステル、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル、デカグリセリンモノラウリン酸エステル等が挙げられる。
【0034】
これらの中でも、より好ましくは、デカグリセリンモノオレイン酸エステル(HLB=12)、デカグリセリンモノステアリン酸エステル(HLB=12)、デカグリセリンモノパルミチン酸エステル(HLB=13)、デカグリセリンモノミリスチン酸エステル(HLB=14)、デカグリセリンモノラウリン酸エステル(HLB=16)などである。これらのポリグリセリン脂肪酸エステルを、単独又は混合して用いることができる。
【0035】
市販品としては、例えば、日光ケミカルズ(株)社製、NIKKOL DGMS、NIKKOL DGMO-CV、NIKKOL DGMO-90V、NIKKOL Decaglyn PR-20、三菱化学ケミカルフーズ株式会社製リョートーポリグリエステルL-7D、L-10D、M-10D、太陽化学株式会社製サンソフトQ-17UL、サンソフトQ-14S、サンソフトA-141C、理研ビタミン株式会社製ポエムDO-100、ポエムJ-0021などが挙げられる。
【0036】
(粉末製剤及びその用途)
本発明及び本実施形態の「粉末製剤」は、粉末だけでなく、例えば粉末を成形して作製される錠剤、顆粒剤、散剤など、も含む。
本実施形態の粉末製剤を含有する組成物等(当該粉末製剤、当該粉末製剤を含有するカプセル剤なども含む)は、アラリアジオールの所望の効果(認知機能改善効果など)を発揮するのに効果的であり、かつ保存安定性を有する少なくとも三種類の成分(アラリアジオール、デキストリン、及びシクロデキストリン)を含む。特定の実施形態では、例えば、本粉末製剤は:
(a)0.0001~50質量%のアラリアジオール;
(b)5~50質量%のデキストリン;
(c)10~80質量%のシクロデキストリン;及び
(d)任意に、50質量%以下のその他の添加剤、
を含む。
【0037】
所望の効果を発揮させるために、本実施形態の粉末製剤を含有する組成物等(当該粉末製剤も含む)を、例えばアラリアジオールを1~10mg/Dayとなるようにヒトに投与することができる。投与方法としては、例えば、経口的投与、局所的(点眼、膣内、直腸内、鼻腔内、経皮を含む)投与、または、非経口的投与であってもよい。非経口的投与としては、静脈内注射もしくは点滴、皮下、腹腔内もしくは筋肉内注入、吸引もしくは吸入による肺投与、髄腔内投与、脳室内投与等が挙げられる。
【0038】
本実施形態のアラリアジオールを含む粉末製剤及び当該粉末製剤を含有する組成物は、例えば、脳機能の障害を呈する疾患又は状態の予防又は治療用として有用である。かかる脳機能障害を呈する疾患または状態としては、例えば、認知症(例、老人性認知症、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、外傷後認知症、脳腫瘍により生じる認知症、慢性硬膜下血腫により生じる認知症、正常圧脳水腫により生じる認知症、髄膜炎後認知症およびパーキンソン型認知症などの種々の疾患により生じる認知症)、非認知症性の認知障害(例、軽度認知障害(MCI))、記憶または学習障害(例、脳発達障害に伴う記憶および学習障害)等が挙げられる。
【0039】
本実施形態の粉末製剤を含有する組成物を飲食品として用いる場合は、例えば、認知機能低下の予防、改善、又は向上効果をコンセプトとし、必要に応じてその旨を表示した食品、機能性表示食品、特定保健用食品、病者用食品、サプリメントが包含される。本実施形態の粉末製剤を用い、サプリメントを製造する場合には、粉末製剤をそのまま打錠成型することもできるが、さらに必要に応じて、例えば、デンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩類等の製剤に通常用いられている添加物を加えることができる。
【0040】
一方、本実施形態の粉末製剤を含有する組成物を医薬品(医薬部外品などを含む)として用いる場合、治療有効量のアラリアジオールを含み、類似の有用性を提供する薬剤について許容されている投与形態のうちの任意のものによって投与されるであろう。治療有効量は、処置されるべき疾患の重篤度、被検体の年齢および相対的な健康状態、投与経路及び形態、投与が向けられる適応症、ならびに関わる医師の好み及び経験などの数多くの要因に応じて設定される。そのような疾患を処置する当業者は、必要以上に実験を行うことなく、かつ個人的な知識および本出願の開示に依存して、所与の疾患に対する、アラリアジオールの治療有効量を突き止めることができるであろう。
【0041】
(アラリアジオール及びこれを含む粉末製剤の製造方法)
本発明の他の側面では、アラリアジオールの製造方法を提供する。図1は、アラリアジオールの製造工程を示すフロー図である。この方法は、ゴツコラの植物体を有機溶媒及び/または水の混合溶媒で抽出する抽出工程(S01)と、得られた抽出液を、疎水性合成吸着剤が充填されたカラムに通液してアラリアジオールをこれに吸着させるカラム吸着工程(S02)と、疎水性合成吸着剤に吸着した成分を有機溶媒及び水の混合溶媒で溶出してアラリアジオールを含む溶出画分を得るカラム溶出工程(S03)と、得られた抽出液を濃縮する濃縮工程(S04)と、を含む。
【0042】
抽出工程(S01)で使用するゴツコラの植物体は、ゴツコラの花、花穂、果実、茎、葉、葉柄、枝、枝葉、根茎、根、種子または全草から抽出するが、その他、同属種を用いることもできる。抽出方法としては、水若しくは有機溶媒(エタノール溶液など)又はそれらの混合液にて抽出することができ、例えば、30~90%エタノール水溶液、好ましくは、50%エタノール水溶液を抽出溶媒として用いる。本実施形態においては、ゴツコラの全草を用いたエタノール抽出物を用いることが好ましい。
【0043】
カラム吸着工程(S02)で用いる吸着剤は、疎水性の高いアラリアジオールを吸着可能な疎水性合成吸着剤であれば特に限定されないが、芳香族系合成吸着剤を用いることが好ましい。「疎水性合成吸着剤」とは、多孔構造を有する架橋高分子で構成された疎水性の吸着剤であり、細孔と被吸着物質間の物理的相互作用により溶液中の種々の有機物を吸着する性質を有するものである。疎水性合成吸着剤の種類は、本発明の目的を達成できる範囲において特に限定されず適宜選択すればよいが、不純物の除去効率がより向上するため、芳香族系合成吸着剤であることが好ましい。「芳香族系合成吸着剤」とは、合成吸着剤を構成する架橋高分子がベンゼン環等の芳香族環基を有するものである。芳香族系合成吸着剤としては、例えば、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体からなる多孔質体が挙げられる。芳香族系合成吸着剤としては、ダイヤイオンHP20、ダイヤイオンHP21、セパビーズSP825、セパビーズSP850、セパビーズSP700、セパビーズSP270(以上、三菱化学株式会社商品名)やアンバーライトXAD4、アンバーライトXAD16HP、アンバーライトXAD1180、アンバーライトXAD2000(以上、ロームアンドハース社商品名)等を例示することができる。
【0044】
本発明のさらなる側面は、アラリアジオール、デキストリン、及びシクロデキストリンを含む粉末製剤を調製する方法である。図2は、当該方法により粉末製剤を製造する工程を示すフロー図である。本方法は、アラリアジオール溶液に、デキストリン、シクロデキストリン等を添加して混合液を得る賦形剤添加工程(S11)と、S11で得られた混合液を均質化して乳化液を調製する均質化工程(S12)と、S12で得られた乳化液を乾燥する乾燥工程(S13)と、乾燥後の粉末製剤を回収する回収工程(S14)と、を含む。
【0045】
賦形剤添加工程(S11)は、アラリアジオールを加えて溶解した油相と、デキストリン、及びシクロデキストリン等の賦形剤を溶解した水相と、を混合することによって達成可能である。
【0046】
均質化工程(S12)では、上記混合液を均質化して乳化液を調製する。乳化方法としては特に制限されるものではなく、従来から飲食品等に用いられている各種の乳化剤、例えば、上述した高分子多糖類や界面活性剤などを添加してホモミキサー、コロイドミル、回転円盤型ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー等を用いて乳化処理することにより安定性の優れた乳化液を得ることができる。
【0047】
このようにして得られた乳化液は、次いで乾燥工程(S13)で乾燥に供される。本製造方法に適用可能な乾燥方法としては、通常、この用途で使用される方法であればいずれのものであってもよく、噴霧乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、棚乾燥、ベルト乾燥、ドラム乾燥などを挙げることができる。このうち、粉体の取り扱いの観点から、噴霧乾燥、凍結乾燥が好ましい。
【0048】
次に実施例を挙げ、本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に何ら制約されるものではない。なお、以下の実施例において、各種成分の添加量を示す数値の単位%は、質量%を意味する。
【実施例
【0049】
[実施例1]ゴツコラ抽出物の調製
ゴツコラの葉、茎または全体の乾燥粉砕物6gに、それぞれ30~90%エタノール75mLを加え、室温で時々攪拌しながら7日間抽出を行った。得られた抽出液を濾過して試験試料とした。これらの試験試料に含まれるアラリアジオールの分析は以下の条件で行った。
【0050】
カラム:Mightysil RP-18 GP 250-4.6(5μm)
溶出液:CHCN:0.1%リン酸=52:48
流速:1.0mL/min
分析温度:40℃
検出:UV210nm
【0051】
ゴツコラ抽出物中のアラリアジオールの含量は、ゴツコラの産地、部位により変動したが、50%エタノール抽出物が最も回収率が高かった。また、ゴツコラの50%エタノール抽出液には、フェニルプロパノイド、フラボノイドおよびトリテルペノイドなどその他の成分も同時に抽出される。上記HPLC分析条件では、保持時間が約24分の位置にアラリアジオールが溶出されることが分かっている。以下の実験では、ゴツコラ抽出物の精製段階及び種々の条件下で保存したサンプルを上記と同じ条件でHPLC分析し、標準品のピーク面積と比較してサンプル中のアラリアジオール濃度を定量した。
【0052】
[実施例2]ゴツコラ抽出物の精製(アラリアジオール濃縮液の作製)
ゴツコラの全草100gに50%エタノールを1500g加え、室温で7日間抽出し、ろ過して抽出液を得た。この抽出液を、芳香族系合成吸着剤(例えばダイヤイオンHP20)約500mLを充填したカラムに付し、50容量%のエタノール約1500mLでその他の成分を溶出後、55容量%のエタノールにて、アラリアジオールを溶出させた。このアラリアジオールを含む画分を濃縮し、濃縮液100mLを得た。この濃縮液には、アラリアジオールが約750μg/mL含まれていた。この濃縮液を50℃の湯浴にてエタノール及び水を蒸発乾固させ、再度エタノールに溶解した。HPLCによりアラリアジオールのピークを測定した結果、アラリアジオールの濃度は、296.2μg/mLであった。
【0053】
[試験例1]ゴツコラ抽出物の保存安定性の測定
実施例1で得られたゴツコラ抽出物をさらに濃縮乾固した粉末を、ラミジップに入れヒートシールして密封保管した。-20℃と40℃の各条件で1か月及び3カ月保管後のサンプル(当該密封保管した粉末)をエタノールに溶解し、実施例1と同じ条件でHPLCにて分析した。保存開始直後(0日)のサンプル中のアラリアジオール量を100としたときの、保存開始から1か月後及び3か月後のサンプル中のアラリアジオールの残存量を以下の表1に示す。表1において、「―20℃」は―20℃で当該サンプルを保管した群、「40℃」は40℃で当該サンプルを保管した群を示す。
【0054】
【表1】
表1に示したように、40℃にて保存開始から3か月保管後のサンプル中のアラリアジオール量は、79.3に低下したことが確認された。保存温度が高くなるとアラリアジオールの分解が促進されると考えられる。
【0055】
[試験例2]アラリアジオール濃縮液の加速劣化試験その1
下記組成物(粉末1、粉末2)を用いて、40℃の加速劣化試験を行った。この試験結果を以下表2に示す。
【0056】
・粉末1:実施例2で得られたアラリアジオール濃縮液を0.1質量%と、高度分岐鎖デキストリン(製品名クラスターデキストリン、日本食品化工株式会社製)を99.9質量%とを混合した粉末1。
・粉末2:実施例2で得られたアラリアジオール濃縮液を0.1質量%と、澱粉分解物(パインデックス#100(DE3.8)、松谷化学工業株式会社製)を99.9質量%とを混合した粉末2。
【0057】
表2では、保存開始直後(0日)のサンプル中のアラリアジオール量を100とした。
【表2】
表2に示した結果(保存開始から1ヶ月の値が17.2及び19.3)より、高度分岐環状デキストリンや澱粉分解物のような従来技術による一般的な賦形剤を添加しただけでは、アラリアジオールの保存安定性を改善するという課題を解決できなかった。
【0058】
[試験例3]アラリアジオール精製物の加速劣化試験その2
下記組成物(組成物1、組成物2、組成物3)を用いて、60℃の加速劣化試験を行った結果を以下の表3に示す。表3では、保存開始直後(0日)のサンプル中のアラリアジオール量を100(100%)とした。
【0059】
・組成物1:実施例2で得られたアラリアジオール濃縮液(0.1質量%)とデキシパールSD-20(99.9質量%)との混合物。このデキシパールSD-20(塩水港精糖株式会社)はシクロデキストリンとデキストリンとを含有する製品である。
・組成物2:実施例2で得られたアラリアジオール濃縮液(0.1質量%)とシクロデキストリン-β(99.9質量%)との混合物。シクロデキストリン-βは、「製品名セルデックスB-100、日本食品化工株式会社」である。
・組成物3:実施例2で得られたアラリアジオール濃縮液(0.1質量%)とオリーブ油(99.9質量%)との混合物。当該オリーブ油は関東化学株式会社製オリーブ油である。
【0060】
この60℃の加速劣化試験は、アレニウスの式に基づき、以下と仮定しての試験である(阪上重幸、川瀬明人:医薬品の保存安定性試験、SCAS NEWS、2000-1、p.7-11)。
・保存開始から14日:40℃の加速劣化試験では、保存開始から2年と仮定
【0061】
【表3】
【0062】
表3に示すように、シクロデキストリンとデキストリンの混合物を賦形剤として用いた場合に、保存開始から14日の群において、0日の群と比べて、90%以上(40℃においては保存開始から2年で90%以上)のアラリアジオールの残量が確認された。
【0063】
[実施例3]製剤1の調製
実施例2で得られたアラリアジオール濃縮液と種々の賦形剤とを用いて粉末製剤を製造した。最初に、表4に示した所定量のポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、シクロデキストリン、アラビアガム及びデキストリンの各水性成分を、85℃に加温した精製水に混合溶解した。次に、表4に示した所定量のアラリアジオール濃縮液、米油及びトコフェロールの油性成分を混合し、50℃に加温して溶解させた。このようにして調製した水性成分混合物及び油性成分混合物を混合し、水にて約100mLとした後、精密乳化分散機クレアミクス(エム・テクニック株式会社製)を用いてホモジナイズした。13000回転、5分間遠心分離して得られた上清を、水が除去されるまで濃縮した後、凍結乾燥機(FDU-2100、東京理化器械株式会社)を用いて凍結乾燥を行った。翌日、得られた凍結乾燥物をラボミルサーにて粉砕し、ラミジップに入れて所定の条件いて保存した。
【0064】
【表4】
【0065】
[実施例4]製剤2の調製
アラビアガムの代わりに、ガティガムを用いる他は、実施例3と同様の方法にて以下の表5に示した組成の製剤2を調製した。
【0066】
【表5】
【0067】
[実施例5]製剤3の調製
実施例3と同様の方法にて以下の表6に示した組成の製剤3を調製した。
【0068】
【表6】
【0069】
なお、実施例3~5で用いた各種賦形剤成分の製品名及び製造元を以下の表7に示す。
【表7】
【0070】
[試験例4]
実施例3~5で製造した製剤1~3を用いて試験例3と同様の方法で加速劣化試験を行った結果を以下の表8に示す。
【0071】
なお、この60℃の加速劣化試験は、アレニウスの式に基づき、以下と仮定しての試験である(阪上重幸、川瀬明人:医薬品の保存安定性試験、SCAS NEWS 2000-1 p.7-11)。保存開始を0日(表8では0日と標記)とした。
・保存開始から7日:40℃の加速劣化試験では、保存開始から1年と仮定。表8では7日と標記。
・保存開始から14日:40℃の加速劣化試験では、保存開始から2年と仮定。表8では14日と標記。
【0072】
表8では、保存開始直後(0日)のサンプル中のアラリアジオール量を100とした。表8では、製剤1をサンプルとした群を「製剤1」、製剤2をサンプルとした群を「製剤2」、製剤3をサンプルとした群を「製剤3」とした。
【0073】
【表8】
【0074】
表8に示した結果より、いずれの群でも、14日においても、0日と比べ、90%以上のアラリアジオールの残量を確認できた。
【0075】
以上、本発明の実施の形態(実施例も含め)について、図面を参照して説明してきたが、本発明の具体的構成は、これに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、設計変更等があっても、本発明に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の粉末製剤はアラリアジオールが安定化されていること(室温にて1年以上の期間保存した後も安定であることが推測されることなど)から、例えば、当該粉末製剤を含む医薬品や機能性食品として利用できる可能性がある。


【要約】
【課題】アラリアジオールを医薬品や機能性食品として用いる場合の安定化された製剤及びその製造方法を提供する。
【解決手段】アラリアジオール、デキストリン及びシクロデキストリンを含有する粉末製剤。高分子多糖類をさらに含むことが好ましい。
【選択図】なし



図1
図2