(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】拡管金型及び縮管金型、及び各金型装置
(51)【国際特許分類】
B21D 39/20 20060101AFI20221018BHJP
B21D 43/00 20060101ALI20221018BHJP
B21D 41/02 20060101ALI20221018BHJP
B21D 41/04 20060101ALI20221018BHJP
B21D 37/02 20060101ALI20221018BHJP
B21D 37/01 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
B21D39/20 A
B21D43/00 A
B21D41/02 A
B21D41/04 C
B21D37/02 A
B21D37/01
(21)【出願番号】P 2018152618
(22)【出願日】2018-08-14
【審査請求日】2021-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】593060931
【氏名又は名称】株式会社 英田エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100093089
【氏名又は名称】佐久間 滋
(72)【発明者】
【氏名】万殿 貴志
(72)【発明者】
【氏名】小林 幸広
【審査官】山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-030841(JP,U)
【文献】特開平01-127122(JP,A)
【文献】特開昭63-119938(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 39/20
B21D 43/00
B21D 41/02
B21D 41/04
B21D 37/02
B21D 37/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管(13)
が押し込まれるように構成され、押し込まれた前記管(13)の端部を含む所定部分の管径を拡大するよう加工する拡管金型において、
金型ベース(31)と、
該金型ベース(31)に固定されて軸方向に伸びる芯金型(32)と、
前記芯金型(32)の先端に固着された先端金型(33)と、
前記金型ベース(31)と前記先端金型(33)との間にて、前記芯金型の外周に嵌合され且つ外径寸法が前記先端金型(33)側から前記金型ベース側へ向けて徐々に大きくなる所定外形寸法(D1~D3)の外周テーパ部(34a、51a、53a)を有する外周リング金型(34、51、53)と、
を備え、
前記管(13)の
前記所定部分の内径部が、少なくとも前記外周リング金型(34、51、53)の外周テーパ部(34a、51a、53a)に押込み方向に押し当てられたときに、前記管(13)の
前記所定部分の少なくとも一部の管径が拡大加工される、
拡管金型。
【請求項2】
請求項1に記載の拡管金型において、
前記金型ベース(31)、芯金型(32)及び先端金型(33)はボルト(36~38)により互いに一体固定されている、
拡管金型。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の拡管金型において、
前記外周リング金型(34、51、53)は、軸方向に積重された二以上の部分外周リング金型(34A~34E、51A~51E、53A~53E)から構成された、
拡管金型。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の拡管金型において、
前記先端金型(33)は、その外周に外径寸法が先端側から前記金型ベース側へ向けて徐々に大きくなる外周テーパ部(33a2、33b2、33c)を有し、
前記管(13)の内径部が最初に該外周テーパ部(33a2、33b2、33c)により拡管加工される、
拡管金型。
【請求項5】
請求項4に記載の拡管金型において、
前記先端金型(33A~33C)の外周テーパ部(33a2、33b2、33c)と、前記前記外周リング金型(34、51、53)の外周テーパ部(34a、51a、53a)とは、テーパ角度値が互いに異なる、
拡管金型。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の拡管金型において、
前記先端金型(33A、33B)はその先端側に管(13)を案内するガイド部(33a1、33b1)を有する、
拡管金型。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れかに記載の拡管金型において、
少なくとも前記先端金型(33)及び外周リング金型(34、51、53)は高い硬度を有する材料を使用するか、又は材料の表面を硬化処理又は内部を硬化処理のうちの少なくとも表面硬化処理が行われて形成されている、
拡管金型。
【請求項8】
請求項7に記載の拡管金型において、
前記先端金型(33)及び外周リング金型(34、51、53)は、前記材料の表面を硬化処理して形成されている、
拡管金型。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の拡管金型において、
前記表面硬化処理は、低温TICコーティング処理である、
拡管金型。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れかに記載の拡管金型が、管を複数段階で拡管するために複数組分(15A~15C)設けられ、
各組(15A~15C)の前記外周リング金型(34、51、53)の外径寸法(D1~D3)が、所定の寸法関係(D1<D2<D3)を満たすように異なり、
前記管(13)が複数組の拡管金型(15A~15C)により順次拡管加工されてその内径寸法が順次拡大される、
拡管金型セット。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れかに記載の少なくとも一つの前記拡管金型(15A~15C)と、
前記金型ベース(31)に隣接して、前記外周リング金型(34、51、53)の外周近傍に設けられた離型部材(16)と
を備える
、拡管金型装置であって、
該離型部材(16)により、拡管加工を終了した管(13)を、前記押込み方向とは逆方向へ押し戻して前記外周リング金型(34、51、53)及び先端金型(33)から離間させる、
拡管金型装置。
【請求項12】
請求項11に記載の拡管金型装置であって、
前記金型ベース(31)又はこれと一体の部材に取付けた第1の検出部材(44)と、前記離型部材(16)に取り付けた第2の検出部材(45)とからなる検出装置(43)を備え、
前記離型部材(16)が拡管加工される前記管(13)により押圧されて移動されたときに、該検出装置(43)により管(13)の拡管加工終了を検出する、
拡管金型装置。
【請求項13】
管(13)
が押し込まれるように構成され、押し込まれた前記管(13)の端部を含む所定部分の管径を縮小するよう加工する縮管金型において、
金型ベース(31A)と、
該金型ベース(31A)に固定されて軸方向に伸びる外周筒形金型(61)と、
前記外周筒形金型(61)の先端に固着された先端筒形金型(62)と、
前記金型ベース(31A)と前記先端筒形金型(62)との間にて、前記外周筒形金型(61)の内周に嵌合され且つ内径寸法が前記先端筒形金型(62)側から前記金型ベース側へ向けて徐々に小さくなる所定内径寸法(d1~d3)の内周テーパ部(63a、78a、79a)を有する内周リング金型(63、78、79)と、
を備え、
前記管(13)の
前記所定部分の外径部が、少なくとも前記内周リング金型(63、78、79)の内周テーパ部(63a、78a、79a)に対して押込み方向に押し当てられたときに、前記管(13)の
前記所定部分の少なくとも一部の管径が縮小加工される、
縮管金型。
【請求項14】
請求項13に記載の縮管金型において、
前記金型ベース(31A)、外周筒形金型(61)及び先端筒形金型(62)はボルト(65~67)により互いに一体固定されている、
縮管金型。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の縮管金型において、
前記内周リング金型(63)は、軸方向に積重された二以上の部分内周リング金型(63A~63D、78A~78D、79A~79D)から構成された、
縮管金型。
【請求項16】
請求項13乃至15の何れかに記載の縮管金型において、
前記先端筒形金型(62)は、その内周に内径寸法が先端側から前記金型ベース側へ向けて徐々に小さくなる内周テーパ部(62a2、62b2、62c)を有し、
前記管(13)の外径部が最初に該内周テーパ部(62a2、62b2、62c)により縮管加工される、
縮管金型。
【請求項17】
請求項16に記載の
縮管金型において、
前記先端筒形金型(62)の内周テーパ部(62a2、62b2、62c)と、前記内周リング金型(63、78、79)の内周テーパ部(63a、78a、79a)とは、テーパ角度値が互いに異なる、
縮管金型。
【請求項18】
請求項13乃至17の何れかに記載の縮管金型において、
前記先端金型(62)はその先端側に管(13)を案内するガイド部(62a1、62b1)を有する、
縮管金型。
【請求項19】
請求項13乃至18の何れかに記載の
縮管金型において、
少なくとも前記先端金型(33)及び外周リング金型(34、51、53)は高い硬度を有する材料を使用するか、又は材料の表面を硬化処理又は内部を硬化処理のうちの少なくとも表面硬化処理が行われて形成されている、
縮管金型。
【請求項20】
請求項19に記載の
縮管金型において、
前記先端金型(33)及び外周リング金型(34、51、53)は、前記材料の表面を硬化処理して形成されている、
縮管金型。
【請求項21】
請求項19又は20に記載の拡管金型において、
前記表面硬化処理は、低温TICコーティング処理である、
縮管金型。
【請求項22】
請求項13乃至20の何れかに記載の縮管金型が、管を複数段階で縮管するために複数組分(21A~21C)設けられ、
各組(21A~21C)の前記内周リング金型(63、78、79)の内径寸法(d1~d3)が、所定の寸法関係(d1>d2>d3)を満たすように異なり、
前記管(13)が複数組の縮管金型(21A~21C)により順次縮管加工されてその外径寸法が順次縮小される、
縮管金型セット。
【請求項23】
請求項13乃至22の何れかに記載の縮管金型と、
前記金型ベース(31A)に隣接して、前記内周リング金型(63、78、79)の内周近傍に設けられた離型押圧部材(73)と
を備える
、縮管金型装置であって、
該離型押圧部材(73)により、縮管加工を終了した管(13)を前記押込み方向とは逆方向へ押し戻して前記内周リング金型(63、78、79)及び先端金型(62)から離間させる、
縮管金型装置。
【請求項24】
請求項23に記載の縮管金型装置であって、
前記金型ベース(31A)又はこれと一体の部材(71)に取付けた第1の検出部材(44)と、前記離型部材(16)に取り付けた第2の検出部材(45)とからなる検出装置(43)を備え、
前記離型押圧部材(73)が縮管加工される前記管(13)により押圧されて移動されたときに、該検出装置(43)により管(13)の縮管加工終了を検出する、
縮管金型装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管、特に鋼管の直径が大きくなるよう(拡管)又は小さくなるよう(縮管)加工するための金型、及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車給油管等の比較的小径の鋼管の端部を拡管加工するには、例えば、特開2001-179368号公報に示す如く、鋼管1の開口部側に、金型としてのポンチ2の先端テーパ部を押込んで(逆に言えば、鋼管1の開口部をポンチ2の先端テーパ部に嵌合させて押込み)、鋼管1の開口部側端部の直径を拡大(拡管)していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1に記載される従来の鋼管の拡管装置では、金型としてのポンチ2が一体部材で有るため、例えば鋼管電柱に使用する鋼管の如く、鋼管の拡管変形部分の直径及び長さが大きい場合には、ポンチ2の形状及び重量が大きくなり、材料費も高くなり、また鋼管1を複数段階に分けて順次大きな径になるよう拡管変形させたい場合には、複数種類のポンチ2を用意する必要が有って、一層コストが高くなるという問題点があった。
【0005】
また、鋼管を縮管させる場合にも同様の問題点があった。
本発明は上記問題点に着目してなされたもので、鋼管の拡管又は縮径変形させたい部分の直径及び長さが大きい場合でも、容易に且つ安価に拡管又は縮径加工が可能な拡管金型及び縮管金型、及び各金型装置と提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明による拡管金型は、
管(13)の管径を拡大するよう加工する拡管金型において、
金型ベース(31)と、
該金型ベース(31)に固定されて軸方向に伸びる芯金型(32)と、
前記芯金型(32)の先端に固着され且つ外径寸法が先端側から前記金型ベース側へ向けて徐々に大きくなる外周テーパ部(33a)を有する先端金型(33)と、
前記金型ベース(31)と前記先端金型(33)との間にて、前記芯金型の外周に嵌合され且つ外径寸法が前記先端金型(33)側から前記金型ベース側へ向けて徐々に大きくなる所定外形寸法(D1~D3)の外周テーパ部(34a、51a、53a)を有する外周リング金型(34、51、53)と、を備え、
前記管(13)の内径部が、少なくとも前記外周リング金型(34、51、53)の外周テーパ部(34a、51a、53a)に押込み方向に押し当てられたときに、前記管(13)の管径が拡大加工される、拡管金型である。
【0007】
好ましくは、前記金型ベース(31)、芯金型(32)及び先端金型(33)はボルト(36~38)により互いに一体固定されている、拡管金型。
また好ましくは、前記外周リング金型(34、51、53)は、軸方向に積重された二以上の部分外周リング金型(34A~34E、51A~51E、53A~53E)から構成される。
【0008】
更に好ましくは、前記先端金型(33)は、その外周に外径寸法が先端側から前記金型ベース側へ向けて徐々に大きくなる外周テーパ部(33a2、33b2、33c)を有し、前記管(13)の内径部が最初に該外周テーパ部(33a2、33b2、33c)により拡管加工される。
【0009】
更に好ましくは、前記先端金型(33A~33C)の外周テーパ部(33a2、33b2、33c)と、前記前記外周リング金型(34、51、53)の外周テーパ部(34a、51a、53a)とは、テーパ角度値が互いに異なる。
【0010】
更に好ましくは、前記先端金型(33A、33B)はその先端側に管(13)を案内するガイド部(33a1、33b1)を有する。
更に好ましくは、少なくとも前記先端金型(33)及び外周リング金型(34、51、53)はSKD11材料を高温焼戻し処理及び低温TICコーティング処理した後に外周表面を鏡面仕上げして形成される。
【0011】
また、本発明は、上記拡管金型が、管を複数段階で拡管するために複数組分(15A~15C)設けられ、各組(15A~15C)の前記外周リング金型(34、51、53)の外径寸法(D1~D3)が、所定の寸法関係(D1<D2<D3)を満たすように異なり、前記管(13)が複数組の拡管金型(15A~15C)により順次拡管加工されてその内径寸法が順次拡大される、拡管金型セットである。
【0012】
更に、本発明は、少なくとも一つの前記拡管金型(15A~15C)と、前記金型ベース(31)に隣接して、前記外周リング金型(34、51、53)の外周近傍に設けられた離型部材(16)とを備える金型装置であって、該離型部材(16)により、拡管加工を終了した管(13)を、前記押込み方向とは逆方向へ押し戻して前記外周リング金型(34、51、53)及び先端金型(33)から離間させる、拡管金型装置である。
【0013】
好ましくは、前記金型ベース(31)又はこれと一体の部材に取付けた第1の検出部材(44)と、前記離型部材(16)に取り付けた第2の検出部材(45)とからなる検出装置(43)を備え、前記離型部材(16)が拡管加工される前記管(13)により押圧されて移動されたときに、該検出装置(43)により管(13)の拡管加工終了を検出する。
【0014】
また、他の本発明は、管(13)の管径を縮小するよう加工する縮管金型において、
金型ベース(31A)と、
該金型ベース(31A)に固定されて軸方向に伸びる外周筒形金型(61)と、
前記外周筒形金型(61)の先端に固着され且つ内径寸法が先端側から前記金型ベース側へ向けて徐々に小さくなる内周テーパ部(62a)を有する先端筒形金型(62)と、
前記金型ベース(31A)と前記先端筒形金型(62)との間にて、前記外周筒形金型(61)の内周に嵌合され且つ内径寸法が前記先端筒形金型(62)側から前記金型ベース側へ向けて徐々に小さくなる所定内径寸法(d1~d3)の内周テーパ部(63a、78a、79a)を有する内周リング金型(63、78、79)と、を備え、
前記管(13)の外径部が、少なくとも前記内周リング金型(63、78、79)の内周テーパ部(63a、78a、79a)に対して押込み方向に押し当てられたときに、前記管(13)の管径が縮小加工される。
【0015】
好ましくは、前記金型ベース(31A)、外周筒形金型(61)及び先端筒形金型(62)はボルト(65~67)により互いに一体固定されている。
また好ましくは、前記内周リング金型(63)は、軸方向に積重された二以上の部分内周リング金型(63A~63D、78A~78D、79A~79D)から構成される。
【0016】
更に好ましくは、前記先端筒形金型(62)は、その内周に内径寸法が先端側から前記金型ベース側へ向けて徐々に小さくなる内周テーパ部(62a2、62b2、62c)を有し、前記管(13)の外径部が最初に該内周テーパ部(62a2、62b2、62c)により縮管加工される。
【0017】
更に好ましくは、前記先端筒形金型(62)の内周テーパ部(62a2、62b2、62c)と、前記内周リング金型(63、78、79)の内周テーパ部(63a、78a、79a)とは、テーパ角度値が互いに異なる。
【0018】
更に好ましくは、前記先端金型(62)はその先端側に管(13)を案内するガイド部(62a1、62b1)を有する。
更に好ましくは、少なくとも前記先端金型(62)及び内周リング金型(63、78、79)はSKD11材料を高温焼戻し処理及び低温TICコーティング処理した後に内周表面を鏡面仕上げして形成されている。
【0019】
また本発明は、前記縮管金型が、管を複数段階で縮管するために複数組分(21A~21C)設けられ、
各組(21A~21C)の前記内周リング金型(63、78、79)の内径寸法(d1~d3)が、所定の寸法関係(d1>d2>d3)を満たすように異なり、
前記管(13)が複数組の縮管金型(21A~21C)により順次縮管加工されてその外径寸法が順次縮小される、縮管金型セットである。
【0020】
また本発明は、前記縮管金型と、
前記金型ベース(31A)に隣接して、前記内周リング金型(63、78、79)の内周近傍に設けられた離型押圧部材(73)とを備える金型装置であって、該離型押圧部材(73)により、縮管加工を終了した管(13)を前記押込み方向とは逆方向へ押し戻して前記内周リング金型(63、78、79)及び先端金型(62)から離間させる、縮管金型装置である。
【0021】
好ましくは、前記金型ベース(31A)又はこれと一体の部材(71)に取付けた第1の検出部材(44)と、前記離型部材(16)に取り付けた第2の検出部材(45)とからなる検出装置(43)を備え、前記離型押圧部材(73)が縮管加工される前記管(13)により押圧されて移動されたときに、該検出装置(43)により管(13)の縮管加工終了を検出する、縮管金型装置である。
【発明の効果】
【0022】
以下は、本発明から得られる効果である。
(1) 管(13)を拡管する拡管金型が、大略、芯金型(32)、先端金型(33)及び外周テーパ部(34a、51a、53a)付き外周リング金型(34、51、53)の3つの構成部品を組付けて構成されるので、芯金型(32)は共通使用のままで先端金型(33)及び外周リング金型(34、51、53)を交換することにより、管(13)の拡径寸法の変化に対応できるため、種々の拡管加工に対応でき、また芯金型(32)の共通使用によりコストを低減し得る。
【0023】
(2) 金型ベース(31)、芯金型(32)及び先端金型(33)はボルトにより互いに一体固定されるため、組付け作業が簡単で且つ構成が堅固である。
(3) 外周リング金型(34)は、軸方向に積重された二以上の部分外周リング金型(34A~34E)から構成されるため、外周リング金型(34)の軸方向全長が大きいときは、一つの部材から製作するものに比して製作が容易になる。また、個々の部分外周リング金型(34A~34E)は小型化し得るから、TiCコーティング処理コストが低減される。また、部分外周リング金型(34A~34E)のいずれかが摩耗した際、当該摩耗した部分金型の交換のみでよくコストが低減される。また外周リング金型(34)の一定全長の範囲内で個々の部分外周リング金型(34A~34E)の長さ寸法の変更や、複数の部分外周リング金型を一体化してモジュール化し得る等の汎用性もある。
【0024】
(4) 先端金型(33)に外周テーパ部(33a2、33b2、33c)を設けることにより、管(13)の内径部が最初にある程度拡管加工されるため後工程の外周リング金型(34、51、53)による拡管加工が容易になる。
【0025】
(5) 先端金型(33A~33C)の外周テーパ部(33a2、33b2、33c)と、前記外周リング金型(34、51、53)の外周テーパ部(34a、51a、53a)とは、テーパ角度値が互いに異なる(例えば、前者のテーパ角度が後者のテーパ角度より大きい)ため、管(13)を例えば、前者の外周テーパ部(33a2、33b2、33c)により所定径の嵌合部径まで拡径し、次いで後者の外周テーパ部(34a、51a、53a)により上記嵌合部に所定のテーパ角度を付与することができる。
【0026】
先端金型(33)及び外周リング金型(34、51、53)の外周テーパ部の異なるテーパ角度値に基づいて一つの管(13)に異なるテーパ角度値の拡管部分を加工することも可能である。
【0027】
(6) 先端金型(33A、33B)はその先端側に管(13)を案内するガイド部(33a1、33b1)を有するため、パイプ(13)は円滑且つ容易に外周リング金型(34、51)へ案内される。
【0028】
(7) 少なくとも先端金型(33)及び外周リング金型(34、51、53)はSKD11材料を高温焼戻し処理及び低温TICコーティング処理した後に外周表面を鏡面仕上げして形成されているため、先端金型(33)及び外周リング金型(34、51、53)の外周表面は硬くて滑りが良くしかも耐摩耗性が大きくなるので、管(13)の加工時の押込み移動が円滑となると共に金型自体も傷みが無く耐久性が向上して、拡管加工を円滑に行い得る。
【0029】
(8) 先端金型(33)の少なくとも外周テーパ部(33a)の形状と、外周リング金型(34、51、53)の外径寸法とが異なるような複数組の拡管金型が設けられているため、管(13)を段階的に拡管し得るので良好且つ幅広い拡管加工を行い得る。
【0030】
(9) 拡管金型に隣接して離型部材(16)を設けた金型装置を構成しているため、拡管加工を終了した管(13)を当初の押込み方向とは逆方向へ押し戻して管(13)を金型から容易に離間させることができる。
【0031】
(10) 離型部材(16)に取り付けた検出装置(43)により管(13)の拡管加工終了を検出し得るため、正確な拡管加工を行い得る。
(11) 管(13)を縮管する縮管金型が、大略、外周筒形金型(61)、先端筒形金型(62)及び内周テーパ部(63a、78a、79a)付き内周リング金型(63、78、79)の3つの構成部品を組付けて構成されるので、外周筒形金型(61)は共通使用のままで先端筒形金型(62)及び内周リング金型(63、78、79)を交換することにより、管(13)の拡径寸法の変化に対応できるため、種々の縮管加工に対応できまた外周筒形金型(61)の共通使用によりコストを低減し得る。
【0032】
(12) 金型ベース(31A)、外周筒形金型(61)及び先端筒形金型(62)はボルトにより互いに一体固定されるため、組付け作業が簡単で且つ構成が堅固である。
(13) 内周リング金型(63)は、軸方向に積重された二以上の部分内周リング金型(63A~63D)から構成されるため、内周リング金型(63)の軸方向全長が大きいときは、一つの部材から製作するものに比して製作が容易となる。また、個々の部分内周リング金型(63A~63D)は小型化し得るから、TiCコーティング処理コストが低減される。また、部分内周リング金型(63A~63D)のいずれかが摩耗した際、当該摩耗した部分金型の交換のみでよくコストが低減される。また内周リング金型(63)の一定全長の範囲内で個々の部分内周リング金型(63A~63D)の長さ寸法の変更や、複数の部分内周リング金型を一体化してモジュール化し得る等の汎用性もある。
【0033】
(14) 先端筒形金型(62)に内周テーパ部(62a2、62b2、62c)を設けることにより管(13)の外径部が最初にある程度縮管加工されるため、後工程の内周リング金型(63、78、79)による縮管加工が容易になると共に、先端筒形金型(62)及び内周リング金型(63、78、79)の内周テーパ部の異なるテーパ角度値に基づいて一つの管(13)に異なるテーパ角度値の縮管部分を加工することも可能である。
【0034】
(15) 先端筒形金型(62)の内周テーパ部(62a2、62b2、62c)と、内周リング金型(63、78、79)の内周テーパ部(63a、78a、79a)とは、テーパ角度値が互いに異なる(例えば、前者のテーパ角度が後者のテーパ角度より大きい)ため、管(13)を例えば、前者の内周テーパ部(62a2、62b2、62c)により所定径の嵌合部径まで縮径し、次いで後者の内周テーパ部(63a、78a、79a)により上記嵌合部に所定のテーパ角度を付与することができる。
【0035】
(16) 先端筒形金型(62)はその先端側に管(13)を案内するガイド部(62a1、62b1)を有するため、パイプ(13)は円滑且つ容易に内周リング金型(63、78)へ案内される。
【0036】
(17) 少なくとも前記先端筒形金型(62)及び内周リング金型(63)はSKD11材料を高温焼戻し処理及び低温TICコーティング処理した後に外周表面を鏡面仕上げして形成されているため、先端筒形金型(62)及び内周リング金型(63)の内周表面は硬くて滑りが良くしかも耐摩耗性が大きくなるので、管(13)の加工時の押込み移動が円滑となると共に金型自体も傷みが無く耐久性が向上して、縮管加工を円滑に行い得る。
【0037】
(18) 先端筒形金型(62)の少なくとも内周テーパ部(62a)の形状と、前記内周リング金型(63)の外径寸法とが異なるような複数組の縮管金型が設けられているため、管(13)を段階的に縮管し得るので良好且つ幅広い縮管加工を行い得る。
【0038】
(19) 縮管金型に隣接して離型部材(73)を設けた金型装置であるため、縮管加工を終了した管(13)を当初の押込み方向とは逆方向へ押し戻して管(13)を金型から容易に離間させることができる。
【0039】
(20) 離型押圧部材(73)に取り付けた検出装置(43)により管(13)の縮管加工終了を検出し得るため、正確な縮管加工を行い得る。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明に係る拡管金型及び縮管金型を適用した、拡管又は縮管加工装置の全体を示す平面図である。
【
図2】
図1に示した拡管又は縮管加工装置の側面図である。
【
図3】
図1に示した拡管又は縮管加工装置の正面図である。
【
図6】
図6A及び
図6Bは夫々、
図5のクランプが、管をクランプした状態を示す正面図及び側面図である。
【
図7】本発明に係る拡管金型の第1の実施形態の外観斜視図である。
【
図8】上記拡管金型の第1の実施形態の断面図である。
【
図9】上記拡管金型の第2の実施形態の断面図である。
【
図10】上記拡管金型の第3の実施形態の断面図である。
【
図12】本発明に係る縮管金型の第1の実施形態を切断して示す外観斜視図である。
【
図13】上記縮管金型の第1の実施形態の断面図である。
【
図14】上記縮管金型の第2の実施形態の断面図である。
【
図15】上記縮管金型の第3の実施形態の断面図である。
【
図18】
図18A及び
図18Bは夫々、管を段階的に拡管加工する際に、第1段階工程前の管単独状態、及び該管を第1の拡管金型に押込み加工終了した状態を示す図である。
【
図19】
図19A及び
図19Bは夫々、同上、第2段階工程前の管単独状態、及び該管を第2の拡管金型に押込み加工終了した状態を示す図である。
【
図20】
図20A及び
図20Bは夫々、同上、第3段階工程前の管単独状態、及び該管を第3の拡管金型に押込み加工終了した状態を示す図である。
【
図23】
図23A及び
図23Bは夫々、管を段階的に縮管加工する際に、第1段階工程前の管単独状態、及び該管を第1の縮管金型に押込み加工終了した状態を示す図である。
【
図24】
図24A及び
図24Bは夫々、同上、第2段階工程前の管単独状態、及び該管を第2の縮管金型に押込み加工終了した状態を示す図である。
【
図25】
図25A及び
図25Bは夫々、同上、第3段階工程前の管単独状態、及び該管を第3の縮管金型に押込み加工終了した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明に係る拡管金型及び縮管金型及びこれらを適用した拡管又は縮管加工装置の各実施形態を図面に基づいて説明する。
図1~
図3は夫々、本発明に係る拡管金型及び縮管金型を適用した、拡管又は縮管加工装置の全体を示す平面図、側面図、及び正面図である。
【0042】
各図中、拡管又は縮管加工装置1は、大略、鋼管加工部2と、鋼管(以下パイプという)13を搬入する搬入テーブル3、及び搬出する搬出テーブル4とを有する。なおパイプ13は鋼管に限ることなく、銅、アルミニウム等の他の金属材料でも良い。
【0043】
鋼管加工部2は、フレーム5と、図中左側のパイプ押圧用油圧シリンダ6を支持する左側架台7と、図中右側の離型リング押圧用油圧シリンダ8を支持する右側架台9と、中間位置の複数のクランプ10(
図5参照)とを有する。左側油圧シリンダ6のシリンダロッド6aには延長軸11が取付けられ、また右側油圧シリンダ8のシリンダロッド8aには押圧シャフト12が取付けられている。なお、延長軸11はパイプ13の長さの変化に対応して異なる長さの複数種類が用意される。
【0044】
13は拡管又は縮管加工される所定長さの電柱等に使用される鋼管(以下、パイプという)であり、フレーム5上方位置で複数の送りローラ14上に載置され、該送りローラ14の回転に伴い延長軸11に当接される。しかる後に、パイプ13がクランプ10によりクランプされると、送りローラ14は下方へ逃げ移動して、クランプ状態のパイプ13の加工を可能にする。
【0045】
15は拡管金型で、右側架台9に対して鋼管加工部2の軸線方向と直交する方向に往復移動可能に設けられた金型取付基板17に取付けられ(
図4A及び4B参照)、1段目拡管金型15A、2段目拡管金型15B、及び3段目拡管金型15Cを備える。各金型15A~15Cは夫々、水平方向に伸び且つ平面図(
図1)で見て図中上下方向に所定ピッチで配設されている。
【0046】
16は拡管金型15に使用される離型リングで、3つの離型リング16A~16Cを備え、各離型リング16A~16Cは、後述する如く各段の拡管金型15A~15Cの根元部分に嵌合配置されている。(
図7~
図10参照)
21は、同じく右側架台9の上記金型取付基板17に取付けられた縮管金型で、1段目縮管金型21A、2段目縮管金型21B、及び3段目縮管金型21Cを備える。各縮管金型21A~21Cは夫々、水平方向に伸び且つ平面図(
図1)で見て所定ピッチで配設されている。
【0047】
クランプ10は、
図5A及び5Bに示す如く、フレーム5の架台22に枢動自在に取付けられた一対のクランプアーム10A及び10Bを備え、油圧シリンダ23のシリンダロッド24の上方移動に伴い、押プレート27が上方へ移動され、ローラフォロワ28を介してクランプアーム10A及び10Bが閉鎖方向に回動して、パイプ13をクランプする。(
図6A及び6B参照)
なお
図2中、符号26は、分割式の拘束ロッドであり、一対の架台7及び9が拡管又は縮管加工時に倒れ変形しないように拘束するもので、ナット26aにより張力を調節可能である。
【0048】
次に、拡管金型の詳細を
図7~
図10を使用して説明する。
図7及び
図8中、1段目拡管金型15Aは、円板形の金型ベース31と、円柱形の芯金型32と、第1の先端金型33Aと、金型ベース31及び第1の先端金型33A間で芯金型32に嵌合された複数の外周リング金型34A~34E(外径寸法D1)とを備え、芯金型32は、機械加工の便宜上軸方向に積重した二つの部分芯金型32A及び32Bを組合せてなるが、これに限らず単一の部材でもよく又は3個以上の芯金型を組合せてもよい。金型ベース31、部分芯金型32A及び32B、及び第1の先端金型33Aは沈みボルト36~38により強固に一体固着されている。なお、35は芯金型32Aの根元部に嵌合されたカラーである。
【0049】
ここで、先端金型33Aの比較的大きなテーパ角の先端側テーパ部分はパイプ13が先端金型33Aに嵌合挿入される際に該パイプ13をガイドするガイド部33a1であり、根元側の比較的小さなテーパ角のテーパ部33a2がパイプ13を最初に拡管加工する部分となる。
【0050】
また、上記1段目拡管金型15Aの外径寸法D1は、複数の外周リング金型34A~34Eにわたって同一寸法ではなく、金型先端側から根元方向へ向けて外径が徐々に大きくなるような僅かなテーパ角(例えば0.3度~8.0度)の外周テーパ部34aを形成している。これにより、拡管加工後のパイプ13が1段目拡管金型15Aの外周部から容易に抜け出ることが可能となる。この点については、後述する2段目及び3段目拡管金型15B及び15Cについても同様である。
【0051】
更に、1段目拡管金型15Aの材料としては、高い硬度を必要とする先端金型33A及び外周リング金型53は、SKD11(JIS規格)材料を高温焼戻し処理及び低温TICコーティング処理した後に外周表面を鏡面仕上げして、算術平均粗さRaが例えば0.1以下の値としたものである。先端金型33A及び外周リング金型53は上記材料に限ることなく高い硬度を有する超硬合金等の材料又でもよく、また低温TICコーティング処理に限らず他の硬化処理(表面だけでなく表面以外が硬化してもよい)でもよい。また芯金型32は、例えばS45C(JIS規格)の焼き入れ及び焼戻し材料により形成されている。以下の、2段目及び3段目拡管金型15B及び15Cについても同様である。なお、上記低温TICコーティング処理とは、TIC(炭化チタン)を鉄鋼材等の表面に400~600°C等の低温でCVD法又はPVD方法により蒸着する処理であり、鉄鋼材の耐摩耗性及び耐食性の向上及び樹脂への離型性を向上させるものである。
【0052】
40は離型リング16Aにボルト41により取付けられた当接ピンで、後述する如く、油圧シリンダ8のシリンダロッド8aの押圧シャフト12により図中左方向へ押圧される。これにより、離型リング16Aは、その貫通孔16aに貫通された案内ロッド42(金型ベース31に固着)により案内されて同方向へスライドして拡管加工終了後のパイプ13を金型15Aから離間させる。
【0053】
図7中、43は離型リング16Aの位置を例えば磁気誘導的に検出する近接式検出装置で、固定配置されたセンサ44と、離型リング16Aに取付けられたドグ45とを備える。
【0054】
次に、
図9中、2段目拡管金型15Bは、1段目拡管金型15Aとほぼ同様の構成であるが、第2の先端金型33Bは2段階外周テーパ部33b1及び33b2のテーパ角、及び直径寸法が、第1の先端金型33Aの対応部分の寸法とは異なり、また複数の外周リング金型51A~51E(外径寸法D2)とを備え、この外径寸法D2は上記外周リング金型34の外径寸法D1より大きい(D2>D1)外周テーパ部51aを形成している。なお、16Bは離型リング、52はカラーである。
【0055】
次に、
図10中、3段目拡管金型15Cは、先の拡管金型15A及び15Bとほぼ同様の構成であるが、第3の先端金型33Cは外周テーパ部33cのテーパ角、及び直径寸法が、先の先端金型33A及び33Bの対応部分の寸法とは異なり、また複数の外周リング金型53A~53E(外径寸法D3)とを備え、この外径寸法D3は上記外周リング金型51の外径寸法D2より大きい(D3>D2)外周テーパ部53aを形成している。なお、16Cは離型リング、54はカラーである。また、3段目拡管金型15Cの第3の先端金型33Cの外周テーパ部33cの先端側に、1段目及び2段目拡管金型15A及び15Bの先端金型33A及び33Bのガイド部33a1及び33b1の如きガイド部が設けられていないが、その理由は、パイプ13の端部が1段目及び2段目拡管金型15A及び15Bによる加工によりすでにある程度拡管加工されているので、第3の先端金型33Cの先端側にガイド部が無くとも該第3の先端金型33Cに良好に嵌合され得るからである。これは、後述する3段目縮管金型21Cの第3の先端金型62C(
図15参照)についても同様である。
【0056】
なお、先端金型33A~33Cの外周テーパ部33a2、33b2、33cと、外周リング金型34、51、53の外周テーパ部34a、51a、53aとは、テーパ角度値が互いに異なる(例えば、前者のテーパ角度が後者のテーパ角度より大きい)ため、パイプ13を例えば、前者の外周テーパ部33a2、33b2、33cにより所定径の嵌合部径まで拡径し、次いで後者の外周テーパ部34a、51a、53aにより上記嵌合部に所定のテーパ角度を付与することができる。しかしながら、場合によっては、先端金型33A~33C及び外周リング金型34、51、53のテーパ部どうしは同一のテーパ角度値でも良い。これらについては、後述する縮管金型の先端筒形金型62及び内周リング金型63、78、79の各内周テーパ部の関係についても同様である。
【0057】
また、上述した先端金型33の外周テーパ部と、外周リング金型34、51、53の外周テーパ部とでテーパ角度値が互いに異なる値に切り替わる地点は、先端金型33及び外周リング金型34の境目に限ることなく、先端金型33の軸方向寸法範囲内の地点で切り替わってもよく、また各外周リング金型34、51、53の軸方向寸法範囲内の地点で切り替わっても良い。このテーパ角度値が切り替わる地点については、後述する縮管金型の先端筒形金型62及び内周リング金型63、78、79の各内周テーパ部の関係についても同様である。
【0058】
更に、先端金型33及び外周リング金型34、51、53の外周テーパ部の断面形状は直線に限らず、凸状曲線または凹状曲線でも良い。これについては、縮管金型の先端筒形金型62及び内周リング金型63、78、79の各内周テーパ部についても同様である。
【0059】
なお、
図11A及び11Bに、外周リング金型34(51、53)を示す。
次に、縮管金型の詳細を
図12~
図15を使用して説明する。
図12及び
図13中、1段目縮管金型21Aは、円板形の金型ベース31Aと、円筒形の外周筒形金型61と、第1の先端金型62Aと、金型ベース31A及び第1の先端金型62A間で外周筒形金型61に挿入嵌合された複数の内周リング金型63A~63D(内径寸法d1)とを備え、外周筒形金型61は、機械加工の便宜上軸方向に積重した二つの部分外周筒形金型61A及び61Bを組合せてなるが、これに限らず単一の部材でもよく又は3個以上の部分外周筒形金型を組合せてもよい。金型ベース31A、部分外周筒形金型61A及び61B、及び第1の先端金型62Aは沈みボルト65~67により強固に一体固着されている。なお、71は、後述する離型押圧部材73を収納する固定シリンダであり、ボルト72により金型ベース31Aに固着される。
【0060】
ここで、先端金型62Aの比較的大きなテーパ角の先端側テーパ部分はパイプ133が先端金型62Aに嵌合挿入される際に該パイプ13をガイドするガイド部62a1であり、根元側の比較的小さなテーパ角の内周テーパ部62a2がパイプ13を最初に縮管加工する部分となる。
【0061】
また、上記1段目縮管金型21Aの内径寸法d1は、複数の内周リング金型63A~63Dにわたって同一寸法ではなく、金型先端側から根元方向へ向けて内径が徐々に小さくなるような僅かなテーパ角(例えば0.3度~8.0度)の内周テーパ部63aを形成している。これにより、縮管加工後のパイプ13が1段目縮管金型21Aの内周部から容易に抜け出ることが可能となる。この点については、後述する2段目及び3段目縮管金型21B及び21Cについても同様である。
【0062】
更に、1段目縮管金型21Aの材料としては、高い硬度を必要とする先端金型62A及び内周リング金型63は、SKD11(JIS規格)材料を高温焼戻し処理及び低温TICコーティング処理した後に内周表面を鏡面仕上げして、算術平均粗さRaが例えば0.1以下の値としたものである。先端金型62A及び内周リング金型63は上記材料に限ることなく高い硬度を有する超硬合金等の材料又でもよく、また低温TICコーティング処理に限らず他の硬化処理(表面だけでなく表面以外が硬化してもよい)でもよい。また外周筒形金型61は例えばS45C(JIS規格)の焼き入れ及び焼戻し材料により形成されている。以下の、2段目及び3段目縮管金型21B及び21Cについても同様である。
【0063】
73は離型押圧部材で、ベース板74、中間リング75及び押圧板76A(外径寸法d1)をボルト77A及び77Bにより固着したものであり、押圧板76Aが内周リング金型63の内周に嵌合した状態で、キー78及びキー溝74a嵌合により案内されて図中左右方向へ往復スライド可能である。この離型押圧部材73は、押圧シャフト12により押圧されて左方向へスライドされたときに縮管加工終了後のパイプ13を金型21Aから離間させる。また、43は離型押圧部材73の位置を検出する磁気誘導式検出装置で、固定シリンダ71に配置されたセンサ44と、離型押圧部材73に取付けられたドグ45とを備える。
【0064】
次に、
図14中、2段目縮管金型21Bは、1段目縮管金型21Aとほぼ同様の構成であるが、第2の先端金型62Bは2段階内周テーパ部62b1及び62b2のテーパ角、及び直径寸法が、第1の先端金型62Aの対応部分の寸法とは異なり、また複数の内周リング金型78A~78D(内径寸法d2)とを備え、この内径寸法d2は先の内周リング金型63の内径寸法d1より小さい(d2<d1)内周テーパ部78aを形成している。また離型押圧部材73の押圧板76Bの外径寸法もd2となる。
【0065】
次に、
図15中、3段目縮管金型21Cは、先の縮管金型21A及び21Bとほぼ同様の構成であるが、第3の先端金型62Cは内周テーパ部62cのテーパ角、及び直径寸法が、先の先端金型62A及び62Bの対応部分の寸法とは異なり、また複数の内周リング金型79A~79D(内径寸法d3)とを備え、この内径寸法d3は上記内周リング金型78の内径寸法d2より小さい(d3<d2)内周テーパ部79aを形成している。また離型押圧部材73の押圧板76Cの外径寸法もd3となる。
【0066】
なお、
図16A及び16Bに、内周リング金型63(78、79)を示す。
次に、 パイプ13を加工する手順について説明する。
まず、
図1~
図3中、パイプ13はパイプ搬入テーブル3から鋼管加工部2へ搬入されて、延長軸11及び1段目拡管金型15A間においてこれらと同軸的位置に至って送りローラ14上に載置され、送りローラ14の回転により図中左方向へ軸方向移動されて、延長軸11に当接される。次に、5個のクランプ10のクランプアーム10A及び10Bが油圧シリンダ23により閉鎖的に回動してパイプ13を、パイプ13の予め設定された加工用芯出し位置まで若干寸法だけ持ち上げつつクランプする。このとき、送りローラ14はパイプから離間される。
【0067】
続いて、まず拡管金型を使用してパイプ13を加工する手順について
図17A~17Eを使用して説明する。
図17Aが、パイプ13及び1段目拡管金型15Aが互いに同軸的に芯出しされた状態である。
【0068】
続いて、
図17B中、押圧シャフト12が油圧シリンダ8により図中左方向へ移動されて当接ピン40を介して離型リング16Aを同方向へ所定距離mだけ移動させる。これにより、検出装置43のドグ45はセンサ44から外れた位置に至る。
【0069】
続いて、
図17C中、押圧シャフト12は図中右方向へ戻り移動される。
続いて、
図17D中、パイプ13が図中右方向へ油圧シリンダ6により延長軸11を介して且つクランプ10と一体的に押圧移動されて、パイプ13先端部が1段目拡管金型15Aの先端金型33Aの外周テーパ部33a1及び33a2、更には外周リング金型34の外周テーパ部34aへ順次乗り上げて拡管加工開始される。
【0070】
続いて、
図17E中、パイプ13の先端部が、離型リング16Aに当接する。
続いて、
図17F中、パイプ13が離型リング16Aと共に図中右方向へ更に押し込まれ、検出装置43のドグ45がセンサ44に対応位置したとき、その検出信号により油圧シリンダ6の動作が停止されて、パイプ13の拡管加工が終了する。このとき、クランプ10によるパイプのクランプが開放された後に、左側油圧シリンダ6のシリンダロッド6aが図中左方向へ延長軸11と共に200mm程度戻り移動される。
【0071】
続いて、
図17G中、押圧シャフト12が油圧シリンダ8により図中左方向へ移動されて当接ピン40を介して離型リング16Aを同方向へ所定距離だけ移動させる。これにより、拡管加工済みのパイプ13は1段目拡管金型15Aから離間されて1段目の加工が終了する。
【0072】
次に、このパイプ13を、1~3段目金型15A~15Cを順次使用して、1段目から3段目まで段階的に拡管加工する手順を、
図18~
図21を使用して説明する。この場合のパイプ13に対する1~3段目金型15A~15Cの切り替えは、
図1中、各金型15A~15Cが取付けられた金型取付基板17と共に加工部2の軸線とは直交する方向に移動されて、該軸線と同心となる位置へ順次切り替え移動される。なお勿論、3段階加工に限ることなく、1段階又は2段階でもまた4段階以上の加工でもよい。
【0073】
まず、
図18A及び
図18Bは夫々、1段目の拡管加工開始前のパイプ13Aの状態と、1段目の拡管加工の終了時のパイプ13B及び1段目拡管金型15Aの状態を示す図であり、これらは、すでに説明した上記
図17Aの左側部分、及び
図17Fに対応している。
【0074】
続いて、
図19A及び
図19Bは夫々、2段目の拡管加工開始前のパイプ13B(
図18Bのパイプ13Bに対応)の状態と、2段目の拡管加工の終了時のパイプ13C及び2段目拡管金型15B(外周テーパ部33b2、51aを有する)の状態を示す図であり、パイプ13Bの右端側の内径寸法D1´は、1段目拡管金型15Aの外周リング金型34の外径寸法D1とほぼ同一であるがスプリングバックのためD1より僅かに小さい。(D1´<D1)
続いて、
図20A及び
図20Bは夫々、3段目の拡管加工開始前のパイプ13C(
図19Bのパイプ13Cに対応)の状態と、3段目の拡管加工の終了時のパイプ13D及び3段目拡管金型15C(外周テーパ部33c、53aを有する)の状態を示す図であり、パイプ13Cの右端側の内径寸法D2´は、2段目拡管金型15Bの外周リング金型51の外径寸法D2とほぼ同一であるがスプリングバックのためD2より僅かに小さい。(D2´<D2)
最後に、
図21は、最終的に拡管加工されたパイプ13D(
図20Bのパイプ13Dに対応)を示し、パイプ13Dの右端側の内径寸法D3´は、3段目拡管金型15Cの外周リング金型53の外径寸法D3とほぼ同一であるがスプリングバックのためD3より僅かに小さい。(D3´<D3)(D1´<D2´<D3´)
拡管加工が終了したパイプ13は
図1及び
図2に示す位置まで軸方向に移動復帰し、クランプ10によるクランプが解除された後に、搬出テーブル4から排出されて、また次のパイプ13が加工部2に搬入されて、同様の加工が繰り返される。
【0075】
次に、縮管金型を使用してパイプ13を加工する手順について
図22A~22Gを使用して説明する。
図1~
図3中、パイプ13が、搬入テーブル2から鋼管加工部2に搬入されたときに、今度は拡管金型15の替わりに縮管金型21A~21Cが順次加工部2の軸線位置に配置されるが、クランプ10等の動作は同様である。なお、3段階加工に限ることなく、1段階又は2段階でもまた4段階以上の加工でもよい。
【0076】
図22Aが、パイプ13及び1段目縮管金型21Aが互いに同軸的に芯出しされた状態である。
続いて、
図22B中、押圧シャフト12が油圧シリンダ8により図中左方向へ移動されて離型押圧部材73に当接してこれを同方向へ所定距離nだけ移動させる。これにより、検出装置43のドグ45はセンサ44から外れた位置に至る。
【0077】
続いて、
図22C中、押圧シャフト12は図中右方へ戻り移動される。
続いて、
図22D中、パイプ13が図中右方へ油圧シリンダ6により押圧移動されて、パイプ13先端部が1段目縮管金型21Aの先端金型62Aの内周テーパ部62a1及び62a2、更には内周リング金型63の内周テーパ部63aへ順次押し当てられて縮管加工開始される。
【0078】
続いて、
図22E中、パイプ13の先端部が、離型押圧部材73の押圧板76Aに当接する。このとき、クランプ10によるパイプのクランプが開放された後に、左側油圧シリンダ6のシリンダロッド6aが図中左方向へ延長軸11と共に200mm程度戻り移動される。
【0079】
続いて、
図22F中、パイプ13が離型押圧部材73と共に図中右方向へ更に押し込まれ、検出装置43のドグ45がセンサ44に対応位置したとき、その検出信号により油圧シリンダ6の動作が停止されて、パイプ13の縮管加工が終了する。
【0080】
続いて、
図22G中、押圧シャフト12が油圧シリンダ8により図中左方向へ移動されて離型押圧部材73に当接してこれを図中左方向へ所定距離だけ移動させる。これにより、縮管加工済みのパイプ13は1段目縮管金型21Aから離間されて1段目の加工が終了する。
【0081】
次に、このパイプ13を、1~3段目金型21A~21Cを順次使用して、1段目から3段目まで段階的に縮管加工する手順を、
図23~
図26を使用して説明する。この場合のパイプ13に対する1~3段目縮管金型21A~21Cの切り替えは、
図1中、各金型21A~21Cが加工部2の軸線に対して直交する方向に移動されて、該軸線と同心となる位置へ順次切り替え移動される。なお勿論、3段階に限ることなく、2段階でもまた4段階以上の加工でもよい。
【0082】
まず、
図23A及び
図23Bは夫々、1段目の縮管加工開始前のパイプ13A´の状態と、1段目の縮管加工の終了時のパイプ13B´及び1段目縮管金型21Aの状態を示す図であり、これらは、すでに説明した上記
図22Aの左側部分、及び
図22Fに対応している。
【0083】
続いて、
図24A及び
図24Bは夫々、2段目の縮管加工開始前のパイプ13B´(
図23Bのパイプ13B´に対応)の状態と、2段目の縮管加工の終了時のパイプ13C´及び2段目縮管金型21B(内周テーパ部62b2、78aを有する)の状態を示す図であり、パイプ13B´の右端側の外径寸法d1´は、1段目縮管金型21Aの内周リング金型63の内径寸法d1とほぼ同一であるがスプリングバックのためd1より僅かに大きい。(d1´>d1)
続いて、
図25A及び
図25Bは夫々、3段目の縮管加工開始前のパイプ13C´(
図24Bのパイプ13C´に対応)の状態と、3段目の縮管加工の終了時のパイプ13D´及び3段目縮管金型21C(内周テーパ部62c、79aを有する)の状態を示す図であり、パイプ13C´の右端側の外径寸法d2´は、2段目縮管金型21Bの内周リング金型78の内径寸法d2とほぼ同一であるがスプリングバックのためd2より僅かに大きい。(d2´>d2)
最後に、
図26は、最終的に縮管加工されたパイプ13D´(
図25Bのパイプ13D´に対応)を示し、パイプ13D´の右端側の外径寸法はd3´は、3段目縮管金型21Cの内周リング金型79の内径寸法d3とほぼ同一であるがスプリングバックのためd3より僅かに大きい。(d3´>d3)(d1´>d2´>d3´)
縮管加工が終了したパイプ13は
図1及び
図2に示す位置まで軸方向に移動復帰し、クランプ10によるクランプが解除された後に、搬出テーブル4から排出されて、また次のパイプ13が加工部2に搬入されて、同様の加工が繰り返される。
【0084】
なお、上記拡管加工の実施形態では、パイプ13の内径部が、先端金型33及び外周リング金型34、51、53により順次拡管加工される際に、先端金型33の外周テーパ部33a~33cの第1のテーパ角度と外周リング金型34、51、53の外周テーパ部34a、51a、53aの第2のテーパ角度とを異なる数値にしておけば、一つのパイプ13について異なる2つのテーパ角度値の外周テーパ部分を形成することが可能である。場合によっては、3つ以上のテーパ角度値の外周テーパ部分を形成することも可能である。縮管加工についても同様である。
【0085】
また、上記拡管加工において、パイプ13の内径部が、先端金型33の外周テーパ部33a~33c及び外周リング金型34、51、53の外周テーパ部34a、51a、53aにより順次拡管加工されているが、これに限らず場合によっては、先端金型33はパイプ13をガイドする機能のみで、拡管加工機能は外周リング金型34、51、53の外周テーパ部34a、51a、53aのみにより行うようにしても良い。同様に、上記縮管加工においても、パイプ13の縮管加工機能は内周リング金型63、78、79の内周テーパ部63a、78a、79aのみにより行うようにしても良い。
【0086】
また、上記拡管加工の実施形態では、一つのパイプ13について1段目乃至3段目拡管金型15A~15Cを順次適用して拡管加工を終了した後に次のパイプ13の拡管加工を行うものであったが、これに限らず、最初に1段目拡管金型15Aにより複数のパイプ13の拡管加工を行った後に、2段目拡管金型15Bにより前記複数のパイプ13の拡管加工を行い、その後に3段目拡管金型15Cにより前記複数のパイプ13の拡管加工を行うようにしても良い。縮管加工についても同様である。
【符号の説明】
【0087】
1 拡管又は縮管加工装置
2 鋼管加工部
3 搬入テーブル
4 搬出テーブル
5 フレーム
6、8、23 油圧シリンダ
6a、8a シリンダロッド
7、9、22 架台
10 クランプ
10A、10B クランプアーム
11 延長軸
12 押圧シャフト
13 鋼管
14 送りローラ
15(15A~15C) 拡管金型
16(16A~16C) 離型リング
16a 貫通孔
17 金型取付基板
21(21A~21C) 縮管金型
24 シリンダロッド
26 拘束ロッド
26a ナット
27 押プレート
28 ローラフォロワ
31、31A 金型ベース
32(32A、32B) 芯金型
33(33A~33C)、62(62A~62C) 先端金型
33a、33b、33c、34a、51a、53a、62a、62b、62c、63a、78a、79a テーパ部
33a1、33b1、62a1、62b1 ガイド部
34(34A~34D)、51(51A~51D)、53(53A~53D) 外周リング金型
35、52、54 カラー
36~38、41、65~67、72、77A~77C ボルト
40 当接ピン
42 案内ロッド
43 検出装置
44 センサ
45 ドグ
61(61A、61B) 外周筒形金型
63(63A~63D)、78(78A~78D)、79(79A~79D) 内周リング金型
71 固定シリンダ
73 離型押圧部材
74 ベース板
74a キー溝
75 中間リング
76(76A~76C) 押圧板
78 キー