IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社オーイケの特許一覧

<>
  • 特許-壁モジュールによる構造物の製造方法 図1
  • 特許-壁モジュールによる構造物の製造方法 図2
  • 特許-壁モジュールによる構造物の製造方法 図3
  • 特許-壁モジュールによる構造物の製造方法 図4
  • 特許-壁モジュールによる構造物の製造方法 図5
  • 特許-壁モジュールによる構造物の製造方法 図6
  • 特許-壁モジュールによる構造物の製造方法 図7
  • 特許-壁モジュールによる構造物の製造方法 図8
  • 特許-壁モジュールによる構造物の製造方法 図9
  • 特許-壁モジュールによる構造物の製造方法 図10
  • 特許-壁モジュールによる構造物の製造方法 図11
  • 特許-壁モジュールによる構造物の製造方法 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】壁モジュールによる構造物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04H 17/14 20060101AFI20221018BHJP
   E04H 17/16 20060101ALI20221018BHJP
   E02D 27/00 20060101ALI20221018BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
E04H17/14 101A
E04H17/16 104
E02D27/00 E
E04B1/94 D
E04B1/94 L
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020025196
(22)【出願日】2020-02-18
(65)【公開番号】P2021130910
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2020-11-06
(73)【特許権者】
【識別番号】592136635
【氏名又は名称】株式会社オーイケ
(74)【代理人】
【識別番号】100102934
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 彰
(72)【発明者】
【氏名】大池 秀実
(72)【発明者】
【氏名】大池 悦二
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-281133(JP,A)
【文献】特開平08-177273(JP,A)
【文献】特開2000-087369(JP,A)
【文献】特開2004-176340(JP,A)
【文献】特開平04-250237(JP,A)
【文献】特開平09-195588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 17/14-17/16
E04B 1/04
E02D 27/00
E04B 1/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の壁モジュールの壁部が、それら壁部の外面が相互に面一になるように接続された壁体を有する構造物の製造方法であって、
前記複数の壁モジュールの各々は、直立した前記壁部と、前記壁部の幅方向に延びた基礎部であって、前記壁部の幅方向に沿った第1の方向の長さが前記壁部の幅より短い基礎部とを有し、前記壁部の厚みに対して前記壁部の外面から前記基礎部の内側の端までの距離が大きく、前記基礎部の両側の前記第1の方向の側面は、少なくとも一部に、上側に対し下側が側方に出た部分を含み、
前記壁体を施工する領域に、前記基礎部が固定される基礎コンクリートを施工することと、
前記基礎コンクリートの上に、前記複数の壁モジュールを前記壁部が隣接するように配置することと、
両側に隣接する前記基礎部の前記側面同士の間を含めた両側の領域にコンクリート製の接続層を施工することとを含み、
前記基礎コンクリートを施工することは、前記隣接する基礎部の前記側面同士の間となる位置に、前記接続層に埋設されるアンカーボルトまたは鉄筋を、前記基礎コンクリートから突き出るように埋設することを含み、
前記接続層を施工することは、前記アンカーボルトまたは鉄筋、前記基礎部の前記第1の方向の側面の前記上側に対して下側が側方に出た部分、および前記接続層を介して、前記壁体を施工する領域に設けられた前記基礎コンクリートと前記複数の壁モジュールの前記基礎部とが接続されることにより前記基礎コンクリートおよび前記複数の壁モジュールの前記基礎部が固定され、前記基礎コンクリートおよび前記複数の壁モジュールの前記基礎部を基礎として、前記壁体となる前記複数の壁モジュールの前記壁部が、それらの前記外面が相互に面一となるように接続される、製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記複数の壁モジュールに囲われた領域に透水性の床を施工することを含む、製造方法。
【請求項3】
複数の壁モジュールの壁部が、それら壁部の外面が相互に面一となるように接続された壁体と、
前記複数の壁モジュールの基礎部が固定された基礎コンクリートと、
前記複数の壁モジュールの、隣接する前記基礎部の側面同士の間を含めた領域に施工されたコンクリート製の接続層とを有する構造物であって、
前記複数の壁モジュールの各々は、直立した前記壁部と、前記壁部の幅方向に沿った第1の方向に延びた前記基礎部であって、前記壁部の幅方向に沿った第1の方向の長さが前記壁部の幅より短い前記基礎部とを有し、前記壁部の厚みに対して前記壁部の外面から前記基礎部の内側の端までの距離が大きく、前記基礎部の両側の前記第1の方向の側面は、少なくとも一部に、上側に対し下側が側方に出た部分を含み、
前記基礎コンクリートは、前記壁体を施工する領域に予め施工され、隣接する壁モジュールの前記基礎部の側面との間に、前記基礎コンクリートから突き出るように埋設されたアンカーボルトまたは鉄筋を含み、
前記接続層は、前記アンカーボルトまたは鉄筋、前記基礎部の前記第1の方向の側面の前記上側に対して下側が側方に出た部分を介して前記壁体を施工する領域に設けられた前記基礎コンクリートと前記複数の壁モジュールの前記基礎部とを固定し、前記基礎コンクリートおよび前記複数の壁モジュールの前記基礎部を基礎として、前記壁体となる前記複数の壁モジュールの前記壁部を、それらの前記外面が相互に面一となるように接続している、構造物
【請求項4】
請求項3において、
前記上側に対し下側が側方に出た部分は、上側に対し下側が出た斜面および上側に対し下側が出た段差の少なくともいずれかを含む、構造物
【請求項5】
請求項4において、
前記基礎部の両側の側面は、前記壁部に対し、斜め前方に延びている、構造物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁および基礎を有する壁モジュールおよびそれを有する構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の防火壁構造は、敷地に埋設されたコンクリート製の基礎と、基礎の上端に固定された固定台と、所定間隔毎に基礎の上端に起立された支柱と、支柱間に挿入される複数の防火壁板と、支柱の上端及び複数の防火壁板の上端間を連結する連結部材とから構成されている。3枚の防火壁板を凹部と突部とが嵌合させた連結状態のまま傾斜状態から垂直状態に移動させる。これにより、防火壁構造は、防火壁板を組み合わせた状態のまま同時に固定台に組付けることができるので、組み立て時間を短縮して施工現場での作業効率を高めることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-207153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
防火壁などの壁体構造物をさら容易に構築できるようにすることが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、複数の壁モジュールを有する構造物の製造方法である。複数の壁モジュールの各々は、直立した壁部と、壁部の幅方向に延びた基礎部とを有する。基礎部は、壁部の幅方向に沿った第1の方向の長さが壁部の幅より短く、基礎部の第1の方向の側面は、少なくとも一部に、上側に対し下側が側方に出た部分を含む。製造方法は、基礎部が搭載される基礎コンクリートを施工することと、基礎コンクリートの上に、複数の壁モジュールを壁部が隣接するように配置することと、隣接する基礎部の側面同士の間を含めた領域にコンクリート製の接続層を施工することとを含む。
【0006】
この製造方法においては、壁部より幅方向(第1の方向)が短い基礎部を有する壁モジュールを壁部が隣接するように並べて、防火壁などの構造物を施工する際に、基礎部の側面同士の間に隙間が形成されることを利用し、側面にコンクリートと係合あるいは噛み合うような、上側に対し下側が側方に出た(突き出た)部分を設け、側面同士の間にコンクリートを打設して接続層を施工し、基礎部の側面を引き抜きあるいは転倒に対抗する力を得るために利用可能とする。また、接続層により、壁モジュール同士を接続するとともに、基礎コンクリートと基礎部とを一体化する効果が得られるようにしてもよい。
【0007】
基礎コンクリートを施工することは、隣接する基礎部の側面同士の間となる位置に、接続層に埋設されるアンカーボルトまたは鉄筋を、基礎コンクリートから突き出るように埋設することを含む。接続層と基礎コンクリートとをより強固に接続でき、接続層を介して基礎部を基礎コンクリートにより強固に接続でき、複数の壁モジュールにより施工される防火壁などの構造物の強度を向上できる。
【0008】
この製造方法においては、複数の壁モジュールに囲われた領域に、基礎部を巻き込んだ土間コンクリートを施工してもよく、土間コンクリートの代わりに、砂利、砂、土、ポーラスコンクリートなどを含む透水性の床を施工してもよい。
【0009】
本発明の他の態様の1つは、直立した壁部と、壁部の幅方向に沿った第1の方向に延びた基礎部とを有するコンクリート製の壁モジュールである。基礎部は、第1の方向の長さが壁部の幅より短く、第1の方向の側面に、上側に対し下側が側方に出た部分を含む。側方に出た部分は、上側に対し下側が出た斜面、および上側に対し下側が出た段差の少なくともいずれかを含む。基礎部の両側の側面は、壁部の両端より内側に位置してもよい。基礎部の側面は、壁部に対し、斜め前方に延びていてもよい。
【0010】
本発明の他の態様の1つは、壁モジュールを複数含む構造物である。構造物は、さらに、複数の壁モジュールの基礎部が搭載された基礎コンクリートと、複数の壁モジュールの、隣接する基礎部の側面同士の間を含めた領域に施工されたコンクリート製の接続層とを有する。構造物は、隣接する基礎部の側面同士の間となる位置に、基礎コンクリートから突き出るように埋設され、接続層に埋設された複数のアンカーボルトまたは鉄筋をさらに有する
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】複数の壁モジュールにより防火壁を施工する様子を示す図。
図2】防火壁を、基礎部を中心に拡大して示す図。
図3】防火壁を、断面を用いて拡大して示す図。
図4】本例の複数の壁モジュールにより防火壁を施工する様子を示す図。
図5】壁モジュールを基礎コンクリートの上に設置した状態を、基礎部を中心に拡大して示す図。
図6】防火壁を施工した状態を、基礎部を中心に拡大して示す図。
図7】防火壁を、断面を用いて拡大して示す図。
図8】異なる壁モジュールを用いて防火壁を施工した状態を、基礎部を中心に示す図。
図9】さらに異なる壁モジュールを用いて防火壁を施工した状態を、基礎部を中心に示す図。
図10】さらに異なる壁モジュールを用いて防火壁を施工した状態を、基礎部を中心に示す図。
図11】さらに異なる壁モジュールを用いて防火壁を施工した状態を、基礎部を中心に示す図。
図12】さらに異なる壁モジュールを用いて防火壁のコーナー部分を施工する様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に、壁体を有する構造物の一例として、ガスステーション、水素ステーションなどの周囲に設けられる防火壁を製造する様子を示している。この防火壁1は、複数のコンクリート製の壁モジュール10を接続して施工(製造)される。壁モジュール10は、直立した壁部20と、壁部20を下側から支持するように壁部20の幅方向(第1の方向)9に延びた基礎部30とを有する。壁モジュール10はコンクリート製の工場でプレハブ(プレキャスト)されたコンクリートブロックであり、防火壁1の施工現場において、予め施工された基礎コンクリート51の上に壁部20が隣り合うように並べられて、防火壁1を構成する。
【0013】
各々の壁モジュール10の壁部20は上下に長い長方形の平板状であり、全体として平坦な外面25および内面26を含む。基礎部30は、壁部20の下側に接続するように、壁部20の幅方向9に延びた板状の部分であり、幅方向(第1の方向)9の両側に側面31aおよび31bを含む。基礎部30の幅方向(第1の方向)9の長さW1は、壁部20の幅W2に対して短く、基礎部の両側の側面31aおよび31bが、壁部20の両端(両側の側面)21aおよび21bより内側に位置するように形成されている。防火壁用の壁モジュール10のサイズの一例は、基礎部30の底面33から壁部20の上端面(天場)22までの距離(高さ)hが2800mm、壁部20の幅W2が2000mm、壁部20の厚みtが100mmである。基礎部30のサイズの一例は、幅W1が1800mm、壁部20の外面から基礎部30の先端(内側の端)36までの距離L1が450mmである。壁モジュール10のサイズはこれに限定されない。
【0014】
壁モジュール10の基礎部30は、壁部20の直下を含む少なくとも3か所に、高さ調整用に下側(底面)33に出入りするようにボルトを取り付けるための埋め込みナット41を含む。具体的には、埋め込みナット41の1つは、基礎部30の先端35の近傍の長手方向の中央に配置されており(埋め込まれており)、他の2つは、壁部20の直下に配置されている。壁部20と基礎部30との境界には、これらの埋め込みナット41にボルトを設置して操作するための開口43が設けられている。埋め込みナット41の数は4以上であってもよい。少なくとも3つの埋め込みナット41を基礎部30に配置し、ボルトを通して基礎部30の高さを制御することにより、基礎部30の傾きを自由に調整でき、これにより壁部20の傾きを自由に調整できる。したがって、隣接して配置される複数の壁モジュール10を、それらの壁部20が相互に隙間がない状態に近接または接し、さらに、壁部20の外面25が相互に面一になるように壁モジュール10の姿勢を微調整することができる。この際、壁部20の基礎部30から左右に突き出た下面23をジャッキアップのために使用することが可能であり、姿勢制御をより簡易に行うことができる。
【0015】
さらに、壁モジュール10の基礎部30は、ほぼ中央に設けられた開口部45を含む。この開口部45は、壁モジュール10を現場で基礎コンクリート51に固定するためのアンカーを設置するために用いられる。また、この開口部45を介してモルタルを注入することにより、姿勢(高さ)の調整が終了した基礎部30の底面33と基礎コンクリートとの間の隙間をモルタルで埋め、壁モジュール10の姿勢を基礎コンクリートに対して安定させることができる。
【0016】
壁モジュール10の壁部20は、さらに、隣接する壁モジュール10の壁部20と連結するために埋め込まれたインサート49を含む。インサート49は、壁部20の内面26からねじ止めできるように埋め込まれており、連結用のプレートをインサート49に固定することにより隣接する壁部20同士を固定することができる。
【0017】
図2および図3に、複数の壁モジュール10により製造(施工)された構造物、本例においては防火壁1を、基礎部30を中心として示している。図2は防火壁1を内側(内面26の方向)から見た様子を示し、図3は、断面により示している。まず、防火壁1を設置する領域50に基礎コンクリート(ベースコンクリート)51を施工する。その際、壁モジュール10の基礎部30の開口45に対応する位置に、U型アンカーボルト52を埋め込む。次に、基礎コンクリート51の上に壁モジュール10を、クレーンを用いて設置する。壁モジュール10の姿勢調整(レベル調整)は、3か所の埋め込みナット41に取り付けられた高さ調整ボルト42を用いて行う。この調整と前後して、チャンネル53を、開口部45を貫通したU型アンカーボルト52に取り付け、アンカーボルト52を介して基礎部30をベースコンクリート51に固定し、転倒を未然に防止する。隣接する壁モジュール10が設置されると、壁部20同士を、連結プレート48により、壁部20に埋め込まれたインサート49を用いて固定する。
【0018】
次に、基礎部30の開口部45からモルタル54を、基礎部30の底面33に回るように充填して基礎部30を補強する。さらに、必要に応じて鉄筋ホールアンカー55で補強し、所定の高さまで、防火壁1に囲まれた領域5に土間コンクリート56を施工する。
【0019】
以上のような工程により、コンクリート製で、壁部20と基礎部30とが工場プレハブされた壁モジュール10を用いて防火壁1を施工することにより、現場で型枠を組んだりする必要がなく、短時間および低コストで防火壁1を製造できる。
【0020】
図4に、本発明に係る壁モジュール11を用いた防火壁1を施工する様子を示している。壁モジュール11は、上述した壁モジュール10と同様に、直立した壁部20と、壁部20の幅方向に沿った第1の方向9に延びた基礎部30とを有する。本例の壁モジュール11の基礎部30は、第1の方向の長さW1が壁部の幅W2より短く、さらに、第1の方向9の側面31aおよび31bに、上側に対し下側が側方に出た部分(突き出た部分)60を含む。本例の、突き出た部分60は、上側61に対し下側62が側方に出た段差部63を含む。壁モジュール11のその他の構成は、壁モジュール10と共通する。
【0021】
さらに、壁モジュール11により施工される構造物である防火壁1は、隣接する基礎部30の側面同士、すなわち、側面31aおよび31bの間70に、基礎コンクリート51から突き出るように埋設されたアンカーボルト72を含む。すなわち、基礎コンクリート51には、基礎部30の中央の開口部45に対応した位置に埋設されたアンカーボルト52に加え、基礎部30の間となる位置にアンカーボルト72が埋設されている。アンカーボルト72は鉄筋であってもよく、異形鉄筋であってもよく、逆U字型またはT字型に組み合わされたものであってもよい。
【0022】
図5に、防火壁1の設置領域50に基礎コンクリート51を施工した後、基礎コンクリート51の上に、複数の壁モジュール11が、壁部20が隣接するように配置された様子を示している。基礎コンクリート51を施工する際に、隣接する基礎部30の側面同士、すなわち、側面31aおよび31bの間70となる位置に、後述する接続層75に埋設されるアンカーボルト72が、基礎コンクリート51から突き出るように埋設されている。
【0023】
図6に、基礎部30の側面31aおよび31bの間70を含めた領域71にコンクリート(モルタル)54を注入して接続層75を施工した状態を示している。コンクリート製の接続層75は、基礎コンクリート51に埋設されたアンカーボルト72が内部に埋設されるように施工されるので、基礎コンクリート51と高い強度で接続される。また、基礎部30のそれぞれの側面31aおよび31bには、コンクリートと噛み合うように上側61に対し下側62が側方に出た部分60である段差部63が設けられているので、側面31aおよび31bの間70に施工されたコンクリート製の接続層75を介して、基礎部30が基礎コンクリート51に高い強度で接続される。したがって、防火壁1においては、壁モジュール11が壁部20より幅が狭い基礎部30を備えており、基礎部30の間に隙間70が形成されることを利用して、基礎部30を強固に基礎コンクリート51に接続することができる。このため、それぞれの壁モジュール11を基礎コンクリート51に対して強固に固定でき、安定した防火壁1を施工できる。
【0024】
接続層75を形成することにより、それぞれの壁モジュール11は安定する。このため、開口45に取り付けられた一時固定用のチャンネル53を取り外し、開口45をモルタル54で埋めてもよい。開口45をモルタル54により埋めることにより、アンカーボルト52を介して壁モジュール11をさらに強固に基礎コンクリート51に固定できる。
【0025】
図7に、壁モジュール11により防火壁1が施工された状態を断面図により示している。図6に示すように、防火壁1を構成する複数の壁モジュール11は、基礎部30の両側の側面31aおよび31bが壁部20の側面21aおよび21bに対し内側に位置しており、基礎部30の側面31aおよび31bとの間70に隙間が形成されることを利用し、その間70を含む領域71に接続層75を施工することにより、基礎部30と基礎コンクリート51とを強固に接続できる。したがって、基礎部30に加えて基礎コンクリート51を壁モジュール11の基礎として使用できる。このため、防火壁1の内側、すなわち、複数の壁モジュール11に囲われた領域5に、図3と同様に土間コンクリートを施工してもよく、土間コンクリートの代わりに、砂利や、砂、土などにより、透水性の床6を施工してもよい。透水性のポーラスコンクリートにより床6を施工してもよい。
【0026】
ガソリンや軽油などを取り扱うガスステーションにおいては、床面を防水性として排水を、油水分離槽を介して排出する必要があった。他の用途、例えば、水素を取り扱う水素ステーションにおいては、排水に油分の混入はほとんどなく、一方、地下タンクから万一、水素の漏れ出したときに地下に溜まる危険を防止するために透水性の床であってもよい。本例の壁モジュール11は、基礎部30の側面31aおよび31bに基礎コンクリート51に対する結合力を増強する機能を設けることにより、防火壁1の内側の領域5の利用形態を様々なアプリケーションに拡大することができる。特に、基礎コンクリート51と一体化することにより、基礎部30のサイズを小さくできるので、基礎部30の内側、または複数の壁モジュール11(壁1)の基礎部30により囲われたスペースを配管埋設用などに有効活用できる。また、壁モジュール11に囲われた領域5に十分な浸透面積を確保できるので、緑地として使用したりすることも可能となる。
【0027】
図8に、異なる壁モジュール11aを用いて製造(施工)された防火壁1を、基礎部30を中心に示している。この壁モジュール11aは、基礎部30の側面31aおよび31bに、上側61に対して下側62が側方に出る部分60として、下側62が側方に広がった斜面(テーパ部分)64を含む。隣接する基礎部30の側面31aおよび31bが対峙した間70を含む領域71に、コンクリート54により基礎コンクリート51から伸びたアンカーボルト72を含むように接続層75を形成する。この接続層75に対し、基礎部30の側面31aおよび31bの斜面64は壁モジュール11aが転倒する方向に対して逆テーパとなり、壁モジュール11aを基礎コンクリート51の上に安定して維持できる。さらに、接続層75は、アンカーボルト72を介して基礎コンクリート51と強固に連結されるので、壁モジュール11aを、基礎コンクリート51と強固に接続でき、壁モジュール11aを一層安定させることができる。このように、壁モジュール11aに基礎部30の側面31aおよび31bに基礎コンクリート51と接続する機能を付与することができ、基礎コンクリート51の上に、複数の壁モジュール11aにより安定した防火壁1を製造できる。
【0028】
図9に、さらに異なる壁モジュール11bを用いて製造(施工)された防火壁1を、基礎部30を中心に示している。この壁モジュール11bは、基礎部30の側面31aおよび31bに、上側61に対して下側62が側方に出る部分60として、側面31aおよび31bに形成された凹部65を含む。隣接する基礎部30の側面31aおよび31bが対峙した間70を含む領域71に、基礎コンクリート51から伸びたアンカーボルト72を含むようにコンクリート製の接続層75を形成することにより、壁モジュール11bを、アンカーボルト72を介して基礎コンクリート51に強固に連結できる。したがって、基礎コンクリート51の上に、複数の壁モジュール11bにより安定した防火壁1を製造できる。側面31aおよび31bに形成される形状としては、凹部65の代わりに、あるいはともに、凸部であってもよく、凹凸が連続した形状であってもよい。基礎部30の中央の開口45の側面に凹凸46などのコンクリート54と噛み合う形状、すなわち、上側に対して下側が広がった形状を設けることにより、基礎部30と基礎コンクリート51との連結をさらに強化できる。
【0029】
図10に、さらに異なる壁モジュール11cを用いて製造(施工)された防火壁1を、基礎部30を中心に示している。この壁モジュール11cは、基礎部30の側面31aおよび31bに、上側61に対して下側62が側方に出る部分60として、側面31aおよび31bに差し込まれた鉄筋またはボルト66を含む。鉄筋またはボルト66は、基礎部30が形成されるときに設けられてもよく、基礎部30を形成する際にインサートを埋設しておき、現場でインサートに鉄筋またはボルト66を取り付けてもよい。隣接する基礎部30の側面31aおよび31bが対峙した間70を含む領域71に、基礎コンクリート51から伸びたアンカーボルト72に加え、側面31aおよび31bから突き出たボルト66を含むようにコンクリート製の接続層75を形成することにより、壁モジュール11bを基礎コンクリート51に強固に連結できる。したがって、基礎コンクリート51の上に、複数の壁モジュール11cにより安定した防火壁1を製造できる。
【0030】
図11に、壁モジュール11を用いて製造(施工)された防火壁1の異なる例を示している。この防火壁1の施工では、T字型に組み合わされた鉄筋72aが用いられている。すなわち、隣接する基礎部30の側面31aおよび31bが対峙した間70を含む領域71に、基礎コンクリート51に埋設されたT字型の鉄筋72aが突き出ており、接続層75の強度をさらに向上するとともに、基礎コンクリート51との結合力(接続強度)を確保できる。さらに、T字型の鉄筋72aを側面31aおよび31bの段差部63と係合するように配置することにより、基礎部30と接続層75との接続強度も向上できる。
【0031】
図12に、さらに異なる壁モジュール11dを用いて製造(施工)された防火壁1のコーナー部分2を示している。壁モジュール11dは、直立した壁部20と、壁部20の幅方向に沿った第1の方向9に延びた基礎部30とを有する。基礎部30の側面31aおよび31bは、壁部20に対して斜め前方に先端36が狭まるように突き出ており、本例では45度をなすように延びている。さらに、側面31aおよび31bに、上側に対し下側が側方に出た部分(突き出た部分)60として段差部63を含む。この壁モジュール11dは、2つの壁モジュール11dを、基礎部30が干渉しないように、一方の壁モジュール11dの壁部(壁体)20の内面26に、他方の壁部20の側面21aを当てた(付けた)状態で90度をなすように組み合わせることが可能である。さらに、90度のコーナー部分2を施工した状態で、基礎部30同士の側面31bおよび31aの間70にコンクリート(モルタル)54を注入する領域71を確保でき、接続層75を形成することにより、アンカーボルト72を介して壁モジュール11dを基礎コンクリート51と強固に接続できる。
【0032】
なお、上記に示した壁モジュール11~11dは、左右対称な形状を例に説明しているが、非対称な形状であってもよく、例えば、壁部20に対して基礎部30は中央ではなく、左右いずれか一方に近づいた状態で配置されていてもよく、壁部20の左右一方の側面と基礎部30の左右一方の側面とが直線状に配置されていてもよい。また、壁モジュール11~11dの壁部20の外面25および内面26は平板状であるが、適当な模様また補強のための構造が含まれていてもよい。また、壁体を含む構造物(構造体)は、防火壁1に限定されることはなく、特定の領域を区切るあるいは仕切る壁を含む構造物であればよい。
【符号の説明】
【0033】
10、11~11d 壁モジュール、 20 壁部、 30 基礎部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12