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特許7160385脂質を用いた表面改質によって細胞内摂取効率を向上させたナノ粒子複合体及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】脂質を用いた表面改質によって細胞内摂取効率を向上させたナノ粒子複合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/42 20170101AFI20221018BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20221018BHJP
【FI】
A61K47/42
A61K9/51
A61K47/24
A61K9/127
A61K47/54
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020566223
(86)(22)【出願日】2018-09-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 KR2018010309
(87)【国際公開番号】W WO2019231051
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2020-12-09
(31)【優先権主張番号】10-2018-0063163
(32)【優先日】2018-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515139031
【氏名又は名称】ソガン ユニバーシティ リサーチ ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】SOGANG UNIVERSITY RESEARCH FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョン チョル
(72)【発明者】
【氏名】キム,ド ヨン
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-184406(JP,A)
【文献】特表2011-503070(JP,A)
【文献】特表2011-500671(JP,A)
【文献】特表2013-517298(JP,A)
【文献】特表2016-530880(JP,A)
【文献】特表2015-523969(JP,A)
【文献】国際公開第2015/153805(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/064350(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1反応基が存在するアルブミンナノ粒子を形成するナノ粒子形成ステップと、
前記第1反応基と化学的に結合する第2反応基が存在するリン脂質ベースのマイクロサイズの脂質体を形成する脂質体形成ステップと、
前記ナノ粒子と脂質体とを混合して第1反応基と第2反応基とが互いに結合するようにして、脂質体の外面にナノ粒子が結合した脂質体-ナノ粒子複合体を形成する脂質複合体形成ステップと、
前記脂質複合体形成ステップで形成された脂質体-ナノ粒子複合体に機械力を加えて脂質体を破砕することにより、ナノ粒子の外表面の一部分に結合したチューブ形状の脂質構造体を形成してナノ粒子複合体を製造する破砕形成ステップと、を含み、
前記脂質体は、バブルまたはリポソームであり、
前記ナノ粒子は、細胞内に摂取されて疾病の治療に用いられ、前記脂質構造体は、ナノ粒子の細胞内摂取効率を向上させることを特徴とする、ナノ粒子複合体の製造方法。
【請求項2】
前記破砕形成ステップでは、脂質体-ナノ粒子複合体に機械力を加えて一定時間維持することにより、脂質体が破砕され、脂質体をなすリン脂質は組み換えが起こり、ナノ粒子に結合したチューブ形状の脂質構造体が形成されることを特徴とする、請求項に記載のナノ粒子複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞内に摂取されて疾病の治療に用いられるナノ粒子複合体及びその製造方法に係り、より詳細には、安定性が高く且つ生体適合性に優れた脂質ベースの物質でナノ粒子の表面を改質することにより細胞内摂取効率が向上し、ナノ粒子の表面の一部分にチューブ形状の脂質構造体が結合してエンドサイトーシスだけでなく、細胞膜を直接通り抜けることができ、スフェロイド状の腫瘍細胞に効果的に摂取でき、脂質構造体をナノ粒子に直接付着させず脂質ベースの脂質体(バブル、リポソームなど)とナノ粒子とを結合させた後に物質的な力を加えることにより脂質体が破砕されてナノ粒子の表面に脂質構造体が形成されるようにするTop-down方式を利用するので容易に量産が可能なナノ粒子複合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物送達分野における細胞内摂取効率は、薬物送達効果を達成するための重要な尺度となる。よって、細胞内摂取効率の向上を達成するための技術が広く開発されている。例えば、韓国公開特許第10-2017-0040748号公報に開示されているように、ナノ粒子に細胞透過性ペプチドなどを化学的に結合させてナノ粒子の細胞内摂取効率を向上させようとしている。
【0003】
しかし、従来の細胞内摂取効率の向上を達成するための技術は、十分な効果を得ることができず、結合した物質が容易に分解されて安定性が劣るという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0040748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる問題点を解決するために案出されたもので、その目的は、安定性が高く且つ生体適合性に優れた脂質ベースの物質でナノ粒子の表面を改質することにより、細胞内摂取効率を飛躍的に向上させたナノ粒子複合体及びその製造方法を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、ナノ粒子の表面の一部分にチューブ形状の脂質構造体が結合して、エンドサイトーシス(サイズ100~200nmの粒子が細胞内に摂取されるメカニズムである)だけでなく、細胞膜を直接通り抜けることができるナノ粒子複合体及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
本発明の別の目的は、組織透過(tissue penetration)能力によりスフェロイド状の腫瘍細胞内にナノ粒子を効果的に摂取させることができるナノ粒子複合体を提供することにある。
【0008】
本発明の別の目的は、脂質構造体をナノ粒子に直接付着させず脂質ベースの脂質体(バブル、リポソームなど)とナノ粒子とを結合させた後に物質的な力を加えることにより、脂質体が破砕されてナノ粒子の表面に脂質構造体が形成されるようにするTop-down方式を利用するので、容易に量産が可能なナノ粒子複合体及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、次の構成を持つ実施形態によって実現される。
【0010】
本発明の一実施形態によれば、本発明に係るナノ粒子複合体は、細胞内に摂取されて疾病の治療に用いられるナノ粒子と、前記ナノ粒子の外表面の一部分に結合してナノ粒子の細胞内摂取効率を向上させる脂質ベースの脂質構造体とを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の他の実施形態によれば、本発明に係るナノ粒子複合体において、前記ナノ粒子は、100~300nmの直径を有し、前記脂質構造体は、50~300nmの長さ及び3~20nmの幅を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の別の実施形態によれば、本発明に係るナノ粒子複合体において、前記脂質構造体は、親水性を帯びる脂質ヘッドが外側面に位置し、内部には疎水性を帯びる脂質尾が位置して、全体的に長さの長いチューブ形状を有することを特徴とする。
【0013】
本発明の別の実施形態によれば、本発明に係るナノ粒子複合体において、前記ナノ粒子は、第1反応基を含み、前記脂質構造体は、ナノ粒子の第1反応基と化学結合する第2反応基を含み、第1反応基と第2反応基とが化学結合することにより、脂質構造体がナノ粒子に結合することを特徴とする。
【0014】
本発明の別の実施形態によれば、本発明に係るナノ粒子複合体において、前記ナノ粒子は、外表面に第1反応基が位置し、前記チューブ形状の脂質構造体は、一端に第2反応基が位置して、前記第1反応基と前記第2反応基とが化学結合することにより、チューブ形状の脂質構造体が前記ナノ粒子の外表面に結合することを特徴とする。
【0015】
本発明の別の実施形態によれば、本発明に係るナノ粒子複合体において、前記ナノ粒子は、薬物を担持し或いは疾病を治療することができる物質からなることを特徴とする。
【0016】
本発明の別の実施形態によれば、本発明に係るナノ粒子複合体において、前記ナノ粒子複合体は、エンドサイトーシスだけでなく、細胞膜を直接通り抜けて細胞内に摂取できることを特徴とする。
【0017】
本発明の別の実施形態によれば、本発明に係るナノ粒子複合体において、前記脂質構造体は、スフェロイド状の腫瘍細胞の組織内まで前記ナノ粒子の組織透過性を向上させることができることを特徴とする。
【0018】
本発明の別の実施形態によれば、本発明に係るナノ粒子複合体において、前記ナノ粒子は、抗がん剤を含み、腫瘍細胞の死滅効率を向上させることができることを特徴とする。
【0019】
本発明の別の実施形態によれば、本発明に係るナノ粒子複合体の製造方法は、第1反応基が存在するナノ粒子を形成するナノ粒子形成ステップと、前記第1反応基と化学的に結合する第2反応基が存在するリン脂質ベースのマイクロサイズの脂質体を形成する脂質体形成ステップと、前記ナノ粒子と脂質体とを混合して第1反応基と第2反応基とが互いに結合するようにして、脂質体の外面にナノ粒子が結合した脂質体-ナノ粒子複合体を形成する脂質複合体形成ステップと、前記脂質複合体形成ステップで形成された脂質体-ナノ粒子複合体に機械的な力を加えて脂質体を破砕することにより、ナノ粒子の外表面の一部分に結合した脂質構造体を形成してナノ粒子複合体を製造する破砕形成ステップと、を含み、前記脂質体は、バブルまたはリポソームであり、前記ナノ粒子は、細胞内に摂取されて疾病の治療に用いられ、前記脂質構造体は、ナノ粒子の細胞内摂取効率を向上させることを特徴とする。
【0020】
本発明の別の実施形態によれば、本発明に係るナノ粒子複合体の製造方法において、前記破砕形成ステップでは、脂質体-ナノ粒子複合体に機械的な力を加えて一定時間維持することにより、脂質体が破砕され、脂質体をなすリン脂質は組み換えが起こり、ナノ粒子に結合したチューブ形状の脂質構造体が形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、前述した実施形態によって、次の効果を得ることができる。
【0022】
本発明は、安定性が高く且つ生体適合性に優れた脂質ベースの物質でナノ粒子の表面を改質することにより、細胞内摂取効率を飛躍的に向上させることができるという効果がある。
【0023】
また、本発明は、ナノ粒子の表面の一部分にチューブ形状の脂質構造が結合して、エンドサイトーシス(サイズ100~200nmの粒子が細胞内に摂取されるメカニズムである)だけでなく、細胞膜を直接通り抜けることができるという効果がある。
【0024】
また、本発明は、組織透過(tissue penetration)能力によりスフェロイド状の腫瘍細胞内にナノ粒子を効果的に摂取させることができるという効果がある。
【0025】
また、本発明は、脂質構造体をナノ粒子に直接付着させず、脂質ベースの脂質体(バブル、リポソームなど)とナノ粒子とを結合させた後、物質的な力を加えることにより、脂質体破砕されてナノ粒子の表面に脂質構造体が形成されるようにするTop-down方式を利用するので、容易に量産が可能であるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係るナノ粒子複合体の模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係るナノ粒子複合体のTEM画像である。
図3】本発明の一実施形態に係るナノ粒子複合体のCryo-TEM画像である。
図4】本発明の一実施形態に係るナノ粒子複合体に結合する脂質構造体のCryo-TEM画像である。
図5】本発明の一実施形態に係るナノ粒子複合体の細胞摂取効率を確認するためのフローサイトメトリー(Flow cytometry)を用いた分析結果を示す図表である。
図6】本発明の一実施形態に係るナノ粒子複合体の細胞摂取効率を確認するための共焦点顕微鏡(confocal microscope)画像である。
図7】本発明の一実施形態に係るナノ粒子複合体の細胞摂取効率を確認するための共焦点顕微鏡(confocal microscope)画像である。
図8】エンドサイトーシス阻害剤(Endocytosis Inhibitor)を処理した後の、本発明の一実施形態に係るナノ粒子複合体の細胞摂取効率を確認するためのフローサイトメトリー(Flow cytometry)を用いた分析結果を示す図表である。
図9】本発明の一実施形態に係るナノ粒子複合体の抗がん剤送達体としての効能を確認するための細胞生存アッセイ(cell viability assay)結果を示す図表である。
図10】本発明の一実施形態に係るナノ粒子複合体の誘電体薬物送達体としての効能を確認するための遺伝子サイレンシング(gene silencing)結果を示す画像である。
図11】本発明の一実施形態に係るナノ粒子複合体の誘電体薬物送達体としての効能を確認するための遺伝子サイレンシング(gene silencing)結果を示す図表である。
図12】本発明の一実施形態に係るナノ粒子複合体のスフェロイド腫瘍細胞モデルでの細胞摂取効率を確認するための共焦点顕微鏡(confocal microscope)画像である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明による脂質を用いた表面改質によって細胞内摂取効率を向上させたナノ粒子複合体及びその製造方法を、添付図面を参照して詳細に説明する。特別な定義がない限り、本明細書のすべての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する技術者が理解する当該用語の一般的意味と同じであり、もし本明細書で使用された用語の意味と衝突する場合には、本明細書に使用された定義に従う。また、本発明の要旨を不要に曖昧にするおそれがある公知の機能及び構成についての詳細な説明は省略する。明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは、特別に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0028】
本発明の一実施形態に係る脂質を用いた表面改質によって細胞内摂取効率を向上させたナノ粒子複合体を、図1図12を参照して説明すると、前記ナノ粒子複合体は、細胞内に摂取されて疾病の治療に用いられるナノ粒子1と、前記ナノ粒子1の外表面の一部分に結合してナノ粒子1の細胞内摂取効率を向上させる脂質ベースの脂質構造体2などを含む。
【0029】
前記ナノ粒子1は、細胞内に摂取されて疾病の治療に用いられる構成であって、薬物を担持したり疾病を治療したりすることができる物質で構成されるが、細胞内に摂取されて疾病の治療に用いられる従来の様々なナノ粒子が使用でき、例えば、薬物(siRNAを含む概念)を担持したアルブミンナノ粒子、薬物を担持した生分解性高分子ナノ粒子、特定のタンパク質の発現を抑制するsiRNAナノ粒子などが例示される。前記ナノ粒子は、例えば100~300nmの直径及び球状の形状を有することができる。前記ナノ粒子は、脂質構造体と結合する化学反応基(以下、「第1反応基」という。)を含むことができる。例えば、第1反応基としては、チオール基、アミン基、アミノ基、カルボキシ基などを含む化合物が挙げられる。
【0030】
前記脂質構造体2は、ナノ粒子1の外表面の一部分に結合してナノ粒子1の細胞内摂取効率を向上させる脂質ベースの構造体であり、前記脂質構造体は、例えば、50~300nmの長さ及び3~20nmの幅を有することができ、前記ナノ粒子の外表面に1つ以上が結合することができる。また、前記脂質構造体は、ナノ粒子の第1反応基と化学結合する化学反応基(以下、「第2反応基」という。)を含むことができる。例えば、第2反応基としては、チオール基、アミン基、アミノ基、カルボキシ基などを含む化合物が挙げられる。
【0031】
前記脂質構造体は、例えば、親水性を帯びる脂質ヘッド21が外側面に位置し、内部に疎水性を帯びる脂質尾22が位置して全体的に長さの長いチューブ形状を有することができ、チューブ形状の脂質構造体の一端に位置する第2反応基が前記ナノ粒子の第1反応基と化学結合してチューブ形状の脂質構造体が前記ナノ粒子1の外表面に結合する。例えば、ナノ粒子がアルブミンナノ粒子であり、前記脂質構造体にNHS(N-hydroxysuccinimide)反応基を形成する場合、NHS-amine反応を介して前記ナノ粒子1と脂質構造体2とを結合させることがてきる。本発明は、安定性が高く且つ生体適合性に優れた脂質ベースの物質でナノ粒子の表面を改質することにより、細胞内摂取効率を飛躍的に向上させることができ、サイズ100~200nmのナノ粒子が細胞内に摂取されるメカニズムは、エンドサイトーシスであるが、前記ナノ粒子複合体は、ナノ粒子の表面の一部分にチューブ形状の脂質構造体が結合して、エンドサイトーシスだけでなく、細胞膜を直接通り抜けることができ、スフェロイド状の腫瘍細胞に効果的に摂取されて生体モデルにも適用することがことができる。
【0032】
次に、本発明の他の実施形態によるナノ粒子複合体の製造方法を説明する。前記ナノ粒子複合体の製造方法は、第1反応基が存在するナノ粒子を形成するナノ粒子形成ステップと、前記第1反応基と化学的に結合する第2反応基が存在する脂質ベースのマイクロサイズの脂質体(バブル、リポソームなど)を形成する脂質体形成ステップと、前記ナノ粒子と脂質体とを混合して第1反応基と第2反応基とが互いに結合するようにして、脂質体の外面にナノ粒子が結合した脂質体-ナノ粒子複合体を形成する脂質複合体形成ステップと、前記脂質複合体形成ステップで形成された脂質体-ナノ粒子複合体に機械力(mechanical force)を加えて脂質体を破砕することにより、ナノ粒子の外表面の一部分に結合した脂質構造体を形成する破砕形成ステップなどを含む。
【0033】
前記ナノ粒子形成ステップは、細胞内に摂取されて疾病の治療に用いられるナノ粒子が第1反応基を含むように前記ナノ粒子を形成するステップであって、従来の様々なナノ粒子を製造する方法が使用でき、例えば、薬物を担持したアルブミンナノ粒子の場合は、アルブミンにアミン基が存在して第1反応基として使用でき、特定のタンパク質の発現を抑制するsiRNAナノ粒子の場合は、siRNAナノ粒子にアミン付きヒアルロン酸をコーティングしてsiRNAナノ粒子に第1反応基を形成することができる。
【0034】
前記脂質体形成ステップは、前記第1反応基と化学的に結合する第2反応基が存在する脂質ベースのマイクロサイズの脂質体(バブル、リポソームなど)を形成するステップであって、例えば、バブルは、脂質(例えば、リン脂質)で形成され、内部にガスが充填されており、前記バブルの外面に第2反応基が位置する。内部にガスを有し且つリン脂質からなるリポソーム形態のマイクロサイズのバブルは、従来の製造方法によって製造でき、例えば、第2反応基が結合したリン脂質と、第2反応基が結合していないリン脂質とを有機溶媒に一定の割合で混合して脂質フィルムを形成し、前記脂質フィルムを溶媒に溶かし、ガスを注入して形成することができる。
【0035】
前記脂質複合体形成ステップは、前記ナノ粒子と脂質体とを混合して第1反応基と第2反応基とが互いに結合するようにして、脂質の外面にナノ粒子が結合した脂質体-ナノ粒子複合体を形成するステップである。
【0036】
前記破砕形成ステップは、前記脂質複合体形成ステップで形成された脂質体-ナノ粒子複合体に機械力(mechanical force)を加えて脂質体を破砕することにより、ナノ粒子の外表面の一部分に結合した脂質構造体を形成するステップである。脂質体-ナノ粒子複合体に超音波機器などを用いて機械力を加えて一定時間維持する場合、脂質体が破砕され、脂質体をなすリン脂質は組み換えが起こることにより、ナノ粒子に結合したチューブ形状の脂質構造体が形成される。本発明は、脂質構造体をナノ粒子に直接付着させず、脂質ベースの脂質体とナノ粒子とを結合させた後、機械力を加えることにより、脂質体が破砕されてナノ粒子の表面に脂質構造体が形成されるようにするTop-down方式を採用するので、容易な量産を可能にすることができる。
【0037】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、本発明をより詳細に説明するためのものに過ぎず、本発明の権利範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0038】
<実施例1>ナノ粒子複合体の製造
1.ナノ粒子(NPs)の形成
アルブミン(Human serum albumin)を蒸留水に20mg/mLの濃度で溶かした後、0.2M NaOHを用いてpHを8に調節してアルブミン溶液を準備し、100%エタノールを1mL/minの速度で前記アルブミン溶液に滴定した。その後、4%のグルタルアルデヒド(glutaraldehyde)10μLを添加し、遮光下でエタノールを一晩蒸発させ、13200rpm、10minの条件で遠心分離を行った後、粒子化されていないアルブミンをピペットを用いて除去し、PBSで再分散して3000rpm、5minの条件で遠心分離を行った後、マイクロペレット(micropellet)を除く上澄み液(ナノ粒子(NPs))をピペットで得た(一方、蛍光実験を行う際には、必要による蛍光色素(dye)とナノ粒子とを一晩、常温で反応させた後、13200rpm、10minの条件で遠心分離を行い、反応していない蛍光色素(dye)をピペットを用いて除去した後、PBSで再分散して使用する)。
【0039】
2.リポソームの形成
脂質DSPC(1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphocholine)とDSPE-PEG-NHS2000(1,2-distearoyl-sn-glycero-3-phosphoethanolamine-N-polyethylene glycol succinimidyl ester)を9.25:0.75のモル比で混合してクロロホルム(Chloroform)に10mg/mlの濃度で溶かし、1mg/mlとなるようにLCバイアル(vial)に100μlずつ仕込んだ後、窒素ガスを用いてクロロホルムを蒸発させ、しかる後に、デシケーター(desiccator)を用いて真空を作って1時間以上乾燥させて脂質薄膜(lipid film)を形成した。脂質薄膜バイアル(lipid film vial)にauto PBSを1ml仕込んで脂質溶液を形成し、55℃以上の温度を有する水に脂質溶液入りのHPLCバイアルを入れて脂質溶液の温度が55℃以上となるようにし、バスソニック(bathsonic)で15秒程度超音波処理(sonication)を実施することにより(このとき、熱水に浸す過程と超音波処理(sonication)実施過程を3回ほど繰り返し行う)、リポソームを形成した。
【0040】
3.脂質を用いたバブル形成
実施例1の2の過程を経て得られた結果物に、Cガスを30秒間バイアル(vial)に満たし、バイアルミキサー(Vial Mixer)を用いて45秒間ミキシング(mixing)して、NHS反応基を含む脂質ベースのバブルを形成した。
【0041】
4.ナノ粒子複合体(Directional LT-NPs)の形成
(1)実施例1の1で形成されたナノ粒子をリポソーム溶液(実施例1の2で形成されたリポソームがPBSに1mg/mlの濃度で混合されて形成)に入れた後、NHS-アミン(NHS-amine)反応を誘導するために、RTで2時間以上反応させた後(このとき、リポソーム-ナノ粒子複合体(Liposome-NPs)が形成される)、超音波機器を用いて2W、1MHZ、デューティサイクル(duty cycle)100%の条件で5分以上機械力(mechanical force)を加えた。その後、破砕されたリポソームが脂質構造体を十分に形成することができるように、1時間以上RTでインキュベートして、ナノ粒子の外表面の一部分に脂質構造体が結合したナノ粒子複合体(Directional LT-NPs)を形成した。
【0042】
(2)リポソームの代わりに、実施例1の3で形成されたバブルを用いた以外は、他の条件を実施例1の4の(1)と同様にして、ナノ粒子の外表面の一部分に脂質構造体が結合したナノ粒子複合体(Directional LT-NPs)を形成した。
【実施例2】
【0043】
<実施例2>ナノ粒子複合体の特性確認
1.実施例1の1で形成したナノ粒子(NPs)と実施例1の4の(2)で形成したナノ粒子複合体(Directional LT-NPs)をTEMで測定し、その結果を図2に示した。また、前記ナノ粒子複合体及び脂質構造体をCryo-TEMで測定し、その結果をそれぞれ図3および図4に示す。
【0044】
2.図2を参照すると、ナノ粒子の場合、表面が滑らかであることを確認することができるのに対し、ナノ粒子複合体は、脂質構造体がナノ粒子の表面に付着しており、表面が滑らかでないことが分かる。また、図3を参照すると、ナノ粒子の表面にチューブ形状の脂質構造体が付着していることが分かり、図4を参照すると、前記脂質構造体は、チューブ形状を有することをさらに明確にすることができる。また、図3および図4を参照すると、ナノ粒子は100~300nmの直径を有し、前記脂質構造体は50~300nmの長さ及び3~20nmの幅を有することが分かり、前記脂質構造体は前記ナノ粒子の外表面に1つ以上が結合できることが分かる。
【実施例3】
【0045】
<実施例3>ナノ粒子複合体の細胞摂取効率の評価
1.実施例1の1で形成したナノ粒子(NPs)と実施例1の4の(2)で形成したナノ粒子複合体(Directional LT-NPs)に対する細胞摂取効率を評価するために、フローサイトメトリー(Flow cytometry)を用いて分析し、その結果を図5に示したとともに、共焦点顕微鏡を用いてイメージ化し、その結果を図6に示した。フローサイトメトリーを用いた分析は、A549細胞(1×10)にAlexa 488蛍光色素(dye)が標識されたナノ粒子及びナノ粒子複合体を処理して行った。共焦点顕微鏡を用いた分析は、DAPIを用いて核が染色され、ファロイジン(Phalloidin)を用いて細胞骨格(cytoskeleton)が染色されたA549細胞(1×10)に、Cy5.5蛍光色素(dye)が標識されたナノ粒子及びナノ粒子複合体を処理して行った。
【0046】
2.また、実施例1の1で形成したナノ粒子(NPs)と実施例1の4の(1)で形成したリポソーム-ナノ粒子複合体(Liposome-NPs)、ナノ粒子複合体(Directional LT-NPs)に対する細胞摂取効率を評価するために、共焦点顕微鏡を用いてイメージ化して、その結果を図7に示した。共焦点顕微鏡を用いた分析は、DAPIを用いて核が染色されたA549細胞(1×10)に、Alexa555蛍光色素(dye)が標識されたナノ粒子、リポソーム-ナノ粒子複合体及びナノ粒子複合体を処理して行った。
【0047】
3.図5を参照すると、ナノ粒子複合体がナノ粒子に比べて著しく優れた細胞摂取効能を示すことが分かり、図6を参照すると、ナノ粒子の代わりにナノ粒子複合体を用いた場合に、細胞内でさらに多くの赤色を帯びることが分かるため、蛍光画像を用いた実験でも、図5のような結果を確認することができる。また、図7を参照すると、ナノ粒子複合体がナノ粒子やリポソーム-ナノ粒子複合体に比べて著しく優れた細胞摂取効能を示すことを確認することができるため、脂質からなるバブルだけでなく、リポソームまたは他の脂質球状体によってもナノ粒子複合体が形成できることが分かる。
【実施例4】
【0048】
<実施例4>エンドサイトーシス阻害剤(Endocytosis Inhibitor)を処理した後のナノ粒子複合体の細胞摂取効率の評価
1.エンドサイトーシス阻害剤(Endocytosis Inhibitor)を処理した細胞に対して、実施例1の1で形成したナノ粒子(NPs)と実施例1の4の(2)で形成したナノ粒子複合体(Directional LT-NPs)の細胞摂取効率を評価した。サイズ200nmのナノ粒子は、大きくマクロピノサイトーシス(macropinocytosis)、クラスリン非依存性エンドサイトーシス(clarthrin-independent endocytosis)、クラスリン依存性エンドサイトーシス(clarthrin-dependentend ocytosis)の合計3つのメカニズムで細胞内摂取が行われることが知られているので、これを阻害(inhibition)する阻害剤(inhibitor)を選定して、まず、A549細胞(1×10)をそれぞれまたは同時に1時間処理した後、Alexa488蛍光色素(dye)が標識されたナノ粒子及びナノ粒子複合体を3時間処理し、フローサイトメトリーを用いて測定した。測定結果について、ナノ粒子を基準に正常化(normalize)して、図8に示した。マクロピノサイトーシス(Macropinocytosis inhibitor)としては、EIPA(5-(N-Ethyl-N-isopropyl)amiloride)を選定(25μg/mlの濃度)してNa/Hexchangeメカニズムを妨害し、クラスリン依存性エンドサイトーシス(Clathrin-dependent endocytosis inhibitor)としては、CPZ(chlorpromazine)選定(20μg/mlの濃度)してクラスリン被覆ピット形成(clathrin-coated pitformation)を妨害し、クラスリン非依存性エンドサイトーシス阻害剤(Clathrin-independent endocytosis inhibitor)としては、MβCD(methyl-β-cyclodextrin)を選定(3mg/mlの濃度)してクラスリン依存性エンドサイトーシスプロセス(cholesterol-dependent endocytic process)を妨害した。
【0049】
2.図8を参照すると、ナノ粒子の場合(NPs)は、CPZ、EIPA阻害剤により細胞摂取効能が大幅に減少することを確認することができ、3種類の阻害剤(inhibitor)をすべて処理してエンドサイトーシス(endocytosis)メカニズムをすべて妨害したとき、ナノ粒子の細胞摂取が殆ど行われないことが分かり、ナノ粒子複合体(Directional LT-NPs)の場合は、細胞摂取効能がナノ粒子と比較して350%程度より優れることを確認することができ、3種類の阻害剤(inhibitor)でエンドサイトーシス(endocytosis)メカニズムをすべて妨害したときも、ナノ粒子よりも優れた細胞摂取効能を示すことを観察することができる。これにより、ナノ粒子複合体は、エンドサイトーシス(endocytosis)だけでなく、細胞膜を直接透過(direct penetration)を介して直接通過することを確認することができる。
【実施例5】
【0050】
<実施例5>ナノ粒子複合体の抗がん剤送達体としての効能評価
1.アルブミン溶液にドキソルビシン(doxorubicin)が混合された溶液を添加して反応させた後、混合溶液が濁るまでエタノール滴定を行った以外は、実施例1の1及び実施例1の4の(2)と同様にして、ドキソルビシン含有ナノ粒子、ドキソルビシン含有ナノ粒子複合体を形成し、抗がん抵抗性を有する乳がん細胞株であるMCF-7/ADRをウェルプレート(wellplates)にシードし、それぞれドキソルビシン(100mM、DOX)、ドキソルビシン含有ナノ粒子(100mMのドキソルビシンを含む)及びドキソルビシン含有ナノ粒子複合体(100mMのドキソルビシンを含む)を含む培地中で37℃で6時間培養した後、前記細胞株をノーマル培地(normal media)中で48時間培養して細胞生存(Cell viability)を行うことにより、その結果を図9に示した。細胞生存(Cell viability)は、MTTアッセイとトリパンブルー色素排除法(trypan blue dye exclusion method)を用いるが、細胞生存(Cell viability)は、0.4%トリパンブルー色素(trypan blue dye)を有する細胞を培養し、ノイバウエル血球計(Neubauer hemocytometer)でカウントすることによって決定される。MTTアッセイで96ウェルプレートと1.5mg/ml MTT試薬(reagent)(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(3-(4,5-dimethylthiazol-2yl)-2,5-diphenyltetrazolium bromide))を使用し、15μlのMTT試薬を持って2時間培養した後、200μlのDMSOを各ウェル(well)に追加し、Resulting culture platesをプレートリーダー(plate reader)(Bio Tek Instruments,Inc,Winooski,VT,USA)によって570nmで測定した。
【0051】
2.図9を参照すると、同じ濃度のドキソルビシンを乳がん細胞に処理したとき、ナノ粒子複合体を用いる場合、一般がん細胞だけでなく、抗がん剤に対する抗がん抵抗性を有する細胞においても抗がん剤による細胞死滅効果を増加させることができることが分かる。
【実施例6】
【0052】
<実施例6>ナノ粒子複合体の誘電体薬物送達体としての評価
1.アルブミン(Human serum albumin)を0.1mM HEPES with 0.01mM EDTAに40mg/mLの濃度で溶かした後、thiol-modify VEGF siRNA duplex(5’modified)を仕込み、アルブミンとsiRNAとの混合溶液が濁るまで100%エタノールを1mL/minの速度で滴定した後、遮光下でエタノールを一晩蒸発させ、13200rpm、10minの条件で遠心分離を行った後、粒子化されていないアルブミン或いは未反応薬物をピペットを用いて除去し、PBSで再分散して3000rpm、5minの条件で遠心分離を行った後、マイクロペレット(micropellet)を除く上澄み液(siRNAが担持されたナノ粒子(siRNA NPs))をピペットで得た。前記thiol-modify VEGF siRNA duplexのセンス(sense)は5’-AUGUGAAUGCAGACCAAAGAA-3’(配列番号:1)であり、アンチセンス(antisense)は5’-thiol-UUCUUUGGUCUGCAUUCACAU-3’(配列番号:2)である。
【0053】
2.実施例6の1で形成された、siRNAが担持されたナノ粒子をバブル溶液(実施例1の3で形成されたバブルがPBSに1mg/mlの濃度で混合されて形成)に仕込んだ後、RTで2時間以上反応させた後、超音波機器を用いて2W、1MHZ、デューティサイクル(duty cycle)100%の条件で5分以上機械力(mechanical force)を加えた。その後、破砕されたバブルが脂質構造体を十分に形成することができるように、1時間以上RTでインキュベートして、siRNAが担持されたナノ粒子の外表面の一部分に脂質構造体が結合した、siRNAが担持されたナノ粒子複合体(Directional siRNA LT-NPs)を形成した。
【0054】
3.実施例6の1及び2でsiRNA NPs、Directional siRNA LT-NPsに対する遺伝子サイレンシング(Gene silencing)を確認して図10および図11に示す。遺伝子サイレンシング(Gene silencing)の確認は、MCF-7細胞(1×10)にsiRNA NPs、Directional siRNA LT-NPsをそれぞれ3時間処理し、24時間培養した後、mRNAを抽出し、同様の方法で、細胞に対するPCRを行った。PCR gel retardation assayにおいて、遺伝子バンド(gene bands)は、GelRed Nucleic Acid stainで染色され、Gel Doc imaging deviceによって視覚化される。図11はgene bandのintensityをImageProを用いて相対的に定量化した値を示した。
【0055】
4.図10及び図11を参照すると、siRNA NPsよりもDirectional siRNA LT-NPsを使用したとき、遺伝子サイレンシング(Gene silencing)効率が遥かに優れることを確認することができるため、ナノ粒子複合体が誘電体薬物送達体として効果的に使用できることが分かる。
【実施例7】
【0056】
<実施例7>腫瘍細胞スフェロイド(Tumor cell spheroid)での効能評価
1.Tumor cell spheroid(腫瘍細胞スフェロイド)は、一般な接着性(adherent)がん細胞とは異なり、3次元培養(3D culture)を用いて増殖し、このようなスフェロイド(spheroid)は、がん細胞が培地上でフロート(floating)して成長するため、がん細胞がかたまって成長する。かたまって成長する形態ががん組織のECM(Extracellular matrix)をミミック(mimic)するという研究結果があるため、脂質表面の改質による組織透過(tissue penetration)有無をin vitroで確認するために、このモデルで実験を行った。
【0057】
2.スフェロイド(Spheroid)細胞の形成
ポリ(2-ヒドロキシエチルメタアクリレート)(Poly(2-hydroxyethyl methacrylate))10gを100%純粋エタノール(pure ethanol)1Lに添加して60℃で溶かした後、溶かしたポリ(2-ヒドロキシエチルメタアクリレート)を100phi基準3.3ml程度プレート(plate)全体に均等に分散させて24時間乾燥させた後、コーティング(coating)を行い、用意されたプレートにMCF7細胞をシードし、5日間維持してスフェロイド(spheroid)を形成した細胞を得た。
【0058】
3.スフェロイド(Spheroid)細胞へのナノ粒子複合体の処理
(1)実施例1の1で形成したナノ粒子(NPs)と実施例1の4の(2)で形成したナノ粒子複合体(Directional LT-NPs)に対するスフェロイド(Spheroid)細胞摂取効率を評価するために、共焦点顕微鏡を用いてイメージ化し、その結果を図12に示した。DAPIを用いて核が染色された実施例7の2で形成されたスフェロイド(Spheroid)状のMCF-7細胞(1×10)に、Alexa555蛍光色素(dye)が標識されたナノ粒子及びナノ粒子複合体を処理した後、3時間が経過した時点で共焦点顕微鏡を用いて測定した。
【0059】
(2)図12を参照すると、ナノ粒子複合体がナノ粒子に比べて優れた細胞摂取効率を示すことを確認することができ、これにより、単純in vitro環境だけでなく、in vivoをミミック(mimic)した環境でも、ナノ粒子複合体の摂取効率が優れることを確認することができるので、ナノ粒子複合体は、組織における優れた透過(penetration)効率を有することが分かる。
【0060】
以上、本発明の様々な実施例を説明したが、これらの実施例は、本発明の技術的思想を実現する一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想を実現する限り、いかなる変更例または修正例も本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0061】
1 ナノ粒子
2 脂質構造体
21 脂質ヘッド
22 脂質尾
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【配列表】
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