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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】消臭抗菌薄葉紙の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/014 20060101AFI20221018BHJP
   C09D 11/02 20140101ALI20221018BHJP
   A47K 10/16 20060101ALI20221018BHJP
   A61F 13/15 20060101ALN20221018BHJP
【FI】
A61L9/014
C09D11/02
A47K10/16
A61F13/15 141
A61F13/15 142
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021027340
(22)【出願日】2021-02-24
(65)【公開番号】P2022128883
(43)【公開日】2022-09-05
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】500269004
【氏名又は名称】コアレックス三栄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】アイ バン トラン
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-118063(JP,A)
【文献】特開2003-191925(JP,A)
【文献】特開2015-159864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00- 9/22
C09D 11/02
A47K 10/16
A61F 13/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペーパースラッジからなる多孔質粒状炭化焼成物と、木質又はヤシの活性炭とが、50:50ないし100:0で混合されてpHが10.5以上である消臭抗菌材、水性インクに対して10ないし20重量%含有させ、当該混合インク印刷た紙の米坪に対する前記消臭抗菌材1.0ないし5.0%とする、
ことを特徴とする消臭抗菌薄葉紙の製造方法
【請求項2】
経時変化及び太陽光に対する安定性を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載された消臭抗菌薄葉紙の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭抗菌材、消臭抗菌薄葉紙、消臭抗菌シール、消臭抗菌フィルム及び消臭抗菌方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、ハンドタオルペーパー、生理用品等の衛生用品には、消臭手段が施されたものがある。例えば、下記特許文献1に記載された消臭紙(以下、「文献公知1発明」と記す。)は、香料に、疎水性消臭多孔体と親水性消臭多孔体とが所定の比率で含有されている。これによって、吸着剤による消臭機能を担保しつつ、香料の変調を抑えることができる。下記特許文献2に記載された消臭紙(以下、「文献公知2発明」と記す。)は、珪素を含有したセラミック消臭材が紙面にコーティングされ、消臭効果を発揮する。下記特許文献3に記載された紙製消臭器(以下、「文献公知3発明」と記す。)は、開口された箱に消臭紙が収容されたものであり、消臭紙はプリーツ加工が施されている。プリーツ加工によって、消臭紙の表面積が増えるため、所望の消臭効果が発揮される。
【0003】
各文献公知1ないし3発明の素材は、例えば、リファイナー等の機械や、苛性ソーダ、硫化ソーダ、亜硫酸溶液、次亜塩素酸ソーダ、過酸化水素、二酸化塩素等の薬品を用いて、圧力、加熱の条件下で製造されたパルプ繊維である。下記特許文献4(以下、「文献公知4発明」と記す。)によると、近年では、セルロースナノファイバーも使用され、銀、銅又は亜鉛の塩化物をつけると消臭剤になる。更に、特許文献5(以下、「文献公知5発明」と記す。)では、ポリエステル系繊維は、クエン酸、リンゴ酸及び酒石酸等で処理すると消臭性繊維が製造可能である。しかし、実際には、クエン酸のみが指定され、かつ、アンモニアガスのみの60%以上の消臭効果が記載されている。他の繊維協会、例えば、一般財団法人カケンテストセンター等によると、アンモニアの消臭率が70%以上にならないと消臭効果が認めらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-166938号公報
【文献】特開2003-55896号公報
【文献】特開2001-170155号公報
【文献】国際公開2016/125498号公報
【文献】特開2015-180788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のとおり、消臭手段を施すことで薄葉紙に消臭機能を持たせる技術が必要とされている。また、消臭機能に加えて抗菌機能を持たせた薄葉紙も需要がある。
【0006】
本発明は、上記した実情に鑑みて提案されたものである。すなわち、消臭及び抗菌を実現することができる消臭抗菌材、消臭抗菌薄葉紙、消臭抗菌シール、消臭抗菌フィルム及び消臭抗菌方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る消臭抗菌材は、ペーパースラッジからなる多孔質粒状炭化焼成物と、木質又はヤシの活性炭とが、50:50ないし100:0で混合され、pHが9.0以上である、ことを特徴とする。
【0008】
本発明に係る消臭抗菌材は、経時変化及び太陽光に対する安定性を有する、ことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る消臭抗菌薄葉紙は、消臭抗菌材が水性インクに対して10ないし20重量%含有され、当該混合インクが印刷された、ことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る消臭抗菌薄葉紙は、消臭抗菌材が、水単独に対して20ないし30重量%含有され、当該混合物が印刷された、ことを特徴とする。
【0011】
本発明に係る消臭抗菌薄葉紙は、消臭抗菌材が、水と中和カルボン酸との混合液に対して20ないし30重量%含有され、当該混合物が印刷された、ことを特徴とする。
【0012】
本発明に係る消臭抗菌薄葉紙は、消臭抗菌材が予め含有された、ことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る消臭抗菌シールは、消臭抗菌材が予め含有された、ことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る消臭抗菌方法は、消臭抗菌シールを、便器又は生ごみ袋に貼り付ける、ことを特徴とする。
【0015】
本発明に係る消臭抗菌フィルムは、消臭抗菌材が予め含有された、ことを特徴とする。
【0016】
本発明に係る消臭抗菌方法は、消臭抗菌フィルムを、便器又は生ごみ袋に貼り付ける、ことを特徴とする。
【0017】
好ましくは、本発明に係る消臭抗菌材の抗菌力は、ペーパースラッジからなるpH10.0以上の多孔質粒状炭化焼成物によるものである、ことを特徴とする。
【0018】
本発明に係る消臭抗菌材は、ペーパースラッジからなるpH10.0以上の多孔質粒状炭化焼成物単独またはpH8.0以上のヤシからなる活性炭(ヤシ活性炭という)との配合物で且つ配合率は50:50ないし100:0である、ことを特徴とする。
【0019】
本発明に係る消臭抗菌材では、上記のペーパースラッジからなる多孔質粒状炭化焼成物のサイズは、1ないし5μm、木質又はヤシの活性炭のサイズは、10ないし30μmの範囲である、ことを特徴とする。
【0020】
本発明に係る消臭抗菌薄葉紙は、消臭抗菌材が水性インクに対して10~20重量%含有され、前記インクが印刷された、ことを特徴とする。
【0021】
本発明に係る消臭抗菌材は、上記のペーパースラッジからなる多孔質粒状炭化焼成物単独又はヤシ活性炭等との配合物にクエン酸、リンゴ酸、酒石酸等を兼用することが可能である、ことを特徴とする。但し、これらのクエン酸、リンゴ酸、酒石酸(カルボン酸という)は、pH5.0~6.5の範囲に中和される、ことを特徴とする。
【0022】
本発明に係る消臭抗菌薄葉紙は、網像があり又はなしで消臭抗菌材が予め含有された、ことを特徴とする。
【0023】
本発明に係る消臭抗菌薄葉紙は、室内での6ヶ月または35℃の太陽光下での10時間経過したにもかかわらず消臭性や抗菌性が低下しない、ことを特徴とする。
【0024】
本発明に係る消臭抗菌シールは、消臭抗菌材が含有された、ことを特徴とする。
【0025】
本発明に係る消臭抗菌方法は、消臭抗菌シールを、便器、家庭のごみ箱、生ごみ箱等に貼り付ける、ことを特徴とする。
【0026】
本発明に係る消臭抗菌フィルムやプラスチックは、消臭抗菌材が含有された、ことを特徴とする。
【0027】
本発明に係る消臭抗菌フィルムやプラスチックは、家庭、野菜屋、魚屋、肉屋等のごみ箱、生ごみ箱等の内側または外側のフィルムやプラスチックの袋等とする、ことを特徴とする。
【0028】
本発明に係る消臭抗菌薄葉紙は、前記の水性インクを全く使用しなく消臭抗菌材が水のみ又は水と中和カルボン酸の混合物と混合し、生成された混合物で印刷された、ことを特徴とする。
【0029】
本発明に係る消臭抗菌薄葉紙は、消臭抗菌材が水単独または水と中和カルボン酸の混合物に対して20ないし30重量%含有され、前記消臭抗菌材と水の混合物が印刷された、ことを特徴とする。
【0030】
本発明に係る消臭抗菌薄葉紙以外のフィルムやプラスチックにおいては、ポリウレタン等の結合剤の添加が必要になる、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る消臭抗菌材、消臭抗菌薄葉紙、消臭抗菌シール、消臭抗菌フィルム及び消臭抗菌方法は、ペーパースラッジからなる多孔質粒状炭化焼成物と活性炭(木質又は/及びヤシの活性炭を含む)とが、50:50ないし100:0で混合され、pH(水素イオン指数)が9.0以上であるため、抗菌性を実現することができる。また、多孔質粒状炭化焼成物は、カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅、亜鉛、鉄等の無機物含有量が、60ないし90%であるため、消臭能力がある。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明の実施形態に係る消臭抗菌材、消臭抗菌薄葉紙、消臭抗菌シール、消臭抗菌フィルム及び消臭抗菌方法を説明する。
【0033】
本発明の第一実施形態に係る消臭抗菌材は、ペーパースラッジからなる単独の多孔質粒状炭化焼成物(ペーパースラッジカーボン:Paper Sludge Carbon。以下、「PSC」と記す。)、又は、PSCと木質又はヤシの活性炭とが混合されたものである。
【0034】
<PSC>
PSCは、古紙、又は、古紙及び木材チップの両方を用いて再生紙を製造した後のペーパースラッジが、炭化焼成されたものであり、以下の構成である(特許第5934668号参照。)。
【0035】
(1)pH8以上、望ましくは10以上、アルカリ相当値1.0~4.0meq/g(NaOH)、望ましくは1.5~2.5meq/g(NaOH)、カチオン交換容量1.0~4.0meq/100g(NH4 +)、望ましくは1.5~3.0meq/100g(NH4 +)、電気伝導度70~150μS/cm、カリウムの含有率:0.0003%以上、有機分が35%未満、無機分が65%以上、又は、有機分が25%未満、無機分が75%以上である多孔質粒状ペーパースラッジ炭化焼成物を、炭化焼成することで生成する。
(2)前記ペーパースラッジは、水分量50~85%を有し、このペーパースラッジを造粒し、乾燥した後、乾留温度500~1,300oC、望ましくは700~1,200oCの還元炭化焼成炉で炭化焼成する。さらに望ましくは、800~1,100oCで炭化焼成する。
(3)前記炭化焼成されたPSCは、絶乾重量で、可燃分(炭素を含む):15~35%、不燃物のTiO2:0.5~3.0%、Na2O:0.0001~0.0005%、K2O:0.0001~0.0005%、SiO2:15~35%、Al23:8~20%、Fe23:5~15%、CaO:15~40%、MgO:1~8%、を含み、これらと不純物との合計が100%であり、JIS C2141による吸水率が100~160%、BET吸着法による比表面積が80~150m2/gであり、連続気泡を有する。
(4)前記PSCは、容積空隙率が70%以上、空隙容積が1,000mm3/g以上を有し、平均空隙半径が20~60μmであり、全空隙容積に占める半径1μm以上の空隙が70%以上、長径が1~10mmの球状、楕円状、円柱状等である配合物質であり、黒色である。
【0036】
PSCは、長径が1~10mmの球状、楕円状、円柱状等の混合物質であるが、インクや薄葉紙に含有させるためには、微粒子である必要がある。PSCを粉砕する手段として、ハンマミル等の粉砕機がある。原理は次のとおりである。原料が粉砕室の中央からミル内に入り、ロータの遠心力により分散され、ハンマの衝撃力にて粉砕される。ハンマミルは、ピン型、ディスク型、プレート型、スイング型等がある。ハンマミルの改造型は、流動層式対向型ミルであり、特徴として、分級ロータの使用により流動層式対向型ジェットが発生し、超微粉砕が可能になる。また、高速回転モータを稼働させ、第一と第二のインペラを逆回転させることにより、超微粉砕機能が得られるサイクロンミル型もある。PSCの平均粒径は、ナノサイズ(1μm以下)が望ましいが、100μm以下、35μm以下、20μm以下、3μm以下であってもよい。
【0037】
粉砕機によって、粒径が20μmと3μmのPSC粒子を作成した結果、PSC粒子は、粉砕前のPSCと比較して、比表面積が各々1.2倍、1.4倍である。粉砕前のPSC及びPSC粒子のX線回折パターンは同様であり、2θ=29.44oでのピークが強く幅広いため、これらのPSCの結晶度は変化ない。したがって、インクや薄葉紙と適切に混合するためには、平均粒径が20μm以下のPSC粒子が好ましいが、インクメーカーによるとインクの流動性、粘土性を考慮した場合、PSC粒子の望ましい平均粒径D50が1.0なし5.0μmである。なお、比表面積は、マイクロトラック・ベル社製Belsorp-miniIIで測定し、X線回折は、理学社製RINT1100型回折計で測定した。X線回折計は、40kVと30mA、2θの0o~60oの範囲、0.1oのステップサイズと5秒のステップ時間の条件下で操作した。
【0038】
<活性炭>
活性炭は、穀物、ヤシ殻、木材、石炭、泥炭等の原材料から製造され、飲料水や空気の浄化、脱臭、有害薬品の除去、有害なガスの吸収等に用いられる。活性炭の能力を向上させるために、活性炭は、薬品又は塩化溶液に含浸されたものであってもよい。なお、含浸工程には含浸浸漬、噴霧含浸の2つの方法がある。本実施形態では木質又はヤシの活性炭が使用される。
【0039】
木質又はヤシの活性炭の平均粒径は、10ないし30μm以下が好ましい。
【0040】
上記した単独のPSCによって、又は、PSCと木質又はヤシの活性炭とが混合されて、消臭抗菌材が生成される。消臭抗菌材におけるPSCと木質又はヤシの活性炭との比率は、50:50ないし100:0である。また、pHは、9.0以上である。
【0041】
次に、本発明の第二実施形態に係る消臭抗菌薄葉紙を説明する。
【0042】
第二実施形態に係る消臭抗菌薄葉紙は、消臭抗菌材が含有された混合インク(以下、「消臭抗菌フレキソインク」と記す。)が印刷されている。消臭抗菌薄葉紙は、例えば、ティッシュペーパー、ハンドタオルペーパー、トイレットペーパー、キッチンタオルペーパー、生理用品、紙おむつ等である。消臭抗菌フレキソインクに用いられるインクは水性であり、色は、黒、藍、赤、草色等である。黄色は望ましくない。これらのフレキソインクに、単独のPSC、又は、PSCと木質又はヤシの活性炭との混合物を配合することにより、消臭抗菌フレキソインクになる。消臭抗菌フレキソインクにおいて、インクに対する消臭抗菌材の配合比は、10ないし20重量%である。
【0043】
第二実施形態に係る消臭抗菌薄葉紙は、次のとおり製造される。ここでは、消臭抗菌薄葉紙がタオルペーパーである場合の製造過程を例示する。なお、消臭抗菌薄葉紙は、木材からパルプを製造してもよいし、古紙からパルプを製造してもよい。
【0044】
木材からの製造方法は、少なくとも、原料処理工程、蒸解工程、精選工程、漂白工程、洗浄工程等を経て、抄紙工程及び印刷工程を経る。
【0045】
原料処理工程では、木材等が、小片のチップに加工され、大きさや厚みが揃えられる。蒸解工程では、釜等に投入されたチップに苛性ソーダや硫化ソーダ等の薬品が加えられ、高温・高圧で煮沸される。これにより、リグニンが溶解し、繊維から蒸解廃液が分離される。蒸解廃液は、薬品回収工程を通じて蒸解薬品を回収・再利用する。精選工程では、異物が除去され、洗浄される。漂白工程では、酸素、過酸化水素、オゾン、二酸化塩素等の薬品で漂白される。
【0046】
一方で、古紙からの製造方法は、少なくとも、溶解工程、精選工程、脱墨工程、漂白工程を経て、抄紙工程及び印刷工程を経る。
【0047】
溶解工程では、古紙や紙パック等がパルパーに投入され、水又は温水の何れかと、界面活性剤等の薬品とが加えられ、撹拌される。これにより、古紙や紙パック等が繊維状にほぐされる。精選工程では、リキッドサイクロンの遠心力により、バインダーなどに取り付けられている金具や、古紙等を束ねるクリップ、ホチキス等の重量異物が除去される。さらに、スクリーンセパレータにより、紙の原料とならないプラスチック等の異物が除去される。脱墨工程では、フローテーションにより、古紙などに印刷されたインクを剥離し、製紙原料からインクを除去する。
【0048】
木材又は古紙から生成されたパルプは、抄紙工程を経て薄葉紙となる。抄紙工程では、抄紙機により、パルプが抄紙されて長尺の原紙が生成され、ポープリールで巻き取られる。抄紙工程は、少なくとも、パルプから懸濁液を濾し取るウェット工程、水分を搾り取るプレス工程、乾燥させるドライヤ工程を経る。
【0049】
ウェット工程では、網状のワイヤにパルプが広げられ、網の目から懸濁液が濾し取られる。プレス工程では、周面が対面したローラ間に通されて水分が絞り取られる。ドライヤ工程では、ドライヤ装置で乾燥させ、原紙が得られる。ドライヤ装置には、例えばヤンキードライヤ、バンドドライヤ等が用いられる。
【0050】
以上は、再生紙の一般な製造工程であるが、化学パルプは連続蒸解釜又はバッチ蒸解釜にて製造され、次いで、酸素脱リグニン工程、洗浄工程、精選工程等を通じて無塩素漂白工程を経て、晒パルプが得られる。その後、抄紙工程にて紙が出来上がる。
【0051】
パルプからなる印刷用紙、包装用紙及び古紙からなるCライナー、Dライナー、Kライナー等の表ライナー、裏ライナー等の段ボール用紙等は、家庭紙と同様に、抄紙工程を経た後、印刷工程において、消臭抗菌フレキソインクが、原紙に、例えば、文字、図柄、模様等として、印刷機によって印刷される。消臭抗菌フレキソインクは、白色または他の色のベースフレキソインクとPSCで構成されている。PSCの添加率は、消臭抗菌フレキソインクに対し10%~20%の範囲である。原紙に印刷される消臭抗菌フレキソインクの量は、原紙の米坪に対して、1.0ないし5.0%である。
【0052】
最後に、製品加工工程を経て、各種の薄葉紙や段ボール用紙となる。
【0053】
第二実施形態に係る消臭抗菌薄葉紙は、消臭抗菌材が含有され、例えば、ティッシュペーパー、タオルペーパー、トイレットペーパー、キッチンタオルペーパー、生理用品、紙おむつ等である。消臭抗菌薄葉紙において、紙の米坪に対する消臭抗菌材の残存率は、1.0~5.0重量%である。
【0054】
次に、本発明の第三実施形態に係る消臭抗菌薄葉紙を説明する。
【0055】
第三実施形態に係る消臭抗菌薄葉紙は、消臭抗菌材が含有され、例えば、ティッシュペーパー、ハンドタオルペーパー、トイレットペーパー、キッチンタオルペーパー、生理用品、紙おむつ等である。消臭抗菌薄葉紙において、紙パルプに対する消臭抗菌材の配合比は、1.0ないし5.0重量%である。
【0056】
第三実施形態に係る消臭抗菌薄葉紙は、次のとおり製造される。なお、以下では、主に第二実施形態と異なる構成について説明し、同様の説明は省略する。第三実施形態に係る消臭抗菌薄葉紙は、予めパルプに消臭抗菌材が含有されている点において、第二実施形態と異なる。
【0057】
すなわち、第三実施形態においても、第二実施形態と同様に、木材又は古紙からパルプが生成されるが、第三実施形態では、抄紙工程の前に、消臭抗菌材混合工程を経る。例えば、木材からの製造方法の場合、漂白工程の後、又は、各工程の間に、消臭抗菌材混合工程を経る。同様に、古紙からの製造方法では、例えば、漂白工程の後、又は、各工程の間に、消臭抗菌材混合工程を経る。
【0058】
次に、本発明の第四実施形態に係る消臭抗菌シールを説明する。
【0059】
第四実施形態に係る消臭抗菌シールは、消臭抗菌材が含有されたシールである。シールは一般的に、表面加工、素材(基材)、糊(粘着)、台紙(セパレーター)の4層から構成される。第四実施形態では、表面加工は透明フィルム、素材は消臭抗菌薄葉紙、粘着体は糊層、セパレーターは一般な台紙である。なお、素材の紙の米坪に対する消臭抗菌材の使用量は、1.0~5.0重量%である。上記のシールは、表面加工、糊、台紙の材質構成の選定及びデザインの内容等は、使用環境に応じて検討する必要がある。
【0060】
次に、本発明の第五実施形態に係る消臭抗菌方法を説明する。
【0061】
第五実施形態に係る消臭抗菌方法は、第四実施形態に係る消臭抗菌シールを、便器全体に貼り付けることで、消臭抗菌効果を得る。便器は、例えば、便器本体、便座、タンク等を含む。なお、消臭抗菌シールは、手摺り、壁、床、トイレットペーパーホルダー、棚等に貼り付けられてもよい。
【0062】
更に、第五実施形態に係る消臭抗菌方法は、第四実施形態に係る消臭抗菌シールを、例えば、家庭、野菜屋、魚屋、肉屋等のごみ箱、生ごみ箱等の外側又は内側に、部分的に又は全体的に貼り付けることで、消臭抗菌効果を得る。
【0063】
次に、本発明の第六実施形態に係る消臭抗菌フィルム、及び、本発明の第七実施形態に係る消臭抗菌方法を説明する。
【0064】
第六実施形態に係る消臭抗菌フィルムは、消臭抗菌材が含有されたフィルム(プラスチックを含む。)である。第六実施形態に係る消臭抗菌フィルムは、消臭抗菌フレキソインクが、印刷機によって印刷される。印刷網像は、例えば、文字、図柄、模様等として使用される。第七実施形態に係る消臭抗菌方法では、消臭抗菌フィルムが、例えば、便器、家庭、野菜屋、魚屋、肉屋等のごみ箱、生ごみ箱等の内側袋として使用されることで、消臭抗菌効果を得る。
【0065】
次に、本発明の第八実施形態に係る消臭抗菌薄葉紙を説明する。
【0066】
第八実施形態に係る消臭抗菌薄葉紙は、消臭抗菌材が、単独の水に対して20ないし30重量%含有され、この混合物が、例えば、ティッシュペーパー、ハンドタオルペーパー、トイレットペーパー、キッチンタオルペーパー、生理用品、紙おむつ等に印刷されたものである。
【0067】
次に、本発明の第九実施形態に係る消臭抗菌材を説明する。
【0068】
第九実施形態に係る消臭抗菌薄葉紙は、消臭抗菌材が、水と中和カルボン酸との混合物に対して20ないし30重量%含有され、この混合物が、例えば、ティッシュペーパー、ハンドタオルペーパー、トイレットペーパー、キッチンタオルペーパー、生理用品、紙おむつ等に印刷されたものである。
【0069】
上記した消臭抗菌材、消臭抗菌薄葉紙、消臭抗菌シール、消臭抗菌フィルムの経時変化は、35°Cの太陽光の下での計10時間や室内での1~6ヶ月間の保管後、アンモニア、硫化水素、トリメチルアミン等の消臭率がすべて基準値70%以上の値を維持し、熱及び経時変化に対する安定性が図れた。
【0070】
<抗菌試験>
実施例1(第一実施形態に係る消臭抗菌材)、実施例2(第三実施形態に係る消臭抗菌薄葉紙)、比較例1(通常のタオルペーパー)を用いて細菌を拭き取り、菌数を測定した。菌株は大腸菌(Escherichia coli JCM1649)(クリタ分析センター株式会社ファイル番号: F11-2018-3168)である。試験方法は、次のとおりである。
<実施例1の試験>
はじめに、菌株を1/10PY液体培地に接種し、36°C、24時間の条件の下で、培養を行った。その後、滅菌水に実施例1を1%添加した液に、菌液を、菌数1.0×10^5~6となるように添加した。36°Cで24時間培養し、菌数を測定した。
<実施例2の試験>
はじめに、菌株を1/10PY液体培地に接種し、36°C、24時間の条件の下で、培養を行った。その後、1/500PY液体培地を用いて、菌数1.0×10^5~6に希釈した。調整した菌液0.4mlをシャーレの表面に滴下した。実施例2及び比較例1で、シャーレの表面を拭き取った後、シャーレに蓋をして36°Cで24時間静置した。その後、1/500PY液体培地でシャーレの表面を流し、洗浄液の菌数を測定した。
サンプルは次のとおりである。
実施例1.PSC
平均サイズD50:3μm、pH:10.5~11.5
実施例2.PSCと古紙パルプとの混合(パルプに対するPSC配合率:12%)より製造されたグレー色タオルペーパー
試験の結果を、下表1に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
以上の結果により、実施例1(PSC単独)では、大腸菌(E.coli)の成長が抑えつけられ、消臭抗菌材の抗菌効果の見込みがあると考える。実施例2(PSC含有グレー色タオルペーパー)では、PSCを晒パルプと混合し(パルプ絶乾量に対するPSC配合率:15%)、グレー色タオルペーパーを製造した。実施例1のPSCのみの場合と同様に大腸菌(E.coli)の繁殖を防げた。これらの結果は、PSCのpHが10.5以上による原因と推定する。実施例1、2において、pHが9.0以上である場合や、PSCと活性炭とが、50:50で混合されている場合であっても、同様に抗菌効果があった。
【0073】
<抗菌試験>
実施例3(第二実施形態に係る消臭抗菌薄葉紙)、実施例4(第三実施形態に係る消臭抗菌薄葉紙)、比較例2(通常のティッシュペーパー)を用いて細菌を拭き取り、菌数を測定した。菌株は黄色ブドウ球菌Staphylococcus aureus(株式会社日新化学研究所所有)であり、JIS L1902:2015(菌液吸収法)、36°C、24時間の培養条件下で行った。
サンプルは、次のとおりである。
比較例2.家庭紙のティッシュペーパー原紙(白紙)
実施例4.上記抗菌試験で用いた実施例2と同じグレー色タオルペーパー
実施例3.PSC(3μm)とメーカー1の活性炭(25μm)(割合:65:を35 )からなる混合消臭抗菌材を含有する藍色水性インクで印刷されたティッシ ュペーパー(藍色水性インクに対しPSCの使用率は17%)
試験の結果を下表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
以上の結果により、実施例4(PSC含有グレー色タオルペーパー)及び実施例3(P
SC及びメーカー1の活性炭(割合:65:35)の混合消臭抗菌材含有藍色ティッシュ
ペーパー)の存在の下で黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus
)の成長が抑えつけられ、消臭抗菌材の抗菌効果が認められると考える。
実施例4(実施例2と同様な原料)は、黄色ブドウ球菌Staphylococcus
aureusで処理しでも抗菌性が確認された。したがって、PSC又はPSCと活性
炭の混合物は、大腸菌(Escherichia coli JCM1649)及び黄色ブ
ドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対し抗菌性を持つことが確
認された。
なお、実施例3、4において、pHが9.0以上である場合や、PSCと活性炭とが、
50:50で混合されている場合であっても、同様に抗菌効果があった。活性炭の混合比
が50%以上になると、コストが上がり、pHが低下する恐れがあるため抗菌効果への影
響が避けられなくなると推定するため、活性炭を混合する場合の上限は、PSCと活性炭
との混合比は、50:50程度が好ましい。
また、実施例3に関して、水インクに対する消臭抗菌材の割合が17%であり、10
ないし20重量%の範囲にあり、上限の20重量%にあっても、同様に抗菌効果があった
。しかし、消臭抗菌材は、消臭抗菌材インクの粘性に影響し、粘性が高いと、消臭抗菌材
インクが紙に馴染みづらくなるため、水インクに対する消臭抗菌材の割合は、20重量
%以内が好ましい。
【0076】
<消臭試験>
<単独のPSC、PSC及びメーカー1の市販木質活性炭の混合物>
実施例8ないし11(第二実施形態に係る消臭抗菌薄葉紙)として、水性黒色インクに3μmのPSC単独(インクに対する添加率:12%)、又はPSCとメーカー1の25μmの木質活性炭(pH:9.0~9.5)の混合物を混合した(配合率:PSC=70%、メーカー1の木質活性炭=30%、インクに対する活性炭混合物の添加率:12%)。これらの消臭抗菌インクでトイレットペーパーを印刷した。前記トイレットペーパーは、5cm×5cmのサイズを作成し、風乾3.1gを5Lのテトラパック(登録商標)に入れ、計3袋をシールした。1テトラパック(登録商標)に3Lの100ppmのアンモニアガス 、他の一つテトラパック(登録商標)に、3Lの5ppmの硫化水素ガス、そして残りテトラパック(登録商標)に3Lの28ppmのトリメチルアミンガスを注入した。
同様な手法で3μmのPSC単独、比較例3ないし5として、メーカー1の25μmの木質活性炭単独、そして、実施例5ないし7(第一実施形態に係る消臭抗菌材)として、これらの活性炭の混合物(配合率において、PSC:70%、メーカー1の木質活性炭:30%)の各々1gを5Lのテトラパック(登録商標)に入れ計3テトラパック(登録商標)をシールした。一つテトラパック(登録商標)に3Lの100ppmのアンモニアガス、他の一つテトラパック(登録商標)に3Lの5ppmの硫化水素ガス、そして残りテトラパック(登録商標)に3Lの28ppmのトリメチルアミンガスを注入した。
同時に紙と活性炭がないテトラパック(登録商標)に上記の各ガスの3Lを注入した。ガス注入時点から24時間後に各テトラパック(登録商標)内のガス濃度を測定した。
試験結果を下表3及び4に示す。
【0077】
【表3】
【0078】
【表4】
【0079】
表3により、比較例3ないし5(メーカー1の木質活性炭単独)は、アンモニアガス、硫化水素ガス及びトリメチルアミンガスの24時間後の消臭率が基準値70%以上であり、優れる消臭材である。実施例5ないし7(PSC(70%配合率)とメーカー1の木質活性炭(30%配合率)の混合物)も同様な消臭率が得られたためPSCが優れる消臭材であることを確認した。表3の比較例3ないし5には、市販活性炭単独の場合、消臭効果が優れた。更に、実施例5ないし11において、市販活性炭の配合率が30%にも関わらず、単独市販活性炭時の消臭率と同等の結果であるため、市販活性炭が50%の場合であっても、同様に消臭効果があった。当然に、PSC単独の場合も優れた消臭効果があった。
表4では、実施例8、10(PSC単独含有水性黒色インックで印刷されたトイレットペーパー)は、実施例9、11(PSC(70%配合率)とメーカー1の木質活性炭(30%配合率)の混合を含有する水性黒色インクで印刷されたトイレットペーパー)に比べアンモニアガス、硫化水素ガスの24時間後の消臭率が基準値70%以上であった。しかし、実施例8、10(PSC単独のトイレットペーパー)は実施例9、11(PSCとメーカー1の木質活性炭の混合物のトイレットペーパー)に比べアンモニアガス、硫化水素ガス共消臭効果が低いため、黒色の水性インクがPSCの消臭能力を部分的に阻害すると推定する。表4では、水性インクに対し単独PSC(実施例8、10)、PSCと市販活性炭の混合物(実施例9、11)共、添加率が12%であるため、実施例8ないし11において、水生インクに対する消臭抗菌材の割合が、10ないし20重量%の範囲であっても、同様に消臭効果があった。
【0080】
メーカー1は、都合により木質活性炭の生産を中止したためメーカー2のヤシ活性炭を試みた。このヤシ活性炭は、平均サイズD50が25μm、pHが8.6~9.2とメーカー1の木質活性炭より少し低い値であった。
上記の表3と同様な手法でPSC単独及びメーカー2のヤシ活性炭単独の消臭性を調査した。結果を表5、6に示す。
表5のアンモニアガスの消臭率においては、PSC、メーカー2のヤシ活性炭共80%以上で基準値の70%より高い値であった。
表5と同様に、表6の硫化水素ガスの消臭率もPSC、メーカー2のヤシ活性炭共ほぼ100%近い値が得られ、基準値の70%より高い結果であった。これらの結果からメーカー2のヤシ活性炭はメーカー1の木質活性炭に比べ消臭力が同等と考える。
【0081】
【表5】
【0082】
【表6】
【0083】
クエン酸及びリンゴ酸の消臭性を検討するため、クエン酸(配合率:90%)、リンゴ酸(配合率:10%)の混合物をpH6.0になるまで苛性ソーダを添加した。
グレー色タオルペーパーの場合、上記中和カルボン酸(パルプに対する添加率:10%)、メーカー2のヤシ活性炭(配合率:30%)及びPSC(配合率:70%)の混合物(パルプに対する添加率:12%)の条件下で製造した。
印刷トイレットペーパーについては、メーカー2のヤシ活性炭(配合率:30%)及びPSC(配合率:70%)の混合物(藍色水性インクに対する添加率:17%)及び前記の中和カルボン酸(藍色水性インクに対する添加率:10%)を順次に藍色水性インクに混ぜトイレットペーパーを印刷した。
以上の製造されたグレー色タオルペーパー及びPSC、ヤシ活性炭含有藍色水性インクで印刷されたトイレットペーパーの消臭性結果を表7、8、9に示す。
【0084】
表7、8、9に示すようにトイレットペーパー原紙(白紙)は、アンモニアガス、硫化水素ガス、トリメチルアミンガスに関する消臭率が準値の70%より低い結果であった。しかし、PSC,メーカー2の活性炭及びカルボン酸の混合物を使用したグレー色タオルペーパーのアンモニアガス、硫化水素ガス、トリメチルアミンガスの消臭率が全て95%以上の結果であった。同様にPSC,メーカー2のヤシ活性炭の混合物及び中和カルボン酸を含有する水性インクで印刷されたトイレットペーパーは、アンモニアガス、硫化水素ガス、トリメチルアミンガスの消臭率が全て95%以上と優れた結果であった。したがって、カルボン酸の消臭役割が確認できた。
【0085】
【表7】
【0086】
【表8】
【0087】
【表9】
【0088】
抗菌消臭材の永久性、つまり保管期間及び太陽光の影響は検討する必要がある。ここでは、経時変化の影響において開封及び未開封且つ室内に1ヶ月間と6ヶ月間に置いたトイレットペーパーパック(実施例9及び11。表4参照)を使用した。太陽光の影響は、同様な1ヶ月間と6ヶ月間のトイレットペーパーパックを気温35°C、5時間/日の2日間連続で処理した。
経時変化及び太陽光を処理したサンプルは、5cm×5cmのサイズを切り、風乾3.1gを測った後各5Lのテトラパック(登録商標)に入れ、上記の消臭テストと同様に行った。結果を表10に示す。
【0089】
【表10】
【0090】
表10によると室内での長期間、35°Cの太陽光下での5時間/日の2日連続を処理したにもかかわらずアンモニアガス及びトリメチルアミンガスの消臭率は95%以上で、硫化水素ガスの消臭率は85%以上の値と基準値の75%を超えたため、本発明の抗菌消臭材が永久性を持つことを確認した。
【0091】
上記の水と消臭抗菌材(PSC:70%、メーカー2のヤシ市販活性炭:30%)との混合物(水に対する消臭抗菌材は26重量%)を使用し白紙トイレットペーパーを印刷し、消臭試験を行い、結果を表11に示す。
【0092】
【表11】
【0093】
表11に示すように、実施例12、13(水とPSCの消臭抗菌材で印刷されたトイレットペーパー原紙(白紙))は、基準値の70%に比べ、アンモニアガス、硫化水素ガス共高いが、実施例14では、トリメチルアミンガスが低い値であった。なお、消臭抗菌材における、PSCとメーカー2のヤシ市販活性炭との混合比を、50:50ないし100:0とし、水に対する消臭抗菌材を、20ないし30重量%の範囲としても、同様の傾向がみられる。
【0094】
そこで、PSC,メーカー2のヤシ活性炭(PSC:65%、メーカー2のヤシ市販活性炭:35%)及び上記の中和されたカルボン酸の溶液、水(中和カルボン酸と水に対しPSC及び市販活性炭の混合率は26%重量、水及び中和カルボン酸の比率は9~7:1~3。)の混合物を使用し、トイレットペーパー原紙(白紙)を印刷し、消臭試験を行い、結果を表12に示す。
【0095】
【表12】
【0096】
中和カルボン酸の使用は、やはりトリメチルアミンガスの消臭率を改善し、目標値の70%より高い値が得られた。他のアンモニアガス、硫化水素ガスの消臭率も少し増加した。なお、消臭抗菌材における、PSCとメーカー2のヤシ市販活性炭との混合比を、50:50ないし100:0とし、水と中和カルボン酸に対して消臭抗菌材を20ないし30重量%の範囲としても、同様の傾向がみられる。実施例12ないし17は、消臭抗菌材を有することでpH9.0以上であるため、当然に抗菌効果もある。
【0097】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。そして本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。