(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】箱型船
(51)【国際特許分類】
A01G 33/02 20060101AFI20221018BHJP
【FI】
A01G33/02 101J
(21)【出願番号】P 2021097206
(22)【出願日】2021-06-10
(62)【分割の表示】P 2016243757の分割
【原出願日】2016-12-15
【審査請求日】2021-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】599048786
【氏名又は名称】光洋通商株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】笠井 秀城
(72)【発明者】
【氏名】笠井 芳樹
(72)【発明者】
【氏名】笠井 弘子
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-093824(JP,A)
【文献】特開平03-198728(JP,A)
【文献】実開平5-15755(JP,U)
【文献】特開平5-95740(JP,A)
【文献】特開平8-298885(JP,A)
【文献】特開平3-43028(JP,A)
【文献】特開2015-77106(JP,A)
【文献】特開2008-99648(JP,A)
【文献】特開平9-107828(JP,A)
【文献】特開2002-239486(JP,A)
【文献】特開2000-126699(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101822271(CN,A)
【文献】国際公開第2013/022336(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 33/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸原液が希釈された酸処理液を貯留する酸処理槽と、
該酸処理槽内に設けられ、海苔が付着した海苔網を巻き取る巻取ロールとを備える箱型船であって、
前記酸原液を前記酸処理槽の前記酸処理液内に吐出する原液吐出部と、
該原液吐出部に前記酸原液を供給する原液供給部とを備え、
前記原液吐出部は、前記酸処理槽の上方から
シート部材を介して垂下した状態に設けられていることを特徴とする箱型船。
【請求項2】
前記原液吐出部は、前記酸処理槽の上方から前記酸処理液内に垂下する
前記シート部材の下部に設けられている請求項1に記載の箱型船。
【請求項3】
前記シート部材は、下部に錘を備え、
前記原液吐出部は、前記錘の上部において前記酸処理液に浸漬する高さに前記シート部材を挟んで両側に設けられることを特徴とする請求項2に記載の箱型船。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、箱型船に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1によれば、モグリ船という船を用いて、海苔網の下にその船を潜らせ、酸洗浄液を海苔網の下側から吹き付け、海苔に付着した珪藻類を除去する海苔網の連続処理方法が開示されている。このモグリ船を用いた海苔網の酸処理では、容器に貯留された酸処理液を酸洗浄槽に供給して所望pHの酸洗浄液を調整し、当該酸洗浄液を第1のポンプを用いて酸洗浄槽から散布機に供給することにより海苔網に散布する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記モグリ船を用いた酸処理では、海苔網と酸洗浄槽との距離が比較的離れているので、酸性度が比較的高い酸処理液が海苔網に吹き付けられることにより海苔網や海苔に悪影響を与えることがない。
【0005】
しかしながら、モグリ船と同様に海苔網に酸処理を施す船として、モグリ船よりも小型な所謂箱型船が知られている。この箱型船は、海苔網に酸処理を施すための酸処理液(上記モグリ船の酸洗浄液に相当するもの)を酸処理槽に貯留し、また当該酸処理槽内に海苔網を巻き取る巻取ロールを備えるものである。すなわち、このような箱型船では、酸処理槽内の酸処理液に海苔網を浸漬させることにより当該海苔網に酸処理を施す。
【0006】
このような箱型船において酸処理液のpH値を調節するためには、酸原液(上記モグリ船の酸処理液に相当するもの)を酸処理槽に供給することになるが、酸処理槽内に巻取ロールに巻き取られた海苔網が存在する場合に、例えば作業者が酸原液を酸処理液に供給する際に、不注意等によって酸原液が海苔網に付着して海苔網や海苔に悪影響を与える可能性がある。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、酸原液が海苔網に付着することを抑制あるいは防止することを防止することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では、第1の解決手段として、酸原液が希釈された酸処理液を貯留する酸処理槽と、該酸処理槽内に設けられ、海苔が付着した海苔網を巻き取る巻取ロールとを備える箱型船であって、前記酸原液を前記酸処理槽の前記酸処理液内に吐出する原液吐出部と、該原液吐出部に前記酸原液を供給する原液供給部とを備え、前記原液吐出部は、前記酸処理槽の上方から垂下した状態に設けられている、という手段を採用する。
【0009】
本発明では、第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記原液吐出部は、前記酸処理槽の上方から前記酸処理液内に垂下するシート部材の下部に設けられている、という手段を採用する。
【0010】
本発明では、第3の解決手段として、上記第2の解決手段において、前記シート部材は、下部に錘を備え、前記原液吐出部は、前記錘の上部において前記酸処理液に浸漬する高さに前記シート部材を挟んで両側に設けられる、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、酸原液が海苔網に付着することを抑制あるいは防止することできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る酸処理装置の上面視における機能構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る酸処理装置の側面視における
図1のX-X断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態の変形例に係る酸処理装置の上面視における機能構成図である。
【
図4】本発明の第1実施形態の変形例に係る酸処理装置の側面視における
図3のX-X断面図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る酸処理装置の上面視における機能構成図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る酸処理装置の側面視における
図5のX-X断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
本実施形態に係る箱型船Aは、養殖中の海苔網上の海苔を酸処理する酸処理装置である。箱型船Aは、船本体1、酸処理液2が貯留する酸処理槽3、海苔網Nを巻き取る一対の巻取ロール4a、4b、吊り棒5、樹脂シート6(シート部材)、錘7、チューブ8A、8B(管状部材)、pHセンサ9、pH制御器10、酸原液ポンプ11、酸原液12を貯蔵する酸原液タンク13及び巻出ロール14a、14bを備える。なお、チューブ8A、8Bは本発明における原液吐出部を、pH制御器10、酸原液ポンプ11及び酸原液タンク13は、本発明における原液供給装置を構成している。また、pHセンサ9、pH制御器10、酸原液ポンプ11及び酸原液タンク13は、本発明における原液供給部を構成している。
【0014】
船本体1は、箱型に成形された樹脂製浮体である。この船本体1は、前後方向の寸法が幅方向の寸法よりも若干短い長方形の平面形状を備えており、例えば前後方向の寸法が約1.5m、幅方向の寸法が約2mである。また、この船本体1は、図示しないエンジンを備えており、後述する巻取ロール4a、4b及び巻出ロール14a、14bを回転させる原動力となる。このような船本体1には、酸処理槽3、吊り棒5、pH制御器10、酸原液ポンプ11、酸原液タンク13及び不図示のバッテリ等が設けられている。
【0015】
酸処理液2は、海苔網N上の海苔を酸処理するのに適した所望のpH値、例えばpH=0.4~2.6を有する酸希釈液である。すなわち、この酸処理液2は、所定の有機酸あるいは塩酸等の酸原液12が海水によって希釈された液体である。酸処理液2は、酸処理槽3に一定量が貯留されており、海苔網Nと接触することによって海苔網Nに付着した海苔を酸処理する。
【0016】
酸処理槽3は、船本体1の中央に形成され、側壁部3a~3d及び底壁部3eに囲まれた略直方体の窪み部であり、所定量の酸処理液2を貯留する。この酸処理槽3の容量は、例えば400~800リットルである。海苔網Nは、海苔が付着した長尺状の網である。この海苔網Nは、海苔の養殖場に複数条が配置されている。すなわち、海苔の養殖では、養殖場となる海域に複数条の海苔網Nを配置し、海苔を海苔網Nに付着させた状態で養殖する。なお、船本体1には、酸処理槽3を幅方向に挟む状態で一対の窪み部が形成されている。これら一対の窪み部は、幾つかの機器を配置するためのスペースであると共に作業者が乗船するためのスペースでもある。
【0017】
一対の巻取ロール4a、4bは、酸処理槽3内に一定距離を隔てて平行かつ水平に配置された回転軸である。すなわち、この巻取ロール4a、4bは、船本体1の前後方向に直交する姿勢で船本体1に回転自在に取り付けられている、このような一対の巻取ロール4a、4bのうち、一方の巻取ロール4aは船本体1が前進した際に前方から侵入してくる海苔網Nを順次巻き取るためのものであり、他方の巻取ロール4bは、船本体1が後進した際に後方から侵入してくる海苔網Nを順次巻き取るためのものである。
【0018】
吊り棒5は、酸処理液2の液面に対峙するように酸処理槽3の上方に設けられた棒状部材である。この吊り棒5は、酸処理槽3の中央部に、両端が船本体1の上部に固定されて、一対の巻取ロール4a、4bと平行に設置されている。このような吊り棒5は、一対の巻取ロール4a、4bに各々巻き取られる海苔網Nと干渉しない位置に、つまり海苔網Nの侵入方向に対して各々の巻取ロール4a、4bの後方に設けられている。
【0019】
樹脂シート6(シート部材)は、略長方形かつ可撓性を有するシート部材であり、例えば塩化ビニル製の白色シートである。この樹脂シート6は、上端が酸処理槽3の中央部に設けられた吊り棒5に固定され、当該吊り棒5から酸処理液2中に向かって垂下し、下端が後述する錘7に固定されている。上記のように、樹脂シート6が酸処理液2中に垂下していることにより、船本体1の揺動及び海苔網Nを巻き取る際に巻取ロール4a又は巻取ロール4bが回転することによって酸処理液2中に生成される水流によって、樹脂シート6が前進方向及び後進方向に揺動し、酸処理液2が攪拌される。
【0020】
錘7は、直径が約20mmのステンレス製の棒状部材である。この錘7は、樹脂シート6の下端部に、酸処理槽3の底壁部3eから間隔Dを空けて上方に位置するように、吊り棒5と略平行に、酸処理槽3の側壁部3c及び3dにボルト留め等により固定されている。上記構成を有することにより、酸処理槽3は樹脂シート6によって前進側と後進側の2槽に完全に仕切られない。従って、酸処理液2が、錘7の下部に設けられた間隔Dの隙間を通して、酸処理槽3内の前進方向及び後進方向間を流通することができる。
【0021】
チューブ8A、8Bは、本発明における原液吐出部であり、錘7の上部において酸処理液2に浸漬する高さに、樹脂シート6(シート部材)を挟んで両側に設けられる、一対の例えば塩化ビニル製の管状部材である。さらに、チューブ8A、8Bは、錘7に沿って樹脂シート6を挟んで略平行に固定されている。このチューブ8A、8Bの上部には、酸原液12を吐出する複数の吐出孔8a、8bがそれぞれ長さ方向に所定間隔で形成されている。各吐出孔8a、8bは、酸原液12が酸処理槽3内の前進側及び後進側に向かって斜め上方に吐出されるように、酸処理槽3の上方に対して酸処理槽3の側壁部3a側及び側壁部3b側にそれぞれ同程度の角度傾斜して形成されている。
【0022】
ここで、チューブ8A、8Bは、本発明における原液吐出部を構成している。すなわち、チューブ8A、8Bに設けられた吐出孔8a、8bは、酸処理槽3内に貯留されている酸処理液2中に酸原液12を吐出する。
【0023】
pHセンサ9は、酸処理液2のpH値を検出するセンサである。このpHセンサ9は、
図2に示すように、酸処理槽3内において上記原液吐出部の近傍に設けられている。すなわち、このpHセンサ9は、酸処理槽3内において、吊り棒5の両端のどちらか一端側に酸処理槽3の底壁部3eに接触しないように当該底壁部3eから若干の距離をあけて設けられている。pHセンサ9は、pH制御器10に接続されており、検出値をpH制御器10に出力する。
【0024】
pH制御器10は、pHセンサ9から入力される検出値と予め記憶している制御しきい値とに基づいて酸原液ポンプ11をフィードバック制御する制御装置である。すなわち、このpH制御器10は、酸処理液2のpH値が制御しきい値を維持するように酸原液ポンプ11を制御する。尚、本実施形態においてpH制御器10は、船本体1に設けられた窪み部に格納されている。
【0025】
酸原液ポンプ11は、pH制御器10から入力される操作信号に基づいて動作する容量ポンプである。すなわち、この酸原液ポンプ11は、所定の配管によって酸原液タンク13及び一対のチューブ8A、8Bに接続されており、操作信号に応じた流量の酸原液12を酸原液タンク13から汲み出して一対のチューブ8A、8Bに供給する。尚、本実施形態において酸原液ポンプ11は、船本体1に設けられた窪み部に格納されている。
【0026】
酸原液12は、所定pH値を有する酸の水溶液である。この酸原液12は、酸処理液2のpH値よりも低いpH値、つまり酸処理液2よりも高い酸性度を有する酸であり、例えばリンゴ酸や乳酸、クエン酸等の有機酸あるいはpH調整剤としての食品添加物の塩酸である。この酸原液12が水や海水等で希釈されて、酸処理液2となる。
【0027】
酸原液タンク13は、酸原液12を貯蔵する所定容量の容器である。酸原液タンク13は、所定の配管によって酸原液ポンプ11と接続されており、当該酸原液ポンプ11に酸原液12を供給する。尚、本実施形態において酸原液タンク13は、船本体1に設けられた窪み部に格納されている。
【0028】
ここで、pH制御器10、酸原液ポンプ11及び酸原液タンク13は、本発明における原液供給装置を構成している。すなわち、pH制御器10、酸原液ポンプ11及び酸原液タンク13は、pHセンサ9の検出値に基づいて、原液吐出部に供給する酸原液12の供給量を自動調節する。
【0029】
一対の巻出ロール14a、14bは、作業開始時においては、海苔が付着していない状態の海苔網が巻き付けられている回転軸である。この巻出ロール14a、14bは、巻取ロール4a、4bと平行に酸処理槽3内に設けられている。
【0030】
次に、このように構成された箱型船Aの動作について、
図1及び
図2を用いて詳しく説明する。また、船本体1が前進する場合と、船本体1が後進する場合とでは、同様の動作である為、本実施形態においては、船本体1が前進する場合についてのみ説明する。
【0031】
まず、作業者は、これから酸処理する海苔網Nが設置されている海上まで、船本体1を移動させる。そして、例えば
図1の矢印で示したように、船本体1が前進する場合は、船本体1が前進するにつれて、海苔網Nが酸処理槽3に前方から侵入する。酸処理槽3内に侵入した海苔網Nは、巻取ロール4aが回転することによって、順次巻取ロール4aに巻き取られる。
【0032】
巻き取られた海苔網Nは、酸処理槽3内に貯留されている酸処理液2に浸漬される。したがって、海苔網N上の海苔が酸処理液2に接触することによって、海苔が酸処理される。
【0033】
酸処理槽3内には、pHセンサ9が設けられており、pHセンサ9は酸処理槽3内に貯留されている酸処理液2のpH値を検出する。pHセンサ9が検出した検出値は、pH制御器10に出力される。pH制御器10は、pHセンサから入力された検出値と予め記憶している制御しきい値とに基づいて、酸原液ポンプ11をフィードバック制御する。酸原液ポンプ11は、pH制御器10から入力される操作信号に基づいて、操作信号に応じた流量の酸原液12を酸原液タンク13から汲み出して一対のチューブ8A、8Bに供給する。
【0034】
pH制御器10からの操作信号を受信した酸原液ポンプ11によって酸原液タンク13から汲み出された酸原液12は、一対のチューブ8A、8Bに供給される。酸原液12は、一対チューブ8A、8Bに設けられた複数の吐出孔8a,8bから酸処理液2中に斜め上方に吐出される。上記のように、原液吐出部であるチューブ8A、8Bが酸処理槽3の下部に設けられた場合であっても、吐出孔8a、8bから斜め上方に酸原液12が吐出されることにより、酸処理液2よりも比重の重い酸原液12が酸処理液2内に、拡散されやすくなる。また、酸処理液2中に吐出された酸原液12は、船本体1の揺動及び海苔網Nを巻き取る際に巻取ロール4a又は巻取ロール4bが回転することによって酸処理液2中に生成される水流によって、樹脂シート6が前進方向及び後進方向に揺動することによって、酸処理液2が攪拌され、酸処理液2内に拡散する。したがって、本箱型船Aによれば、酸処理液2中のpH値を均一にすることができる。
【0035】
さらに、本箱型船Aによれば、酸原液12が、酸処理液2が貯留された酸処理槽3内に設けられた吐出孔8a、8bから酸処理液2中に吐出される為、酸原液12が直接海苔網に付着することを抑制あるいは防止することできる。
【0036】
海苔の付着した海苔網Nが全て巻き取られ、海苔網N上の海苔が酸処理された後、巻出ロール14aに巻き付けられている、海苔が付着していない状態の海苔網は、船本体1が前進するにつれて、船本体1外へ巻き出され、海苔の付着した海苔網Nが設置されていた場所に設置される。
【0037】
〔変形例〕
次に、第1次実施形態に係る箱型船Aの変形例について説明する。この箱型船Aは、
図3に示すように、第1実施形態のpHセンサ9に代えて、pHセンサ9a及び9bを備え、また、これらのpHセンサ9a、9bはpH制御器10Aと接続されている。
なお、本変形例においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0038】
pHセンサ9a、9bは酸処理液2のpH値を検出するセンサである。このpHセンサ9a、9bは、
図3に示すように、酸処理槽3内において、上記原液吐出部の上方、好ましくは、酸処理槽3の液面と上記原液吐出部との略中間地点に、pHセンサ9a、9bのセンサ部が位置するように、樹脂シート6を挟んで一対設けられている。すなわち、このpHセンサ9a、9bは、酸処理槽3内の酸処理液2の平均的なpH値を測定するよう、原液吐出部及び液面から離間して設けられている。pHセンサ9a、9bは、pH制御器10Aに接続されており、検出値をpH制御器10Aに出力する。
【0039】
酸処理槽3内には、pHセンサ9a、9bが設けられており、pHセンサ9a、9bは酸処理槽3内に貯留されている酸処理液2のpH値を検出する。pHセンサ9a、9bが検出した検出値は、pH制御器10Aに出力される。pH制御器10Aは、pHセンサ9a、9bから入力された検出値の平均値と予め記憶している制御しきい値とに基づいて、酸原液ポンプ11をフィードバック制御する。酸原液ポンプ11は、pH制御器10Aから入力される操作信号に基づいて、操作信号に応じた流量の酸原液12を酸原液タンク13から汲み出して一対のチューブ8A、8Bに供給する。
【0040】
pH制御器10Aからの操作信号を受信した酸原液ポンプ11によって酸原液タンク13から汲み出された酸原液12は、一対のチューブ8A、8Bに供給される。酸原液12は、一対チューブ8A、8Bに設けられた複数の吐出孔8a,8bから酸処理液2中に斜め上方に吐出される。上記のようにして、pHセンサ9a、9bが酸処理槽3の前進方向側及び後進方向側の両方に設けられていることにより、より正確に酸処理液2のpH値を測定することが可能になる。したがって、本箱型船Aによれば、酸処理液2中のpH値をより最適化した上で、pHの値を均一にすることができる。
【0041】
〔第2実施形態〕
次に、第2次実施形態に係る箱型船Bについて説明する。この箱型船Bは、
図5に示すように、第1実施形態に係る箱型船Aと同様な全体構成を備える。しかしながら、第1実施形態のチューブ8A、8Bに代えて、
図6に示すチューブ8C(管状部材)を備え、また、吊り棒5、樹脂シート6及び錘7を備えていない。第2実施形態において、本発明における原液吐出部は、チューブ8Cである。
なお、第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0042】
チューブ8Cは、酸処理槽3の底壁部3eから間隔Dを空けて上方に位置するように、酸処理槽3の中央下部に、一対の巻取ロール4a、4bと略平行に設けられている、例えば塩化ビニル製のチューブである。チューブ8Cの幅方向の両端部は、酸処理槽3の側壁部3c及び3dに固定されている。このようなチューブ8Cには、一対の複数の吐出孔8c1、8c2が長さ方向に所定間隔で形成されている。さらに、複数の吐出孔8c1、8c2は、酸原液12が酸処理槽3内の前進側及び後進側に向かって斜め上方に吐出されるように、酸処理槽3の上方に対して酸処理槽3の側壁部3a側及び側壁部3b側にそれぞれ同程度の角度傾斜して形成されている。
【0043】
ここで、チューブ8Cは、本発明における原液吐出部を構成している。すなわち、チューブ8Cに設けられた吐出孔8c1、8c2は、酸処理槽3内に貯留されている酸処理液2中に酸原液12を吐出する。
【0044】
pHセンサ9は、酸処理液2のpH値を検出するセンサである。このpHセンサ9は、
図5に示すように、酸処理槽3内において上記原液吐出部の近傍に設けられている。すなわち、このpHセンサ9は、酸処理槽3の上方及び中央部において、酸処理槽3の側壁部3c又は側壁部3dの近傍に、酸処理槽3の底壁部3eに接触しないように当該底壁部3eから若干距離をあけて設けられている。pHセンサ9は、pH制御器10に接続されており、検出値をpH制御器10に出力する。
【0045】
酸原液ポンプ11Aは、pH制御器10から入力される操作信号に基づいて動作する容量ポンプである。すなわち、この酸原液ポンプ11Aは、所定の配管によって酸原液タンク13及びチューブ8Cに接続されており、操作信号に応じた流量の酸原液12を酸原液タンク13から汲み出して、チューブ8Cに供給する。
【0046】
pHセンサ9は、酸処理槽3内に貯留されている酸処理液2のpH値、つまり酸処理槽3内のpH値を検出する。pHセンサ9が検出した検出値は、pH制御器10に出力される。pH制御器10は、pHセンサ9から入力された検出値と予め記憶している制御しきい値とに基づいて、酸原液ポンプ11Aをフィードバック制御する。すなわち、pH制御器10は、pHセンサ9から入力されたpH値に基づいて、チューブ8Cに供給する酸原液12の供給量を自動制御する。
【0047】
pH制御器10からの操作信号を受信した酸原液ポンプ11Aによって酸原液タンク13から汲み出された酸原液12は、チューブ8Cに供給される。酸原液12は、チューブ8Cに設けられた複数の吐出孔8c1、8c2から、酸処理液2中に斜め上方に、酸処理槽3内の側壁部3a側又は側壁部3b側に向けて斜め上方に吐出される。上記のように、酸原液12が吐出孔8c1、8c2から斜め上方に酸処理液2中に吐出されることにより、酸処理液2よりも比重の重い酸原液12が酸処理液2中に、拡散されやすくなる。また、酸処理槽3内に吐出された酸原液12は、船本体1の揺動及び海苔網Nを巻き取る際に巻取ロール4a又は巻取ロール4bが回転することによって酸処理液2中に生成される水流によって、酸処理液2が攪拌され、酸処理液2内に拡散する。したがって、本箱型船Bによれば、酸処理液2中のpH値を均一にすることができる。
【0048】
さらに、本箱型船Bによれば、酸原液12が、酸処理液2が貯留された酸処理槽3内に設けられた吐出孔8c1、8c2から酸処理液2中に吐出される為、酸原液12が直接海苔網に付着することを抑制あるいは防止することできる。
【0049】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記第1実施形態において、吊り棒5の下側に棒状の錘7を設けたが、本発明は、これに限定されない。棒状の錘7に替えて、吐出孔を有する管状の錘7を採用し、錘7に一対の複数の吐出孔を長さ方向に所定間隔で形成しても良い。上記構成を採用することによって、酸原液12は錘7に設けられた吐出孔から酸原液12を吐出させることができる為、部品点数を減らすことができる。尚、上記構成を採用する場合は、錘7の素材としては、酸に対して耐性のある素材を採用することが望ましい。
【0050】
(2)上記第1実施形態の変形例において、pHセンサ9a、9bを樹脂シートの両側に設けたが、本発明は、これに限定されない。pHセンサ9a、9bを液面付近及び酸処理槽3の底壁部3eから少し離間した位置の2ヶ所、つまり酸処理槽3の深さ方向において上下に設けても良い。上記構成を採用した場合は、pHセンサ9a、9bの検出値の平均値を酸処理液2のpH値として、pH制御器10Aは、pHセンサ9a、9bから入力された検出値と予め記憶している制御しきい値とに基づいて、酸原液ポンプ11をフィードバック制御する。
【0051】
(3)上記第1実施形態の変形例において、pHセンサ9a、9bの平均値を酸処理液2のpH値として、酸処理液2のpH値の自動制御を行ったが、本発明は、これに限定されない。pHセンサ9a、9bのそれぞれの値に基づいて、チューブ8A及びチューブ8Bから吐出される酸原液12の吐出量を異ならせても良い。上記構成を採用することにより、酸処理槽3の前進方向及び後進方向の酸処理液2のpH値をより均一にすることができる。
【0052】
(4)上記第2実施形態において、吐出孔8c1及び8c2は、酸処理槽3の底壁部3eに対して斜め上方に吐出するとしたが、本発明は、これに限定されない。酸原液12を酸処理槽3の底壁部3eに向かって斜め下方に吐出するように、チューブ8Cの下方に、吐出孔8c1及び8c2が、それぞれ酸処理槽3の側壁部3a又は側壁部3b側に、チューブ8Cの最下端部を中心に、それぞれ同程度の角度傾斜して形成されていても良い。上記構成を採用する場合は、酸原液12を、吐出孔8c1及び8c2から吐出させ、さらに酸処理槽3の底壁部3eで反射させて酸処理液2中に拡散させる必要がある。従って、第2実施形態の場合よりも酸原液ポンプ11Aから吐出される酸原液12の流量を増加させ、酸原液12が吐出孔8c1及び8c2から吐出される際の圧力を増加させる必要がある。または、吐出孔8c1及び8c2の孔径を第2実施形態における吐出孔8c1及び8c2の孔径よりも小さくし、吐出孔8c1及び8c2から吐出される際の酸原液12の圧力を増加させる必要がある。上記構成を採用することで、酸処理液2よりも比重の重い酸原液12を酸処理液2中に拡散させ易くすることができる。
【0053】
(5)上記第2実施形態において、チューブ8Cは酸処理槽3の底壁部3eから間隔Dを空けて設けられるとしたが、本発明は、これに限定されない。チューブ8Cと酸処理槽3の間に間隔Dを有さず、チューブ8Cの下端部が、酸処理槽3の底壁部3eと当接して設けられていても良い。
【符号の説明】
【0054】
A、B 箱型船
N 海苔網
1 船本体
2 酸処理液
3 酸処理槽
4a、4b 巻取ロール
5 吊り棒
6 樹脂シート(シート部材)
7 錘
8A、8B、8C チューブ(管状部材)
9、9a、9b pHセンサ
10、10A pH制御器
11、11A 酸原液ポンプ
12 酸原液
13 酸原液タンク
14a、14b 巻出ロール