(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】二次電池充放電試験装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6569 20140101AFI20221018BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20221018BHJP
H01M 10/6565 20140101ALI20221018BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20221018BHJP
H01M 10/653 20140101ALI20221018BHJP
【FI】
H01M10/6569
H01M10/613
H01M10/6565
H01M10/6563
H01M10/653
(21)【出願番号】P 2021156509
(22)【出願日】2021-09-27
【審査請求日】2022-06-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595098011
【氏名又は名称】東洋システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山野辺 賢司
(72)【発明者】
【氏名】大森 淳
(72)【発明者】
【氏名】庄司 秀樹
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-072266(JP,A)
【文献】特開2021-136093(JP,A)
【文献】特表2021-522383(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/6569
H01M 10/613
H01M 10/6565
H01M 10/6563
H01M 10/653
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池を充放電して試験することにより前記二次電池の評価を行う二次電池充放電試験装置であって、
前記二次電池が収容される収容部と、
前記収容部に収容された二次電池に接続自在な充放電検査装置と、
前記収容部に液体絶縁材を供給し、前記収容部に収容された前記二次電池を浸漬する供給装置と、
前記液体絶縁材を温調する温調装置と、
前記収容部で気化した液体絶縁材を冷却して回収する回収部
と、
前記収容部の上部の空気層へ空気を送る送風機と、
を備え、
前記回収部は、前記収容部の前記空気層から排出された空気を冷却する冷却部を備え、
前記送風機で回収した空気を前記冷却部で冷却して前記液体絶縁材を液化して回収することを特徴とする二次電池充放電試験装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の二次電池充放電試験装置であって、
前記収容部の上部の空気層を画定する上壁を加熱する加熱器が設けられていることを特徴とする二次電池充放電試験装置。
【請求項3】
請求項1
又は請求項2に記載の二次電池充放電試験装置であって、
前記液体絶縁材を供給する前記供給装置は、
前記二次電池が収容される収容部へ前記液体絶縁材を供給する循環回路と、
前記循環回路に介設され前記液体絶縁材を強制循環するポンプと、
を備え、
前記温調装置は前記循環回路に介設されていることを特徴とする二次電池充放電試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池充放電試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、恒温槽の中に二次電池を収容して空気で温調しながら充放電試験を行う二次電池充放電試験装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、熱媒体が流れる熱交換プレートにペルチェ素子を設けて、ペルチェ素子に二次電池を接触させ、ペルチェ素子を制御して二次電池の温度制御を行いながら二次電池の充放電試験を行う二次電池充放電試験装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5738660号公報
【文献】特開2005―257372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の二次電池充放電試験装置では、空気やペルチェ素子を用いて二次電池の温度調整を行っているが、二次電池充放電試験装置の構造が複雑となってしまう。
【0006】
また、空気を用いて二次電池の温度調整を行う装置では、空気の熱伝達率が比較的低いため、二次電池が目標温度に達するまでに時間が掛かり、試験時間が長くなってしまう。また、二次電池の配置場所によって温度差が生じやすく、同一環境下で試験を行うことが困難である。また、二次電池が異常発熱した場合、迅速に冷却することができないため、熱暴走に至ってしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、簡単な構造で二次電池の温度調整を行いながら充放電試験を行うことができる二次電池充放電試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、
二次電池を充放電して試験することにより前記二次電池の評価を行う二次電池充放電試験装置であって、
前記二次電池が収容される収容部と、
前記収容部に収容された二次電池に接続自在な充放電検査装置と、
前記収容部に液体絶縁材を供給し、前記収容部に収容された前記二次電池を浸漬する供給装置と、
前記液体絶縁材を温調する温調装置と、
前記収容部で気化した液体絶縁材を冷却して回収する回収部と、
前記収容部の上部の空気層へ空気を送る送風機と、
を備え、
前記回収部は、前記収容部の前記空気層から排出された空気を冷却する冷却部を備え、
前記送風機で回収した空気を前記冷却部で冷却して前記液体絶縁材を液化して回収することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、収容部に収容した二次電池を温調された液体絶縁材で浸漬して試験を行うことができて、装置全体を簡単な構成とすることができる。また、液体絶縁材の方が空気に比べ熱伝達率が非常に大きいため、二次電池の発熱に対して、十分な冷却性能を得ることができる。また、二次電池が目標温度に達するまでの時間を短縮することができる。また、収容部内の温度分布差が小さくなり、収容部内の二次電池の置く場所による試験結果の差を小さくすることができる。また、二次電池の異常発熱時、液体絶縁材の蒸発熱により、二次電池自体の熱を奪うことができ、安全な試験を実現することができる。
【0010】
また、液体絶縁材は比較的高価であるが、本発明によれば、収容部で気化した液体絶縁材を回収部で回収することができ、液体絶縁材を無駄なく活用することができる。
【0011】
また、本発明においては、前記収容部の上部の空気層へ空気を送る送風機を備え、前記回収部は、前記収容部の前記空気層から排出された空気を冷却する冷却部を備え、前記送風機で回収した空気を前記冷却部で冷却して前記液体絶縁材を液化して回収する。
【0012】
本発明によれば、試験中に気化する液体絶縁材を回収することで、液体絶縁材を有効に活用することができる。
【0013】
また、本発明においては、前記収容部の上部の空気層を画定する上壁を加熱する加熱器が設けられていることが好ましい。
【0014】
液体絶縁材は蒸発したあと、その一部が収容部の上壁に付着したままの状態となってしまう。これを阻止すべく、本発明では、加熱器によって上壁を加熱して上壁に付着した液体絶縁材を再び気化させて回収部へと導くことができる。これにより、気化された液体絶縁材は、回収部で冷却して再び液化させて液体絶縁材として回収することができる。したがって、本発明によれば、液体絶縁材の一部が収容部の上壁に付着したまま循環されない状態となることを防止し、液体絶縁材を余すことなく有効活用することができる。
【0015】
また、本発明においては、前記液体絶縁材を供給する前記供給装置は、前記二次電池が収容される収容部へ前記液体絶縁材を供給する循環回路と、前記循環回路に介設され前記液体絶縁材を強制循環するポンプと、を備え、前記温調装置は前記循環回路に介設されていることが好ましい。
【0016】
本発明によれば、温調装置で温調された液体絶縁材を強制循環させることにより、試験用二次電池を一定の温度に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】発明の実施形態の二次電池充放電試験装置を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1を参照して、発明の実施形態の二次電池充放電試験装置1を説明する。本実施形態の二次電池充放電試験装置1は、二次電池を充放電して試験することにより二次電池の評価を行うものである。二次電池充放電試験装置1は、二次電池2が収容される収容部3と、収容部3に収容された二次電池2に接続自在な充放電検査装置4と、収容部3に液体絶縁材5を供給し、収容部3に収容された二次電池2を浸漬する供給装置6と、液体絶縁材5を温調する温調装置7と、前記収容部で気化した液体絶縁材5を冷却して回収する回収部8と、を備える。
【0019】
液体絶縁材5としては、例えば、フッ素系不活性液体を用いてもよく、3M社のフロリナートや、ソルベイ社のガルデン(登録商標)を用いてもよい。
【0020】
収容部3の上部には、収容部3の上壁3aと液体絶縁材5の液面5aとで画定される空気層9が形成されるように、供給装置6は収容部3内に液体絶縁材5を供給する。二次電池充放電試験装置1は、収容部3の空気層9に空気を送る送風機10を備えている。回収部8は、収容部3の空気層9から排出された空気を冷却する冷却水循環装置からなる冷却部11を備えている。
【0021】
回収部8は、回収タンク8aを有し、送風機10で収容部3の空気層9に空気を送り、空気層9から排出される空気を回収して冷却部11で冷却して液体絶縁材5を液化して回収タンク8aで回収する。
【0022】
送風機10の上流には乾燥剤により水分を除去する乾燥部15が設けられている。これにより、水分を取り除いた空気を収容部3の空気層9に送り込むことができ、水分による液体絶縁材5の劣化を防ぐことができる。
【0023】
また、収容部3の上壁3aには、加熱器12が設けられている。液体絶縁材5は蒸発したあと、その一部が上壁3aに接触すると冷却されて液化してしまい、滴となって上壁3aに付着したままの状態となってしまう。これを阻止すべく、本実施形態の二次電池充放電試験装置1では、加熱器12によって上壁3aを加熱して上壁3aに付着した液体絶縁材5の滴を再び気化させて回収部8へと導くことができる。
【0024】
これにより、気化された液体絶縁材5は、回収部8で冷却して再び液化させて液体絶縁材5として回収することができる。したがって、本実施形態の二次電池充放電試験装置1によれば、液体絶縁材5の一部が収容部3の上壁3aに付着したまま循環されない状態となることを防止し、液体絶縁材5を余すことなく有効活用することができる。
【0025】
また、本実施形態の二次電池充放電試験装置1の、液体絶縁材5を供給する供給装置6は、二次電池2が収容される収容部3へ液体絶縁材5を供給する循環回路13と、循環回路13に介設され液体絶縁材5を強制循環するポンプ14と、を備えている。温調装置7は循環回路13に介設されている。温調装置7で温調された液体絶縁材5を強制循環させることにより、試験用二次電池2を一定の温度に保つことができる。また、循環回路13には、開閉弁が介設された回収路8bを介して、回収タンク8aと接続されており、回収路8bの開閉弁を開くことで回収タンク8aで回収された液体絶縁材5を循環回路13に戻すことができるように構成されている。なお、回収タンク8a内の液体絶縁材5の回収方法としてはこれに限らない。
【0026】
本実施形態の二次電池充放電試験装置1によれば、収容部3に収容した二次電池2を温調された液体絶縁材5で浸漬して試験を行うことができて、装置全体を簡単な構成とすることができる。また、液体絶縁材5の方が空気に比べ熱伝達率が非常に大きいため、二次電池2の発熱に対して、十分な冷却性能を得ることができる。また、二次電池2が目標温度に達するまでの時間を短縮することができる。また、収容部3内の温度分布差が小さくなり、収容部3内の二次電池2の置く場所による試験結果の差を小さくすることができる。また、二次電池2の異常発熱時、液体絶縁材5の蒸発熱により、二次電池2自体の熱を奪うことができ、安全な試験を実現することができる。
【0027】
また、液体絶縁材5は比較的高価であるが、本実施形態の二次電池充放電試験装置1によれば、収容部3で気化した液体絶縁材5を回収部8で回収することができ、液体絶縁材5を無駄なく活用することができる。また、本実施形態の二次電池充放電試験装置1によれば、温調装置7で温調された液体絶縁材5を強制循環させることにより、試験用二次電池2を一定の温度に保つことができる。
【符号の説明】
【0028】
1 二次電池充放電試験装置
2 二次電池
3 収容部
3a 上壁
4 充放電検査装置
5 液体絶縁材
5a 液面
6 供給装置
7 温調装置
8 回収部
8a 回収タンク
8b 回収路
9 空気層
10 送風機
11 冷却部
12 加熱器
13 循環回路
14 ポンプ
15 乾燥部
【要約】
【課題】簡単な構造で二次電池の温度調整を行いながら充放電試験を行うことができる二次電池充放電試験装置を提供する。
【解決手段】二次電池充放電試験装置1は、二次電池2を充放電して試験することにより二次電池2の評価を行うものである。二次電池充放電試験装置1は、二次電池2が収容される収容部3と、収容部3に収容された二次電池2に接続自在な充放電検査装置4と、収容部3に液体絶縁材5を供給し、収容部3に収容された二次電池2を浸漬する供給装置6と、液体絶縁材5を温調する温調装置7と、収容部3で気化した液体絶縁材5を冷却して回収する回収部8と、を備える。
【選択図】
図1