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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】合成繊維用処理剤及び合成繊維
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/224 20060101AFI20221018BHJP
【FI】
D06M13/224
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022137810
(22)【出願日】2022-08-31
【審査請求日】2022-08-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】福岡 拓也
(72)【発明者】
【氏名】富田 貴志
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-531488(JP,A)
【文献】国際公開第2015/186545(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/193336(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/065476(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00 - 15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平滑剤、ノニオン界面活性剤、及びイオン界面活性剤を含有し、前記ノニオン界面活性剤が、多価アルコールとオキシカルボン酸縮合物とから形成されるエステル化合物(A)を含むことを特徴とする合成繊維用処理剤。
【請求項2】
前記多価アルコールが、分子中に(ポリ)オキシアルキレン基を有するものである請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項3】
前記エステル化合物(A)が、分子中のヒドロキシ基の数(X)とエステル結合の数(Y)との比がX:Y=1:0.5~1:2.5を満たすものを含む請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項4】
前記合成繊維用処理剤の全質量に対して、前記エステル化合物(A)を5質量%以上30質量%以下の割合で含有する請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項5】
前記合成繊維用処理剤の全質量に対して、オキシカルボン酸縮合物を10000ppm以下の割合で含有する請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の合成繊維用処理剤が、付着していることを特徴とする合成繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成繊維用処理剤が付与された繊維の毛羽を低減できるとともに、耐久性を向上できる合成繊維用処理剤及び該合成繊維用処理剤が付与された合成繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば合成繊維の紡糸延伸工程等において、例えば平滑性、制電性等の向上の観点から、合成繊維の表面に合成繊維用処理剤を付着させる処理が行われることがある。
従来、特許文献1,2に開示の合成繊維用処理剤が知られている。特許文献1は、多価アルコールとヒドロキシモノカルボン酸のエステルのアルキレンオキサイド付加物をジカルボン酸でさらにエステル化したものを含む合成繊維用処理剤について開示する。特許文献2は、重合ひまし油のアルキレンオキサイド付加物とカルボン酸とのエステルを含む合成繊維用処理剤について開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭56-159364号公報
【文献】特開平03-873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の合成繊維用処理剤において、合成繊維用処理剤が付与された繊維の毛羽の低減効果及び耐久性の向上効果が不十分という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、合成繊維用処理剤において、特に多価アルコールとオキシカルボン酸縮合物とから形成されるエステル化合物を配合した構成が好適であることを見出した。
【0006】
上記課題を解決する各態様を記載する。
態様1の合成繊維用処理剤は、平滑剤、ノニオン界面活性剤、及びイオン界面活性剤を含有し、前記ノニオン界面活性剤が、多価アルコールとオキシカルボン酸縮合物とから形成されるエステル化合物(A)を含むことを特徴とする。
【0007】
態様2は、態様1に記載の合成繊維用処理剤において、前記多価アルコールが、分子中に(ポリ)オキシアルキレン基を有するものである。
態様3は、態様1又は2に記載の合成繊維用処理剤において、前記エステル化合物(A)が、分子中のヒドロキシ基の数(X)とエステル結合の数(Y)との比がX:Y=1:0.5~1:2.5を満たすものを含んでいる。
【0008】
態様4は、態様1~3のいずれか一態様に記載の合成繊維用処理剤において、前記合成繊維用処理剤の全質量に対して、前記エステル化合物(A)を5質量%以上30質量%以下の割合で含有する。
【0009】
態様5は、態様1~4のいずれか一態様に記載の合成繊維用処理剤において、前記合成繊維用処理剤の全質量に対して、オキシカルボン酸縮合物を10000ppm以下の割合で含有する。
【0010】
態様6の合成繊維は、態様1~5のいずれか一態様に記載の合成繊維用処理剤が、付着していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば合成繊維用処理剤が付与された繊維の毛羽を低減できるとともに、耐久性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1実施形態>
以下、本発明の合成繊維用処理剤(以下、処理剤という)を具体化した第1実施形態を説明する。本実施形態の処理剤は、平滑剤、ノニオン界面活性剤、及びイオン界面活性剤を含有する。
【0013】
(平滑剤)
本実施形態の処理剤に供される平滑剤としては、例えばエステル油、鉱物油、ポリオレフィン等が挙げられる。
【0014】
エステル油としては、特に制限はないが、脂肪酸とアルコールとから製造されるエステル油が挙げられる。エステル油としては、例えば後述する奇数又は偶数の炭化水素基を有する脂肪酸とアルコールとから製造されるエステル油が例示される。
【0015】
エステル油の原料である脂肪酸は、その炭素数、分岐の有無、価数等について特に制限はなく、また、例えば高級脂肪酸であってもよく、環状のシクロ環を有する脂肪酸であってもよく、芳香族環を有する脂肪酸であってもよい。エステル油の原料であるアルコールは、その炭素数、分岐の有無、価数等について特に制限はなく、また、例えば高級アルコールであっても、環状のシクロ環を有するアルコールであっても、芳香族環を有するアルコールであってもよい。
【0016】
エステル油の具体例としては、例えば(1)オクチルパルミタート、オレイルラウラート、オレイルオレアート、イソトリデシルステアラート、イソテトラコシルオレアート等の、脂肪族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(2)1,6-ヘキサンジオールジデカナート、グリセリントリオレアート、トリメチロールプロパントリラウラート、トリメチロールプロパントリオレアート、トリメチロールプロパンとヤシ脂肪酸とのトリエステル、ペンタエリスリトールテトラオクタート等の、脂肪族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸との完全エステル化合物、(3)ジイソステアリルアジパート、ジオレイルアゼラート、ジイソステアリルチオジプロピオナート、ジオレイルチオジプロピオナート、ジイソセチルチオジプロピオナート等の、脂肪族モノアルコールと脂肪族多価カルボン酸との完全エステル化合物、(4)ベンジルオレアート、ベンジルラウラート等の、芳香族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(5)ビスフェノールAジラウラート等の、芳香族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸との完全エステル化合物、(6)ビス2-エチルヘキシルフタラート、ジイソステアリルイソフタラート、トリオクチルトリメリタート等の、脂肪族モノアルコールと芳香族多価カルボン酸との完全エステル化合物、(7)ヤシ油、ナタネ油、ヒマワリ油、大豆油、ヒマシ油、ゴマ油、魚油及び牛脂等の天然油脂等が挙げられる。
【0017】
鉱物油としては、動粘度が40℃で5mm/s以上のものが用いられる。鉱物油としては、例えば芳香族系炭化水素、パラフィン系炭化水素、ナフテン系炭化水素等が挙げられる。より具体的には、例えばスピンドル油、流動パラフィン等が挙げられる。これらの鉱物油は、市販品を適宜採用することができる。
【0018】
ポリオレフィンは、平滑成分として用いられるポリ-α-オレフィンが適用される。ポリオレフィンの具体例としては、例えば1-ブテン、1-ヘキセン、1-デセン等を重合して得られるポリ-α-オレフィン等が挙げられる。ポリ-α-オレフィンは、市販品を適宜採用することができる。
【0019】
これらの平滑剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、平滑剤の含有割合の下限は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上である。かかる含有割合が20質量%以上の場合、処理剤が付与された繊維に対して平滑性をより向上できる。かかる平滑剤の含有割合の上限は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下である。かかる含有割合が70質量%以下の場合、処理剤の安定性をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0020】
(ノニオン界面活性剤)
本実施形態の処理剤に供されるノニオン界面活性剤としては、多価アルコールとオキシカルボン酸縮合物とから形成されるエステル化合物(A)を含むものである。
【0021】
エステル化合物(A)の原料となるオキシカルボン酸縮合物は、例えば原料としてオキシカルボン酸の一種又は二種以上の混合物を窒素ガス等の不活性ガスの気流下又は減圧下で、60℃以上200℃以下で30分以上12時間以下の条件で脱水縮合反応することにより得られる。反応は触媒反応であっても、無触媒反応であってもよい。オキシカルボン酸としては、ヒドロキシ基を有する脂肪酸が挙げられる。脂肪酸としては、その炭素数、分岐の有無、価数等について特に制限はなく、また、例えば高級脂肪酸であってもよく、環状のシクロ環を有する脂肪酸であってもよい。また、飽和の脂肪酸であっても不飽和脂肪酸であってもよい。オキシカルボン酸の具体例としては、例えば12-ヒドロキシステアリン酸、12-ヒドロキシオレイン酸(リシノール酸)、16-ヒドロキシヘキサデカン酸(ジュニペリン酸)、18-ヒドロキシオクタデカン酸、9-ヒドロキシステアリン酸、10-ヒドロキシステアリン酸、12-ヒドロキシドデカン酸(サビニン酸)、9,10-ジヒドロキシオクタデカン酸等が挙げられる。また、オキシカルボン酸として天然由来の脂肪酸を用いても良いが、オキシカルボン酸以外の脂肪酸も含まれる場合には、全脂肪酸に対して80質量%以上がオキシカルボン酸であればよい。オキシカルボン酸縮合物の縮合度は、適宜設定されるが、好ましくは2量体以上8量体以下である。
【0022】
これらの中で処理剤が付与された繊維の毛羽をより低減できる観点からヒドロキシ基を有する飽和脂肪酸の縮合物が好ましく、12-ヒドロキシステアリン酸の縮合物がより好ましい。
【0023】
エステル化合物(A)の原料として用いられる多価アルコールの具体例としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、グリセリン、ジグリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ソルビタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0024】
多価アルコールは、(ポリ)オキシアルキレン基が付加されてもよい。(ポリ)オキシアルキレン基を形成する原料として用いられるアルキレンオキサイドとしては、炭素数2以上4以下のアルキレンオキサイドが好ましい。アルキレンオキサイドの具体例としては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が挙げられる。アルキレンオキサイドの付加モル数は、適宜設定されるが、好ましくは0.1モル以上250モル以下、より好ましくは1モル以上200モル以下、さらに好ましくは2モル以上150モル以下、特に好ましくは3モル以上40モル以下である。上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。なお、アルキレンオキサイドの付加モル数は、仕込み原料中における付加対象化合物1モルに対するアルキレンオキサイドのモル数を示す。アルキレンオキサイドは、一種類のアルキレンオキサイドを単独で使用してもよいし、又は二種以上のアルキレンオキサイドを適宜組み合わせて使用してもよい。アルキレンオキサイドが二種類以上適用される場合、それらの付加形態は、ブロック付加、ランダム付加、及びブロック付加とランダム付加の組み合わせのいずれでもよく、特に制限はない。
【0025】
エステル化合物(A)の具体例としては、例えばペンタエリスリトール又はペンタエリスリトールのアルキレンオキサイド付加物と12-ヒドロキシステアリン酸縮合物とのエステル化合物、トリメチロールプロパン又はトリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド付加物と12-ヒドロキシステアリン酸縮合物とのエステル化合物、グリセリン又はグリセリンのアルキレンオキサイド付加物と12-ヒドロキシステアリン酸縮合物とのエステル化合物、ジグリセリン又はジグリセリンのアルキレンオキサイド付加物と12-ヒドロキシステアリン酸縮合物とのエステル化合物、トリメチロールプロパン又はトリメチロールプロパンのアルキレンオキサイド付加物と12-ヒドロキシオレイン酸縮合物とのエステル化合物等が挙げられる。
【0026】
これらのエステル化合物(A)は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
エステル化合物(A)は、分子中のヒドロキシ基の数(X)とエステル結合の数(Y)との比がX:Y=1:0.5~1:2.5を満たすものを含むことが好ましく、X:Y=1:1.5~1:2.5を満たすものを含むことがより好ましい。XとYの比率をかかる数値範囲内に規定することにより、本発明の効果をより向上できる。
【0027】
X:Yは、配合されるエステル化合物(A)の構造式からヒドロキシ基の数(X)とエステル結合の数(Y)を数えて算出した。
エステル化合物(A)は、例えば原料として、多価アルコールとオキシカルボン酸縮合物を60℃以上200℃以下で30分以上12時間以下の条件で反応させることにより得られる。反応は、オキシカルボン酸の縮合反応と同時に行っても良く、多価アルコールとオキシカルボン酸縮合物誘導体のエステル交換反応であっても良い。反応は触媒反応であっても、無触媒反応であってもよい。触媒としては例えば(1)塩酸、硫酸、リン酸等の鉱酸、(2)パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸等のアルキルスルホン酸、(3)テトライソプロピルチタナート、テトラノルマルブチルチタナート、テトラオクチルチタナート、ノルマルプロピルジルコナート、ノルマルブチルジルコナート等の有機金属化合物、(4)リパーゼ等の酵素、(5)水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、ソジウムメチラート等の塩基が挙げられる。これらは、公知の手法による無機吸着剤及び/又はイオン交換樹脂での吸着除去、中和・水洗等による精製によって当該エステル化合物から除去を行ってもよい。
【0028】
処理剤中において、エステル化合物(A)の含有割合の下限は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。かかるエステル化合物(A)の含有割合の上限は、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0029】
ノニオン界面活性剤として上述したエステル化合物(A)以外のその他のノニオン界面活性剤を使用してもよい。
その他のノニオン界面活性剤としては、例えば、アルコール類又はカルボン酸類にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物、カルボン酸類と多価アルコールとのエステル化合物にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有するエーテル・エステル化合物、アミン化合物として例えば一級有機アミンにアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物、カルボン酸類と多価アルコール等との部分エステル化合物、アミン化合物とカルボン酸類とを縮合させたアミド化合物、脂肪酸アミド類にアルキレンオキサイドを付加させた(ポリ)オキシアルキレン構造を有する化合物、上述したエステル化合物(A)の誘導体等が挙げられる。
【0030】
ノニオン界面活性剤の原料として用いられるアルコール類の具体例としては、例えば、(1)メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ヘンエイコサノール、ドコサノール、トリコサノール、テトラコサノール、ペンタコサノール、ヘキサコサノール、ヘプタコサノール、オクタコサノール、ノナコサノール、トリアコンタノール等の直鎖アルキルアルコール、(2)イソプロパノール、イソブタノール、イソヘキサノール、2-エチルヘキサノール、イソノナノール、イソデカノール、イソドデカノール、イソトリデカノール、イソテトラデカノール、イソトリアコンタノール、イソヘキサデカノール、イソヘプタデカノール、イソオクタデカノール、イソノナデカノール、イソエイコサノール、イソヘンエイコサノール、イソドコサノール、イソトリコサノール、イソテトラコサノール、イソペンタコサノール、イソヘキサコサノール、イソヘプタコサノール、イソオクタコサノール、イソノナコサノール、イソペンタデカノール等の分岐アルキルアルコール、(3)テトラデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール、ノナデセノール等の直鎖アルケニルアルコール、(4)イソヘキサデセノール、イソオクタデセノール等の分岐アルケニルアルコール、(5)シクロペンタノール、シクロヘキサノール等の環状アルキルアルコール、(6)フェノール、ノニルフェノール、ベンジルアルコール、モノスチレン化フェノール、ジスチレン化フェノール、トリスチレン化フェノール等の芳香族系アルコール等が挙げられる。
【0031】
ノニオン界面活性剤の原料として用いられるカルボン酸類の具体例としては、例えば、(1)オクチル酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ヘンエイコサン酸、ドコサン酸等の直鎖アルキルカルボン酸、(2)2-エチルヘキサン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソオクタデカン酸等の分岐アルキルカルボン酸、(3)オクタデセン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸等の直鎖アルケニルカルボン酸、(4)安息香酸等の芳香族系カルボン酸、(5)リシノール酸等のオキシカルボン酸等が挙げられる。
【0032】
ノニオン界面活性剤の(ポリ)オキシアルキレン構造を形成する原料として用いられるアルキレンオキサイドとしては、エステル化合物(A)欄において説明した(ポリ)オキシアルキレン基の説明と同様である。
【0033】
ノニオン界面活性剤の原料として用いられる多価アルコールの具体例としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2-メチル-1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチル-2,3-ブタンジオール、グリセリン、2-メチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ソルビタン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
【0034】
ノニオン界面活性剤の原料として用いられるアミン化合物の具体例として、例えばメチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、オクタデシルアミン(ステアリルアミン)、オクタデセニルアミン、ヤシアミン等が挙げられる。
【0035】
ノニオン界面活性剤の原料として用いられる脂肪酸アミドの具体例としては、例えばオクチル酸アミド、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ベヘン酸アミド、リグノセリン酸アミド、脂肪酸とジエタノールアミンとのアミド、脂肪酸とエチレンアミンとのアミド等が挙げられる。
【0036】
エステル化合物(A)の誘導体としては、エステル化合物(A)の水酸基の30%以上を1価脂肪酸でエステル化したもの、エステル化合物(A)と二塩基酸との縮合物、エステル化合物(A)と二塩基酸との縮合物の水酸基を1価脂肪酸でエステル化したもの等が挙げられる。
【0037】
その他のノニオン界面活性剤の具体例としては、例えばポリアルキレングリコールとオレイン酸とのエステル化合物、ポリアルキレングリコールとパーム油脂肪酸とのエステル化合物、オレイルアルコールに対してアルキレンオキサイドを付加した化合物、イソトリデカノールに対してアルキレンオキサイドを付加した化合物、イソドデカノールに対してアルキレンオキサイドを付加した化合物、ソルビタンモノオレアート、ソルビタントリオレアート、トリメチロールプロパンジオレアート、グリセリンジオレアート、オレイン酸ジエタノールアミド、ステアリルアミンに対してアルキレンオキサイドを付加した化合物、グリセリンのアルキレンオキサイド付加物と12-ヒドロキシステアリン酸縮合物とのエステル化合物に対しオレイン酸をエステル化した化合物、グリセリンのアルキレンオキサイド付加物と12-ヒドロキシステアリン酸縮合物とのエステル化合物に対しアジピン酸で架橋しパルミチン酸で末端エステル化した化合物等が挙げられる。
【0038】
これらのその他のノニオン界面活性剤は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
処理剤中において、ノニオン界面活性剤の含有割合の下限は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは45質量%以上である。かかるノニオン界面活性剤の含有割合の上限は、好ましくは75質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0039】
(イオン界面活性剤)
本実施形態の処理剤に供されるイオン界面活性剤としては、公知のものを適宜採用できる。イオン界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
【0040】
アニオン界面活性剤としては、公知のものを適宜採用できる。アニオン界面活性剤の具体例としては、例えば(1)ラウリルリン酸エステル塩、セチルリン酸エステル塩、オクチルリン酸エステル塩、オレイルリン酸エステル塩、ステアリルリン酸エステル塩、イソステアリルリン酸エステル塩等の脂肪族アルコールのリン酸エステル塩、(2)ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸エステル塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したもののリン酸エステル塩、(3)ラウリルスルホン酸塩、ミリスチルスルホン酸塩、セチルスルホン酸塩、ステアリルスルホン酸塩、テトラデカンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、二級アルキルスルホン酸(炭素数13以上15以下)塩、二級アルカンスルホン酸(炭素数11以上14以下)塩、α-オレフィンスルホン酸塩等の脂肪族スルホン酸塩又は芳香族スルホン酸塩、(4)ラウリル硫酸エステル塩、オレイル硫酸エステル塩、ステアリル硫酸エステル塩等の脂肪族アルコールの硫酸エステル塩、(5)ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン)ラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸エステル塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したものの硫酸エステル塩、(6)ひまし油脂肪酸硫酸エステル塩、ごま油脂肪酸硫酸エステル塩、トール油脂肪酸硫酸エステル塩、大豆油脂肪酸硫酸エステル塩、なたね油脂肪酸硫酸エステル塩、パーム油脂肪酸硫酸エステル塩等の天然由来の脂肪酸の硫酸エステル塩、(7)ひまし油の硫酸エステル塩、ごま油の硫酸エステル塩、トール油の硫酸エステル塩、大豆油の硫酸エステル塩、菜種油の硫酸エステル塩、パーム油の硫酸エステル塩等の天然油脂の硫酸エステル塩、(8)2-エチルヘキサン酸塩、ラウリン酸塩、オレイン酸塩、ステアリン酸塩等の脂肪酸塩、(9)ジオクチルスルホコハク酸塩等の脂肪族アルコールのスルホコハク酸エステル塩、(10)オレオイルサルコシン塩等のN-アシルサルコシン塩等が挙げられる。アニオン界面活性剤の対イオンとしては、例えばカリウム塩、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩、(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン塩、ジブチルエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩等が挙げられる。
【0041】
カチオン界面活性剤の具体例としては、例えばラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0042】
両性界面活性剤の具体例としては、例えばベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。これらのイオン界面活性剤は、一種類を単独で使用してもよいし、又は二種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0043】
処理剤中において、イオン界面活性剤の含有割合の下限は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上である。かかるイオン界面活性剤の含有割合の上限は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは6質量%以下である。かかる含有割合の範囲に規定することにより、本発明の効果をより向上できる。なお、上記の上限及び下限を任意に組み合わせた範囲も想定される。
【0044】
(その他)
処理剤の全質量に対して、オキシカルボン酸縮合物を10000ppm以下の割合で含有してもよい。かかる範囲に規定することにより、処理剤が付与された繊維の紡糸又は延伸工程における発煙を低減できる。
【0045】
<第2実施形態>
次に、本発明による合成繊維を具体化した第2実施形態を説明する。本実施形態の合成繊維は、第1実施形態の処理剤が付着している合成繊維である。処理剤を合成繊維に付着させる際の形態としては、希釈溶媒で希釈した希釈液、例えば有機溶媒溶液、水性液等として付与してもよい。希釈溶媒には、処理剤の繊維への付着性と経済性の観点から炭素数10以上15以下の炭化水素及び/又は水を使用することが好ましい。処理剤と希釈溶媒の混合割合は、処理剤の質量:希釈溶媒の質量=99:1~10:90であることが好ましい。合成繊維は、水性液等の希釈液を、例えば紡糸又は延伸工程等において合成繊維に付着させる工程を経て得られる。合成繊維に付着した希釈液は、延伸工程、乾燥工程により希釈溶媒を蒸発させてもよい。付着させる工程も紡糸工程であれば特に制限はない。延伸もしくは熱処理工程において、150℃以上のローラーを通過させる工程を有する製造設備、工程での使用により、発明の効果がより期待できる。繊維と設備の接触や繊維同士での接触時に、高温で高い圧力が掛かるため、発明の効果をより発揮する。
【0046】
本実施形態の処理剤が付与される合成繊維の具体例としては、特に制限はなく、例えば(1)ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタラート、ポリ乳酸、これらのポリエステル系樹脂を含有して成る複合繊維等のポリエステル系繊維、(2)ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系繊維、(3)ポリアクリル、モダアクリル等のポリアクリル系繊維、(4)ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維等が挙げられる。これらの中でポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維に適用されることが好ましい。製造する合成繊維の繊度としては、特に制限はないが、好ましくは150デシテックス以上であり、より好ましくは500デシテックス以上であり、さらに好ましいのは1000デシテックス以上である。また、製造する合成繊維の強度としては、特に制限はないが、好ましくは5.0cN/dtex以上であり、より好ましくは6.0cN/dtex以上、さらに好ましくは7.0cN/dtex以上である。
【0047】
処理剤を合成繊維に付着させる割合に特に制限はないが、処理剤を合成繊維に対し0.1質量%以上3質量%以下の割合(水等の溶媒を含まない割合)となるよう付着させることが好ましい。かかる構成により、本発明の効果をより向上させる。また、処理剤を付着させる方法は、特に制限はなく、例えばローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法、浸漬給油法、スプレー給油法等の公知の方法を採用できる。
【0048】
本発明において、合成繊維の用途としては、特に限定されないが、産業資材に用いられる合成繊維が好ましい。例えばエアバッグ用繊維、シートベルト用繊維、タイヤコード用繊維、カーペット用繊維、テント用繊維、広告布用繊維、漁網用繊維、コンベアベルト用繊維、ロープ用繊維等の自動車、建築、商業、農業・水産業、土木等の分野で使用される合成繊維がより好ましい。
【0049】
上記実施形態の処理剤及び合成繊維の効果について説明する。
(1)上記実施形態の処理剤では、平滑剤、ノニオン界面活性剤、及びイオン界面活性剤を含有し、ノニオン界面活性剤として多価アルコールとオキシカルボン酸縮合物とから形成されるエステル化合物(A)を含むように構成した。したがって、処理剤が付与された繊維の毛羽を低減できる。特に、金属擦過体と繊維との摩擦によって発生する毛羽を低減できる。また、処理剤の繊維に対する皮膜強度を向上させ、繊維の耐久性を向上できる。
【0050】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
・上記実施形態の処理剤には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、処理剤の製造途中又は製造後に、処理剤の品質保持のための上記以外の安定化剤、制電剤、つなぎ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、防腐剤、防錆剤等の通常処理剤に用いられる成分をさらに配合してもよい。
【0051】
・保管時の外観の安定性等を高める観点から、処理剤と水を予め混合させておいてもよく、その場合、処理剤と水の混合比率は、処理剤の質量:水の質量=85:15~99.9:0.1であることが好ましい。
【実施例
【0052】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、特に限定のない限り、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0053】
試験区分1(処理剤の調製)
(実施例1)
表1に示されるように、平滑剤としてトリメチロールプロパントリオレアート(ES-1)を20部(%)、ナタネ油(ES-3)を10部(%)、ジイソステアリルチオジプロピオナートを(ES-5)を5部(%)、ノニオン界面活性剤としてエステル化合物(A-1)を25部(%)、ポリエチレングリコール(質量平均分子量600)1モルに対して、オレイン酸2モルをエステル化させたもの(A3-1)を15部(%)、オレイルアルコール1モルに対しエチレンオキサイド(以下、EOという)10モル付加したもの(N-1)を5部(%)、イソトリデカノール1モルに対しEO10モル付加したもの(N-2)を10部(%)、ソルビタンモノオレアート(N-5)を5部(%)、ステアリルアミン1モルに対しEO5モル付加したもの(N-10)を3部(%)、イオン界面活性剤として二級アルカンスルホン酸ナトリウム塩(炭素数11~14)(I-1)を1.5部(%)、オレイルアルコールEO5モル付加物のリン酸エステル-ラウリルアミンEO10モル付加物塩(I-5)を0.5部(%)含む実施例1の処理剤を調製した。
【0054】
(実施例2~16、比較例1~4)
実施例2~16、比較例1~4の処理剤は、実施例1の処理剤と同様にして、平滑剤、ノニオン界面活性剤、及びイオン界面活性剤を表1,2に示した割合で含むように調製した。
【0055】
平滑剤の種類と含有量、ノニオン界面活性剤の種類と含有量、イオン界面活性剤の種類と含有量を、表1,2の「平滑剤」欄、「ノニオン界面活性剤」欄、「イオン界面活性剤」欄にそれぞれ示す。
【0056】
なお、処理剤中のオキシカルボン酸縮合物の含有割合を、処理剤中のエステル化合物(A)の含有量とエステル化合物(A)に含まれているオキシカルボン酸縮合物の含有量とから算出した。エステル化合物(A)中のオキシカルボン酸縮合物の含有割合は、以下に示す方法により測定した。計算結果を表1,2の「処理剤中のオキシカルボン酸縮合物の含有割合」欄に示す。
【0057】
(オキシカルボン酸縮合物の定量方法)
エステル化合物(A)からカラムクロマトグラフィーにより分取した。
固定相:シリカゲル
移動相:n-ヘキサン/クロロホルム=60/40(vol%)の混合溶媒
抽出物を回収後、ヒーターで乾燥濃縮し、得られる質量からエステル化合物(A)中に含まれるオキシカルボン酸縮合物の量を定量した。
【0058】
【表1】
【0059】
【表2】
表1,2に記載する平滑剤、ノニオン界面活性剤、イオン界面活性剤の詳細は以下のとおりである。
【0060】
<平滑剤>
ES-1:トリメチロールプロパントリオレアート
ES-2:トリメチロールプロパンとヤシ脂肪酸のトリエステル
ES-3:ナタネ油
ES-4:ジイソステアリルアジパート
ES-5:ジイソステアリルチオジプロピオナート
ES-6:イソテトラコシルオレアート
<ノニオン界面活性剤>
(エステル化合物(A))
下記表3に記載されるエステル化合物(A-1)~(A-15)を使用した。
【0061】
・エステル化合物(A-1)の合成
温度計、窒素導入管、撹拌機、及び冷却トラップを取り付けた2Lの4つ口フラスコに、原料である多価アルコールとして所定量のペンタエリスリトール-エチレンオキサイド10モル付加物と、オキシカルボン酸縮合物として12-ヒドロキシステアリン酸縮合物を表3に示すモル比率で仕込んだ。この混合物に触媒として、混合物の合計質量の0.5%のパラトルエンスルホン酸一水和物を仕込み、反応器をマントルヒーターで加熱し、窒素気流下160℃で反応させた。反応液の酸価が1mgKOH/g以下となるまで反応させた。80℃まで反応器を冷却した後、残留脂肪酸と酸触媒を完全に中和できる量の10%水酸化ナトリウム水溶液を反応液に加えて30分間撹拌した。その後、100℃、5kPaで1時間撹拌することで脱水した。最後に、反応液に対して2質量%の活性白土を加え、80℃、5kPaの条件で1時間撹拌し、ろ過して中和塩と吸着剤を除去することで所望のエステル化合物(A-1)を得た。
【0062】
・エステル化合物(A-2)~(A-15)の合成
エステル化合物(A-2)~(A-15)は、エステル化合物(Aー1)と同様にして、原料として多価アルコール及びオキシカルボン酸縮合物を表3に示した割合で反応させた。また、エステル化合物ごとに異なる反応時間で反応させた。多価アルコールの種類、オキシカルボン酸縮合物の種類、多価アルコールとオキシカルボン酸縮合物との仕込み比率(モル比)を、表3の「多価アルコール」欄、「オキシカルボン酸縮合物」欄、「仕込み比率」欄にそれぞれ示す。「オキシカルボン酸縮合物」欄の()内の数字は、オキシカルボン酸の縮合度を示し、例えば、2量体の場合は(2)、4量体の場合は(4)のように表した。
【0063】
なお、合成したエステル化合物(A)の主成分となる構造式からヒドロキシ基の数(X)とエステル結合の数(Y)を数えてX:Yの比を算出した。また、合成したエステル化合物(A)中に含まれる未反応のオキシカルボン酸縮合物の含有量を試験区分1欄に記載の方法に従って求めた。それぞれの値を表3の「エステル化合物(A)分子中のヒドロキシ基の数(X):エステル結合の数(Y)」欄、「エステル化合物(A)に含まれる未反応オキシカルボン酸縮合物の量」欄に示す。
【0064】
【表3】
(その他(1):アルキレンオキサイドと一価カルボン酸のエステル化合物)
A3-1:ポリエチレングリコール(質量平均分子量600)1モルに対して、オレイン酸2モルをエステル化させたもの
A3-2:ポリエチレングリコール(質量平均分子量400)1モルに対して、パーム油脂肪酸1.8モルをエステル化させたもの
A3-3:ポリエチレングリコール(質量平均分子量600)1モルに対して、パーム油脂肪酸2モルをエステル化させたもの
A3-4:ポリエチレングリコール(質量平均分子量400)1モルに対して、オレイン酸1.5モルをエステル化させたもの
なお、質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーで標準物質をポリエチレングリコールとして求めたものである。
【0065】
(その他(2):上記以外のノニオン界面活性剤)
N-1:オレイルアルコール1モルに対しEO10モル付加したもの
N-2:イソトリデカノール1モルに対しEO10モル付加したもの
N-3:イソトリデカノール1モルに対してEO10モルとプロピレンオキサイド(以下、POという)10モルをランダムに付加したもの
N-4:イソドデカノール1モルに対してPO5モル付加した後にEO5モル付加したもの
N-5:ソルビタンモノオレアート
N-6:ソルビタントリオレアート
N-7:トリメチロールプロパンジオレアート
N-8:グリセリンジオレアート
N-9:オレイン酸ジエタノールアミド
N-10:ステアリルアミン1モルに対しEO5モル付加したもの
N-11:ステアリルアミン1モルに対しEO10モル付加したもの
N-12:エステル化合物(A-6)1モルに対しオレイン酸3モルをエステル化したもの
N-13:エステル化合物(A-5)1モルに対しアジピン酸0.5モルで架橋しパルミチン酸2.5モルで末端エステル化したもの
<イオン界面活性剤>
I-1:二級アルカンスルホン酸ナトリウム塩(炭素数11~14)
I-2:ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム塩
I-3:2-エチルヘキサン酸カリウム塩
I-4:α-オレフィンスルホン酸ナトリウム塩
I-5:オレイルアルコールEO5モル付加物のリン酸エステル-ラウリルアミンEO10モル付加物塩
I-6:イソステアリルリン酸エステル-ジブチルエタノールアミン塩
試験区分2(走行糸毛羽の評価)
調製直後の各処理剤は、有機溶媒(n-ヘキサンとエタノールの混合溶媒)を用いて希釈し、処理剤15%の希釈液とした。1000デシテックス、126フィラメント、固有粘度0.93の無給油のポリエチレンテレフタラート繊維に、前記の希釈液を、ガイド給油法にて不揮発分として付与量1.0%となるように付与した。
【0066】
高張力摩擦試験機(東レエンジニアリング株式会社製)を用いて走行糸毛羽を測定した。糸速100m/分、荷重2kg、OPU1%の条件で、温度230℃のクロム梨地Pinに擦過させた際に発生する毛羽を目視でカウントした。走行糸毛羽は次の基準で評価した。結果を表1,2の「走行糸毛羽」欄に示す。
【0067】
・走行糸毛羽の評価基準
○○(良好):3個以下
○(可):4個以上7個以下
×(不可):8個以上
試験区分3(ラビング耐久の評価)
試験区分2と同様の方法にて作成した処理剤の希釈液を、ガイド給油法にて不揮発分として付与量1.0%となるように付与した。
【0068】
糸抱合力試験機(株式会社大栄科学精器製作所製)を用いてラビング耐久を測定した。交互に前後運動する部位に試験糸の両端を固定し、その糸にフリーローラーを通すことで、環状の糸道を作成した。糸道の途中でステンレス鏡面Pinに約90°で糸を接触させた。荷重1.2kg、温度230℃のステンレス鏡面Pinとの擦過長20mm、速度100往復/分の測定条件とした。ステンレス鏡面Pinとの擦過箇所で糸が破断するまでの往復回数をカウントした。ラビング耐久は次の基準で評価した。結果を表1,2の「ラビング耐久」欄に示す。
【0069】
・ラビング耐久の評価基準
○○(良好):1001回以上
○(可):501回以上1000回以下
×(不可):500回以下
試験区分4(発煙の評価)
調製した各処理剤について、下記に示す加熱した傾斜板を利用して発煙が生ずるかを観察した。ヒーター上に45°に傾斜させたステンレス製の板(傾斜板)を設置し、表面温度を250℃に設定した。板上端から吐出量0.5mL/分の量で処理剤を滴下し、板下端で回収した。目視にて傾斜板上の発煙量を次の基準で評価した。結果を表1,2の「発煙」欄に示す。
【0070】
・発煙の評価基準
○○(良好):発煙していない場合
○(可):発煙が僅かに見える場合
×(不可):明らかに発煙している場合
表1,2の結果からも明らかなように、各実施例の処理剤は、走行糸毛羽、ラビング耐久、及び発煙の評価がいずれも可以上であった。本発明によれば、特に合成繊維の紡糸工程等において、処理剤が付与された繊維の毛羽を低減できるとともに、耐久性を向上できる。また、処理剤が付与された繊維の紡糸又は延伸工程において低発煙性となる。
【要約】
【課題】合成繊維用処理剤が付与された繊維の毛羽を低減できるとともに、耐久性を向上できる合成繊維用処理剤等を提供する。
【解決手段】本発明の合成繊維用処理剤は、平滑剤、ノニオン界面活性剤、及びイオン界面活性剤を含有し、前記ノニオン界面活性剤が、多価アルコールとオキシカルボン酸縮合物とから形成されるエステル化合物(A)を含むことを特徴とする。
【選択図】なし