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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】ロキソプロフェン配合皮膚用外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/192 20060101AFI20221018BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20221018BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
A61K31/192
A61P29/00
A61P17/00
A61K47/32
A61K47/18
A61K47/10
A61K47/38
A61K9/06
A61K9/10
A61K9/08
A61K9/12
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018085898
(22)【出願日】2018-04-27
(65)【公開番号】P2018188429
(43)【公開日】2018-11-29
【審査請求日】2021-03-25
(31)【優先権主張番号】P 2017089292
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306014736
【氏名又は名称】第一三共ヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(74)【代理人】
【識別番号】100161160
【弁理士】
【氏名又は名称】竹元 利泰
(74)【代理人】
【識別番号】100146581
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 公樹
(72)【発明者】
【氏名】崔 祥子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 史織
(72)【発明者】
【氏名】高橋 由美
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-197537(JP,A)
【文献】特開2017-137304(JP,A)
【文献】特開2018-021002(JP,A)
【文献】特開2001-199883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
A61K 9/00
A61K 47/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロキソプロフェン、カルボキシビニルポリマー、ジイソプロパノールアミンおよびエタノールを含有し、エタノールの含有量が、30.5重量%以上である、皮膚外用剤。
【請求項2】
さらに、0.1~5.0重量%のセルロース系水溶性高分子を含有する、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
セルロース系水溶性高分子が、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒプロメロースおよびメチルセルロースからなる群より選ばれる1種である、請求項に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
さらに、製剤pHが6.0~7.5である、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
さらに、多価アルコールを含有する、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
さらに、l-メントールを含有する、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項7】
鎮痛消炎用である、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項8】
剤形がゲル剤、クリーム剤、液剤、またはエアゾール剤である、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項9】
剤形がゲル剤である、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた鎮痛消炎作用を有するロキソプロフェンを含有する皮膚外用剤に関する。より詳しくは、ロキソプロフェンに特定の医薬品添加物を含有させることによって、外観でみる製剤の透明性を高めるとともに、製剤の粘度低下を抑制したロキソプロフェン含有皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピオン酸系非ステロイド性解熱鎮痛消炎剤(NSAID)であるロキソプロフェンは、他のNSAIDと同様にプロスタグランジン生合成の抑制作用に基づく解熱・鎮痛・消炎作用を有する。なお、ロキソプロフェンは経口投与後に胃粘膜刺激作用の弱い未変化体のまま消化管から吸収され、体内で活性体となるプロドラッグであるため、活性体よりも胃粘膜障害は少ないという特徴を有することでも知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
近年、ロキソプロフェンは外用消炎鎮痛剤としてもパップ剤、テープ剤及びゲル剤が市販され、臨床に供されている(例えば、非特許文献2参照)。なお、ロキソプロフェンは、皮膚においてもケトン還元酵素によってトランス-OH体(活性体)に変換されることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
これまでに、ロキソプロフェンおよび低級アルコール10~30重量%を含有する外用ゲル製剤において、カルボキシビニルポリマーを配合することでロキソプロフェンの経皮吸収を高めたことが開示されている(特許文献2参照)。また、アンフェナクナトリウムを含有する貼付剤に有機アミンを配合すると、皮膚透過性、安定性、美観が改善したことが開示されている(特許文献3参照)。なお、これらの製剤は、低級アルコールを含有しないか、含有する場合は30重量%以下である外用製剤である。
【0005】
しかし、使用感の向上のため清涼化剤等の油溶性成分を追加する場合、あるいは製剤の速乾性をより高めて衣服等への付着を軽減する場合、いずれも低級アルコールの含有量を高める必要がある。しかし、ロキソプロフェンナトリウムを含有する外用剤では、低級アルコールの含有量を高めるにつれ、増粘が困難となり、さらに、析出物または製剤の分離が生じるなど外観にも課題あった。このため、製剤の粘度低下を抑制し、かつ不溶物析出の見られないロキソプロフェンを含有する外用剤の出現が切望されている。
【0006】
これまでに、インドメタシンにカルボキシビニルポリマー及びイソプロパノール及びジイソプロパノールアミンを含有するゲル剤が市販されている(非特許文献3参照)。また、フェルビナクにカルボキシビニルポリマー及びエタノール及びジイソプロパノールアミンを含有するゲル剤が市販されている(非特許文献4参照)。しかし、ロキソプロフェン及びカルボキシビニルポリマー及びジイソプロパノールアミン及び低級アルコール30.5重量%以上を含有する外用剤は知られておらず、かかる場合において、ジイソプロパノールアミンが製剤粘度または外観にどのように影響するかについては全く知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-074873公報
【文献】特許第4195178号公報
【文献】特再公表2010-103844
【非特許文献】
【0008】
【文献】薬理と治療Vol.16 No.2 1988 p.611-619
【文献】JAPIC 医療用医薬品集2013 丸善 2012
【文献】バンテリンコーワゲルLT添付文書
【文献】フェイタスゲル添付文書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、使用感の向上のため清涼化剤等の油溶性成分を追加する場合、あるいは製剤の速乾性をより高めて衣服等への付着を軽減する場合、製剤中の低級アルコールの含有量を高める必要がある。しかしながら、本発明者らは、例えば特許文献2に準じたロキソプロフェンナトリウムとカルボキシビニルポリマーを含有する製剤において、低級アルコールの含有量を特許文献2に記載の10~30重量%よりも高くすると、著しい粘度低下および不溶物析出の少なくともいずれかを起こすことを見出した。従って、本発明の課題は、高濃度の低級アルコールを配合するロキソプロフェン含有皮膚外用剤において、粘度低下が抑制され、かつ、不溶物析出が抑制された製剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、高濃度の低級アルコールが配合されたロキソプロフェンを含有する皮膚外用剤において、pH調節剤(カルボキシビニルポリマーの中和剤)としてジイソプロパノールアミンを選択することにより、ロキソプロフェンナトリウムを含有する皮膚外用剤の粘度低下および不溶物析出を顕著に抑制することを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1)ロキソプロフェン、カルボキシビニルポリマー、ジイソプロパノールアミンおよび低級アルコールを含有する皮膚外用剤であり、
(2)低級アルコールの含有量が、30.5重量%以上である、前記(1)に記載の皮膚外用剤であり、
(3)さらに、0.1~5.0重量%のセルロース系水溶性高分子を含有する、前記(1)または(2)に記載の皮膚外用剤、
(4)セルロース系水溶性高分子が、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒプロメロースおよびメチルセルロースからなる群より選ばれる1種または2種以上である、前記(3)に記載の皮膚外用剤、
(5)さらに、製剤pHが6.0~7.5である、前記(1)~(4)のいずれか1に記載の皮膚外用剤、
(6)さらに、多価アルコールを含有する、前記(1)~(5)のいずれか1に記載の皮膚外用剤、
(7)さらに、l-メントールを含有する、前記(1)~(6)のいずれか1に記載の皮膚外用剤、
(8)鎮痛消炎用である、前記(1)~(7)のいずれか1に記載の皮膚外用剤、
(9)剤形がゲル剤、クリーム剤、液剤、またはエアゾール剤である、前記(1)~(8)のいずれか1に記載の皮膚外用剤、
又は、
(10)剤形がゲル剤である、前記(1)~(8)のいずれか1項に記載の皮膚外用剤、
である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の、ロキソプロフェン、カルボキシビニルポリマー、ジイソプロパノールアミンおよび低級アルコールを含有する皮膚外用剤、特に低級アルコールを30.5%以上含有する皮膚外用剤は、使用感にも優れ、低級アルコール高含量下において発生する粘度低下および/または不溶物析出を顕著に抑制しており、臨床上極めて有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明において、「ロキソプロフェン」とは、ロキソプロフェンまたはその塩(含水塩を含む)であり、好適には、ロキソプロフェンナトリウムまたはロキソプロフェンナトリウム・2水和物であり、さらに好適には、ロキソプロフェンナトリウム・2水和物である。
【0014】
本発明のロキソプロフェンは、ロキソプロフェンナトリウム水和物として第17改正日本薬局方に掲載されている。
【0015】
カルボキシビニルポリマー(カルボキシポリメチレンとも言う)は、粘稠剤、粘着剤、分散剤、安定化剤、基剤等の用途で外用剤に用いられる医薬品添加剤であり医薬品添加物辞典2016(薬事日報社、2016)に収載されている。
【0016】
ジイソプロパノールアミンは、安定化剤、基剤、pH調節剤、溶剤、溶解補助剤等の用途で外用剤に用いられる医薬品添加物であり、医薬品添加物辞典2016に収載されている。
【0017】
低級アルコールとは、可溶化剤、基剤、保存剤、溶剤、溶解補助剤等の用途で外用剤に用いられる炭素数1~4個の脂肪族アルコール類であり、例えば、メタノール、エタノール(エチルアルコールとも言う)、プロパノール、イソプロパノール(イソプロピルアルコールとも言う)、およびブチルアルコール等からなる群より選ばれる1種または2種以上であり、好ましくはエタノールおよびイソプロパノールからなる群より選ばれる1種または2種である。エタノール含量が99.5体積%以上のものは無水エタノールとも呼ばれる。
【0018】
l-メントールは、清涼化剤、香料、安定化剤等の用途で外用剤に用いられる医薬品添加物であり、医薬品添加物辞典2016に収載されている。
【0019】
セルロース系水溶性高分子とは水に不溶性のセルロースの水酸基を塩化メチル、酸化プロピレン、酸化エチレンなどで修飾することにより水溶性にしたものであり、例えば、医薬添加物辞典2016に収載されている。セルロース系水溶性高分子は、例えば、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒプロメロースおよびメチルセルロースからなる群より選ばれる1種または2種以上であり、好ましくは、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒプロメロースおよびメチルセルロースからなる群より選ばれる1種または2種以上である。
【0020】
また、本発明における多価アルコールとは、可溶化剤、基剤、湿潤剤、粘稠剤、溶剤、溶解補助剤等の用途で外用剤に用いられる、分子内に水酸基が2個以上あるアルコールであり、例えば、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、濃グリセリン、マクロゴール200、マクロゴール300、マクロゴール400、D-ソルビトール等であり、医薬品添加物辞典2016に収載されている。
【0021】
本発明の外用剤において含有される、ロキソプロフェンの含有量は特に限定されないが、好ましくは、0.1~10重量%であり、より好ましくは、0.5~5重量%である。これを1日1~数回塗布する。
【0022】
また、低級アルコールの添加量(2種以上のアルコールを含む場合は各アルコールの添加量の総計)の上限は特に限定されないが、好ましくは、30.5~65.0重量%であり、より好ましくは、30.5~55.0%である。
【0023】
また、カルボキシビニルポリマーの添加量は特に限定されないが、好ましくは0.1~5.0%であり、より好ましくは、0.7~3.0%である。
【0024】
また、ジイソプロパノールアミンの添加量は、好ましくは0.08~7.5%であり、より好ましくは、0.6~4.5%である
また、l-メントールの添加量は特に限定されないが、好ましくは0.01~10%であり、より好ましくは、0.1~7.5%である。
【0025】
また、本発明の皮膚外用剤に含まれるカルボキシビニルポリマーとジイソプロパノールアミンとの配合比は、カルボキシビニルポリマー1重量部に対し、ジイソプロパノールアミン0.75重量部以上であることが好ましく、0.8重量部以上であることがより好ましい。カルボキシビニルポリマー1重量部に対し、ジイソプロパノールアミン0.75重量部未満にすると、析出等の外観上の課題が生じることがある。
【0026】
また、セルロース系水溶性高分子の添加量は特に限定されていないが、好ましくは0.1~3%であり、より好ましくは0.5~2.5%である。
【0027】
さらに、多価アルコールの添加量は特に限定されないが、いずれも好ましくは0.5~20%であり、より好ましくは、1.0~15%である。また、製剤pHの範囲は、好ましくは5.5~7.5であり、より好ましくは6.0~7.4である。
【0028】
また、本発明の皮膚外用剤を胴径35mmの透明ガラス瓶に分注し、東機産業(株)製B形粘度計(スピンドルM4)を用いて粘度測定するとき、25℃における12rpm、120秒後の粘度値が、通常、5000~100000mPa・sであり、好ましくは10000~70000mPa・sである。特に、本発明の皮膚外用剤の剤形がゲル剤の場合、粘度値が10000~70000mPa・sであることが好ましい。粘度が10000mPa・s未満になると、市中のゲル剤で使用されるチューブ型容器では吐出量の調節が困難となり、また塗布時に液だれを起こしやすく、使用性が悪化する。逆に粘度が70000mPa・sより高いと、チューブ型容器から吐出が困難となり、また塗布時の伸びも悪く、塗布後のべたつきも悪化する。このため、製剤(好ましくは、ゲル剤)の特性として粘度は一定の下限値および上限値の範囲内にあることが好ましい。本発明に従い特定のジイソプロパノールアミンを製剤に配合することにより、粘度値を10000~70000mPa・sにすることができ、使用感と取り扱いに優れた製剤を得ることができる。
【0029】
本発明の外用剤において、上記成分以外の鎮痛消炎用の皮膚外用剤に通常使用される、薬物や医薬品添加物を添加することができる。
【0030】
かかる薬物としては、例えば、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸等の抗炎症剤、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミンマレイン酸塩等の抗ヒスタミン剤、トコフェロール酢酸エステル、ニコチン酸ベンジルエステル等の血行改善成分、l-メントール、ノニル酸ワニリルアミド、トウガラシエキス等の局所刺激成分、アルニカチンキ等の生薬成分等を挙げることができ、これらの薬物は、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0031】
上記成分以外の医薬品添加物は、例えば、経時的な含量安定性や使用感の更なる向上等を目的として必要に応じて添加するものであり、例えば、湿潤剤、pH調節剤、抗酸化剤や清涼化剤等を挙げることができる。
【0032】
かかる湿潤剤としては、例えばdl-ピロリドンカルボン酸ナトリウム液、ポリソルベート80、マクロゴール200等を添加することができる。
【0033】
pH調節剤としては、例えば、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、りん酸、乳酸、有機アミン等を用いることができる。
【0034】
抗酸化剤としては、例えば、トコフェロール、トコフェロール酢酸エステル等を用いることができる。
【0035】
清涼化剤としては、例えば、カンフル、dl-カンフル、ハッカ油、l-メントール、ユーカリ油等を挙げることができる。
【0036】
本発明の皮膚外用剤の具体的な剤形としては、例えば、液剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、エアゾール剤等をあげることができ、各剤形に適した添加剤や基剤を適宜使用し、日本薬局方などに記載される通常の方法に従い、製造することができる。
【0037】
本発明の皮膚外用剤は、鎮痛消炎用として、痛みや炎症を有する患者、例えば、腰痛、打撲、捻挫、肩こりに伴う肩の痛み、腱鞘炎、肘の痛み、関節痛等の患者に使用することができる。
【0038】
以下に、実施例をあげて本発明を更に具体的に説明する。
【実施例
【0039】
(製剤例)
(表1)
ゲル剤
製剤100g中配合量(g) 処方1 処方2 処方3 処方4 処方5 処方6 処方7
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ロキソプロフェン 1.134 1.134 1.134 1.134 1.134 1.134 1.134
ナトリウム・2水和物※
エタノール 45.0 47.5 50.0 50.0 45.0 47.5 50.0
プロピレングリコール 3.0 5.0 5.0 3.0 3.0 5.0 3.0
1,3-ブチレン 2.0 - - - - - -
グリコール
濃グリセリン - - - 1.0 - - -
マクロゴール200 - - - - 1.0 - -
dl-ピロリドン - - - - - 1.0 -
カルボン酸ナトリウム液
グリチルレチン酸 0.1 - 0.05 - - - 0.1
dl-カンフル 3.0 - - - - - 3.0
ジフェンヒドラミン 0.5 - - - - - 0.5
トウガラシエキス 0.1 - - - - - 0.1
ハッカ油 - - - 0.3 - - -
トウガラシチンキ - - - - 0.2 - -
ポリオキシエチレン 1.2 - 1.2 1.2 - - 1.2
硬化ヒマシ油40
トコフェロール 0.1 - 0.5 0.1 - - 0.5
酢酸エステル
l-メントール 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0
カルボキシビニル 0.80 1.35 1.0 1.5 1.10 2.50 1.35
ポリマー
ヒプロメロース 1.2 0.8 1.0 - 0.8 0.4 -
ヒドロキシプロピル - - - 0.5 - - 0.9
セルロース
キサンタンガム - - - - 0.2 - -
ジイソプロパ 0.64 1.32 0.9 2.1 1.43 2.75 1.98
ノールアミン
塩酸※※ 適量 適量 適量 適量 適量 適量 適量
りん酸※※ 適量 適量 適量 適量 適量 適量 適量
乳酸※※ 適量 適量 適量 適量 適量 適量 適量
精製水 残部 残部 残部 残部 残部 残部 残部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
※ロキソプロフェンナトリウム1g(無水物換算)に相当する
※※任意で1種類以上選択し、適量添加する
【0040】
(表2)
(ゲル剤)
製剤100g中配合量(g) 処方8 処方9 処方10 処方11 処方12 処方13
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ロキソプロフェン 1.134 1.134 1.134 1.134 1.134 1.134
ナトリウム・2水和物※
エタノール 50.0 45.0 45.0 50.0 45.0 45.0
プロピレングリコール 5.0 5.0 5.0 3.0 5.0 5.0
ノナン酸バニリルアミド 0.012 - 0.015 0.025 0.012 0.1
クロルフェニラミン 0.1 0.1 0.1 - - -
マレイン酸塩
グリチルレチン酸 - - 0.05 0.2 - -
ニコチン酸 - - 0.02 - 0.01 -
ベンジルエステル
dl-カンフル - - - - - -
トウガラシエキス 0.1 - - - - -
ユーカリ油 0.5 - - - - -
チモール 1.0 - - - - -
ポリオキシエチレン - 1.6 - 1.6 - -
硬化ヒマシ油60
トコフェロール酢酸エステル - 0.1 - 0.5 - -
l-メントール 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 6.0
カルボキシビニルポリマー 0.9 1.70 1.2 2.0 2.20 2.70
ヒプロメロース 1.0 0.8 - 0.9 - 0.2
ヒドロキシ - - 1.0 - 0.5 -
プロピルセルロース
キサンタンガム - - - - - 0.2
ジイソプロパノールアミン 1.08 1.87 1.8 2.0 1.98 2.65
塩酸※※ 適量 適量 適量 適量 適量 適量
りん酸※※ 適量 適量 適量 適量 適量 適量
乳酸※※ 適量 適量 適量 適量 適量 適量
精製水 残部 残部 残部 残部 残部 残部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
※ロキソプロフェンナトリウム1g(無水物換算)に相当する
※※任意で1種類以上選択し、適量添加する
【0041】
(表3)
(外用固形剤)
製剤100g中配合量(g) 処方14 処方15 処方16 処方17 処方18 処方19
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ロキソプロフェン 1.134 1.134 1.134 1.134 1.134 1.134
ナトリウム・2水和物※
無水エタノール 20 15 25 - 30 15
イソプロパノール - - - 15 - -
濃グリセリン 30 10 30 30 - -
プロピレングリコール - 30 10 10 - -
1,3-ブチレングリコール 10 - - - 35 40
ステアリン酸ナトリウム 7 8 9 8 7 9
l-メントール 3 3 3 3 6 3
ラウリル硫酸ナトリウム 1 - 1 1 - -
ポリオキシエチレン - 1 - - - 2
硬化ヒマシ油40
トコフェロール酢酸エステル - - - - - 0.5
ミリスチン酸イソプロピル - - 1 1 - -
水酸化ナトリウム 適量 適量 適量 適量 適量 適量
精製水 残部 残部 残部 残部 残部 残部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
※ロキソプロフェンナトリウム1g(無水物換算)に相当する
【0042】
(表4)
(液剤)
製剤100g中配合量(g) 処方20 処方21 処方22 処方23 処方24 処方25
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ロキソプロフェン 1.134 1.134 1.134 1.134 1.134 1.134
ナトリウム・2水和物※
エタノール 50.0 50.0 45.0 47.5 45.0 45.0
プロピレングリコール 5.0 5.0 5.0 3.0 5.0 5.0
ノナン酸バニリルアミド 0.025 0.025 - 0.012 - -
クロルフェニラミン 0.1 0.1 0.1 0.1 - -
マレイン酸塩
グリチルレチン酸 0.2 0.2 - - - -
ニコチン酸 0.02 - - 0.01 - -
ベンジルエステル
ポリオキシエチレン - 1.6 - - - -
硬化ヒマシ油60
トコフェロール酢酸エステル - 0.5 - - - -
l-メントール 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 6.0
カルボキシビニルポリマー 0.2 0.35 0.50 0.70 0.80 0.90
ヒプロメロース 0.2 0.1 - 0.3 - -
疎水化ヒドロキシ - - - - 0.1 0.1
プロピルメチルセルロース
ジイソプロパノールアミン 0.2 0.46 0.45 1.05 0.96 0.99
水酸化ナトリウム※※ 適量 適量 適量 適量 適量 適量
塩酸※※ 適量 適量 適量 適量 適量 適量
りん酸※※ 適量 適量 適量 適量 適量 適量
乳酸※※ 適量 適量 適量 適量 適量 適量
精製水 残部 残部 残部 残部 残部 残部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
※ロキソプロフェンナトリウム1g(無水物換算)に相当する
※※任意で1種類以上選択し、適量添加する
【0043】
上記表1~4に記載した成分の分量を取り、日本薬局方製剤総則「ゲル剤」、「外用固形剤」、「外用液剤」の項に準じて製造し、処方例1~25を得る。
【0044】
(試験例)ロキソプロフェン含有皮膚外用剤の外観保存安定性試験
(1)試験材料
ロキソプロフェンナトリウム・2水和物は第一三共ケミカルファーマ(株)製のものを、ジクロフェナクナトリウムおよびインドメタシンは東京化成工業(株)製のものを、カルボキシビニルポリマーは住友精化(株)製のもの(製品名:AQUPEC HV-501E、またはAQUPEC HV-505E(実施例4~5、比較例4~5))を、ヒプロメロースはAshland製のものを、無水エタノールは今津薬品工業(株)製のものを、イソプロパノールは小堺製薬(株)製のものを、ジイソプロパノールアミンおよびトリエタノールアミンは和光純薬工業(株)製のものを、l-メントールは鈴木薄荷(株)製のものを、プロピレングリコールは丸石製薬(株)製のものを、それぞれ使用した。透明ガラスバイアルは(株)マルエム製のマイティバイアル(透明、No.7)を使用した。
【0045】
(2)検体の調製
以下の表5~7に記載した成分を混合して溶解後、実施例1~6及び比較例1~10のゲル剤を得た。
【0046】
(3)試験方法
得られた各製剤を胴径35mmの透明ガラスバイアルに分注し、密栓した。それぞれを25℃相対湿度60%にて保存し、1週間後に製剤pH、外観の目視確認および製剤粘度を測定した。なお、製剤粘度は東機産業(株)製B形粘度計(スピンドルM4)を用いて測定した、25℃における12rpm、120秒後の粘度値である。
【0047】
(表5)
製剤100g中配合量(g) 比較例1 実施例1 比較例2 比較例3 比較例4 比較例5
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ロキソプロフェン 1.134 1.134 - - - -
ナトリウム・2水和物※
ジクロフェナクナトリウム - - 1.0 1.0 - -
インドメタシン - - - - 1.0 1.0
無水エタノール 45.0 45.0 45.0 45.0 45.0 45.0
プロピレングリコール 5.0 5.0 5.0 5.0 5.0 5.0
ヒプロメロース 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6
カルボキシビニルポリマー 1.2 1.2 1.2 1.2 1.2 1.2
トリエタノールアミン 1.3 - 1.3 - 1.3 -
ジイソプロパノールアミン - 1.2 - 1.2 - 1.2
l-メントール 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0 3.0
精製水 残部 残部 残部 残部 残部 残部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
25℃一週間保存後
外観 × ○ ○ ○ ○ ○
粘度(mPa・s) 2000 18800 15000 26500 26000 36900
pH 7.12 7.16 6.82 6.69 6.44 6.44
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
※ロキソプロフェンナトリウム1g(無水物換算)に相当する
○:不溶物析出なし
×:不溶物析出あり
【0048】
(表6)
製剤100g中配合量(g) 比較例6 実施例2 比較例7 実施例3 比較例8 実施例4
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ロキソプロフェン 1.134 1.134 1.134 1.134 1.134 1.134
ナトリウム・2水和物※
無水エタノール 30.5 30.5 - - - -
イソプロパノール - - 30.5 30.5 40.0 40.0
プロピレングリコール 10.0 10.0 10.0 10.0 5.0 5.0
ヒプロメロース 0.5 0.5 0.5 0.5 0.6 0.6
カルボキシビニルポリマー 0.7 0.7 0.8 0.8 1.2 1.2
トリエタノールアミン 0.8 - 0.9 - 1.3 -
ジイソプロパノールアミン - 0.7 - 0.8 - 1.2
l-メントール - - - - 3.0 3.0
精製水 残部 残部 残部 残部 残部 残部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
25℃一週間保存後
外観 × ○ × ○ × ○
粘度(mPa・s) 15700 21700 3100 19300 2300 16400
pH 6.66 6.67 6.69 6.80 6.66 6.56
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
※ロキソプロフェンナトリウム1g(無水物換算)に相当する
○:不溶物析出なし
×:不溶物析出あり
【0049】
(表7)
製剤100g中配合量(g) 比較例9 実施例5 比較例10 実施例6
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
ロキソプロフェン 1.134 1.134 1.134 1.134
ナトリウム・2水和物※
無水エタノール 55.0 55.0 - -
イソプロパノール - - 47.0 47.0
プロピレングリコール 4.0 4.0 3.0 3.0
ヒプロメロース 1.0 1.0 1.0 1.0
カルボキシビニルポリマー 1.2 1.2 1.4 1.4
トリエタノールアミン 1.3 - 1.6 -
ジイソプロパノールアミン - 1.2 - 1.4
l-メントール 3.0 3.0 3.0 3.0
精製水 残部 残部 残部 残部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
25℃一週間保存後
外観 × ○ × ○
粘度(mPa・s) 2100 13500 2500 16500
pH 7.04 7.10 6.70 6.74
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
※ロキソプロフェンナトリウム1g(無水物換算)に相当する
○:不溶物析出なし
×:不溶物析出あり
【0050】
(4)試験結果
外観確認結果を表5~7に記載した。比較例1,6,7、8、9および10により、ロキソプロフェン含有製剤においては30.5%以上の高濃度の低級アルコール存在下において、粘度低下および不溶物析出の少なくともいずれかが生じることが分かった。また、比較例2~5により、この粘度低下および不溶物析出は、他のNSAID含有製剤(NSAID以外の成分は同様の組成を有する製剤)では生じないロキソプロフェン含有製剤に特有の現象であることが示された。そして、実施例1の結果より、pH調節剤としてトリエタノールアミンに代えて、特定のジイソプロパノールアミンを使用することによってのみ、粘度低下および不溶物析出を顕著に抑制することを見出した。
さらに、実施例1~6の結果より、低級アルコールとしてエタノールおよびイソプロパノールのいずれを使用した場合においても、30.5%以上の高濃度の低級アルコール存在下において、ロキソプロフェン含有製剤にジイソプロパノールアミンを使用することにより、粘度低下および外観でみる不溶物析出を顕著に抑制することを見出した。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の、ロキソプロフェン、カルボキシビニルポリマー、ジイソプロパノールアミンおよび低級アルコールを含有する皮膚外用剤は、使用感にも優れ、特に低級アルコール高含量下において、粘度低下および/または不溶物析出を顕著に抑制しており、臨床上極めて有用である。