(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】三次元物体を製造するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/314 20170101AFI20221018BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20221018BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20221018BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20221018BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20221018BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20221018BHJP
【FI】
B29C64/314
B29C64/118
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y50/02
B33Y30/00
(21)【出願番号】P 2019542816
(86)(22)【出願日】2017-10-12
(86)【国際出願番号】 IB2017056303
(87)【国際公開番号】W WO2018073700
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-10-02
(31)【優先権主張番号】102016120098.0
(32)【優先日】2016-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519144831
【氏名又は名称】エンジンガー ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】メーラー, ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァイガー, ドミニク
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106029345(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0080814(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0213419(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101605641(CN,A)
【文献】特表2016-531020(JP,A)
【文献】特表2016-518267(JP,A)
【文献】国際公開第2015/129733(WO,A1)
【文献】特表2010-517830(JP,A)
【文献】特開2016-094006(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0008230(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温ポリマー材料から三次元物体(2)を積層造形するための方法であって、
前記高温ポリマー材料を、前記高温ポリマー材料の溶融温度(T
S)を超える温度で可塑化させ、それにより前記高温ポリマー材料から溶融物を生成するステップと、
可塑化された前記高温ポリマー材料を、前記高温ポリマー材料の結晶化温度(T
K)を超える処理温度(T
V)であって、前記高温ポリマー材料から前記三次元物体(2)を積層造形するための装置(1)における装置構成要素の許容最高温度値(T
L)を下回る処理温度(T
V)に冷却するステップと、
前記処理温度(T
V)に冷却された前記高温ポリマー材料の溶融物を、前記三次元物体(2)を積層造形するための手段(5)に移送するステップと、
前記三次元物体(2)を積層造形するための前記手段(5)を用いて、前記処理温度に冷却された、可塑化された前記高温ポリマー材料から前記三次元物体(2)を積層造形するステップと
を含み、
前記処理温度(T
V)が、前記高温ポリマー材料の前記溶融温度(T
S)を下回り、
前記高温ポリマー材料が、ポリエーテルエーテルケトンであるか、または少なくとも1つのポリエーテルエーテルケトンを含有しており、
前記高温ポリマー材料が、345℃~400℃の温度で可塑化され、
前記可塑化された高温ポリマー材料が、305℃~335℃の範囲内の前記処理温度(T
V)に冷却され、
前記処理温度(T
V)に冷却された前記高温ポリマー材料の溶融物が吐出ユニットまたは印刷ノズルに移送され、
前記三次元物体(2)が、前記処理温度(T
V)に冷却された前記高温ポリマー材料から積層造形される、方法。
【請求項2】
前記高温ポリマー材料が、ポリマー、ポリマーブレンド、またはポリマー化合物であり、
前記高温ポリマー材料の各々が、少なくとも1つの、部分的に結晶性の高温プラスチックからなるか、または少なくとも1つの、部分的に結晶性の高温プラスチックを含有しており、
前記部分的に結晶性の高温プラスチックが260℃を超える融点を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記部分的に結晶性の高温プラスチックが、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、シンジオタクチックポリスチレン(sPS)、または液晶性ポリマー(LCP)である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記高温ポリマー材料が、低粘度高温ポリマー材料である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記三次元物体(2)の積層造形後に、中性プラスチックまたは好適なクリーニング材料で洗い流すことによって、前記処理温度(T
V)に冷却された、可塑化された前記高温ポリマー材料を除去するステップを更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
可塑化された前記高温ポリマー材料を前記処理温度(T
V)に冷却するための冷却手段(4)を電子的に調整するステップを更に含み、
前記冷却、前記移送および前記積層造形の工程の間に、可塑化された前記高温ポリマー材料の温度がモニタされ、可塑化された前記高温ポリマー材料が常に前記結晶化温度(T
K)を超える温度を有するように、前記冷却手段(4)が電子的に調整される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
高温ポリマー材料であるポリエーテルエーテルケトンポリマー材料から三次元物体(2)を積層造形するための装置(1)であって、
前記高温ポリマー材料を、前記高温ポリマー材料の溶融温度(T
S)を超える温度で可塑化するための可塑化手段(3)と、
可塑化された前記高温ポリマー材料を、前記高温ポリマー材料の結晶化温度(T
K)を超える処理温度(T
V)であって、当該装置(1)における装置構成要素の許容最高温度値(T
L)を下回る処理温度(T
V)に冷却するための冷却手段(4)と、
前記処理温度(T
V)に冷却された前記高温ポリマー材料の溶融物を、前記処理温度(T
V)に冷却された、可塑化された前記高温ポリマー材料から前記三次元物体(2)を積層造形するための積層製造手段(5)内に移送するための手段(10)と
を備え、
前記処理温度(T
V)が、前記高温ポリマー材料の前記溶融温度(T
S)を下回り、
中央制御ユニットまたは調整ユニットによる制御または調整に基づいて、前記可塑化手段(3)が、前記ポリエーテルエーテルケトンポリマー材料を345℃~400℃の温度で可塑化するように構成され、
前記中央制御ユニットまたは前記調整ユニットによる制御または調整に基づいて、前記冷却手段(4)が、可塑化された前記ポリエーテルエーテルケトンポリマー材料を305℃~335℃の前記処理温度(T
V)に冷却するように構成され、
前記積層製造手段(5)が、前記処理温度(T
V)に冷却された前記ポリエーテルエーテルケトンポリマー材料から前記三次元物体(2)を積層造形するように構成されている、
装置(1)。
【請求項8】
電子調整ユニット(11)を更に備え、
前記電子調整ユニット(11)が、可塑化された前記高温ポリマー材料を前記処理温度(T
V)に冷却するための前記冷却手段(4)を、電子的に調整するように構成されており、
前記冷却、前記移送および前記積層造形の工程の間に、可塑化された前記高温ポリマー材料の温度がモニタされ、可塑化された前記高温ポリマー材料が常に前記結晶化温度(T
K)を超える温度を有するように、前記冷却手段(4)が電子的に調整されるようになっている、請求項7に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元物体を製造するための方法および装置に関する。特に、本発明は、高温ポリマー材料から三次元物体を積層造形(三次元印刷)するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー材料から製造される三次元物体は、例えば、成形型による注型成形もしくは射出成形により、または押出成形、コルゲーション加工、もしくは半製品の機械加工/アブレーション加工により大量に製造することができる。射出成形工程では、ポリマー材料部品の複雑な幾何学的形状を正確にかつ速いサイクルタイムで実現することができる。しかし、これは常に、部品の幾何学的形状のために特別に構成された高価な射出成形型の構築を必要とし、それは原則として量が多い場合にのみ採算が取れる。小シリーズまたは個々の部品、例えば短納期を要求するサンプル部品または高価なカスタム製品は、典型的には半製品の機械加工または積層造形方法などの製造方法を使用して製造される。「三次元印刷」(以後「3D印刷」と略す)を含む積層造形方法は、いわゆるラピッドプロトタイピングまたはラピッドマニュファクチャリングを、すなわち、部品形状に合わせて具体的に構成されたツールを使用せずに、デジタル図面から製品サンプルの設計の直接製造、ならびに製品または中間製品の直接製造を可能にする。3D印刷はまた、以前の製造工程では利用できなかった、幾何学的に非常に複雑な部品および構造の作製に使用でき、新しい機能性を可能にする。
【0003】
三次元印刷のための方法では、プラスチックの顆粒またはフィラメントの形態のポリマー材料を溶融することによって可塑化することが知られている。例えば、可塑化は、射出成形において知られている加熱可塑化押出機(可塑化スクリューを有するシリンダ)内で行うことができ、その結果、ポリマー材料溶融物が生成される。ノズルを有する印刷ヘッドまたは吐出ユニットを使用して、ポリマー材料溶融物を加圧下で、ファイバ、液滴、点、線または層の状態で、コンピュータ制御で移動可能な三次元物体キャリア上の所定位置に吐出することができ、その結果、吐出されたポリマー材料溶融物がいったん硬化すると、想定される三次元物体が得られる。そのような方法に好適な装置の一例は、2013年に紹介された、Arburg GmbH&Co KGからの市販品である「Freeform」タイプの3Dプリンタである。同様に知られているのは、物体キャリアが静止し、一方で印刷ヘッドが可動である装置、例えばDelta Tower GmbHからの市販品である「Delta Tower」タイプの3Dプリンタである。
【0004】
例えば、微細な液滴またはファイバを吐出および/または堆積することによって3D印刷工程を実行することは、様々な技術的課題をもたらす。規定された微細な液滴を生成するためには、吐出ユニットに対して溶融ポリマー材料の粘度を調整するために、高圧および調整された処理温度が必要である。細かい量で設定された可塑化溶融物を出力することによって、上述の三次元印刷工程を実行するように設定されている先行技術において公知の装置は通常、ポリマー溶融物に対する装置固有の温度限界を有する。この温度限界は、装置構成要素の損傷または磨耗の増大、または手順上の問題を防ぐことを意図している。プリンタの特に温度が重要な構成要素は、ここでは印刷ヘッドまたは吐出ユニットであり、これらはモデルによっては高温で損傷を受ける可能性がある。高温での装置構成要素の熱による反り(熱膨張)も、同時に発生する顕著な温度勾配と併せて問題となる。とりわけ、制御されない熱膨張は、機械的部品の反り、ねじれ、または詰まりをもたらす場合があり、それは一時的にまたは恒久的に印刷工程を損なう。
【0005】
従って、温度限界を監視することで、特に装置の印刷ヘッドまたは吐出ユニットが保護される。3Dプリンタの設計には様々な種類があるため、装置ごとに異なる温度限界が存在する場合がある。同様に、3Dプリンタ内の様々な装置構成要素またはアセンブリが異なる温度限界を有する可能性がある。
【0006】
高温プラスチック、例えば特定のポリフタルアミド(PPA、例えばPA6T/X)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、またはポリエーテルケトン(PEK)もしくはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)のようなポリアリールエーテルケトン(PAEK)を処理する場合、通常は、既知の装置の温度限界を超過する。なぜなら、可塑化および吐出用の高温プラスチックは、溶融物に対して所望の粘度を達成することによって溶融物を加工可能にするために、それらの既に高い融点を超えて更に強力に加熱されるからである。例えば、PEEKの融点は341℃にある。本明細書において、高温ポリマー材料は、少なくとも1つの部分的に結晶性の高温プラスチックからなるか、または少なくとも1つの部分的に結晶性の高温プラスチックを含有する、ポリマー、ポリマーブレンド、またはポリマー化合物である。製品の意図する用途および使用部分的に結晶性の分野に応じて、高温ポリマー材料はまた、添加剤、充填剤、染料、または顔料を含有することができる。ここで、部分的に結晶性の高温プラスチックは、300℃を超える、好ましくは280℃を超える、特に好ましくは250℃を超える融点を特徴とする。
【0007】
3Dプリンタの機器の修正、装置構成要素の再設計、および/または高温にさらすことができる構成要素(とりわけ、ケーブル、ホース、ヒンジ、モータ、スイッチ、センサ、電子部品、ピエゾ素子など)の使用により、課題に対する構造的解決が可能になる。しかし、この変形形態は、とりわけコストが高いために好ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、冒頭に述べた種類の方法および装置を提供することであり、それにより、処理中に、装置固有のまたはアセンブリ固有の3Dプリンタの温度限界を超過することなく、内部で可塑化状態に転換された高温プラスチックから、物体を三次元印刷することが可能になる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は独立請求項の主題によって達成される。好適な実施形態は、従属請求項、以下の明細書、および図面の主題である。
【0010】
本発明の第1の態様は、高温ポリマー材料から三次元物体を積層造形(「積層製造」ともいう)するための方法を提供する。本方法は、最初にポリマー材料を可塑化することから始まり、それにより高温ポリマー材料の溶融物が得られる。例えば、可塑化は、可塑化押出機を使用して既知の方法で行うことができ、これは、より高い温度、すなわち特に温度が重要な構成要素、例えば印刷ヘッドまたは吐出ユニットの温度限界TLを超える温度に何の問題もなく設定することができる。可塑化は、高温ポリマー材料の溶融温度TSを超える可塑化温度TPで起こる。
【0011】
当業者には知られていることであるが、プラスチック溶融物は、可塑化押出機という手段以外にも、可塑化および移送を行うことができる。溶融目的では、接触ヒータ(加熱可能な溶融物容器、ノズル、またはチャネル)、マイクロ波放射、UV放射、または赤外線放射を、コヒーレント放射(レーザ)と共に同様に使用することができる。当業者は更に、ポリマー材料は顆粒の形態以外で提供され得ることを認識している。粉末、フィラメント、フィルム、ファイバ、または粉砕材料のような不均質粒子のような供給形態も同様に好適である。可塑化によって生じる溶融物は、例えば保護ガスの過剰圧力を加えることで、または機械式ポンプ、例えばギヤポンプ、シリンダシリンジもしくは往復ポンプにより過剰圧力を加えることで移送することができる。
【0012】
可塑化された高温ポリマー材料は、結晶化温度TKを超えるが、高温ポリマー材料の溶融温度TSを下回る処理温度TVに冷却される。それに加えて、処理温度TVは、高温ポリマー材料から三次元物体を積層造形するための装置の、特に3Dプリンタの少なくとも1つの重要な装置構成要素の許容最高温度値TLを下回り、特に、装置の印刷ヘッドまたは吐出ユニットの温度限界TLを下回る。
【0013】
処理温度TVに冷却された高温ポリマー材料の溶融物は、次いで、処理温度TVに冷却された、可塑化された高温ポリマー材料から三次元物体を積層造形するための手段で移送される。三次元物体を積層造形するための手段は、特に吐出ユニット、印刷ノズル、または3D印刷ヘッドを備えることができる。加えて、三次元物体は、三次元物体の積層造形のための手段を用いて、特に3D印刷ヘッドを使用して、または吐出ユニットを使用して、処理温度TVに冷却された可塑化高温ポリマー材料から積層造形される。
【0014】
ここで、三次元物体を加工すること、または積層造形することは、特に溶融物を印刷または吐出することを指す。吐出された、または堆積されたポリマー溶融物を、構成要素の最終位置上で冷却かつ結晶化させるという、独立して実行される工程は、この意味で処理を構成する。
【0015】
数学的に表現すると、溶融温度TS、結晶化温度TK、処理温度TV、最高温度値TL、および可塑化温度TPは以下のような相関を有する。
TK<TV<TL<TS<TP
【0016】
換言すれば、可塑化されたポリマー溶融物は、溶融温度または可塑化温度TPを下回り、かつ結晶化温度TKと装置の許容最高温度値TL(温度限界)との間にある温度値TVに冷却され、次いで冷却された温度値TVに導かれ、それにより三次元物体が形成される。
【0017】
従来技術では通常は、以下の状況が発生する。
TK<TS<TV≒TP<TL、またはTK<TS<TV<TP<TL
【0018】
一般に、ここでは単一の温度限界TLが装置全体に対して考慮され、この温度限界TLは処理温度を超える。これは、低温溶融ポリマー材料のみを使用することによって、または3Dプリンタを高温に耐えるようにすることによって実現することができる。ここでの処理は溶融温度を超える温度で行われる。
【0019】
TPから処理温度TVに近付いても溶融物はまだ固化しない。なぜなら、固化は結晶化点で起こるか、または、明らかに、溶融温度を下回りかつ装置の温度限界TLを下回ることとなり得る結晶化温度TKを下回って降下した場合に生じるからである。結晶化温度の位置は変更可能であり、結晶化は、装置および方法のパラメータ(例えば、剪断速度、ポリマー鎖の配向)、添加剤(例えば、核形成)、またはポリマー化学への介入(例えば、鎖長、分岐度、組成)を用いて具体的に調整/設定できる。
【0020】
溶融物の冷却は、この目的に適した冷却および焼き戻しのための手段を用いて行うことができ、制御されるべきである。溶融物を冷却するための、また任意となるが、それを冷却した温度に維持するための好適な方法および付随する手段は当業者には既知のことである。これらは、能動的または受動的な冷却方法、例えば媒体冷却(空気、液体)または電気冷却(ペルチェなど)によるものであり得る。同様に、冷却工程は好適には、センサによって能動的に制御および/またはモニタされる。上述の冷却工程により、特に温度が重要な3Dプリンタの構成要素が損傷を受けることなく、可塑化されたポリマー材料と接触することが可能なる。従って、本発明による方法により、印刷技術を高温用に特別に構成する必要なく、かつ工程で使用される装置の温度限界TLを超えることなく、3D印刷工程において高温ポリマー材料を使用することも可能になる。
【0021】
例えば、結晶化温度TKと温度限界TLとの間の好適な温度範囲は、DSC測定法によって大まかに測定することができる。特に信頼できる方法で装置への損傷を回避できるようにするため、選択された処理温度TVは結晶化温度TKに非常に近くなり得るが、それを下回って降下してはならない。この場合、溶融物の固化が早すぎることを防ぐために、剪断誘起結晶化のような効果と共に、装置の機械構成要素において起こり得る関連する温度変動が測定され、それに応じて溶融物の温度制御が調整される。上述のように、処理温度TVは好ましくは、高温ポリマー材料の溶融温度TSを下回る。
【0022】
従って、本発明による本方法の主要な利点の1つは、プリンタ技術およびプリンタ機構に対する高価かつ複雑な高温向けの変更手段を全く或いは部分的に使用せずに、高温ポリマー材料を印刷することができることにある。その結果、そのような印刷方法のための全体的なコストは明らかに減少する。他の重要な利点は、ポリマー溶融物の温度が低いことから得られる。すなわち、冷却された溶融物によって構成要素に伝達される熱(熱エネルギー)はより少ないので、反る傾向はより小さく、反りは温度差(例えば、堆積したポリマー溶融物の温度と、室温または印刷された物体が使用される温度との間の差)、および熱膨張係数から、または溶融物ではポリマー材料の体積膨張係数から、容易に計算で求めることができる。同様に、印刷された層の固化が促進され、材料への熱損傷が減少する。これら全てが、印刷された物体の品質を向上させるのに役立つ。
【0023】
一実施形態は、好ましくは、高温ポリマー材料が、ポリマー、ポリマーブレンドまたはポリマー化合物(少なくとも1つの部分的に結晶性の高温プラスチックからなるか、または少なくとも1つの部分的に結晶性の高温プラスチックを含有するもの)であり、部分的に結晶性の高温プラスチックが260℃を超える融点を特徴とすると定めている。特に、融点は300℃よりも高く、好ましくは280℃よりも高く、特に好ましくは250℃よりも高いものである。高温プラスチックは、更に好ましくは添加剤、充填剤、染料、または顔料を含有する。
【0024】
部分的に結晶性の高温プラスチックは、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、シンジオタクチックポリスチレン(sPS)、または液晶性ポリマー(LCP)であることが、更に有効である。ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、および部分芳香族ポリアミド、例えばPA6T/Xも好ましい。
【0025】
別の実施形態では、高温ポリマー材料は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、好ましくは未改質のポリエーテルエーテルケトンであるか、または少なくとも1つのポリエーテルエーテルケトンを含有するものであり、溶融温度TSは341℃であり得る。高温ポリマー材料は345℃~400℃、好ましくは360℃~390℃の温度で可塑化される。この実施形態では、可塑化されたポリエーテルエーテルケトンは、可塑化直後に、しかし温度が重要な装置アセンブリ内で更に移送される前に、305℃~335℃の処理温度TVまで更に冷却される。処理温度TVに冷却された高温ポリマー材料の溶融物は、次いで、特に吐出ユニットまたは印刷ノズルに移送され、三次元物体は、処理温度TVに冷却されたポリエーテルエーテルケトンプラスチックから積層造形される。ここでポリエーテルエーテルケトンプラスチックの結晶化温度はDSCによると290℃~300℃の範囲内にある。
【0026】
高温ポリマー材料は低粘度構成で存在することが、特に有効であり得る。溶融物のこの低粘度は、ここでは特に、処理温度TVで存在する高温ポリマー材料を、印刷ノズルまたは吐出ユニットを通して吐出できるように、ポリマーの分子量分布、ポリマー構造、および/または添加剤の添加により設定することができる。特に、これにより、冷却が一般にプラスチック内部の粘度を増加させるという問題に対抗することが可能になる。特に、当該技術分野において既知の「射出成形タイプ」では、特に低粘度で高温用のプラスチックまたはポリマー材料を使用することができ、これは、より高粘度または高粘度の「押出し」または「コンパウンディング」タイプと比較して、より低い平均分子量を特徴とする傾向があり、かつ/またはグライド剤または潤滑剤が添加される。
【0027】
別の実施形態では、本発明による方法は更に、処理温度TVに冷却された可塑化された高温ポリマー材料を除去することによって、温度が重要な構成要素をクリーニングすることを含む。クリーニングは、印刷ジョブが終了した後に、または計画された印刷ジョブまたは計画外の印刷ジョブが早目に中断した後に、計画に従って実行され得る。クリーニング工程は中性プラスチックまたは好適なクリーニング材料でリンシング処理、すなわち洗い流すことによって行われ、このクリーニング材料は顆粒、フィラメントなどの形態で提供することができ、かつ可塑化もされている。換言すれば、物体が上述のように製造された後に、高温ポリマー材料の可塑化溶融物の何らかの残留物が、本発明による方法を実施する装置の内部に残っている場合、および、装置がいわゆるニュートラルモードにある場合、例えば装置が停止している状態にある場合は、冷却された溶融物の残留物を、問題が生じる前に制御された方法で除去することができる。プリンタ内のポリマー溶融物の計画された、または計画外の結晶化または冷却後に、好適な溶剤を用いて、または物理的工程もしくは機械的工程を用いて、装置構成要素をクリーニングすることができる。例えば、取外し可能な装置構成要素は、超音波、ブラシまたは同様のクリーニング手段を用いて、熱分解工程で、またはクリーニング槽内で効果的にクリーニングすることができる。例えばドライアイス、砂、金属粒子またはセラミック粒子、とりわけステンレス鋼、およびコランダムまたは硬質シェルを用いたブラスト工程を使用することも、同様に可能である。
【0028】
更なる実施形態ではまた、可塑化された高温ポリマー材料を処理温度TVに冷却するための、電子的に調整される冷却手段が提供され、冷却、移送および積層造形工程の間に、可塑化された高温ポリマー材料の温度が好ましくは連続的にモニタされ、可塑化された高温ポリマー材料が常に結晶化温度TKを超える温度を有するように、この冷却手段は電子的に調整される。ここでのモニタは特に、この目的のために設けられたセンサを用いて、可塑化された高温ポリマー材料の温度を測定し、それらを記憶された温度値と比較し、その比較から結論を引き出すことにより行うことができ、その結論により、冷却をどのように継続すべきかについての方策の導出、導入、および実施が可能になる。
【0029】
例えば、取得した温度値に応じて、冷却手段の冷却能力を増加させることができ、冷却能力を減少させることができ、または冷却を完全に中止することができる(「冷却能力はゼロに等しい」)。加えて、例えば、可塑化された高温ポリマー材料が急速に冷却されていることが検出された場合、または温度が結晶化温度TKに接近しすぎたと判定された場合、高温ポリマー材料を、例えば可塑化された高温ポリマー材料を加熱するために適切に構成された追加の手段を用いて(再)加熱することができる。適切に構成された電子調整ユニットを使用して、温度センサを制御し、温度を比較し、結論を導き、かつ対策を導出、導入、および実施(制御および調整を含む)することができる。この実施形態は、可塑化された高温ポリマー材料が、冷却手段の領域、および/または積層造形手段の領域、特に3D印刷ヘッドの領域において固化するのを特に確実に防止するのに役立つ。
【0030】
本発明の第2の態様は、高温ポリマー材料から三次元物体を積層造形するための装置を提供する。この装置は、本発明の第1の態様に従う方法を実現するように構成されている。この目的のために、装置は、可塑化された高温ポリマー材料を、高温ポリマー材料の溶融温度TSを超える温度で可塑化するための手段を有し、この手段は、例えば、それ自体が公知の可塑化押出機であり、より高い温度のために、特に上記の温度限界TLを超える温度のために、容易に構成することができる。
【0031】
装置は更に、高温ポリマー材料を、高温ポリマー材料の結晶化温度(TK)を超え、かつ装置内の重要な装置構成要素の最高温度値(TL)を下回る、上述の処理温度TVに冷却するための手段を備え、この冷却手段は好ましくは、高温ポリマー材料を処理温度TVに維持するように構成され、この処理温度TVは好ましくは、高温ポリマー材料の溶融温度(TS)よりも低い。
【0032】
本装置は、処理温度TVに冷却され、好ましくその処理温度TVに維持されている可塑化された高温ポリマー材料から三次元物体を積層造形する手段に、処理温度TVに冷却された高温ポリマー材料の溶融物を移送する手段を更に備える。特に、この移送手段は、例えば保護ガスを使用して、または機械式ポンプ、例えばギヤポンプもしくは往復ポンプを使用して、過剰圧力を発生させる手段であり得る。特に、積層造形手段は、吐出ユニット、印刷ノズル、または3D印刷ヘッドであり得る。
【0033】
一実施形態では、可塑化手段は、ポリエーテルエーテルケトンポリマー材料、またはポリエーテルエーテルケトンプラスチックを、345℃~400℃の温度、好ましくは360℃~390℃の温度で可塑化するように構成される。それに加えて、冷却手段は、可塑化されたポリエーテルエーテルケトンポリマー材料を305℃~335℃の処理温度に冷却し、好ましくは、それらをこの温度範囲に維持するように構成される。ここでポリエーテルエーテルケトンプラスチックの結晶化温度はDSCによると290℃~300℃の範囲内にある。積層製造手段は、処理温度に冷却され、好ましくはこの温度範囲に維持されたポリエーテルエーテルケトンポリマー材料から三次元物体を積層造形するように、更に構成される。
【0034】
別の実施形態では、本装置は、可塑化された高温ポリマー材料を処理温度TVに冷却するための手段を電子的に調整するように構成された、電子調整ユニットを更に有し、冷却、移送および積層造形工程の間に、可塑化された高温ポリマー材料の温度が好ましくは連続的にモニタされ、可塑化された高温ポリマー材料が常に結晶化温度TKを超える温度を有するように、冷却手段は電子的に調整される。特に、ここでは、モニタは、この目的のために構成されたセンサを用いて、可塑化された高温ポリマー材料の温度を測定し、それらを保存された温度値と比較し、その比較から結論を引き出すことを含むことができ、その結論により、冷却をどのように継続すべきかについての方策の導出、導入、および実施が可能になる。
【0035】
例えば、取得した温度値に応じて、冷却手段の冷却能力を増加させることができ、冷却能力を減少させることができ、または冷却を完全に中止することができる(「冷却能力はゼロに等しい」)。加えて、例えば、可塑化された高温ポリマー材料が急速に冷却されていることが検出された場合、または温度が結晶化温度TKに接近しすぎたと判定された場合、高温ポリマー材料を、例えば可塑化された高温ポリマー材料を加熱するために適切に構成された追加の手段を用いて(再)加熱することができる。
【0036】
上述のように、電子調整ユニットは温度測定を実施するための温度センサを制御するように構成される。電子調整ユニットは更に、比較し、結論付けし、かつ対策を導出、導入、および実施(制御または調整を含む)する、上記の工程を制御するように構成される。この実施形態は、可塑化された高温ポリマー材料が、冷却手段の領域、および/または積層造形手段の領域、特に3D印刷ヘッドの領域において固化するのを特に確実に防止するのに役立つ。
【0037】
溶融温度および結晶化温度は、例えばDSC測定(示差走査熱量測定)によって容易に測定することができる。ピーク温度または開始温度の測定などの一般的な工程は中でも、Praxis der thermischen Analyse von Kunststoffen(Practice of Thermally Analyzing Plastics);Ehrenstein,G.W.;Riedel,G.;Trawiel,P.;Hanser Verlag 1998;ISBN 3-446-21001-6、に見出すことができる。
【0038】
装置の温度限界は、装置の製造者または構成要素の製造者によって指定されるか、または温度負荷下でのテストで決定することができる。ここでは温度限界は、構成要素がいかなる持続的な損傷または持続的な変化も被ることなく、プリンタの全体またはその一部(構成要素)の信頼できる動作が可能となる限界を示すためのものである。
【0039】
以下に、本発明の例示的実施形態を概略図面に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】高温ポリマー材料から三次元物体を積層造形するための本発明による装置の例示的実施形態の側面図である。
【
図2】高温ポリマー材料から三次元物体を積層造形するための本発明による装置の例示的実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、高温ポリマー材料から三次元物体2を積層造形するための装置1を示す。装置1は3Dプリンタであり、高温ポリマー材料を可塑化するための手段3、可塑化された高温ポリマー材料を処理温度に冷却するための手段4、ならびに三次元物体2を積層造形するための手段5を有する。3Dプリンタ1は更に、顆粒容器6と、物体2用の物体キャリア7を有する。
【0042】
図1に示す例示的実施形態では、可塑化手段3は可塑化押出機を含む。高温ポリマー材料は、顆粒容器6内に顆粒の形態で配置される。顆粒容器6は、顆粒が顆粒容器6から可塑化押出機3に自動的に供給され得るように可塑化押出機3と接続され、可塑化押出機3は、可塑化押出機3に供給された顆粒の温度を、顆粒の溶融温度T
Sを超える可塑化温度T
Pまで上昇させ、それにより顆粒をポリマー材料溶融物に変換するように構成されている。
【0043】
可塑化押出機3は更に、特に加圧下で、ポリマー材料溶融物を冷却手段4に供給することができる。例えば、冷却手段4は、電子調整ユニット11によって制御可能に冷却され得るチャネル8を備えることができ、ポリマー材料溶融物が可塑化押出機3を出て積層製造手段5の中に入る際に、ポリマー材料溶融物はチャネル8を通って導かれる。ポリマー材料溶融物がチャネル8を流れるにつれて、ポリマー材料溶融物の温度を、高温ポリマー材料の結晶化温度TKを超え、かつ高温ポリマー材料の溶融温度TSを下回る処理温度TVまで下げることができる。
【0044】
冷却手段は更に、ポリマー材料溶融物のためのリザーバ(貯留部)として機能するキャビティ9を有することができる。チャネル8と同様に、キャビティ9を電子調整ユニット11によって制御可能に冷却することができる。従って、ポリマー材料溶融物がキャビティ9の内部に位置している間に、ポリマー材料溶融物の温度は、高温ポリマー材料の結晶化温度TKを超え、かつ高温ポリマー材料の溶融温度TSを下回る、処理温度TVまで下げることができる。
【0045】
図1に示す例示的実施形態では、三次元物体2を積層造形するための手段(積層製造手段)5は、冷却されたポリマー材料溶融物が冷却手段4から供給される3D印刷ヘッドである。特に、ポリマー材料溶融物は、例えばギヤポンプまたは往復ポンプの形態である移送手段10によって、冷却手段4を通して3D印刷ヘッド5内に移送される。
図1に示す例示的実施形態では、ポンプ10は、冷却手段4のチャネル8の領域内に、例えば可塑化押出機3に面するチャネル8の入口領域に位置している。しかし、ポンプ10のこの位置は必須ではない。ポンプすなわち移送手段10は更に、別の位置に配置することができ、そこから移送手段10は、ポリマー材料溶融物を冷却手段4を通して3D印刷ヘッド5内に、または三次元物体2を積層造形するための手段5内に、例えば可塑化押出機3と冷却手段4との間の領域内に、冷却手段4と3D印刷ヘッド5との間の領域内に、またはキャビティ9と3D印刷ヘッド5との間の領域内に移送することができる。3D印刷ヘッド5は、装置1の温度により影響を受ける重要なシステム構成要素である。3D印刷ヘッド5への熱による損傷を回避するために、3D印刷ヘッド5に供給されるポリマー材料溶融物は、固定された最高温度値または温度限界T
Lを超えるべきではない。この理由から、冷却手段4、またはそのチャネル8、および/またはそのキャビティ9は、ポリマー材料溶融物の温度を、高温ポリマー材料の結晶化温度T
Kを超える処理温度T
Vであって、3D印刷ヘッド5の最高温度値または温度限界T
Lを下回る処理温度T
Vまで下げ、ポリマー材料溶融物はこの温度範囲に維持される。
【0046】
ポリマー材料溶融物はこの温度範囲内ではまだ固化しない。なぜなら、固化工程は、いったん結晶化温度TKに到達した場合に開始するが、結晶化温度は超えているからである。このように、ポリマー材料溶融物を、3D印刷ヘッド5を経て物体キャリア7上に液滴の形態で層状に分配することができ、このようにして三次元物体2が製造または生成される。この目的のために、物体キャリア7は、既知の方法で、3D印刷ヘッド5に対して3つの相互に垂直な方向に移動することができる。特に、物体キャリア7を、それに応じてコンピュータ制御された方法で移動させることができ、製造される三次元物体2のCADデータを制御の目的で使用することができる。
【0047】
冷却手段4の領域内で、かつ/または3D印刷ヘッド5の領域内で、ポリマー材料溶融物が固化することを特に確実に防止できるように、3Dプリンタ1はいくつかの温度センサ12~14を有し、これを、ポリマー材料溶融物の温度を測定または決定できるように、冷却手段4の領域内に、かつ積層製造手段5の領域内に配置することができる。温度センサ12~14は、調整ユニット11と通信可能に接続されている。調整ユニット11は、測定された温度値を記録するように温度センサに命令することができる。代替として、温度センサ12~14が単独で温度測定を実行するように構成することもできる。温度測定は冷却、移送、および積層造形工程中に、好ましくは連続的に行われる。
【0048】
温度センサ12~14は測定した温度値を調整ユニット11に送信する。調整ユニット11は、基準温度および/または基準温度域を取り出して、それを温度センサ12~14によって取得された温度値と比較することができる。この比較に基づいて、調整ユニット11は、冷却目的のために冷却手段4をどのように調整し続けるかを決定する。例えば、調整ユニット11は、対応する温度調整用の割当て、または温度域調整用の割当てに基づいて、この決定に至ることができる。いずれの場合も調整ユニット11は、ポリマー材料溶融物が常に結晶化温度TKより高い温度を有するように、冷却目的で冷却手段4を調整する。同様に、ポリマー材料溶融物が結晶化温度TKに近すぎるか、または過度に急速に冷却していると調整ユニットが判断した場合は、冷却手段4もポリマー材料溶融物を加熱するように構成することができる。上述の加熱機能を実行するために、3Dプリンタ1はまた、代替として、冷却手段4と同様に調整ユニット11によって調整することができる対応の加熱手段を有することができる。
【0049】
可塑化押出機3、冷却手段4、3D印刷ヘッド5、移送手段10、および移動可能な物体キャリア7はそれぞれ、それらの制御または調整のための独自の制御ユニットまたは調整ユニットを、上記の意味の範囲内で備えることができる。代替として、可塑化押出機3、冷却手段4、3D印刷ヘッド5、移送手段10、および移動可能な物体キャリア7を、上記の意味の範囲内で制御または調整するために、中央制御ユニットまたは調整ユニットを設けることもできる。
【0050】
図2は、本発明による方法の例示的実施形態が、
図1による装置1を用いて、どのように実現され得るかを示す。第1のステップ100において、顆粒容器6内に予め用意したPEEK顆粒、例えば、Ensingerからの未改質TECAPEEKを、可塑化押出機3によって、PEEK顆粒の溶融温度T
Sを超える360℃~390℃の可塑化温度T
Pで可塑化して、PEEKプラスチック溶融物(PEEKの融点は341℃にある)にする。
【0051】
引き続き、第2のステップ200において、PEEKプラスチック溶融物を、PEEKの結晶化温度TK(前述のTECAPEEKタイプの場合、DSCによると290℃~300℃)を超え、装置1の3D印刷ヘッド5の温度限界TLを下回る、305℃~335℃の処理温度TVに冷却する。冷却は、プラスチック溶融物を冷却チャネル8および冷却キャビティ9を通して導くことによって実現される。
【0052】
第3のステップ300において、溶融物は次いで3D印刷ヘッドに供給され、三次元物体2は3D印刷ヘッド5によって層状に積層され、物体キャリア7はそれに応じて移動し、3D印刷ヘッド5は冷却されたプラスチック溶融物の液滴を物体キャリア7上に分配する。任意選択の第4ステップ400において、引き続いて、可塑化押出機3、チャネル8、キャビティ9、または3D印刷ヘッド5の内部に位置する残留プラスチック溶融物を、中性顆粒、または中性プラスチックもしくは好適なクリーニング材料(図示せず)で洗い流すことにより除去することができる。