(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】カードリーダ
(51)【国際特許分類】
G06K 7/00 20060101AFI20221018BHJP
G06K 7/08 20060101ALI20221018BHJP
G06K 13/06 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
G06K7/00 030
G06K7/08 040
G06K7/00 004
G06K13/06
(21)【出願番号】P 2021004759
(22)【出願日】2021-01-15
【審査請求日】2021-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 孝夫
【審査官】三橋 竜太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-113123(JP,A)
【文献】特開2007-094605(JP,A)
【文献】特開2001-135386(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/00-7/14
G06K 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICチップが搭載されたカードが挿入されるカード挿入口が形成されるフレームと、
前記カード挿入口から続いて前記フレームの奥側に向かって延在し、前記カードを前記カード挿入口側から奥側へ搬送する搬送路と、
前記搬送路に臨むように設けられ、前記ICチップの外部接触端子と接触する少なくとも1つの接触端子を具備するICデータ読取部と、
を有し、
前記搬送路は、
前記ICデータ読取部が設けられる平面部と、
前記平面部と対向し、前記搬送路の奥側の任意の位置までは前記平面部との距離が大きくなり、前記任意の位置から前記搬送路の奥端までは前記平面部との距離が小さくなる湾曲面部と、
により挟まれた領域で
あり、
前記平面部と前記湾曲面部との少なくとも一方に前記カードを前記湾曲面部側に傾ける力を加える押圧部を有し、
前記押圧部は、
前記カード挿入口側に配置され、
前記接触端子は、
前記カード挿入口とは反対側の奥側に配置される、
カードリーダ。
【請求項2】
前記押圧部は、
前記搬送路を搬送される前記カードの磁気ストライプに当接する磁気ヘッドを有する、
請求項
1に記載のカードリーダ。
【請求項3】
前記押圧部は、
弾性部材を有し、揺動可能に設けられる、
請求項
1又は
2に記載のカードリーダ。
【請求項4】
前記接触端子は、
少なくとも一部が前記平面部から突出するように設けられ、前記搬送路側に付勢される弾性を有する、
請求項1乃至
3のいずれか1項に記載のカードリーダ。
【請求項5】
前記搬送路の奥端には、前記カードの移動を規制する規制部が設けられる、
請求項1乃至
4のいずれか1項に記載のカードリーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードリーダに関し、特に接触型のICチップを搭載するカードに適用されるカードリーダに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、店舗において決済手段として機能するカードによるカード取引を行う際には、カード情報の読み取りや書き込みを行うことができるカードリーダが利用される。磁気ストライプ及び接触型のIC(Integrated Circuit)チップが搭載された複合カードである場合、カードリーダが備える読取装置と、カードにおけるデータの各記憶部分(磁気ストライプ、ICチップ)とが、それぞれ対応して接触する。これにより、カードリーダは、記憶部分に記憶されたデータの読み取りや書き込みを行う。
【0003】
特許文献1には、複数のIC接点バネを有するIC接点ブロックと、磁気ヘッドとを備えており、磁気ヘッドは、カードリーダの手前側部分に配置されるとともに、磁気ヘッドのギャップが下側からカード通過路に臨むように配置され、IC接点ブロックは、カードリーダの奥側部分に配置されるとともに、IC接点バネが上側からカード通過路に臨むように配置されているカードリーダが開示されている。さらに、このカードリーダの、カード通過路よりも下側の部分は、手前側に向かうにしたがって下側へしだいに大きくなり、カードリーダの、カード通過路よりも上側の部分は、奥側に向かうにしたがって上側へしだいに大きくなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のカードリーダでは、カードリーダに挿入されたカードの損傷及び摩耗を低減するために、カードと接触する読取装置(例えば、IC接点バネを有するIC接点ブロック)をカードの読取位置から退避させるための駆動機構を必要とする。このため、カードリーダを構成する部品点数が多くなり、カードリーダが複雑化するとともに大型化するという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、上述した課題を鑑み、簡素な構造でカードの損傷及び摩耗を抑制するカードリーダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態にかかるカードリーダは、ICチップが搭載されたカードが挿入されるカード挿入口が形成されるフレームと、カード挿入口から続いてフレームの奥側に向かって延在し、カードをカード挿入口側から奥側へ搬送する搬送路と、搬送路に臨むように設けられ、ICチップの外部接触端子と接触する少なくとも1つの接触端子を具備するICデータ読取部と、を有し、搬送路は、ICデータ読取部が設けられる平面部と、平面部と対向し、搬送路の奥側の任意の位置までは平面部との距離が大きくなり、任意の位置から搬送路の奥端までは平面部との距離が小さくなる湾曲面部と、により挟まれた領域である。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、簡素な構造でカードの損傷及び摩耗を抑制するカードリーダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1にかかるカードリーダを備えるカード処理端末の外観を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すカードリーダに挿入されるカードの平面図である。
【
図3】
図1に示すカードリーダにカードを挿入する態様を示す斜視図である。
【
図4】
図1に示すカードリーダの概略を示す断面図である。
【
図5】
図1に示すカードリーダの動作を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0011】
なお、以下の説明において、搬送路を搬送されるカードの幅方向をX方向、X方向に直交する鉛直方向であってカードの挿入方向をZ方向、X方向及びZ方向の両方に直交する方向をY方向とする。また、X方向を左右方向、Y方向を前後方向、Z方向を上下方向と表現する場合もある。また、以下の説明において、カードリーダの奥側は、フレームの奥側と同一である。
【0012】
まず、
図1~
図3を参照して、本実施形態にかかるカードリーダを備えるカード処理端末、及び当該カード処理端末を用いて処理可能なカードの構成について説明する。本実施形態では、ユーザが手動でカードを操作して、カード挿入口内にカードを出し入れする手動式のカードリーダが備えられたカード処理端末を例に挙げて説明する。このようなカード処理端末は、例えばPOS(Point Of Sale)端末等の上位装置に接続されて用いられる。
【0013】
図1は、実施の形態1にかかるカードリーダを備えるカード処理端末の外観を示す斜視図である。
図2は、
図1に示すカードリーダに挿入されるカードの平面図である。
図3は、
図1に示すカードリーダにカードを挿入する態様を示す斜視図である。
【0014】
図1に示すように、カード処理端末1は、操作部10及び表示部20からなるカード処理端末本体と、カードリーダ30と、を有する。操作部10は、カード処理端末本体の上面に設けられるテンキー11を有する。テンキー11は、例えば、ユーザによるPIN(Personal Identification Number)コードの入力操作等に用いられる。すなわち、操作部10は、カード取引に必要な入力操作を受け付ける。
【0015】
表示部20は、操作部10とカードリーダ30との間に配置されている。表示部20は、カード処理端末本体の上面に設けられる表示画面21を有する。表示部20は、表示画面21に表示する画面を制御し、各種の操作ガイダンス等を表示画面21に表示する。
【0016】
カードリーダ30は、カード100に記録されたデータの読み取りを行う。また、カードリーダ30は、カード100へのデータの書き込みを行っても良い。以下の説明では、カード100に記憶されたデータの読み取りを行う場合を例にして、カードリーダ30の構成を説明する。
【0017】
本実施形態にかかるカードリーダ30は、フレーム31と、搬送路Lと、ICデータ読取部50と、を有する。フレーム31には、ICチップが搭載されたカード100が挿入されるカード挿入口32が形成される。搬送路Lは、カード挿入口32から続いてフレーム31の奥側に向かって延在し、カード100をカード挿入口32側から奥側へ搬送する。ICデータ読取部50は、搬送路Lに臨むように設けられ、ICチップの外部接触端子102と接触する少なくとも1つの接触端子52を具備する。そして、搬送路Lは、ICデータ読取部50が設けられる平面部60aと、平面部60aに対向する湾曲面部60bと、により挟まれた領域である。湾曲面部60bは、搬送路Lの奥側の任意の位置までは平面部60aとの距離Dが大きくなり、任意の位置から搬送路Lの奥端までは平面部60aとの距離Dが小さくなるように形成される。
【0018】
以下に、カードリーダ30の詳細を説明する。カードリーダ30は、フレーム31と、カード挿入口32と、を有する。フレーム31は、内部にカードリーダ30の各構成要素を格納する筐体である。フレーム31の上端側の一部分には、ユーザによるカード100の挿抜が容易になるように、Z方向に切り欠かれた切欠部33が形成される。切欠部33は、Y方向から見たときの形状が略U字形状を有し、フレーム31の上端からZ方向の下方のフレーム31の奥側に向かって切り欠かれるように形成されている。また、X方向において、フレーム31のおよそ中間位置に切欠部33が形成されている。X方向における切欠部33の両側には、右側突出部31aと左側突出部31bとが形成されている。
【0019】
フレーム31の上端には、当該上端の形状に沿ってX方向に延在するスリット形状のカード挿入口32が形成される。また、フレーム31の内部には、カード挿入口32から続いて搬送路Lが形成されている。カード挿入口32は、カードリーダ30の外部と搬送路Lとを連通し、カードリーダ30内にカード100を受け入れる、又はカードリーダ30内からカード100を排出するための開口である。本実施形態では、カード挿入口32はZ方向の上方に向かって開口している。
【0020】
続いて、上記のカード処理端末1を用いて処理可能なカード100について説明する。
図2に示すカード100は、磁気ストライプ101及びICチップが搭載された扁平な略矩形状を有する複合カードである。磁気ストライプ101及びICチップには、カード取引に用いる個人情報や取引内容等の各種データが記憶されている。
【0021】
磁気ストライプ101は、カード100の裏面においてカード100の長さ方向に延在する帯状に形成されている。なお、
図2において、カード100の裏面は紙面の奥側の面である。また、磁気ストライプ101は、カード100の幅方向の一端100a側に形成されている。
【0022】
ICチップは、カード100に内蔵されるものである。本実施形態では、カード100に搭載されるICチップは接触型のICチップである。接触型のICチップには、後述するカードリーダ30の接触端子52と接触することで、ICチップとの通信を行うための外部接触端子102が接続されている。外部接触端子102は、カード100の表面において、カード100の長さ方向の一端100b側に形成されている。なお、
図2において、カード100の表面は紙面の手前側の面である。また、100cは、カード100の長さ方向の一端100bと反対側にあるカード100の長さ方向の他端100cである。
【0023】
カード100は、磁気ストライプ101及び接触型のICチップを共に有する複合カードに限定されない。カード100は、磁気ストライプ101又は接触型のICチップのいずれか一方を有するものであってもよい。また、これらに加えて、非接触型のICチップを有していてもよい。そして、磁気ストライプ101は、カード100の表面及び裏面の両面に形成されている場合もある。
【0024】
ユーザは、磁気ストライプ101がカードリーダ30の磁気ヘッド41a、41bと対応するとともに、外部接触端子102がカードリーダ30の接触端子52と対応するように、カード100を所定の向きに向けてカードリーダ30に挿入する。
【0025】
図3に示すように、カード100の挿入時には、カード100は、カード100の長さ方向がZ方向と略一致し、カード100の幅方向がX方向と略一致した状態で、カード100の長さ方向の一端100b側からカード挿入口32を介してカードリーダ30に挿入される。また、カード100は、磁気ストライプ101がカードリーダ30の左側突出部31bを通るように、
図3において、カード100の幅方向の一端100a側が左側になるように配置される。さらに、
図3において、カード100の表面は、Y方向の前側(紙面の手前側)を向いている。なお、
図3における白抜き矢印は、カード挿入時におけるカード100の挿入方向を示している。
【0026】
次に、
図4を参照して、カードリーダ30の内部構造について説明する。
図4は、
図1に示すカードリーダの概略を示す断面図である。
図4は、
図1においてカード処理端末を左側から見た場合のカードリーダ30のみを示すYZ面に沿う断面であり、カードリーダ30の内部に設けられる各構成要素を図示している。
図4において、カード100の磁気ストライプ101は、紙面の手前側にある。カードリーダ30は、フレーム31の内部に、搬送路Lと、押圧部40と、ICデータ読取部50と、を有する。
【0027】
搬送路Lは、カード挿入口32から続いて形成され、フレーム31の奥側であってZ方向の下方に向かって延在する溝である。つまり、搬送路Lの上端はカード挿入口32であり、搬送路Lの下端(奥端)は閉止されている。以下の説明においては、搬送路Lの上端側をカード挿入口32側とし、搬送路Lの下端側を奥側とする。カードリーダ30の使用時において、カードリーダ30に挿入されたカード100は、搬送路Lを奥側に向かって移動する。そして、カード100の長さ方向の一端100bが、搬送路Lを閉止する奥端面部60cに突き当たることにより、カード100の搬送が停止される。この場合、奥端面部60cは、カード100の移動を規制する規制部である。
【0028】
カード100の搬送を停止させる規制部としては、当該奥端面部60cに対して、カード100の長さ方向の一端100b側の端部を収納可能な凹部を設けてもよい。凹部を有する規制部である場合、カード100の長さ方向の一端100b側の端部が凹部に入ることにより、IC読取位置におけるカード100の位置合わせが容易になる。そのため、カード100の外部接触端子102とカードリーダ30の接触端子52との接触効率が向上する。なお、IC読取位置とは、カードリーダ30に挿入されて搬送されたカード100の外部接触端子102にカードリーダ30の接触端子52が適切に接触可能な位置である。
【0029】
また、搬送路Lは、Y方向において対向する平面部60a及び湾曲面部60bにより挟まれた領域である。搬送路LのX方向における両端は閉止されている。平面部60aは、XZ平面と平行に形成される面である。平面部60aと対向する湾曲面部60bは、搬送路Lが奥側に向かうほど拡がるように、平面部60aから離れるY方向に滑らかに湾曲する面である。
【0030】
すなわち、平面部60aと湾曲面部60bとの間の距離であって、搬送路LのY方向の距離Dは、カード挿入口32から搬送路Lの奥側に向かって任意の位置まで漸次大きくなる。さらに、距離Dは、当該任意の位置から搬送路Lの奥端に至るまでは漸次小さくなる。距離Dは、任意の位置において最大となる。
【0031】
本実施形態において、任意の位置は、例えば、搬送路LのZ方向において接触端子52に対応する位置付近であることが好ましい。このような構成により、搬送路Lにはカード100が接触端子52から離れる方向に移動することができる拡張された空間が形成される。これにより、カード100がIC読取位置に到達するまでに、カード100の外部接触端子102がカードリーダ30のいずれかの部分と不必要に接触することを抑制できる。
【0032】
ここで、Y方向において搬送路Lにより隔てられたカードリーダ30の両側の部分を前側壁部30a及び後側壁部30bとする。前側壁部30aは、平面部60aを含み、カードリーダ30のうち搬送路LよりY方向の前側の部分である。後側壁部30bは、湾曲面部60bを含み、カードリーダ30のうち搬送路LよりY方向の後ろ側の部分である。
【0033】
押圧部40は、搬送路Lのカード挿入口32側のカード挿入口32近傍であって、カードリーダ30の上端部に配置されている。押圧部40は、磁気ヘッド41a、41bと、弾性部材42a、42bと、ホルダ43a、43bと、を有する。本実施形態では、押圧部40の磁気ヘッド41a、41bをカード100の磁気ストライプ101と接触させるために、押圧部40は左側突出部31bに配置されている。
【0034】
磁気ヘッド41aと磁気ヘッド41bとは、互いに対向するように配置される。磁気ヘッド41aは、搬送路Lに臨むように、平面部60a側であって前側壁部30aに設けられる。具体的には、磁気ヘッド41aの磁気ギャップがY方向の前側から搬送路Lに臨むように配置されている。磁気ヘッド41aは、弾性部材42aを介して、前側壁部30aのフレーム31に固定されるホルダ43aにより支持される。
【0035】
磁気ヘッド41bは、搬送路Lに臨むように、湾曲面部60b側であって後側壁部30bに設けられる。具体的には、磁気ヘッド41bの磁気ギャップがY方向の後ろ側から搬送路Lに臨むように配置されている。磁気ヘッド41bは、弾性部材42bを介して、後側壁部30bのフレーム31に固定されるホルダ43bにより支持される。磁気ヘッド41a、41bは、搬送路Lを移動中のカード100の磁気ストライプ101に対応する側にある磁気ギャップが当接して、磁気ストライプ101に記憶されたデータの読み取りを行う。
【0036】
各弾性部材42a、42bは、それぞれ磁気ヘッド41a、41bを搬送路Lに向けて付勢している。また、磁気ヘッド41a、41bは、カード100の移動に追従して揺動可能に設けられている。弾性部材42a、42bとしては、例えば、コイルばねを用いることができる。このような構成により、磁気ヘッド41a、41bは、搬送路L内を移動するカード100を挟み込む。これとともに、磁気ヘッド41bが磁気ストライプ101に対して摺接するため、カードリーダ30は磁気ストライプ101に記憶されたデータを確実に読み取ることができる。
【0037】
また、磁気ヘッド41a、41bは、互いの間の中心軸がZ方向に対して所定角度傾いて配置されることが好ましい。所定角度は、磁気ヘッド41a、41bが配置される位置に対応する湾曲面部60bの傾斜角度を考慮して設定すればよい。例えば、所定角度を湾曲面部60bの当該傾斜角度と略同一とするか、当該傾斜角度よりZ方向に対する傾きを僅かに大きく設定する。
【0038】
例えば、Y方向に対向配置した磁気ヘッド41aと磁気ヘッド41bとの間のZ方向に沿う中心軸を、磁気ヘッド41bが磁気ヘッド41aよりもカード挿入口32側に配置されるようにY方向に所定角度傾けた状態でカードリーダに対して配置する。このように配置された押圧部40は、搬送路L内を移動するカード100が磁気ヘッド41aと磁気ヘッド41bとの間を通過する際に、カード100に対してカード100を湾曲面部60b側に傾ける力を加える。すなわち、押圧部40は、カード100の長さ方向の一端100bが湾曲面部60bに向かうように、カード100を傾ける。
【0039】
さらに、磁気ヘッド41a、41bのZ方向における配設位置は、カード100がIC読取位置に到達した際に、磁気ヘッド41a、41bがカード100の長さ方向の他端100c側の端部を挟んだ状態を維持できるように設計されることが好ましい。
【0040】
ただし、カードリーダ30で読み取るカード100が磁気ストライプ101を搭載していないICカードの場合、押圧部40は磁気ヘッド41a、41bを備えていなくても良い。この場合、押圧部40は、搬送路Lに臨んで配置される押圧ピン等で代替することができる。磁気ヘッド41a、41bを備えない場合の押圧部40は、カード100の長さ方向の一端100bが湾曲面部60bに沿って移動するカード100の移動方向を確保できるように設けられれば良い。また、カード100に対してカード100を湾曲面部60b側に傾ける力を加えるように、カードの移動方向を確保可能な構成であれば良い。
【0041】
このようなカード100の移動方向を確保できれば、押圧部40は、平面部60aと湾曲面部60bとのいずれか一方のみに設けられる構成であっても良い。なお、押圧部40がカード100を傾ける力は、カード100が摩耗しない程度の力であることが好ましい。
【0042】
ICデータ読取部50は、平面部60a側であって前側壁部30aに設けられる。また、ICデータ読取部50は、Z方向において磁気ヘッド41a、41bと離間して配置されるとともに、搬送路Lの奥側であって、磁気ヘッド41a、41bよりもZ方向の下側(奥側)に配置されている。ICデータ読取部50は、接触端子52が、カード100の表面に形成される外部接触端子102と当接して電気的に接続することにより、ICチップとの間でデータ通信を行って、ICチップに記憶されたデータを読み取る。
【0043】
接触端子52は、カード100の外部接触端子102に対応するように、複数の端子により構成される。接触端子52は、弾性を有し、搬送路L側(Y方向の後ろ側)に付勢されている。接触端子52としては、例えば、カード100に接触する先端部が、滑らかな半球状に形成されるコンタクトピンが用いられる。接触端子52は、カード100に接触する先端部が搬送路Lに臨むように設けられる。接触端子52は、先端側の少なくとも一部が平面部60aから搬送路Lに突出している。
【0044】
カードリーダ30使用時に、接触端子52は、搬送路Lを搬送されてIC読取位置に到達したカード100と当接する。カードリーダ30において、接触端子52とカード100とが接触した際には、カード100の押圧により接触端子52が弾性変形して搬送路Lと反対側(Y方向の前側)に撓む。接触端子52が弾性変形することにより、接触端子52とカード100の外部接触端子102とがより確実に接触することができる。接触端子52は、IC読取位置に到達したカード100の外部接触端子102に接触可能な位置に設けられている。
【0045】
次に、
図5~
図9を参照して、上記の構成を有するカードリーダ30の使用時における動作フローを説明する。
図5は、
図1に示すカードリーダの動作を説明する断面図である。
図6は、
図5に続く動作を説明する断面図である。
図7は、
図6に続く動作を説明する断面図である。
図8は、
図7に続く動作を説明する断面図である。
図9は、
図8に続く動作を説明する断面図である。なお、
図5~
図9は、
図4に示したカードリーダ30の断面と同じ断面を示している。
【0046】
まず、
図5に示すように、所定の向きに向けたカード100がカードリーダ30のカード挿入口32から挿入される。カードリーダ30の外部においては、カード100の長さ方向がZ方向と略一致した姿勢で、カードリーダ30へのカード100の挿入が開始される。カード100はカードリーダ30の搬送路L内に進入し、搬送路Lの奥側へ進行する。そして、カード100の磁気ストライプ101に磁気ヘッド41bが当接することにより、磁気ストライプ101に記憶されたデータの読み取りが開始される。
【0047】
また、カード100が磁気ヘッド41aと磁気ヘッド41bとの間を通過することに伴って、カード100に対してカード100を湾曲面部60b側に傾ける力が加わる。これにより、カード100の長さ方向の一端100bが湾曲面部60bに向かうように、カード100の長さ方向はZ方向からY方向に僅かに傾く。このようにカード100が傾くと、カード100の外部接触端子102は、カードリーダ30の接触端子52から離れる方向に移動する。
【0048】
続いて、
図6に示すように、カード100は、磁気ヘッド41a、41bにより挟み込まれて傾いた状態で、搬送路Lの奥側へさらに進行する。そして、カード100の長さ方向の一端100bが湾曲面部60bに突き当たる。
【0049】
続いて、
図7に示すように、カード100はカード100の長さ方向の一端100bが湾曲面部60bに当接しながら搬送路Lの奥側へ進行する。距離Dが最大となる任意の位置にカード100が至るまでの間、カード100の外部接触端子102とカードリーダ30の接触端子52とは、Y方向において互いに接触しない程度に離れた状態で、Z方向においては互いに徐々に接近する。
【0050】
図8に示すように、任意の位置を通過したカード100は、引き続き、カード100の長さ方向の一端100bが湾曲面部60bに当接しながら搬送路Lの奥側へ進行する。任意の位置から搬送路Lの奥端に至るまでの間、カード100の外部接触端子102とカードリーダ30の接触端子52とは、Y方向及びZ方向において互いに徐々に接近する。カード100が搬送路Lの奥端に近づくと、カード100の外部接触端子102とカードリーダ30の接触端子52とが接触をはじめる。
【0051】
最終的には、
図9に示すように、カード100の長さ方向の一端100bが奥端面部60cに突き当たることにより、カード100の搬送が停止される。このように、カード100がIC読取位置に到達し、ICデータ読取部50によりICチップに記憶されたデータの読み取りが行われる。
【0052】
この時、カード100の長さ方向の他端100c側にある端部は、磁気ヘッド41a、41bにより挟まれたまま支持されている。接触端子52は搬送路L側に付勢されているため、カード100を接触端子52から離れる方向に押圧する。一方で、カード100は磁気ヘッド41a、41b及び奥端面部60cにより支持されており、接触端子52の付勢力より大きな力で接触端子52を押圧することができる。その結果、IC読取位置においてカード100の外部接触端子102と当接した接触端子52は弾性変形する。したがって、ICデータ読取部50は、確実にICチップに記憶されたデータを読み取ることができる。
【0053】
上記のフローにより、カードリーダ30に挿入されたカード100は、搬送路L内において、カード100の長さ方向の一端100bが湾曲面部60bに当接しながら、湾曲面部60bの形状に沿って移動する。したがって、カード100が搬送路L内を移動するカード搬送時におけるカード100の移動方向は、Z方向からY方向に傾いた後、IC読取位置において再びZ方向に戻る。カードリーダ30からカード100を抜き取る場合は、カード100は上記のフローとは逆のフローで動作する。
【0054】
以上説明したように、本実施形態にかかるカードリーダ30は、カードリーダ30に挿入されたカード100をカードリーダ30の奥側へ搬送する搬送路Lを有する。搬送路Lは、互いに対向する平面部60a及び湾曲面部60bにより挟まれた領域である。また、平面部60aには、搬送路Lに臨むように、ICチップに記憶されたデータを読み取るICデータ読取部50の接触端子52が設けられる。搬送路Lの形状は、接触端子52に対応する位置付近で最も拡がるように構成される。搬送路Lにはカード100が接触端子52から離れる方向に移動することができる拡張された空間が形成される。
【0055】
したがって、本実施形態にかかるカードリーダ30によれば、搬送路L内を移動するカード100と搬送路Lに突出する接触端子52との接触機会が低減される。そのため、カード100と接触端子52との不必要な接触又は擦れ等によって発生するカード100の損傷及び摩耗を抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態にかかるカードリーダ30は、カード100を傾けるための押圧部40を有する。カードリーダに挿入されて傾けられたカード100は、カード100の挿入方向の先端が湾曲面部60bのカーブに沿って搬送路L内を移動する。これにより、搬送路L内におけるカード100の移動方向が制御される。さらに、押圧部40に磁気ヘッド41a、41bを備えることで、カード100を傾ける機能を磁気ヘッド41a、41bにより担うことができる。
【0057】
したがって、本実施形態にかかるカードリーダ30によれば、例えば、カード挿入時にカード100を不適切な姿勢で挿入した場合でも、押圧部40によりカード100の移動方向が矯正されるため、カード100は湾曲面部60bに沿って移動することができる。これにより、カード100がIC読取位置に到達するまでの間に、カード100が接触端子52に接触することを確実に低減することが可能である。そのため、カード100と接触端子52との不必要な接触又は擦れ等によって発生するカード100の損傷及び摩耗を抑制することができる。
【0058】
また、上記の構成によれば、カード100の搬送中にカード100と接触する可能性のある接触端子52等の部材を搬送路Lから退避させるための駆動機構を必要とせず、接触端子52等の部材を退避させる場合と同様の効果が得られる。したがって、カードリーダを構成する部品点数を減らすことができる。そのため、装置の構造を簡素化し、カードリーダの小型化を実現できる。
【0059】
他の実施形態
本発明は、上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、カードリーダ30は、カード100を自動で搬送するカード搬送機構を有する自動式のカードリーダであっても良い。
【0060】
また、その他の形態として、カードリーダ30は、押圧部40を備えない構成であっても良い。カードリーダ30の搬送路Lは、カードリーダ30の接触端子52が配置される位置において十分に広い空間を有する。そのため、カード100の外部接触端子102がカードリーダ30の接触端子52に擦れないように、カード100の外部接触端子102がカードリーダ30の接触端子52から離れる方向に移動することが可能である。したがって、単に直線状に延在する搬送路Lと比較して、カード100の移動に伴ってカード100の外部接触端子102とカードリーダ30の接触端子52とが擦れて生じる摩擦を低減することができる。
【0061】
さらに他の形態として、上記実施形態では、カード100の挿入方向が鉛直方向と略一致し、搬送路Lが鉛直方向に延在するように配置されたカードリーダ30について説明したが、これに限らない。例えば、カードリーダ30は、カード100の挿入方向が水平方向と略一致し、搬送路Lが水平方向に延在する構成を有していても良い。この場合、平面部60aに対して湾曲面部60bを鉛直方向の下側に配置することにより、重力によってカード100の挿入方向の先端を湾曲面部60bに向かうように誘導することもできる。
【符号の説明】
【0062】
1 カード処理端末
10 操作部
11 テンキー
20 表示部
21 表示画面
30 カードリーダ
30a 前側壁部
30b 後側壁部
31 フレーム
31a 右側突出部
31b 左側突出部
32 カード挿入口
33 切欠部
40 押圧部
41a、41b 磁気ヘッド
42a、42b 弾性部材
43a、43b ホルダ
50 ICデータ読取部
52 接触端子
60a 平面部
60b 湾曲面部
60c 奥端面部
100 カード
100a 幅方向の一端
100b 長さ方向の一端
100c 長さ方向の他端
101 磁気ストライプ
102 外部接触端子
D 距離
L 搬送路