(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】無線親機、無線親機の制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 72/12 20090101AFI20221018BHJP
H04W 72/04 20090101ALI20221018BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20221018BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20221018BHJP
【FI】
H04W72/12
H04W72/04 133
H04W16/28 130
H04W84/12
(21)【出願番号】P 2021192844
(22)【出願日】2021-11-29
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 繁松
【審査官】松野 吉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-201472(JP,A)
【文献】特開2018-142896(JP,A)
【文献】国際公開第2013/046502(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの入力情報に基づいて、自機に接続される複数の無線子機との通信方式にOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)方式を優先的に選択する設定をするOFDMA優先設定部と、
前記OFDMA方式を優先的に選択する設定がなされている場合、自機に接続される前記複数の無線子機のうち通信対象の無線子機の台数を検出する接続子機検出部と、
前記通信対象の無線子機の台数が所定の台数より多い場合、前記通信対象の無線子機とそれぞれ送受信するデータ量を前記通信対象の無線子機間で平均化して、前記通信対象の無線子機とOFDMA通信する制御を実行するOFDMA制御部と、を備える、
無線親機。
【請求項2】
NTP(Network Time Protocol)を用いて前記通信対象の無線子機と時刻を同期し、前記通信対象の無線子機に送信するデータの送信時刻差を前記通信対象の無線子機間で低減する送信データ時刻制御部と、
NTPを用いて前記通信対象の無線子機と時刻を同期し、前記通信対象の無線子機から受信するデータの受信時刻差を前記通信対象の無線子機間で低減する受信データ時刻制御部と、をさらに備える、
請求項1に記載の無線親機。
【請求項3】
前記所定の台数は、
前記無線親機がMU-MIMO(Multi-User MIMO)方式で同時に通信できる無線子機の数である、
請求項1又は2に記載の無線親機。
【請求項4】
自機に搭載されたGUI(Graphical User Interface)からのユーザの入力情報に基づいて、自機に接続される前記複数の無線子機との通信方式にOFDMA方式を優先的に選択する設定をする、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の無線親機。
【請求項5】
前記接続子機検出部は、
自機に接続される前記複数の無線子機のうち、
OFDMA通信をサポートし、
自機との通信に使用する周波数と自機との通信に使用するチャネルと自機との通信に使用する暗号化方式とが一致するものを前記通信対象の無線子機とする、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の無線親機。
【請求項6】
前記OFDMA制御部は、
前記OFDMA方式を優先的に選択する設定がなされていない場合、自機に接続される前記複数の無線子機とMU-MIMO方式を用いて通信する制御を行う、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の無線親機。
【請求項7】
前記OFDMA制御部は、
前記OFDMA方式を優先的に選択する設定がなされていない場合、自機に接続される前記複数の無線子機とOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)変調方式を用いて通信する制御を行う、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の無線親機。
【請求項8】
前記OFDMA制御部は、
前記通信対象の無線子機の台数が所定の台数以下の場合、自機に接続される前記複数の無線子機とMU-MIMO方式を用いて通信する制御を行う、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の無線親機。
【請求項9】
ユーザの入力情報に基づいて、自機に接続される複数の無線子機との通信方式にOFDMA方式を優先的に選択する設定をし、
前記OFDMA方式を優先的に選択する設定がなされている場合、自機に接続される前記複数の無線子機のうち通信対象の無線子機の台数を検出し、
前記通信対象の無線子機の台数が所定の台数より多い場合、前記通信対象の無線子機とそれぞれ送受信するデータ量を前記通信対象の無線子機間で平均化して、前記通信対象の無線子機とOFDMA通信する制御を実行する、
無線親機の制御方法。
【請求項10】
ユーザの入力情報に基づいて、自機に接続される複数の無線子機との通信方式にOFDMA方式を優先的に選択する設定をする処理と、
前記OFDMA方式を優先的に選択する設定がなされている場合、自機に接続される前記複数の無線子機のうち通信対象の無線子機の台数を検出する処理と、
前記通信対象の無線子機の台数が所定の台数より多い場合、前記通信対象の無線子機とそれぞれ送受信するデータ量を前記通信対象の無線子機間で平均化して、前記通信対象の無線子機とOFDMA通信する制御を実行する処理と、を無線親機に実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線親機、無線親機の制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線親機と当該無線親機に接続される無線子機の通信には、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)変調方式やOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access:直交周波数分割多元接続)方式(例えば特許文献1を参照)が用いられる。
【0003】
例えば学校での授業や対戦ゲームなど、同じ無線親機に接続する無線子機が所定の数以上存在する。その場合、OFDM変調方式を用いた通信では、OFDMA方式を用いた場合と比較して、無線親機と無線子機との通信完了時間が長くなると同時に、無線子機同士の無線親機への送信信号の衝突による無線子機のデータの再送による遅延が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に係る背景技術では、無線親機に無線子機が所定の台数以上接続する場合でも、OFDM変調方式やOFDMA方式などの通信方式を選択することができない。そのため、無線子機との通信完了時間の低減や遅延発生の抑制ができないという課題があった。
【0006】
本開示は、そのような課題を鑑みることによって、無線子機との通信完了時間の低減や遅延発生の抑制ができる無線親機、無線親機の制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の無線親機は、
ユーザの入力情報に基づいて、自機に接続される複数の無線子機との通信方式にOFDMA方式を優先的に選択する設定をするOFDMA優先設定部と、
前記OFDMA方式を優先的に選択する設定がなされている場合、自機に接続される前記複数の無線子機のうち通信対象の無線子機の台数を検出する接続子機検出部と、
前記通信対象の無線子機の台数が所定の台数より多い場合、前記通信対象の無線子機とそれぞれ送受信するデータ量を前記通信対象の無線子機間で平均化して、前記通信対象の無線子機とOFDMA通信する制御を実行するOFDMA制御部と、を備える。
【0008】
本開示の無線親機の制御方法は、
ユーザの入力情報に基づいて、自機に接続される複数の無線子機との通信方式にOFDMA方式を優先的に選択する設定をし、
前記OFDMA方式を優先的に選択する設定がなされている場合、自機に接続される前記複数の無線子機のうち通信対象の無線子機の台数を検出し、
前記通信対象の無線子機の台数が所定の台数より多い場合、前記通信対象の無線子機とそれぞれ送受信するデータ量を前記通信対象の無線子機間で平均化して、前記通信対象の無線子機とOFDMA通信する制御を実行する。
【0009】
本開示のプログラムは、
ユーザの入力情報に基づいて、自機に接続される複数の無線子機との通信方式にOFDMA方式を優先的に選択する設定をする処理と、
前記OFDMA方式を優先的に選択する設定がなされている場合、自機に接続される前記複数の無線子機のうち通信対象の無線子機の台数を検出する処理と、
前記通信対象の無線子機の台数が所定の台数より多い場合、前記通信対象の無線子機とそれぞれ送受信するデータ量を前記通信対象の無線子機間で平均化して、前記通信対象の無線子機とOFDMA通信する制御を実行する処理と、を無線親機に実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によって、無線子機との通信完了時間の低減や遅延発生の抑制ができる無線親機、無線親機の制御方法及びプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係る無線親機を示すブロック図である。
【
図2】第2の実施形態に係る通信システムの構成を示す図である。
【
図3】第2の実施形態に係る無線親機の構成を示すブロック図である。
【
図4】第2の実施形態に係る通信システムの概略的な動作を示すシーケンス図である。
【
図5】第2の実施形態に係る無線親機の動作を示すフローチャートである。
【
図6】第2の実施形態に係る無線親機におけるOFDMA方式でのグループ化対象の無線子機への送受信データの割り付け方法を示す図である。
【
図7】第2の実施形態に係る無線親機におけるOFDMA方式での無線子機とのデータ通信手順を示す図である。
【
図8】比較例に係る無線親機におけるOFDM変調方式での無線子機への送受信データの割り付け方法を示す図である。
【
図9】比較例に係る無線親機におけるOFDM変調方式での無線子機とのデータ通信手順を示す図である。
【
図10】比較例に係る無線親機におけるOFDM変調方式での無線子機とのデータ通信手順において信号の衝突が発生した場合の一例を示す図である。
【
図11】第3の実施形態に係る通信システムの構成を示す図である。
【
図12】第3の実施形態に係る無線親機の構成を示すブロック図である。
【
図13】本実施形態に係るコンピュータのハードウェア構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図面において、同一要素には同一の符号が付されており、説明の明確化のため、必要に応じて重複説明は省略する。
【0013】
(第1の実施形態)
まず、
図1を用いて、第1の実施形態に係る無線親機1Aの構成を説明する。
無線親機1Aは、OFDMA優先設定部13、接続子機検出部126及びOFDMA制御部14を備える。
【0014】
OFDMA優先設定部13は、ユーザの入力情報に基づいて、自機に接続される複数の無線子機との通信方式にOFDMA方式を優先的に選択する設定をする。
接続子機検出部126は、OFDMA方式を優先的に選択する設定がなされている場合、自機に接続される複数の無線子機のうち通信対象の無線子機の台数を検出する。
OFDMA制御部14は、通信対象の無線子機の台数が所定の台数より多い場合、通信対象の無線子機とそれぞれ送受信するデータ量を通信対象の無線子機間で平均化して、通信対象の無線子機とOFDMA通信する制御を実行する。
【0015】
上述の説明より、第1の実施形態に係る無線親機1Aは、無線親機1Aに無線子機が所定の台数以上接続する場合、OFDMA方式の通信方式を選択することができる。そのため、無線親機1Aは、無線子機との通信完了時間の低減や遅延発生の抑制ができる。
【0016】
(第2の実施形態)
まず、
図2を用いて、第2の実施形態に係る通信システム200の構成を説明する。
通信システム200は、無線親機1、無線子機2(無線子機21~無線子機2N)及びホームゲートウェイ3を備える。
【0017】
無線親機1は、IEEE802.11axの規格をサポートした無線LAN(Wireless Local Area Network)機器である。なお、無線親機1の規格は、本実施形態ではIEEE802.11axであるが、IEEE802.11axに限られず、例えばIEEE802.11acであってもよい。
【0018】
無線親機1は、無線電波の到達範囲内に無線子機2(無線子機21~無線子機2N)とそれぞれ無線接続されるインフラストラクチャモードの無線ネットワークNを構成し、接続される各無線子機2と通信する。無線親機1は、無線子機2との通信方式として、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access:直交周波数分割多元接続)方式をサポートしている。また、無線親機1は、無線子機2との通信方式として、MU-MIMO(マルチユーザーMIMO)方式とOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)変調方式との少なくとも1つをサポートしている。
【0019】
無線子機2(無線子機21~無線子機2N)は、例えばPC(Personal Computer)などの固定端末やスマートフォンやタブレットなどの移動端末であり、それぞれ無線親機1と通信する。
ホームゲートウェイ3は、無線親機1とインターネット4との接続を中継する。
【0020】
続いて、
図3を用いて、第2の実施形態に係る無線親機1の構成を説明する。無線親機1は、WANインターフェイス11、無線終端部12、OFDMA優先設定部13、OFDMA制御部14を備える。
WANインターフェイス11は、インターネット4に接続されるWANインターフェイスを終端する機能を有する。
【0021】
無線終端部12は、WANインターフェイス11を経由して、ホームゲートウェイ3等の上位装置からのデータを受信する。また、無線終端部12は、無線子機2に接続される無線インターフェイスを終端する機能を有する。
【0022】
具体的には、無線終端部12は、送信データ平均部121、受信データ平均部122、無線制御部123、無線送信部124、無線受信部125及び接続子機検出部126を備える。
【0023】
送信データ平均部121は、OFDMA方式で無線子機2と通信する場合、無線子機2に送信する送信データ量を通信対象の無線子機2間で平均化する。受信データ平均部122は、OFDMA方式で無線子機2と通信する場合、無線子機2から受信する受信データの無線子機2間の平均化を戻す。
【0024】
無線制御部123は、無線子機2に送信する送信データの無線変調方式を制御する。また、無線制御部123は、無線子機2から受信された受信データの無線変調方式を制御する。
【0025】
無線送信部124は、無線制御部123によって変調された送信データを無線子機2に送信する。無線受信部125は、無線子機2からデータを受信し、無線制御部123に受信された受信データを供給する。
【0026】
接続子機検出部126は、後述するOFDMA優先選択設定が有効である場合、無線親機1に接続される無線子機2のうち通信対象となる無線子機2をグループ化する。具体的には、接続子機検出部126は、無線親機1と接続される無線子機2の各種情報から、OFDMA通信をサポートするか否かの情報、無線親機1との通信に使用する周波数の情報、無線親機1との通信に使用するチャネルの情報及び無線親機1との通信に使用する暗号化方式の情報(グループ接続情報)を取得する。そして、接続子機検出部126は、OFDMA通信をサポートし、無線親機1との通信に使用する周波数と無線親機1との通信に使用するチャネルと無線親機1との通信に使用する暗号化方式とが一致するものをグループ化する。
【0027】
そして、接続子機検出部126は、グループ化対象の無線子機2の台数を検出する。接続子機検出部126は、検出されたグループ化対象の無線子機2の台数をグループ接続情報に含め、OFDMA制御部14に供給する。
【0028】
OFDMA優先設定部13は、ユーザの入力情報に基づいて、無線親機1に接続される無線子機2との通信方式にOFDMA方式を優先的に選択する設定(以下、OFDMA優先選択設定)をする機能を有する。OFDMA優先選択設定は、ユーザのGUI(Graphical User Interface)における操作に従って有効化または無効化される。GUIは、無線親機1に搭載されていることが望ましいが、無線親機1に限られず、例えば無線親機1と接続する外部機器に搭載されていてもよい。
【0029】
OFDMA制御部14は、OFDMA優先選択設定が有効である場合、接続子機検出部126から取得した無線子機2のグループ接続情報に基づいて、次の判定を実施する。OFDMA制御部14は、グループ化対象の無線子機2の台数が所定の台数より多いか否かを判定する。所定の台数とは、例えば、無線親機1がMU-MIMO方式で同時に通信できる無線子機2の台数である。
【0030】
そして、OFDMA制御部14は、グループ化対象の無線子機2の台数が所定の台数より多いと判定した場合、グループ化対象の無線子機2へのサブキャリア周波数の割り付けやトリガフレーム等のスケジューラを制御する。ここで、OFDMA制御部14は、グループ化対象の無線子機2に対して一定間隔のサブキャリア周波数を割り付ける。そして、OFDMA制御部14は、グループ化対象の無線子機2とそれぞれ送受信するデータ量をグループ化対象の無線子機2間で平均化させて、グループ化対象の無線子機2とOFDMA通信する制御を実行する。
【0031】
一方、OFDMA制御部14は、OFDMA優先選択設定が無効である場合、MU-MIMO方式又はOFDM変調方式によって接続される無線子機2と通信する。また、OFDMA制御部14は、グループ化対象の無線子機2の台数が所定の台数以下と判定した場合、MU-MIMO方式又はOFDM変調方式によって接続される無線子機2と通信する。
【0032】
続いて、
図4を用いて、第2の実施形態に係る無線親機1における無線子機2との通信の概略的な動作を説明する。
【0033】
まず、無線子機2は、接続可能な無線親機1のビーコン情報をスキャンニングし、使用チャネルやSSID、暗号化方式等の相互確認をとる(ステップS101)。次に、無線子機2は、認証(ステップS102)、及びアソシエーション(ステップS103)を経て無線接続を無線親機1と確立する。
【0034】
次に、無線親機1は、無線子機2への下りデータ通信を行う。詳細には、無線親機1は、無線子機2に下りDataを送信し、無線子機2から応答(ACK)受信することによって、無線子機2とデータ通信を行う。また、無線子機2は、無線親機1への上りデータ通信を行う。詳細には、無線子機2は、無線親機1に上りDataを送信し、無線親機1から応答(ACK)受信することによって、無線親機1とデータ通信を行う。そうすることによって、無線親機1は、無線子機2とデータ送受信を実施する(ステップS104)。
【0035】
続いて、
図5を用いて、第2の実施形態に係る無線親機1における無線子機2との通信の具体的な動作を説明する。
まず、無線親機1は、無線子機2(無線子機21~無線子機2N)との接続をそれぞれ確立する(ステップS201)。無線親機1が無線子機2と接続を確立する方法は、
図4のステップS101~ステップS103に示される。この際、無線親機1は、接続を確立した無線子機2から、無線子機2ごとの子機情報を取得する。子機情報には、無線子機2のIEEE802.11axのサポートの有無の情報(サポート情報)やOFDMA方式及びMU-MIMO方式のサポート情報が含まれる。子機情報には、無線子機2のOFDM変調方式のサポート情報が含まれていてもよい。また、子機情報には、無線子機2の無線親機1との通信に使用する周波数の情報、チャネルの情報及び暗号化方式の情報が含まれる。
【0036】
次に、無線親機1のOFDMA制御部14は、無線親機1におけるOFDMA優先選択設定が有効であるか否かを判定する(ステップS202)。ここで、OFDMA優先設定部13は、ユーザの入力情報に基づいて、無線親機1に接続される無線子機2との通信方式にOFDMA方式を優先的に選択するOFDMA優先選択設定をする。OFDMA優先選択設定は、ユーザのGUIにおける操作に従って有効化または無効化される。
【0037】
次に、OFDMA制御部14は、無線親機1におけるOFDMA優先選択設定が無効であると判定した場合(ステップS202のNO)、OFDM変調方式又はMU-MIMO方式で接続される無線子機2とそれぞれ通信する(ステップS209)。OFDMA制御部14がOFDM変調方式とMU-MIMO方式とのいずれの通信方式を選択するかは、接続される無線子機2のケイパビリティと無線親機1の設計ポリシーに従って予め決められる。例えば、OFDMA制御部14は、接続される無線子機2が通信方式をサポートしているか否かに従ってOFDM変調方式又はMU-MIMO方式を選択する。また、OFDMA制御部14は、子機が両通信方式をサポートしている場合、接続される無線子機2との通信に用いられるパケット長などの通信状況や接続される無線子機2の数等のパラメータに従ってOFDM変調方式又はMU-MIMO方式を選択する。
【0038】
一方、OFDMA制御部14は、OFDMA優先選択設定が有効であると判定した場合(ステップS202のYES)、接続される無線子機2が所定の台数以上、OFDMA通信をサポートしているか否かを判定する(ステップS203)。
【0039】
OFDMA制御部14は、接続される無線子機2が所定の台数以上、OFDMA通信をサポートしていないと判定した場合(ステップS203のNO)、OFDM変調方式又はMU-MIMO方式で各無線子機2と通信する(ステップS209)。
【0040】
一方、OFDMA制御部14が接続される無線子機2が所定の台数以上、OFDMA通信をサポートしていると判定した場合(ステップS203のYES)、接続子機検出部126は、接続される各無線子機2の子機情報からグループ接続情報を検出する(ステップS204)。グループ接続情報には、OFDMA通信をサポートするか否かの情報が含まれる。また、グループ接続情報には、無線親機1との通信に使用する周波数の情報、チャネルの情報及び暗号化方式の情報が含まれる。
【0041】
ステップS204の処理の後、接続子機検出部126は、接続される無線子機2において、グループ接続情報に基づいてグループ化可能な無線子機2があるか否かを判定する(ステップS205)。
【0042】
接続子機検出部126がグループ化可能な無線子機2がないと判定した場合(ステップS205のNO)、OFDMA制御部14は、OFDM変調方式又はMU-MIMO方式で接続される無線子機2とそれぞれ通信する(ステップS209)。
【0043】
一方、接続子機検出部126は、グループ化可能な無線子機2があると判定した場合(ステップS205のYES)、無線子機2をグループ化する。接続子機検出部126は、グループ接続情報を用いて、OFDMA通信をサポートし、無線親機1との通信に使用する周波数、チャネル及び暗号化方式が一致する無線子機2をグループ化する。そして、接続子機検出部126は、グループ化に関する情報をOFDMA制御部14に供給する。
【0044】
次に、OFDMA制御部14は、グループ化対象の無線子機2の台数(グループ対象子機数)が無線親機1のMU-MIMO方式のサポート台数(MU-MIMOサポート数)よりも多いか否かを判定する(ステップS206)。無線親機1のMU-MIMO方式のサポート台数とは、MU-MIMO方式で同時に通信できる無線子機2の台数である。そうすることによって、無線親機1は、MU-MIMO方式で無線子機2と通信するよりもOFDMA方式で通信した方が、通信完了時間が少ない通信ができると判断する。
【0045】
なお、本実施形態では、グループ対象子機数と比較する数をMU-MIMOサポート数としたが、グループ対象子機数と比較する数を任意の数に設定してもよい。そうすることによって、無線親機1は、OFDM変調方式で無線子機2と通信するよりもOFDMA方式で通信した方が、通信完了時間が少なく、遅延の発生を抑制できる通信ができると判断する。
【0046】
次に、OFDMA制御部14は、グループ対象子機数がMU-MIMOサポート数以下場合(ステップS206のNO)、OFDM変調方式又はMU-MIMO方式で接続される各無線子機2とそれぞれ通信する(ステップS209)。
【0047】
一方、OFDMA制御部14は、グループ対象子機数がMU-MIMOサポート数よりも多い場合(ステップS206のYES)、以下の
図6に示すようにグループ化対象の無線子機2に対する所定のサブキャリア周波数の割り付けを行う。また、OFDMA制御部14は、スケジューラにおいて、グループ化対象の無線子機2に対するデータの送受信の時間管理を制御する(ステップS207)。
【0048】
図6は、第2の実施形態に係る無線親機1におけるOFDMA方式でのグループ化対象の無線子機2への送受信データの割り付け方法を示す。本図に示すように、OFDMA制御部14は、チャネル幅の周波数帯域を一定間隔のサブキャリア周波数(f1~fM)に分割する。そして、OFDMA制御部14は、サブキャリア周波数のそれぞれをグループ化対象の無線子機2(無線子機21~無線子機2N)に割り付ける。そうすることによって、OFDMA制御部14は、サブキャリア周波数が割り付けられた各無線子機2に送受信するデータを平均化し、各無線子機2と同時通信することが可能となる。
【0049】
次に、OFDMA制御部14は、サブキャリア周波数が割り付けられた各無線子機2とOFDMA方式によって通信する(ステップS208)。具体的には、OFDMA制御部14は、グループ化対象の無線子機2とそれぞれ送受信するデータ量をグループ化対象の無線子機2間で平均化させて、グループ化対象の無線子機2とOFDMA通信する制御を実行する。
【0050】
例えば、無線親機1は、
図7に示すような通信手順でグループ化対象の無線子機2と通信する。
図7は、第2の実施形態に係る無線親機1におけるOFDMA方式での無線子機2とのデータ通信手順を示す。本図に示すように、無線親機1が無線子機2(21~2N)へ一斉に下りデータを送信する場合、複数の無線子機2は、データの受信完了後、確認応答のACK信号を無線親機1に返信する。反対に、複数の無線子機2が無線親機1へ上りデータを送信する場合、無線親機1は全ての無線子機2にトリガフレーム(TRG Frame)を送信する。そして、各無線子機2は、トリガフレームに従って各無線子機2に割り付けられたサブキャリア周波数を使用して無線親機1に対し同時にデータを送信する。その後、無線親機1は、データの受信完了後、確認応答のACK信号を各無線子機2に返信する。
【0051】
上述したように、第2の実施形態に係る無線親機1は、接続される接続される無線子機2が所定の台数より多い場合、接続される無線子機2とOFDMA方式で通信する方が、MU-MIMO方式又はOFDM変調方式で通信するよりも効果的な通信を行うことができる。以下で詳細に説明する。
【0052】
無線親機1がMU-MIMO方式で同時に通信できる無線子機2の台数は、無線親機1のアンテナの数に依存している。そのため、無線親機1のチャネル幅に対してサポートする無線子機2が多く、短いパケットを使用して遅延が少ないデータ通信をする場合、無線親機1は、MU-MIMO方式よりOFDMA方式を用いることで通信完了時間が短く無線子機2と通信できる。
【0053】
また、無線親機1は、所定の台数より多い無線子機2と接続する場合、接続される無線子機2とOFDMA方式で通信する方が、OFDM変調方式で通信するよりも通信完了時間を短縮し、信号の衝突による遅延を抑制することができる。
【0054】
具体的には、無線親機1がOFDM変調方式で無線子機2と通信する場合と無線親機1がOFDMA方式で無線子機2と通信する場合とを比較する。
まず、無線親機1がOFDM変調方式を用いて無線子機2と通信する比較例を説明する。比較例に係る通信システムの構成は、
図2に示す通信システム200の構成と同様である。
【0055】
図8は、比較例に係る無線親機1におけるOFDM変調方式での無線子機2(無線子機21~無線子機2N)への送受信データの割り付け方法を示す。本図に示すように、無線親機1のチャネル幅の全周波数帯域は1つの無線子機2で使用される。無線親機1は、接続する無線子機2が複数存在する場合、時間(t)毎に時間差で各無線子機2とそれぞれ通信する。
【0056】
図9は、比較例に係る無線親機1におけるOFDM変調方式での無線子機2とのデータ通信手順を示す。本図に示すように、無線親機1が無線子機21に下りデータを送信する場合、無線子機21は、データの受信完了後、確認応答のACK信号を無線親機1に返信する。一方、無線子機21が無線親機1へ上りデータを送信する場合、無線子機21は、受信完了後に確認応答のACK信号を無線親機1に返信する。この際、無線親機1と無線子機21との相互のデータ通信時間はT1必要となる。同様に、無線親機1が無線子機22との相互のデータ通信を実施する場合、通信時間はT2時間かかる。したがって、同一の無線親機1と複数の無線子機2(21~2N)間でデータ通信を実施した場合、最初の無線子機21から最後の無線子機2Nとの相互のデータ通信完了までには時間(T1+T2+・・・+TN)が必要となる。
【0057】
図10は、比較例に係る無線親機1におけるOFDM変調方式での無線子機2とのデータ通信手順において信号の衝突が発生した場合の一例を示す。本図に示すように、無線子機21と無線子機22とが上りデータを同時刻に無線親機1に送信した場合、信号の衝突により無線親機1が無線子機21及び無線子機22から受信したデータを認識できない。そのため、無線子機21は上りデータの再送が必要となり、無線親機1が無線子機21との相互のデータ通信完了までの時間(T1)に信号の衝突による再送時間を加えた時間(T1+α)が必要となる。
【0058】
一方で、
図7に示すように、第2の実施形態に係る無線親機1は、OFDMA方式で無線子機2(21~2N)と通信する場合、同時通信が可能なことより、少なくともT1時間で相互のデータ通信を完了する。しかしながら、比較例に係る無線親機1は、OFDMA方式での複数の無線子機2(21~2N)と通信する場合、相互のデータ通信完了まで少なくともT1+T2+・・・+TN時間を要する。したがって、無線親機1は、所定の台数より多い無線子機2と接続する場合、複数の無線子機2とOFDMA方式で通信する方が、OFDM変調方式で通信するよりも通信完了時間を短縮し、信号の衝突による遅延を抑制することができる。
【0059】
したがって、無線親機1は、所定の台数より多い無線子機2と接続する場合、OFDM変調方式ではなくOFDMA方式を用いることで、無線子機2との通信完了時間を短くできる同時に、無線子機2同士の無線親機1への送信信号の衝突による無線子機2のデータの再送による遅延発生も抑制できる。つまり、第2の実施形態に係る無線親機1が複数の無線子機2と接続する場合、OFDM変調方式よりOFDMA方式を用いることで無線親機1は効果的に無線子機2と通信できる。
【0060】
(第3の実施形態)
図11を用いて、第3の実施形態に係る通信システム300の構成を説明する。通信システム300は、第2の実施形態に係る通信システム200と同様に、無線親機1、無線子機2(無線子機21~無線子機2N)及びホームゲートウェイ3を備える。
【0061】
無線親機1は、インフラストラクチャモードで通信する無線ネットワークNを無線子機2と構成する。本実施形態では、無線親機1は、NTP(Network Time Protocol)を使用して、無線ネットワークNにおいて接続される無線子機2との時刻同期を行う。無線親機1は、データ通信内のタイムスタンプ情報に基づいて、各無線子機2との時刻差を管理し、当該時刻差を低減する。
【0062】
続いて、
図12を用いて、第3の実施形態に係る無線親機1の構成を説明する。
第3の実施形態に係る無線親機1は、第2の実施形態に係る無線親機1の構成に加え、送信データ時刻制御部15及び受信データ時刻制御部16を備えている。それに伴い、無線親機1は、OFDMA優先選択機能に各無線子機2間の時間差を低減する機能を備えている。
【0063】
送信データ時刻制御部15は、NTPを用いて通信対象の無線子機2と時刻を同期し、通信対象の無線子機2に送信するデータの送信時刻差を通信対象の無線子機2間で低減する制御を行う。例えば、送信データ時刻制御部15は、OFDMA方式で無線子機2と通信する場合、上述したグループ化対象の無線子機2に送信するデータの送信時刻差をグループ化対象の無線子機2間で低減する制御を行う。
【0064】
また、受信データ時刻制御部16は、NTPを用いて通信対象の無線子機2と時刻を同期し、通信対象の無線子機2から受信するデータの受信時刻差を通信対象の無線子機2間で低減する制御を行う。例えば、受信データ時刻制御部16は、OFDMA方式で無線子機2と通信する場合、上述したグループ化対象の無線子機2から受信するデータの受信時刻差をグループ化対象の無線子機2間で低減する制御を行う。
【0065】
上述したように、第3の実施形態に係る通信システム300では、第2の実施形態に係る通信システム200で説明したOFDMA優先選択機能に加え、データ通信内のタイムスタンプ情報に基づいて通信する各無線子機2との当該時刻差を低減することができる。
【0066】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0067】
<ハードウェア構成>
続いて、
図13を用いて、第1、第2、第3の実施形態に係る無線親機1のコンピュータ1000のハードウェア構成例を説明する。
図13においてコンピュータ1000は、プロセッサ1001と、メモリ1002とを有している。プロセッサ1001は、例えば、マイクロプロセッサ、MPU(Micro Processing Unit)、又はCPU(Central Processing Unit)であってもよい。プロセッサ1001は、複数のプロセッサを含んでもよい。メモリ1002は、揮発性メモリ及び不揮発性メモリの組み合わせによって構成される。メモリ1002は、プロセッサ1001から離れて配置されたストレージを含んでもよい。この場合、プロセッサ1001は、図示されていないI/Oインターフェイスを介してメモリ1002にアクセスしてもよい。
【0068】
また、上述の実施形態における各構成は、ハードウェア又はソフトウェア、もしくはその両方によって構成され、1つのハードウェア又はソフトウェアから構成してもよいし、複数のハードウェア又はソフトウェアから構成してもよい。上述の実施形態における各構成の機能(処理)を、コンピュータにより実現してもよい。例えば、メモリ1002に実施形態における方法を行うためのプログラムを格納し、各機能を、メモリ1002に格納されたプログラムをプロセッサ1001で実行することにより実現してもよい。
【0069】
これらのプログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【符号の説明】
【0070】
1、1A 無線親機
1A 無線親機
2(21~2N) 無線子機
3 ホームゲートウェイ
4 インターネット
11 WANインターフェイス
12 無線終端部
13 OFDMA優先設定部
14 OFDMA制御部
15 送信データ時刻制御部
16 受信データ時刻制御部
21 無線子機
22 無線子機
121 送信データ平均部
122 受信データ平均部
123 無線制御部
124 無線送信部
125 無線受信部
126 接続子機検出部
200 通信システム
300 通信システム
1000 コンピュータ
1001 プロセッサ
1002 メモリ
【要約】
【課題】無線子機との通信完了時間の低減や遅延発生の抑制ができる無線親機、無線親機の制御方法及びプログラムを提供すること。
【解決手段】本開示の無線親機1Aは、OFDMA優先設定部13、接続子機検出部126及びOFDMA制御部14を備える。OFDMA優先設定部13は、ユーザの入力情報に基づいて、自機に接続される複数の無線子機との通信方式にOFDMA方式を優先的に選択する設定をする。接続子機検出部126は、OFDMA方式を優先的に選択する設定がなされている場合、自機に接続される複数の無線子機のうち通信対象の無線子機の台数を検出する。OFDMA制御部14は、通信対象の無線子機の台数が所定の台数より多い場合、通信対象の無線子機とそれぞれ送受信するデータ量を通信対象の無線子機間で平均化して、通信対象の無線子機とOFDMA通信する制御を実行する。
【選択図】
図1