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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】治療薬の送達のための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 498/14 20060101AFI20221018BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221018BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 31/5365 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20221018BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
C07D498/14
A61P43/00 121
A61P31/18
A61K45/00
A61P43/00 123
A61K31/5365
A61K47/34
A61K9/51
A61K47/24
A61K31/519
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2018567638
(86)(22)【出願日】2017-06-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 US2017038693
(87)【国際公開番号】W WO2017223280
(87)【国際公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-03-30
(31)【優先権主張番号】62/353,736
(32)【優先日】2016-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】317016589
【氏名又は名称】ヴィーブ ヘルスケア カンパニー
(73)【特許権者】
【識別番号】508221224
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ネブラスカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エダグワ,ベンソン,ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ジェンデルマン,ホワード,イー.
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,ブライアン,アルビン
【審査官】東 裕子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-500849(JP,A)
【文献】国際公開第2012/018065(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/039348(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/127437(WO,A1)
【文献】特開2014-141486(JP,A)
【文献】ZARO,Jennica L.,The AAPS Journal,2015年,17(1),83-92
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I-Aのプロドラッグ化合物
【化1】
及びその薬学的に許容される塩
[式中、環Aは
【化2】
から選択され、
*で表される不斉炭素の立体化学はR-若しくはS-配置、又はこれらの混合物を示し、
mは0、1、2、又は3であり、
Rは飽和又は不飽和の脂肪酸残基であり、
脂肪酸残基は、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノエライジン酸、α-リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、及びドコサヘキサエン酸から選択される脂肪酸の残基である]。
【請求項2】
Rがミリスチン酸の残基である、請求項1に記載のプロドラッグ化合物。
【請求項3】
式(I-B)を有する、請求項1に記載のプロドラッグ化合物又は薬学的に許容される塩。
【化3】
【請求項4】
式(I-C)を有する、請求項1に記載のプロドラッグ化合物又は薬学的に許容される塩。
【化4】
【請求項5】
式(I-D)を有する、請求項1に記載のプロドラッグ化合物又は薬学的に許容される塩。
【化5】
【請求項6】
請求項1に記載のプロドラッグ化合物、及び
少なくとも1種の界面活性剤
を含むナノ粒子。
【請求項7】
ナノ粒子の直径が約100nm~1μmである、請求項6に記載のナノ粒子。
【請求項8】
前記界面活性剤が両親媒性ブロックコポリマー又はペグ化されたリン脂質である、請求項6に記載のナノ粒子。
【請求項9】
前記両親媒性ブロックコポリマーが少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)のブロック及び少なくとも1つのポリ(オキシプロピレン)のブロックを含む、請求項8に記載のナノ粒子。
【請求項10】
前記界面活性剤がポロキサマー407である、請求項6に記載のナノ粒子。
【請求項11】
少なくとも1つの標的指向性リガンドに結合した界面活性剤をさらに含む、請求項6に記載のナノ粒子。
【請求項12】
前記界面活性剤が少なくとも1つの標的指向性リガンドに結合している、請求項6に記載のナノ粒子。
【請求項13】
前記標的指向性リガンドがマクロファージ標的指向性リガンドである、請求項12に記載のナノ粒子。
【請求項14】
前記マクロファージ標的指向性リガンドが葉酸である、請求項13に記載のナノ粒子。
【請求項15】
葉酸に結合したポロキサマー407を含む、請求項6に記載のナノ粒子。
【請求項16】
少なくとも約80重量%のプロドラッグ化合物を含む、請求項6に記載のナノ粒子。
【請求項17】
少なくとも約90重量%のプロドラッグを含む、請求項16に記載のナノ粒子。
【請求項18】
HIV感染症を処置する際に使用するための請求項617のいずれか一項に記載のナノ粒子。
【請求項19】
請求項617のいずれか一項に記載の少なくとも1種のナノ粒子及び少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項20】
少なくとも1種の他の抗HIV化合物をさらに含む、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
HIV感染症の処置をそれを必要とする対象において行うための医薬組成物であって、請求項1に記載のプロドラッグ化合物を含む、医薬組成物。
【請求項22】
HIV感染症の抑制をそれを必要とする対象において行うための医薬組成物であって、請求項1に記載のプロドラッグ化合物を含む、医薬組成物。
【請求項23】
HIV感染症の予防をそれを必要とする対象において行うための医薬組成物であって、請求項1に記載のプロドラッグ化合物を含む、医薬組成物。
【請求項24】
HIV感染症の処置をそれを必要とする対象において行うための医薬組成物であって、請求項6に記載のナノ粒子を含む、医薬組成物。
【請求項25】
HIV感染症の抑制をそれを必要とする対象において行うための医薬組成物であって、請求項6に記載のナノ粒子を含む、医薬組成物。
【請求項26】
HIV感染症の予防をそれを必要とする対象において行うための医薬組成物であって、請求項6に記載のナノ粒子を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に治療薬の送達、細胞侵入及び保持に関する。より詳細には、本発明は、患者に対するウイルス感染症の処置及び予防のための治療剤の送達及び細胞に基づく保持のための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症の処置における抗レトロウイルス療法(ART)のバイオアベイラビリティー、薬物動態、薬力学、組織内分布、細胞毒性、及び間隔投与を改良する必要性は重要である(Broder, S. (2010) Antivir. Res., 85:1-18; Este et al. (2010) Antivir. Res., 85:25-33; Moreno et al. (2010) J. Antimicrob. Chemother., 65:827-835)。ARTの導入以来、HIV-1感染症に伴う死亡及び併存疾患の両方の発生率は劇的に低下した。しかし、HIVに感染した個体における、ウイルス複製の完全な抑制、薬物耐性パターンの低減、生体内分布、薬物動態(PK)及び関連疾病率を妨げる、ARTの限界はたくさんある。これらの限界には薬物PK及び生体内分布も包含される(Garvie et al. (2009) J. Adolesc. Health 44:124-132; Hawkins, T. (2006) AIDS Patient Care STDs 20:6-18; Royal et al. (2009) AIDS Care 21:448-455)。その上、有効な組合せ薬にも関わらず、HIVは、限定されるものではないが、リンパ節、骨髄、腸管関連リンパ組織、脾臓及び中枢神経系を含むリザーバ(reservoir)部位で、低レベルで複製し続ける(Pomerantz, R.J., (2002) Clin. Infect. Dis., 34(1):91-97; Blankson et al. (2002) Annu. Rev. Med., 53:557-593)。そのような限界は感染したヒト宿主からのHIV-1感染症の無菌化/根絶への経路に影響を及ぼす。
【0003】
抗レトロウイルス薬(ARV)は身体から迅速に排除され、全ての臓器に十分に浸透しないので、投与計画は複雑になり、大量の薬物の連続投与が必要になる傾向がある。患者は療法ガイドラインに正確に従うのが困難になり、最適以下のアドヒアランスとなり、ウイルスの抵抗性が生じるリスクが増大し、結果として処置に失敗し、疾患の進行が加速される可能性がある(Danel et al. (2009) J. Infect. Dis. 199:66-76)。精神医学的障害及び精神障害並びに/又は薬物乱用もあるHIV感染患者の場合、療法の適切なアドヒアランスはさらに困難になる(Meade et al. (2009) AIDS Patient Care STDs 23:259-266; Baum et al. (2009) J. Acquir. Immune Defic. Syndr., 50:93-99)。リルピビリン及びカボテグラビル(CAB-LAP)の長期作用性の注射可能な製剤はHIVの抑制及び予防のために月1回の注射が可能になっているが(Andrews et al. (2014) Science 343:1151-1154; Cohen, J. (2014) Science 343:1067; Spreen et al. (2013) Curr. Opin. HIV AIDS 8:565-571)、それでもこれらの治療はまだ高用量及び高注射量が必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Broder, S. (2010) Antivir. Res., 85:1-18
【文献】Este et al. (2010) Antivir. Res., 85:25-33
【文献】Moreno et al. (2010) J. Antimicrob. Chemother., 65:827-835
【文献】Garvie et al. (2009) J. Adolesc. Health 44:124-132
【文献】Hawkins, T. (2006) AIDS Patient Care STDs 20:6-18
【文献】Royal et al. (2009) AIDS Care 21:448-455
【文献】Pomerantz, R.J., (2002) Clin. Infect. Dis., 34(1):91-97
【文献】Blankson et al. (2002) Annu. Rev. Med., 53:557-593
【文献】Danel et al. (2009) J. Infect. Dis. 199:66-76
【文献】Meade et al. (2009) AIDS Patient Care STDs 23:259-266
【文献】Baum et al. (2009) J. Acquir. Immune Defic. Syndr., 50:93-99
【文献】Andrews et al. (2014) Science 343:1151-1154
【文献】Cohen, J. (2014) Science 343:1067
【文献】Spreen et al. (2013) Curr. Opin. HIV AIDS 8:565-571
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、細胞の取込み及び保持を最適化し、細胞内安定性を改良し、注射量を低減し、薬物放出を延ばし、血漿半減期を延長し、抗レトロウイルス効力を維持し、細胞毒性を制限する薬物送達システムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従って、インテグラーゼ阻害剤プロドラッグが提供される。特定の実施形態において、少なくとも1種のインテグラーゼ阻害剤プロドラッグ及び少なくとも1種の界面活性剤を含むナノ粒子が提供される。
【0007】
特定の実施形態において、インテグラーゼ阻害剤プロドラッグはより疎水性になるよう改変されている。特定の実施形態において、インテグラーゼ阻害剤は、式(I-A)及びその薬学的に許容される塩により表されるように、(例えば、ヒドロキシル(-OH)基のところで、場合によりリンカー(例えば、カルボニル(例えば、アシル化反応後))を介して)疎水性の脂肪族又はアルキルとコンジュゲートされている:
【0008】
【化1】
(式中、mは0~3であり、Rは脂肪族基である)。特定の実施形態において、Rは(L)n-R1であり、Lは、場合によりN、S、及びOから選択される1~5個のヘテロ原子により置換されていてもよいC3-C30アルキル、並びに場合によりN、S、及びOから選択される1~5個のヘテロ原子により置換されていてもよいC3-C30アルケニルから選択され、nは0又は1であり、R1はH、アリール、シクロアルキル、及びシクロアルケニルから選択される。
【0009】
特定の実施形態において、インテグラーゼ阻害剤プロドラッグはドルテグラビル(S/GSK1349572、Tivicay(登録商標))プロドラッグである。特定の実施形態において、インテグラーゼ阻害剤プロドラッグはカボテグラビル(S/GSK1265744)プロドラッグである。特定の実施形態において、インテグラーゼ阻害剤はビクテグラビルプロドラッグである。特定の実施形態において、インテグラーゼ阻害剤プロドラッグは結晶質又は非晶質である。
【0010】
本発明の別の実施形態によると、少なくとも1種のインテグラーゼ阻害剤プロドラッグ及び界面活性剤を含むナノ粒子が提供される。特定の実施形態において、界面活性剤は両親媒性ブロックコポリマー、ポリソルベート、リン脂質、その誘導体、又はこれらの組合せである。特定の実施形態において、界面活性剤は両親媒性ブロックコポリマー(例えば、ポロキサマーP407)である。特定の実施形態において、ナノ粒子/ナノ製剤の界面活性剤は少なくとも1つの標的指向性リガンドに結合している。実際、抗体及びペプチドはそれらの特異性及び低レベル感染に対するリザーバ部位を標的とすることの促進に基づいてリザーバを排除する介入を容易にすることができる。1つの例は葉酸である。個々のナノ粒子は標的化及び非標的化界面活性剤を含み得る。
【0011】
少なくとも1種の本発明のナノ粒子及び/又はプロドラッグ及び少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物も提供される。
【0012】
本発明の別の態様によると、対象において疾患又は障害(例えば、ウイルス、特にレトロウイルス(例えば、HIV)感染症)を処置する方法及び使用が提供される。特定の実施形態において、本方法は少なくとも1種の本発明のプロドラッグ及び/又はナノ粒子/ナノ製剤を対象に投与することを含む。特定の実施形態において、本方法はさらに、その疾患又は障害のための少なくとも1種のさらなる治療剤又は療法、例えば、少なくとも1種の追加の抗HIV化合物を投与することを含む。
【0013】
本発明の別の態様によると、対象において疾患又は障害(例えば、ウイルス、特にレトロウイルス(例えば、HIV)感染症)を抑制する方法及び使用が提供される。特定の実施形態において、本方法は少なくとも1種の本発明のプロドラッグ及び/又はナノ粒子/ナノ製剤を対象に投与することを含む。特定の実施形態において、本方法はさらに、その疾患又は障害のための少なくとも1種のさらなる治療剤又は療法、例えば、少なくとも1種の追加の抗HIV化合物を投与することを含む。
【0014】
本発明の別の態様によると、対象において疾患又は障害(例えば、ウイルス、特にレトロウイルス(例えば、HIV)感染症)を予防する方法及び使用が提供される。特定の実施形態において、本方法は少なくとも1種の本発明のプロドラッグ及び/又はナノ粒子/ナノ製剤を対象に投与することを含む。特定の実施形態において、本方法はさらに、その疾患又は障害のための少なくとも1種のさらなる治療剤又は療法、例えば、少なくとも1種の追加の抗HIV化合物を投与することを含む。
【0015】
本発明の別の態様によると、対象において疾患又は障害(例えば、ウイルス、特にレトロウイルス(例えば、HIV)感染症)の処置に使用される医薬の製造における本発明のプロドラッグ及び/又はナノ粒子の使用が提供される。特定の実施形態において、本方法は少なくとも1種の本発明のプロドラッグ及び/又はナノ粒子/ナノ製剤を対象に投与することを含む。特定の実施形態において、本方法はさらに、その疾患又は障害のための少なくとも1種のさらなる治療剤又は療法、例えば、少なくとも1種の追加の抗HIV化合物を投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、動的光散乱によるナノ粒子の特徴付けを示すグラフを提供する。具体的には、粒度、ゼータ電位、及び多分散指数が、改変されたドルテグラビル(DTG)プロドラッグ(MDTG)製剤(P407-MDTG)、葉酸(FA)標識化MDTG製剤(FA-P407-MDTG)、本来の薬物DTG製剤(P407-DTG)、及びFAで標識化された本来の薬物製剤(FA-P407-DTG)について示されている。
図2A図2Aは、プロドラッグMDTG、P407-MDTG、FA-P407-MDTG、本来の薬物DTG、P407-DTG、又はFA-P407-DTGが投与された単球によるDTGの取込みを示す。
図2B図2Bは、MDTG、P407-MDTG、又はFA-P407-MDTGで処置した単球によるDTGの保持を示す。
図2C図2Cは、HIVを感染させた(陽性対照)、模擬感染させた(陰性対照)、又はHIVを感染させP407-DTG若しくはP407-MDTGで処置した単球におけるHIV逆転写酵素活性(1、8、10、及び15日)のグラフを提供する。
図2D図2Dは、HIVを感染させた(HIV+)、模擬感染させた(対照)、又はHIVを感染させP407-DTG若しくはP407-MDTGで処置した単球のp24染色の画像を提供する。
図3図3は、P407-MDTG又はP407-DTGで処置したマウスにおけるDTGの血中レベルのグラフを提供する。
図4A図4Aは、長期作用性の非経口CAB(CAB-LAP)、本来の薬物CAB製剤(P407-CAB)、改変CABプロドラッグ(MCAB)製剤(P407-MCAB)、及び葉酸(FA)標識化MCAB製剤(FA-P407-MCAB)を投与した単球によるカボテグラビル(CAB)の取込みを示す。
図4B図4Bは、CAB-LAP、P407-CAB、P407-MCAB、又はFA-P407-MCABで処置した単球によるCABの保持を示す。
図4C図4Cは、HIVを感染させた(HIV-1)、模擬感染させた(対照)、又はHIVを感染させCAB-LAP、P407-CAB、P407-MCAB、若しくはFA-P407-MCABで処置した単球におけるHIV逆転写酵素活性(0、2、及び5日)のグラフを提供する。
図4D図4Dは、HIVを感染させた(HIV-1)、模擬感染させた(対照)、又はHIVを感染させCAB-LAP、P407-CAB、P407-MCAB、若しくはFA-P407-MCABで処置した単球のp24染色の画像を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ウイルス感染症、特にHIV感染症の現在利用可能な処置は、ウイルス侵入、ヌクレオシド逆転写酵素、ヌクレオチド逆転写酵素、インテグラーゼ、及びプロテアーゼの阻害剤を含む。耐性は、短縮された薬物半減期、ウイルスのライフサイクル、及び高度の遺伝的変異性をもたらす迅速な突然変異と関連する。「カクテル」療法と考えられる併用ARTが相当の注目を浴びている。利益として、低下したウイルスの抵抗性、限定された毒性、改良された治療計画のアドヒアランス及び持続する抗レトロウイルス効力がある。併用療法は、ウイルス(例えば、HIV)複製を抑制することにより潜在的な薬物耐性を最小限に抑えることによって自然発生する耐性の突然変異体を減らす。処置の失敗は部分的に短い薬物半減期に起因する。さらに、失敗はまた部分的に組織及び細胞のウイルスリザーバへの制限されたアクセスにも起因する可能性があり、これによりウイルスの根絶の努力が妨げられる。これらの目的のために、細胞及び組織標的化されナノ製剤化されたプロドラッグ(ナノ粒子)プラットホームの開発はウイルス(例えば、HIV)感染症の管理において大いに興味深い。曝露前予防(PrEP)はウイルス(例えば、HIV)伝播の管理で使用される別の方策である。例えば、TRUVADA(登録商標)(テノフォビル/エムトリシタビン)はHIV感染症に対する曝露前予防として承認されている。加えて、ラミブジンとジドブジンの組合せ(COMBIVIR(登録商標))は曝露前予防及び曝露後予防として使用されている。
【0018】
ARVの伝統的な剤形は、芳しくないアドヒアランスを招く高い丸薬負荷により特徴付けられる。標的化プロドラッグナノ粒子は薬物の生体内分布を改良し、治療効力を高め、より低い投薬量は全身毒性のような副作用を低減し得る。さらに、単一の薬物処置はHIVの高度の遺伝的変異性及び薬物耐性を引き起こすことがある。対照的に、標的化された併用治療方策はウイルスの抵抗性を減少させ、クオリティオブライフを改良し、生存期間を増大させ得る。
【0019】
本明細書で提供されるプロドラッグ及びナノ製剤化されたプロドラッグ(ナノ粒子)は、限定されないが、延長された薬物半減期、増大した疎水性、改良されたタンパク質結合能、改良された生体内分布、改良された血漿半減期、及び増大した抗ウイルス効力を含む、数多くの秀でた特質を有する。これは日々高用量又はさらには1日にいくつかの用量の投薬を受けなければならない人々に利益をもたらし得る。なぜならば、投与頻度のより少ないより低い投薬量は副作用を低減するばかりでなく、患者にとって好都合でもあるからである。本明細書で提供されるプロドラッグ及びナノ製剤化されたプロドラッグ(ナノ粒子)は曝露後処置及び/又は曝露前予防として(例えば、HIV-1と接触するリスクが高い人々に対して)使用してもよい。言い換えると、本発明のプロドラッグ及びナノ粒子並びにこれらの組合せはウイルス感染症(例えば、HIV感染症)を予防するために、及び/又は急性若しくは長期のウイルス感染症(例えば、HIV感染症)を処置若しくは抑制するために使用することができる。本発明のプロドラッグ及びナノ粒子が一般にARVとして記載されているが、本発明のプロドラッグ及びナノ製剤は、限定されないが、レトロウイルス、レンチウイルス、肝炎ウイルス(例えば、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)(Tavis et al. (2013) PLoS Pathog., 9(1):e1003125))、ヘルペスウイルス(例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)、HSV-1、HSV-2(Yan et al. (2014) 5(4):e01318-14)、及びエボラウイルスを含めて、他の微生物又はウイルス感染症に対しても有効である。本発明のプロドラッグ及びナノ製剤はまた、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)のような他の微生物感染症に対して、又は結核菌と共に感染している対象におけるレトロウイルス(例えば、HIV)の処置にも有効である。
【0020】
本発明に従って、インテグラーゼ阻害剤プロドラッグが提供され、ここで、インテグラーゼ阻害剤はより疎水性になるように改変されている。本発明のインテグラーゼ阻害剤プロドラッグ、特にそのナノ製剤は、本来の薬物と比較して、改良された延長された薬物半減期、増大した疎水性、改良されたタンパク質結合能、増大した抗ウイルス効力、生体内分布、及び血漿半減期を有する。特定の実施形態において、インテグラーゼ阻害剤プロドラッグは、加水分解可能な結合、特にエステル結合を介して疎水性部分にコンジュゲートされたインテグラーゼ阻害剤を含んでいる。特定の実施形態において、インテグラーゼ阻害剤は、場合によりリンカーを介して、(例えば、-OH基のところで、例えば、アシル化反応を介して)脂肪族基又はアルキル(例えば、本明細書中の構造のR基)にコンジュゲートされている。特定の実施形態において、アルキル又は脂肪族基は疎水性である。特定の実施形態において、脂肪族基又はアルキルは(例えば、アルキル又は脂肪族基の主鎖中に)約3~約30個の炭素、約4~約28個の炭素、約4~約24個の炭素、約12~約18個の炭素、約12~約14個の炭素、又は約13個の炭素を含む。特定の実施形態において、脂肪族基はC4-C24不飽和又は飽和の脂肪族炭素鎖である。脂肪族の鎖は少なくとも1個(例えば、約1~約5個又は約1~約3個)のヘテロ原子(例えば、O、N、又はS)で置換されていてもよい。特定の実施形態において、脂肪族の鎖は脂肪酸(飽和又は不飽和)残基である。特定の実施形態において、脂肪酸は不飽和である。脂肪酸の例には、限定されないが、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノエライジン酸(linoelaidic acid)、α-リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、及びドコサヘキサエン酸がある。特定の実施形態において、脂肪酸はミリスチン酸である。
【0021】
代わりの実施形態によると、本発明のプロドラッグは式I-Aの化合物
【0022】
【化2】
及びその薬学的に許容される塩として表される
[式中、環Aは
【0023】
【化3】
から選択され、
*で表される不斉炭素の立体化学はR-若しくはS-配置、又はこれらの混合物を示し、
mは0、1、2、又は3であり、
Rは(L)n-R1であり、
Lは、場合によりN、S、及びOから選択される1~5個のヘテロ原子により置換されていてもよいC3-C30アルキル、並びに場合によりN、S、及びOから選択される1~5個のヘテロ原子により置換されていてもよいC3-C30アルケニルから選択され、
nは0又は1であり、
R1はH、アリール、シクロアルキル、及びシクロアルケニルから選択される]。
【0024】
特定の実施形態において、DTGプロドラッグは次式:
【0025】
【化4】
[式中、Rは脂肪族基又はアルキルである]を有する。特定の実施形態において、アルキル又は脂肪族基は疎水性である。特定の実施形態において、脂肪族基又はアルキルは(例えば、アルキル又は脂肪族基の主鎖中に)約3~約30個の炭素、約4~約28個の炭素、約4~約28個の炭素、約12~約18個の炭素、約12~約14個の炭素又は約13個の炭素を含む。特定の実施形態において、RはC4-C24不飽和又は飽和の脂肪族鎖である。脂肪族は少なくとも1個の(例えば、約1~約5個の又は約1~約3個の)ヘテロ原子(例えば、O、N、又はS)で置換されていてもよい。特定の実施形態において、Rは脂肪酸(飽和又は不飽和)の残基(脂肪酸のエステル末端基を含まない部分)アルキル鎖である。特定の実施形態において、脂肪酸は不飽和である。脂肪酸の例には、限定されないが、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノエライジン酸、α-リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、及びドコサヘキサエン酸がある。特定の実施形態において、脂肪酸はミリスチン酸である。
【0026】
特定の実施形態において、CABプロドラッグは次式:
【0027】
【化5】
[式中、Rは脂肪族基又はアルキルである]を有する。特定の実施形態において、アルキル又は脂肪族基は疎水性である。特定の実施形態において、脂肪族基又はアルキルは(例えば、アルキル又は脂肪族基の主鎖中に)約3~約30個の炭素、約4~約28個の炭素、約4~約28個の炭素、約12~約18個の炭素、約12~約14個の炭素又は約13個の炭素を含む。特定の実施形態において、RはC4-C24不飽和又は飽和の脂肪族鎖である。脂肪族は少なくとも1個の(例えば、約1~約5個の又は約1~約3個の)ヘテロ原子(例えば、O、N、又はS)で置換されていてもよい。特定の実施形態において、Rは脂肪酸(飽和又は不飽和)の残基(脂肪酸のエステル末端基を含まない部分)アルキル鎖である。特定の実施形態において、脂肪酸は不飽和である。脂肪酸の例には、限定されないが、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノエライジン酸、α-リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、及びドコサヘキサエン酸がある。特定の実施形態において、脂肪酸はミリスチン酸である。
【0028】
特定の実施形態において、BICプロドラッグは次式:
【0029】
【化6】
[式中、Rは脂肪族基又はアルキルである]を有する。特定の実施形態において、アルキル又は脂肪族基は疎水性である。特定の実施形態において、脂肪族基又はアルキルは(例えば、アルキル又は脂肪族基の主鎖中に)約3~約30個の炭素、約4~約28個の炭素、約4~約28個の炭素、約12~約18個の炭素、約12~約14個の炭素又は約13個の炭素を含む。特定の実施形態において、RはC4-C24不飽和又は飽和の脂肪族鎖である。脂肪族は少なくとも1個の(例えば、約1~約5個の又は約1~約3個の)ヘテロ原子(例えば、O、N、又はS)で置換されていてもよい。特定の実施形態において、Rは脂肪酸(飽和又は不飽和)の残基(脂肪酸のエステル末端基を含まない部分)アルキル鎖である。特定の実施形態において、脂肪酸は不飽和である。脂肪酸の例には、限定されないが、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノエライジン酸、α-リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、及びドコサヘキサエン酸がある。特定の実施形態において、脂肪酸はミリスチン酸である。
【0030】
疎水性のインテグラーゼ阻害剤プロドラッグを合成する方法が本発明により包含される。特定の実施形態において、インテグラーゼ阻害剤プロドラッグは、脂肪族基又はアルキル基のような疎水性の基(例えば、脂肪酸)のインテグラーゼ阻害剤への、場合によりリンカー(例えば、カルボニル基)を介したコンジュゲーションによって合成される。特定の実施形態において、疎水性の基は-OH基を介して(例えば、アシル化反応を介して)インテグラーゼ阻害剤にコンジュゲートされる。特定の実施形態において、疎水性の基は、酸性条件下での脂肪酸との直接コンジュゲーションによって、又は基の保護及び脱保護法によってコンジュゲートされる。本発明のインテグラーゼ阻害剤プロドラッグを合成する方法を説明するスキームを以下に提供する(DTG(スキーム1)及びCAB(スキーム2)プロドラッグを例示するが、同様な方法を他のインテグラーゼ阻害剤に使用することができる)。試薬、溶媒及び反応条件は例示である。
【0031】
【化7】
【0032】
特定の実施形態において、インテグラーゼ阻害剤プロドラッグは、次のステップ:1)フェノール官能基の塩基(例えば、N,N-ジイソプロピルエチルアミン)による脱プロトン化及び2)ハロゲン化アシル(例えば、塩化物)又は活性化されたカルボン酸(例えば、脂肪酸のもの)との反応に従って製造することができる。ステップ1及び2の反応は単一の容器内で行ってもよい。特定の実施形態において、適当な試薬(例えば、N,N-ジイソプロピルエチルアミンのような塩基)を用いてヒドロキシル基を脱プロトン化することができ、次いでアルコールアニオンを塩化アシル又は活性化されたカルボン酸とカップリングさせてプロドラッグを生成させることができる。カルボン酸を活性化するのに使用されるカップリング試薬としては、限定されないが、ウラニウム塩、カルボジイミド試薬、ホスホニウム塩などがある。塩基としては、限定されないが、トリエチルアミン、N、N-ジイソプロピルエチルアミン、コリジン、等を挙げることができる。極性の非プロトン性溶媒(例えば、限定されないが、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン及びアセトニトリル)をカップリング反応に使用してもよい。試薬は約0℃で混合し、温度(例えば、室温)まで徐々に(例えば、約12~24時間かけて)暖めることができる。最終の化合物は、シリカカラムクロマトグラフィーで精製し、核磁気共鳴分光、及び質量分析法と組み合わせた高速液体クロマトグラフィーで特性決定することができる。
【0033】
インテグラーゼ阻害剤プロドラッグを合成する方法は、反応の化学選択性を制御するために、他の官能基(例えば、アミン及びヒドロキシル基)の保護をさらに含み得る。方法は、疎水性の基をインテグラーゼ阻害剤と反応させた後脱保護して所望の化合物を生成させることをさらに含み得る。ヒドロキシル保護基としては、限定されないが、エステル、アセチル、及びエーテル、例えばt-ブチルジメチルシリルクロリド(TBDMS-Cl)及びt-ブチルジフェニルシリルクロリドのような塩基感受性の基がある。他のヒドロキシル保護基としては、限定されないが、フェニルメチルエーテル、トリメチルシリルエーテル、メトキシメチルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、t-ブチルエーテル、アリルエーテル、ベンジルエーテル、酢酸エステル、ピバリン酸エステル、及び安息香酸エステルがある。このステップで使用される塩基としては、限定されないが、ピリジン、トリエチルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、等のようなアミンを挙げることができる。N、N-ジメチルホルムアミド及びテトラヒドロフランのような極性の非プロトン性溶媒を使用して反応を行ってもよい。試薬は、0℃で混合し、時間をかけて(例えば、4~24時間)徐々に温度まで暖めることができる。ヒドロキシル保護された化合物はカラムクロマトグラフィーのような慣用の方法で精製することができる。
【0034】
本発明はまた、化合物を細胞まで送達するためのナノ粒子(本明細書ではナノ製剤ということもある)も包含する。特定の実施形態において、ナノ粒子は抗レトロウイルス療法における対象への送達のためのものである。本発明のナノ粒子は少なくとも1種のインテグラーゼ阻害剤プロドラッグ及び少なくとも1種の界面活性剤を含む。特定の実施形態において、ナノ粒子は、マクロファージデポー(depot)を維持するために薬物ナノ粒子の最適な標的指向性を維持する分光学的に定義された薬物:界面活性剤(ポリマー)比を含む。特定の実施形態において、薬物:界面活性剤の比(重量による)は約10:6~約1000:6、約20:6~約500:6、約50:6~約200:6、又は約100:6である。ナノ粒子のこれらの成分については、他の任意選択の成分と共に以下に記載する。
【0035】
本発明のナノ粒子を合成する方法は当技術分野で公知である。特定の実施形態において、これらの方法は、界面活性剤で(部分的又は完全に)コーティングされたプロドラッグ(例えば、結晶質又は非晶質)を含むナノ粒子を生成させる。合成方法の例には、限定されないが、ミル粉砕(例えば、湿式ミル粉砕)、均質化(例えば、高圧均質化)、非湿式鋳型(PRINT)技術における粒子複製、及び/又は超音波処理技法がある。例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2013/0,236,553号は本発明のナノ粒子を合成するのに適した方法を提供する。特定の実施形態において、界面活性剤を最初に標的指向性リガンドで化学的に改変し、次いで直接使用するか又は非標的化界面活性剤と一定のモル比で混合して、例えば、ミル粉砕(例えば、湿式ミル粉砕)、均質化(例えば、高圧均質化)、非湿式鋳型(PRINT)技術における粒子複製、及び/又は超音波処理技法のようなナノ粒子合成プロセス(例えば、結晶質ナノ粒子合成プロセス)を使用することで薬物懸濁液の表面にコーティングすることにより、標的化ナノ製剤を製造する。ナノ粒子はさらに精製して、又はさらなる精製をすることなく使用することができるが、ナノ粒子のより迅速な生産のためにはさらなる精製を回避することが望ましい。特定の実施形態において、ナノ粒子はミル粉砕及び/又は均質化を用いて合成される。標的化ナノ粒子は(例えば、高分子量のリガンドを使用して)界面活性剤及び/又は薬物ナノ懸濁液の表面に物理的又は化学的にコーティングすること及び/又は結合することによって生じさせることができる。
【0036】
本発明のナノ粒子は本発明の少なくとも1種のプロドラッグを細胞又は対象(非ヒト動物を含む)に送達するために使用することができる。特定の実施形態において、本発明のナノ粒子は、少なくとも2種の治療剤を含み、特にここで、少なくとも1種の治療剤が本発明のプロドラッグである。例えば、ナノ粒子は本発明のインテグラーゼ阻害剤プロドラッグ及び少なくとも1種の他の治療剤(例えば、抗HIV剤)を含み得る。ナノ粒子は本発明のDTGプロドラッグ及び少なくとも1種の他の治療剤(例えば、抗HIV剤)を含み得る。ナノ粒子は本発明のCABプロドラッグ及び少なくとも1種の他の治療剤(例えば、抗HIV剤)を含み得る。ナノ粒子は本発明のBICプロドラッグ及び少なくとも1種の他の治療剤(例えば、抗HIV剤)を含み得る。ナノ粒子は本発明のCABプロドラッグ、本発明のDTGプロドラッグ、及び、場合により、少なくとも1種の他の治療剤(例えば、抗HIV剤)を含み得る。
【0037】
特定の実施形態において、ナノ粒子は界面活性剤で安定化されたナノサイズの薬物結晶(例えば、プロドラッグのもの)のサブミクロンのコロイド状分散物(例えば、界面活性剤でコーティングされた薬物結晶;ナノ製剤)である。特定の実施形態において、ナノ粒子(又はナノ粒子の治療剤(例えば、プロドラッグ))は結晶質(結晶の特性を有する固体)でも、非晶質でもよく、又は治療剤(例えば、プロドラッグ)及び界面活性剤を組み合わせる結晶として形成される治療剤(例えば、プロドラッグ)の固体状態ナノ粒子である。本明細書で使用されるとき、用語「結晶質」とは秩序状態(すなわち、非晶質ではない)及び/又は三次元で長距離秩序を示す物質を意味する。特定の実施形態において、大部分(例えば、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%以上)の治療剤(及び、場合により界面活性剤の疎水性の部分)は結晶質である。
【0038】
特定の実施形態において、ナノ粒子は、治療剤(例えば、プロドラッグ、場合により遊離塩基形態で)を界面活性剤(以下に記載する)溶液に加え、次いでナノ粒子を(例えば、湿式ミル粉砕又は高圧均質化により)生成させることによって合成される。プロドラッグ及び界面活性剤溶液は湿式ミル粉砕又は高圧均質化の前にかき混ぜてもよい。
【0039】
特定の実施形態において、得られるナノ粒子は直径(例えば、z-平均直径)又はその最長寸法が最大約2又は3μm、特に最大約1μm(例えば、約100nm~約1μm)である。例えば、ナノ粒子の直径又は最長寸法は約50~約800nmであり得る。特定の実施形態において、ナノ粒子の直径又は最長寸法は約50~約750nm、約50~約500nm、約200nm~約500nm、又は約200nm~約400nmである。ナノ粒子は、例えば、棒状、細長い棒、不規則、又は円形状でよい。本発明のナノ粒子は中性でも帯電していてもよい。ナノ粒子は正又は負に帯電し得る。
【0040】
抗HIV化合物又は抗HIV剤はHIVを抑制する化合物である。抗HIV化合物はプロドラッグ形態であり得る。本発明のプロドラッグと組み合わせて使用することができる追加の抗HIV剤の例としては、限定されないが、以下のものを挙げることができる。
(I)ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(NRTI)。NRTIは、逆転写酵素、特にHIV-1逆転写酵素の活性を阻害するヌクレオシド及びヌクレオチド並びにこれらの類似体を意味する。NRTIは糖及び塩基を含む。ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤の例には、限定されないが、アデホビルジピボキシル、アデホビル、ラミブジン(例えば、PCT/US15/54826に記載されているプロドラッグ)、テルビブジン、エンテカビル、テノフォビル、スタブジン、アバカビル(例えば、PCT/US15/54826に記載されているプロドラッグ)、ジダノシン、エムトリシタビン、ザルシタビン、及びジドブジンがある。
(II)非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤(NNRTI)。NNRTIは逆転写酵素、特にHIV逆転写酵素上の非基質結合部位に可逆的に結合することにより活性部位の形状を変化させるか又はポリメラーゼ活性をブロックするアロステリック阻害剤である。NNRTIの例には、限定されないが、デラビルジン(BHAP、U-90152; RESCRIPTOR(登録商標))、エファビレンツ(DMP-266、SUSTIVA(登録商標))、ネビラピン(VIRAMUNE(登録商標))、PNU-142721、カプラビリン(S-1153、AG-1549)、エミビリン(+)-カラノリドA(NSC-675451)及びB、エトラビリン(TMC-125)、リルピビリン(TMC278、Edurant(商標))、DAPY(TMC120)、BILR-355 BS、PHI-236、及びPHI-443(TMC-278)がある。
(III)プロテアーゼ阻害剤(PI)。プロテアーゼ阻害剤はウイルスプロテアーゼ、特にHIV-1プロテアーゼの阻害剤である。プロテアーゼ阻害剤の例には、限定されないが、ダルナビル、アンプレナビル(141W94、AGENERASE(登録商標))、チプラナビル(PNU-140690、APTIVUS(登録商標))、インジナビル(MK-639、CRIXIVAN(登録商標))、サキナビル(INVIRASE(登録商標)、FORTOVASE(登録商標))、ホスアンプレナビル(LEXIVA(登録商標))、ロピナビル(ABT-378)、リトナビル(ABT-538、NORVIR(登録商標))、アタザナビル(REYATAZ(登録商標))、ネルフィナビル(AG-1343、VIRACEPT(登録商標))、ラシナビル(BMS-234475/CGP-61755)、BMS-2322623、GW-640385X(VX-385)、AG-001859、及びSM-309515がある。
(IV)融合又は侵入阻害剤。融合又は侵入阻害剤は(例えば、HIVエンベロープタンパク質に結合し、ウイルスが宿主細胞と融合するのに必要な構造変化をブロックすることにより)HIVの細胞への侵入をブロックするペプチドのような化合物である。融合阻害剤の例には、限定されないが、CCR5受容体アンタゴニスト(例えば、マラビロク(Selzentry(登録商標)、Celsentri))、エンフビルチド(INN、FUZEON(登録商標))、T-20(DP-178、FUZEON(登録商標))及びT-1249がある。
(V)インテグラーゼ阻害剤。インテグラーゼ阻害剤は、ウイルスのゲノムを宿主細胞のDNA中に挿入するウイルスの酵素であるインテグラーゼ(例えば、HIVインテグラーゼ)の作用をブロックするように設計された抗レトロウイルス薬のクラスである。インテグラーゼ阻害剤の例には、限定されないが、ラルテグラビル、エルビテグラビル、及びMK-2048がある。
【0041】
抗HIV化合物には成熟阻害剤(例えば、ベビリマット)も含まれる。成熟阻害剤は通例、HIV gagに結合し、ウイルスの成熟中のそのプロセッシングを破壊する化合物である。抗HIV化合物にはまた、限定されないが、ALVAC(登録商標)HIV(vCP1521)、AIDSVAX(登録商標)B/E(gp120)、及びこれらの組合せのようなHIVワクチンも含まれる。抗HIV化合物にはまた、HIV抗体(例えば、gp120又はgp41に対する抗体)、特に広範に中和抗体も含まれる。
【0042】
特に薬物が(上に概略を述べた)異なる作用機構を有する場合、1種より多くの抗HIV剤を使用してもよい。例えば、インテグラーゼ阻害剤でない抗HIV剤を本発明のインテグラーゼ阻害剤プロドラッグと組み合わせてもよい。他の抗HIV剤を本発明のインテグラーゼ阻害剤プロドラッグと同時及び/又は別に投与してもよい。上に説明したように、他の抗HIV剤は、本発明のナノ粒子内にインテグラーゼ阻害剤プロドラッグと共に製剤化してもよい。他の抗HIV剤は、本発明のインテグラーゼ阻害剤プロドラッグ(及び/又はそのナノ製剤)と共に組成物(例えば、少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物)内に含有させてもよい。他の抗HIV剤は、本発明のインテグラーゼ阻害剤プロドラッグとは別に(例えば、組成物(例えば、少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物)中で)投与してもよい。
【0043】
本発明のインテグラーゼ阻害剤プロドラッグとの具体的な組合せとしては、限定されないが、インテグラーゼ阻害剤プロドラッグとリルピビリン、インテグラーゼ阻害剤プロドラッグとラミブジン、インテグラーゼ阻害剤プロドラッグとラミブジンプロドラッグ(例えば、PCT/US15/54826に記載されているラミブジンプロドラッグ)、インテグラーゼ阻害剤プロドラッグとラミブジン及びアバカビル、インテグラーゼ阻害剤プロドラッグとラミブジン及びアバカビルプロドラッグ(例えば、PCT/US15/54826に記載されているアバカビルプロドラッグ)、インテグラーゼ阻害剤プロドラッグとラミブジンプロドラッグ(例えば、PCT/US15/54826に記載されているラミブジンプロドラッグ)及びアバカビル、インテグラーゼ阻害剤プロドラッグとラミブジンプロドラッグ(例えば、PCT/US15/54826に記載されているラミブジンプロドラッグ)及びアバカビルプロドラッグ(例えば、PCT/US15/54826に記載されているアバカビルプロドラッグ)、DTGプロドラッグとリルピビリン、DTGプロドラッグとラミブジン、DTGプロドラッグとラミブジンプロドラッグ(例えば、PCT/US15/54826に記載されているラミブジンプロドラッグ)、DTGプロドラッグとラミブジン及びアバカビル、DTGプロドラッグとラミブジン及びアバカビルプロドラッグ(例えば、PCT/US15/54826に記載されているアバカビルプロドラッグ)、DTGプロドラッグとラミブジンプロドラッグ(例えば、PCT/US15/54826に記載されているラミブジンプロドラッグ)及びアバカビル、DTGプロドラッグとラミブジンプロドラッグ(例えば、PCT/US15/54826に記載されているラミブジンプロドラッグ)及びアバカビルプロドラッグ(例えば、PCT/US15/54826に記載されているアバカビルプロドラッグ)、CABプロドラッグとリルピビリン、CABプロドラッグとラミブジン、CABプロドラッグとラミブジンプロドラッグ(例えば、PCT/US15/54826に記載されているラミブジンプロドラッグ)、CABプロドラッグとラミブジン及びアバカビル、CABプロドラッグとラミブジン及びアバカビルプロドラッグ(例えば、PCT/US15/54826に記載されているアバカビルプロドラッグ)、CABプロドラッグとラミブジンプロドラッグ(例えば、PCT/US15/54826に記載されているラミブジンプロドラッグ)及びアバカビル、並びにCABプロドラッグとラミブジンプロドラッグ(例えば、PCT/US15/54826に記載されているラミブジンプロドラッグ)及びアバカビルプロドラッグ(例えば、PCT/US15/54826に記載されているアバカビルプロドラッグ)がある。上で説明したように、他の抗HIV剤を本発明のインテグラーゼ阻害剤プロドラッグと同時及び/又は別に投与してもよい。他の抗HIV剤は本発明のナノ粒子中でインテグラーゼ阻害剤プロドラッグと共に製剤化してもよい。他の抗HIV剤は本発明のインテグラーゼ阻害剤プロドラッグ(及び/又はそのナノ製剤)と共に組成物(例えば、少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物)内に含有させてもよい。他の抗HIV剤は本発明のインテグラーゼ阻害剤プロドラッグとは別に(例えば、組成物(例えば、少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物)中で)投与してもよい。
【0044】
特定の実施形態において、抗HIV療法は高度に活性な抗レトロウイルス療法(HAART)である。特定の実施形態において、少なくとも2種のNRTI及び1種のNNRTIが、本発明のインテグラーゼ阻害剤プロドラッグと共に、場合により少なくとも1種のプロテアーゼ阻害剤及び/又は他の抗HIV剤と共に投与される。
【0045】
上で述べたように、本発明のナノ粒子は少なくとも1種の界面活性剤を含む。「界面活性剤」とは、一般に湿潤剤、洗剤、分散剤、又は乳化剤といわれる物質を含めて表面活性な薬剤をいう。界面活性剤は通常両親媒性の有機化合物である。
【0046】
界面活性剤の例としては、限定されないが、合成又は天然のリン脂質、ペグ化した脂質(例えば、ペグ化したリン脂質)、脂質誘導体、ポリソルベート、両親媒性コポリマー、両親媒性ブロックコポリマー、ポリ(エチレングリコール)-コ-ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PEG-PLGA)、これらの誘導体、リガンドコンジュゲートした誘導体及びこれらの組合せがある。安定なナノ懸濁液を形成することができ、及び/又はHIV感染性/感染CD4+T細胞、マクロファージ及び樹状細胞の標的指向性リガンドに化学的/物理的に結合することができる他の界面活性剤及びそれらの組合せを本発明に使用することができる。界面活性剤のさらなる例には、限定されないが、1)非イオン性の界面活性剤(例えば、ペグ化した及び/又は多糖とコンジュゲートしたポリエステル及び他の疎水性のポリマー性ブロック、例えばポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)、他のポリエステル、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(1,2-ブチレンオキシド)、ポリ(n-ブチレンオキシド)、ポリ(テトラヒドロフラン)、及びポリ(スチレン);グリセリルエステル、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタンエステル、グリセロールモノステアレート、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、アリールアルキルポリエーテルアルコール、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー、ポロキサミン、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、多糖、デンプン及びこれらの誘導体、ヒドロキシエチルデンプン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、及びこれらの組合せ)、並びに2)イオン性の界面活性剤(例えば、リン脂質、両親媒性の脂質、1,2-ジアルキルグリセロ-3-アルキルホスホコリン、1,2-ジステアロイル-sn-グレクロ(glecro)-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[カルボキシ(ポリエチレングリコール)(DSPE-PEG)、ジメチルアミノエタンカルバモイルコレステロール(DC-Chol)、N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウム(DOTAP)、アルキルピリジニウムハライド、第四級アンモニウム化合物、ラウリルジメチルベンジルアンモニウム、アシルカルニチンヒドロクロリド、ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB)、n-オクチルアミン、オレイルアミン、ベンザルコニウム、セチルトリメチルアンモニウム、キトサン、キトサン塩、ポリ(エチレンイミン)(PEI)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)、及びポリ(アリルアミン)(PAH)、ポリ(塩化ジメチルジアリルアンモニウム)(PDDA)、スルホン酸アルキル、リン酸アルキル、ホスホン酸アルキル、ラウリン酸カリウム、ステアリン酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、アルキルポリオキシエチレンサルフェート、アルギン酸、アルギン酸塩、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸塩、ゼラチン、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、硫酸セルロース、硫酸デキストラン及びカルボキシメチルセルロース、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、合成ポリ(アクリル酸)(PAA)、ポリ(メタクリル酸)(PMA)、ポリ(ビニル硫酸)(PVS)、ポリ(スチレンスルホン酸)(PSS)、胆汁酸及びその塩、コール酸、デオキシコール酸、グリココール酸、タウロコール酸、グリコデオキシコール酸、これらの誘導体、並びにこれらの組合せ)がある。
【0047】
本発明の特定の実施形態において、界面活性剤はナノ粒子内及び/又は(上に記載したように)ナノ粒子を合成するための界面活性剤溶液中に約0.0001重量%~約10重量%又は15重量%の範囲の濃度で存在する。特定の実施形態において、界面活性剤の濃度は約0.01重量%~約15重量%、約0.01重量%~約10重量%、又は約0.1重量%~約6重量%の範囲である。特定の実施形態において、ナノ粒子は少なくとも約50重量%、75重量%、80重量%、85重量%、90重量%、95重量%、97重量%、98重量%、99重量%以上の治療剤を含む。
【0048】
本発明の界面活性剤は帯電していても又は中性でもよい。特定の実施形態において、界面活性剤は中性又は負に帯電している(例えば、ポロキサマー、ポリソルベート、リン脂質、及びこれらの誘導体)。
【0049】
特定の実施形態において、界面活性剤は両親媒性ブロックコポリマー又は脂質誘導体である。特定の実施形態において、ナノ粒子の少なくとも1種の界面活性剤は両親媒性ブロックコポリマー、特にポリ(オキシエチレン)の少なくとも1個のブロック及びポリ(オキシプロピレン)の少なくとも1個のブロックを含むコポリマーである。特定の実施形態において、界面活性剤はトリブロック両親媒性ブロックコポリマーである。特定の実施形態において、界面活性剤は、中央のポリプロピレングリコールの疎水性ブロックと、その側面のポリエチレングリコールの2個の親水性ブロックとを含むトリブロック両親媒性ブロックコポリマーである。特定の実施形態において、界面活性剤はポロキサマー407である。
【0050】
特定の実施形態において、両親媒性ブロックコポリマーは少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)のブロック及び少なくとも1つのポリ(オキシプロピレン)のブロックを含むコポリマーである。両親媒性ブロックコポリマーは、限定されないが、次式を有するブロックコポリマーによって例示される。
【0051】
【化8】
(式中、x、y、z、i、及びjは約2~約800、特に約5~約200又は約5~約80の値を有し、また、式(IV)及び(V)に示されているR1、R2対の各々で、一方は水素であり、他方はメチル基である)。当業者には認識され得るように、x、y、及びzの値は通常統計的な平均を表し、またx及びzの値は必ずではないが同じであることが多い。式(I)~(III)は、実際問題として、Bブロック内のイソプロピレン基の配向がランダムであり得る点で単純化し過ぎている。このランダムの配向は、式(IV)及び(V)に示されており、これは、より完全である。そのようなポリ(オキシエチレン)-ポリ(オキシプロピレン)化合物はSanton (Am. Perfumer Cosmet. (1958) 72(4):54-58); Schmolka (Loc. cit. (1967) 82(7):25-30), Schick編、(Non-ionic Suifactants, Dekker, N.Y., 1967 pp. 300-371)に記載されている。幾つかのそのような化合物は「リポロキサマー」、「Pluronics(登録商標)」、「ポロキサマー」及び「シンペロニック」のような一般商品名で市販されている。Pluronics(登録商標)に典型的なA-B-A式とは対照的にB-A-B式内のPluronic(登録商標)コポリマーは「リバース型」Pluronics(登録商標)、「Pluronic(登録商標) R」又は「メロキサポール」といわれることが多い。一般に、ブロックコポリマーは親水性の「A」及び疎水性の「B」のブロックセグメントを有するとして記載することができる。したがって、例えば、式A-B-Aのコポリマーは、別の親水性ブロックに連結された疎水性ブロックに連結された親水性ブロックからなるトリブロックコポリマーである。式(IV)の「ポリオキサミン」ポリマーはBASFから商品名Tetronic(登録商標)で市販されている。式(IV)に示されているポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレンのブロックの順序を逆転させて、同様にBASFから入手可能なTetronic R(登録商標)を作製することができる(Schmolka, J. Am. Oil. Soc. (1979) 59:110参照)。
【0052】
ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレンブロックコポリマーはまた、ランダムに混合したエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの繰返し単位(エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの繰返し単位のランダムな混合物)を含む親水性ブロックにより設計することもできる。ブロックの親水特性を維持するために、エチレンオキシドが優勢であることができる。同様に、疎水性ブロックはエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの繰返し単位の混合物であることができる。そのようなブロックコポリマーはBASFから商品名Pluradot(商標)で入手可能である。第1のセグメントを構成するポリ(オキシエチレン)-ポリ(オキシプロピレン)ブロック単位は専らエチレンオキシドからなる必要はない。また、B-タイプのセグメントの全てが専らプロピレンオキシド単位からなる必要もない。代わりに、最も簡単な場合、例えば、セグメントA内のモノマーの少なくとも1つが側鎖基で置換されていてもよい。
【0053】
幾つかのポロキサマーコポリマーは次式を満たすように設計される。
【0054】
【化9】
ポロキサマーの例には、限定されないが、Pluronic(登録商標)L31、L35、F38、L42、L43、L44、L61、L62、L63、L64、P65、F68、L72、P75、F77、L81、P84、P85、F87、F88、L92、F98、L101、P103、P104、P105、F108、L121、L122、L123、F127、10R5、10R8、12R3、17R1、17R2、17R4、17R8、22R4、25R1、25R2、25R4、25R5、25R8、31R1、31R2、及び31R4がある。Pluronic(登録商標)ブロックコポリマーは接頭文字に2又は3桁の数を続けて示される。接頭文字(L、P、又はF)は各々のポリマーの物理的形態を意味する(液体、ペースト、又はフレーク化可能な固体)。数字コードはブロックコポリマーの構造パラメーターを規定する。このコードの最後の数字は、EOブロックの重量含有率を10単位の重量パーセントで近似している(例えば、数字が8であれば80重量%、又は数字が1であれば10重量%)。残る最初の1又は2桁の数字は中央のPOブロックの分子質量を符号化する。コードを解読するには、対応する数に300を掛けておよその分子質量をダルトン(Da)単位で得る。したがって、Pluronic(登録商標)命名法はブロックコポリマーの特性を参考文献なしで推定するための便利な手法を提供する。例えば、コード「F127」は、固体であり、3600Da(12×300)のPOブロック及び70重量%のEOを有するブロックコポリマーを規定する。各々のPluronic(登録商標)ブロックコポリマーの正確な分子の特性は製造業者から入手することができる。
【0055】
他の生体適合性の両親媒性コポリマーとしては、Gaucher et al. (J. Control Rel. (2005) 109:169-188に記載されているものがある。他のポリマーの例には、限定されないが、ポリ(2-オキサゾリン)両親媒性ブロックコポリマー、ポリエチレングリコール-ポリ乳酸(PEG-PLA)、PEG-PLA-PEG、ポリエチレングリコール-ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PEG-PLG)、ポリエチレングリコール-ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PEG-PLGA)、ポリエチレングリコール-ポリカプロラクトン(PEG-PCL)、ポリエチレングリコール-ポリアスパルテート(PEG-PAsp)、ポリエチレングリコール-ポリ(グルタミン酸)(PEG-PGlu)、ポリエチレングリコール-ポリ(アクリル酸)(PEG-PAA)、ポリエチレングリコール-ポリ(メタクリル酸)(PEG-PMA)、ポリエチレングリコール-ポリ(エチレンイミン)(PEG-PEI)、ポリエチレングリコール-ポリ(L-リジン)(PEG-PLys)、ポリエチレングリコール-ポリ(2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート)(PEG-PDMAEMA)、ポリエチレングリコール-キトサン、及びこれらの誘導体がある。
【0056】
特定の実施形態において、界面活性剤はポロキサマー407(Pluronic(登録商標)F127)である。
【0057】
本発明の界面活性剤は標的指向性リガンドに結合し得る。標的指向性リガンドは、特定のタイプの組織又は細胞型に(例えば、所望の標的:細胞比で)特異的に結合する化合物である。例えば、標的指向性リガンドは、細胞内(例えば、代謝分解から免れる保護された細胞内小器官内)への取込みを促進し得る標的細胞(例えば、マクロファージ)表面マーカー又は受容体の嵌合又は結合に使用することができる。特定の実施形態において、標的指向性リガンドは、細胞表面マーカー/受容体に対するリガンドである。標的指向性リガンドは、標的化組織又は細胞型で優先的に又は排他的に発現される細胞表面マーカー(例えば、タンパク質又は炭水化物)に対して免疫学的に特異的な抗体又はその断片であり得る。標的指向性リガンド(例えば、葉酸)は当技術分野で公知の方法(例えば、PCT/US15/54826)によりポリマーにコンジュゲートされ得る。標的指向性リガンドは直接又はリンカーを介して界面活性剤に結合することができる。一般に、リンカーは、リガンドを界面活性剤に共有結合的に結合させる共有結合又は原子の鎖を含む化学的部分である。リンカーは、リガンド及び界面活性剤の任意の合成的に実行可能な位置に結合することができる。代表的なリンカーは、少なくとも1個の、場合により置換されていてもよい、飽和若しくは不飽和の、線状、分岐若しくは環状の脂肪族基、アルキル基、又は場合により置換されていてもよいアリール基を含み得る。リンカーは低級アルキル又は脂肪族であってもよい。リンカーはまたポリペプチド(例えば、約1~約10個のアミノ酸、特に約1~約5個)であってもよい。特定の実施形態において、標的指向性部分は界面活性剤の両端の一方に結合される。リンカーは非分解性であり得、共有結合、又は生理的な環境若しくは条件下で実質的に開裂することも又は全く開裂することもできない任意の他の化学的構造であり得る。
【0058】
本発明のナノ粒子/ナノ製剤は標的化及び/又は非標的化の界面活性剤を含み得る。特定の実施形態において、本発明のナノ粒子/ナノ製剤中の標的化及び非標的化の界面活性剤のモル比は約0.001~100%、約1%~約99%、約5%~約95%、約10%~約90%、約25%~約75%、約30%~約60%、又は約40%である。特定の実施形態において、ナノ粒子は標的化界面活性剤のみを含む。特定の実施形態において、本発明のナノ粒子/ナノ製剤は葉酸標的化界面活性剤及びその界面活性剤の非標的化型を含む。特定の実施形態において、本発明のナノ粒子/ナノ製剤は葉酸-ポロキサマー407(FA-P407)及び/又はポロキサマー407を含む。
【0059】
本発明の標的化ナノ製剤はナノ粒子をHIV組織及び細胞の聖域/リザーバ(例えば、中枢神経系、腸管関連リンパ系組織(GALT)、CD4+T細胞、マクロファージ、樹状細胞、等)に向かわせる標的指向性リガンドを含み得る。特定の実施形態において、標的指向性リガンドはマクロファージ標的指向性リガンド、CD4+T細胞標的指向性リガンド、又は樹状細胞標的指向性リガンドである。マクロファージ標的指向性リガンドには、限定されないが、葉酸受容体リガンド(例えば、フォレート(葉酸)及び葉酸受容体抗体及びその断片(例えば、Sudimack et al. (2000) Adv. Drug Del. Rev., 41:147-162参照))、マンノース受容体リガンド(例えば、マンノース)、ホルミルペプチド受容体(FPR)リガンド(例えば、N-ホルミル-Met-Leu-Phe(fMLF))、及びタフトシン(テトラペプチドThr-Lys-Pro-Arg)がある。他の標的指向性リガンド(例えば、HIVリザーバを標的とする)には、限定されないが、ヒアルロン酸、gp120及びそのペプチド断片、並びにCD4、CCR5、CXCR4、CD7、CD111、CD204、CD49a、若しくはCD29に対して特異的なリガンド又は抗体がある。以下に実証されるように、ナノ粒子の(例えば、マクロファージに対する)標的化は遊離の薬物又は非標的化ナノ粒子と比較して、秀でた標的指向性、低下した排泄率、低下した毒性、及び延長された半減期を提供する。
【0060】
本発明は少なくとも1種の本発明のプロドラッグ及び/又はナノ粒子(本明細書ではナノARTということがある)及び少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を包含する。上で述べたように、プロドラッグ及び/又はナノ粒子は1種より多くの治療剤を含んでもよい。特定の実施形態において、医薬組成物は第1の治療剤(複数可)を含む第1のプロドラッグ及び/又はナノ粒子、並びに第2の治療剤(複数可)を含む第2のナノ粒子を含み、ここで、第1及び第2の治療剤は異なる。本発明の医薬組成物は他の治療剤(例えば、他の抗HIV化合物(例えば、本明細書に記載されているもの))をさらに含んでいてもよい。
【0061】
本発明はまた、ウイルス感染症、特にレトロウイルス又はレンチウイルス感染症、特にHIV感染症(例えば、HIV-1)を予防、抑制、及び/又は処置する方法も包含する。HIV感染症を処置/抑制するために、本発明の医薬組成物を動物、特に哺乳類、より特定的にはヒトに投与することができる。本発明の医薬組成物は少なくとも1種の他の抗ウイルス剤、特に少なくとも1種の他の抗HIV化合物/剤を含んでいてもよい。また、追加の抗HIV化合物は本発明の抗HIV NPとは別の医薬組成物中で投与してもよい。医薬組成物は同時又は別の時に(例えば、連続して)投与することができる。
【0062】
本発明の医薬組成物の投与のための投薬量範囲は、所望の効果(例えば、HIV感染症、それの症状(例えば、AIDS、ARC)、又はそれにかかりやすい素因の治癒、軽減、処置、及び/又は予防)を生じるのに十分大きなものである。特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は約5μg/kg~約500mg/kgの量で対象に投与される。特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は約5μg/kgより多い、約50μg/kgより多い、約0.1mg/kgより多い、約0.5mg/kgより多い、約1mg/kgより多い、又は約5mg/kgより多い量で対象に投与される。特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は約0.5mg/kg~約100mg/kg、約10mg/kg~約100mg/kg、又は約15mg/kg~約50mg/kgの量で対象に投与される。投薬量は望ましくない交差反応、アナフィラキシー反応、などのような重大な有害な副作用を引き起こすほど大きくすべきではない。一般に、投薬量は患者の年齢、健康状態、性別及び病気の程度と共に変化し得、当業者が決定することができる。投薬量は何らかの対抗症状(counter indications)が出た場合個々の医師により調節することができる。
【0063】
本明細書に記載されているプロドラッグ及び/又はナノ粒子は一般に医薬組成物として患者に投与され得る。本明細書で使用される用語「患者」とはヒト又は動物の対象をいう。これらのナノ粒子は医師の指導の下に治療的に使用され得る。
【0064】
本発明のプロドラッグ及び/又はナノ粒子を含む医薬組成物は投与のため任意の薬学的に許容される担体(複数可)と共に好都合に製剤化することができる。例えば、複合体(complex)は水、緩衝食塩水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、油、洗剤、懸濁化剤、又はこれらの適切な混合物、特に水溶液(水性溶液)のような許容される媒体と共に製剤化することができる。選んだ媒体中のナノ粒子の濃度は変化し得、媒体は医薬組成物の投与の所望の経路に基づいて選ぶことができる。慣用の媒体又は薬剤が投与しようとするナノ粒子と適合しない場合を除いて、医薬組成物へのその使用が考えられる。
【0065】
本発明によるプロドラッグ及び/又はナノ粒子の特定の患者への投与に適した用量及び投薬計画は、医師が患者の年齢、性別、体重、全身病状、並びにプロドラッグ及び/又はナノ粒子が投与される特定の条件及びその重症度を考慮して決定することができる。また医師は投与の経路、医薬担体、及びプロドラッグ及び/又はナノ粒子の生物活性も考慮し得る。
【0066】
適切な医薬組成物の選択はまた、選ばれた投与の方法にも依存し得る。例えば、本発明のプロドラッグ及び/又はナノ粒子は直接注射又は静脈内に投与してもよい。この場合、医薬組成物は注射の部位と適合する媒体に分散したプロドラッグ及び/又はナノ粒子を含む。
【0067】
本発明のプロドラッグ及び/又はナノ粒子は任意の方法で投与することができる。例えば、本発明のプロドラッグ及び/又はナノ粒子は、限定されないが、非経口、皮下、経口、局所、肺、直腸、膣内、静脈内、腹腔内、髄腔内、脳内、硬膜外、筋肉内、皮内、又は頸動脈内に投与することができる。特定の実施形態において、ナノ粒子は筋肉内、皮下、又は血流(例えば、静脈内)に投与される。注射用の医薬組成物は当技術分野で公知である。ナノ粒子を投与する方法として注射を選択する場合、十分な量の分子又は細胞がそれらの標的細胞に到達して生物学的効果を発揮することを確実にするためのステップをとらなければならない。経口投与のための剤形には、限定されないが、錠剤(例えば、コーティング錠及び素錠、チュアブル錠)、ゼラチンカプセル剤(例えば、軟又は硬)、ロゼンジ剤、トローチ剤、液剤、乳剤、懸濁剤、シロップ剤、エリキシル剤、散剤(powders)/顆粒剤(例えば、再構成可能又は分散性)ガム剤、及び発泡性錠剤がある。非経口投与のための剤形には、限定されないが、液剤、乳剤、懸濁剤、分散剤並びに再構成用散剤/顆粒剤がある。局所投与のための剤形には、限定されないが、クリーム剤、ゲル剤、軟膏剤、膏薬剤(salves)、パッチ剤(patches)及び経皮送達システムがある。
【0068】
本発明のプロドラッグ及び/又はナノ粒子を薬学的に許容される担体と密接な混和物中の活性成分として含有する医薬組成物は、慣用の製薬配合技術に従って製造することができる。担体は投与、例えば、静脈内、経口、直接注射、頭蓋内、及び硝子体内に望ましい医薬組成物の形態に応じて広範な形態をとり得る。
【0069】
本発明の医薬組成物は投与の容易さ及び投薬量の均一性のために投薬単位形態で製剤化され得る。投薬単位形態とは、本明細書で使用されるとき、処置を受ける患者に適当な医薬組成物の物理的に個別の単位をいう。各々の投薬量は選択された医薬担体と共に所望の効果を生じるように計算された量の活性成分を含有するべきである。適当な投薬単位を決定する手順は当業者に周知である。特定の実施形態において、本発明のナノ製剤は、その長期作用性の治療効果のために、1~12ヵ月毎に1回又はさらに少ない頻度で投与することができる。例えば、本発明のナノ製剤は0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、15、18、21、24、又はそれ以上の月毎に1回投与することができる。
【0070】
投薬単位は患者の体重に対して比例して増大又は減少し得る。特定の病理学的状態の緩和に適当な濃度は、当技術分野で公知のように投薬量濃度曲線計算によって決定され得る。
【0071】
本発明に従って、プロドラッグ及び/又はナノ粒子の投与に適当な投薬単位は分子又は細胞の毒性を動物モデルで評価することによって決定することができる。医薬組成物中様々な濃度のナノ粒子をマウスに投与することができ、処置の結果として観察される有益な結果及び副作用に基づいて最小及び最大の投薬量を決定することができる。適当な投薬単位はまた、他の標準的な薬物と組み合わせたプロドラッグ及び/又はナノ粒子の処置の効力を評価することによって決定することもできる。ナノ粒子の投薬単位は検出された効果に従って個別に又は各々の処置と組み合わせて決定することができる。
【0072】
プロドラッグ及び/又はナノ粒子を含む医薬組成物は病理学的な症状が低減又は緩和されるまで適当な間隔で投与され得、その後投薬量は維持レベルに低下され得る。特定の場合の適当な間隔は通常、患者の状態に依存するであろう。
【0073】
本発明は、疾患/障害を処置する方法であって、本発明のプロドラッグ及び/又はナノ粒子及び、好ましくは、少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法を包含する。本発明はまた、対象が生体外(ex vivo)の治療により処置される方法も包含する。特に、方法は、細胞を対象から取り出し、細胞をインビトロで本発明のナノ粒子に曝露/接触させ、細胞を対象に戻すことを含む。特定の実施形態において、細胞はマクロファージを含む。疾患又は障害を処置する他の方法を本発明の方法と組み合わせてもよく、本発明の医薬組成物と共に共投与してもよい。
【0074】
本発明はまた、本発明のナノ粒子をインビトロで(例えば、培養中に)細胞に送達することも包含する。プロドラッグ及び/又はナノ粒子は少なくとも1種の担体中で細胞に送達することができる。
【0075】
定義
以下の定義は本発明の理解を容易にするために提供される。
【0076】
単数形態「a」、「an」、及び「the」は前後関係から明らかに他の意味が示されない限り複数の指示対象を含む。
【0077】
「薬学的に許容される」とは、連邦若しくは州政府の規制当局により認可されているか、又は米国薬局方若しくは他の広く認められている薬局方に動物、より特定的にはヒトに使用するものとしてリストされていることを示す。
【0078】
「担体」とは、本発明の活性剤と共に投与される、例えば、希釈剤、アジュバント、保存料(例えば、Thimersol、ベンジルアルコール)、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、可溶化剤(例えば、ポリソルベート80)、乳化剤、緩衝剤(例えば、Tris HCl、酢酸塩(アセテート)、リン酸塩(ホスフェート))、抗微生物剤、増量(bulking)物質(例えば、ラクトース、マンニトール)、賦形剤、助剤又はビヒクルを意味する。薬学的に許容される担体は、石油、動物、植物又は合成起源のものを含めて、水及び油のような無菌の液体であることができる。水又は生理食塩水溶液及び水性デキストロース及びグリセロール溶液は、特に注射可能な溶液のための担体として好ましく使用される。適切な医薬担体は「Remington's Pharmaceutical Sciences」 by E.W. Martin (Mack Publishing Co., Easton, PA); Gennaro, A. R., Remington: The Science and Practice of Pharmacy, (Lippincott, Williams及びWilkins); Liberman, et al., Eds., Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Decker, New York, N.Y.;及びKibbe, et al., Eds., Handbook of Pharmaceutical Excipients, American Pharmaceutical Association, Washingtonに記載されている。
【0079】
本明細書で使用される用語「処置」は、病気に罹っている患者に利益、例えば、患者の状態(例えば、1つ以上の症状)の改善、状態の進行の遅延、等をもたらすあらゆるタイプの処置を意味する。特定の実施形態において、レトロウイルス感染症の処置の結果は、少なくとも感染細胞の数及び/又は検出可能なウイルスのレベルの抑制/低減である。
【0080】
本明細書で使用されるとき、用語「予防」は、状態(例えば、HIV感染症)の発生のリスクがある対象の、その対象がその状態を生じる可能性を低下させる結果となる予防処置をいう。
【0081】
化合物又は医薬組成物の「治療有効量」とは、特定の障害又は疾患の症状を、予防する、抑制する、処置する、又は減らすのに有効な量を意味する。本明細書で微生物感染症(例えば、HIV感染症)の処置とは微生物感染症、それの症状(複数可)、又はそれにかかりやすい素因を治癒、軽減、及び/又は予防することを意味し得る。
【0082】
本明細書で使用されるとき、用語「治療剤」とは、限定されないが、状態、疾患、若しくは障害を処置するか又は状態、疾患、若しくは障害の症状を低減するのに使用することができる、核酸、ペプチド、タンパク質、及び抗体を含む、化学的化合物又は生物学的分子を意味する。
【0083】
本明細書で使用されるとき、用語「小分子」とは、比較的低い分子量(例えば、4,000未満、2,000未満、特に1kDa又は800Da未満)を有する物質又は化合物を意味する。通例、小分子は有機であるが、タンパク質、ポリペプチド、又は核酸ではないが、それらは、アミノ酸又はジペプチドであってもよい。
【0084】
本明細書で使用される用語「抗微生物剤」とは、細菌、菌類、ウイルス、又は原生動物のような微生物を殺すか又はその成長を抑制する物質を意味する。
【0085】
本明細書で使用されるとき、用語「抗ウイルス(薬)」とは、ウイルスを破壊し、及び/又はウイルスの複製(再生)を抑制する物質を意味する。例えば、抗ウイルス薬はウイルス粒子の産生、ウイルス粒子の成熟、ウイルスの付着、ウイルスの細胞内への取込み、ウイルスの構築、ウイルスの放出/出芽、ウイルスの組込み、等を抑制又は予防し得る。
【0086】
本明細書で使用されるとき、用語「高度に活性な抗レトロウイルス療法」(HAART)とは、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、及び融合阻害剤のような治療薬と様々に組み合わせたHIV療法を意味する。
【0087】
本明細書で使用されるとき、用語「両親媒性」は、水及び脂質/非極性環境の両方に溶解する能力を意味する。通例、両親媒性の化合物は親水性の部分及び疎水性の部分を含む。「疎水性」とは非極性環境を優先することを示す(例えば、疎水性の物質又は部分は水よりも炭化水素のような非極性の溶媒により容易に溶解するか又は濡らされる)。「疎水性の」化合物はほとんどが水に不溶である。本明細書で使用されるとき、用語「親水性」とは水に溶解する能力を意味する。
【0088】
本明細書で使用されるとき、用語「ポリマー」は2以上の繰返し単位又はモノマーの化学結合で形成される分子を意味する。用語「ブロックコポリマー」は最も単純には少なくとも2種の異なるポリマーセグメントのコンジュゲートをいい、ここで、各々のポリマーセグメントは同一種類の2以上の隣接する単位を含む。
【0089】
「抗体」又は「抗体分子」は、抗体及びその断片(例えば、scFv)を含めて、特異的な抗原に結合するあらゆる免疫グロブリンである。本明細書で使用されるとき、抗体又は抗体分子としては、完全な免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分の融合体が考えられる。
【0090】
本明細書で使用されるとき、用語「免疫学的に特異的」とは、対象のタンパク質又は化合物の1以上のエピトープと結合するが、抗原性の生物学的分子の混合集団を含有するサンプル中の他の分子を実質的に認識し結合することのないタンパク質/ポリペプチド、特に抗体を意味する。
【0091】
本明細書で使用されるとき、用語「標的指向性リガンド」とは、特定のタイプの組織又は細胞型と特異的に結合し、特に他のタイプの組織又は細胞型とは実質的に結合しない任意の化合物を意味する。標的指向性リガンドの例には、限定されないが、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、抗体、抗体断片、ホルモン、リガンド、炭水化物、ステロイド、核酸分子、及びポリヌクレオチドがある。
【0092】
用語「脂肪族」とは、非芳香族の炭化水素をベースとする部分を意味する。脂肪族化合物は、非環式(例えば、線状又は分岐した)又は環状の部分(例えば、アルキル及びシクロアルキル)であることができ、飽和又は不飽和(例えば、アルキル、アルケニル、及びアルキニル)であることができる。脂肪族化合物は主に炭素の主鎖(例えば、1~約30個の炭素)を含み、ヘテロ原子及び/又は置換基(以下参照)を含んでいてもよい。用語「アルキル」は、単独で、又は他の用語と組み合わせて、指定された数の炭素原子、好ましくは3~30個の炭素原子を含有する直鎖又は分岐鎖の飽和脂肪族炭化水素基を指す。アルキル基の例としては、限定されることはないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソアミル、n-へキシルなどがある。アルキル基の炭化水素鎖は場合により1個以上のヘテロ原子(例えば、酸素、窒素、又は硫黄)により中断されていてもよい。アルキル(又は脂肪族)は、場合により、(例えば約8個未満、約6個未満、又は1~約4個の置換基で)置換されていてもよい。用語「低級アルキル」又は「低級脂肪族」は、それぞれ、炭化水素鎖中に1~3個の炭素を含有するアルキル又は脂肪族を意味する。アルキル又は脂肪族の置換基としては、限定されないが、アルキル(例えば、低級アルキル)、アルケニル、ハロ(例えばF、Cl、Br、I)、ハロアルキル(例えば、CCl3又はCF3)、アルコキシル、アルキルチオ、ヒドロキシ、メトキシ、カルボキシル、オキソ、エポキシ、アルキルオキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アミノ、カルバモイル(例えば、NH2C(=O)-又はNHRC(=O)-、ここでRはアルキルである)、尿素(-NHCONH2)、アルキル尿素、アリール、エーテル、エステル、チオエステル、ニトリル、ニトロ、アミド、カルボニル、カルボキシレート及びチオールがある。主鎖中に少なくとも約5個の炭素を有する脂肪族及びアルキル基は一般に、親水性の置換基による広範な置換がなければ疎水性である。
【0093】
「リンカー」とは、共有結合又は少なくとも2つの化合物を共有結合的に結合する一連の原子を含む化学的部分を意味する。リンカーは、化合物の合成的に実行可能な任意の位置に、しかし好ましくはその化合物の所望の活性をブロックしないようにして、結合することができる。リンカーは当技術分野で広く知られている。特定の実施形態において、リンカーは0(すなわち、結合)~約50個の原子、0~約10個の原子、又は約1~約5個の原子を含有し得る。リンカーは生理的な環境又は条件下で生分解性であり得る(例えば、エステル結合を含む)。
【0094】
用語「アルキレン」又は「アルケニル」とは、好ましくは1~30個の炭素原子を有し、少なくとも1対の炭素原子が二重結合により連結されている、直鎖又は分岐鎖の二価の炭化水素基を意味する。本明細書で使用される「アルキレン」の例としては、限定されることはないが、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンなどがある。
【0095】
単独又は任意の他の用語と組み合わせた用語「アリール」は、指定した数の炭素原子、好ましくは6~10個の炭素原子を含有する炭素環式の芳香族部分(例えばフェニル又はナフチル)を意味する。アリール基の例としては、限定されることはないが、フェニル、ナフチル、インデニル、アズレニル、フルオレニル、アントラセニル、フェナントレニル、テトラヒドロナフチル、インダニル、フェナントリジニルなどがある。他に示さない限り、用語「アリール」は芳香族炭化水素基の各々の可能な位置異性体、例えば1-ナフチル、2-ナフチル、5-テトラヒドロナフチル、6-テトラヒドロナフチル、1-フェナントリジニル、2-フェナントリジニル、3-フェナントリジニル、4-フェナントリジニル、7-フェナントリジニル、8-フェナントリジニル、9-フェナントリジニル及び10-フェナントリジニルも包含する。アリール基の例としては、限定されることはないが、フェニル、ナフチル、インデニル、アズレニル、フルオレニル、アントラセニル、フェナントレニル、テトラヒドロナフチル、インダニル、フェナントリジニルなどがある。
【0096】
本明細書で使用されるとき、用語「シクロアルキル」とは、異なる数の原子が指定されない限り、3~8個の炭素原子を有する飽和の単環式炭素環式環を意味する。シクロアルキルには、例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロへキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチルがある。好ましいシクロアルキル基には置換及び非置換のC3-6シクロアルキルが含まれる。用語シクロアルキル及びその変化形(すなわち、「C3-6シクロアルキル」)は、その属の各々のものを独立して記載することを意図している。同様に、「シクロアルケニル」とは、少なくとも1個のアルケニル基を有し、好ましくは3~8個の炭素原子を有する環化された炭素鎖を意味する。
【実施例
【0097】
以下の実施例は本発明を実施する例示の方法を提供するが、いかなる意味でも本発明の範囲を限定する意図はない。
【0098】
[実施例1]
本明細書において、親の薬物と比較して、改良された生物活性、延長された薬物半減期、増大した疎水性、改良されたタンパク質結合能、改良された生体内分布(組織内分布)、改良された血漿半減期、及び増大した抗ウイルス効力をもつ、新規な長期作用性ドルテグラビル(DTG)プロドラッグナノ製剤が提供される。開発された疎水性の改変DTGプロドラッグ(MDTG)は本来の薬物製剤と比較して最大100倍の改良された細胞の取込みを示す。同様に、細胞保持及び抗レトロウイルス活性に有意な増強が見られた。重要なことに、MDTGナノ製剤は本来の薬物製剤と比較して最大10倍の薬物動態の改良を実証した。注射可能な製剤は1回/月以上投与することができ、一貫した薬物濃度を維持することができる。このように、本発明のプロドラッグ及びその製剤はコンプライアンスを改良し、薬物のリザーバ標的指向性に影響し、全身毒性を低減し得る。プロドラッグは疎水性の開裂可能な部分にコンジュゲートしたDTGの誘導体である。ここで、疎水性の親化合物はより疎水性のエステル誘導体に変換される。これは、薬物のタンパク質結合及びバイオアベイラビリティーを改良することができる脂肪酸、アルキル又はアリール部分の結合によって達成される。エステル化学結合による連結は酵素による開裂を受け易い。誘導体は親の薬物と比較して改良された疎水性を保有する。結晶質プロドラッグの「より」疎水性の性質は、それらプロドラッグを、改良されたバイオ医薬品の特徴を有するさらにより長期作用性のものにすることによってナノ製剤を改良する。MDTGナノ製剤はポリマー性賦形剤の水性懸濁液中に分散した疎水性のプロドラッグ粒子から構成される。薬物放出の機構は、効率的な酵素開裂を補う(follow)プロドラッグの賦形剤からの分解を含み、活性剤を生成させる。システムの利益には、限定されるものではないが、改良された薬物バイオアベイラビリティー及び延長された半減期がある。
【0099】
ヒドロキシル基の脱プロトン化及び脂肪酸へのカップリング
ドルテグラビル(DTG)(2g、4.768mmol、1.0当量(equiv.))を無水ジメチルホルムアミド(20mL)中に溶解し、アルゴン下0℃に冷却した。次いでN,N-ジイソプロピルエチルアミン(1.66mL、9.536mmol、2.0当量)を薬物の予め冷却した溶液に滴下して加えた。次いで塩化ミリストイル(1.30mL、9.536mmol、2.0当量)を脱プロトン化したフェノール溶液に加えた。混合物を撹拌しながら16時間かけて徐々に室温まで暖め、濃縮し、80%EtOAc/Hexで溶離するフラッシュクロマトグラフィーにより精製してプロドラッグを80%の化学収率で得た。改変DTGプロドラッグ(MDTG)の1H-NMRスペクトルは1.21~1.50ppmの広いピーク及び脂肪酸部分上の脂肪族プロトンに対応するピークの存在を示した。
【0100】
製剤の開発
使用したコーティングポリマーはポロキサマー407(P407)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[カルボキシ(ポリエチレングリコール)-2000(DSPE-PEG)、及びポリビニルアルコール(PVA)であった。
【0101】
プロトンNMR分光データに基づいて、重量で100:6の薬物対界面活性剤の比を使用してナノ製剤化されたMDTG及びDTGを生産した。簡潔にいうと、1~5%(w/v)のMDTG又はDTG及び0.06~0.3%(w/v)のP407を水中で混合した。予め混合した懸濁液を湿式ミル粉砕又はホモジナイザー(20,000psiの圧力)により望ましい大きさ及び多分散指数が達成されるまで製剤化した。
【0102】
ナノ製剤は、動的光散乱により粒度、多分散指数(PDI)及びゼータ電位の特性を決定した(図1)。これは、Malvern Zetasizer, Nano Series Nano-ZS (Malvern Instruments Inc., Westborough, MA)を用いて行った。ナノ粒子形状は走査型電子顕微鏡(SEM)により決定した。超高速液体クロマトグラフィータンデム質量分析(UPLC MS/MS)を使用して薬物を定量した。図1に見られるように、DTGの疎水性がMDTGプロドラッグへの誘導体化の際に大幅に改良された。さらに、MDTGの改良された疎水性により、高い薬物充填能力を有する安定な製剤の生産が容易になった。
【0103】
ヒト単球を、マクロファージコロニー刺激因子を含有する細胞培養培地中で7~10日培養してマクロファージに分化させた(Balkundi et al. (2011) Intl. J. Nanomed., 6:3393-3404; Nowacek et al. (2009) Nanomed., 4(8):903-917)。マクロファージをある範囲の製剤及び本来の薬物と共にインキュベートした。各々の時点で、接着性のMDMを1mLのPBSで3回洗浄し、掻き取って1mLの新しいPBSに入れ、950×gで8分間遠心分離によりペレット化した。細胞ペレットを、200μlの高速液体クロマトグラフィー(HPLC)級のメタノール中に再構成し、プローブ超音波処理し、続いて20,000×gで20分間遠心分離した。HPLCを用いて上清の薬物含量を分析した(図2A及び図2B)。図2A及び図2Bに見られるように、DTGのより疎水性のMDTGへの変換及びナノ粒子の形成は薬物の細胞内蓄積をナノ製剤化されたDTGより100倍高いレベルに顕著に改良した。
【0104】
MDMを100μMのDTG、MDTG、P407-MDTG又はFA-P407-MDTGと共に8時間処置した。細胞をPBSで洗浄して余分な遊離の薬物及びナノ粒子を除去した。1、5、10及び15日に、MDMをHIV-1ADAにより0.01感染ウイルス粒子/細胞のMOIで18時間攻撃させた。子孫のビリオン生産を培養培地中で逆転写酵素(RT)活性により測定した(Kalter et al. (1992) J. Clin. Microbiol., 30(4):993-995)(図2C)。HIV-1 p24タンパク質抗原の発現を評価した(Guo et al. (2014) J. Virol., 88(17):9504-9513)。MDMをPBSで洗浄し、4%パラホルムアルデヒドにより15分室温で固定した。PBS中に1%のTriton X-100を含有する10%のBSAを用いて30分室温で細胞をブロックした。ブロックの後、細胞をHIV-1 p24マウスモノクローナル抗体と共に(1:50; Dako, Carpinteria, CA, USA)一晩4℃でインキュベートし、続いて1時間室温でインキュベーションした。HRP標識化ポリマー抗マウス二次抗体(Dako EnVision(登録商標) System)を加えた(1滴/ウェル)。ヘマトキシリン(ウェル当たり500μl)を加えて核を対比染色し、20X対物レンズのNikon TE300顕微鏡を用いて画像を撮った(図2D)。図2C及び図2Dに見られるように、ナノ製剤化されたMDTGについて、MDM保持及び抗レトロウイルス効力に顕著な改善が観察された。
【0105】
6週齢のbalb/cマウスを45mg/kgのナノ製剤化されたDTG又は67mg/kgのMDTG(45mg/kgのDTGと等価)で処置した。投与後1、3、7、14、21及び28日に血漿を集めた。28日に犠牲にした後組織(肝臓、腎臓、脳、脾臓、リンパ節、消化管及び筋肉)を集めた。血漿及び組織の薬物レベルをUPLC-MS/MSでアッセイした(図3)。すなわち、ナノ製剤化されたMDTGのマウスへの単一の筋肉内投与により、ナノ製剤化されたDTGのものより最大10倍高い改良され持続したDTG血液濃度が得られた。特に、1ヶ月でのナノ製剤化されたMDTGの血漿DTG濃度はまだDTGのEC90より高かった。
【0106】
[実施例2]
本明細書において、新規な改変カボテグラビルプロドラッグ(MCAB)並びに持続した部位特異的な薬物送達のためのナノ製剤化されたポロキサマー407(P407-MCAB)又は葉酸(FA)標識化されたナノ製剤(FA-P407-MCAB)のような適切な賦形剤及び安定剤中へのそのカプセル化が提供される。プロドラッグは加水分解可能な共有結合を介して疎水性の部分にコンジュゲートした本来の薬物を含む。MCABナノ製剤はヒト単球由来マクロファージ(MDM)により容易に取り込まれ、薬物放出は最大10日持続した。対照的に、親の薬物製剤は処置のその日(1日)の内にMDMから排除される。特に、ナノ製剤化されたMCABで処置したMDMは、MDMを薬物処置後0、2、5及び10日に感染させたとき、ナノ製剤化された親の薬物と比較して高まった抗レトロウイルス活性を示した。HIV-1p24はこれらの時点のいずれにおいてもNMCABで処置された群で検出されなかった。本明細書に提示したナノ製剤化されたMCABは、丸薬負荷を低下し、ウイルスの反発のリスクを下げ、毒性を制限し、ウイルスリザーバ内への薬物浸透を可能にすることによって1日に多数回の投与を必要とする併用抗レトロウイルス療法(cART)計画を改良し得る。
【0107】
ヒドロキシル基の脱プロトン化及び脂肪酸へのカップリング
無水ジメチルホルムアミド(20mL)中のカボテグラビル(CAB)(2g、4.93mmol、1.0当量)の溶液をアルゴン下0℃に冷却した。次いでN,N-ジイソプロピルエチルアミン(1.7mL、9.86mmol、2.0当量)を薬物の予め冷却した溶液に滴下して加えた。次に脱プロトン化されたフェノール溶液に塩化ミリストイル(1.34mL、9.86mmol、2.0当量)を加えた。混合物を撹拌しながら16時間かけて室温まで徐々に暖め、濃縮し、80%のEtOAc/Hexで溶離するフラッシュクロマトグラフィーで精製して74%の化学収率でプロドラッグを得た。改変されたカボテグラビルプロドラッグ(MCAB)の1H-NMRスペクトルは1.20~1.50ppmの広いピーク及び脂肪酸部分上の脂肪族プロトンに対応するピークの存在を示した。
【0108】
製剤の作成
使用したコーティングポリマーはポロキサマー407(P407)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[カルボキシ(ポリエチレングリコール)-2000(DSPE-PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)であった。
【0109】
プロトンNMR分光データに基づいて、重量で100:6の薬物対界面活性剤の比を使用してナノ製剤化されたMCAB及びCABを生産した。簡潔にいうと、1~5%(w/v)のMCAB又はCAB及び0.06~0.3%(w/v)のP407を水中で混合した。予め混合した懸濁液を湿式ミル粉砕又はホモジナイザー(20,000psiの圧力)により望ましい大きさ及び多分散指数が達成されるまで製剤化した。
【0110】
ナノ製剤の粒度、多分散指数(PDI)及びゼータ電位を動的光散乱(DLS)により特徴付けた(表1)。これは、Malvern Zetasizer, Nano Series Nano-ZS (Malvern Instruments Inc, Westborough, MA)を用いて行った。ナノ粒子の形態を走査型電子顕微鏡(SEM)により決定した。UPLC MS/MSを使用して薬物の定量をした。表1から分かるように、CABの疎水性はMCABへの誘導体化の際に大幅に改良された。MCABの改良された疎水性により、高い薬物充填能力を有する安定な製剤の生産が容易になった。
【0111】
【表1】
【0112】
ヒト単球をマクロファージコロニー刺激因子を含有する細胞培養培地で7~10日培養してマクロファージに分化させた(Balkundi et al. (2011) Intl. J. Nanomed., 6:3393-3404; Nowacek et al. (2009) Nanomed., 4(8):903-917)。マクロファージをある範囲の製剤及び本来の薬物と共にインキュベートした。各々の時点で、接着性の単球由来マクロファージ(MDM)を1mLのPBSで3回洗浄し、1mLの新しいPBS中に掻き取り、950×gで8分の遠心分離によりペレット化した。細胞ペレットを200μlの高速液体クロマトグラフィー(HPLC)級のメタノール中に再構成し、プローブ超音波処理し、続いて20,000×gで20分の遠心分離にかけた。HPLCを用いて上清の薬物含量を分析した(図4A及び図4B)。MCABナノ製剤はヒト単球由来マクロファージ(MDM)により容易に取り込まれ、薬物放出は最大10日持続した。一方、親の薬物製剤は処置のその日(1日)の内にMDMから排除された。
【0113】
MDMを100μMのCAB長期作用性非経口(CAB-LAP)、P407-CAB、P407-MCAB又はFA-P407-MCABで8時間処置した。細胞をPBSで洗浄して余分な遊離の薬物及びナノ粒子を除去した。0、2、5及び10日に、MDMをHIV-1ADAにより0.01感染ウイルス粒子/細胞のMOIで18時間攻撃させた。子孫のビリオン生産を培養培地中の逆転写(RT)活性により測定した(Kalter et al. (1992) J. Clin. Microbiol., 30(4):993-995)。HIV-1 p24タンパク質抗原の発現を評価した(Guo et al. (2014) J. Virol., 88(17):9504-9513)(図4C)。MDMをPBSで洗浄し、4%パラホルムアルデヒドにより15分室温で固定した。PBS中に1%Triton X-100を含有する10%BSAを用いて30分室温で細胞をブロックした。ブロックに続いて、細胞をHIV-1 p24マウスモノクローナル抗体と共に(1:50; Dako, Carpinteria, CA, USA)一晩4℃でインキュベートし、続いて1時間室温でインキュベーションした。HRP標識化したポリマー抗マウス二次抗体(Dako EnVision(登録商標)System)を加えた(1滴/ウェル)。ヘマトキシリン(ウェル当たり500μl)を加えて核を対比染色し、20X対物レンズのNikon TE300顕微鏡を用いて画像を撮った(図4D)。
【0114】
図4に見られるように、CABのより疎水性のMCABへの変換及びナノ粒子の形成はCAB-LAPと比較して薬物の細胞内蓄積を顕著に改良した。MDM保持及び抗レトロウイルス効力にもナノ製剤化されたMCABで顕著な改善が観察された。特に、ナノ製剤化されたMCABで処置したMDMは、MDMを薬物処置後0、2、5及び10日に感染させたとき、ナノ製剤化された親の薬物と比較して、高まった抗レトロウイルス活性を示した。HIV-1p24はこれらの時点のいずれにおいてもNMCABで処置された群で検出されなかった。
【0115】
上記明細書では本発明が属する分野の技術水準を記載するために多くの刊行物及び特許文献が引用されている。これらの引用文献の各々の全開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0116】
以上、本発明のいくつかの好ましい実施形態を記載し具体的に例示して来たが、本発明はそのような実施形態に限定されることを意図しない。特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲及び思想から逸脱することなく本発明に様々な修正を行うことが可能である。
いくつかの実施形態を以下に示す。
項1
式I-Aのプロドラッグ化合物
【化10】
及びその薬学的に許容される塩
[式中、環Aは
【化11】
から選択され、
*で表される不斉炭素の立体化学はR-若しくはS-配置、又はこれらの混合物を示し、
mは0、1、2、又は3であり、
Rは(L)n-R 1 であり、
Lは、場合によりN、S、及びOから選択される1~5個のヘテロ原子により置換されていてもよいC 3 -C 30 アルキル、並びに場合によりN、S、及びOから選択される1~5個のヘテロ原子により置換されていてもよいC 3 -C 30 アルケニルから選択され、
nは0又は1であり、
R 1 はH、アリール、シクロアルキル、及びシクロアルケニルから選択される]。
項2
Rが飽和又は不飽和の脂肪酸残基である、項1に記載のプロドラッグ化合物。
項3
脂肪酸残基が不飽和である、項2に記載のプロドラッグ化合物。
項4
脂肪酸残基が、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノエライジン酸、α-リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、及びドコサヘキサエン酸から選択される残基である、項3に記載のプロドラッグ化合物。
項5
Rがミリスチン酸である、項4に記載のプロドラッグ化合物。
項6
式(I-B)を有する、項1に記載のプロドラッグ化合物又は薬学的に許容される塩。
【化12】
項7
式(I-C)を有する、項1に記載のプロドラッグ化合物又は薬学的に許容される塩。
【化13】
項8
式(I-D)を有する、項1に記載のプロドラッグ化合物又は薬学的に許容される塩。
【化14】
項9
項1に記載のプロドラッグ化合物、及び
少なくとも1種の界面活性剤
を含むナノ粒子。
項10
ナノ粒子の直径が約100nm~1μmである、項9に記載のナノ粒子。
項11
前記界面活性剤が両親媒性ブロックコポリマー又はペグ化されたリン脂質である、項9に記載のナノ粒子。
項12
前記両親媒性ブロックコポリマーが少なくとも1つのポリ(オキシエチレン)のブロック及び少なくとも1つのポリ(オキシプロピレン)のブロックを含む、項9に記載のナノ粒子。
項13
前記界面活性剤がポロキサマー407である、項9に記載のナノ粒子。
項14
少なくとも1つの標的指向性リガンドに結合した界面活性剤をさらに含む、項9に記載のナノ粒子。
項15
前記界面活性剤が少なくとも1つの標的指向性リガンドに結合している、項9に記載のナノ粒子。
項16
前記標的指向性リガンドがマクロファージ標的指向性リガンドである、項15に記載のナノ粒子。
項17
前記マクロファージ標的指向性リガンドが葉酸である、項16に記載のナノ粒子。
項18
葉酸に結合したポロキサマー407を含む、項9に記載のナノ粒子。
項19
少なくとも約80重量%のプロドラッグ化合物を含む、項9に記載のナノ粒子。
項20
少なくとも約90重量%のプロドラッグを含む、項19に記載のナノ粒子。
項21
HIV感染症を処置する際に使用するための項9~20のいずれか一項に記載のナノ粒子。
項22
項9~20のいずれか一項に記載の少なくとも1種のナノ粒子及び少なくとも1種の薬学的に許容される担体を含む医薬組成物。
項23
少なくとも1種の他の抗HIV化合物をさらに含む、項22に記載の医薬組成物。
項24
HIV感染症の処置をそれを必要とする対象において行う方法であって、前記対象に項1に記載のプロドラッグ化合物を投与することを含む、方法。
項25
HIV感染症の抑制をそれを必要とする対象において行う方法であって、前記対象に項1に記載のプロドラッグ化合物を投与することを含む、方法。
項26
HIV感染症の予防をそれを必要とする対象において行う方法であって、前記対象に項1に記載のプロドラッグ化合物を投与することを含む、方法。
項27
HIV感染症の処置をそれを必要とする対象において行う方法であって、前記対象に項9に記載のナノ粒子を投与することを含む、方法。
項28
HIV感染症の抑制をそれを必要とする対象において行う方法であって、前記対象に項9に記載のナノ粒子を投与することを含む、方法。
項29
HIV感染症の予防をそれを必要とする対象において行う方法であって、前記対象に項9に記載のナノ粒子を投与することを含む、方法。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4A
図4B
図4C
図4D