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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】電動機システム
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/06 20060101AFI20221018BHJP
   H02P 25/16 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
H02P27/06
H02P25/16
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018239201
(22)【出願日】2018-12-21
(65)【公開番号】P2020102935
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】守屋 一成
(72)【発明者】
【氏名】平本 健二
(72)【発明者】
【氏名】中井 英雄
(72)【発明者】
【氏名】大谷 裕子
(72)【発明者】
【氏名】浦田 信也
(72)【発明者】
【氏名】難波 雅史
(72)【発明者】
【氏名】谷口 真
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-232299(JP,A)
【文献】特開2003-143897(JP,A)
【文献】特開2016-073097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 27/06
H02P 25/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータを囲むステータコア本体部と、
周回状に配置された複数のティースであって、それぞれが前記ステータコア本体部の壁面から前記ロータ側に突出した複数のティースと、
複数相の巻線を備え、複数の前記ティースのうち各前記巻線に対して定められたティースに前記巻線が配置された集中巻ステータコイルと、
複数相の前記巻線のそれぞれの一端が接続され、前記ロータの周りに回転磁束を発生させる電流を複数相の前記巻線に流すインバータと、
複数相の前記巻線のそれぞれの他端が共通に接続され、複数相の前記巻線の共通接続点に流れる零相電流をスイッチングによって調整し、当該零相電流によって前記ロータにトルクを発生させる零相スイッチングアームと、を備えることを特徴とする電動機システム。
【請求項2】
ロータを囲むステータコア本体部と、
周回状に配置された複数のティースであって、それぞれが前記ステータコア本体部の壁面から前記ロータ側に突出した複数のティースと、
複数相の巻線を備え、複数の前記ティースのうち各前記巻線に対して定められたティースに前記巻線が配置された集中巻ステータコイルと、
複数相の前記巻線のそれぞれの一端が接続され、前記ロータの周りに回転磁束を発生させる電流を複数相の前記巻線に流す第1インバータと、
複数相の前記巻線のそれぞれの他端が接続され、前記ロータの周りに回転磁束を発生させる電流を複数相の前記巻線に流すと共に、複数相の前記巻線に流れる零相電流をスイッチングによって調整し、当該零相電流によって前記ロータにトルクを発生させる第2インバータと、を備えることを特徴とする電動機システム。
【請求項3】
請求項2に記載の電動機システムにおいて、
各前記巻線は、直列接続された正巻線および逆巻線を有し、複数の前記ティースのうち、各前記巻線の正巻線および逆巻線に対して定められたティースに、各前記巻線の正巻線および逆巻線が配置されており、
複数相の前記巻線のそれぞれにおける正巻線および逆巻線の直列接続点が共通に接続されていることを特徴とする電動機システム。
【請求項4】
請求項3に記載の電動機システムにおいて、
複数相の前記巻線として、U相、V相およびW相の前記巻線を備え、
U相の正巻線、V相の逆巻線、およびW相の正巻線が前記第1インバータに接続され、
U相の逆巻線、V相の正巻線、およびW相の逆巻線が前記第2インバータに接続されていることを特徴とする電動機システム。
【請求項5】
請求項1に記載の電動機システムにおいて、
複数相の前記巻線として、U相、V相およびW相の各前記巻線を備え、
U相、V相およびW相の各前記巻線は、直接接続されていない正巻線および逆巻線を備え、
複数の前記ティースのうち、各相の正巻線および逆巻線に対して定められたティースに、各相の正巻線および逆巻線が配置されており、
U相の正巻線、V相の逆巻線、およびW相の正巻線のそれぞれの一端が接続され、前記ロータの周りに回転磁束を発生させる電流を、U相の正巻線、V相の逆巻線、およびW相の正巻線に流す第1の前記インバータと、
U相の正巻線、V相の逆巻線、およびW相の正巻線のそれぞれの他端が共通に接続され、U相の正巻線、V相の逆巻線、およびW相の正巻線の共通接続点に流れる零相電流を調整する第1の前記零相スイッチングアームと、
U相の逆巻線、V相の正巻線、およびW相の逆巻線のそれぞれの一端が接続され、前記ロータの周りに回転磁束を発生させる電流を、U相の逆巻線、V相の正巻線、およびW相の逆巻線に流す第2の前記インバータと、
U相の逆巻線、V相の正巻線、およびW相の逆巻線のそれぞれの他端が共通に接続され、U相の逆巻線、V相の正巻線、およびW相の逆巻線の共通接続点に流れる零相電流を調整する第2の前記零相スイッチングアームと、を備えることを特徴とする電動機システム。
【請求項6】
請求項1に記載の電動機システムにおいて、
複数相の前記巻線のそれぞれは、直接接続されていない正巻線および逆巻線を備え、
複数相の正巻線のそれぞれの一端が接続され、前記ロータの周りに回転磁束を発生させる電流を複数相の正巻線に流す第1の前記インバータと、
複数相の正巻線のそれぞれの他端が共通に接続され、複数相の正巻線の共通接続点に流れる零相電流を調整する第1の前記零相スイッチングアームと、
複数相の逆巻線のそれぞれの一端が接続され、前記ロータの周りに回転磁束を発生させる電流を複数相の逆巻線に流す第2の前記インバータと、
複数相の逆巻線のそれぞれの他端が共通に接続され、複数相の逆巻線の共通接続点に流れる零相電流を調整する第2の前記零相スイッチングアームと、を備えることを特徴とする電動機システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機システムに関し、特に、電動機のステータコイルに流れる電流を調整し、ロータに発生するトルクを制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電気エネルギーによってトルクを発生する電動機が電気自動車等に用いられている。電動機には、ロータに設けられた永久磁石と、ステータに設けられたステータコイルとの間の電磁気的な相互作用によってロータにトルクを発生するものがある。一般に、電動機のステータコイルはインバータに接続される。ステータコイルを構成する多相巻線には、ロータの周りに回転磁束を発生させる多相交流電流がインバータによって流され、回転磁束によってロータにトルクが発生する。
【0003】
なお、以下の特許文献1には、本願発明に関連する電動機が記載されている。この文献には、ステータコイルを構成する多相巻線に流れる零相電流を制御して、ロータに半径方向の力を発生させることが記載されている。零相電流は、ステータコイルを構成する多相巻線に同位相で流れる電流である。特許文献2には、ステータコイルを構成する多相巻線の中性点に電池が接続された回転電機制御装置が記載されている。多相巻線に流れる零相電流がインバータによってスイッチングされ、多相巻線に発生した誘導起電力によって電池の出力電圧が昇圧される。さらに、インバータに含まれる直流電圧源としてのコンデンサが昇圧電圧によって充電される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】2016-42768号公報
【文献】2008-306914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動機のロータに発生するトルクを増加させるためには、電動機に入力する多相交流電力を増加させることが考えられる。しかし、インバータに入力する直流電圧や、インバータの直流電圧利用率によっては、充分な多相交流電力を電動機に入力することが困難となり、必要なトルクが得られないことがある。特許文献1および2には、ステータコイルに流れる多相交流電流に加えて零相電流を利用する技術が記載されているが、これらの文献に記載されている零相電流は、ロータに発生するトルクを増加させるものではない。
【0006】
本発明は、電動機のロータに生じるトルクを増加させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ロータを囲むステータコア本体部と、周回状に配置された複数のティースであって、それぞれが前記ステータコア本体部の壁面から前記ロータ側に突出した複数のティースと、複数相の巻線を備え、複数の前記ティースのうち各前記巻線に対して定められたティースに前記巻線が配置された集中巻ステータコイルと、複数相の前記巻線のそれぞれの一端が接続され、前記ロータの周りに回転磁束を発生させる電流を複数相の前記巻線に流すインバータと、複数相の前記巻線のそれぞれの他端が共通に接続され、複数相の前記巻線の共通接続点に流れる零相電流をスイッチングによって調整し、当該零相電流によって前記ロータにトルクを発生させる零相スイッチングアームと、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、ロータを囲むステータコア本体部と、周回状に配置された複数のティースであって、それぞれが前記ステータコア本体部の壁面から前記ロータ側に突出した複数のティースと、複数相の巻線を備え、複数の前記ティースのうち各前記巻線に対して定められたティースに前記巻線が配置された集中巻ステータコイルと、複数相の前記巻線のそれぞれの一端が接続され、前記ロータの周りに回転磁束を発生させる電流を複数相の前記巻線に流す第1インバータと、複数相の前記巻線のそれぞれの他端が接続され、前記ロータの周りに回転磁束を発生させる電流を複数相の前記巻線に流すと共に、複数相の前記巻線に流れる零相電流をスイッチングによって調整し、当該零相電流によって前記ロータにトルクを発生させる第2インバータと、を備えることを特徴とする。
【0009】
望ましくは、各前記巻線は、直列接続された正巻線および逆巻線を有し、複数の前記ティースのうち、各前記巻線の正巻線および逆巻線に対して定められたティースに、各前記巻線の正巻線および逆巻線が配置されており、複数相の前記巻線のそれぞれにおける正巻線および逆巻線の直列接続点が共通に接続されている。
【0010】
望ましくは、複数相の前記巻線として、U相、V相およびW相の前記巻線を備え、U相の正巻線、V相の逆巻線、およびW相の正巻線が前記第1インバータに接続され、U相の逆巻線、V相の正巻線、およびW相の逆巻線が前記第2インバータに接続されている。
【0011】
望ましくは、複数相の前記巻線として、U相、V相およびW相の各前記巻線を備え、 U相、V相およびW相の各前記巻線は、直接接続されていない正巻線および逆巻線を備え、 複数の前記ティースのうち、各相の正巻線および逆巻線に対して定められたティースに、各相の正巻線および逆巻線が配置されており、U相の正巻線、V相の逆巻線、およびW相の正巻線のそれぞれの一端が接続され、前記ロータの周りに回転磁束を発生させる電流を、U相の正巻線、V相の逆巻線、およびW相の正巻線に流す第1の前記インバータと、U相の正巻線、V相の逆巻線、およびW相の正巻線のそれぞれの他端が共通に接続され、U相の正巻線、V相の逆巻線、およびW相の正巻線の共通接続点に流れる零相電流を調整する第1の前記零相スイッチングアームと、U相の逆巻線、V相の正巻線、およびW相の逆巻線のそれぞれの一端が接続され、前記ロータの周りに回転磁束を発生させる電流を、U相の逆巻線、V相の正巻線、およびW相の逆巻線に流す第2の前記インバータと、U相の逆巻線、V相の正巻線、およびW相の逆巻線のそれぞれの他端が共通に接続され、U相の逆巻線、V相の正巻線、およびW相の逆巻線の共通接続点に流れる零相電流を調整する第2の前記零相スイッチングアームと、を備える。
【0012】
望ましくは、複数相の前記巻線のそれぞれは、直接接続されていない正巻線および逆巻線を備え、複数相の正巻線のそれぞれの一端が接続され、前記ロータの周りに回転磁束を発生させる電流を複数相の正巻線に流す第1の前記インバータと、複数相の正巻線のそれぞれの他端が共通に接続され、複数相の正巻線の共通接続点に流れる零相電流を調整する第1の前記零相スイッチングアームと、複数相の逆巻線のそれぞれの一端が接続され、前記ロータの周りに回転磁束を発生させる電流を複数相の逆巻線に流す第2の前記インバータと、複数相の逆巻線のそれぞれの他端が共通に接続され、複数相の逆巻線の共通接続点に流れる零相電流を調整する第2の前記零相スイッチングアームと、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電動機のロータに生じるトルクを増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態に係る電動機システムの構成を示す図である。
図2】電動機の断面を示す図である。
図3】インバータ制御部の構成を示す図である。
図4】零相制御部の構成を示す図である。
図5】零相電流を時間的に一定とした場合のトルクを示す図である。
図6図5の条件に対して零相電流の極性を逆としたときのトルクを示す図である。
図7】零相電流と、零相磁束によってロータに発生するトルクを示す図である。
図8】第2実施形態に係る電動機システムの構成を示す図である。
図9】第2インバータ制御部の構成を示す図である。
図10】第3実施形態に係る電動機システムの構成を示す図である。
図11】第4実施形態に係る電動機システムの構成を示す図である。
図12】第5実施形態に係る電動機システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
各図を参照して本発明の各実施形態について説明する。複数の図面に示される同一の構成要素については同一の符号を付してその説明を簡略化する。
【0016】
図1には、本発明の第1実施形態に係る電動機システム1の構成が示されている。電動機システム1は、バッテリ10、インバータ12、電動機14、零相スイッチングアームZおよびコントロールユニット18を備えている。インバータ12は、バッテリ10から出力される直流電力を三相交流電力に変換し、電動機14に出力する。電動機14のロータは、インバータ12から出力された三相交流電力によって回転する。電動機14の中性点Nは、零相スイッチングアームZに接続されている。後述するように、零相スイッチングアームZのスイッチングによって電動機14の各巻線に流れる零相電流が調整され、各巻線に流れる三相交流電流のみならず零相電流によってもロータにトルクが発生する。
【0017】
電動機システム1の具体的な構成および動作について説明する。電動機14は、集中巻ステータコイルを構成するU相巻線20U、V相巻線20VおよびW相巻線20Wを備えている。また、電動機14は、U相端子22u、V相端子22v、W相端子22wおよび図示しないロータを備えている。U相巻線20U、V相巻線20VおよびW相巻線20Wのそれぞれの一端は中性点Nで共通に接続されている。U相巻線20Uの他端、V相巻線20Vの他端、およびW相巻線20Wの他端は、それぞれ、U相端子22u、V相端子22v、およびW相端子22wに接続されている。U相端子22u、V相端子22vおよびW相端子22wに三相交流電流が流れることで、U相巻線20U、V相巻線20VおよびW相巻線20Wは、電動機14内に回転磁束を発生する。ロータは回転磁束に同期して回転する。
【0018】
コントロールユニット18は、例えば、演算処理デバイスによって構成され、自らが記憶するプログラムまたは外部から読み込まれたプログラムに従って動作してよい。コントロールユニット18は、インバータ12および零相スイッチングアームZのスイッチング制御を行う。
【0019】
インバータ12は、スイッチングアームU、VおよびWを備えている。スイッチングアームUは、直列接続された上スイッチング素子S1および下スイッチング素子S2から構成されている。スイッチングアームVは、直列接続された上スイッチング素子S3および下スイッチング素子S4から構成されている。スイッチングアームWは、直列接続された上スイッチング素子S5および下スイッチング素子S6から構成されている。
【0020】
スイッチングアームU、VおよびWは並列に接続されており、これらのスイッチングアームの上端はバッテリ10の正極端子に接続され、下端はバッテリ10の負極端子に接続されている。
【0021】
スイッチングアームUにおける上スイッチング素子S1と下スイッチング素子S2との接続点には電動機14のU相端子22uが接続されている。スイッチングアームVにおける上スイッチング素子S3と下スイッチング素子S4との接続点には電動機14のV相端子22vが接続されている。スイッチングアームWにおける上スイッチング素子S5と下スイッチング素子S6との接続点には電動機14のW相端子22wが接続されている。
【0022】
零相スイッチングアームZは、直列接続された上スイッチング素子A1および下スイッチング素子A2を備えている。上スイッチング素子A1と下スイッチング素子A2との接続点には、電動機14の中性点Nが接続されている。上スイッチング素子A1の上端はバッテリ10の正極端子に接続されている。下スイッチング素子A2の下端はバッテリ10の負極端子に接続されている。
【0023】
インバータ12および零相スイッチングアームZが備えるスイッチング素子には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)等の半導体素子が用いられてよい。図1には、スイッチング素子としてIGBTが用いられた例が示されている。各IGBTには、コレクタ端子とエミッタ端子との間に、エミッタ端子側がアノード端子となる向きで接続されたダイオードDが接続されている。
【0024】
図2には、電動機14の軸方向に垂直な断面が示されている。電動機14は、ロータ30、ステータコア32および集中巻ステータコイル36を備えている。ステータコア32はステータコア本体部34および複数のティース(T1~T12)から構成されている。ステータコア本体部34は円柱形状の中空部を有している。図2には、12個のティースT1~T12が設けられた例が示されている。ティースT1~T12は、ステータコア本体部34の内壁面に周回方向に沿って配置され、それぞれがステータコア32の内側に(ロータ30側に)突出している。各ティースT1~T12は、図2に示されている断面形状で軸方向に延伸した形状を有しており、それぞれの先端部には、周方向に突出したフランジが形成されている。隣接するティースの間にはスロット38が形成されている。すなわち、12個のティースT1~T12によって、周回方向に配列された12個のスロット38が形成されている。
【0025】
U相巻線20Uは、U相正巻線20U+およびU相逆巻線U-を備えている。U相正巻線20U+はティースT1およびT7に巻き付けられた導線によって構成され、U相逆巻線20U-はティースT4およびT10に巻き付けられた導線によって構成されている。
【0026】
ここで、正巻線および逆巻線とは、ティースに対する導線の巻き方向が逆である2種類の巻線をいう。正巻線および逆巻線から中性点に電流が流れたとき、あるいは、中性点から正巻線および逆巻線に電流が流れたときには、正巻線が設けられたティースと、逆巻線が設けられたティースには互いに逆向きの磁束が発生する。
【0027】
V相巻線20Vは、V相正巻線20V+およびV相逆巻線20V-を備えている。V相正巻線20V+はティースT5およびT11に巻き付けられた導線によって構成され、V相逆巻線20V-はティースT2およびT8に巻き付けられた導線によって構成されている。
【0028】
W相巻線20Wは、W相正巻線20W+およびW相逆巻線20W-を備えている。W相正巻線20W+はティースT3およびT9に巻き付けられた導線によって構成され、W相逆巻線20W-はティースT6およびT12に巻き付けられた導線によって構成されている。
【0029】
U相巻線20U(20U+,20U-)、V相巻線20V(20V+,20V-)およびW相巻線20W(20W+,20W-)に三相交流電流が流れることで、ステータコア32の内部には回転磁束Φrが発生する。すなわち、外側から内側に向かう磁束と、内側から外側に向かう磁束とが90°間隔(機械角)で現れ、この磁束がU相巻線20U、V相巻線20VおよびW相巻線20Wに流れる三相交流電流に同期して回転する。
【0030】
このように、電動機14は、ロータ30、ステータコア32および集中巻ステータコイル36を備えている。ステータコア本体部34はロータ30を囲んでいる。複数のティースT1~T12は、それぞれがステータコア本体部34の壁面からロータ30側に突出し、周回状に配置されている。集中巻ステータコイル36は、U相、V相およびW相の巻線を備え、ティースT1~T12のうち各巻線に対して定められたものに配置されている。ステータコア32、U相巻線20U、V相巻線20VおよびW相巻線20Wによって、2極6スロットの集中巻ステータが構成される。
【0031】
ロータ30は、円柱形状のロータ本体部40と、4つの永久磁石M1~M4を備えている。ロータ本体部40は、ステータコア本体部34の中空部に、中空部と軸を同じくして配置されている。永久磁石M1~M4は、径方向に垂直な方向を幅方向とし電動機14の軸方向に延びている。永久磁石M1~M4は、隣接する永久磁石の極性が逆になる向きで周回状に配置されている。ステータコア32の内部に発生する回転磁束Φrと、ロータ30に設けられた永久磁石M1~M4との間の磁気的な作用によってロータ30にトルクが発生し、ロータ30は回転磁束と同期した回転速度で回転する。
【0032】
図2では、ある時刻において各巻線に流れる零相電流の向きが黒点印および×印で示されている。黒点印は描画面から離れる方向に流れる零相電流を示し、×印は描画面に向かう方向に流れる零相電流を示している。図2に示された向きの零相電流が各巻線に流れた場合、図2の一点鎖線の矢印で示される方向の零相磁束Φ0が各ティースに発生する。本発明の実施形態に係る電動機システム1では、後述するように、零相磁束Φ0とロータ30との間の磁気的な作用によって、ロータ30にトルクが発生するように零相電流が調整される。
【0033】
図3には、コントロールユニット18に含まれるインバータ制御部50の構成が示されている。インバータ制御部50は、キャリア信号生成部54、目標信号生成部52u、52v、52w、比較部56u、56v、56w、バッファ58u、58vおよび58wを備えている。
【0034】
キャリア信号生成部54はキャリア信号Crを生成し、比較部56u、56vおよび56wに出力する。キャリア信号Crは、時間波形が三角波である信号であってよい。目標信号生成部52u、52vおよび52wは、それぞれ、電動機14のU相巻線20Uに流れるU相電流、V相巻線20Vに流れるV相電流、およびW相巻線20Wに流れるW相電流に対する目標値を示す目標信号Su、SvおよびSwを生成し、それぞれ、比較部56u、56vおよび56wに出力する。目標信号Su、SvおよびSwは、相互の位相差が120°である正弦波信号であってよい。
【0035】
比較部56uは、目標信号Suとキャリア信号Crとの比較に基づいて、制御信号GUuを生成し、バッファ58uに出力する。すなわち、比較部56uは、目標信号Suがキャリア信号Crを上回る期間でハイとなり、目標信号Suがキャリア信号Cr以下である期間でローとなる制御信号GUuを生成し、バッファ58uに出力する。バッファ58uは、制御信号GUuと、制御信号GUuのハイおよびローを反転した制御信号GLuを出力する。
【0036】
同様の処理によって、比較部56vは、目標信号Svとキャリア信号Crとの比較に基づいて制御信号GUvを生成し、バッファ58vに出力する。バッファ58vは、制御信号GUvと、制御信号GUvのハイおよびローを反転した制御信号GLvを出力する。
【0037】
同様の処理によって、比較部56wは、目標信号Swとキャリア信号Crとの比較に基づいて制御信号GUwを生成し、バッファ58wに出力する。バッファ58wは、制御信号GUwと、制御信号GUwのハイおよびローを反転した制御信号GLwを出力する。
【0038】
図1におけるスイッチングアームUにおける上スイッチング素子S1は、制御信号GUuがハイであるときにオンとなり、制御信号GUuがローであるときにオフになる。スイッチングアームUにおける下スイッチング素子S2は、制御信号GLuがハイであるときにオンとなり、制御信号GLuがローであるときにオフになる。
【0039】
図1におけるスイッチングアームVにおける上スイッチング素子S3は、制御信号GUvがハイであるときにオンとなり、制御信号GUvがローであるときにオフになる。スイッチングアームVにおける下スイッチング素子S4は、制御信号GLvがハイであるときにオンとなり、制御信号GLvがローであるときにオフになる。
【0040】
図1におけるスイッチングアームWにおける上スイッチング素子S5は、制御信号GUwがハイであるときにオンとなり、制御信号GUwがローであるときにオフになる。スイッチングアームWにおける下スイッチング素子S6は、制御信号GLwがハイであるときにオンとなり、制御信号GLwがローであるときにオフになる。
【0041】
インバータ制御部50によって、インバータ12が備える各スイッチング素子が制御されることで、電動機14のU相巻線20U、V相巻線20VおよびW相巻線20Wに三相交流電流が流れ、ステータコア32の内部に回転磁束が発生し、この回転磁束とロータ30との磁気的な作用によってロータ30にトルクが発生する。
【0042】
図4には、コントロールユニット18に含まれる零相制御部60の構成が示されている。零相制御部60は、キャリア信号生成部54、零相信号生成部52z、比較部56zおよびバッファ58zを備えている。
【0043】
キャリア信号生成部54はキャリア信号Crを生成し比較部56zに出力する。零相信号生成部52zは、零相電流に対する目標値を示す零相信号Szを生成し、比較部56zに出力する。零相信号Szは、目標信号Su、SvおよびSwの周波数の3倍の周波数を有する正弦波信号であってよい。
【0044】
比較部56zは、零相信号Szとキャリア信号Crとの比較に基づいて、制御信号GUzを生成し、バッファ58zに出力する。バッファ58zは、制御信号GUzと、制御信号GUzのハイおよびローを反転した制御信号GLzを出力する。
【0045】
図1における零相スイッチングアームZにおける上スイッチング素子A1は、制御信号GUzがハイであるときにオンとなり、制御信号GUzがローであるときにオフになる。零相スイッチングアームZにおける下スイッチング素子A2は、制御信号GLzがハイであるときにオンとなり、制御信号GLzがローであるときにオフになる。
【0046】
零相制御部60が実行するスイッチング制御によれば、後述する原理に基づき、ステータコア32内の零相磁束Φ0によってロータ30にトルクが発生するような零相電流が、U相巻線20U、V相巻線20VおよびW相巻線20Wに流れる。これによって、三相交流電流のみならず零相電流をトルクに寄与させて、零相電流、すなわち零相磁束によってトルクを増加させることができる。また、三相交流電流のみならず零相電流をトルクに寄与させるため、バッテリ10から出力される電力の利用効率が向上する。さらに、零相磁束は複数のティースに亘って分布し、回転磁束とは異なる磁路を通るため、ステータコア32における鉄心利用効率が向上する。
【0047】
零相磁束によってロータにトルクを発生させる原理について説明する。図5には、原理を説明するための特性として、仮に零相電流を時間的に一定とした場合のトルクが示されている。横軸はロータの回転電気角を示し、縦軸はロータに発生するトルクを示す。ロータは回転磁束と同期して回転している。トルクTQ1をロータに発生させたときの零相電流の大きさ(絶対値)は、トルクTQ2をロータに発生させたときの零相電流の大きさよりも大きい。トルクTQ2をロータに発生させたときの零相電流の大きさは、トルクTQ3をロータに発生させたときの零相電流の大きさよりも大きい。
【0048】
図6には、原理を説明するための特性として、零相電流を時間的に一定とし、図5に対して零相電流の極性(流れる向き)を逆としたときのトルクが示されている。トルクTQ4をロータに発生させたときの零相電流の大きさは、トルクTQ5をロータに発生させたときの零相電流の大きさよりも大きい。トルクTQ5をロータに発生させたときの零相電流の大きさは、トルクTQ6をロータに発生させたときの零相電流の大きさよりも大きい。
【0049】
図5および図6に示されているように、回転電気角が60°増加する毎にトルクの極性が変化する。したがって、直流の零相電流では、零相磁束によってロータに発生するトルクの向きは一定方向とはならず、零相磁束をロータのトルクに寄与させることは困難である。
【0050】
図5および図6の比較から明らかなように、零相電流の極性を反転させると、ロータに発生するトルクの向きは逆向きとなる。また、零相電流の大きさが大きい程、トルクの大きさは大きい。そこで、回転電気角が60°増加する毎に、零相電流の極性が反転するような正弦波の零相電流を各巻線に流すことでトルクの向きを一定としたものが、本実施形態に係る電動機システム1である。このような零相電流は、回転電気角換算の周期が120°の零相電流である。このような零相電流の周波数は、U相巻線20U、V相巻線20VおよびW相巻線20Wに流れる三相交流電流の周波数の3倍である。
【0051】
この動作原理を図2を参照して説明する。隣接するティースでは零相磁束の向きが逆向きである。図2に示されているように、ある時刻においてティースT1では、零相磁束Φ0は内側から外側に向かっている。また、ティースT2では、零相磁束Φ0は外側から内側に向かい、ティースT3では、零相磁束Φ0は内側から外側に向かっている。以下、ティースT4、T5、・・・・T12では、零相磁束の向きは交互に逆向きとなる。したがって、ロータ30の磁極があるティースの位置から隣接するティースの位置まで回転したときに、零相磁束Φ0の向きが逆向きとなるように零相電流を変化させることで、ロータ30の磁極から見た零相磁束の向きは同一となり、一定方向にトルクが発生する。ロータ30がティースの間隔だけ回転する機械角は30°であり、回転電気角は60°である。すなわち、回転電気角が60°増加する毎に極性が反転するような正弦波の零相電流を各巻線に流すことで、ロータ30に発生するトルクの向きが一定となる。
【0052】
図7には、各巻線に流れる零相電流Izと、零相磁束によってロータに発生するトルクTqが示されている。横軸はロータの回転電気角を示し、縦軸は零相電流Izおよびロータに発生するトルクTqを示す。零相電流Izは回転電気角換算で120°の周期を有している。トルクTqは、回転電気角30°間隔で極大値および極小値を繰り返す。
【0053】
図8には、第2実施形態に係る電動機システム2の構成が示されている。電動機システム2は、バッテリ10、第1インバータ121、第2インバータ122および電動機14を備えている。第1インバータ121は、図1に示されたインバータ12と同一の回路構成を有している。ただし、図1に示されたインバータ12と区別するため、図1に示されたスイッチングアームU、VおよびWは、図7においては、それぞれ、スイッチングアームU1、V1およびW1として示されている。
【0054】
第2インバータ122は、スイッチングアームU2、V2およびW2を備えている。スイッチングアームU2は、直列接続された上スイッチング素子B1および下スイッチング素子B2から構成されている。スイッチングアームV2は、直列接続された上スイッチング素子B3および下スイッチング素子B4から構成されている。スイッチングアームW2は、直列接続された上スイッチング素子B5および下スイッチング素子B6から構成されている。
【0055】
スイッチングアームU2、V2およびW2は並列に接続されており、これらのスイッチングアームの上端はバッテリ10の正極端子に接続され、下端はバッテリ10の負極端子に接続されている。
【0056】
図8には、U相巻線20Uを構成するU相正巻線20U+およびU相逆巻線20U-が示されている。同様に、V相巻線20Vを構成するV相正巻線20V+およびV相逆巻線20V-が示され、さらに、W相巻線20Wを構成するW相正巻線20W+およびW相逆巻線20W-が示されている。
【0057】
この電動機システム2では、U相巻線20U、V相巻線20VおよびW相巻線20Wのそれぞれの一端が第1インバータ121に接続され、U相巻線20U、V相巻線20VおよびW相巻線20Wのそれぞれの他端が第2インバータ122に接続されている。すなわち、第1実施形態に係る電動機システム1では、U相巻線20U、V相巻線20VおよびW相巻線20Wのそれぞれの他端が中性点Nに接続されている一方で、本実施形態に係る電動機システム2では、各巻線の他端が第2インバータ122に接続されている。U相巻線20Uの他端は、スイッチング素子B1およびB2の接続点に接続されている。V相巻線20Vの他端は、スイッチング素子B3およびB4の接続点に接続され、W相巻線20Wの他端は、スイッチング素子B5およびB6の接続点に接続されている。
【0058】
第1インバータ121は、図1に示されているインバータ12と同様、図3に示されたインバータ制御部50によって制御される。図9には、コントロールユニット18に含まれる第2インバータ制御部70の構成が示されている。第2インバータ122は、第2インバータ制御部70によって制御される。第2インバータ制御部70は、キャリア信号生成部54、目標信号生成部72u、72v、72w、零相信号生成部74、加算器76u、76v、76w、比較部56u、56v、56w、バッファ58u、58vおよび58wを備えている。
【0059】
目標信号生成部72u、72vおよび72wは、それぞれ、電動機14のU相巻線20Uに流れるU相電流、V相巻線20Vに流れるV相電流、およびW相巻線20Wに流れるW相電流に対する目標値を示す目標信号Qu、QvおよびQwを生成し、それぞれ、加算器76u、76vおよび76wに出力する。目標信号Qu、QvおよびQwは、相互の位相差が120°である正弦波信号であってよい。
【0060】
零相信号生成部74は、U相巻線20U、V相巻線20VおよびW相巻線20Wに流れる零相電流に対する目標値を示す零相信号S0を生成し、加算器76u、76vおよび76wに出力する。零相信号S0は、目標信号Qu、QvおよびQwの周波数の3倍の周波数を有する正弦波信号であってよい。
【0061】
加算器76uは、目標信号Quに零相信号S0を加算し、それによって得られるU相目標信号Qu0を比較部56uに出力する。加算器76vは、目標信号Qvに零相信号S0を加算し、それによって得られるV相目標信号Qv0を比較部56vに出力する。加算器76wは、目標信号Qwに零相信号S0を加算し、それによって得られるW相目標信号Qw0を比較部56wに出力する。
【0062】
キャリア信号生成部54はキャリア信号Crを生成し、比較部56u、56vおよび56wに出力する。比較部56uは、目標信号Qu0とキャリア信号Crとの比較に基づいて制御信号FUuを生成し、バッファ58uに出力する。バッファ58uは、制御信号FUuと、制御信号FUuのハイおよびローを反転した制御信号FLuを出力する。
【0063】
比較部56vは、目標信号Qv0とキャリア信号Crとの比較に基づいて制御信号FUvを生成し、バッファ58vに出力する。バッファ58vは、制御信号FUvと、制御信号FUvのハイおよびローを反転した制御信号FLvを出力する。比較部56wは、目標信号Qw0とキャリア信号Crとの比較に基づいて制御信号FUwを生成し、バッファ58wに出力する。バッファ58wは、制御信号FUwと、制御信号FUwのハイおよびローを反転した制御信号FLwを出力する。
【0064】
図8におけるスイッチングアームU2の上スイッチング素子B1は、制御信号FUuがハイであるときにオンとなり、制御信号FUuがローであるときにオフになる。スイッチングアームU2の下スイッチング素子B2は、制御信号FLuがハイであるときにオンとなり、制御信号FLuがローであるときにオフになる。
【0065】
スイッチングアームV2の上スイッチング素子B3は、制御信号FUvがハイであるときにオンとなり、制御信号FUvがローであるときにオフになる。スイッチングアームV2の下スイッチング素子B4は、制御信号FLvがハイであるときにオンとなり、制御信号FLvがローであるときにオフになる。
【0066】
スイッチングアームW2の上スイッチング素子B5は、制御信号FUwがハイであるときにオンとなり、制御信号FUwがローであるときにオフになる。スイッチングアームW2の下スイッチング素子B6は、制御信号FLwがハイであるときにオンとなり、制御信号FLwがローであるときにオフになる。
【0067】
インバータ制御部50および第2インバータ制御部70によって、第1インバータ121および第2インバータ122が制御され、電動機14のU相巻線20U、V相巻線20VおよびW相巻線20Wに三相交流電流が流れ、ステータコア32の内部に回転磁束が発生する。また、第2インバータ制御部70によって第2インバータ122が制御されることで、電動機14のU相巻線20U、V相巻線20VおよびW相巻線20Wに図7に示されるような零相電流が流れ、この零相電流に基づく零相磁束Φ0とロータ30との磁気的な作用によってロータ30にトルクが発生する。
【0068】
図10には、第3実施形態に係る電動機システム3の構成が示されている。この電動機システム3は、第2実施形態に係る電動機システム2におけるU相正巻線20U+とU相逆巻線20U-との直列接続点、V相正巻線20V+とV相逆巻線20V-との直列接続点、およびW相正巻線20W+とW相逆巻線20W-との直列接続点を中性点Nで共通に接続し、さらに、V相正巻線20V+と、V相逆巻線20V-とを入れ換えたものである。第1インバータ121および第2インバータ122の動作は、第2実施形態における動作と同様である。
【0069】
V相正巻線20V+と、V相逆巻線20V-とを入れ換えたことの技術的意義について説明する。第1実施形態における電動機14では、図2に示されているように、1つのスロットにある複数の導線には同一方向の電流が流れる。本実施形態のように、図2に対してV相正巻線20V+とV相逆巻線20V-とを入れ換えると、U相正巻線20U+とW相逆巻線20W-があるスロットと、U相逆巻線20U-とW相正巻線20W+があるスロット以外では、隣接する巻線に流れる電流が逆向きとなり磁束を弱め合う。これによって、零相磁束によるトルクの空間的な周期は回転電気角で180°、機械角で90°となる。したがって、ロータ30が同一速度で回転した場合、第1実施形態に係る電動機システム1に比べて零相磁束Φ0によるトルクの脈動周波数が小さくなる。
【0070】
なお、上記では、第1インバータ121がインバータ制御部50によって制御され、第2インバータ122が第2インバータ制御部70によって制御される実施形態について説明した。このような構成の他、第1インバータ121および第2インバータ122が、それぞれに対して個別に設けられた第2インバータ制御部70によって制御される構成としてもよい。
【0071】
図11には、第4実施形態に係る電動機システム4の構成が示されている。この電動機システム4は、第3実施形態に係る電動機システム3におけるU相正巻線20U+、V相逆巻線20V-およびW相正巻線20W+の共通接続点を第1零相スイッチングアームZ1に接続し、U相逆巻線20U-、V相正巻線20V+およびW相逆巻線20W-の共通接続点を第2零相スイッチングアームZ2に接続したものである。各相において正巻線および逆巻線は個別に設けられており、直接接続されていない。
【0072】
第1零相スイッチングアームZ1は、直列接続されたスイッチング素子A11およびA21を備えている。スイッチング素子A11およびA21の接続点には、U相正巻線20U+、V相逆巻線20V-およびW相正巻線20W+の共通接続点が接続されている。スイッチング素子A11の上端はバッテリ10の正極端子に接続され、スイッチング素子A21の下端はバッテリ10の負極端子に接続されている。
【0073】
第2零相スイッチングアームZ2は、直列接続されたスイッチング素子A12およびA22を備えている。スイッチング素子A12およびA22の接続点には、U相逆巻線20U-、V相正巻線20V+およびW相逆巻線20W-の共通接続点が接続されている。スイッチング素子A12の上端はバッテリ10の正極端子に接続され、スイッチング素子A22の下端はバッテリ10の負極端子に接続されている。
【0074】
スイッチングアームZ1を構成するスイッチング素子A11およびA12は、U相正巻線20U+、V相逆巻線20V-およびW相正巻線20W+に流れる零相電流を調整する。スイッチングアームZ2を構成するスイッチング素子A21およびA22は、U相逆巻線20U-、V相正巻線20V+およびW相逆巻線20W-に流れる零相電流を調整する。
【0075】
これによって、U相正巻線20U+、V相逆巻線20V-およびW相正巻線20W+と、U相逆巻線20U-、V相正巻線20V+およびW相逆巻線20W-には、ロータ30にトルクを発生させる零相磁束が発生する。
【0076】
図12には、第5実施形態に係る電動機システム5の構成が示されている。この電動機システム5は、第4実施形態に係る電動機システム4におけるV相正巻線20V+と、V相逆巻線20V-を入れ換えたものである。第4実施形態に係る電動機システム4では、零相磁束によるトルクの空間的な周期は回転電気角で180°、機械角で90°である一方、第5実施形態に係る電動機システム5では、零相磁束によるトルクの空間的な周期は回転電気角で60°、機械角で30°となる。
【符号の説明】
【0077】
1~5 電動機システム、10 バッテリ、12 インバータ、121 第1インバータ、122 第2インバータ、14 電動機、18 コントロールユニット、20U U相巻線、20V V相巻線、20W W相巻線、20U+ U相正巻線、20U- U相逆巻線、20V+ V相正巻線、20V- V相逆巻線、20W+ W相正巻線、20W- W相逆巻線、22u U相端子、22v V相端子、22w W相端子、30 ロータ、32 ステータコア、34 ステータコア本体部、36 集中巻ステータコイル、38 スロット、40 ロータ本体部、50 インバータ制御部、52u,52v,52w,72u,72v,72w 目標信号生成部、52z,74 零相信号生成部、54 キャリア信号生成部、56u,56v,56w,56z 比較部、58u,58v,58w,58z バッファ、60 零相制御部、70 第2インバータ制御部、76u,76v,76w 加算器、U,V,W,U1,V1,W1,U2,V2,W2 スイッチングアーム、Z,Z1,Z2 零相スイッチングアーム、S1~S6,B1~B6,A1,A2,A11,A12,A21,A22 スイッチング素子、T1~T12 ティース、M1~M4 永久磁石、Φr 回転磁束、Φ0 零相磁束。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12