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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】抗O1抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/14 20060101AFI20221018BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20221018BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20221018BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221018BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20221018BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20221018BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20221018BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221018BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20221018BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20221018BHJP
【FI】
C07K16/14
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
A61K39/395 R
A61P31/04
C12P21/08
【請求項の数】 64
(21)【出願番号】P 2019518550
(86)(22)【出願日】2017-10-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-09
(86)【国際出願番号】 US2017056725
(87)【国際公開番号】W WO2018075375
(87)【国際公開日】2018-04-26
【審査請求日】2020-10-12
(31)【優先権主張番号】62/410,005
(32)【優先日】2016-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504333972
【氏名又は名称】メディミューン,エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】516097907
【氏名又は名称】ヒューマブス バイオメド エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン,クン
(72)【発明者】
【氏名】ストーヴァー,チャールズ ケー.
(72)【発明者】
【氏名】ペンニーニ,メガーン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,チュー-シュン
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,シャオドン
(72)【発明者】
【氏名】ヒリアード,ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】カプラン,ギラッド
(72)【発明者】
【氏名】コルティ,ダヴィデ
(72)【発明者】
【氏名】カメローニ,エリザベッタ
(72)【発明者】
【氏名】ベルトラメッロ,マルティナ
【審査官】池上 京子
(56)【参考文献】
【文献】INFECT. IMMUN.,2000年,vol.68, no.5,p.2402-2409
【文献】INFECT. IMMUN.,1997年,vol.65, no.5,p.1754-1760
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
C12P 21/00-21/08
A61K 39/00-39/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
相補性決定領域(CDR):HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3のセットを含む、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)(クレブシエラ・ニューモニエ(K.pneumoniae))O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質であって、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3が、以下のアミノ酸配列:
(a)それぞれ配列番号1、2、3、4、5、および7;
(b)それぞれ配列番号1、2、3、4、6、および7;
(c)それぞれ配列番号1、2、3、4、5、および11;
(d)それぞれ配列番号1、2、3、4、10、および11;
(e)それぞれ配列番号1、59、60、4、5、および11;または
(f)それぞれ配列番号1、59、60、4、10、および11
を含む、単離抗原結合タンパク質。
【請求項2】
前記HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3が、それぞれ配列番号1、2、3、4、5、および7のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項3】
列番号8のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号9のアミノ酸配列を含むVLを含む、請求項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項4】
前記HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3が、それぞれ配列番号1、2、3、4、5、および11のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項5】
配列番号12のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号13のアミノ酸配列を含むVLを含む、請求項4に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項6】
前記HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3が、それぞれ配列番号1、59、60、4、5、および11のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項7】
配列番号61のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号63のアミノ酸配列を含むVLを含む、請求項6に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項8】
配列番号62のアミノ酸配列を含むVHおよび配列番号63のアミノ酸配列を含むVLを含む、請求項6に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項9】
前記抗原結合タンパク質は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原のD-ガラクタンIIドメインに結合する、請求項1~8のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項10】
前記抗原結合タンパク質は、マウス、非ヒト、ヒト化、キメラ、またはリサーフェシングである、請求項1~9のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項11】
前記抗原結合タンパク質は、ヒト化、キメラ、またはリサーフェシングである、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項12】
前記抗原結合タンパク質は、抗体である、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項13】
前記抗原結合タンパク質は、抗体の抗原結合断片である、請求項1~11のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項14】
モノクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、またはその抗原結合断片である、請求項1~13のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項15】
前記抗原結合タンパク質は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、単鎖FvもしくはscFv、ジスルフィド連結Fv、V-NARドメイン、IgNar、イントラボディ、IgGΔCH2、ミニボディ、F(ab’)3、テトラボディ、トリアボディ、ダイアボディ、シングルドメイン抗体、DVD-Ig、Fcab、mAb2、(scFv)2、またはscFv-Fcを含む、請求項1~10、13、または14のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項16】
約4.0E-09~6.0E-09nMの範囲のKdでクレブシエラO1抗原に結合する、請求項1~15のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項17】
結合親和性は、フローサイトメトリー、Biacore(登録商標)、KinExa(登録商標)、またはラジオイムノアッセイによって測定される、請求項16に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項18】
前記抗原結合タンパク質は、a)肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)(クレブシエラ・ニューモニエ(K.pneumoniae))のオプソニン作用による死滅(OPK)を誘導する、b)血清殺菌活性測定法によって測定されるように補体依存性の死滅を介して肺炎桿菌(K.pneumoniae)を死滅させる、および/またはc)リポ多糖(LPS)を中和する、請求項1~17のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項19】
前記抗原結合タンパク質は、(i)肺炎桿菌(K.pneumoniae)のOPKを誘導し、血清殺菌活性測定法によって測定されるように補体依存性の死滅を介して肺炎桿菌(K.pneumoniae)を死滅させ、LPSを中和する、または(ii)肺炎桿菌(K.pneumoniae)のOPKを誘導し、血清殺菌活性測定法によって測定されるように補体依存性の死滅を介して肺炎桿菌(K.pneumoniae)を死滅させるが、LPSを中和しない、請求項18に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項20】
前記肺炎桿菌(K.pneumoniae)は、多薬剤抵抗性である、請求項18または19に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項21】
前記肺炎桿菌(K.pneumoniae)は、株Kp113115またはKp8561である、請求項20に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項22】
前記抗原結合タンパク質は、多薬剤抵抗性の肺炎桿菌(K.pneumoniae)株を抗生物質に対して感受性にする、請求項20~21のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項23】
前記クレブシエラは、抗生物質に対して感受性である、請求項18または19に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項24】
前記抗原結合タンパク質は、リポ多糖(LPS)を中和しない、請求項1~23のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項25】
前記抗原結合タンパク質は、LPSを中和する、請求項1~23のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項26】
前記抗原結合タンパク質は、致命的なクレブシエラによる攻撃に暴露されたマウスにおいて治療的に有効である、請求項1~25のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項27】
前記抗原結合タンパク質は、
(a)IgA定常ドメイン、
(b)IgD定常ドメイン、
(c)IgE定常ドメイン、
(d)IgG1定常ドメイン、
(e)IgG2定常ドメイン、
(f)IgG3定常ドメイン、
(g)IgG4定常ドメイン、および
(h)IgM定常ドメイン
からなる群から選択される重鎖免疫グロブリン定常ドメインを含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項28】
前記抗原結合タンパク質は、IgG1定常ドメインを含む、請求項27に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項29】
前記抗原結合タンパク質は、
(a)Igカッパ定常ドメイン、および
(b)Igラムダ定常ドメイン
からなる群から選択される軽鎖免疫グロブリン定常ドメインを含む、請求項1~28のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項30】
前記抗原結合タンパク質は、ヒトIgG1定常ドメインおよびヒトラムダ定常ドメインを含む、請求項1~26に記載のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質。
【請求項31】
請求項1~30のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質をコードする単離核酸分子。
【請求項32】
前記核酸分子が、制御配列に作動可能に連結される、請求項31に記載の核酸分子。
【請求項33】
請求項31または32に記載の核酸分子を含むベクター。
【請求項34】
請求項31もしくは32に記載の核酸分子または請求項33に記載のベクターにより形質転換された宿主細胞。
【請求項35】
前記宿主細胞が、哺乳類宿主細胞である、請求項34に記載の宿主細胞。
【請求項36】
前記宿主細胞は、HEK293細胞、NS0マウス骨髄腫細胞、PER.C6(登録商標)ヒト細胞、またはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項35に記載の哺乳類宿主細胞。
【請求項37】
請求項1~30のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質を産生するハイブリドーマ。
【請求項38】
請求項1~30のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質を産生する単離宿主細胞。
【請求項39】
請求項1~30のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質を作製するための方法であって、(a)前記抗原結合タンパク質を発現する宿主細胞を培養するステップまたは請求項34~36もしくは38のいずれか一項に記載の宿主細胞または請求項37に記載のハイブリドーマを培養するステップおよび(b)前記抗原結合タンパク質を前記培養宿主細胞またはハイブリドーマから単離するステップを含む方法。
【請求項40】
請求項39に記載の方法を使用して産生される抗原結合タンパク質。
【請求項41】
請求項1~30または40のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質および薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項42】
前記薬学的に許容可能な賦形剤は、保存剤、安定剤、または酸化防止剤である、請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項43】
医薬として使用される請求項41または42に記載の医薬組成物。
【請求項44】
標識基またはエフェクター基をさらに含む、請求項1~30もしくは40のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質または請求項41~43のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項45】
前記標識基が、同位体標識、磁気標識、レドックス活性成分、光学色素、ビオチン化基、ビオチンシグナル伝達ペプチド、緑色蛍光タンパク質(GFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)などの蛍光成分、ヒスチジンペプチド(his)、ヘマグルチニン(HA)、金結合ペプチド、およびFlagなどの二次レポーターによって認識されるポリペプチドエピトープからなる群から選択される、請求項44に記載の抗原結合タンパク質または医薬組成物。
【請求項46】
前記エフェクター基が、放射性同位体、放射性核種、毒素、治療薬、および化学療法剤からなる群から選択される、請求項44に記載の抗原結合タンパク質または医薬組成物。
【請求項47】
クレブシエラ感染症に関連する状態を治療するための医薬の製造における、請求項1~30もしくは40のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質または請求項41~43のいずれか一項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項48】
クレブシエラ感染症に関連する状態の治療、予防、または回復を、それを必要としている対象において行うための組成物であって、有効量の請求項1~30もしくは40のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質または請求項41~43のいずれか一項に記載の医薬組成物を含む組成物。
【請求項49】
クレブシエラに感染した対象においてクレブシエラの増殖を阻害するまたはクレブシエラの数を低下させるための組成物であって、請求項1~30もしくは40のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質または請求項41~43のいずれか一項に記載の医薬組成物を含む組成物。
【請求項50】
肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の同時感染に関連する状態の治療、予防、または回復をそれを必要としている対象において行うための組成物であって、請求項1~30もしくは40のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質または請求項41~43のいずれか一項に記載の医薬組成物を含む組成物。
【請求項51】
肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に同時感染した対象において、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)の毒性を阻害する、低下させる、またはなくすための組成物であって、請求項1~30もしくは40のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質または請求項41~43のいずれか一項に記載の医薬組成物を含む組成物。
【請求項52】
肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の両方に感染した対象の生存を増加させるための組成物であって、請求項1~30もしくは40のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質または請求項41~43のいずれか一項に記載の医薬組成物を含む組成物。
【請求項53】
前記クレブシエラ(Klebsiella)は、抗生物質抵抗性である、請求項48~52のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項54】
前記クレブシエラ(Klebsiella)は、セファロスポリン、キノロン、カルバペネム、メロペネム、フルオロキノロン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、トリメトプリム、スルホンアミド、および/またはコリスチンに対して抵抗性である、請求項53に記載の組成物。
【請求項55】
前記クレブシエラ(Klebsiella)は、抗生物質に対して感受性である、請求項48~52のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項56】
抗生物質に対して抗生物質抵抗性のクレブシエラ株を感作するための組成物であって、請求項1~30もしくは40のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質または請求項41~43のいずれか一項に記載の医薬組成物を含む組成物。
【請求項57】
抗生物質とともに投与するための、請求項48~56のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項58】
前記抗原結合タンパク質および前記抗生物質は、相乗的な治療効果をもたらす、請求項57に記載の組成物。
【請求項59】
抗生物質抵抗性のクレブシエラ株に感染した対象においてクレブシエラ感染症を予防するまたは治療するための組成物であって、前記組成物が抗生物質と同時投与するためのものであり、前記同時投与は、等モル量の前記抗原結合タンパク質または前記抗生物質の投与の個々の効果の合計よりも大きな治療効果をもたらし、前記組成物は、請求項1~30もしくは40のいずれか一項に記載の抗原結合タンパク質または請求項41~43のいずれか一項に記載の医薬組成物を含む、組成物。
【請求項60】
前記治療効果は、前記抗原結合タンパク質または前記抗生物質の1つのみを投与した対象の相加的な生存パーセントよりも大きな生存パーセントをもたらす、請求項59に記載の組成物。
【請求項61】
前記抗生物質は、メロペネムである、請求項57~60のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項62】
クレブシエラ(Klebsiella)は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)、K.オキシトカ(K.oxytoca)、K.プランチコラ(K.planticola)、臭鼻菌(K.ozaenae)、鼻硬腫菌(K.rhinosclermoatis)、および/またはK.グラニュロマティス(K.granulomatis)である、請求項48~61のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項63】
前記状態は、肺炎、尿路感染症、敗血症/セプシス、新生児敗血症/セプシス、下痢、軟部組織感染症、臓器移植後の感染症、外科手術による感染症、創傷感染症、肺感染症、化膿性肝膿瘍(PLA)、眼内炎、髄膜炎、壊死性髄膜炎、強直性脊椎炎、および脊椎関節症からなる群から選択される、請求項47に記載の使用または請求項48、50、53~55、57、58および62のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項64】
前記状態は、院内感染症である、請求項47に記載の使用または請求項48、50、53~55、57、58、62および63のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子的に提出された配列表に対する参照
本出願と共に提出され、ASCIIテキストファイルKLEB-101-WO-PCT_SL.txt(サイズ:37,313バイト;および作成日:2017年10月6日)で電子的に提出された配列表の内容は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明の分野は、概して、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する抗原結合タンパク質(例えば抗体およびその抗原結合断片)ならびにクレブシエラ感染症の予防または治療のためのそれらの結合タンパク質の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
クレブシエラは、肺炎、尿路感染症、新生児敗血症、および外科手術による創傷感染症を含む、日和見感染および院内感染の原因病原体として臨床上の重要性が急速に増しているグラム陰性菌である。そのうえ、化膿性肝膿瘍(PLA)、眼内炎、髄膜炎、および壊死性髄膜炎などのクレブシエラ感染症に関連する、出現しつつある症候群がある。クレブシエラ感染症の臨床上の影響は、例えばPodschun R.and Ullman U.Clin.Microbiol Rev.11:589-603(1998)において議論されている。
【0004】
抗生物質抵抗性が、細菌感染への対処における重大な課題の1つとして出現してきた。例えばIredell J.,et al.,BMJ 351:h6420(2015)を参照されたい。薬剤抵抗性の黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対していくらかの進歩が得られたが、グラム陰性日和見感染症は、非常に問題である。このような中で、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)は、多薬剤抵抗性株が広範にわたって広まっており、特に厄介になってきた。肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)カルバペネマーゼ(carbapenamase)(KPC)およびニューデリーメタロベータラクタマーゼ1(NDM-1)を含む広域スペクトルベータラクタマーゼ(ESBL)およびカルバペネム抵抗性腸内細菌科(CRE)カルバペネマーゼなどのような感染症は、世界中に拡散し、現在の抗生物質の分類は主として不適切なものになった。このような現実は、抗生物質流通ルートの縮小と合わさって、わずかな治療の選択肢しか残さない。最近、いくつかの注目を集める感染が発生しており、これは肺炎桿菌抗生物質抵抗性に関する緊急性を強調する。そのため、抗生物質療法を補完する戦略を開発することは重要である。
【0005】
複数の毒性因子が、莢膜多糖(CPS)およびリポ多糖(LPS)を含めて、肺炎桿菌(K.pneumoniae)の病原に関係してきた。LPSおよびCPSに向けられるポリクローナル抗体は、致命的な肺炎桿菌(K.pneumoniae)感染症の前臨床モデルにおいて防御的である。しかしながら、抗体によりこれらの2つの抗原を標的にすることにより、株の対象範囲に関して重大な課題が生じる。77を超える既知の莢膜血清型および8つのO抗原血清型があり、いずれが最も一般的であるかまたは病原に最も関連しているかは明らかでない。加えて、LPS内の保存エピトープを標的にする限られた数のモノクローナル抗体について、報告された防御効果はない(Brade et al.2001,J Endotoxin Res,7(2):119-24)。
【0006】
したがって、クレブシエラ(例えば肺炎桿菌(K.pneumoniae))感染症、とりわけ抗生物質抵抗性のクレブシエラ感染症に対して防御効果を有する抗体を同定および開発する必要が大いにある。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1結合タンパク質、例えば抗体またはその抗原結合断片および肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1結合タンパク質を使用してクレブシエラ感染症を治療するための方法を提供する。
【0008】
1つの実例では、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質であって、抗原結合タンパク質は、a)クレブシエラのオプソニン作用による死滅(OPK)を誘導する、b)血清殺菌活性測定法(serum bactericidal assay)によって測定されるように補体依存性の死滅を介してクレブシエラを死滅させる、またはc)クレブシエラのOPKを誘導し、血清殺菌活性測定法によって測定されるように補体依存性の死滅を介してクレブシエラを死滅させる、単離抗原結合タンパク質が、本明細書において提供される。
【0009】
1つの実例では、抗原結合タンパク質は、(i)クレブシエラのOPKを誘導し、血清殺菌活性測定法によって測定されるように補体依存性の死滅を介してクレブシエラを死滅させ、かつリポ多糖(LPS)を中和するまたは(ii)クレブシエラのOPKを誘導し、血清殺菌活性測定法によって測定されるように補体依存性の死滅を介してクレブシエラを死滅させるが、LPSを中和しない。いくつかの実施形態では、クレブシエラは、肺炎桿菌(K.pneumoniae)、K.オキシトカ(K.oxytoca)、K.グラニュロマティス(K.granulomatis)、臭鼻菌(K.ozaenae)、鼻硬腫菌(K.rhinosclermoatis)、またはK.プランチコラ(K.planticola)である。1つの実例では、クレブシエラは、表8の列1~134の1つに列挙される株を含め、多薬剤抵抗性である。
【0010】
1つの実例では、抗原結合タンパク質は、a)肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)(肺炎桿菌(K.pneumoniae))のオプソニン作用による死滅(OPK)を誘導する、b)血清殺菌活性測定法によって測定されるように補体依存性の死滅を介して肺炎桿菌(K.pneumoniae)を死滅させる、および/またはc)リポ多糖(LPS)を中和する。
【0011】
1つの実例では、抗原結合タンパク質は、多薬剤抵抗性の肺炎桿菌(K.pneumoniae)株を、少なくとも1つの抗生物質に対して感受性にする。
【0012】
1つの実例では、抗原結合タンパク質は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原のD-ガラクタンIIドメインに結合する。
【0013】
本開示はまた、相補性決定領域(CDR):HCDR1、HDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3のセットを含む、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質であって、HCDR1は、配列番号1のアミノ酸配列を有し、HCDR2は、配列番号2のアミノ酸配列を有し、HCDR3は、配列番号3のアミノ酸配列を有し、LCDR1は、配列番号4のアミノ酸配列を有し、LCDR2は、配列番号5または10のアミノ酸配列を有し、LCDR3は、配列番号11のアミノ酸配列を有する、単離抗原結合タンパク質をも提供する。
【0014】
1つの実例では、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質であって、抗原結合タンパク質は、配列番号12と少なくとも95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一な重鎖可変領域(VH)および/または配列番号13と少なくとも95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一な軽鎖可変領域(VL)を含む、単離抗原結合タンパク質が、本明細書において提供される。1つの実例では、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する抗原結合タンパク質は、配列番号12を含むVHおよび/または配列番号13を含むVLを含む。
【0015】
本開示はまた、配列番号12を含むVHおよび配列番号13を含むVLを含む抗体と、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原中の同じエピトープに特異的に結合する単離抗原結合タンパク質をも提供する。
【0016】
1つの実例では、配列番号12を含むVHおよび配列番号13を含むVLを含む抗体の肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原への結合を競合的に阻害する単離抗原結合タンパク質が、本明細書において提供される。
【0017】
本開示はまた、相補性決定領域(CDR):HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3のセットを含む、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質であって、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3は、それぞれ配列番号41、42、43、44、45、および46、それぞれ配列番号32、33、34、35、36、および38、それぞれ配列番号32、33、34、35、37、および38、それぞれ配列番号1、2、3、4、5、および7、それぞれ配列番号1、2、3、4、6、および7、それぞれ配列番号14、15、16、17、18、および20、それぞれ配列番号14、15、16、17、19、および20、それぞれ配列番号23、24、25、26、27、および29、それぞれ配列番号23、24、25、26、28、および29のアミノ酸配列を含む、単離抗原結合タンパク質をも提供する。
【0018】
1つの実例では、配列番号47、配列番号39、配列番号8、配列番号21、もしくは配列番号30を含むVHおよび/または配列番号48、配列番号40、配列番号9、配列番号22、もしくは配列番号31を含むVLを含む、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質が、本明細書において提供される。
【0019】
1つの実例では、それぞれ配列番号47および配列番号48、それぞれ配列番号39および配列番号40、それぞれ配列番号8および配列番号9、それぞれ配列番号21および配列番号22、またはそれぞれ配列番号30および配列番号31を含むVHおよびVLを含む抗体と、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原中の同じエピトープに特異的に結合する単離抗原結合タンパク質が、本明細書において提供される。
【0020】
1つの実例では、それぞれ配列番号47および配列番号48、それぞれ配列番号39および配列番号40、それぞれ配列番号8および配列番号9、それぞれ配列番号21および配列番号22、またはそれぞれ配列番号30および配列番号31を含むVHおよびVLを含む抗体の肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原への結合を競合的に阻害する単離抗原結合タンパク質が、本明細書において提供される。
【0021】
1つの実例では、抗原結合タンパク質は、抗体である。1つの実例では、抗原結合タンパク質は、抗体の抗原結合断片である。1つの実例では、抗原結合タンパク質は、モノクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、またはその抗原結合断片である。1つの実例では、抗原結合タンパク質は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、単鎖FvもしくはscFv、ジスルフィド連結Fv、V-NARドメイン、IgNar、イントラボディ、IgGΔCH2、ミニボディ、F(ab’)3、テトラボディ、トリアボディ、ダイアボディ、シングルドメイン抗体、DVD-Ig、Fcab、mAb2、(scFv)2、またはscFv-Fcを含む。
【0022】
本開示はまた、本明細書において開示される抗体またはその抗原結合断片を含む抗原結合タンパク質をコードする単離核酸分子をも提供する。1つの実例では、核酸分子は、制御配列に作動可能に連結される。1つの実例では、本明細書において提供される核酸分子を含むベクターが、本明細書において提供される。
【0023】
本開示はまた、本明細書において提供される核酸分子または本明細書において提供されるベクターで形質転換された宿主細胞をも提供する。1つの実例では、宿主細胞は、例えば、HEK293細胞、NS0マウス骨髄腫細胞、PER.C6(登録商標)ヒト細胞、またはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を含む哺乳類宿主細胞である。
【0024】
本開示はまた、本明細書において提供される抗体またはその抗原結合断片を含む抗原結合タンパク質を作製するための方法であって、(a)抗原結合タンパク質を発現する宿主細胞を培養するステップまたは本明細書において提供される宿主細胞もしくは本明細書において提供されるハイブリドーマを培養するステップおよび(b)その抗原結合タンパク質を培養宿主細胞から単離するステップを含む方法をも提供する。1つの実例では、本明細書において提供される方法を使用して産生される抗原結合タンパク質が、本明細書において提供される。
【0025】
本開示はまた、その抗体またはその抗原結合断片を含む本明細書の抗原結合タンパク質、および薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物を提供する。1つの実例では、薬学的に許容可能な賦形剤が保存剤、安定剤、または酸化防止剤である。1つの実例では、医薬組成物が医薬として使用するためのものである。
【0026】
本開示はまた、クレブシエラ感染症に関連する状態を治療するための、本明細書において提供される抗原結合タンパク質(抗体もしくはその抗原結合断片を含む)または医薬組成物の使用をも提供する。1つの実例では、クレブシエラ感染症に関連する状態の治療、予防、または回復を、それを必要としている対象において行うための方法であって、有効量の本明細書において提供される抗原結合タンパク質(抗体もしくはその抗原結合断片を含む)または本明細書において提供される医薬組成物を対象に投与するステップを含む方法が、本明細書において提供される。1つの実例では、クレブシエラ感染症に関連する状態の治療を、それを必要としている対象において行うための方法は、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片)を含む抗原結合タンパク質の有効量を投与するステップを含む。1つの実例では、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する抗原結合タンパク質は、抗体またはその抗原結合断片である。1つの実例では、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する抗原結合タンパク質は、本明細書において提供される抗原結合タンパク質または本明細書において提供される医薬組成物である。1つの実例では、クレブシエラは、肺炎桿菌(K.pneumoniae)、K.オキシトカ(K.oxytoca)、K.プランチコラ(K.planticola)、臭鼻菌(K.ozaenae)、鼻硬腫菌(K.rhinosclermoatis)、および/またはK.グラニュロマティス(K.granulomatis)である。
【0027】
1つの実例では、クレブシエラ(抗生物質抵抗性のクレブシエラを含む)に感染した対象において、クレブシエラの増殖を阻害するまたはクレブシエラの数を低下させるための方法であって、本明細書において提供される抗原結合タンパク質または本明細書において提供される医薬組成物をそれを必要としている対象に投与するステップを含む方法が、本明細書において提供される。1つの実例では、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する抗原結合タンパク質は、抗体またはその抗原結合断片である。1つの実例では、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する抗原結合タンパク質は、本明細書において提供される抗原結合タンパク質または本明細書において提供される医薬組成物である。1つの実例では、クレブシエラは、肺炎桿菌(K.pneumoniae)、K.オキシトカ(K.oxytoca)、K.プランチコラ(K.planticola)、臭鼻菌(K.ozaenae)、鼻硬腫菌(K.rhinosclermoatis)、および/またはK.グラニュロマティス(K.granulomatis)である。
【0028】
本開示はまた、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の同時感染に関連する状態の治療、予防、または回復をそれを必要としている対象において行うための方法であって、本明細書において提供される抗原結合タンパク質(抗体もしくはその抗原結合断片を含む)または本明細書において提供される医薬組成物を含む、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する抗原結合タンパク質の有効量を前記対象に投与するステップを含む方法をも提供する。
【0029】
1つの実例では、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に同時感染した対象において、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)の毒性を阻害する、低下させる、もしくはなくすための方法または肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の両方に感染した対象の生存を増加させるための方法であって、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する抗原結合タンパク質の有効量を対象に投与するステップを含む方法が、本明細書において提供される。
【0030】
本開示はまた、抗生物質に対して抗生物質抵抗性のクレブシエラ株を感作するための方法であって、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する抗原結合タンパク質(抗体またはその抗原結合断片を含む)と抗体抵抗性のクレブシエラ株を接触させるステップを含む方法をも提供する。1つの実例では、方法は、抗生物質を投与するステップをさらに含む。1つの実例では、抗原結合タンパク質および抗生物質は、相乗的な治療効果をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1A-B】図1A-Cは、抗肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原抗体の活性を示す図である。図1Aは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)による、精製O1 LPSに結合する抗体の能力を示す。図1Bは、血清殺菌活性測定法(SBA)を使用して示されるように、補体依存性の死滅を媒介する抗体の活性を示す。
図1C図1Cは、オプソニン作用による死滅(OPK)を誘導する抗体の能力を示す。分類I抗体(例えば54H7およびKPB202)ならびに分類II抗体(例えばKPA27、KPE33、およびKPJ4)は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)のOPKを誘導し、SBAアッセイにおいて測定されるように、肺炎桿菌(K.pneumoniae)を死滅させる。しかしながら、分類I抗体はまたLPSを中和するが、分類II抗体は中和しない。
図2図2は、抗O1-LPS抗体が、肺炎桿菌(K.pneumoniae)株Kp8045(O1:K1)に対する鼻腔内肺感染症モデルにおいて、細菌による肺の負担を低下させることを示す図である。感染の48時間後に投与した場合、15mg/kgのKPE33は、細菌による肺の負担を有意に低下させ、15mg/kgの他の抗O1抗体もまた、約2~3対数、臓器負担を低下させた。無関係のヒトIgG1抗体(IgGコントロール)は、コントロールとして使用した。
図3A-B】図3A-Cは、抗O1抗原抗体KPE33が、細菌感染の1時間後に投与された場合に、致命的な細菌による攻撃からマウスを防御することを示す図である。図3Aは、KPE33が、ヒトIgG1コントロール抗体(R347)と比較して、多薬剤抵抗性の肺炎桿菌(K.pneumoniae)カルバペネム抵抗性(CRE)株Kp1131115(O1)による致命的な細菌性肺炎モデルにおいて生存を用量依存的に強化したことを示す。図3Bは、KPE33が、ヒトIgG1コントロール抗体(R347)と比較して、広域スペクトルベータ-ラクタマーゼ(ESBL)株Kp8561(O1)による致命的な菌血症モデルにおいて生存を有意に強化したことを示す。
図3C図3Cは、KPE33-H32+L2016(E1Q)(「KPE33-H32」)およびKPE33-H32+L2016(E1Q)(「KPE33-H33」)が、ヒトIgG1コントロール抗体(R347)と比較して、多薬剤抵抗性の肺炎桿菌(K.pneumoniae)カルバペネム抵抗性(CRE)株Kp1131115(O1)による致命的な細菌性肺炎モデルにおいて生存を用量依存的に強化したことを示す。
図4A-B】図4A-Bは、KPE33が、肺炎(図4A)および菌血症(図4B)モデルの両方において抗生物質メロペネムと相乗的に作用することを示す図である。抗生物質および抗体の両方は、ニューモニエ(pneumoniae)O1株Kp8045(図4A)またはKp8561(図4B)による感染後に投与した。メロペネムおよびKPE33の組み合わせは、メロペネムもしくはKPE33のいずれかの単独療法またはヒトIgG1コントロール抗体(R347)およびメロペネムの組み合わせよりも、肺炎および菌血症モデルの両方において有意によりよい防御を示した。
図5図5は、KPE33v2016を生成するためのKPE33の配列最適化を示す図である。グラフは、Octetプラットフォームによって測定されるように、O1 LPSへのKPE33-rIgG1(左)およびKPE33v2016(右)の結合を示す。KPE33およびKPE33v2016の両方は、それぞれ平均5.83E-09および4.13E-09で同等の親和性定数(K)を示した。下のパネルは、KPE33可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)についてのアミノ酸配列ならびに最適化KPE33v2016 VHおよびVLについてのアミノ酸配列を示す。図は、出ている順番に、それぞれ配列番号8、12、9、および13を開示する。
図6図6は、配列最適化KPE33(KPE33-V-2016)が、致命的な肺炎モデルにおいて防御活性を維持したことを示す図である。KPE33またはKPE33-V-2016は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)カルバペネム抵抗性(KPC)株による細菌感染の1時間後に6mg/kgで投与した。両方の抗体は、ヒトIgG1コントロール抗体と比較した場合、同様のレベルの防御を示した。KPE33のIgG2サブクラスもまた、このモデルにおいて比較し、それは、KPE33-IgG1よりもわずかに低い活性を示した。
図7A-B】図7A-Dは、KPE33が、肺炎桿菌(K.pneumoniae)および黄色ブドウ球菌(S.aureus)の同時感染モデルにおいて防御することを示す図である。図7Aは、肺炎桿菌(K.pneumoniae)および黄色ブドウ球菌(S.aureus)の亜致死接種材料による同時感染が致命的な肺炎を引き起こしたことを示す。肺炎桿菌(K.pneumoniae)による細菌の負担は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)のみに感染したマウスと比較して、肺炎桿菌(K.pneumoniae)および黄色ブドウ球菌(S.aureus)に同時感染したマウスの肺(図7B)および脾臓(図7C)において、有意に増加した。
図7C-D】肺炎桿菌(K.pneumoniae)による細菌の負担は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)のみに感染したマウスと比較して、肺炎桿菌(K.pneumoniae)および黄色ブドウ球菌(S.aureus)に同時感染したマウスの肺(図7B)および脾臓(図7C)において、有意に増加した。図7Dは、同時感染の24時間前のKPE33(0.5mL、ip)による1回の治療が、致命的な同時感染からマウスを救ったことを示す。
図8図8は、抗O1抗原抗体54H7が、LPSによる攻撃の後に血清サイトカインを低下させることを示す図である。54H7およびIgG1コントロール抗体は、LPSによる攻撃の3時間前にマウスに与えた。次いで、3時間後に、動物から血液を採り、血清中のサイトカインを測定した。54H7は、2つのO1 LPS攻撃モデル(Kp43816 LPSおよびKp15380 LPS)中の血清IL-6、ケモカインCXCL-1、およびTNF-アルファを低下させた。ポリミクシンB(PMB)は、ポジティブコントロールとして使用した。
図9図9は、54H7が、内毒血症LPS誘発性セプシスモデルにおいてマウスを防御することを示す図である。54H7およびコントロール抗体は、LPSによる攻撃の24時間前にマウスに与えた。54H7は、コントロールIgG抗体(R347)と比較して、1mg/kgという低い濃度で有意な防御をもたらした。
図10A-B】図10A-Bは、マウスにおける細菌攻撃モデルにおける54H7の効果を示す図である。図10Aは、15mg/kg 54H7が、致命的な肺炎からマウスを防御することを実証し、図10Bは、54H7が、このモデルにおいて抗生物質メロペネムと相乗作用を示すことを実証する。
図11図11は、LPS構造におけるD-ガラクタンIIドメインをコードするwbbYZ遺伝子の欠失により、フローサイトメトリー分析によって示されるように、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)株Kp113115にKPE33抗体および54H7抗体が結合しなくなることを示す図である。
図12図12は、脂質A、コアオリゴ糖、および繰り返しオリゴ糖単位から構成される非常に可変性のO抗原を含むO1 LPSの構造を示す図である。下の表は、O1、O2a、およびO2ac LPS血清型の化学組成を提供する。
図13図13は、KPE33および54H7が、O1 LPS上の同じエピトープへの結合について競合しないことを示す図である。競合的結合は、精製O1 LPSをあらかじめロードした捕捉プローブを使用し、Fortebio Octetによって測定した。10μg/mL KPE33による最初の結合の後に、プローブを、10μg/mL KPE33と等濃度の54H7(黒色の線)、KPE33(濃い灰色の線)、またはコントロール抗体R347(明るい灰色の線)とを含有する抗体混合物と共にインキュベートした。
図14A-B】図14A-Dは、γδT細胞動員およびIL-17シグナル伝達が、抗O1抗体による防御と相関することを示す図である。図14Aは、抗LPSモノクローナル抗体により予防的に治療し、肺炎桿菌(K.pneumoniae)(1e4 CFU Kp8045)に感染させたマウスの肺におけるγδTCRT細胞のパーセントについてのフローサイトメトリー分析を示す。図14Bは、抗LPSモノクローナル抗体により治療し(感染の1時間後)、肺炎桿菌(K.pneumoniae)(1e4 CFU Kp8045)に8時間感染させたマウスの肺におけるγδTCRT細胞のパーセントについてのフローサイトメトリー分析を示す。
図14C-D】図14Cは、c-IgGまたはKPE33により予防的に免疫化し、24時間後に肺炎桿菌(K.pneumoniae)(1e4 CFU Kp8045)に感染させたC57BL/6(野生型)およびil17a(IL-17ノックアウト)マウスの生存を示す(p値は、KPE33野生型(WT)マウスおよびKPE33ノックアウト(KO)マウスの間の有意性を示す;群当たりN=5)。図14Dは、c-IgGまたは54H7により予防的に免疫化し、24時間後に肺炎桿菌(K.pneumoniae)(1e4 CFU Kp8045)に感染させたC57BL/6(野生型)およびil17a(IL-17ノックアウト)マウスの生存を示す(群当たりN=5)。統計的有意性は、ANOVA、その後に続くDunn検定(図14A)またはログランク検定(図14C)によって決定した。データは、少なくとも2つの独立した実験の代表である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示は、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原に結合する抗体またはその抗原結合断片を含む、単離結合タンパク質を提供する。関連するポリヌクレオチド、ベクター、宿主細胞、および抗体またはその抗原結合断片を含む肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1結合タンパク質を含む医薬組成物も提供される。本明細書において開示される、抗体または抗原結合断片を含むO1結合タンパク質を作製および使用する方法も提供される。本開示はまた、本明細書において開示される、抗体または抗原結合断片を含むO1結合タンパク質を投与することにより、クレブシエラ感染症(例えば、O1血清型肺炎桿菌などの肺炎桿菌)に関連する状態を予防および/または治療する方法も提供する。
【0033】
本開示がより容易に理解されるために、ある用語について最初に定義する。さらなる定義は詳細な説明の全体にわたって示される。
【0034】
I.定義
用語「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が明確に示さない限り、複数の指示物を含む。例えば、「抗原結合タンパク質」は、1つ以上の抗原結合タンパク質を示すことが理解される。用語「1つの(a)」(または「1つの(an)」)ならびに用語「1つ以上」および「少なくとも1つ」は、本明細書では同義的に使用することができる。さらに、「および/または」は、本明細書で使用される場合、2つの指定される特徴または構成要素の各々の、他方を伴うまたは伴わない具体的な開示と解釈されるべきである。したがって、用語「および/または」は、本明細書で「Aおよび/またはB」などの語句で用いられるとき、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(単独)、および「B」(単独)を含むことが意図される。同様に、用語「および/または」は、「A、B、および/またはC」などの語句で用いられるとき、以下の態様の各々を包含することが意図される:A、B、およびC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);およびC(単独)。
【0035】
用語「含む」は、全般的に、包含するという意味で使用される、すなわち、1つ以上の特徴または構成要素の存在を許可する。本明細書において態様が用語「含む」を用いて記載される場合は常に、「からなる」および/または「から本質的になる」の用語で記載される他の点で類似の態様も提供される。
【0036】
本明細書および請求項の全体にわたって数値に関連して使用される用語「約」は、当業者によく知られており、許容され得る精度の幅を意味する。一般に、そのような精度の幅は±10%である。
【0037】
特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての科学技術用語は、本開示が関係する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。例えば、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,2nd ed.,2002,CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.,1999,Academic Press;およびOxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Pressが、本開示で使用される用語の多くの一般的な辞書を当業者に提供する。
【0038】
単位、接頭辞、および記号は、それらの国際単位系(SI)で認められている形式で示される。数値範囲は、その範囲を定義する数を含む。特に指示されない限り、アミノ酸配列は左から右にアミノからカルボキシ方向に記載する。本明細書に提供される見出しは、本明細書を全体として参照することによって有され得る種々の態様または本開示の態様の限定ではない。したがって、この直後に定義する用語は、本明細書を全体として参照することによってさらに十全に定義される。
【0039】
用語「抗原結合タンパク質」は、抗O1抗体またはその抗原結合断片など、標的、例えば肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原を認識し、特異的に結合する1つ以上のポリペプチドから構成される分子を指す。
【0040】
用語「抗体」は、免疫グロブリン分子の可変領域内の少なくとも1つの抗原認識部位を介してタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、または前述の組み合わせなどの標的を認識し、それに特異的に結合する免疫グロブリン分子を意味する。本明細書で使用されるとき、用語「抗体」は、その抗体が所望の生物学的活性を呈する限りにおいて、インタクトなポリクローナル抗体、インタクトなモノクローナル抗体、少なくとも2つのインタクトな抗体から作成された二重特異性抗体などの多重特異性抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体を含む融合タンパク質、および任意の他の修飾免疫グロブリン分子を包含する。抗体は、それぞれα、δ、ε、γ、およびμと称されるその重鎖定常ドメインのアイデンティティに基づき、5つの主要な免疫グロブリンクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM、またはそのサブクラス(アイソタイプ)(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2)のいずれかのものであり得る。異なる免疫グロブリンクラスは異なる周知のサブユニット構造および三次元配置を有する。抗体は、ネイキッドであってもよく、または毒素、放射性同位体等の他の分子にコンジュゲートしてもよい。
【0041】
用語「抗体断片」または「その抗体断片」は、インタクトな抗体の一部分を指す。「抗原結合断片」または「その抗原結合断片」は、抗原に結合するインタクトな抗体の一部分を指す。抗原結合断片は、インタクトな抗体の抗原決定可変領域を含有することができる。抗体断片の例としては、限定はされないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFv断片、線状抗体、scFv、ならびに一本鎖抗体が挙げられる。
【0042】
元の抗体または断片の特異性を保持する他の抗体またはキメラ分子またはその断片を産生するために、モノクローナル抗体および他の抗体またはその断片を得て、組換えDNA技術の技術を使用することが可能である。そのような技術は、異なる免疫グロブリンの定常領域または定常領域およびフレームワーク領域に抗体の免疫グロブリン可変領域または相補性決定領域(CDR)をコードするDNAを導入することを含むことができる。例えば、欧州特許出願公開第A-184187号明細書、英国特許第2188638A号明細書、または欧州特許出願公開第A-239400号明細書および多くのそれに続く文献を参照されたい。抗体を産生するハイブリドーマまたは他の細胞は、遺伝子突然変異または他の変化を受けることがあり、これにより、産生される抗体またはその断片の結合特異性が改変されてもまたは改変されなくてもよい。
【0043】
抗体工学の技術において利用可能なさらなる技術は、ヒト抗体およびヒト化抗体またはその断片を単離することを可能にした。例えば、ヒトハイブリドーマは、Kontermann and Sefan.Antibody Engineering,Springer Laboratory Manuals(2001)によって記載されるように作製することができる。抗原結合タンパク質を生成するための別の確立された技術、ファージディスプレイは、Kontermann and Sefan.Antibody Engineering,Springer Laboratory Manuals(2001)および国際公開第92/01047号パンフレットなどの多くの刊行物に詳細に記載された。マウス抗体遺伝子が不活性化され、かつヒト抗体遺伝子と機能的に置き換えられているが、マウス免疫系のインタクトな他の構成要素が残っているトランスジェニックマウスは、ヒト抗原に対するヒト抗体を単離するために使用することができる。
【0044】
合成抗体またはその断片は、例えばKnappik et al.J.Mol.Biol.(2000)296,57-86またはKrebs et al.Journal of Immunological Methods 254 2001 67-84によって記載されるように、適した発現ベクター内で合成され、アセンブルされるオリゴヌクレオチドによって生成される遺伝子からの発現によって作り出すことができる。
【0045】
全抗体の断片が抗原に結合する機能を実行し得ることが示された。結合断片の例は、(i)VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなるFab断片;(ii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片;(iii)単一抗体のVLおよびVHドメインからなるFv断片;(iv)VHドメインからなるdAb断片(Ward,E.S.et al.,Nature 341,544-546(1989),McCafferty et al(1990)Nature,348,552-554);(v)単離CDR領域;(vi)2つの連結されたFab断片を含む二価の断片であるF(ab’)2断片、(vii)単鎖Fv分子(scFv)、VHドメインおよびVLドメインは、2つのドメインが結び付いて、抗原結合部位を形成するのを可能にするペプチドリンカーによって連結されている(Bird et al,Science,242,423-426,1988;Huston et al,PNAS USA,85,5879-5883,1988);(viii)二重特異性単鎖Fv二量体(PCT/US92/09965)、ならびに(ix)遺伝子融合によって構築される多価または多重特異性断片である「ダイアボディ」(国際公開第94/13804号パンフレット;P.Holliger et al,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90 6444-6448,1993)である。Fv、scFv、またはダイアボディ分子は、VHおよびVLドメインを連結するジスルフィド架橋の組み込みによって安定化されてもよい(Y.Reiter et al,Nature Biotech,14,1239-1245,1996)。CH3ドメインにつながれたscFvを含むミニボディも作製されてもよい(S.Hu et al,Cancer Res.,56,3055-3061,1996)。
【0046】
二重特異性抗体が使用されることになる場合、これらは、従来の二重特異性抗体であってもよく、これらは、様々な方法で製造することができ(Holliger,P.and Winter G.Current Opinion Biotechnol.4,446-449(1993))、例えば、化学的にもしくはハイブリッドハイブリドーマから調製することができるかまたは上記に言及される二重特異性抗体断片のいずれかであってもよい。二重特異性抗体の例は、異なる特異性を有する2つの抗体の結合ドメインを使用し、短い可動性のペプチドを介して直接連結することができるBiTE(商標)技術のものを含む。これは、短い単一ポリペプチド鎖上で2つの抗体を組み合わせる。ダイアボディおよびscFvは、可変ドメインのみを使用して、Fc領域なしで構築し、抗イディオタイプ反応の影響を可能性として低下させることができる。二重特異性ダイアボディはまた、二重特異性全抗体とは対照的に、それらを容易に構築することができ、大腸菌において発現させることができるため、特に有用であり得る。適切な結合特異性のダイアボディ(および抗体断片などの他の多くのポリペプチド)は、ライブラリからファージディスプレイ(国際公開第94/13804号パンフレット)を使用して容易に選択することができる。ダイアボディの一方のアームが、例えばO1に対して特異的な特異性を有するように一定に保たれることになる場合、他方のアームが多種多様であるライブラリを作製することができ、適切な特異性の抗体を選択することができる。二重特異性全抗体は、ノブイントゥホール(knobs-into-holes)遺伝子操作によって作製されてもよい(J.B.B.Ridgeway et al,Protein Eng.,9,616-621,1996)。多重特異性および/または多価分子を作り出した免疫グロブリン様ドメインベースの技術は、dAb、TandAb、ナノボディ(nanobody)、BiTE、SMIP、DNL、アフィボディ(affibody)、フィノマー(Fynomer)、Kunitzドメイン、Albu-dab、DART、DVD-IG、Covxボディ、ペプチボディー(peptibody)、scFv-Ig、SVD-Ig、dAb-Ig、ノブインホール(Knobs-in-Holes)、DuoBodies(商標)、およびtriomAbを含む。二重特異性二価抗体およびそれらを作製する方法は、例えば米国特許第5,731,168号明細書;米国特許第5,807,706号明細書;米国特許第5,821,333号明細書;ならびに米国特許出願公開第2003/020734号明細書および米国特許出願公開第2002/0155537号明細書において記載され、これらのすべての開示は、本明細書において参照により援用される。二重特異性四価抗体およびそれらを作製する方法は、例えば国際公開第02/096948号パンフレットおよび国際公開第00/44788号パンフレットにおいて記載され、これらの両方の開示は、本明細書において参照により援用される。一般に、国際公開第93/17715号パンフレット;国際公開第92/08802号パンフレット;国際公開第91/00360号パンフレット;国際公開第92/05793号パンフレット;Tutt et al.,J.Immunol.147:60-69(1991);米国特許第4,474,893号明細書;米国特許第4,714,681号明細書;米国特許第4,925,648号明細書;米国特許第5,573,920号明細書;米国特許第5,601,819号明細書;Kostelny et al.,J.Immunol.148:1547-1553(1992)を参照されたい。
【0047】
語句「エフェクター機能」は、Fc受容体または補体成分との抗体のFc構成要素の相互作用から結果として生じる抗体の活性を指す。これらの活性は、例えば抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、補体依存性細胞傷害(CDC)、および抗体依存性細胞食作用(ADCP)を含む。したがって、エフェクター機能が改変された抗原結合タンパク質(例えば、抗体またはその抗原結合断片)は、少なくとも1つのエフェクター機能(例えば、ADCC、CDC、および/またはADCP)の活性を変えるFc領域における改変(例えば、アミノ酸置換、欠失、追加、またはオリゴ糖の変化)を含有する抗原結合タンパク質(例えば、抗体またはその抗原結合断片)を指す。エフェクター機能が改善された抗原結合タンパク質(例えば、抗体またはその抗原結合断片)は、少なくとも1つのエフェクター機能(例えば、ADCC、CDC、および/またはADCP)の活性を増加させるFc領域における改変(例えば、アミノ酸置換、欠失、追加、またはオリゴ糖の変化)を含有する抗原結合タンパク質(例えば、抗体またはその抗原結合断片)を指す。
【0048】
用語「特異的な」は、特異的な結合ペアのあるメンバーがその特異的結合パートナー以外の分子にいかなる有意な結合も示さないであろう状態を指すために使用されてもよい。用語はまた、例えば、抗原結合ドメインが、多くの抗原が有する特定のエピトープに対して特異的である場合にも適用可能であり、この場合、抗原結合ドメインを有する抗原結合タンパク質は、そのエピトープを有する様々な抗原に結合することができるであろう。
【0049】
「特異的に結合する」により、抗体またはその抗原結合断片を含む抗原結合タンパク質がその抗原結合ドメインを介してエピトープに結合することならびに結合が抗原結合ドメインおよびエピトープ間のいくらかの相補性を必要とすることを一般に意味する。この定義にしたがって、抗体が偶然の関係がないエピトープに結合するよりも容易にその抗原結合ドメインを介してエピトープに結合する場合、抗体は、そのエピトープに「特異的に結合する」と言われる。本明細書において使用されるように、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原に「特異的に結合する」抗原結合タンパク質は、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O2抗原には特異的に結合しない。
【0050】
「親和性」は、リガンド結合反応の本質的な結合強度の尺度である。例えば、抗体(Ab)-抗原(Ag)相互作用の強度の尺度は、結合親和性を通して測定され、これは、解離定数kによって定量化されてもよい。解離定数は、結合親和性定数であり、
【数1】
によって与えられる。親和性は、例えば、BIAcore(登録商標)、KinExA親和性アッセイ、フローサイトメトリー、および/またはラジオイムノアッセイを使用して測定されてもよい。
【0051】
「効力」は、定められた強度の効果をもたらすために必要とされる化合物の量で表現される化合物の薬理活性についての尺度である。それは、明確な生物学的効果を実現するために必要とされる化合物の量を指し、必要とされる用量が少ないほど、その薬剤は強力である。O1に結合する抗原結合タンパク質の効力は、例えば、本明細書において記載されるようにOPKアッセイを使用して決定されてもよい。
【0052】
「オプソニン作用による死滅」または「OPK」は、免疫細胞による食作用の結果として生じる、細胞、例えばクレブシエラの死を指す。OPK活性は、実施例4において使用される生物発光OPK活性によって測定する。抗原結合タンパク質(例えば抗体またはその抗原結合断片)は、OPKを誘導することができ、死滅のパーセンテージは、40%以上である。抗原結合タンパク質(例えば抗体またはその抗原結合断片)は、OPKを強力に誘導することができ、死滅のパーセンテージは、80%以上である。
【0053】
死滅はまた、「血清殺菌活性測定法」を使用して測定することができる。細菌表面上での補体結合および「膜侵襲複合体」の形成を介しての死滅は、実施例4において記載されるアッセイを使用して評価することができる。抗原結合タンパク質(例えば抗体またはその抗原結合断片)は、血清殺菌活性測定法によって測定されるように、クレブシエラを死滅させることができ、死滅のパーセンテージは、40%以上である。抗原結合タンパク質(例えば抗体またはその抗原結合断片)は、血清殺菌活性測定法によって測定されるように、クレブシエラを大いに死滅させることができ、死滅のパーセンテージは、80%以上である。
【0054】
抗体またはその抗原結合断片を含む抗原結合タンパク質は、抗原結合タンパク質がエピトープへの参照抗体または抗原結合断片の結合をある程度ブロックする場合、定められたエピトープへの参照抗体もしくはその抗原結合断片の結合を競合的に阻害するか、または参照抗体もしくは抗原結合断片と「競合する」と言われる。競合的阻害は、当技術分野において知られている任意の方法、例えば競合ELISAアッセイによって決定することができる。結合分子は、少なくとも90%、少なくとも80%、少なくとも70%、少なくとも60%、または少なくとも50%、定められたエピトープへの参照抗体もしくは抗原結合断片の結合を競合的に阻害するか、または参照抗体もしくはその抗原結合断片と競合すると言うことができる。
【0055】
用語「競合する」は、抗原結合タンパク質(例えば、中和抗原結合タンパク質または中和抗体)に関して使用される場合、試験下の抗原結合タンパク質(例えば、抗体またはその免疫学的機能的断片)が、共通抗原(例えば、O1多糖またはその断片)への参照抗原結合タンパク質(例えば、リガンドまたは参照抗体)の特異的な結合を妨げるかまたは阻害するアッセイによって決定されるように、抗原結合タンパク質の競合を意味する。多数のタイプの競合的結合アッセイ、例えば、固相直接的または間接的ラジオイムノアッセイ(RIA)、固相直接的または間接的酵素イムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(例えば、Stahli et al.,1983,Methods in Enzymology 92:242-253を参照されたい);固相直接的ビオチン-アビジンEIA(例えば、Kirkland et al.,1986,J.Immunol.137:3614-3619を参照されたい)、固相直接的標識アッセイ、固相直接的標識サンドイッチアッセイ(例えば、Harlow and Lane,1988,Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Pressを参照されたい);1-125標識を使用する固相直接的標識RIA(例えば、Morel et al.,1988,Molec.Immunol.25:7-15を参照されたい);固相直接的ビオチン-アビジンEIA(例えば、Cheung,et al.,1990,Virology 176:546-552を参照されたい);および直接的標識RIA(Moldenhauer et al.,1990,Scand.J.Immunol.32:77-82)を使用することができる。典型的に、そのようなアッセイは、これら非標識試験抗原結合タンパク質および標識参照抗原結合タンパク質のいずれかを有する固体表面またはセルに結合した精製抗原の使用を伴う。
【0056】
競合的阻害は、試験抗原結合タンパク質の存在下において固体表面またはセルに結合した標識の量を決定することによって測定することができる。通常、試験抗原結合タンパク質は、過剰に存在する。競合アッセイによって同定される抗原結合タンパク質(競合抗原結合タンパク質)は、参照抗原結合タンパク質と同じエピトープに結合する抗原結合タンパク質および立体障害が生じるほど、参照抗原結合タンパク質が結合するエピトープに限りなく近い隣接するエピトープに結合する抗原結合タンパク質を含む。通常、競合抗原結合タンパク質が過剰に存在する場合、競合抗原結合タンパク質は、少なくとも40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、または75%、共通抗原への参照抗原結合タンパク質の特異的な結合を阻害するであろう。一部の実例では、結合が、少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれを超えて阻害される。
【0057】
本明細書において開示される抗原結合タンパク質、抗体、またはその抗原結合断片は、抗原、例えばそれらが認識するかまたは特異的に結合する標的ポリペプチドのエピトープまたは一部分に関して説明するかまたは特徴付けることができる。例えば、本明細書において開示される抗原結合ポリペプチドまたはその断片の抗原結合ドメインと特異的に相互作用するO1の一部分は、「エピトープ」である。エピトープは、連続するアミノ酸またはタンパク質の三次フォールディングによって並ぶようになる連続していないアミノ酸の両方から形成することができる。連続するアミノ酸から形成されるエピトープは、変性溶媒への接触に際して典型的に保持されるのに対して、三次フォールディングによって形成されるエピトープは、変性溶媒による処置に際して典型的に失われる。立体エピトープは、抗原のアミノ酸配列の不連続なセクションで構成され得る。線状エピトープは抗原の連続したアミノ酸配列によって形成される。エピトープ決定基は、アミノ酸、糖側鎖、ホスホリル基、またはスルホニル基などの分子の化学的に活性な表面基を含んでいてもよく、特定の三次元構造特性および/または特定の電荷特性を有し得る。エピトープは、ユニークな空間的コンホメーションに少なくとも3つ、4つ、5つ、6つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つ、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35のアミノ酸を典型的に含む。エピトープは、当技術分野において知られている方法を使用して決定することができる。
【0058】
アミノ酸は、本明細書において、その一般に知られている三文字記号によるか、あるいはIUPAC-IUB生化学命名委員会(Biochemical Nomenclature Commission)が推奨する一文字記号により参照される。ヌクレオチドも同様に、その一般に認められている一文字コードによって参照される。
【0059】
本明細書において使用されるように、用語「ポリペプチド」は、アミド結合(ペプチド結合としても知られている)によって直線的に連結される単量体(アミノ酸)から構成される分子を指す。用語「ポリペプチド」は、2つ以上のアミノ酸の任意の鎖を指し、特定の長さの産物を指すものではない。本明細書において使用されるように、用語「タンパク質」は、いくつかの実例ではアミド結合以外の結合によって結び付けることができる1つ以上のポリペプチドから構成される分子を包含することが意図される。他方では、タンパク質はまた、単一ポリペプチド鎖とすることができる。この後者の実例では、単一ポリペプチド鎖は、いくつかの実例では、タンパク質を形成するために互いに融合された2つ以上のポリペプチドサブユニットを含むことができる。用語「ポリペプチド」および「タンパク質」はまた、限定を伴うことなくグリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、知られている保護基/遮断基による誘導体化、タンパク質切断、または天然に存在しないアミノ酸による修飾を含む発現後修飾の産物も指す。ポリペプチドまたはタンパク質は、天然の生物学的な供給源に由来するかまたは組換え技術によって産生することができるが、示される核酸配列から必ずしも翻訳されるわけではない。ポリペプチドまたはタンパク質は、化学合成によるものを含む任意の方法で生成することができる。
【0060】
用語「単離」は、本開示の抗原結合タンパク質またはそのような結合タンパク質をコードする核酸が全般的に本開示にしたがうであろう状態を指す。単離タンパク質および単離核酸は、それらが自然環境またはそのような調製物がインビトロにおいてもしくはインビボにおいて実施される組換えDNA技術によるものである場合にそれらが調製される環境(例えば、細胞培養)において見つけられる、他のポリペプチドまたは核酸など、それらが自然に関連している物質がないかまたは本質的にないであろう。タンパク質および核酸は、希釈剤またはアジュバントと共に製剤されてもよく、なお実際的な目的のために単離されてもよく、例えば、タンパク質は、イムノアッセイで使用されるマイクロタイタープレートをコーティングするために使用される場合、ゼラチンまたは他の担体と通常混合されるか、または診断もしくは療法において使用される場合、薬学的に許容可能な担体もしくは希釈剤と混合されるであろう。抗原結合タンパク質は、天然にまたは異種真核細胞(例えば、CHOもしくはNS0(ECACC 85110503)細胞)の系によってグリコシル化されてもよく、またはそれらは非グリコシル化であってもよい(例えば、原核細胞における発現によって産生される場合)。
【0061】
「単離される」ポリペプチド、抗原結合タンパク質、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、または組成物は、自然界で見つけられない形態のポリペプチド、抗原結合タンパク質、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、または組成物である。単離ポリペプチド、抗原結合タンパク質、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、または組成物は、それらがもはや自然界で見つけられる形態でない程度まで精製されたものを含む。いくつかの実施形態では、単離される抗原結合タンパク質、抗体、ポリヌクレオチド、ベクター、細胞、または組成物が本質的に純粋である。
【0062】
「組換え」ポリペプチド、タンパク質、または抗体は、組換えDNA技術によって産生されるポリペプチドまたはタンパク質または抗体を指す。宿主細胞で発現する組換えポリペプチド、タンパク質、および抗体は、任意の好適な技術によって分離され、分画され、または部分的もしくは実質的に精製されている天然または組換えポリペプチドと同様に、本開示の目的のために単離されていると見なされる。
【0063】
ポリペプチドの断片、変異体、または誘導体およびその任意の組み合わせも本開示に含まれる。用語「断片」は、本開示のポリペプチドおよびタンパク質を指す場合、参照ポリペプチドまたはタンパク質の特性の少なくともいくつかを保持する任意のポリペプチドまたはタンパク質を含む。ポリペプチドの断片は、タンパク分解断片および欠失断片を含む。
【0064】
用語「変異体」は、本明細書において使用されるように、少なくとも1つのアミノ酸修飾によって親の抗体またはポリペプチド配列と異なる抗体またはポリペプチド配列を指す。本開示の抗体またはポリペプチドの変異体は、アミノ酸置換、欠失、または挿入によりアミノ酸配列が改変された断片およびさらに抗体またはポリペプチドを含む。変異体は、天然に存在し得るかまたは天然に存在し得ない。天然に存在しない変異体は、当技術分野において知られている突然変異誘発技術を使用して産生することができる。変異ポリペプチドは、保存的または非保存的アミノ酸置換、欠失、または追加を含むことができる。
【0065】
抗体またはポリペプチドに適用される用語「誘導体」は、天然のポリペプチドまたはタンパク質上に見つけられないさらなる特徴を示すように改変された抗体またはポリペプチドを指す。「誘導体」抗体の1つの例は、第2のポリペプチドもしくは他の分子(例えば、PEGなどのポリマー、発色団、もしくはフルオロフォア)または原子(例えば、放射性同位体)との融合物またはコンジュゲートである。
【0066】
用語「ポリヌクレオチド」または「ヌクレオチド」は、本明細書において使用されるように、単数の核酸および複数の核酸を包含することが意図され、単離核酸分子または構築物、例えばメッセンジャーRNA(mRNA)、相補的DNA(cDNA)、またはプラスミドDNA(pDNA)を指す。ある種の態様では、ポリヌクレオチドが、従来のホスホジエステル結合または従来のものではない結合(ペプチド核酸(PNA)で見つけられるものなどのアミド結合)を含む。
【0067】
用語「核酸」は、ポリヌクレオチド中に存在する任意の1つ以上の核酸セグメント、例えばDNA、cDNA、またはRNA断片を指す。核酸またはポリヌクレオチドに適用される場合、用語「単離」は、その天然の環境から取り出された核酸分子、DNA、またはRNAを指し、例えば、ベクターに含有される抗原結合タンパク質をコードする組換えポリヌクレオチドは、本開示のために単離されていると見なされる。単離ポリヌクレオチドのさらなる例は、異種宿主細胞中に維持されるかまたは溶液中の他のポリヌクレオチドから精製された(部分的にもしくは実質的に)組換えポリヌクレオチドを含む。単離RNA分子は、本開示のポリヌクレオチドのインビボまたはインビトロRNA転写物を含む。本開示による単離ポリヌクレオチドまたは核酸は、合成して産生されたそのような分子をさらに含む。加えて、ポリヌクレオチドまたは核酸は、プロモーター、エンハンサー、リボソーム結合部位、または転写終結シグナルなどの調節エレメントを含むことができる。
【0068】
本明細書において使用されるように、用語「宿主細胞」は、組換え核酸を有するかまたは有することができる細胞または細胞の集団を指す。宿主細胞は、原核細胞(例えば、大腸菌)またはその代わりに、宿主細胞は、真核生物、例えば真菌細胞(例えば、サッカロミセス・セレビシエ、ピキア・パストリス、もしくは分裂酵母などの酵母細胞)および昆虫細胞(例えば、Sf-9)または哺乳類細胞(例えば、HEK293F、CHO、COS-7、NIH-3T3、NS0マウス骨髄腫細胞、PER.C6(登録商標)ヒト細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、もしくはハイブリドーマ)などの様々な動物細胞とすることができる。
【0069】
用語「アミノ酸置換」は、親配列に存在するアミノ酸残基を別のアミノ酸残基に置き換えることを指す。アミノ酸は、親配列において、例えば化学的ペプチド合成を用いるか、または当技術分野において公知の組換え方法で置換することができる。したがって、「X位での置換」または「X位での置換」と言う場合、X位に存在するアミノ酸を代替的なアミノ酸残基で置換することを指す。一部の実施形態において、置換パターンは、スキーマAXYにしたがって記述することができ、ここでAは、天然でX位に存在するアミノ酸に対応する一文字コードであり、Yは置換するアミノ酸残基である。他の態様において、置換パターンはスキーマXYにしたがって記述することができ、ここでYは、天然でX位に存在するアミノ酸を置換するアミノ酸残基に対応する一文字コードである。
【0070】
「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、同様の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられるものである。同様の側鎖を有するアミノ酸残基ファミリーは当技術分野において定義されており、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分枝側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。したがって、ポリペプチドのアミノ酸が同じ側鎖ファミリーの別のアミノ酸に置き換えられる場合、この置換は保存的であると見なされる。別の態様では、一続きのアミノ酸を、側鎖ファミリーメンバーの順番および/または組成が異なる構造的には同様の一続きによって保存的に置き換えることができる。
【0071】
非保存的置換は、(i)電気陽性側鎖を有する残基(例えば、Arg、HisまたはLys)が電気陰性残基(例えば、GluまたはAsp)に代えて、またはそれによって置換されているか、(ii)親水性残基(例えば、SerまたはThr)が疎水性残基(例えば、Ala、Leu、Ile、PheまたはVal)に代えて、またはそれによって置換されているか、(iii)システインまたはプロリンが任意の他の残基に代えて、またはそれによって置換されているか、または(iv)かさ高い疎水性または芳香族側鎖を有する残基(例えば、Val、His、IleまたはTrp)がより小さい側鎖を有するもの(例えば、Ala、Ser)または側鎖を有しないもの(例えば、Gly)に代えて、またはそれによって置換されているものを含む。
【0072】
当業者は他の置換を容易に特定することができる。例えば、アミノ酸アラニンについて、置換は、D-アラニン、グリシン、β-アラニン、L-システインおよびD-システインのいずれか1つから選択することができる。リジンについて、置換は、D-リジン、アルギニン、D-アルギニン、ホモアルギニン、メチオニン、D-メチオニン、オルニチン、またはD-オルニチンのいずれか1つであってもよい。概して、単離ポリペプチドの特性の変化を引き起こすと予想し得る機能的に重要な領域の置換は、(i)極性残基、例えば、セリンまたはスレオニンが疎水性残基、例えば、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、またはアラニンに代えて(またはそれによって)置換されるか、(ii)システイン残基が任意の他の残基に代えて(またはそれによって)置換されるか、(iii)電気陽性側鎖を有する残基、例えば、リジン、アルギニンまたはヒスチジンが電気陰性側鎖を有する残基、例えば、グルタミン酸またはアスパラギン酸に代えて(またはそれによって)置換されるか、または(iv)かさ高い側鎖を有する残基、例えば、フェニルアラニンが、かかる側鎖を有しないもの、例えばグリシンに代えて(またはそれによって)置換されるものである。前述の非保存的置換の1つがタンパク質の機能特性を変化させ得る可能性はまた、タンパク質の機能的に重要な領域に対する置換の位置にも相関する。したがって一部の非保存的置換は、生物学的特性に対する効果をほとんどまたは全く有しない。
【0073】
用語「アミノ酸挿入」は、親配列に存在する2つのアミノ酸残基間に新規アミノ酸残基を導入することを指す。アミノ酸は、例えば、化学的ペプチド合成を用いるか、または当技術分野において公知の組換え方法で親配列に挿入することができる。したがって本明細書で使用されるとき、語句「X位とY位との間への挿入」、「IMGT X位とY位との間への挿入」または「Kabat X位とY位との間への挿入」(ここでXおよびYはアミノ酸位置に対応する)は(例えば、239位と240位との間へのシステインアミノ酸挿入)、X位とY位との間へのアミノ酸の挿入を指し、また、核酸配列における、X位およびY位のアミノ酸をコードするコドン間への、あるアミノ酸をコードするコドンの挿入も指す。挿入パターンは、スキーマAXinsにしたがって記述することができ、ここでAは、挿入されるアミノ酸に対応する一文字コードであり、およびXは挿入前の位置である。
【0074】
2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列間の「パーセント配列同一性」または「パーセント同一性」という用語は、2つの配列の最適アラインメントのため導入しなければならない付加または欠失(即ちギャップ)を考慮した、比較ウィンドウにわたって配列が共有される同一のマッチ位置の数を指す。マッチ位置は、標的配列と参照配列との両方で同一のヌクレオチドまたはアミノ酸が提供される任意の位置である。ギャップはヌクレオチドまたはアミノ酸ではないため、標的配列に提供されるギャップはカウントしない。同様に、カウントするのは標的配列のヌクレオチドまたはアミノ酸であり、参照配列のヌクレオチドまたはアミノ酸ではないため、参照配列に提供されるギャップもカウントしない。配列同一性のパーセンテージは、両方の配列に同一のアミノ酸残基または核酸塩基が存在する位置の数を決定してマッチ位置の数を求め、そのマッチ位置の数を比較ウィンドウ内の位置の総数で除し、その結果に100を乗じて配列同一性パーセンテージを求めることにより計算される。2つの配列間の配列の比較およびパーセント配列同一性の決定は、容易に利用可能なソフトウェアプログラムを用いて達成することができる。好適なソフトウェアプログラムは、様々な供給元から、タンパク質配列およびヌクレオチド配列の両方のアラインメントについて利用可能である。パーセント配列同一性を決定するための1つの好適なプログラムは、米国政府の国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)のBLASTウェブサイト(blast.ncbi.nlm.nih.gov)から入手可能なBLASTプログラムスイートの一部であるbl2seqである。bl2seqは、BLASTNまたはBLASTPのいずれかのアルゴリズムを使用して2つの配列間の比較を行う。BLASTNは核酸配列の比較に用いられ、一方、BLASTPはアミノ酸配列の比較に用いられる。他の好適なプログラムは、例えば、EMBOSSバイオインフォマティクスプログラムスイートの一部であって、かつ欧州バイオインフォマティクス研究所(European Bioinformatics Institute:EBI)、www.ebi.ac.uk/Tools/psaからも入手可能なニードル(Needle)、ストレッチャー(Stretcher)、ウォーター(Water)、またはマッチャー(Matcher)である。
【0075】
「特異的な結合メンバー」は、互いに結合特異性を有する分子のペアのメンバーを示す。特異的な結合ペアのメンバーは、天然に由来してもよく、または全体的もしくは部分的に合成して産生されてもよい。分子のペアの一方のメンバーは、その表面上に、あるエリアまたはくぼみを有し、これは、分子のペアの他方のメンバーに特異的に結合し、そのため、その特定の空間的な正反対の構造に対して相補的である。したがって、ペアのメンバーは、互いに特異的に結合する特性を有する。特異的な結合ペアのタイプについての例は、抗原-抗体、ビオチン-アビジン、ホルモン-ホルモン受容体、受容体-リガンド、酵素-基質である。本開示は、抗原-抗体タイプの反応に関する。
【0076】
本明細書において使用される用語「IgG」は、認められている免疫グロブリンガンマ遺伝子によって実質的にコードされる抗体のクラスに属するポリペプチドを指す。ヒトでは、このクラスは、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む。マウスでは、このクラスは、IgG1、IgG2a、IgG2b、およびIgG3を含む。
【0077】
用語「抗原結合ドメイン」は、抗原の一部またはすべてに特異的に結合し、相補的であるエリアを含む、抗体の一部を示す。抗原が大きい場合、抗体は、抗原の特定の一部にのみ結合してもよく、この一部は、エピトープと呼ばれる。抗原結合ドメインは、1つ以上の抗体可変ドメインによってもたらされてもよい(例えば、VHドメインからなる、いわゆるFd抗体断片)。抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変領域(VL)および抗体重鎖可変領域(VH)を含んでいてもよい。
【0078】
用語「抗原結合タンパク質断片」または「抗体断片」は、インタクトな抗原結合タンパク質または抗体の一部分を指し、インタクトな抗原結合タンパク質または抗体の抗原決定可変領域を指す。当技術分野において、抗体の抗原結合機能が完全長抗体の断片によって果たされ得ることは公知である。抗体断片の例としては、限定はされないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFv断片、線状抗体、一本鎖抗体、および抗体断片で形成される多重特異性抗体が挙げられる。
【0079】
用語「モノクローナル抗体」は、単一の抗原決定基またはエピトープの高度に特異的な認識および結合に関与する均質な抗体集団を指す。これは、典型的には異なる抗原決定基に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体と対照的である。用語「モノクローナル抗体」は、インタクトなモノクローナル抗体および完全長モノクローナル抗体の両方、ならびに抗体断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvなど)、単鎖(scFv)突然変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、および抗原認識部位を含む任意の他の修飾免疫グロブリン分子を包含する。さらに、「モノクローナル抗体」は、限定はされないが、ハイブリドーマ、ファージ選択、組換え発現、およびトランスジェニック動物によることを含めた、任意の方法で作製されたかかる抗体を指す。
【0080】
用語「ヒト抗体」は、ヒトによって産生される抗体、または当技術分野において公知の任意の技法を用いて作製されるヒトによって産生される抗体に対応するアミノ酸配列を有する抗体を指す。ヒト抗体のこの定義には、インタクトなまたは完全長の抗体、その断片、および/または少なくとも1つのヒト重鎖および/または軽鎖ポリペプチドを含む抗体、例えば、マウス軽鎖およびヒト重鎖ポリペプチドを含む抗体などが含まれる。用語「ヒト化抗体」は、最小限の非ヒト(例えば、マウス)配列を含むように改変された非ヒト(例えば、マウス)免疫グロブリンに由来する抗体を指す。
【0081】
用語「キメラ抗体」は、免疫グロブリン分子のアミノ酸配列が2つ以上の種に由来する抗体を指す。典型的には、軽鎖および重鎖の両方の可変領域が、所望の特異性、親和性、および能力を有する哺乳動物の1つの種(例えば、マウス、ラット、ウサギ等)に由来する抗体の可変領域に対応し、一方、定常領域が、別の種(通常はヒト)に由来する抗体の配列と同種であり、その種における免疫応答の誘発が回避される。
【0082】
用語「抗体結合部位」は、相補的な抗体が特異的に結合する連続または不連続な部位(すなわちエピトープ)を含む抗原(例えば、O1)内の領域を指す。したがって、抗体結合部位は、抗原内に、エピトープを越えた、結合親和性および/または安定性などの特性を決定し得るかまたは抗原酵素活性または二量化などの特性に影響を与え得る追加的な範囲を含み得る。したがって、2つの抗体が抗原内の同じエピトープに結合する場合であっても、抗体がエピトープ外のアミノ酸との個別的な分子間接触を確立する場合、かかる抗体は個別的な抗体結合部位に結合すると見なされる。
【0083】
IMGT付番方式は、概して、可変ドメインの残基(およそ軽鎖の残基1~107および重鎖の残基1~113)を参照するときに用いられる(例えば、Lefranc, M.-P. et al. Dev. Comp. Immunol. 27:55-77(2003))。
【0084】
語句「Kabatにある通りのアミノ酸位置付番」、「Kabat位置」、およびその文法上の変化形は、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)における抗体の編成の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに用いられる付番方式を指す。この付番方式を用いると、実際の線状アミノ酸配列は、可変ドメインのFWまたはCDRの短縮、またはそれへの挿入に対応するより少ないかまたは追加的なアミノ酸を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入(Kabatによる残基52a)を含み、および重鎖FW残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatによる残基82a、82b、および82c等)を含み得る。抗体54H7は、Kabatシステムによって付番する。
【0085】
残基のKabat付番は、所与の抗体について、相同性領域において抗体の配列を「標準」Kabat付番配列とアラインメントすることにより決定し得る。Chothiaは、その代わりに構造ループの位置を参照する(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。Kabat付番規則を用いて付番したときのChothia CDR-H1ループの末端は、ループの長さに応じてH32~H34で異なる(これは、Kabat付番スキームがH35AおよびH35Bに挿入を置くためであり、35Aも35Bも存在しない場合、ループは32で終わり、35Aのみが存在する場合、ループは33で終わり、35Aおよび35Bの両方が存在する場合、ループは34で終わる)。AbM超可変領域は、Kabat CDRとChothia 構造ループとの妥協案に相当し、Oxford Molecular’s AbM抗体モデリングソフトウェアによって用いられている。CDRのIMGT(Lefranc,M.-P.et al.Dev.Comp.Immunol.27:55-77(2003))分類も使用することができる。
【0086】
用語「Kabat中のEUインデックス」は、Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)において記載されるヒトIgG1 EU抗体の付番方式を指す。例えば、「L234」および「EU L234」は共に、Kabatに示されるEUインデックスにしたがって234位のアミノ酸ロイシンを指す。
【0087】
本明細書において使用される用語「Fcドメイン」、「Fc領域」、および「IgG Fcドメイン」は、IgG分子のパパイン消化によって得られる結晶化可能断片に対応する、免疫グロブリン、例えばIgG分子の一部分を指す。Fc領域は、ジスルフィド結合によって連結される、IgG分子の2つの重鎖のC末端半分を含む。それは、抗原結合活性を有していないが、炭水化物成分ならびに補体およびFcRn受容体を含むFc受容体に対する結合部位を含有する。例えば、Fcドメインは、第2の定常ドメインCH2(ヒトIgG1のEU231~340位の残基)および第3の定常ドメインCH3(ヒトIgG1のEU341~447位の残基)全体を含有する。
【0088】
Fcとは、独立してこの領域を指し得るか、または抗体、抗体断片、もしくはFc融合タンパク質に関連してこの領域を指し得る。多型は、EU270、272、312、315、356、および358位を含むが、これらに限定されない、Fcドメイン中の多くの位置に観察される。したがって、「野生型IgG Fcドメイン」または「WT IgG Fcドメイン」は、任意の天然に存在するIgG Fc領域(すなわち任意の対立遺伝子)を指す。数限りないFc突然変異体、Fc断片、Fc変異体、およびFc誘導体が、例えば米国特許第5,624,821号明細書;米国特許第5,885,573号明細書;米国特許第5,677,425号明細書;米国特許第6,165,745号明細書;米国特許第6,277,375号明細書;米国特許第5,869,046号明細書;米国特許第6,121,022号明細書;米国特許第5,624,821号明細書;米国特許第5,648,260号明細書;米国特許第6,528,624号明細書;米国特許第6,194,551号明細書;米国特許第6,737,056号明細書;米国特許第7,122,637号明細書;米国特許第7,183,387号明細書;米国特許第7,332,581号明細書;米国特許第7,335,742号明細書;米国特許第7,371,826号明細書;米国特許第6,821,505号明細書;米国特許第6,180,377号明細書;米国特許第7,317,091号明細書;米国特許第7,355,008号明細書;米国特許出願公開第2004/0002587号明細書;ならびに国際公開第99/058572号パンフレット、国際公開第2011/069164号パンフレット、および国際公開第2012/006635号パンフレットにおいて記載される。
【0089】
ヒトIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4の重鎖の配列は、多くの配列データベースにおいて、例えばUniprotデータベース(www.uniprot.org)でそれぞれ受託番号P01857(IGHG1_HUMAN)、P01859(IGHG2_HUMAN)、P01860(IGHG3_HUMAN)、およびP01861(IGHG1_HUMAN)の下で見つけることができる。
【0090】
用語「YTE」または「YTE突然変異体」は、ヒトFcRnへの結合の増加をもたらし、かつ突然変異を有する抗体の血清半減期を改善するIgG1 Fcドメイン中の突然変異のセットを指す。YTE突然変異体は、IgGの重鎖中に導入される3つの「YTE突然変異」の組み合わせ:M252Y、S254T、およびT256Eを含み、付番は、KabatのEUインデックスにしたがう。参照により本明細書に援用される米国特許第7,658,921号明細書を参照されたい。YTE突然変異体は、同じ抗体の野生型バージョンと比較して、抗体の血清半減期を増加させることが示された。例えば、それらの全体が参照により本明細書に援用されるDall’Acqua et al.,J.Biol.Chem.281:23514-24(2006)および米国特許第7,083,784号明細書を参照されたい。「Y」突然変異体は、M256Y突然変異のみを含み、同様に、「YT」突然変異は、M252YおよびS254Tのみを含み、「YE」突然変異は、M252YおよびT256Eのみを含む。他の突然変異がEU252位および/または256位に存在してもよいことが明確に企図される。特定の態様では、EU252位の突然変異が、M252F、M252S、M252W、もしくはM252Tであってもよく、および/またはEU256位の突然変異が、T256S、T256R、T256Q、もしくはT256Dであってもよい。
【0091】
用語「N3」または「N3突然変異体」は、FcRnへの結合の増加をもたらし、かつ突然変異を有する抗体の血清半減期を改善するIgG1 Fcドメイン中の突然変異のセットを指す。N3突然変異体は、野生型IgGl定常ドメイン基本構造の中に組み込まれた、432~437位の配列Cys-Ser-Trp-His-Leu-Cys(配列番号68)を含む(437位および438位の間に挿入なし)。参照によりこれによって援用される国際公開第2015175874号パンフレットを参照されたい。
【0092】
用語「天然に存在するO1」は、概して、O1多糖またはその断片が存在することができる状態を指す。天然に存在するO1は、組換え技術を使用するコード核酸の導入なしで、細胞によって天然に産生されるO1多糖を意味する。したがって、天然に存在するO1は、天然に、例えば肺炎桿菌(K.pneumoniae)によって産生されるものであってもよく、および/またはクレブシエラ属の様々なメンバーから単離されるものであってもよい。
【0093】
用語「組換えO1」は、O1多糖またはその断片が存在してもよい状態を指す。組換えO1は、組換えDNAにより、例えば異種宿主において産生されるO1多糖またはその断片を意味する。
【0094】
本明細書において使用される用語「半減期」または「インビボにおける半減期」は、所与の動物の血液循環中の本開示の特定のタイプの抗体、抗原結合タンパク質、またはポリペプチドの生物学的半減期を指し、動物に投与された量の半分が動物の血液循環および/または他の組織から取り除かれるのに必要とされる時間によって示される。
【0095】
本明細書において使用される用語「対象」は、限定はされないが、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウマ、雌ウシ、クマ、ニワトリ、両生類、爬虫類などを含めた、特定の治療のレシピエントとなる任意の動物(例えば、哺乳動物)を指す。本明細書において使用される用語「対象」および「患者」は、クレブシエラ感染症に関連する状態の診断、予後診断、または療法のための任意の対象、特に哺乳類対象を指す。本明細書において使用されるように、「クレブシエラ感染症に関連する状態を有する患者」などの語句は、クレブシエラ感染症に関連するその状態のための療法の投与、画像処理手順もしくは他の診断手順、および/または予防的治療から利益を得るであろう哺乳類対象などの対象を含む。
【0096】
「クレブシエラ」は、腸内細菌科のグラム陰性条件的嫌気性桿菌の属を指す。クレブシエラは、例えば肺炎桿菌(K.pneumoniae)、K.オキシトカ(K.oxytoca)、K.プランチコラ(K.planticola)、K.グラニュロマティス(K.granulomatis)、臭鼻菌(K.ozaenae)、鼻硬腫菌(K.rhinosclermoatis)を含む。
【0097】
クレブシエラ属のメンバーは、典型的に、それらの細胞表面上に少なくとも2つのタイプの炭水化物抗原:O抗原およびK抗原を発現する。O抗原はリポ多糖であり、K抗原は莢膜多糖である。これらの抗原の構造のばらつきは、抗原をクレブシエラ「血清型」で分類するための基準となる。したがって、O1結合タンパク質(例えば、抗体またはその抗原結合断片)が、複数のクレブシエラ株または血清型に結合する能力は、様々なO抗原および/またはK抗原を有するクレブシエラに結合するその能力を指す。本明細書において提供されるいくつかの実施形態では、クレブシエラは、O1血清型である。
【0098】
本明細書において使用される用語「医薬組成物」は、活性成分の生物学的活性が有効となるのを可能にするような形態の調製物であって、その組成物を投与しようとする対象にとって許容できない毒性がある追加的な構成成分を含有しない調製物を指す。そのような組成物は無菌とすることができる。
【0099】
抗原結合タンパク質(抗体またはその抗原結合断片を含む)の「有効量」は、本明細書において開示されるように、特に記載される目的を実行するのに十分な量である。「有効量」は、記載される目的に関して実験的に常法で決定することができる。本明細書において使用される用語「治療有効量」は、対象または哺乳類における疾患または状態を「治療する」のに有効である、ポリペプチド、例えば抗体を含む抗原結合タンパク質または他の薬剤の量を指し、クレブシエラ媒介性の疾患または状態を有する対象に対していくらかの改善または有益性をもたらす。したがって、「治療有効」量は、クレブシエラ媒介性の疾患または状態の、少なくとも1つの臨床症状におけるいくらかの軽減、緩和、および/または減少をもたらす量である。本開示の方法および系によって治療することができる、クレブシエラ媒介性の疾患または状態に関連する臨床症状は、当業者によく知られている。さらに、当業者は、いくらかの有益性が対象に対してもたらされる限り、治療効果が完全であるかまたは根治的である必要がないことを十分に理解するであろう。いくつかの実施形態では、用語「治療有効」は、それを必要としている患者においてクレブシエラ(例えば肺炎桿菌(K.pneumoniae))またはクレブシエラ(例えば肺炎桿菌(K.pneumoniae))活性を低下させることができる治療剤の量を指す。投与される実際の量ならびに投与の速度および時間的経過は、治療されているものの性質および重症度に依存するであろう。治療についての処方せん、例えば投薬量に関する決定などは、開業医および他の医師の責任の範囲内にある。抗体およびその抗原結合断片の適切な用量は、当技術分野においてよく知られている。Ledermann J.A.et al.(1991)Int.J.Cancer 47:659-664;Bagshawe K.D.et al.(1991)Antibody,Immunoconjugates and Radiopharmaceuticals 4:915-922を参照されたい。
【0100】
本明細書において使用されるように、「十分な量」またはクレブシエラ媒介性の疾患または状態を有する患者において特定の結果を実現する「のに十分な量」は、任意選択で治療効果である、所望の効果をもたらすのに有効である、治療剤(例えば、本明細書において開示される抗体を含む抗原結合タンパク質)の量を指す(すなわち治療有効量の投与によるもの)。いくつかの実施形態では、そのような特定の結果が、それを必要としている患者におけるクレブシエラ(例えば肺炎桿菌(K.pneumoniae))またはクレブシエラ(例えば肺炎桿菌(K.pneumoniae))活性の低下である。
【0101】
本明細書において使用される用語「標識」は、「標識」ポリペプチドまたは抗体を生成するために、ポリペプチド、例えば抗体を含む抗原結合タンパク質に直接または間接的にコンジュゲートされる検出可能な化合物または組成物を指す。標識は、それ自体が検出可能であってもよく(例えば、放射性同位体標識または蛍光標識)、または酵素標識の場合、検出可能な基質化合物または組成物の化学的改変を触媒することができる。
【0102】
「治療する」または「治療」または「治療すること」または「軽減する」または「軽減すること」または「回復させること」または「回復させる」などの用語は、診断された病的状態または障害を治癒し、減速させ、その症状を和らげ、および/またはその進行を止める治療手段を指す。「予防する」などの用語は、標的にされる病的状態または障害の発症を予防しかつ/または遅らせる予防または防止手段を指す。したがって、治療を必要としている人は、疾患または状態をすでに有している人を含む。予防を必要としている人は、疾患または状態を起こしやすい人および疾患または状態を予防すべき人を含む。例えば、語句「クレブシエラ媒介性の疾患または状態を有する患者を治療する」は、好ましくは、対象がもはやそれによって不快感および/または機能異常を被らない程度まで、クレブシエラ媒介性の疾患または状態の重症度を低下させることを指す(例えば、未治療患者と比較した場合の喘息増悪における相対的な低下)。語句「クレブシエラ媒介性の疾患または状態を予防する」は、クレブシエラ媒介性の疾患もしくは状態の可能性を低下させることおよび/またはクレブシエラ媒介性の疾患もしくは状態の発生を低下させることを指す。
【0103】
本明細書において使用されるように、用語「クレブシエラ感染症に関連する状態」は、疾患または状態を有する対象における、クレブシエラ感染症(例えば、肺炎桿菌(K.pneumoniae)、K.オキシトカ(K.oxytoca)、K.プランチコラ(K.planticola)、臭鼻菌(K.ozaenae)、鼻硬腫菌(K.rhinosclermoatis)、および/またはK.グラニュロマティス(K.granulomatis)による感染症)によって引き起こされる(単独でもしくは他の媒介物質と共同して)、それによって悪化するか、それに関連するか、またはそれによって長引く任意の病態を指す。クレブシエラ感染症に関連する状態の非限定的な例は、肺炎、尿路感染症、敗血症/セプシス、新生児敗血症、下痢、軟部組織感染症、臓器移植後の感染症、外科手術による感染症、創傷感染症、肺感染症、化膿性肝膿瘍、眼内炎、髄膜炎、壊死性髄膜炎、強直性脊椎炎、および脊椎関節症を含む。いくつかの実施形態では、クレブシエラ感染症が、院内感染症である。いくつかの実施形態では、クレブシエラ感染症が、日和見感染症である。いくつかの実施形態では、クレブシエラ感染症が、臓器移植の結果として生じる。いくつかの実施形態では、対象が、例えば人工呼吸器、カテーテル、または静脈内カテーテルを含む、クレブシエラに汚染された医療デバイスに暴露される。
【0104】
CDRまたはCDRのセットを有する構造は、一般に、CDRまたはCDRのセットは、再編成された免疫グロブリン遺伝子によってコードされる天然に存在するVHおよびVL抗体可変ドメインのCDRまたはCDRのセットに対応する位置に位置する抗体の重鎖配列もしくは軽鎖配列またはその実質的な一部分でできているであろう。免疫グロブリン可変ドメインの構造および位置は、(参照により本明細書において援用されるKabat,E.A.et al,Sequences of Proteins of Immunological Interest.4th Edition.US Department of Health and Human Services.1987およびその最新版、現在はインターネットで入手可能(http://immuno.bme.nwu.eduまたは任意の検索エンジンを使用して「Kabat」を検索)を参照することによって決定されてもよい。CDRはまた、フィブロネクチンまたはシトクロムBなどの他の足場によって運ぶこともできる。
【0105】
CDRアミノ酸配列は、実質的に本明細書において説明されるように、ヒト可変ドメインまたは実質的なその一部分中にCDRとして有することができる。HCDR3配列は、実質的に本明細書において説明されるように、本開示の実施形態を示し、これらのそれぞれは、ヒト重鎖可変ドメインまたは実質的なその一部分中にHCDR3として担持され得る。
【0106】
本開示において用いられる可変ドメインは、任意の生殖系もしくは再編成されたヒト可変ドメインから得ることができるか、または知られているヒト可変ドメインのコンセンサス配列に基づいた合成可変ドメインとすることができる。CDR配列(例えば、CDR3)は、組換えDNA技術を使用して、CDR(例えば、CDR3)を欠く可変ドメインのレパートリーに導入することができる。
【0107】
例えば、Marks et al.(Bio/Technology,1992,10:779-783;参照により本明細書に援用される)は、可変ドメインエリアの5’末端に向けられるかまたはそれに近接するコンセンサスプライマーが、CDR3を欠くVH可変ドメインのレパートリーをもたらすために、ヒトVH遺伝子の第3のフレームワーク領域に対するコンセンサスプライマーと共に使用される、抗体可変ドメインのレパートリーを産生する方法を提供する。Marks et al.は、このレパートリーを特定の抗体のCDR3と組み合わせることができる方法をさらに記載する。類似した技術を使用して、本開示のCDR3由来の配列を、CDR3を欠くVHまたはVLドメインのレパートリーとシャッフルすることができ、シャッフルして完成したVHまたはVLドメインを、抗原結合タンパク質をもたらすために、同種のVLまたはVHドメインと組み合わせることができる。次いで、レパートリーは、適した抗原結合タンパク質が選択されるために、国際公開第92/01047号パンフレットのファージディスプレイ系またはKay,B.K.,Winter,J.,and McCafferty,J.(1996)Phage Display of Peptides and Proteins:A Laboratory Manual,San Diego:Academic Pressを含む、それに続く多くの文献のいずれかなどの適した宿主系においてディスプレイすることができる。レパートリーは、104以上のいずれの個々のメンバーからも、例えば106~108または1010のいずれのメンバーからもなることができる。他の適した宿主系は、酵母ディスプレイ、細菌ディスプレイ、T7ディスプレイ、リボソームディスプレイなどを含む。リボソームディスプレイの概説については、本明細書において参照により援用されるLowe D and Jermutus L,2004,Curr.Pharm,Biotech,517-27、さらに国際公開第92/01047号パンフレットを参照されたい。
【0108】
類似したシャッフリング技術またはコンビナトリアル技術はまた、Stemmer(本明細書において参照により援用されるNature,1994,370:389-391)よっても開示され、Stemmerは、β-ラクタマーゼ遺伝子に関しての技術を記載しているが、このアプローチが抗体の生成に使用されてもよいことを述べている。
【0109】
さらなる代案は、可変ドメイン全体において突然変異を生成するために、1つ以上の選択されたVHおよび/またはVL遺伝子のランダム突然変異誘発を使用して、本開示のCDR由来の配列を有する新規なVHまたはVL領域を生成することである。そのような技術は、エラープローンPCRを使用したGram et al(1992,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,89:3576-3580)によって記載される。いくつかの実施形態では、1つまたは2つのアミノ酸置換が、HCDRおよび/またはLCDRのセット内でなされる。
【0110】
使用されてもよい他の方法は、VHまたはVL遺伝子のCDR領域に対して突然変異誘発を誘導することである。そのような技術は、Barbas et al,(1994,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,91:3809-3813)およびSchier et al(1996,J.Mol.Biol.263:551-567)によって開示される。
【0111】
本開示の方法および技術は、別段の指示がない限り、当技術分野においてよく知られており、本明細書の全体にわたって引用され、考察される様々な全般的なおよびより詳細な参考文献において記載される従来の方法にしたがって全般的に実行される。例えば、すべて本明細書において参照により援用されるSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(2001)およびAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates(1992),and Harlow and Lane Antibodies:A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1990)を参照されたい。
【0112】
当業者は、当技術分野におけるルーチン的な手法を使用して、本開示の抗原結合タンパク質を提供するために上記に記載されるような技術を使用することができるであろう。
【0113】
II.O1抗原結合分子
本開示は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原に特異的に結合するO1抗原結合分子、例えば抗原結合タンパク質、抗体、およびその抗原結合断片を提供する。本明細書において定義されるように、抗体およびその抗原結合断片を含む「O1抗原結合分子」は、O2に結合しない。総称して、これらの作用物質は、本明細書において「O1結合分子」または「O1結合剤」と呼ばれる。
【0114】
クレブシエラリポ多糖(LPS)のO1抗原は、反復単位D-ガラクタン(D-Gal I)IおよびD-ガラクタンII(D-Gal II)から構成される2つの構造上別個のドメインを含有する。図12を参照されたい。低分子量D-Gal Iポリマーは、コアオリゴ糖に直接連結され、構造→3)-β-D-Galf-(1→3)-α-D-Galp-(1→の反復単位から構成される。O抗原生合成は、部分的に、6つの遺伝子(wzm、wzt、glf、wbbM、wbbN、およびwbbO)から構成されるwb(rfb)遺伝子クラスターの産物によって実行される(Whitfield,C.et al.1991.Expression of two structurally distinct D-Galactan O antigens in the lipopolysaccharide of Klebsiella pneumoniae serotype O1.J.Bacteriology.1420-1431;Clarke,B.R.and Whitfield C.1992.Molecular cloning of the rfb region of Klebsiella pneumoniae serotype O1:K20.J.Bacteriology.174:4614-4621)。D-Gal Iドメインはまた、クレブシエラO2 LPSについての主なO抗原構成要素でもある。高分子量D-Gal IIポリマーは、D-Gal Iの遠位端部に連結され、構造→3)-α-D-Galp-(1→3)-β-D-Galp-(1→の繰り返し単位からなる。D-Gal II生合成に必要な遺伝子は、wbbYおよびwbbZとして最近同定され、これらは、wbクラスターに連結されていない。(Hsieh,P.et al.2014.D-galactan II is an immunodominant antigen in O1 LPS and affects virulence in Klebsiella pneumoniae:implication in vaccine design.Frontiers in Microbiology.5:1-13を参照されたい)。D-Gal IIの追加がO1血清型を決定し、PLAを引き起こす肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)の中で血清抵抗性および高い有病率の一因となる。(Hsieh,P.F.2012.Lipopolysaccharide O1 antigen contributes to the virulence in Klebsiella pneumoniae causing primary pyogenic liver abscess.;Pan Y-J.,et al.,PLoS ONE 7(3):e33155(2013)doi:10.1371/journal.pone.0033155)。
【0115】
いくつかの実施形態では、本開示は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する、抗体またはポリペプチドである単離抗原結合タンパク質を提供する。いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する抗体の抗原結合断片である。
【0116】
ある実施形態では、O1結合分子は、抗体またはポリペプチドである。いくつかの実施形態では、本開示は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原に特異的に結合するマウス、非ヒト、ヒト化、キメラ、リサーフェシング、またはヒト抗原結合タンパク質である単離抗原結合タンパク質を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原に特異的に結合するヒト化、キメラ、リサーフェシング、またはヒト抗原結合タンパク質である単離抗原結合タンパク質を提供する。いくつかの実施形態では、O1結合分子は、ヒト化抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、O1結合分子は、ヒト抗体またはその抗原結合断片である。
【0117】
本開示は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質(抗体またはその抗原結合断片を含む)であって、前記抗原結合タンパク質(例えば抗体またはその抗原結合断片)は、a)クレブシエラ(例えば肺炎桿菌(K.pneumoniae))のオプソニン作用による死滅(OPK)を誘導する、b)血清殺菌活性測定法によって測定されるように補体依存性の死滅を介してクレブシエラ(例えば肺炎桿菌(K.pneumoniae))を死滅させる、またはc)クレブシエラ(例えば肺炎桿菌(K.pneumoniae))のOPKを誘導し、血清殺菌活性測定法によって測定されるように、補体依存性の死滅を介してクレブシエラ(例えば肺炎桿菌(K.pneumoniae))を死滅させる単離抗原結合タンパク質を提供する。
【0118】
本開示はまた、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質(抗体またはその抗原結合断片を含む)であって、前記抗原結合タンパク質(例えば抗体またはその抗原結合断片)は、OPKを誘導するが、LPSを中和しない単離抗原結合タンパク質をも提供する。本明細書において提供される実施例において実証されるように、高レベルのインビボにおける活性は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原に特異的に結合し、OPKを誘導するが、LPSを中和しない抗原結合タンパク質に関連する。
【0119】
本開示はまた、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質(抗体またはその抗原結合断片を含む)であって、前記抗原結合タンパク質(例えば抗体またはその抗原結合断片)は、OPKを誘導し、LPSを中和する単離抗原結合タンパク質をも提供する。
【0120】
O1結合剤は、抗O1抗原抗体KPE33、KPE33V2016、KPA27、KPB202、KBJ4、54H7、およびその抗原結合断片を含む。O1結合剤はまた、KPE33、KPE33V2016、KPA27、KPB202、KBJ4、または54H7と同じ肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1エピトープに特異的に結合するO1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)を含む。
【0121】
いくつかの実施形態では、O1結合剤、例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片は、抗体クローンRuO1を含まない。Rukavina T.,et al.,Infect Immun 65:1754-60(1997)を参照されたい。いくつかの実施形態では、O1結合剤、例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片は、マウス抗体ではない。
【0122】
いくつかの実施形態では、O1結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原のD-ガラクタンIIドメインに結合する。いくつかの実施形態では、O1結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原のD-ガラクタンIIドメイン内のエピトープに結合する。
【0123】
O1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)はまた、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原へのKPE33、KPE33V2016、KPA27、KPB202、KPJ4、または54H7の結合を競合的に阻害するO1結合剤をも含む。いくつかの実施形態では、抗O1抗体またはその抗原結合断片は、競合ELISAアッセイにおいて、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原へのKPE33、KPE33V2016、KPA27、KPB202、KPJ4、または54H7の結合を競合的に阻害する。いくつかの実施形態では、抗O1抗体またはその抗原結合断片は、競合ELISAアッセイにおいて、肺炎桿菌(K.pneumoniae)へのKPE33、KPE33V2016、KPA27、KPB202、KPJ4、または54H7の結合を競合的に阻害する。
【0124】
いくつかの実施形態では、O1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)はまた、例えばOctetプラットフォームによって測定されるように、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原への54H7の結合を競合的に阻害するが、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原へのKPE33の結合を競合的に阻害しないO1結合剤をも含む。いくつかの実施形態では、O1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)はまた、例えばOctetプラットフォームによって測定されるように、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原へのKPE33の結合を競合的に阻害するが、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原への54H7の結合を競合的に阻害しないO1結合剤をも含む。
【0125】
いくつかの実施形態では、抗O1抗体またはその抗原結合断片は、O1クレブシエラ株(例えば肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1株を含む)に結合するが、対応するwbbYZノックアウト株に結合しない(例えばFACSアッセイによって測定されるように)。いくつかの実施形態では、抗O1抗体またはその抗原結合断片は、クレブシエラ株Kp1131115に結合するが、Kp1131115ΔwbbYZノックアウト株に結合しない(例えばFACSアッセイによって測定されるように)。
【0126】
O1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)はまた、KPE33、KPE33V2016、KPA27、KPB202、KBJ4、または54H7の重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)配列を含むO1結合剤を含む。KPE33、KPE33V2016、KPA27、KPB202、KBJ4、および54H7のCDR配列は、下記の表1および2に記載される。54H7以外のすべての抗体については、表1および2に列挙されるCDRは、IMGTシステムを使用して決定した。54H7については、CDRは、Kabatシステムを使用して決定した。
【0127】
【表1】
【0128】
【表2】
【0129】
本明細書において記載される抗原結合タンパク質(抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片を含む)は、本明細書において記載される個々の可変軽鎖または可変重鎖のうちの1つを含むことができる。本明細書において記載される抗原結合タンパク質(抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片を含む)はまた、可変軽鎖および可変重鎖の両方を含むこともできる。抗O1抗原KPE33、KPE33V2016、KPA27、KPB202、KBJ4、および54H7抗体の可変軽鎖配列および可変重鎖配列は、下記の表3および4に提供される。
【0130】
【表3】
【0131】
【表4】
【0132】
いくつかの実施形態では、本開示は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片を含む)であって、前記抗原結合タンパク質は、配列番号8、12、21、または30と少なくとも95、96、97、98、または99%同一な重鎖可変領域(VH)および配列番号9、13、22、31と少なくとも95、96、97、98、または99%同一な軽鎖可変領域(VL)を含む単離抗原結合タンパク質を提供する。いくつかの実施形態では、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片を含む)は、配列番号8、12、21、または30の配列を含む重鎖可変領域および配列番号9、13、22、31の配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、配列番号8、9、12、13、21、22、30、または31に対して少なくとも95、96、97、98、または99%の配列同一性を有する単離抗原結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片を含む)は、保存的アミノ酸置換によってのみ配列番号8、9、12、13、21、22、30、または31と異なる。いくつかの実施形態では、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片を含む)は、配列番号8、12、21、または30と少なくとも95、96、97、98、または99%同一な重鎖可変領域(VH)および配列番号9、13、22、31と少なくとも95、96、97、98、または99%同一な軽鎖可変領域(VL)を含み、単離抗原結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片を含む)は、抗体クローンRuO1ではない(Rukavina T.,et al.,Infect Immun 65:1754-60(1997を参照されたい)。
【0133】
いくつかの実施形態では、本開示は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片を含む)であって、前記抗原結合タンパク質は、それぞれ配列番号8および9、12および13、31および22、または30および31と少なくとも95%同一なVHおよびVLを含み、抗原結合タンパク質は、クレブシエラ(例えば肺炎桿菌(K.pneumoniae))のOPKを誘導し、任意選択で、抗原結合タンパク質は、LPSを中和しないまたはLPSを中和する単離抗原結合タンパク質を提供する。
【0134】
いくつかの実施形態では、本開示は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片を含む)であって、前記抗原結合タンパク質は、それぞれ配列番号8および9、12および13、31および22、または30および31と少なくとも95%同一なVHおよびVLを含み、抗原結合タンパク質は、血清殺菌活性測定法によって測定されるように、クレブシエラ(例えば肺炎桿菌(K.pneumoniae))を死滅させる単離抗原結合タンパク質を提供する。
【0135】
いくつかの実施形態では、本開示は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片を含む)であって、前記抗原結合タンパク質は、それぞれ配列番号8および9、12および13、31および22、または30および31と少なくとも95%同一なVHおよびVLを含み、抗原結合タンパク質は、クレブシエラ(例えば肺炎桿菌(K.pneumoniae))のOPKを誘導し、血清殺菌活性測定法によって測定されるように、クレブシエラ(例えば肺炎桿菌(K.pneumoniae))を死滅させる単離抗原結合タンパク質を提供する。
【0136】
いくつかの実施形態では、本開示は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片を含む)であって、前記抗原結合タンパク質は、それぞれ配列番号8および9、12および13、31および22、または30および31と少なくとも95%同一なVHおよびVLを含み、抗原結合タンパク質は、抗生物質(例えばメロペネム、カルバペネム、またはコリスチン)と相乗的に作用する単離抗原結合タンパク質を提供する。
【0137】
いくつかの実施形態では、本開示は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片を含む)であって、前記抗原結合タンパク質は、それぞれ配列番号8および9、12および13、31および22、または30および31と少なくとも96%同一なVHおよびVLを含み、抗原結合タンパク質は、クレブシエラ(例えば肺炎桿菌(K.pneumoniae))のOPKを誘導し、任意選択で、抗原結合タンパク質は、LPSを中和しないまたはLPSを中和する単離抗原結合タンパク質を提供する。
【0138】
いくつかの実施形態では、本開示は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片を含む)であって、前記抗原結合タンパク質は、それぞれ配列番号8および9、12および13、31および22、または30および31と少なくとも96%同一なVHおよびVLを含み、抗原結合タンパク質は、血清殺菌活性測定法によって測定されるように、クレブシエラ(例えば肺炎桿菌(K.pneumoniae))を死滅させる単離抗原結合タンパク質を提供する。
【0139】
いくつかの実施形態では、本開示は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片を含む)であって、前記抗原結合タンパク質は、それぞれ配列番号8および9、12および13、31および22、または30および31と少なくとも96%同一なVHおよびVLを含み、抗原結合タンパク質は、クレブシエラ(例えば肺炎桿菌(K.pneumoniae))のOPKを誘導し、血清殺菌活性測定法によって測定されるように、クレブシエラ(例えば肺炎桿菌(K.pneumoniae))を死滅させる単離抗原結合タンパク質を提供する。
【0140】
いくつかの実施形態では、本開示は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片を含む)であって、前記抗原結合タンパク質は、それぞれ配列番号8および9、12および13、31および22、または30および31と少なくとも96%同一なVHおよびVLを含み、抗原結合タンパク質は、抗生物質(例えばメロペネム、カルバペネム、またはコリスチン)と相乗的に作用する単離抗原結合タンパク質を提供する。
【0141】
いくつかの実施形態では、本開示は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片を含む)であって、前記抗原結合タンパク質は、それぞれ配列番号8および9、12および13、31および22、または30および31と少なくとも97%同一なVHおよびVLを含み、抗原結合タンパク質は、クレブシエラ(例えば肺炎桿菌(K.pneumoniae))のOPKを誘導し、任意選択で、抗原結合タンパク質は、LPSを中和しないまたはLPSを中和する単離抗原結合タンパク質を提供する。
【0142】
いくつかの実施形態では、本開示は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片を含む)であって、前記抗原結合タンパク質は、それぞれ配列番号8および9、12および13、31および22、または30および31と少なくとも97%同一なVHおよびVLを含み、抗原結合タンパク質は、血清殺菌活性測定法によって測定されるように、クレブシエラ(例えば肺炎桿菌(K.pneumoniae))を死滅させる単離抗原結合タンパク質を提供する。
【0143】
いくつかの実施形態では、本開示は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片を含む)であって、前記抗原結合タンパク質は、それぞれ配列番号8および9、12および13、31および22、または30および31と少なくとも97%同一なVHおよびVLを含み、抗原結合タンパク質は、クレブシエラ(例えば肺炎桿菌(K.pneumoniae))のOPKを誘導し、血清殺菌活性測定法によって測定されるように、クレブシエラ(例えば肺炎桿菌(K.pneumoniae))を死滅させる単離抗原結合タンパク質を提供する。
【0144】
いくつかの実施形態では、本開示は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片を含む)であって、前記抗原結合タンパク質は、それぞれ配列番号8および9、12および13、31および22、または30および31と少なくとも97%同一なVHおよびVLを含み、抗原結合タンパク質は、抗生物質(例えばメロペネム、カルバペネム、またはコリスチン)と相乗的に作用する単離抗原結合タンパク質を提供する。
【0145】
いくつかの実施形態では、本開示は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片を含む)であって、前記抗原結合タンパク質は、それぞれ配列番号8および9、12および13、31および22、または30および31と少なくとも98%同一なVHおよびVLを含み、抗原結合タンパク質は、クレブシエラ(例えば肺炎桿菌(K.pneumoniae))のOPKを誘導し、任意選択で、抗原結合タンパク質は、LPSを中和しないまたはLPSを中和する単離抗原結合タンパク質を提供する。
【0146】
いくつかの実施形態では、本開示は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片を含む)であって、前記抗原結合タンパク質は、それぞれ配列番号8および9、12および13、31および22、または30および31と少なくとも98%同一なVHおよびVLを含み、抗原結合タンパク質は、血清殺菌活性測定法によって測定されるように、クレブシエラ(例えば肺炎桿菌(K.pneumoniae))を死滅させる単離抗原結合タンパク質を提供する。
【0147】
いくつかの実施形態では、本開示は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片を含む)であって、前記抗原結合タンパク質は、それぞれ配列番号8および9、12および13、31および22、または30および31と少なくとも98%同一なVHおよびVLを含み、抗原結合タンパク質は、クレブシエラ(例えば肺炎桿菌(K.pneumoniae))のOPKを誘導し、血清殺菌活性測定法によって測定されるように、クレブシエラ(例えば肺炎桿菌(K.pneumoniae))を死滅させる単離抗原結合タンパク質を提供する。
【0148】
いくつかの実施形態では、本開示は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片を含む)であって、前記抗原結合タンパク質は、それぞれ配列番号8および9、12および13、31および22、または30および31と少なくとも98%同一なVHおよびVLを含み、抗原結合タンパク質は、抗生物質(例えばメロペネム、カルバペネム、またはコリスチン)と相乗的に作用する単離抗原結合タンパク質を提供する。
【0149】
いくつかの実施形態では、本開示は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片を含む)であって、前記抗原結合タンパク質は、それぞれ配列番号8および9、12および13、31および22、または30および31と少なくとも99%同一なVHおよびVLを含み、抗原結合タンパク質は、クレブシエラ(例えば肺炎桿菌(K.pneumoniae))のOPKを誘導し、任意選択で、抗原結合タンパク質は、LPSを中和しないまたはLPSを中和する単離抗原結合タンパク質を提供する。
【0150】
いくつかの実施形態では、本開示は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片を含む)であって、前記抗原結合タンパク質は、それぞれ配列番号8および9、12および13、31および22、または30および31と少なくとも99%同一なVHおよびVLを含み、抗原結合タンパク質は、血清殺菌活性測定法によって測定されるように、クレブシエラ(例えば肺炎桿菌(K.pneumoniae))を死滅させる単離抗原結合タンパク質を提供する。
【0151】
いくつかの実施形態では、本開示は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片を含む)であって、前記抗原結合タンパク質は、それぞれ配列番号8および9、12および13、31および22、または30および31と少なくとも99%同一なVHおよびVLを含み、抗原結合タンパク質は、クレブシエラ(例えば肺炎桿菌(K.pneumoniae))のOPKを誘導し、血清殺菌活性測定法によって測定されるように、クレブシエラ(例えば肺炎桿菌(K.pneumoniae))を死滅させる単離抗原結合タンパク質を提供する。
【0152】
いくつかの実施形態では、本開示は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片を含む)であって、前記抗原結合タンパク質は、それぞれ配列番号8および9、12および13、31および22、または30および31と少なくとも99%同一なVHおよびVLを含み、抗原結合タンパク質は、抗生物質(例えばメロペネム、カルバペネム、またはコリスチン)と相乗的に作用する単離抗原結合タンパク質を提供する。
【0153】
いくつかの実施形態では、本開示は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原に加えて、肺炎桿菌(K.pneumoniae)、K.オキシトカ(K.oxytoca)、K.プランチコラ(K.planticola)、臭鼻菌(K.ozaenae)、鼻硬腫菌(K.rhinosclermoatis)、および/またはK.グラニュロマティス(K.granulomatis)のO1抗原に結合する単離抗原結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原に加えて、肺炎桿菌(K.pneumoniae)、K.オキシトカ(K.oxytoca)、K.プランチコラ(K.planticola)、臭鼻菌(K.ozaenae)、鼻硬腫菌(K.rhinosclermoatis)、および/またはK.グラニュロマティス(K.granulomatis)のO1抗原に結合する単離抗原結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)であって、単離抗原結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片を含む)は、抗体クローンRuO1ではない(Rukavina T.,et al.,Infect Immun 65:1754-60(1997を参照されたい)単離抗原結合タンパク質を提供する。O1抗原に結合する単離抗原結合タンパク質の能力は、Trautmann M.,et al.,J.Med.Microbiol 44:44-51(1996)において提供されるものなどのような方法を使用して調べることができる。
【0154】
モノクローナル抗体は、Kohler and Milstein(1975)Nature 256:495によって記載されるものなどのハイブリドーマ法を用いて調製することができる。ハイブリドーマ法の使用では、マウス、ハムスター、または他の適切な宿主動物を免疫し、免疫抗原に特異的に結合し得る抗体のリンパ球による産生を誘発する。リンパ球はまた、インビトロで免疫することもできる。免疫後、リンパ球を単離し、例えばポリエチレングリコールを使用して好適な骨髄腫細胞株と融合することによりハイブリドーマ細胞を形成し、次にそこから未融合のリンパ球および骨髄腫細胞を選択によって除くことができる。次に、免疫沈降、免疫ブロット法によるか、またはインビトロ結合アッセイ(例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA);酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA))によって決定するとき選択の抗原を特異的に対象とするモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを、標準方法を用いたインビトロ培養か(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,Academic Press,1986)、あるいは動物においてインビボで増殖させることができる。次に、モノクローナル抗体を、ポリクローナル抗体について上記に記載されるように、培養培地または腹水から精製することができる。
【0155】
あるいは、モノクローナル抗体はまた、米国特許第4,816,567号明細書に記載される通り組換えDNA方法を用いて作製することもできる。成熟B細胞またはハイブリドーマ細胞から、その抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子を特異的に増幅するオリゴヌクレオチドプライマーを使用したRT-PCRによるなどして、モノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチドを単離し、従来の手順を用いてその配列を決定する。次に、重鎖および軽鎖をコードする単離ポリヌクレオチドを好適な発現ベクターにクローニングし、本来免疫グロブリンタンパク質を産生しない大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞などの宿主細胞にその発現ベクターをトランスフェクトすると、宿主細胞によってモノクローナル抗体が生成される。また、記載される通り、所望の種のCDRを発現するファージディスプレイライブラリから、所望の種の組換えモノクローナル抗体またはその断片を単離することもできる(McCafferty et al.,1990,Nature,348:552-554;Clackson et al.,1991,Nature,352:624-628;およびMarks et al.,1991,J.Mol.Biol.,222:581-597)。
【0156】
モノクローナル抗体をコードするポリヌクレオチドは、組換えDNA技術を用いた何らかの種々の方法でさらに修飾することができ、それにより代替的な抗体を作成し得る。一部の実施形態では、例えばマウスモノクローナル抗体の軽鎖および重鎖の定常ドメインが、1)例えばヒト抗体のそれらの領域に置換されてキメラ抗体が作成されるか、または2)非免疫グロブリンポリペプチドに置換されて融合抗体が作成され得る。一部の実施形態では、定常領域がトランケートされるか、または除去されて、モノクローナル抗体の所望の抗体断片が作成される。可変領域の部位特異的または高密度突然変異誘発を用いてモノクローナル抗体の特異性、親和性等を最適化することができる。
【0157】
いくつかの実施形態では、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原に対するモノクローナル抗体がヒト化抗体である。ある実施形態では、そのような抗体が、ヒト対象に投与された場合に抗原性およびHAMA(ヒト抗マウス抗体)応答を低下させるために治療上使用される。ヒト化抗体は、当技術分野において知られている様々な技術を使用して産生することができる。ある代替の実施形態では、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原に対する抗体がヒト抗体である。
【0158】
ヒト抗体は、当技術分野において公知の様々な技法を用いて直接調製することができる。インビトロで免疫されるか、または標的抗原に対する抗体を産生する免疫された個体から単離された固定化ヒトBリンパ球を作成することができる(例えば、Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985);Boemer et al.,1991,J.Immunol.,147(1):86-95;および米国特許第5,750,373号明細書を参照されたい)。また、例えば、Vaughan et al.,1996,Nat.Biotech.,14:309-314、Sheets et al.,1998,Proc.Nat’l.Acad.Sci.,95:6157-6162、Hoogenboom and Winter,1991,J.Mol.Biol.,227:381、およびMarks et al.,1991,J.Mol.Biol.,222:581に記載される通り、ヒト抗体はファージライブラリから選択することもでき、ここで、そのファージライブラリはヒト抗体を発現する)。抗体ファージライブラリを作成および使用する技術は、米国特許第5,969,108号明細書、同第6,172,197号明細書、同第5,885,793号明細書、同第6,521,404号明細書;同第6,544,731号明細書;同第6,555,313号明細書;同第6,582,915号明細書;同第6,593,081号明細書;同第6,300,064号明細書;同第6,653,068号明細書;同第6,706,484号明細書;および同第7,264,963号明細書;およびRothe et al.,2008,J.Mol.Bio.,376:1182-200(これらの各々は、全体として参照により援用される)にも記載されている。親和性成熟戦略およびチェインシャッフリング戦略(Marks et al.,1992,Bio/Technology 10:779-783、全体として参照により援用される)が当技術分野において公知であり、高親和性ヒト抗体の作成に用いることができる。
【0159】
ヒト化抗体はまた、免疫時に内因性免疫グロブリンを産生することなくヒト抗体の完全レパートリーを産生する能力を有するヒト免疫グロブリン遺伝子座を含有するトランスジェニックマウスでも作製することができる。この手法は、米国特許第5,545,807号明細書;同第5,545,806号明細書;同第5,569,825号明細書;同第5,625,126号明細書;同第5,633,425号明細書;および同第5,661,016号明細書に記載されている。
【0160】
本開示によれば、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原に特異的な一本鎖抗体の作製技法を適合させることができる(米国特許第4,946,778号明細書を参照されたい)。加えて、O1抗原に対して所望の特異性を有するモノクローナルFab断片またはその断片の迅速かつ有効な同定を可能にするFab発現ライブラリの構築方法を適合させることができる(Huse et al.,Science 246:1275-1281(1989))。抗体断片は、限定はされないが:(a)抗体のペプシン消化によって作製されるF(ab’)2断片、(b)F(ab’)2断片のジスルフィド架橋の還元によって生成されるFab断片、(c)抗体をパパインおよび還元剤で処理することによって生成されるFab断片、および(d)Fv断片を含め、当技術分野における技法によって作製することができる。
【0161】
その血清半減期を増加させるために抗体を修飾することは、とりわけ抗体断片の場合にさらに望ましいものとなり得る。これは、例えば、抗体断片の適切な領域の突然変異によって抗体断片にサルベージ受容体結合エピトープを組み込むことによるか、または後に抗体断片にいずれかの末端もしくは中央で(例えば、DNAまたはペプチド合成によって)融合するペプチドタグにそのエピトープを組み込むことによって達成し得る。
【0162】
本開示の抗原結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片を含む)は、抗体定常領域またはその一部をさらに含むことができる。例えば、VLドメインは、そのC-末端部で、ヒトCκまたはCγ鎖を含む抗体軽鎖定常ドメインに付けることができる。同様に、VHドメインをベースとする抗原結合タンパク質は、そのC-末端部で、任意の抗体アイソタイプ、例えばIgG、IgA、IgE、およびIgMならびにアイソタイプサブクラス、特にIgG1およびIgG4のいずれかに由来する免疫グロブリン重鎖のすべてまたは一部(例えばCH1ドメイン)に結合することができる。例えば、免疫グロブリン重鎖は、抗体アイソタイプサブクラス、IgG1に由来することができる。これらの特性を有し、可変領域を安定化する任意の合成または他の定常領域変異体も本開示の実施形態で使用することが企図される。抗体定常領域は、YTE突然変異を有するFc領域とすることができ、Fc領域は、下記のアミノ酸置換を含む:M252Y/S254T/T256E。この残基の付番は、Kabatの付番に基づく。Fc領域中のYTE突然変異は、抗原結合タンパク質の血清中での持続性を増加させる(Dall’Acqua,W.F.et al.(2006)The Journal of Biological Chemistry,281,23514-23524を参照されたい)。抗体定常領域は、N3突然変異を有するFc領域とすることができ、Fc領域は、Kabatの付番に基づいて432~437位に配列Cys-Ser-Trp-His-Leu-Cys(配列番号68)を含む(437位および438位の間に挿入なし)。Fc領域中のN3突然変異はまた、抗原結合タンパク質の血清中での持続性をも増加させる。ある実施形態では、抗体定常領域は、YTE突然変異、N3突然変異、またはYTE突然変異およびN3突然変異の両方を含むことができる。
【0163】
本明細書におけるいくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質、例えば抗体またはその抗原結合断片が、エフェクター機能を改善するために、例えば、抗原依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)および/または補体依存性細胞障害作用(CDC)を増強するために修飾される。これは、1つ以上のアミノ酸置換をなすことによってまたはFc領域中にシステインを導入することによって実現することができる。抗体のエフェクター機能を増強するかもしくは衰えさせ、かつ/または抗体の薬物動態学的特性(例えば、半減期)を改変することができるFc領域の変異体(例えば、アミノ酸置換および/または追加および/または欠失)は、例えば米国特許第6,737,056B1号明細書、米国特許出願公開第2004/0132101A1号明細書、米国特許第6,194,551号明細書、ならびに米国特許第5,624,821号明細書および米国特許第5,648,260号明細書において開示される。置換のある特定のセット、3重突然変異L234F/L235E/P331S(「TM」;Kabat付番)は、ヒトC1q、CD64、CD32A、およびCD16に対するヒトIgG1分子の結合活性における大幅な減少を引き起こす。例えば、Oganesyan et al.,Acta Crystallogr D Biol Crystallogr.64:700-704(2008)を参照されたい。他の場合、定常領域修飾が血清半減期を増加させることができる。Fc領域を含むタンパク質の血清半減期は、FcRnに対するFc領域の結合親和性を増加させることによって増加させることができる。
【0164】
抗原結合タンパク質が抗体またはその抗原結合断片である場合、それは、(a)IgA定常ドメイン、(b)IgD定常ドメイン、(c)IgE定常ドメイン、(d)IgG1定常ドメイン、(e)IgG2定常ドメイン、(f)IgG3定常ドメイン、(g)IgG4定常ドメイン、および(h)IgM定常ドメインからなる群から選択される重鎖免疫グロブリン定常ドメインをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質は、IgG1重鎖免疫グロブリン定常ドメインを含む抗体またはその抗原結合断片である。いくつかの実施形態では、抗原結合タンパク質は、IgG1/IgG3キメラ重鎖免疫グロブリン定常ドメインを含む抗体またはその抗原結合断片である。
【0165】
本開示の抗原結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片を含む)は、(a)Igカッパ定常ドメインおよび(b)Igラムダ定常ドメインからなる群から選択される軽鎖免疫グロブリン定常ドメインをさらに含むことができる。
【0166】
本開示の抗原結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片を含む)は、ヒトIgG1定常ドメインおよびヒトラムダ定常ドメインをさらに含むことができる。本開示の抗原結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片を含む)は、ヒトIgG2定常ドメインおよびヒトラムダ定常ドメインをさらに含むことができる。
【0167】
本開示の抗原結合タンパク質は、252、254、および256位に突然変異を含有するIgG Fcドメインを含むことができ、位置付番は、KabatのEUインデックスにしたがう。例えば、IgG1 Fcドメインは、M252Y、S254T、およびT256Eの突然変異を含有することができ、位置付番は、KabatのEUインデックスにしたがう。
【0168】
本開示はまた、本開示の抗原結合タンパク質の単離VHドメインおよび/または本開示の抗原結合タンパク質の単離VLドメインにも関する。
【0169】
本開示の抗原結合タンパク質(抗体またはその抗原結合断片を含む)は、検出可能なまたは機能的な標識により標識することができる。検出可能な標識は、131Iまたは99Tcなどの放射能標識を含み、これらは、抗体画像処理について当技術分野において知られている従来の化学を使用して本開示の抗体に付けられてもよい。標識はまた、ホースラディッシュペルオキシダーゼなどの酵素標識を含む。標識は、特定の関連する検出可能な成分、例えば標識アビジンへの結合を介して検出されてもよいビオチンなどの化学成分をさらに含む。本開示の抗原結合タンパク質(抗体またはその抗原結合断片を含む)に付けられてもよい他の検出可能なまたは機能的な標識の非限定的な例は、同位体標識、磁気標識、レドックス活性成分、光学色素、ビオチン化基、ビオチンシグナル伝達ペプチド、緑色蛍光タンパク質(GFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、および黄色蛍光タンパク質(YFP)などの蛍光成分、ならびにヒスチジンペプチド(his)、ヘマグルチニン(HA)、金結合ペプチド、Flagなどの二次レポーターによって認識されるポリペプチドエピトープ、放射性同位体、放射性核種、毒素、治療剤および化学療法剤を含む。
【0170】
III.医薬組成物
本開示はまた、本明細書において記載される1つまたはそれ以上のO1結合剤(例えば抗O1抗原抗体または抗原結合断片を含む)を含む医薬組成物をも提供する。ある実施形態では、医薬組成物は、薬学的に許容可能なビヒクルまたは薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含む。ある実施形態では、これらの医薬組成物は、ヒト患者においてクレブシエラ(例えば肺炎桿菌(K.pneumoniae))感染症に関連する状態を治療する、予防する、または回復させる際に使用を見出す。ある実施形態では、これらの医薬組成物は、クレブシエラ(例えば肺炎桿菌(K.pneumoniae))の増殖を阻害する際に使用を見出す。いくつかの実施形態では、クレブシエラ(例えば肺炎桿菌(K.pneumoniae))は、O1血清型である。いくつかの実施形態では、1つまたはそれ以上のO1結合剤(例えば抗O1抗原抗体または抗原結合断片を含む)を含む医薬組成物は、抗体クローンRuO1を含まない(Rukavina T.,et al.,Infect Immun 65:1754-60(1997)を参照されたい)。
【0171】
ある実施形態では、製剤は、本明細書において記載される抗体または抗O1結合剤を薬学的に許容可能なビヒクル(例えば担体、賦形剤)と組み合わせることによって、保存および使用のために調製される(例えば、参照により本明細書に援用されるRemington,The Science and Practice of Pharmacy 20th Edition MackPublishing,2000を参照されたい)。いくつかの実施形態では、製剤は、保存剤を含む。
【0172】
本開示の医薬組成物は、局所的なおよび全身性の治療のために多数の方法で投与することができる。
【0173】
いくつかの実施形態では、本明細書において記載される1つまたはそれ以上のO1結合剤(例えば抗O1抗体または抗原結合断片)を含む医薬組成物は、肺炎、尿路感染症、敗血症/セプシス、新生児敗血症/セプシス、下痢、軟部組織感染症、臓器移植後の感染症、外科手術による感染症、創傷感染症、肺感染症、化膿性肝膿瘍(PLA)、眼内炎、髄膜炎、壊死性髄膜炎、強直性脊椎炎、または脊椎関節症を治療するために使用される。いくつかの実施形態では、本明細書において記載される1つまたはそれ以上のO1結合剤(例えば抗O1抗体または抗原結合断片)を含む医薬組成物は、院内感染症、日和見感染症、臓器移植後の感染症、ならびにクレブシエラ感染症に関連する他の状態(例えば、肺炎桿菌(K.pneumoniae)、K.オキシトカ(K.oxytoca)、K.プランチコラ(K.planticola)、臭鼻菌(K.ozaenae)、鼻硬腫菌(K.rhinosclermoatis)、および/またはK.グラニュロマティス(K.granulomatis)による感染症)において有用である。いくつかの実施形態では、本明細書において記載される1つまたはそれ以上のO1結合剤(例えば抗O1抗体または抗原結合断片を含む)を含む医薬組成物は、例えば人工呼吸器、カテーテル、または静脈内カテーテルを含む、クレブシエラに汚染されたデバイスに暴露される対象において有用である。
【0174】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、対象におけるクレブシエラの増殖を阻害するのに有効な、O1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)の量を含む。いくつかの実施形態では、クレブシエラは、肺炎桿菌(K.pneumoniae)、K.オキシトカ(K.oxytoca)、K.プランチコラ(K.planticola)、臭鼻菌(K.ozaenae)、鼻硬腫菌(K.rhinosclermoatis)、および/またはK.グラニュロマティス(K.granulomatis)である。いくつかの実施形態では、クレブシエラは、肺炎桿菌(K.pneumoniae)、K.オキシトカ(K.oxytoca)、および/またはK.グラニュロマティス(K.granulomatis)である。いくつかの実施形態では、クレブシエラは、肺炎桿菌(K.pneumoniae)である。いくつかの実施形態では、クレブシエラ(例えば肺炎桿菌(K.pneumoniae))は、O1血清型である。
【0175】
いくつかの実施形態では、クレブシエラ感染症に関連する状態を治療する、予防する、および/または回復させるための方法は、クレブシエラに感染した対象を、インビボにおいて、O1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)を含む医薬組成物と接触させるステップを含む。いくつかの実施形態では、O1結合剤を含む医薬組成物は、感染症を予防するために、対象が細菌に暴露されたのと同時にまたはその直後に投与される。いくつかの実施形態では、O1結合剤を含む医薬組成物は、感染後に治療薬として投与される。
【0176】
ある実施形態では、クレブシエラ感染症を治療する、予防する、および/または回復させるための方法は、O1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)を含む医薬組成物を対象に投与するステップを含む。ある実施形態では、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態では、O1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)を含む医薬組成物は、対象がクレブシエラに感染する前に投与される。いくつかの実施形態では、O1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)を含む医薬組成物は、対象がクレブシエラに感染した後に投与される。
【0177】
ある実施形態では、O1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)を含む医薬組成物は、人工呼吸器で対象に投与される。ある実施形態では、対象は、カテーテル(例えば尿道カテーテルまたは静脈内カテーテル)を有する。ある実施形態では、対象は、抗生物質(例えばメロペネム、カルバペネム、フルオロキノロン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、トリメトプリム、スルホンアミド、および/またはコリスチン)を受けている。
【0178】
ある実施形態では、O1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)を含む医薬組成物は、院内クレブシエラ感染症の治療または予防のためのものである。ある実施形態では、O1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)を含む医薬組成物は、日和見クレブシエラ感染症の治療または予防のためのものである。ある実施形態では、O1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)を含む医薬組成物は、臓器移植後のクレブシエラ感染症の治療または予防のためのものである。
【0179】
ある実施形態では、O1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)を含む医薬組成物は、クレブシエラ感染症の治療または予防のためのものであり、クレブシエラは、広域スペクトルベータ-ラクタマーゼ(ESBL)産生クレブシエラである。ある実施形態では、O1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)を含む医薬組成物は、クレブシエラ感染症の治療または予防のためのものであり、クレブシエラは、非広域スペクトルベータ-ラクタマーゼ(ESBL)産生クレブシエラである。ある実施形態では、O1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)を含む医薬組成物は、クレブシエラ感染症の治療または予防のためのものであり、クレブシエラは、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)カルバペネム抵抗性腸内細菌科(CRE)クレブシエラである。ある実施形態では、O1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)を含む医薬組成物は、クレブシエラ感染症の治療または予防のためのものであり、クレブシエラは、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)カルバペネマーゼ(KPC)産生クレブシエラである。
【0180】
ある実施形態では、O1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)を含む医薬組成物は、セファロスポリン抵抗性のクレブシエラ感染症の治療または予防のためのものである。ある実施形態では、O1結合剤(例えば抗O1抗体またはその抗原結合断片)を含む医薬組成物は、アミノグリコシド抵抗性のクレブシエラ感染症の治療または予防のためのものである。ある実施形態では、O1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)を含む医薬組成物は、キノロン抵抗性のクレブシエラ感染症の治療または予防のためのものである。ある実施形態では、O1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)を含む医薬組成物は、カルバペネム抵抗性のクレブシエラ感染症の治療または予防のためのものである。ある実施形態では、O1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)を含む医薬組成物は、コリスチン抵抗性のクレブシエラ感染症の治療または予防のためのものである。ある実施形態では、O1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)を含む医薬組成物は、セファロスポリン、アミノグリコシド、キノロン、フルオロキノロン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、トリメトプリム、スルホンアミド、カルバペネム、およびコリスチン抵抗性のクレブシエラ感染症の治療または予防のためのものである。ある実施形態では、O1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)を含む医薬組成物は、抗生物質に対して感受性のクレブシエラによる感染症の治療または予防のためのものである。
【0181】
クレブシエラ感染症に関連する状態の治療、予防、および/または回復のために、本明細書において記載される医薬組成物、抗体、または抗O1結合剤の適切な投薬量は、状態のタイプ、状態の重症度および経過、状態の応答性、医薬組成物、抗体、または抗O1結合剤が治療目的に投与されるかまたは防止目的に投与されるか、以前の療法、患者の病歴など、治療している医者の判断によるあらゆることに依存する。医薬組成物、抗体、または抗O1結合剤は、1回または数日~数か月まで続く一連の治療の間または治癒を遂げるまでまたは状態の縮小が実現されるまで投与することができる。最適な投薬スケジュールは、患者の体内の薬剤蓄積についての測定値から計算することができ、個々の抗体または作用物質の相対的な効力に依存して変動するであろう。投与している医者は、最適な投薬量、投薬の手法、および反復率を容易に決定することができる。
【0182】
IV.使用の方法
本明細書において記載されるO1結合剤(抗O1抗原抗体およびその抗原結合断片を含む)は、肺炎、尿路感染症、敗血症/セプシス、新生児敗血症/セプシス、下痢、軟部組織感染症、臓器移植後の感染症、外科手術による感染症、創傷感染症、肺感染症、化膿性肝膿瘍(PLA)、眼内炎、髄膜炎、壊死性髄膜炎、強直性脊椎炎、および脊椎関節症を含むが、これらに限定されない様々な適用に有用である。いくつかの実施形態では、本明細書において記載されるO1結合剤(抗O1抗体およびその抗原結合断片を含む)は、院内感染症、日和見感染症、臓器移植後の感染症、ならびにクレブシエラ感染症に関連する他の状態(例えば、肺炎桿菌(K.pneumoniae)、K.オキシトカ(K.oxytoca)、K.プランチコラ(K.planticola)、臭鼻菌(K.ozaenae)、鼻硬腫菌(K.rhinosclermoatis)、および/またはK.グラニュロマティス(K.granulomatis)による感染症)において有用である。いくつかの実施形態では、本明細書において記載されるO1結合剤(抗O1抗体またはその抗原結合断片を含む)は、例えば人工呼吸器、カテーテル、または静脈内カテーテルを含む、クレブシエラに汚染されたデバイスに暴露される対象において有用である。
【0183】
いくつかの実施形態では、本開示は、クレブシエラ感染症に関連する状態を治療する、予防する、および/または回復させるための方法であって、有効量のO1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)を対象に投与するステップを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、その量は、対象におけるクレブシエラの増殖を阻害するのに有効である。いくつかの実施形態では、クレブシエラは、肺炎桿菌(K.pneumoniae)、K.オキシトカ(K.oxytoca)、K.プランチコラ(K.planticola)、臭鼻菌(K.ozaenae)、鼻硬腫菌(K.rhinosclermoatis)、および/またはK.グラニュロマティス(K.granulomatis)である。いくつかの実施形態では、クレブシエラは、肺炎桿菌(K.pneumoniae)、K.オキシトカ(K.oxytoca)、および/またはK.グラニュロマティス(K.granulomatis)である。いくつかの実施形態では、クレブシエラは、肺炎桿菌(K.pneumoniae)である。いくつかの実施形態では、クレブシエラ(例えば肺炎桿菌(K.pneumoniae))は、O1血清型である。いくつかの実施形態では、対象は、クレブシエラに暴露された。いくつかの実施形態では、クレブシエラは、対象において検出された。いくつかの実施形態では、対象は、例えば症状に基づいてクレブシエラに感染していることが疑われる。
【0184】
いくつかの実施形態では、本開示は、クレブシエラの増殖を阻害するための方法であって、O1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)を対象に投与するステップを含む方法をさらに提供する。いくつかの実施形態では、クレブシエラは、肺炎桿菌(K.pneumoniae)、K.オキシトカ(K.oxytoca)、K.プランチコラ(K.planticola)、臭鼻菌(K.ozaenae)、鼻硬腫菌(K.rhinosclermoatis)、および/またはK.グラニュロマティス(K.granulomatis)である。いくつかの実施形態では、クレブシエラは、肺炎桿菌(K.pneumoniae)、K.オキシトカ(K.oxytoca)、および/またはK.グラニュロマティス(K.granulomatis)である。いくつかの実施形態では、クレブシエラは、肺炎桿菌(K.pneumoniae)である。いくつかの実施形態では、クレブシエラ(例えば肺炎桿菌(K.pneumoniae))は、O1血清型である。いくつかの実施形態では、対象は、クレブシエラに暴露された。いくつかの実施形態では、クレブシエラは、対象において検出された。いくつかの実施形態では、対象が、例えば症状に基づいてクレブシエラに感染していることが疑われる。
【0185】
いくつかの実施形態では、クレブシエラ感染症に関連する状態を治療する、予防する、および/または回復させるための方法は、クレブシエラに感染した対象を、インビボにおいて、O1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)と接触させるステップを含む。ある実施形態では、細胞をO1結合剤と接触させるステップは、動物モデルにおいて行われる。例えば、O1結合剤は、細菌による負担を低下させるためにマウスクレブシエラ感染症モデルに投与することができる。いくつかの実施形態では、O1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)は、感染症を予防するために動物への細菌の導入前に投与される。いくつかの実施形態では、O1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)は、感染症を予防するために、動物が細菌に暴露されたのと同時にまたはその直後に投与される。いくつかの実施形態では、O1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)は、感染後に治療薬として投与される。いくつかの実施形態では、クレブシエラ感染症に関連する状態を治療する、予防する、および/または回復させるための方法は、クレブシエラに感染した対象を、インビボにおいて、O1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)と接触させるステップを含み、単離抗原結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片を含む)は、抗体クローンRuO1ではない(Rukavina T.,et al.,Infect Immun 65:1754-60(1997を参照されたい)。
【0186】
ある実施形態では、クレブシエラ感染症を治療する、予防する、および/または回復させるための方法は、有効量のO1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)を対象に投与するステップを含む。ある実施形態では、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態では、有効量のO1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)は、対象がクレブシエラに感染する前に投与される。いくつかの実施形態では、有効量のO1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)は、対象がクレブシエラに感染した後に投与される。
【0187】
ある実施形態では、対象は、人工呼吸器をしている。ある実施形態では、対象は、カテーテル(例えば尿道カテーテルまたは静脈内カテーテル)を有する。ある実施形態では、対象は、抗生物質(例えばメロペネム、カルバペネム、またはコリスチン)を受けている。
【0188】
ある実施形態では、クレブシエラ感染症は、院内感染症である。ある実施形態では、クレブシエラ感染症は、日和見感染症である。ある実施形態では、クレブシエラ感染症は、臓器移植の結果として生じる。
【0189】
ある実施形態では、クレブシエラは、広域スペクトルベータ-ラクタマーゼ(ESBL)産生クレブシエラである。ある実施形態では、クレブシエラは、非ESBL産生クレブシエラである。ある実施形態では、クレブシエラは、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)カルバペネマーゼ(KPC)産生クレブシエラである。ある実施形態では、クレブシエラは、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)カルバペネム抵抗性腸内細菌科(CRE)クレブシエラである。
【0190】
ある実施形態では、クレブシエラは、セファロスポリン抵抗性である。ある実施形態では、クレブシエラは、アミノグリコシド抵抗性である。ある実施形態では、クレブシエラは、キノロン抵抗性である。ある実施形態では、クレブシエラは、カルバペネム抵抗性である。ある実施形態では、クレブシエラは、セファロスポリン、アミノグリコシド、キノロン、およびカルバペネム抵抗性である。ある実施形態では、クレブシエラは、セファロスポリン、アミノグリコシド、およびキノロン抵抗性である。ある実施形態では、クレブシエラは、抗生物質に対して感受性である。
【0191】
ある実施形態では、クレブシエラ感染症を治療する、予防する、および/または回復させるための方法は、有効量のO1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)および抗生物質を対象に投与するステップを含む。O1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)および抗生物質は、同時にまたは逐次的に投与することができる。O1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)および抗生物質は、同じ医薬組成物において投与することができる。O1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)および抗生物質は、別々の医薬組成物において同時にまたは逐次的に投与することができる。ある実施形態では、抗生物質は、クレブシエラ感染症を治療するのに適した抗生物質である。ある実施形態では、抗生物質は、メロペネムである。ある実施形態では、抗生物質は、カルバペネムまたはコリスチンである。ある実施形態では、抗生物質は、セファロスポリン、アミノグリコシド、キノロン、フルオロキノロン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、トリメトプリム、スルホンアミド、カルバペネム、および/またはコリスチンである。
【0192】
本開示はまた、O1リポ多糖またはO1抗原を含有するクレブシエラを検出するための方法をも提供する。いくつかの実施形態では、O1またはO1抗原を含有するクレブシエラを検出するための方法は、本明細書において提供されるO1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)と試料を接触させるステップおよび試料への結合剤(例えば抗体またはその抗原結合断片)の結合についてアッセイするステップを含む。結合を評価する方法は、当技術分野においてよく知られている。いくつかの実施形態では、方法は、O1リポ多糖またはO1抗原を含有するクレブシエラを検出するステップを含む。いくつかの実施形態では、O1またはO1を含有するクレブシエラを検出するための方法は、本明細書において提供されるO1結合剤(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)と試料を接触させるステップおよび試料への結合剤(例えば抗体またはその抗原結合断片)の結合についてアッセイするステップを含む。
【0193】
V.キット
本開示の任意の態様または実施形態による単離抗原結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)を含むキットもまた、本開示の一態様として提供される。キットにおいて、抗原結合タンパク質、抗体、またはその抗原結合断片は、試料中でのその反応性を例えば下記にさらに記載されるように決定することができるように標識することができる。キットの構成要素は、一般に無菌であり、密封バイアルまたは他の容器中にある。キットは、抗体が有用な診断分析または他の方法において用いることができる。キットは、方法、例えば本開示にしたがう方法における構成要素の使用のための説明書を含有することができる。そのような方法の実行を支援するかまたは可能にする付随的な材料が本開示のキットに含まれてもよい。
【0194】
試料中の抗体またはその抗原結合断片の反応性は、任意の適切な手段によって決定することができる。ラジオイムノアッセイ(RIA)は、可能性として考えられる1つの手段である。放射性標識抗原を非標識抗原(試験サンプル)と混合し、抗体に結合させる。結合した抗原を結合していない抗原から物理的に分離し、抗体に結合した放射性抗原の量を決定する。試験サンプル中に抗原が多くあるほど、抗体に結合する放射性抗原は少ないであろう。競合的結合アッセイはまた、レポーター分子に連結された抗原または類似体を使用して、非放射性抗原と共に使用することもできる。レポーター分子は、スペクトルで特定される吸収特性または放射特性を有する蛍光色素、蛍光体、またはレーザー色素とすることができる。適した蛍光色素は、フルオレセイン、ローダミン、フィコエリトリン、およびTexas Redを含む。適した発色性色素は、ジアミノベンジジンを含む。
【0195】
他のレポーターは、有色、磁気、または常磁性のラテックスビーズなどの高分子コロイド粒子または微粒子物質および検出可能なシグナルを直接または間接的に、視覚的に観察するか、電子的に検出するか、または他に記録することができるようにする生物学的または化学的活性剤を含む。これらの分子は、例えば、色を生じるかもしくは変化させるか、または電気的な特性における変化を引き起こす反応を触媒する酵素とすることができる。それらは、分子が反応性であり、あるエネルギー状態間の電子遷移が特徴的なスペクトルの吸収または放射をもたらす。それらは、バイオセンサーと共に使用される化学物質を含むことができる。ビオチン/アビジンまたはビオチン/ストレプトアビジンおよびアルカリホスファターゼ検出系を用いることができる。
【0196】
個々の抗体-レポーターコンジュゲートによって生成されるシグナルは、試料(標準および試験)中の適切な抗体結合の定量化可能な絶対的または相対的データを得るために使用することができる。
【0197】
本開示はまた、競合アッセイにおいて抗原レベルを測定するための、上記に記載される抗原結合タンパク質の使用も提供し、競合アッセイにおいて本開示によって提供される抗原結合タンパク質を用いることにより、試料中のO1抗原またはO1抗原を含むクレブシエラのレベルを測定する方法を含む。いくつかの実施形態では、結合していない抗原からの結合している抗原の物理的な分離が必要とされない。いくつかの実施形態では、物理的なまたは光学的な変化が結合に際して起こるように、レポーター分子が抗原結合タンパク質に連結される。レポーター分子は、検出可能であり、好ましくは測定可能なシグナルを直接または間接的に生成することができる。いくつかの実施形態では、レポーター分子の連結が直接的もしくは間接的であるかまたは共有結合性であり、例えば、ペプチド結合または非共有結合性の相互作用を介したものである。ペプチド結合を介した連結は、抗体およびレポーター分子をコード遺伝子融合物の組換え発現の結果としてのものとすることができる。
【0198】
本開示はまた、本開示による抗原結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)を用いることによって、直接、O1抗原のレベルを測定するための方法をも提供する。いくつかの実施形態では、これらの方法は、バイオセンサーシステムを利用する。いくつかの実施形態では、方法は、本開示による抗原結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)を用いることによって、O1抗原を検出するステップを含む。
【0199】
VI.ポリヌクレオチドおよび宿主細胞
さらなる態様では、本開示は、本開示による抗原結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体もしくはその抗原結合断片)、VHドメイン、および/またはVLドメインをコードする核酸配列を含む単離核酸を提供する。いくつかの態様では、本開示は、本明細書において記載される抗原結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体もしくはその抗原結合断片)、VHドメイン、および/またはVLドメインを作製するまたは調製するための方法であって、前記抗原結合タンパク質、VHドメイン、および/またはVLドメインの産生をもたらす条件下で前記核酸を発現させるステップならびに任意選択で、抗原結合タンパク質、VHドメイン、および/またはVLドメインを回収するステップを含む方法を提供する。
【0200】
本開示によって提供される核酸は、DNAおよび/またはRNAを含む。一態様では、核酸は、cDNAである。一態様では、本開示は、上記に記載されるCDRもしくはCDRのセットまたはVHドメインもしくはVLドメインまたは抗体抗原結合部位もしくは抗体、例えばscFv、IgG1、もしくはIgG2をコードする核酸を提供する(例えば表1~4を参照されたい)。
【0201】
本開示の一態様は、本明細書において記載されるVH CDRまたはVL CDR配列をコードする核酸、一般に単離核酸、任意選択でcDNAを提供する。いくつかの実施形態では、VH CDRは、配列番号1~3、14~16、および23~25から選択される。いくつかの実施形態では、VL CDRは、配列番号4~7、10、11、17~20、および26~29から選択される。KPE33、KPE33V2016、KPA27、KPB202、KBJ4、または54H7のHCDRのセットをコードする核酸およびKPE33、KPE33V2016、KPA27、KPB202、KBJ4、または54H7のLCDRのセットをコードする核酸もまた、表1および2に記載される個々のCDR、HCDR、LCDR、およびCDR、HCDR、LCDRのセットをコードする核酸のように提供される。いくつかの実施形態では、本開示の核酸は、表3および4に記載されるKPE33、KPE33V2016、KPA27、KPB202、KBJ4、または54H7のVHドメインおよび/またはVLドメインをコードする。
【0202】
本発明は、下記の表5および6に示されるものから選択される配列を含むポリヌクレオチドをさらに提供する。
【0203】
【表5】
【0204】
【表6】
【0205】
【表7】
【0206】
【表8】
【0207】
表5または6に提供される配列番号のいずれか1つに対して少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するポリヌクレオチドもまた、提供される。したがって、ある実施形態では、ポリヌクレオチドは、(a)表5に提供される配列番号のいずれか1つに対して少なくとも約95%の配列同一性を有するポリヌクレオチドおよび/または(b)表6に提供される配列番号のいずれか1つに対して少なくとも約95%の配列同一性を有するポリヌクレオチドを含む。ある実施形態では、ポリヌクレオチドは、(a)表5に提供される配列番号の配列を有するポリヌクレオチド;および/または(b)表6に提供される配列番号の配列を有するポリヌクレオチドを含む。
【0208】
本開示は、本明細書において開示される核酸分子またはその相補体(complement)の断片である、ハイブリダイゼーションプローブ、PCRプライマー、またはシークエンシングプライマーとしての使用に十分な単離ポリヌクレオチドまたはcDNA分子を提供する。核酸分子は、例えば、制御配列に作動可能に連結することができる。
【0209】
本開示はまた、上記に記載される少なくとも1つのポリヌクレオチドを含むプラスミド、ベクター、転写または発現カセットの形態の構築物も提供する(例えば表5および6を参照されたい)。
【0210】
本開示はまた、1つ以上の核酸、プラスミド、ベクターを含むかまたは上記に記載される組換え宿主細胞も提供する(例えば表5および6を参照されたい)。提供される任意のCDRまたはCDRのセットまたはVHドメインもしくはVLドメインまたは抗体抗原結合部位、抗体、例えばscFv、IgG1、またはIgG2(例えば表1~4を参照されたい)をコードする核酸は、それ自体、コード産物の産生の方法のように、本開示の一態様を形成し、この方法は、産物(例えば、本明細書において開示される、例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片を含む抗原結合タンパク質)をコードする核酸からの発現を含む。発現は、適切な条件下で、本明細書において記載される核酸を含有する組換え宿主細胞を培養することによって好都合に実現することができる。発現による産生後、CDR、CDRのセット、VHもしくはVLドメイン、抗原結合タンパク質は、任意の適した技術を使用して単離および/または精製することができる。
【0211】
いくつかの実例では、宿主細胞は、HEK293細胞、HeLa細胞、NS0マウス骨髄腫細胞、PER.C6(登録商標)ヒト細胞、またはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などのような哺乳類宿主細胞である。
【0212】
抗原結合タンパク質、VHおよび/またはVLドメイン、ならびにコード核酸分子およびベクターは、例えば、それらの自然環境から、実質的に純粋なもしくは均質の形態で単離するおよび/もしくは精製することができるまたは核酸の場合、必要とされる機能を有するポリペプチドをコードする配列以外のもともとの核酸もしくは遺伝子がないもしくは実質的にないものとすることができる。本開示による核酸は、DNAまたはRNAを含み、全体的にまたは部分的に合成することができる。本明細書において説明されるヌクレオチド配列への言及は、特定の配列を有するDNA分子を包含し、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、UがTと置換される、特定の配列を有するRNA分子を包含する。
【0213】
様々な異なる宿主細胞におけるポリペプチドのクローニングおよび発現のための系が、よく知られている。適した宿主細胞は、細菌、哺乳類細胞、植物細胞、酵母およびバキュロウイルス系、ならびにトランスジェニック植物および動物を含む。異種ポリペプチドの発現のための当技術分野において利用可能な哺乳類細胞系は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓細胞、NS0マウスメラノーマ細胞、YB2/0ラット骨髄腫細胞、ヒト胎児由来腎臓細胞、ヒト胎児由来網膜細胞、およびその他多くの細胞を含む。一般的な細菌宿主は、大腸菌である。
【0214】
大腸菌などの原核細胞における抗体および抗体断片の発現は、当技術分野において十分に確立されている。概説については、例えばPlueckthun,A.Bio/Technology 9:545-551(1991)を参照されたい。培養中の真核細胞における発現も抗原結合タンパク質の産生のための選択肢として当業者に利用可能である。例えば、Chadd HE and Chamow SM(2001)110 Current Opinion in Biotechnology 12:188-194、Andersen DC and Krummen L(2002)Current Opinion in Biotechnology 13:117、Larrick JW and Thomas DW(2001)Current opinion in Biotechnology 12:411-418。
【0215】
プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子、および必要に応じて他の配列を含む適切な調節配列を含有する、適したベクターを選択または構築することができる。ベクターは、必要に応じてプラスミド、ウイルス、例えば「ファージまたはファージミドであってもよい。より詳細については、例えばMolecular Cloning:a Laboratory Manual:3rd edition,Sambrook and Russell,2001,Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。例えば、核酸構築物の調製、突然変異誘発、シークエンシング、細胞中へのDNAの導入および遺伝子発現、ならびにタンパク質の分析における、核酸の操作のための多くの知られている技術およびプロトコールは、Current Protocols in Molecular Biology,Second Edition,Ausubel et al.eds.,John Wiley&Sons,1988,Short Protocols in Molecular Biology:A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel et al.eds.,John Wiley&Sons,4th edition 1999において詳細に記載される。Sambrook et al.およびAusubel et al.(両方)の開示は、参照により本明細書に援用される。
【0216】
したがって、本開示のさらなる態様は、本明細書において開示される核酸を含有する宿主細胞を提供する。例えば、本開示は、本開示の抗原結合タンパク質または本開示の抗原結合タンパク質の抗体CDR、CDRのセット、またはVHおよび/もしくはVLドメイン(例えば表1~4を参照されたい)をコードするヌクレオチド配列(例えば表5および6を参照されたい)を含む核酸で形質転換された宿主細胞を提供する。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、本開示の発現抗原結合タンパク質または本開示の抗原結合タンパク質の抗体CDR、CDRのセット、またはVHおよび/もしくはVLドメイン(例えば表1~4を参照されたい)を含む。
【0217】
そのような宿主細胞は、インビトロにおけるものとすることができ、培養中のものとすることができる。そのような宿主細胞は、単離宿主細胞とすることができる。そのような宿主細胞は、インビボにおけるものとすることができる。
【0218】
本明細書において提供されるさらなる態様は、宿主細胞中にそのような核酸を導入するステップを含む方法である。導入は、任意の利用可能な技術を用いることができる。真核細胞について、適した技術は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン、エレクトロポレーション、リポソーム媒介性のトランスフェクション、およびレトロウイルスもしくは他のウイルス、例えばワクシニアウイルスまたは昆虫細胞についてバキュロウイルスを使用する形質導入を含んでいてもよい。宿主細胞、特に真核細胞中への核酸の導入は、ウイルスまたはプラスミドベースの系を使用することができる。プラスミド系は、エピソームで維持されてもよく、または宿主細胞中にもしくは人工染色体中に組み込まれてもよい。組み込みは、単一の遺伝子座または複数の遺伝子座での1つ以上のコピーのランダムまたは標的統合によるものとすることができる。細菌細胞について、適した技術は、塩化カルシウム形質転換、エレクトロポレーション、およびバクテリオファージを使用するトランスフェクションを含んでいてもよい。
【0219】
導入後、核酸からの発現を引き起こすまたは可能にする、例えば、遺伝子の発現のための条件下で宿主細胞を培養することができる。
【0220】
一実施形態では、本開示の核酸が、宿主細胞のゲノム(例えば、染色体)中に統合される。統合は、標準的な技術にしたがって、ゲノムとの組換えを促進する配列の組み入れによって促進することができる。
【0221】
本開示はまた、上記に記載される抗原結合タンパク質またはポリペプチドを発現するために発現系において構築物(例えば、上記に記載されるプラスミド、ベクターなど)を使用するステップを含む方法を提供する。
【0222】
別の態様では、本開示は、本開示の抗原結合タンパク質(例えば、抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)を産生するハイブリドーマを提供する。
【0223】
本開示のさらなる態様は、本開示の抗体結合タンパク質(例えば抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片)の産生のための方法であって、コード核酸からの発現を引き起こすステップを含む方法を提供する。そのような方法は、前記抗原結合タンパク質の産生に適した条件下で宿主細胞を培養するステップを含むことができる。
【0224】
いくつかの実施形態では、産生のための方法は、宿主細胞またはハイブリドーマから産生される抗原結合タンパク質(抗O1抗原抗体またはその抗原結合断片を含む)を単離するおよび/または精製するステップをさらに含む。
【実施例
【0225】
材料および方法
特に指定のない限り、肺炎桿菌(K.pneumoniae)分離株はすべて、America Type Culture Collection、International Health Management Associates(IHMA)、またはEurofin collectionから購入し、培養物は、37℃で2×YT培地中で維持し、適切な場合、抗生物質を補足した。
【0226】
統計分析は、すべてGraphPad Prismバージョン6で実行した。細菌負担を比較するために、抗O1抗原抗体治療動物は、対応のないt検定によってヒトアイソタイプコントロール抗体治療動物と比較した。生存結果は、カプランマイヤー曲線としてプロットし、Log-rank(Mental-Cox)検定で分析した。
【0227】
実施例1:肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)LPS-O1に対して高い抗体力価を有するPBMCおよび扁桃腺のドナーの選択
末梢血単核球(PBMC)および血清は、健康な献血者(N=567)由来のバフィーコートから分離した。PMBCは液体窒素中で保存したのに対して、血漿は4℃で保存した。肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)免疫ドナーを同定するために、利用可能な血清はすべて、Kp43816およびKp4211(LPS-O1血清型)へのならびに無莢膜型(unencapsulated)突然変異株Kp43816ΔcpsBおよび二重突然変異体Kp43816ΔcpsBΔwaaLへの結合について試験した。二重突然変異体Kp43816ΔcpsBΔwaaLは、その表面上にLPS O抗原を発現しない。加えて、利用可能な血清はすべて、ハイスループット血清殺菌活性測定法(SBAアッセイ)を使用し、補体の存在下において、それらの殺菌作用について試験した。発光性肺炎桿菌(K.pneumoniae)株4211(lux)の一晩培養物は、OD600を0.003にするためにMuller HintonII培地中で希釈した。等容量の血清、4211lux、および仔ウサギ血清(Cedarlane)を、384ウェルプレート中で混合し、振盪しながら(250rpm)2時間37℃でインキュベートした。次いで、相対発光単位(RLU)をEnvision Multilabelプレート読み取り装置(Perkin Elmer)を使用して測定した。死滅のパーセンテージは、ヒト血清から得られたRLUと、抗体なしのアッセイから得られたRLUを比較することによって決定した。
【0228】
PBMCドナーは、それらの結合力価ならびにそれらのSBAおよびOPK活性に基づいてランク付けした。OPKアッセイは、記載されるものに変更を加えて実行した(Wang,Q.et al.Target-Agnostic Identification of Functional Monoclonal Antibodies Against Klebsiella pneumoniae Multimeric MrkA Fimbrial Subunit J Infect Dis.2016 Jun 1;213(11):1800-8)。手短かに言えば、発光性肺炎桿菌(K.pneumoniae)莢膜突然変異株43816ΔcpsB(43816ΔcpsB Lux)の対数期培養物を、約2×10細胞/mlまで希釈した。細菌、補体を提供する希釈仔ウサギ血清(Cedarlane、Kp43816ΔcpsBをあらかじめ取り込んでいる、1:10)、ジメチルホルムアミド(DMF)分化HL-60細胞、および血清を、384ウェルプレート中で混合し、振盪しながら(250rpm)2時間37℃でインキュベートした。次いで、相対発光単位(RLU)をEnvision Multilabelプレート読み取り装置(Perkin Elmer)を使用して測定した。死滅のパーセンテージは、ヒト血清から得られたRLUと、抗体なしのアッセイから得られたRLUを比較することによって決定した。
【0229】
扁桃腺およびアデノイドのドナーの選択については、扁桃腺の単核細胞を、Pinna,D.,et al.,European Journal of Immunology 39:1260-1270(2009)において記載されるように多クローン的に刺激した。ポリクローナル抗体混合物を含有する上清を、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって、細菌株の様々なプールにまたは精製細菌抗原(例えばLPSもしくは他の多糖、細菌タンパク質)に結合する抗体の存在を決定するために使用した。肺炎桿菌(K.pneumoniae)に対して強いポリクローナル抗体力価を有する扁桃腺を、実施例2で記載されるように、抗体生成のために選択した。
【0230】
実施例2:モノクローナルKPA27、KPB202、KPE33、およびKPJ4の同定
記憶B細胞は、CD19ミクロビーズを使用して、凍結保存PMBCから単離し、その後、セルソーティングによって、IgM、IgD、およびIgAを持つ細胞を除去した。記憶B細胞を、Traggiai,E.et al.,Nature Medicine 10:871-875(2004)において記載されるように不死化した。
【0231】
KPA27およびKPE33は、2人の異なる免疫ドナーの末梢血から単離した:それぞれ#487および#262。それらは、LPS-O1血清型の肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)に結合し、株Kp4211(LPS-O1)の補体依存性の死滅(SBA)を媒介することが最初のスクリーニングにおいて示された。KPA27およびKPE33を、IgG2抗体として免疫ドナーから単離した。
【0232】
KPB202およびKPJ4は、2人の異なるドナーの扁桃腺のB細胞から単離した:T6(KPB202)およびT8(KPJ4)。それらは、LPS-O1血清型の肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)に結合し、株Kp4211(LPS-O1)の補体依存性の死滅(SBA)を媒介することが最初のスクリーニングにおいて示された。KPB202およびKPJ4は、それぞれIgG1抗体およびIgG2抗体としてドナーから単離した。
【0233】
実施例3:肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原特異的ハイブリドーマの単離
肺炎桿菌(K.pneumoniae)分離株は、America Type Culture CollectionまたはEurofin collectionから購入した。Balb/cマウスを、4週間、腹腔内(ip)ルートを介して肺炎桿菌(K.pneumoniae)43816DMにより毎週免疫化し、その後、野生型肺炎桿菌(K.pneumoniae)臨床分離株の混合物により最後の追加免疫(boost)を行った。免疫の終了時に、リンパ節および脾臓B細胞を回収し、P3X骨髄腫と融合した。次いで、結果として生じるハイブリドーマ由来の上清を、43816DMへの結合について全細菌ELISAによってスクリーニングした。ポジティブなハイブリドーマを抗生物質のない培地において継代培養し、上清を、肺炎桿菌(K.pneumoniae)に対して防御する可能性のあるハイブリドーマを選択するためにSBAおよびOPKアッセイにかけた。1つのポジティブなハイブリドーマが、54H7抗体を産生した。
【0234】
実施例4:抗O1抗原抗体の特徴付け
単離抗体は、全細菌へのそれらの結合、オプソニン作用による死滅(OPK)、補体依存性の死滅(SBA)、LPS中和、および精製O1 LPSへの結合について試験した。単離抗O1抗原抗体の特性を表7に概説する。
【0235】
OPKアッセイは、記載されるものに変更を加えて実行した(Wang,Q.et al.,J.Infect.Dis.213:1800-8(2016))。手短かに言えば、発光性肺炎桿菌(K.pneumoniae)莢膜突然変異株43816ΔcpsB(43816ΔcpsB Lux)の対数期培養物を、約2×10細胞/mlまで希釈した。細菌、補体を提供する希釈仔ウサギ血清(Cedarlane、Kp43816ΔcpsBをあらかじめ取り込んでいる、1:10)、ジメチルホルムアミド(DMF)分化HL-60細胞、および抗体を、384ウェルプレート中で混合し、振盪しながら(250rpm)2時間37℃でインキュベートした。次いで、相対発光単位(RLU)をEnvision Multilabelプレート読み取り装置(Perkin Elmer)を使用して測定した。死滅のパーセンテージは、抗肺炎桿菌(K.pneumoniae)mAbおよびネガティブコントロールmAbから得られたRLUと、抗体なしのアッセイから得られたRLUを比較することによって決定した。結果を図1Cに示す。54H7、KPB202、KPA27、KPE33、およびKPJ4抗体は、OPK死滅を誘導した。
【0236】
血清に対する肺炎桿菌(K.pneumoniae)株Kp4211luxの感受性および抗体依存性の死滅を、高処理血清殺菌活性測定法(SBA)によって測定した。発光性肺炎桿菌(K.pneumoniae)株4211(lux)の一晩培養物は、OD600を0.003にするためにMuller HintonII培地中で希釈した。等容量の抗体、4211lux、および仔ウサギ血清(Cedarlane)を、384ウェルプレート中で混合し、振盪しながら(250rpm)2時間37℃でインキュベートした。次いで、相対発光単位(RLU)をEnvision Multilabelプレート読み取り装置(Perkin Elmer)を使用して測定した。死滅のパーセンテージは、抗肺炎桿菌(K.pneumoniae)mAbおよびネガティブコントロールmAbから得られたRLUと、抗体なしのアッセイから得られたRLUを比較することによって決定した。結果を図1Bに示す。54H7、KPB202、KPA27、KPE33、およびKPJ4抗体はすべて、血清殺菌活性測定法(SBA)によって示されるように補体依存性の死滅を介して肺炎桿菌(K.pneumoniae)を死滅させる。
【0237】
LPS中和は、NF-κB応答プロモーター(RAW264.7-lux)のコントロール下にホタルルシフェラーゼレポーター遺伝子を持つマウスRAW264.7マクロファージ細胞系を利用することによってアッセイした。段階希釈抗体ストックを1:1の比でLPSと混合し、1時間4℃でインキュベートした。次いで、抗体/LPS混合物を、あらかじめ接種したRAW264.7-lux細胞(5e3細胞/ウェル)を含有するアッセイプレートの中に1:10で希釈し、次いで、これを2.5時間37℃/5%COに置いた。インキュベーション後、次いで、Steady Glo(Promega)を、それぞれのウェルに追加し、光から防御してさらに20分間インキュベートした。次いで、相対発光単位(RLU)をEnvision Multilabelプレート読み取り装置(Perkin Elmer)を使用して測定した。阻害のパーセンテージは、抗肺炎桿菌(K.pneumoniae)mAbおよびネガティブコントロールmAbから得られたRLUと、抗体なしのアッセイから得られたRLUを比較することによって決定した。細菌LPSによるTLR4受容体の活性化は、NF-κB転写調節因子の下流の活性化に結び付く。NF-κB応答ルシフェラーゼ活性の誘導の減少は、LPS mAbによるLPS中和活性を定量化するために使用した。結果を表7に概説する。54H7抗体およびKPB202抗体は、LPSを中和したが、KPA27抗体、KPE33抗体、およびKPJ4抗体は、中和しなかった。
【0238】
精製O1 LPSへの結合は、標準的なELISA法によってアッセイした。手短かに言えば、ELISAプレート(Nunc MaxiSorp)を、4Cで一晩、PBS、pH7.2中精製O1 LPSによりコーティングし、その後、1%BSA(PBS-B)を補足したPBSによりプレートをブロックした。コーティングしたプレートを、室温で1時間、モノクローナル抗体の一連の希釈液と共にインキュベートした。次いで、HRPコンジュゲート抗ヒト二次抗体を追加する前に、1時間、0.1% Tween-20(PBS-T)を含有するPBSによりプレートを洗浄し、その後、TMB TMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)基質を追加した。450nmの吸光度をマイクロプレート読み取り装置(Molecular Devices)によって測定し、データをPrismソフトウェアによりプロットした。結果を図1Aに示す。54H7、KPB202、KPA27、KPE33、およびKPJ4抗体は、精製O1 LPSに結合した。
【0239】
【表9】
【0240】
実施例5:抗O1抗原抗体はクレブシエラによる臓器負担を低下させる
抗O1抗原抗体が臓器負担を低下させる能力を、細菌感染モデルにおいて試験した。これらの実験において、C57BL/6マウスは、Jackson laboratoriesから得て、特別な、病原体なしの設備で維持した。動物実験はすべて、IACUCのプロトコールおよびガイダンスにしたがって行った。肺炎桿菌株は、一晩、寒天プレート上で成長させ、適切な濃度で食塩水中で希釈した。接種材料の力価は、攻撃前および後に、寒天プレート上に段階希釈した細菌を平板培養することによって決定した。
【0241】
15mg/kgの抗体およびコントロールは、細菌感染の24時間前に投与した。C57BL/6マウスに、肺炎を誘導するために40μl食塩水中1e4 CFU Kp8045(O1:K1)細菌を鼻腔内に接種した。肺の細菌による負担は、感染の48時間後にCFUを決定するために寒天プレート上に肺ホモジネートを平板培養することによって測定した。結果を図2に示す。肺炎桿菌(K.pneumoniae)感染の48時間後、KPE33は、臓器負担を有意に低下させ、他の抗O1抗原抗体もまた、約2~3対数、臓器負担を低下させた。
【0242】
実施例6:抗O1抗原抗体は致命的な細菌による攻撃に対して防御する
抗O1抗原抗体が致命的な細菌による攻撃を防御する能力もまた、評価した。
【0243】
急性肺炎モデルにおいて、C57BL/6マウスに、1e4~1e8 CFUの多薬剤抵抗性肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)カルバペネム抵抗性(CRE)臨床分離株KP1131115(O1)を鼻腔内に接種した。0.2、1、および5mg/kgの抗肺炎桿菌(K.pneumoniae)モノクローナル抗体KPE33ならびに5mg/kgのヒトIgG1コントロール抗体を、細菌による攻撃の1時間後に与えた(治療上の投薬)。マウスの生存は、8日目まで毎日モニターした。結果を図3Aに示す。
【0244】
さらに、急性肺炎モデルにおいて、C57BL/6マウスに、1e4~1e8 CFUの多薬剤抵抗性肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)カルバペネム抵抗性(CRE)臨床分離株KP1131115(O1)を鼻腔内に接種した。0.2および1mg/kgの抗肺炎桿菌(K.pneumoniae)モノクローナル抗体KPE33-H32+L2016(EQ1)およびKPE33-H32+L2016(EQ1)ならびに5mg/kgのヒトIgG1コントロール抗体を、細菌による攻撃の1時間後に与えた(治療上の投薬)。マウスの生存は、8日目まで毎日モニターした。結果を図3Cに示す。
【0245】
これらの結果は、細菌による攻撃後に治療上与えられたKPE33、KPE33-H32+L2016(EQ1)、およびKPE33-H32+L2016(EQ1)が、薬剤抵抗性肺炎桿菌(K.pneumoniae)株KPC Kp1131115による致命的な細菌による攻撃からマウスを防御することを実証する。
【0246】
菌血症モデルにおいて、C57BL/6マウスに、1e8 CFU広域スペクトルベータラクタマーゼ(ESBL)臨床分離株Kp8561(O1)を腹腔内に接種した。1.5、5、および15mg/kgの抗肺炎桿菌(K.pneumoniae)モノクローナル抗体KPE33ならびに45mg/kgのヒトIgG1コントロール抗体を、細菌による攻撃の1時間後に与えた(治療上の投薬)。マウスの生存は、8日目まで毎日モニターした。結果を図3Bに示す。
【0247】
結果は、細菌による攻撃後に治療上与えられたKPE33が、広域スペクトルベータ-ラクタマーゼ(ESBL)株Kp8561からマウスを防御することを実証する。
【0248】
実施例7:抗O1抗原抗体KPE33および抗生物質の相乗作用
抗O1抗原抗体および抗生物質の相乗作用もまた、肺炎および菌血症マウスモデルにおいて評価した。
【0249】
肺炎実験において、C57BL/6マウスに、1e4~1e8 CFUのKp8045クレブシエラを鼻腔内に接種した。(図4Aを参照されたい。)菌血症実験において、マウスにKp8561クレブシエラを接種した。(図4Bを参照されたい。)治療量以下の投薬量の抗体(Kp8045については1mpkおよびKp8561については2.5mpk)ならびにメロペネム抗生物質(Kp8045については2.5mpkおよびKp8561については5mpk)の両方を細菌による攻撃後に投与した。マウスの生存は、8日目まで毎日モニターした。
【0250】
結果を図4に示す、また、結果は、メロペネムおよびKPE33の組み合わせが、有意な相乗作用を示し、かつメロペネムもしくはKPE33のいずれかの単独療法またはヒトIgG1コントロール抗体(R347)およびメロペネムの組み合わせよりも、よりよい防御を示したことを実証する。
【0251】
実施例8:KPE33配列最適化
抗薬剤抗体による可能性として考えられる免疫原性を含む、抗体開発にとって可能性として考えられる、配列の不利な点を減らすために、KPE33の軽鎖CDR3中の対になっていないシステインをトレオニン(T)と交換し、KPE33のフレームワーク1、2、および4中の体細胞突然変異を、生殖系の残基と置き換えた(図5に概説する)。CDRは、上記に記載されるC107T置換を除いて、野生型として維持した。最適化KPE33は、KPE33v2016と名付けた。配列最適化がLPS O1との相互作用を変えなかったことを確認するために、O1 LPSへのKPE33およびKPE33v2016の結合をOctetプラットフォームによって溶相で試験した。このプラットフォームは、より生物学的に有意義な設定において生体分子複合体形成の速度および複合体安定性を測定するための有力なツールを提供する。手短かに言えば、プロテインAコーティングセンサーを、Kineticsバッファー(ForteBio、PBSにより1×~10×に希釈)中0.2μg/mL抗O1 LPS mAbを含有する溶液に浸漬する前に、10分間、2μg/mL O1 LPSによりコーティングした。バイオセンサーに結合した分子の数の変化は、リアルタイムで記録した干渉パターンにおいてシフトを引き起こした。図5に示されるように、mAbは、O1 LPSに結合した。O1 LPSへのKPE33およびKPE33v2016の親和性定数(K)は、Octetセンサーグラムからオン速度およびオフ速度に基づいて計算した。KPE33およびKPE33v2016の両方は、それぞれ平均5.83E-09および4.13E-09で同等の親和性定数を示した(図5)。
【0252】
KPE33v2016をさらに最適化し、それによって2つの新たな変異体-KPE33 H32+L2016(1EQ)およびKPE33 H33+L2016(1EQ)を作り出した。これらの変異体は両方とも、CDRH1に隣接するメチオニンからイソロイシンへの突然変異、CDRH2におけるトリプトファンからチロシンへの突然変異、CDRH2に隣接するアスパラギン酸からグルタミン酸への突然変異、FRH3におけるアスパラギンからグルタミンへのおよびメチオニンからロイシンへの突然変異、ならびにCDRH3におけるアスパラギン酸からアスパラギンへの突然変異を含有する。加えて、KPE33 H32+L2016(1EQ)は、生殖系の残基に変えられた4つのFRH3残基を有したのに対して、KPE33 H33+L2016(1EQ)は、生殖系に変えられた同じFRH3残基のうちの3つのみを有する。これらの変異体は両方とも、KPE33v2016と同じ軽鎖を含有するが、残基1にグルタミン酸からグルタミンへの1つの突然変異を有する。KPE33 H32+L2016(1EQ)およびKPE33 H33+L2016(1EQ)の親和性は、Octetによって測定し、それぞれ4.46E-09および5.01E-09の値がもたらされた。
【0253】
配列の最適化がKPE33抗体の効能を阻害しなかったことを確認するために、最適化KPE33V2016抗体を、実施例6において記載される同じ致命的な肺炎モデルにおいてアッセイした。KPE33またはKPE33-V-2016は、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)カルバペネム抵抗性(KPC)株による細菌感染の1時間後に6mg/kgの用量で投与した。図6に示す結果は、KPE33およびKPE33V2016の両方が、ヒトIgG1コントロール抗体と比較した場合、同様のレベルの防御を示すことを実証した。KPE33のIgG2バージョンは、KPE33IgG1よりもわずかに低い活性を示した(図6を参照されたい)。
【0254】
実施例9:抗O1抗原抗体は同時感染モデルにおいて防御する
同時感染における抗O1抗原抗体の効能を評価するために、メスの7~8週齢のC57BL/6マウスに、3%イソフルランでしばらくの間麻酔をかけ、50μlの細菌懸濁液を鼻孔に置いた。動物に、5e7 CFU黄色ブドウ球菌(S.aureus)SF8300(USA300)を単独でまたは1.5e2 CFUの肺炎桿菌(K.pneumoniae)と組み合わせて接種し、生存の研究のために7日間モニターした。臓器負担研究のために、肺および脾臓は、上記の実施例5において記載されるように、攻撃の24時間または48時間後に回収した。防御研究のために、マウスを、致命的な細菌による攻撃の前にKPE33またはコントロールmAbにより受動的に免疫化した(0.5mL、ip)。データはすべて、Prismでプロットした。
【0255】
結果を図7A~Dに示す。黄色ブドウ球菌(S.aureus)および肺炎桿菌(K.pneumoniae)の亜致死接種材料による同時感染は、致命的な肺炎を引き起こし(図7A)、肺炎桿菌(K.pneumoniae)による細菌の負担は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)のみに感染したマウスと比較して、肺炎桿菌(K.pneumoniae)および黄色ブドウ球菌(S.aureus)に同時感染したマウスの肺(図7B)および脾臓(図7C)において、有意に増加した。同時感染の24時間前のKPE33による1回の予防の治療は、マウスを救った(図7D)。
【0256】
実施例10:抗O1抗原抗体はLPS攻撃後に血清サイトカインを低下させる
LPS攻撃後の血清サイトカインに対する抗O1抗原抗体の効果を決定するために、C57BL/6マウスは、抗O1投与の24時間後、腹腔内に、0.3mg/kg LPSにより攻撃した。3時間後、動物を犠牲死させ、血清サイトカインは、メーカーの説明書に基づいて、Meso Scale Discovery(MSD)炎症促進性サイトカインキットを使用して測定した。ポリミクシンB(PMB)は、ポジティブコントロールとして使用した。血清IL-6、TNF-アルファ、およびCXCL1濃度をPrismでプロットした。
【0257】
結果を図8に示す、また、結果は、54H7が、Kp43816 LPSおよびKp15380 LPSによるLPS攻撃後に血清IL-6、KC、およびTNF-アルファのレベルを低下させることを実証する。
【0258】
実施例11:抗O1抗原抗体は内毒血症モデルにおいてマウスを防御する
抗O1抗原抗体の防御効果を決定するために、6~8週齢のメスのマウス(Balb/c)を、D-ガラクトース(D-Gal、12mg/kg)により感作し、続いて、抗O1抗原抗体投与の24時間後に10~50ngのLPSにより腹腔内(ip)攻撃した。抗体を、0.2mg/kg、1mg/kg、または5mg/kgの用量で投与した。マウス生存は、LPS攻撃の6日後までモニターした。
【0259】
結果を図9に示す、また、結果は、54H7が、コントロールIgG抗体(R347)と比較して、1mg/kgまたは5mg/kgのいずれかの用量で投与した場合に、内毒血症LPS誘発性セプシスモデルにおいてマウスを防御することを実証する。
【0260】
実施例12:抗O1抗原抗体5H47はクレブシエラによる臓器負担を低下させ、抗生物質と相乗作用を有する
抗O1抗原抗体5H47が臓器負担を低下させる能力を、細菌感染モデルにおいて試験した。
【0261】
抗生物質と組み合わせた抗O1抗原抗体の効能を決定するために、54H7を急性肺炎モデルにおいて試験した。C57BL/6マウスに、1e4 CFUの非常に有毒な株Kp43816(O1)を鼻腔内に接種した。15mg/kgの抗肺炎桿菌(K.pneumoniae)モノクローナル抗体54H7および15mg/kgのヒトIgG1コントロール抗体を、細菌による攻撃の24時間前に与えた(予防の投薬)。マウスの生存は、14日目まで毎日モニターした。結果を図10Aに示す。
【0262】
抗O1抗原抗体および抗生物質の相乗作用はまた、肺炎マウスモデルにおいても評価した。C57BL/6マウスに、1e4~1e8 CFUのKp8045クレブシエラを鼻腔内に接種した。治療量以下の投薬量の抗体(1mpk)およびメロペネム抗生物質(1.5mpk)の両方を、それぞれ、細菌による攻撃の1時間または4時間後に投与した。マウスの生存は、8日目まで毎日モニターした。結果を図10Bに示す。
【0263】
54H7は、Kp43816肺炎モデルに対する単独療法において15mpkで有意な防御を示した。治療量以下の投薬量の54H7およびメロペネムを使用した場合、組み合わせは、有意な相乗作用を示し、かつメロペネムもしくは54H7のいずれかのみの単独療法またはヒトIgG1コントロール抗体(R347)およびメロペネムの組み合わせよりも、よりよい防御を示した。
【0264】
実施例13:エピトープ研究
肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)wbbYZ遺伝子座は、LPS構造におけるD-ガラクタンIIドメインをコードし、これは、O2に対してO1血清型を定義する。(Hsieh,PF.et al.,Front Microbiol.5:608(2014)。本明細書において開示される抗O1抗原抗体がD-ガラクタンIIドメインに結合するかどうかを調査するために、wbbYZ遺伝子座を遺伝的にノックアウトすることによって、O1株Kp1131115をO2血清型に変換した。Kp1131115野生型(WT株)およびKp1131115ΔwbbYZ株への肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1 LPS抗体の結合を、FACS分析によって試験した。ヒトIgG1および抗MrkA抗体は、それぞれネガティブコントロールおよびポジティブコントロールとして使用した。WbbYZ遺伝子ノックアウトにより、54H7およびKPE33は全く結合しなくなった。しかしながら、この遺伝子のノックアウトは、MrkA抗体への結合を変化させなかった。図11に示すデータは、KPE33および54H7の両方が、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1 LPS抗原のD-ガラクタンIIドメインに結合することを示す。(図12は、O1 LPSの構造を示す)。
【0265】
KPE33および54H7は両方とも、O1 LPSのD-ガラクタンIIドメインに結合するが、それらは、KPE33および54H7による競合的結合研究において、精製O1 LPSをあらかじめロードした捕捉プローブを使用するFortebio Octetによって測定されるように、同じエピトープに結合しない。手短かに言えば、10μg/mL KPE33による最初の結合の後に、プローブを、10μg/mL KPE33と等濃度の54H7、KPE33、またはコントロール抗体R347とを含有する抗体混合物と共にインキュベートした。結果を図13に示す。54H7のみがさらなる結合を示すことができ、KPE33および54H7が、O1 LPS上の異なるエピトープを塞ぐことを示した。
【0266】
実施例14:抗O1抗原抗体は臨床的に関係のあるクレブシエラに結合する
抗O1抗原抗体が臨床的に関係のあるクレブシエラ株に結合するかどうかを決定するために、臨床分離株へのKPE33の結合をウエスタンブロットアッセイによって決定した。KPE33が結合する臨床的に関係のあるクレブシエラ株の概要を表8に示す。KPE33がこれらの株のすべてに結合する能力およびインビボにおいて4つの異なる株から防御するその能力は、KPE33が多くの臨床的に関係のあるクレブシエラ株を死滅させることができることを示す。
【0267】
【表10】
【0268】
【表11】
【0269】
【表12】
【0270】
【表13】
【0271】
【表14】
【0272】
【表15】
【0273】
【表16】
【0274】
【表17】
【0275】
【表18】
【0276】
【表19】
【0277】
【表20】
【0278】
【表21】
【0279】
【表22】
【0280】
表8の列1~36の分離株は、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)カルバペネム抵抗性(CRE)株である。表8の列37~134の分離株は、広域スペクトルベータラクタマーゼ(ESBL)株であり、表8の列135~184の分離株は、抗生物質感受性株である。
【0281】
これらの結果は、抗O1抗原抗体であるKPE33が、臨床株の広く多様な群だけでなく、抗生物質抵抗性の臨床的に関係のある株にも結合することを実証する。これらの結果は、KPE33が、表8に開示される1つまたはそれ以上のクレブシエラ株について、本明細書において記載される治療薬および/または診断薬として有用になり得ることを示唆する。
【0282】
実施例15:γδT細胞動員およびIL-17シグナル伝達は抗O1抗体による防御と相関する
TLR4シグナル伝達は、粘膜の自然免疫防御において鍵となる細胞集団であるγδT細胞の動員および活性化に関係してきた。γδT細胞動員に対するLPS中和およびLPS非中和抗O1抗体の効果を調べるために、γδTCRT細胞のパーセントを、抗O1抗体により治療し、肺炎桿菌(K.pneumoniae)(1e4 CFU Kp8045)に感染させたマウスの肺において測定した。フローサイトメトリー分析は、早期のγδT細胞動員が、KPE33ではなく54H7による予防処置によって阻害されることを明らかにした(図14A)。感染の1時間後の54H7またはKPE33のいずれかによるマウスの治療は、γδT細胞の動員を阻害せず、早期のLPSシグナル伝達の中和が、これらの有益な細胞の動員を妨げることを示唆した(図14B)。
【0283】
γδT細胞は、IL-17の主な生産者であり、これは、鍵となる抗菌経路および好中球の食細胞機能を活性化する。IL-17A-/-マウスは、KPE33によってもたらされる防御へのこの経路の寄与を実証するために利用した。野生型およびIL-17A-/-マウスを、c-IgG、54H7、またはKPE33により予防的に治療し、致命的な数の肺炎桿菌(K.pneumoniae)に感染させた。生存の差異は、c-IgGまたは54H7により予防的に免疫化した野生型およびIL-17A-/-マウスの間では観察されなかった(図14C)。対照的に、生存における有意な低下は、KPE33を受けた野生型マウスと比較して、KPE33により受動的に免疫化されたIL-17A-/-マウスにおいて観察された(図14D)。これらの結果は、γδT細胞の主な特徴であるIL-17シグナル伝達が、KPE33によってもたらされる最適な防御に必要とされることを示唆する。
【0284】
具体的な実施形態の前出の説明は、本開示の一般的性質を十分に完全に明らかにするものであり、したがって第三者が、当技術分野の範囲内の知識を適用することにより、本開示の一般的概念から逸脱することなく、過度の実験を行うことなしにかかる具体的な実施形態を容易に改良しおよび/またはそれを様々な適用に適合させることができる。したがって、かかる適合形態および改良形態は、本明細書に提供される教示および指針に基づけば、開示される実施形態の均等物の意味および範囲内にあることが意図される。本明細書における用語法または表現法は、限定ではなく、説明を目的とするものであり、したがって本明細書の用語法または表現法は当業者によって教示および指針を踏まえて解釈されるべきであることが理解されなければならない。
本発明は、例えば以下の実施形態を包含する:
[実施形態1]肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質であって、前記抗原結合タンパク質は、a)クレブシエラのオプソニン作用による死滅(OPK)を誘導する、b)血清殺菌活性測定法によって測定されるように補体依存性の死滅を介してクレブシエラを死滅させる、またはc)クレブシエラのOPKを誘導し、血清殺菌活性測定法によって測定されるように補体依存性の死滅を介してクレブシエラを死滅させる、単離抗原結合タンパク質。
[実施形態2]前記抗原結合タンパク質は、リポ多糖(LPS)を中和しない、実施形態1に記載の抗原結合タンパク質。
[実施形態3]前記抗原結合タンパク質は、LPSを中和する、実施形態1に記載の抗原結合タンパク質。
[実施形態4](i)クレブシエラのOPKを誘導し、血清殺菌活性測定法によって測定されるように補体依存性の死滅を介してクレブシエラを死滅させ、かつリポ多糖(LPS)を中和するまたは(ii)クレブシエラのOPKを誘導し、血清殺菌活性測定法によって測定されるように補体依存性の死滅を介してクレブシエラを死滅させるが、LPSを中和しない、実施形態1に記載の抗原結合タンパク質。
[実施形態5]前記抗原結合タンパク質は、致命的なクレブシエラによる攻撃に暴露されたマウスにおいて治療的に有効である、実施形態1~4のいずれかに記載の抗原結合タンパク質。
[実施形態6]前記クレブシエラは、肺炎桿菌(K.pneumoniae)、K.オキシトカ(K.oxytoca)、K.グラニュロマティス(K.granulomatis)、臭鼻菌(K.ozaenae)、鼻硬腫菌(K.rhinosclermoatis)、またはK.プランチコラ(K.planticola)である、実施形態5のいずれかに記載の抗原結合タンパク質。
[実施形態7]前記クレブシエラは、肺炎桿菌(K.pneumoniae)である、実施形態6に記載の抗原結合タンパク質。
[実施形態8]前記クレブシエラは、多薬剤抵抗性である、実施形態1~7のいずれかに記載の抗原結合タンパク質。
[実施形態9]前記肺炎桿菌(K.pneumoniae)は、株Kp113115またはKp8561である、実施形態8に記載の抗原結合タンパク質。
[実施形態10]前記肺炎桿菌(K.pneumoniae)は、表8の列1~134の1つに列挙される株である、実施形態8に記載の抗原結合タンパク質。
[実施形態11]前記抗原結合タンパク質は、多薬剤抵抗性の肺炎桿菌(K.pneumoniae)株を、少なくとも1つの抗生物質に対して感受性にする、実施形態8~10のいずれかに記載の抗原結合タンパク質。
[実施形態12]前記クレブシエラは、抗生物質に対して感受性である、実施形態1~7のいずれかに記載の抗原結合タンパク質。
[実施形態13]前記肺炎桿菌(K.pneumoniae)は、表8の列135~184の1つに列挙される株である、実施形態12に記載の抗原結合タンパク質。
[実施形態14]前記抗原結合タンパク質は、肺炎桿菌(K.pneumoniae)O1抗原のD-ガラクタンIIドメインに結合する、実施形態1~13のいずれかに記載の抗原結合タンパク質。
[実施形態15]相補性決定領域(CDR):HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3のセットを含む、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質であって、
HCDR1は、配列番号1のアミノ酸配列を有し、
HCDR2は、配列番号2または59のアミノ酸配列を有し、
HCDR3は、配列番号3または60のアミノ酸配列を有し、
LCDR1は、配列番号4のアミノ酸配列を有し、
LCDR2は、配列番号5または10のアミノ酸配列を有し、
LCDR3は、配列番号11のアミノ酸配列を有する、単離抗原結合タンパク質。
[実施形態16]肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質であって、前記抗原結合タンパク質は、配列番号12、61、もしくは62と少なくとも95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一な重鎖可変領域(VH)および/または配列番号13もしくは63と少なくとも95%、96%、97%、98%、もしくは99%同一な軽鎖可変領域(VL)を含む、単離抗原結合タンパク質。
[実施形態17]その前記抗原結合タンパク質は、配列番号12、61、または62を含むVHおよび配列番号13または63を含むVLを含む、実施形態16に記載の抗原結合タンパク質。
[実施形態18]配列番号12を含むVHを含む、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質。
[実施形態19]配列番号13を含むVLを含む、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質。
[実施形態20]配列番号12、61、または62を含むVHおよび配列番号13または63を含むVLを含む抗体と、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原中の同じエピトープに特異的に結合する単離抗原結合タンパク質。
[実施形態21]配列番号12、61、または62を含むVHおよび配列番号13または63を含むVLを含む抗体の肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原への結合を競合的に阻害する単離抗原結合タンパク質。
[実施形態22]相補性決定領域(CDR):HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3のセットを含む、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質であって、前記HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3は、
それぞれ配列番号41、42、43、44、45、および46、
それぞれ配列番号32、33、34、35、36、および38、
それぞれ配列番号32、33、34、35、37、および38、
それぞれ配列番号1、2、3、4、5、および7、
それぞれ配列番号1、2、3、4、6、および7、
それぞれ配列番号14、15、16、17、18、および20、
それぞれ配列番号14、15、16、17、19、および20、
それぞれ配列番号23、24、25、26、27、および29、または
それぞれ配列番号23、24、25、26、28、および29
のアミノ酸配列を含む、単離抗原結合タンパク質。
[実施形態23]肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質であって、前記抗原結合タンパク質は、
それぞれ配列番号47および配列番号48、
それぞれ配列番号39および配列番号40、
それぞれ配列番号8および配列番号9、
それぞれ配列番号21および配列番号22、または
それぞれ配列番号30および配列番号31
と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一なVHおよびVLを含む、単離抗原結合タンパク質。
[実施形態24]前記抗原結合タンパク質は、
それぞれ配列番号47および配列番号48、
それぞれ配列番号39および配列番号40、
それぞれ配列番号8および配列番号9、
それぞれ配列番号21および配列番号22、または
それぞれ配列番号30および配列番号31
を含むVHおよびVLを含む、実施形態23に記載の抗原結合タンパク質。
[実施形態25]配列番号47、配列番号39、配列番号8、配列番号21、または配列番号30を含むVHを含む、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質。
[実施形態26]配列番号48、配列番号40、配列番号9、配列番号22、または配列番号31を含むVLを含む、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する単離抗原結合タンパク質。
[実施形態27]それぞれ配列番号47および配列番号48、
それぞれ配列番号39および配列番号40、
それぞれ配列番号8および配列番号9、
それぞれ配列番号21および配列番号22、または
それぞれ配列番号30および配列番号31
を含むVHおよびVLを含む抗体として、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原中の同じエピトープに特異的に結合する単離抗原結合タンパク質。
[実施形態28]それぞれ配列番号47および配列番号48、
それぞれ配列番号39および配列番号40、
それぞれ配列番号8および配列番号9、
それぞれ配列番号21および配列番号22、または
それぞれ配列番号30および配列番号31
を含むVHおよびVLを含む抗体の肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原への結合を競合的に阻害する単離抗原結合タンパク質。
[実施形態29]前記抗原結合タンパク質は、マウス、非ヒト、ヒト化、キメラ、リサーフェシング、またはヒトである、実施形態1~28のいずれかに記載の抗原結合タンパク質。
[実施形態30]前記抗原結合タンパク質は、ヒト化、キメラ、リサーフェシング、またはヒトである、実施形態1~28のいずれかに記載の抗原結合タンパク質。
[実施形態31]前記抗原結合タンパク質は、抗体である、実施形態1~30のいずれかに記載の抗原結合タンパク質。
[実施形態32]前記抗原結合タンパク質は、抗体の抗原結合断片である、実施形態1~31のいずれかに記載の抗原結合タンパク質。
[実施形態33]モノクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、二重特異性抗体、多重特異性抗体、またはその抗原結合断片である、実施形態1~32のいずれかに記載の抗原結合タンパク質。
[実施形態34]前記抗原結合タンパク質は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd、単鎖FvもしくはscFv、ジスルフィド連結Fv、V-NARドメイン、IgNar、イントラボディ、IgGΔCH2、ミニボディ、F(ab’)3、テトラボディ、トリアボディ、ダイアボディ、シングルドメイン抗体、DVD-Ig、Fcab、mAb2、(scFv)2、またはscFv-Fcを含む、実施形態1~30、32、または33のいずれかに記載の抗原結合タンパク質。
[実施形態35]約4.0E-09~6.0E-09nMの範囲のKdでクレブシエラO1抗原に結合する、実施形態1~34のいずれかに記載の抗原結合タンパク質。
[実施形態36]結合親和性は、フローサイトメトリー、Biacore、KinExa、またはラジオイムノアッセイによって測定される、実施形態35に記載の抗原結合タンパク質。
[実施形態37]前記抗原結合タンパク質は、a)肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)(肺炎桿菌(K.pneumoniae))のオプソニン作用による死滅(OPK)を誘導する、b)血清殺菌活性測定法によって測定されるように補体依存性の死滅を介して肺炎桿菌(K.pneumoniae)を死滅させる、および/またはc)リポ多糖(LPS)を中和する、実施形態15~36のいずれかに記載の抗原結合タンパク質。
[実施形態38]前記抗原結合タンパク質は、(i)肺炎桿菌(K.pneumoniae)のOPKを誘導し、血清殺菌活性測定法によって測定されるように補体依存性の死滅を介して肺炎桿菌(K.pneumoniae)を死滅させ、LPSを中和するまたは(ii)肺炎桿菌(K.pneumoniae)のOPKを誘導し、血清殺菌活性測定法によって測定されるように補体依存性の死滅を介して肺炎桿菌(K.pneumoniae)を死滅させるが、LPSを中和しない、実施形態37に記載の抗原結合タンパク質。
[実施形態39]前記肺炎桿菌(K.pneumoniae)は、多薬剤抵抗性である、実施形態37または38に記載の抗原結合タンパク質。
[実施形態40]前記肺炎桿菌(K.pneumoniae)は、株Kp113115またはKp8561である、実施形態39に記載の抗原結合タンパク質。
[実施形態41]前記肺炎桿菌(K.pneumoniae)は、表8の列1~134の1つに列挙される株である、実施形態39に記載の抗原結合タンパク質。
[実施形態42]前記抗原結合タンパク質は、多薬剤抵抗性の肺炎桿菌(K.pneumoniae)株を抗生物質に対して感受性にする、実施形態39~41のいずれかに記載の抗原結合タンパク質。
[実施形態43]前記クレブシエラは、抗生物質に対して感受性である、実施形態37または38に記載の抗原結合タンパク質。
[実施形態44]前記肺炎桿菌(K.pneumoniae)は、表8の列135~184の1つに列挙される株である、実施形態43に記載の抗原結合タンパク質。
[実施形態45]前記抗原結合タンパク質は、リポ多糖(LPS)を中和しない、実施形態15~44のいずれかに記載の抗原結合タンパク質。
[実施形態46]前記抗原結合タンパク質は、LPSを中和する、実施形態15~44のいずれかに記載の抗原結合タンパク質。
[実施形態47]前記抗原結合タンパク質は、致命的なクレブシエラによる攻撃に暴露されたマウスにおいて治療的に有効である、実施形態15~46のいずれかに記載の抗原結合タンパク質。
[実施形態48]前記抗原結合タンパク質は、
(a)IgA定常ドメイン、
(b)IgD定常ドメイン、
(c)IgE定常ドメイン、
(d)IgG1定常ドメイン、
(e)IgG2定常ドメイン、
(f)IgG3定常ドメイン、
(g)IgG4定常ドメイン、および
(h)IgM定常ドメイン
からなる群から選択される重鎖免疫グロブリン定常ドメインを含む、実施形態1~47のいずれかに記載の抗原結合タンパク質。
[実施形態49]前記抗原結合タンパク質は、IgG1定常ドメインを含む、実施形態48に記載の抗原結合タンパク質。
[実施形態50]前記抗原結合タンパク質は、
(a)Igカッパ定常ドメイン、および
(b)Igラムダ定常ドメイン
からなる群から選択される軽鎖免疫グロブリン定常ドメインを含む、実施形態1~49のいずれかに記載の抗原結合タンパク質。
[実施形態51]前記抗原結合タンパク質は、ヒトIgG1定常ドメインおよびヒトラムダ定常ドメインを含む、実施形態1~47に記載のいずれかに記載の抗原結合タンパク質。
[実施形態52]実施形態1~51のいずれかに記載のその抗原結合タンパク質をコードする単離核酸分子。
[実施形態53]前記核酸分子が、制御配列に作動可能に連結される、実施形態52に記載の核酸分子。
[実施形態54]実施形態52または53に記載の核酸分子を含むベクター。
[実施形態55]実施形態52もしくは53に記載の核酸分子または実施形態54に記載のベクターにより形質転換された宿主細胞。
[実施形態56]前記宿主細胞が、哺乳類宿主細胞である、実施形態55に記載の宿主細胞。
[実施形態57]前記宿主細胞は、HEK293細胞、NS0マウス骨髄腫細胞、PER.C6(登録商標)ヒト細胞、またはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、実施形態56に記載の哺乳類宿主細胞。
[実施形態58]実施形態1~51のいずれかに記載の抗原結合タンパク質を産生するハイブリドーマ。
[実施形態59]実施形態1~51のいずれかに記載の抗原結合タンパク質を産生する単離宿主細胞。
[実施形態60]実施形態1~51のいずれかに記載の抗原結合タンパク質を作製するための方法であって、(a)前記抗原結合タンパク質を発現する宿主細胞を培養するステップまたは実施形態55~57もしくは59のいずれかに記載の宿主細胞または実施形態58に記載のハイブリドーマを培養するステップおよび(b)その前記抗原結合タンパク質を前記培養宿主細胞から単離するステップを含む方法。
[実施形態61]実施形態60に記載の方法を使用して産生される抗原結合タンパク質。
[実施形態62]実施形態1~51または61のいずれかに記載の抗原結合タンパク質および薬学的に許容可能な賦形剤を含む医薬組成物。
[実施形態63]前記薬学的に許容可能な賦形剤は、保存剤、安定剤、または酸化防止剤である、実施形態62に記載の医薬組成物。
[実施形態64]医薬として使用される実施形態62または63に記載の医薬組成物。
[実施形態65]標識基またはエフェクター基をさらに含む、実施形態1~51もしくは61のいずれかに記載の抗原結合タンパク質または実施形態62~64のいずれかに記載の医薬組成物。
[実施形態66]前記標識基が、同位体標識、磁気標識、レドックス活性成分、光学色素、ビオチン化基、ビオチンシグナル伝達ペプチド、緑色蛍光タンパク質(GFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)などの蛍光成分、ヒスチジンペプチド(his)、ヘマグルチニン(HA)、金結合ペプチド、およびFlagなどの二次レポーターによって認識されるポリペプチドエピトープからなる群から選択される、実施形態65に記載の抗原結合タンパク質または医薬組成物。
[実施形態67]前記エフェクター基が、放射性同位体、放射性核種、毒素、治療薬、および化学療法剤からなる群から選択される、実施形態65に記載の抗原結合タンパク質または医薬組成物。
[実施形態68]クレブシエラ感染症に関連する状態を治療するための、実施形態1~51または61~67のいずれかに記載の抗原結合タンパク質または医薬組成物の使用。
[実施形態69]クレブシエラ感染症に関連する状態の治療、予防、または回復を、それを必要としている対象において行うための方法であって、有効量の実施形態1~51または61~67のいずれかに記載の抗原結合タンパク質または医薬組成物を前記対象に投与するステップを含む方法。
[実施形態70]クレブシエラに感染した対象においてクレブシエラの増殖を阻害するまたはクレブシエラの数を低下させるための方法であって、実施形態1~51または61~67のいずれかに記載の抗原結合タンパク質または医薬組成物をそれを必要としている対象に投与するステップを含む方法。
[実施形態71]クレブシエラ感染症に関連する状態の治療をそれを必要としている対象において行うための方法であって、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する抗原結合タンパク質の有効量を前記対象に投与するステップを含む方法。
[実施形態72]肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の同時感染に関連する状態の治療、予防、または回復をそれを必要としている対象において行うための方法であって、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する抗原結合タンパク質の有効量を前記対象に投与するステップを含む方法。
[実施形態73]肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に同時感染した対象において、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)の毒性を阻害する、低下させる、またはなくすための方法であって、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する抗原結合タンパク質の有効量を前記対象に投与するステップを含む方法。
[実施形態74]肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)および黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の両方に感染した対象の生存を増加させるための方法であって、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する抗原結合タンパク質の有効量を前記対象に投与するステップを含む方法。
[実施形態75]前記クレブシエラは、抗生物質抵抗性である、実施形態69~74のいずれかに記載の方法。
[実施形態76]前記クレブシエラは、セファロスポリン、キノロン、カルバペネム、メロペネム、フルオロキノロン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、トリメトプリム、スルホンアミド、および/またはコリスチンに対して抵抗性である、実施形態75に記載の方法。
[実施形態77]前記クレブシエラは、抗生物質に対して感受性である、実施形態69~74のいずれかに記載の方法。
[実施形態78]抗生物質に対して抗生物質抵抗性のクレブシエラ株を感作するための方法であって、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する抗原結合タンパク質と前記抗体抵抗性のクレブシエラ株を接触させるステップを含む方法。
[実施形態79]抗生物質を投与するステップをさらに含む、実施形態69~78のいずれかに記載の方法。
[実施形態80]前記抗原結合タンパク質および前記抗生物質は、相乗的な治療効果をもたらす、実施形態79に記載の方法。
[実施形態81]抗生物質抵抗性のクレブシエラ株に感染した対象においてクレブシエラ感染症を予防するまたは治療するための方法であって、抗生物質および肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する抗原結合タンパク質を対象に同時投与するステップを含み、前記同時投与は、等モル量の前記抗原結合タンパク質または前記抗生物質の投与の個々の効果の合計よりも大きな治療効果をもたらす方法。
[実施形態82]前記治療効果は、前記抗原結合タンパク質または前記抗生物質の1つのみを投与した対象の相加的な生存パーセントよりも大きな生存パーセントをもたらす、実施形態81に記載の方法。
[実施形態83]前記抗生物質は、メロペネムである、実施形態79~82に記載のいずれかに記載の方法。
[実施形態84]肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する前記抗原結合タンパク質は、抗体またはその抗原結合断片である、実施形態71~83のいずれかに記載の方法。
[実施形態85]肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)O1抗原に特異的に結合する前記抗原結合タンパク質は、実施形態1~51または61~67のいずれかに記載の前記抗原結合タンパク質または前記医薬組成物である、実施形態71~83のいずれかに記載の方法。
[実施形態86]クレブシエラは、肺炎桿菌(K.pneumoniae)、K.オキシトカ(K.oxytoca)、K.プランチコラ(K.planticola)、臭鼻菌(K.ozaenae)、鼻硬腫菌(K.rhinosclermoatis)、および/またはK.グラニュロマティス(K.granulomatis)である、実施形態69~71または75~85のいずれかに記載の方法。
[実施形態87]前記状態は、肺炎、尿路感染症、敗血症/セプシス、新生児敗血症/セプシス、下痢、軟部組織感染症、臓器移植後の感染症、外科手術による感染症、創傷感染症、肺感染症、化膿性肝膿瘍(PLA)、眼内炎、髄膜炎、壊死性髄膜炎、強直性脊椎炎、および脊椎関節症からなる群から選択される、実施形態68、69、71、72、75~77、79、80、または83~86のいずれかに記載の使用または方法。
[実施形態88]前記状態は、院内感染症である、実施形態68、69、71、72、75~77、79、80、または83~86のいずれかに記載の使用または方法。
【0285】
本開示の広さおよび範囲は、上記の例示的な実施形態のいずれによっても限定されないが、下記の請求項およびそれらの均等物にしたがってのみ定義されるべきである。
【0286】
本出願において引用されるすべての刊行物、特許、特許出願、および/または他の文献は、それぞれの個々の刊行物、特許、特許出願、および/または他の文献が事実上、参照により組み込まれるように個々に示されるのと同じように、事実上、それらの全体が参照により組み込まれる。
図1A-B】
図1C
図2
図3A-B】
図3C
図4A-B】
図5
図6
図7A-B】
図7C-D】
図8
図9
図10A-B】
図11
図12
図13
図14A-B】
図14C-D】
【配列表】
0007160484000001.app