(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】1型糖尿病の処置
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20221018BHJP
【FI】
A61N1/36
(21)【出願番号】P 2019560648
(86)(22)【出願日】2018-05-04
(86)【国際出願番号】 EP2018061563
(87)【国際公開番号】W WO2018202877
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-04-22
(32)【優先日】2017-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517155196
【氏名又は名称】ガルバニ バイオエレクトロニクス リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】314001863
【氏名又は名称】セントル ナシオナル ド ラ ルシェルシュ サイエンティフィック
(73)【特許権者】
【識別番号】516355391
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ド ニース ソフィア アンティポリ
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スリダー,アルン
(72)【発明者】
【氏名】ブランコウ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】グレシェンハウス,ニコラス
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-502313(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0075701(US,A1)
【文献】特表2008-509794(JP,A)
【文献】特表2005-537853(JP,A)
【文献】特表2015-533333(JP,A)
【文献】特表2015-502820(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0303098(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0046407(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/32-1/39
A61N 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の膵臓関連交感神経の上または周囲に配置するための、少なくとも1つの神経インターフェースエレメント、又は、電極と、該少なくとも1つの神経インターフェースエレメント
、又は、電極を介して膵臓関連交感神経に印加されるシグナルを生成させるためのシグナル生成器とを含
むデバイスまたはシステムであって、シグナルが、膵臓関連交感神経の神経活動を可逆的に調節して、対象における生理学的パラメーターの変化をもたらし、生理学的パラメーターの変化が、血中インスリンレベルの増加、(空腹時)血糖値の低下、糖化ヘモグロビン(HbAlc)レベルの低下、全身的な炎症又は循環サイトカイン、および/もしくはC反応性タンパク質のレベルによって示される全身的な炎症または膵島炎などの、膵臓における局所的な炎症又はC-ペプチド、自己反応性T細胞、および/もしくは自己抗体のレベルによって示される膵島炎などの、膵臓における局所的な炎症の低減、膵臓におけるカテコールアミンレベルの増加、膵臓におけるGABAレベルの増加、ならびに膵臓における膵臓β細胞の数の増加からなる群の1つ以上であ
り、膵臓関連交感神経が、膵臓のリンパ系に分布する膵臓関連交感神経である、埋込み可能デバイスまたはシステム。
【請求項2】
生理学的パラメーターの変化が、血中インスリンレベルの増加、(空腹時)血糖値の低下、糖化ヘモグロビン(HbAlc)レベルの低下、全身的な炎症又は循環サイトカイン、および/もしくはC反応性タンパク質のレベルによって示される全身的な炎症または膵島炎などの、膵臓における局所的な炎症又はC-ペプチド、自己反応性T細胞、および/もしくは自己抗体のレベルによって示される膵島炎などの、膵臓における局所的な炎症の低減、ならびに膵臓におけるカテコールアミンレベルの増加からなる群の1つ以上である、請求項1に記載のデバイスまたはシステム。
【請求項3】
シグナルが、膵臓関連交感神経の神経活動を刺激する、請求項
1又は2に記載のデバイスまたはシステム。
【請求項4】
少なくとも1つの神経インターフェースエレメントが、膵臓関連交感神経に取り付けられる、請求項1~
3のいずれか一項に記載のデバイスまたはシステム。
【請求項5】
少なくとも1つの神経インターフェースエレメントが、少なくとも1つの電極であり、シグナル生成器が、該少なくとも1つの電極を介して膵臓関連交感神経に印加される電気的シグナルを生成するように構成される電圧または電流源である、請求項1~
4のいずれか一項に記載のデバイスまたはシステム。
【請求項6】
少なくとも1つの電極がカフ電極である、請求項
5に記載のデバイスまたはシステム。
【請求項7】
少なくとも1つの電極が、電極アレイの形態である、請求項
6に記載のデバイスまたはシステム。
【請求項8】
シグナルが、膵臓のリンパ系に分布する神経線維の神経活動を選択的に刺激する、請求項1~
7のいずれか一項に記載のデバイスまたはシステム。
【請求項9】
電気的シグナルが、0.1Hz~100Hz、又は1Hz~20Hz、又は1Hz~10Hzの周波数を有する、請求項
5~
8のいずれか一項に記載のデバイスまたはシステム。
【請求項10】
電気的シグナルが、0.01mA~10mA、又は0.01mA~5mAの電流を有する、請求項
5~
9のいずれか一項に記載のデバイスまたはシステム。
【請求項11】
電気的シグナルが、陰極パルスおよび陽極パルスを含む荷電平衡DCシグナルである、請求項
5~
10のいずれか一項に記載のデバイスまたはシステム。
【請求項12】
1つ以上の生理学的パラメーターを示す1つ以上のシグナルを検出するため;1つ以上のシグナルから、1つ以上の生理学的パラメーターを決定するため;生理学的パラメーターの悪化を示す1つ以上の生理学的パラメーターを決定するため;および少なくとも1つの電極を介して膵臓関連交感神経にシグナルを印加させるための検出器又は生理学的センサーサブシステムを含む、請求項1~
11のいずれか一項に記載のデバイスまたはシステム。
【請求項13】
健康な対象における生理学的パラメーターに関するデータを保存するためのメモリーをさらに含み、生理学的パラメーターの悪化を示す1つ以上の生理学的パラメーターの決定が、1つ以上の生理学的パラメーターと、データとを比較することを含む、請求項
12に記載のデバイスまたはシステム。
【請求項14】
コントローラーからの制御シグナルを受信し、前記1つ以上の制御シグナルの検出時に、少なくとも1つの電極を介して膵臓関連交感神経に電気的シグナルを印加させるための通信サブシステムを含む、請求項1~
13のいずれか一項に記載のデバイスまたはシステム。
【請求項15】
シグナル生成器が、有限の期間にわたって電気的シグナルを印加するように構成される、請求項1~
14のいずれか一項に記載のデバイスまたはシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1型糖尿病の処置および防止、より具体的には、そのような目的のためにエレクトロモジュレーション療法を送達する方法および医学的デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
インスリン依存的糖尿病または1型真性糖尿病としても知られる1型糖尿病(T1D)は、自己反応性免疫細胞によるインスリン産生膵臓β細胞の破壊の結果生じる自己免疫疾患である[1]。
【0003】
インスリン補充療法などの従来の処置は、T1Dを有する対象における長期合併症を防止できない[2]。慢性インスリン補充療法は、急性低血糖症、慢性微小血管疾患(網膜症、腎症およびニューロパチー)ならびに慢性大血管疾患(心臓病および脳卒中)の可能性を含む大きな副作用と依然として関連する。
【0004】
したがって、本発明は、T1Dのさらなる改善された処置および防止を提供することを目的とする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Herold, K. C. (2013). The Lancet Diabetes & Endocrinology, 1(4):261-263.
【文献】Herold, K. C. et al. (2013). Nature Reviews Immunology, 13(4):243-256.
【発明の概要】
【0006】
本発明者らは、リンパ系に分布する膵臓関連交感神経の神経活動の調節が、糖尿病の非肥満糖尿病(NOD)マウスにおける血糖制御を改善することができることを見出した。特に、神経活動の刺激は、T細胞活性化または膵臓への移動の阻害をもたらす。したがって、この結果は、神経の神経活動を刺激するための、膵臓関連交感神経(例えば、リンパ系に分布する膵臓関連交感神経)へのシグナル(例えば、電気的シグナル)の印加が、1型糖尿病(T1D)を処置または防止するための有効な戦略であり得ることを示唆する。
【0007】
かくして、本発明は、膵臓関連交感神経の神経活動を可逆的に調節することによって、対象におけるT1Dを処置または防止する方法を提供する。膵臓関連交感神経の神経活動を可逆的に調節する(例えば、刺激する)好ましい方法は、膵臓関連交感神経にシグナル(例えば、電気的シグナル)を印加するデバイスまたはシステムを使用する。
【0008】
本発明はまた、対象において膵臓関連交感神経にシグナルを印加して、膵臓関連交感神経の神経活動を可逆的に調節する(例えば、刺激する)ことを含む、対象におけるT1Dを処置または防止する方法も提供する。
【0009】
本発明は、膵臓関連交感神経の上または周囲への配置にとって好適な、変換器、好ましくは、電極などの少なくとも1つの神経インターフェースエレメントと、該少なくとも1つの神経インターフェースエレメントを介して膵臓関連交感神経に印加されるシグナルを生成させるためのシグナル生成器とを含む埋込み可能デバイスまたはシステムであって、シグナルが、膵臓関連交感神経の神経活動を可逆的に調節(例えば、刺激)して、対象における1つ以上の生理学的パラメーターの改善をもたらす、埋込み可能デバイスまたはシステムを提供する。生理学的パラメーターの改善は、血中インスリンレベルの増加、(空腹時)血糖値の低下、糖化ヘモグロビン(HbAlc)レベルの低下、全身的な炎症(例えば、循環サイトカイン、および/もしくはC反応性タンパク質のレベルによって示される)または膵島炎などの、膵臓における局所的な炎症(例えば、C-ペプチド、自己反応性T細胞、および/もしくは自己抗体のレベルによって示される)の低減、ならびに膵臓におけるカテコールアミンレベルの増加からなる群の1つ以上であってもよい。ある特定の実施形態においては、生理学的パラメーターの改善は、膵臓におけるGABAレベルの増加、および膵臓における膵臓β細胞数の増加からなる群の1つ以上であってもよい。
【0010】
本発明はまた、対象におけるT1Dを処置または防止する方法であって、(i)対象に、本発明のデバイスまたはシステムを埋め込むこと;(ii)デバイスまたはシステムの神経インターフェースエレメントを、対象中の膵臓関連交感神経とシグナル伝達接触するように配置すること;および必要に応じて、(iii)デバイスまたはシステムを活性化することを含む、方法を提供する。
【0011】
同様に、本発明は、対象中の膵臓関連交感神経における神経活動を可逆的に調節する(例えば、刺激する)方法であって、(i)対象に、本発明のデバイスまたはシステムを埋め込むこと;(ii)神経インターフェースエレメントを、対象中の膵臓関連交感神経とシグナル伝達接触するように配置すること;および必要に応じて、(iii)デバイスまたはシステムを活性化することを含む、方法を提供する。
【0012】
本発明はまた、対象に本発明のデバイスまたはシステムを埋め込む方法であって、デバイスまたはシステムの神経インターフェースエレメントを、対象中の膵臓関連交感神経とシグナル伝達接触するように配置することを含む、方法を提供する。
【0013】
必要に応じて、本発明の方法は、GABA、GABA類似体(アナログ)、またはGABA増強剤を対象に投与することを含んでもよい。例えば、GABA、GABA類似体、またはGABA増強剤を、対象に埋め込まれ、配置された本発明のデバイスまたはシステムの活性化の前、間または後に投与してもよい。GABA増強剤を、ジアゼパム、アルプラゾラム、クロナゼパム、ロラゼパム、またはクロラジアゼポジドなどのベンゾジアゼピン系;フェノバルビタール、ペントバルビタール、ブトバルビタール、アモバルビタール、セコバルビタールまたはチオペンタールなどのバルビツール酸系;バクロフェン;アカンプロセート;プレガバリン;ガバペンチン;チアガビン;ラモトリギン;トピラメート;アロプレグナロンまたはガナキソロンなどの神経活性ステロイド;サティベックスなどのナビキシモルス;およびそれらの組合せからなる群から選択することができる。
【0014】
本発明はまた、膵臓関連交感神経に取り付けられる本発明のデバイスまたはシステムも提供する。
【0015】
本発明はまた、対象における膵臓関連交感神経の神経活動を可逆的に調節する(例えば、刺激する)ことによって、対象におけるT1Dを処置または防止するためのデバイスまたはシステムの使用も提供する。
【0016】
本発明はまた、活動電位が改変された神経においてde novoで生成されるように、荷電粒子が膵臓関連交感神経の神経膜の脱分極を引き起こす、T1Dを処置または防止する方法における使用のための荷電粒子も提供する。
【0017】
本発明はまた、本発明のシステムまたはデバイスの神経インターフェースエレメントが取り付けられる改変された膵臓関連交感神経も提供する。神経インターフェースエレメントは、膵臓関連交感神経とシグナル伝達するように接触し、したがって、膵臓関連交感神経を、その天然状態にある膵臓関連交感神経と区別することができる。さらに、神経は、T1Dに罹患するか、またはT1Dを発症するリスクがある対象中に位置する。
【0018】
本発明はまた、神経活動が、膵臓関連交感神経にシグナルを印加することによって可逆的に調節される(例えば、刺激される)、改変された膵臓関連交感神経も提供する。
【0019】
本発明はまた、活動電位が改変された膵臓関連交感神経においてde novoで生成されるように、神経膜が電場によって可逆的に脱分極される、改変された膵臓関連交感神経も提供する。
【0020】
本発明はまた、神経膜によって結合した改変された膵臓関連交感神経であって、正常な状態の神経に沿って活動電位を伝播するために神経の電気的膜電位を変化させる神経膜を渡って移動可能なカリウムおよびナトリウムイオンの分布を含み;膵臓関連交感神経の少なくとも一部が、神経内のカリウムおよびナトリウムイオンの濃度を改変する一時的な外部電場の印加を受け、神経膜の脱分極を引き起こすことによって、破壊された状態で、その部分を渡る活動電位をde novoで一時的に生成し;外部電場が除去されたら、神経がその正常な状態に戻る、改変された膵臓関連交感神経も提供する。
【0021】
本発明はまた、本発明の方法による膵臓関連交感神経の神経活動を可逆的に調節する(例えば、刺激する)ことによって得られる改変された膵臓関連交感神経も提供する。
【0022】
本発明はまた、膵臓関連交感神経の活動を改変する方法であって、膵臓関連交感神経にシグナルを印加して、対象における膵臓関連交感神経の神経活動を可逆的に調節する(例えば、刺激する)ステップを含む、方法も提供する。好ましくは、方法は、外科手術によるヒトまたは動物の身体の処置のための方法を含まない。対象は、膵臓関連交感神経とシグナル伝達接触する本発明のデバイスまたはシステムを既に担持する。
【0023】
本発明はまた、膵臓関連交感神経とシグナル伝達接触する本発明のデバイスまたはシステムを制御する方法であって、デバイスまたはシステムに対して制御指示を送信するステップを含み、それに応答してデバイスまたはシステムが膵臓関連交感神経にシグナルを印加する、方法も提供する。
【0024】
発明の詳細な説明
膵臓関連交感神経
膵臓は、体内の血糖制御に寄与する、交感神経系を含む自律神経系によって支配される[3]。傍脊椎交感神経幹から生じる、交感性内臓神経は、膵臓に対する主要な交感神経の影響である。
【0025】
本発明は、膵臓関連交感神経、好ましくは、膵臓のリンパ系に分布する膵臓関連交感神経を調節することを含む。膵臓のリンパ系は、動脈および細動脈の流れに沿っているリンパ管およびリンパ節の複雑に入り組んだネットワークである(概説については、[4]を参照されたい)。
【0026】
本発明者らは、膵臓のリンパ系が、交感神経のカテコールアミン性神経線維によって支配されることを確認した。興味深いことに、本発明者らは、膵臓のリンパ系に分布する膵臓関連交感神経の調節(例えば、刺激)が、T細胞活性化または膵臓への移動を阻害することによって血糖制御を改善することができることを見出した。動物モデルにおける以前の研究は、自己反応性T細胞が1型糖尿病(T1D)の開始および進行において重要な役割を果たすこと、およびそれらの活性化が膵臓のリンパ系において起こることを示した。したがって、膵臓関連交感神経の神経活動の調節(例えば、刺激)は、T1Dの処置または防止にとって有用であり得る。
【0027】
本発明は、膵臓関連交感神経、好ましくは、膵臓のリンパ系に分布する膵臓関連交感神経に沿う任意の部位で神経活動を調節することを含む。例えば、部位は、膵臓の表面、例えば、膵臓の頭部、頸部、体部もしくは尾部にあってもよく、または膵臓関連交感神経に沿う部位は、例えば、それが膵実質を神経支配する脾動脈束の1つ以上の分岐にあってもよい。部位は、膵臓中の血管、例えば、胃十二指腸動脈、膵十二指腸動脈、脾動脈、膵動脈、またはその分岐に隣接していてもよい。好ましくは、部位は、膵臓の頭部にあり、例えば、胃十二指腸動脈、または膵十二指腸動脈などの動脈に隣接する。好ましくは、部位は、電極の取り付けに適している。
【0028】
調節しようとする神経は、膵臓のリンパ系のみに分布する線維を含有してもよい。これらの実施形態においては、本発明は、神経内の全ての線維を調節するシグナルを印加することを含んでもよい。
【0029】
あるいは、調節しようとする神経は、リンパ系および膵臓の他の部分(例えば、膵島細胞)に分布する線維の混合物を含んでもよい。これらの実施形態においては、本発明は、神経内の線維の一部のみ(例えば、膵臓のリンパ系に分布する線維)が調節されるような、神経の一部のみを調節するシグナルを印加することによる神経の選択的調節を含んでもよい。かくして、本発明は、シグナルを印加する前に、膵臓のリンパ系(および/またはその線維)に分布する膵臓関連交感神経を同定するステップをさらに含んでもよい。神経内の神経線維の選択的調節の方法は、当業界で公知である(例えば、[5]、[6]および[7]を参照されたい)。
【0030】
本発明が改変された膵臓関連交感神経(例えば、膵臓のリンパ系に分布する(行きわたっている)改変された膵臓関連交感神経)に言及する場合、この神経は、理想的には対象中にin situで存在する。
【0031】
神経活動の調節
本発明によれば、膵臓関連交感神経へのシグナル(例えば、電気的シグナル)の印加は、調節される神経の少なくとも一部における神経活動をもたらす。本明細書で使用される場合、神経活動の調節とは、神経のシグナル伝達活性が、ベースライン神経活動、すなわち、任意の介入前の対象における神経のシグナル伝達活性から変化することを意味すると取られる。そのような調節は、ベースライン活動と比較して、神経活動を刺激するか、またはそうでなければ変化させてもよい。本明細書で使用される場合、神経の「神経活動」とは、神経のシグナル伝達活性、例えば、神経における活動電位の振幅、周波数および/またはパターンを意味する。神経における活動電位の文脈で本明細書において使用される用語「パターン」は、局所電場電位、化合物活動電位、凝集体活動電位、ならびにまた、神経またはその中のニューロンのサブグループ(例えば、線維束)における活動電位の大きさ、周波数、曲線下面積および他のパターンのうちの1つ以上を含むことが意図される。
【0032】
本発明の1つの利点は、神経活動の調節が可逆性であるということである。したがって、神経活動の調節は、永続的なものではない。例えば、シグナルの印加の停止の際に、神経における神経活動は、1~60秒以内、または1~60分以内、または1~24時間以内(例えば、1~12時間、1~6時間、1~4時間、1~2時間以内)、または1~7日(例えば、1~4日、1~2日)以内に、ベースライン神経活動に向かって実質的に戻る。可逆的調節のいくつかの例においては、神経活動は、ベースライン神経活動に向かって実質的に完全に戻る。すなわち、シグナルの印加の停止後の神経活動は、シグナルが印加される前の神経活動と実質的に同じである。したがって、神経または神経の一部は、活動電位を伝播するその通常の生理学的能力を取り戻している。
【0033】
他の実施形態においては、神経活動の調節は、実質的に永続的であってもよい。本明細書で使用される場合、「永続的」とは、調節される神経活動が長期的な効果を有することを意味すると取られる。例えば、シグナルの印加の停止の際に、神経における神経活動は、シグナルが印加された時と実質的に同じままである、すなわち、シグナル印加の間および後の神経活動が実質的に同じである。可逆的調節が好ましい。
【0034】
神経活動の刺激は、部分的刺激であってもよい。部分的刺激は、全神経の全シグナル伝達活性が部分的に増加するか、または神経の神経線維のサブセットの全シグナル伝達活性が完全に増加する(すなわち、神経の線維のそのサブセット中では神経活動がない)か、または神経の神経線維のサブセットの全シグナル伝達が、神経の線維のそのサブセット中でのベースライン神経活動と比較して部分的に増加するようなものであってもよい。
【0035】
本発明によれば、刺激は、膵臓関連交感神経の少なくとも一部における神経活動が、神経のその部分におけるベースライン神経活動と比較して増加することを指す。この活動の増加は、全神経にわたるものであってよく、その場合、神経活動は全神経にわたって増加する。
【0036】
本発明は、典型的には、神経活動の刺激を含む。本明細書で使用される場合、神経活動の刺激は、神経のシグナル伝達活性がベースライン神経活動、すなわち、任意の介入前の対象における神経のシグナル伝達活性から増加することを意味すると取られる。例えば、刺激は、典型的には、膵臓関連交感神経の少なくとも一部における刺激のポイントを超えて神経活動を増加させること、例えば、活動電位を生成させることを含む。軸索に沿った任意のポイントで、機能している神経は、神経膜を渡るカリウムおよびナトリウムイオンの分布を有するであろう。軸索に沿った1つのポイントにおける分布は、そのポイントでの軸索の電気的膜電位を決定付け、次いで、隣接するポイントでのカリウムおよびナトリウムイオンの分布に影響し、次いで、そのポイントでの軸索の電気的膜電位を決定付けるなどである。これは、その正常状態で動作する神経であり、活動電位は、軸索に沿ってポイントから隣接するポイントへと伝播し、従来の実験を用いて観察することができる。
【0037】
神経活動の刺激を特徴付ける1つの方法は、伝播する活動電位の結果として、神経の隣接するポイントまたは複数のポイントでの電気的膜電位のおかげで作られるものではないが、一時的外部電場の印加のおかげで作られる、軸索中の1つ以上のポイントでのカリウムおよびナトリウムイオンの分布である。一時的外部電場は、神経中のポイント内のカリウムおよびナトリウムイオンの分布を人工的に改変し、そうでなければ起こらなかったであろう、神経膜の脱分極を引き起こす。一時的外部電場によって引き起こされる神経膜の脱分極は、そのポイントを渡る活動電位をde novoで生成する。これは、破壊された状態で動作する神経であり、隣接するポイントの電気的膜電位によって影響も決定もされない電気的膜電位を有する軸索中のポイント(刺激されたポイント)でのカリウムおよびナトリウムイオンの分布によって観察することができる。
【0038】
かくして、神経活動の刺激は、シグナル印加のポイントを過ぎて継続することから神経活動を増加させることであると理解される。かくして、シグナル印加のポイントでの神経は、de novoでの活動電位が生成され、改変された神経を通って伝播するように、神経膜が電場によって可逆的に脱分極されるという点で改変される。したがって、シグナル印加のポイントでの神経は、de novoでの活動電位が生成される点で改変される。
【0039】
電気的シグナルが本発明と共に使用される場合、刺激は、神経膜を渡るイオンの分布に対する、電流(例えば、神経に取り付けた電極中の1個以上の電子、または神経外もしくは神経内の1個以上のイオンであってもよい、荷電粒子)の影響に基づく。
【0040】
神経活動の刺激は、部分的刺激であってもよい。部分的刺激は、全神経の全シグナル伝達活性が部分的に増加するか、または神経の神経線維のサブセットの全シグナル伝達活性が完全に増加するか、または神経の神経線維のサブセットの全シグナル伝達が、神経の線維のそのサブセット中でのベースライン神経活動と比較して部分的に増加するようなものであってもよい。例えば、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくは95%の神経活動の増加、または神経の神経線維のサブセットにおける神経活動の増加である。神経活動を、当業界で公知の方法、例えば、軸索を通って伝播する活動電位の数および/または活動電位の活動の合計を反映する局所電場の振幅によって測定することができる。
【0041】
本発明は、神経内の様々なサイズの神経線維を選択的に刺激することができる。より大きい神経線維は、より小さい神経線維よりも刺激のための閾値が低い傾向がある。かくして、例えば、シグナル振幅の増大(例えば、電気的シグナルの振幅の増大)は、より小さい線維ならびにより大きい線維の刺激を生成することができる。例えば、非対称的波形(方形パルスの代わりに三角パルス)を用いてC線維(無髄)を刺激することができる。
【0042】
神経活動の調節は、活動電位パターンの変化であってもよい。活動電位パターンを、全体の周波数または振幅を必ずしも変化させることなく調節することができることが理解されるであろう。例えば、神経活動の調節は、活動電位パターンが、疾患状態よりもむしろ健康な状態とより密接に類似するように変化するようなものであってもよい。
【0043】
神経活動の調節は、様々な他の方法で神経活動を変化させること、例えば、神経活動の特定の部分を増加もしくは減少させること、および/または活動の新しい要素を刺激することを含んでもよい。神経活動を変化させることは、特定のパターンなどによる、特に、時間間隔、特に、周波数帯であってもよい。
【0044】
神経活動の調節は、(少なくとも部分的に)修正的であってもよい。本明細書で使用される場合、「修正的(矯正的)」は、調節される神経活動が、健康な対象における神経活動のパターンに向かって対象の神経活動を変化させることを意味すると取られ、すなわち、軸索調節療法と呼ばれる。すなわち、シグナル印加の停止の際に、神経における神経活動は、シグナル印加の前よりも健康な対象において観察される神経における活動電位パターンとより密接に類似する(理想的には、実質的に完全に類似する)。そのような修正的調節は、本明細書で定義される任意の調節であってもよい。例えば、シグナルの印加は、神経活動の遮断をもたらしてもよく、シグナル印加の停止の際に、神経における活動電位パターンは、健康な対象において観察される活動電位パターンと類似する。さらなる例として、シグナルの印加は、健康な対象において観察される活動電位パターンと類似する神経活動をもたらしてもよく、シグナルの停止の際に、神経における活動電位パターンは、健康な対象において観察される活動電位パターンのままである。
【0045】
1型糖尿病
本発明は、1型糖尿病(T1D)のための療法を提供する。本発明は、T1Dの処置、例えば、T1Dと関連する症状の抑制、改善または逆転にとって有用である。本発明はまた、T1Dを防止する、例えば、T1Dと関連する症状の開始を遅延させる、またはそのリスクを軽減するのに有用であってもよい。
【0046】
T1Dは、インスリン欠乏および結果として、高血糖症をもたらす、膵臓β細胞の破壊をもたらす自己免疫状態である。典型的には、膵臓β細胞は、時間と共に進行的に減少し、最終的には、糖尿病の臨床的開始をもたらす。β細胞傷害は、膵臓細胞成分に対する液性自己抗体の産生に起因して生じる。この期間に、細胞性T細胞自己免疫の開始に起因して、さらなる傷害が生じる(また、膵臓細胞成分にも関する)。自己反応性T細胞は膵島を最初に取り囲み、最終的には膵島の内部に侵入し、機能的β細胞の進行的喪失をもたらす。インスリン産生の進行的減少は、β細胞破壊を伴う。この段階で、IVGTT(経静脈ブドウ糖負荷試験)およびOGTT(経口的ブドウ糖負荷試験)などの従来の試験を用いて、糖尿病状態の診断が行われる。第1相のインスリン応答の喪失を経験する対象は、「前糖尿病」または耐糖能異常(IGT)と標識されることが多い;しかしながら、糖尿病の臨床的開始の前触れである症状は、この診断の直後に生じることが多い。本発明は、前糖尿病またはIGTと診断された対象、ならびにT1Dが確立された対象にとって有益であり得る。
【0047】
前糖尿病またはIGTの診断基準としては、110~125mg/dL(6.1mmol/L~6.9mmol/L)の空腹時血糖値が挙げられる。あるいは、対象(処置対象)は、ブドウ糖負荷試験(GTT)の間の2つの時点で140~199mg/dL(7.8mmol/L~11.0mmol/L)の血漿グルコースレベルを示してもよく、そのうちの1つは、グルコースの摂取の2時間以内でなければならない。あるいは、糖化ヘモグロビンは、5.7%~6.4%である。
【0048】
対象がT1Dに罹患していると確立する診断基準としては、126mg/dL(7mmol/L)を超える、例えば、約140~約200mg/dlの空腹時血糖値(正常血糖値は典型的には、100mg/dl未満(5.6mmol/L未満)である。あるいは、対象は、グルコース負荷試験(GTT)の間の2つの時点で200mg/dL(11mmol/L)を超える血漿グルコースレベルを示してもよく、そのうちの1つは、グルコースの摂取の2時間以内でなければならない。
【0049】
本発明にとって好適な対象は、任意の年齢であってよいが、通常は、60歳以下、50歳以下、40歳以下、30歳以下、20歳以下、または10歳以下であろう。
【0050】
本発明はまた、T1Dを発症するリスクがある対象にとって有用である。T1Dの危険因子は、当業界で公知である。例えば、対象は、特に、母親に由来する、T1Dの家族歴を有してもよい。対象は、例えば、対象がHLA-DQA1、HLA-DQB1、およびHLA-DRB1遺伝子のある特定の変異体を担持する場合、遺伝的な素因を有してもよい。対象は、多腺性自己免疫症候群に罹患していてもよい。対象はまた、甲状腺疾患、副腎機能不全、および/または他の免疫系障害に罹患していてもよい。対象は、高レベルのグルタミン酸デカルボキシラーゼ自己抗体、例えば、0.03nmol/L以上の血清GAD65自己抗体を有してもよい。
【0051】
T1Dの処置を、様々な方法で評価することができるが、典型的には、対象の1つ以上の生理学的パラメーターの改善を含む。本明細書で使用される場合、「生理学的パラメーターの改善」は、任意の所与の生理学的パラメーターについて、改善が、正常値またはその値の正常範囲に向かう、すなわち、健康な対象における期待値に向かう、対象におけるそのパラメーターの値の変化であることを意味すると取られる。
【0052】
本明細書で使用される場合、生理学的パラメーターの「悪化」は、任意の所与の生理学的パラメーターについて、悪化が、正常値またはその値の正常範囲から離れる、すなわち、健康な対象における期待値から離れる対象におけるそのパラメーターの値の変化であることを意味すると取られる。
【0053】
例えば、T1Dを有する対象において、パラメーターの改善(対象が示している異常値に依存する)は、血中インスリンレベルの増加、(空腹時)血糖値(例えば、血漿もしくは血清)または尿中血糖値の低下、糖化ヘモグロビン(HbAlc)レベルの低下、膵臓における全身性炎症(例えば、循環サイトカインおよび/もしくはC反応性タンパク質のレベルによって示される)または膵島炎などの局所性炎症(例えば、Cペプチド、自己反応性T細胞、および/もしくは自己抗体のレベルによって示される)の低減、ならびに膵臓におけるカテコールアミンレベルの増加からなる群のいずれか1つであってもよい。ある特定の実施形態においては、パラメーターの改善は、膵臓におけるGABAレベルの増加、および膵臓における膵臓β細胞数の増加からなる群のいずれか1つであってもよい。本発明は、これらのパラメーターの全部における変化をもたらさない。任意の所与のパラメーターの値を決定するための好適な方法は、当業者によって理解されるであろう。
【0054】
自己反応性T細胞の例は、CD4+T細胞およびCD8+T細胞である。
【0055】
自己抗体の例としては、膵島細胞細胞質自己抗体(ICA)、インスリン自己抗体(IAA)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ自己抗体(GADA)、GAD65自己抗体、インスリノーマ関連2自己抗体(IA-2A)、ICA512自己抗体、およびタンパク質チロシンホスファターゼ様自己抗体が挙げられる。
【0056】
本明細書で使用される場合、生理学的パラメーターは、そのパラメーターが、その対象または介入が実施されていない場合の対象によって示されるそのパラメーターの正常値またはその値の正常範囲から変化しない(膵臓関連交感神経活動調節に応答して)場合、すなわち、それがそのパラメーターのベースライン値から逸脱しない場合、膵臓関連交感神経の神経活動の調節によって影響されない。
【0057】
好ましくは、膵臓関連交感神経の神経活動の調節は、膵臓の血流に対して最小限の影響を有する。より好ましくは、膵臓関連交感神経の神経活動の調節は、膵臓の血流の変化をもたらさない。かくして、膵臓の血流の変化の検出は、本発明のシステムまたはデバイスのパラメーターを最適化するための有用な生理学的パラメーターであってもよい。膵臓の血流を、侵襲的方法(例えば、膵動脈におけるカテーテルに基づく血流測定)または非侵襲的方法(例えば、超音波イメージング)によって検出することができる。
【0058】
当業者であれば理解するとおり、対象における任意の神経活動または生理学的パラメーターに関するベースラインは、固定値または特定値である必要はないが、むしろ、正常範囲内で変動してもよいか、または関連する誤差および信頼区間を有する平均値であってもよい。ベースライン値を決定するための好適な方法は、当業者には周知である。例えば、健康なヒト対象における典型的な空腹時血漿グルコースレベルは、100mg/dl未満(5.6mmol/L未満)である。さらなる例として、健康なヒト対象における典型的なHbAlc含量は、20~42mmol/mol(総Hbの4~5.6%)である。
【0059】
本明細書で使用される場合、生理学的パラメーターは、検出時に対象によって示されるそのパラメーターの値が決定される時に対象において検出される。検出器(例えば、生理学的センサーサブシステム、生理学的データプロセッシングモジュール、生理学的センサーなど)は、そのような決定を行うことができる任意のエレメントである。
【0060】
かくして、ある特定の実施形態においては、本発明は、対象の1つ以上の生理学的パラメーターを決定するステップであって、膵臓関連交感神経に印加されるシグナルを、決定される生理学的パラメーターが所定の閾値を満たす、または超える場合にのみ印加するステップをさらに含む。そのような実施形態においては、1より多い生理学的パラメーターが決定される場合、シグナルを、決定されるパラメーターのいずれか1つがその閾値を満たすか、または超える場合に、あるいは、決定されるパラメーターの全てが、それらの閾値を満たすか、または超える場合にのみ印加してもよい。ある特定の実施形態においては、シグナルが本発明のデバイス/システムによって膵臓関連交感神経に印加される場合、デバイス/システムは、1つ以上の生理学的パラメーターを決定するように構成される少なくとも1つの検出器をさらに含む。
【0061】
方法のある特定の実施形態においては、1つ以上の生理学的パラメーターは、血中インスリンレベル、(空腹時)血中または尿中血糖値、糖化ヘモグロビン(HbAlc)レベル、膵臓における全身性(例えば、循環サイトカインおよび/もしくはC反応性タンパク質のレベルによって示される)または局所性(例えば、Cペプチド、自己反応性T細胞、および/もしくは自己抗体のレベルによって示される)の免疫応答および/または炎症の程度、膵臓中のカテコールアミンレベル、膵臓の血圧および膵臓の血流からなる群の1つ以上である。方法のある特定の実施形態においては、1つ以上の生理学的パラメーターは、膵臓におけるGABAレベルの増加、膵臓中の膵臓β細胞数の増加からなる群の1つ以上である。
【0062】
ある特定の実施形態においては、生理学的パラメーターは、活動電位または活動電位パターンがT1Dと関連する、対象の神経における活動電位または活動電位パターンである。ある特定の実施形態においては、神経は、膵臓関連交感神経である。
【0063】
生理学的パラメーターの「所定の閾値」は、ある対象または特定の介入が加えられる前の対象によって示されなければならないそのパラメーターの最小値(または最大値)である。任意の所与のパラメーターについて、閾値を、生理学的状態または疾患状態を示す値と定義することができる(例えば、閾値よりも高い、または健康な対象における血糖値よりも高い血糖値)。閾値を、生理学的状態または疾患状態の開始を示す値と定義することができる。かくして、所定の閾値に応じて、本発明を、防止または処置として用いることができる。あるいは、閾値を、対象の生理学的状態(対象が、例えば、睡眠している、食後である、または運動しているということ)を示す値と定義することができる。当業者であれば、任意の所与のパラメーターの適切な値を簡単に決定することができる(例えば、医学的実務基準を参照して)。
【0064】
対象によって示される値が閾値を超える場合、すなわち、示される値が、所定の閾値よりもそのパラメーターの正常値または健康値からの大きい逸脱である場合、所与の生理学的パラメーターのそのような閾値を超える。
【0065】
方法のある特定の実施形態においては、方法は、膵臓の血流、および膵臓の非β細胞の生理学的機能(例えば、グルカゴン、ソマトスタチン、膵ポリペプチド、および膵液の分泌)に影響しない。
【0066】
当業者であれば、任意の所与のパラメーターの値を決定するための好適な方法を理解することができ、それを以下でさらに説明する。
【0067】
本発明と共に有用である対象は、埋込み体を有することに加えて、その状態のための医薬を受けてもよい。例えば、本発明による埋込み体を有する対象は、糖尿病薬、例えば、インスリン(例えば、レギュラーインスリン(Humulin 70/30、Novolin 70/30その他)、インスリンイソファン(Humulin N、Novolin N)、インスリングルリシン(Apidra)、インスリンリスプロ(Humalog)およびインスリンアスパルト(Novolog)、グラルギン(Lantus)およびデテミル(Levemir)などの長期作用型インスリン、人工膵臓またはβ細胞、プラムリンチド(Symlin)、高血圧薬(例えば、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤またはアンギオテンシンII受容体遮断剤(ARB))、アスピリン、および/またはコレステロール低下薬(通常、埋込み体を受ける前に行われていた医薬を継続する)を受けてもよい。かくして、本発明は、本発明のデバイス/システムと共に、これらの医薬の使用を提供する。
【0068】
ある特定の実施形態においては、改善される生理学的パラメーターは、膵臓中の膵臓β細胞の増加であってもよい。本発明者らは、膵臓のリンパ系に分布する膵臓関連交感神経への本発明のシグナルの印加を用いて、膵臓中の膵臓β細胞の数を増加させることができることを見出した(例えば、
図9Dを参照されたい)。膵臓β細胞数の増加は、T1Dと関連する高血糖を低減させることができる。本発明のシグナルは、膵臓中のGABAのレベルを増加させることによって、膵臓β細胞の数を増加させることができる。ある特定の実施形態においては、本発明は、膵臓におけるGABAの分泌を増加させることができる。ある特定の実施形態においては、本発明は、膵臓におけるGABAの発現を増加させることができる。
【0069】
理論によって束縛されることを望むものではないが、GABAは、膵島における膵臓β細胞の塊を増加させることが示されていることがわかっている。GABAは、β細胞塊の維持に参画し、β細胞をアポトーシスから保護すると考えられる。GABAはまた、膵島中でのα膵臓細胞からβ膵臓細胞への変換を促進することも示されている[8]。膵臓細胞のαからβへの変換はまた、膵臓細胞新生を再活性化して、α膵臓細胞の塊を補充することも示されている[9]。したがって、GABAへの長期的曝露は、膵臓β細胞過形成を促進することによって、T1Dの処置または防止のための方法を提供すると考えられる。ある特定の実施形態においては、本発明を用いて、T1Dを有する対象において膵臓中のGABAの分泌レベルを改善することができる。
【0070】
ある特定の実施形態においては、本発明を用いて、膵臓中の活性GABAのレベルを増加させることができる。本明細書で使用される場合、「GABA」とは、ガンマ-アミノ酪酸(4-アミノブタン酸であるIUPAC)を指す。「活性GABA」とは、膵臓中の膵臓β細胞数を増加させる生体利用可能なGABAを指す。「GABA類似体(アナログ)」とは、GABAプロドラッグを含む、GABAの類似体または誘導体である化合物を指す。「GABA増強剤」とは、GABA活性またはバイオアベイラビリティの増加を含む、膵臓中の活性GABAを増強する、または増加させる薬剤を指す。GABA増強剤の例としては、(限定されるものではないが)ベンゾジアゼピン系(例えば、ジアゼパム、アルプラゾラム、クロナゼパム、ロラゼパム、またはクロラジアゼポジド)、バルビツール酸系(フェノバルビタール、ペントバルビタール、ブトバルビタール、アモバルビタール、セコバルビタールまたはチオペンタール)、バクロフェン、アカンプロセート、プレガバリン、ガバペンチン、チアガビン、ラモトリギン、トピラメート、神経活性ステロイド(アロプレグナロンおよびガナキソロン)、ナビキシモルス(例えば、サティベックス)、およびその組合せが挙げられる。
【0071】
ある特定の実施形態においては、本発明と共に有用な対象は、埋込み体を有することに加えて、膵臓中の活性GABAを増加させる医薬または治療を受けてもよい。例えば、対象は、ベンゾジアゼピン系(例えば、ジアゼパム、アルプラゾラム、クロナゼパム、ロラゼパム、またはクロラジアゼポジド)、バルビツール酸系(フェノバルビタール、ペントバルビタール、ブトバルビタール、アモバルビタール、セコバルビタールまたはチオペンタール)、バクロフェン、アカンプロセート、プレガバリン、ガバペンチン、チアガビン、ラモトリギン、トピラメート、神経活性ステロイド(アロプレグナロンおよびガナキソロン)、ナビキシモルス(例えば、サティベックス)、電気ショック療法または経頭蓋磁気刺激を受けていてもよい。
【0072】
ある特定の実施形態においては、本発明は、膵臓関連交感神経における神経活動を可逆的に調節する方法を受けている、受けていた、または受けようとしている対象におけるT1Dを処置または防止する方法であって、(i)対象中に本発明のデバイスまたはシステムを埋め込むこと;(ii)神経インターフェースエレメントを、膵臓関連交感神経とシグナル伝達接触するように配置すること;および必要に応じて、(iii)デバイスまたはシステムを活性化することを含む、方法における使用のための、前記段落に開示された医薬または治療などの、膵臓中の活性GABAを増加させる物質を含んでもよい。さらに、本発明は、活動電位が改変された神経中でde novoで生成されるように、荷電粒子が膵臓関連交感神経の神経膜の可逆的脱分極を引き起こす、T1Dを処置または防止する方法における、1つ以上の電極などの荷電粒子と組み合わせた使用のための、前記段落に開示された医薬または治療などの、膵臓中の活性GABAを増加させる物質を含んでもよい。
【0073】
本発明を実施するための埋込み可能デバイス/システム
本発明による神経活動を調節するための埋込み可能システムは、埋込み可能デバイス(例えば、
図8の埋込み可能デバイス106)を含む。埋込み可能デバイスは、膵臓関連交感神経の上または周囲への配置にとって好適な、変換器、好ましくは、電極(例えば、電極108)などの少なくとも1つの神経インターフェースエレメントを含む。埋込み可能システムは、好ましくは、少なくとも1つの神経インターフェースエレメントに連結されたプロセッサー(例えば、マイクロプロセッサー113)も含む。
【0074】
少なくとも1つの神経インターフェースエレメントは、多くの形態を採ってもよく、本発明を実行するための埋込み可能デバイスまたはシステムにおいて使用される場合、神経における電気的活動を調節する刺激または他のシグナルを印加することができる任意の構成要素を含む。
【0075】
埋込み可能システムの様々な構成要素は、好ましくは、共通の筐体を有するか、または導線(例えば、導線107)によって接続された相互接続成分の物理的に分離された集合体である、単一の物理デバイスの一部である。しかしながら、別の方法として、本発明は、構成要素が物理的に離れており、無線通信するシステムを使用することができる。かくして、例えば、少なくとも1つの神経インターフェースエレメント(例えば、電極108)と、埋込み可能デバイス(例えば、埋込み可能デバイス106)は、単一のデバイスの一部であってもよく、または一緒になって、埋込み可能システム(例えば、埋込み可能システム116)を形成してもよい。両事例において、より大きいデバイスまたはシステム(例えば、システム100)を形成させるために、さらなる構成要素が存在してもよい。
【0076】
調節シグナルの好適な形態
本発明は、膵臓関連交感神経とシグナル伝達接触するように置かれた1つ以上の神経インターフェースエレメント(例えば、電極108)を介して印加されるシグナルを使用する。
【0077】
本発明に従って印加されるシグナルは、理想的には非破壊的である。本明細書で使用される「非破壊的シグナル」は、印加された場合に、神経の内在する神経シグナル伝達能力を不可逆的に損傷しないシグナルである。すなわち、非破壊的シグナルの印加は、伝導が実際には非破壊的シグナルの印加の結果として人工的に刺激される場合であっても、神経(例えば、膵臓関連交感神経)もしくはその線維、またはシグナルが印加される他の神経組織が、シグナルの印加が停止する後にも活動電位を伝導する能力を維持する。
【0078】
シグナルは通常、電気的シグナルであり、例えば、電圧または電流波形であってもよい。本明細書で使用される場合、DC電流との関連における「荷電平衡」は、DC電流が印加される結果として任意のシステム(例えば、神経)に導入される正電荷または負電荷が、全体の(正味の)中性を達成するために、反対の電荷の導入によって平衡化されることを意味すると取られる。埋込み可能システム(例えば、埋込み可能システム116)の少なくとも1つの神経インターフェースエレメント(例えば、電極108)は、電気的シグナルを、神経、またはその一部に印加するように構成される。しかしながら、電気的シグナルは、以下でさらに記載するとおり、本発明を実現する方法の一つに過ぎない。
【0079】
電気的シグナルは、様々な形態、例えば、電圧または電流を採ってもよい。ある特定のそのような実施形態においては、印加されるシグナルは、荷電平衡直流などの直流電流(DC)、または交流電流(AC)波形、またはDCとAC波形との両方を含む。荷電平衡DCとACとの組合せが特に有用であり、ACのみが用いられた後の短い初期についてはDCが印加される[10]。
【0080】
ある特定の実施形態においては、DC波形またはAC波形は、方形波形、正弦波形、三角波形、台形波形、準台形波形または複合波形であってもよい。あるいは、DC波形は、一定の振幅の波形であってもよい。ある特定の実施形態においては、電気的シグナルは、AC正弦波形である。他の実施形態においては、波形は、それぞれ、複数の荷電平衡二相パルスを含む、1つ以上のパルス列を含む。
【0081】
いずれの場合でも、シグナルを、バーストで印加することができる。バースト持続時間の範囲は、数秒から数時間であってもよい;バースト間の所定の時間間隔で、0.01%~100%のデューティサイクル様式で連続的に印加してもよい。電気的シグナルを、電流または強度において段階変化として、または傾斜変化として印加してもよい。膵臓関連交感神経を調節する(例えば、刺激する)ための特定のシグナルパラメーターを、以下でさらに説明する。
【0082】
膵臓関連交感神経の神経活動の調節または刺激を、神経の正常な神経活動を再現するのに役立つ電気的シグナルを使用して達成することができる。電気的シグナルの好ましい実施形態は、それぞれのパルス列が複数のパルスで構成されている、複数の時間的に分離したパルス列を含む。
【0083】
再度、
図8を参照すると、埋込み可能システム116は、シグナル生成器117(示されていない)、例えば、パルス生成器を含んでもよい埋込み可能デバイス106を含む。埋込み可能デバイスがパルス生成器を含む場合、埋込み可能デバイス106を、埋込み可能パルス生成器と呼んでもよい。シグナル生成器117はまた、電圧源または電流源であってもよい。シグナル生成器117を、上記の範囲内にあるパラメーターを有する1つ以上の所定の波形を送達するように予めプログラミングすることができる。あるいは、シグナル生成器117は、以下に記載される1つ以上のシグナルパラメーターを調整するために制御可能であってもよい。制御は、埋込み可能デバイス106のユーザーもしくはオペレーターが外部コントローラー(例えば、コントローラー101)を使用してシグナル生成器を構成することができるオープンループであってもよいか、または制御は、シグナル生成器が、以下でさらに説明されるように、対象の1つ以上の生理学的パラメーターに応答してシグナルパラメーターを改変する、クローズドループであってもよい。
【0084】
神経活動を調節するためのシグナルパラメーター
上記の例の全てにおいて、シグナル生成器117は、膵臓関連交感神経を調節する(例えば、刺激する)ための電気的シグナルを送達するように構成することができる。本発明においては、シグナル生成器117は、膵臓関連交感神経における神経活動を調節する(例えば、刺激する)ためのある特定のシグナルパラメーターを有する電気的シグナルを印加するように構成される。本明細書に記載される、膵臓関連交換神経を調節する(例えば、刺激する)ためのシグナルパラメーターは、波形、振幅、および周波数を含んでもよい。
【0085】
調節しようとする神経が、リンパ系および膵臓の他の部分(例えば、膵島細胞) に分布する線維の混合物を含有する実施形態においては、シグナルパラメーターは、膵臓の他の部分に分布する線維と比較して、膵臓のリンパ系に分布する線維の神経活動を選択的に調節する(例えば、刺激する)。より具体的には、シグナルパラメーターは、膵臓の他の部分に分布する線維の神経活動を調節する(例えば、刺激する)ことなく、膵臓のリンパ系に分布する線維の神経活動を選択的に調節する(例えば、刺激する)ことができる。選択的調節のための適切なシグナルパラメーターは、周波数および/または振幅であってよく、例えば、オフターゲット効果(例えば、膵臓の血流)と比較して良好なオンターゲット効果(例えば、血糖値の低下)を提供する値を同定することによって、またはオフターゲット効果、例えば、膵臓の血流の変化がないことを最小化することによって、パラメーターを最適化することができる。
【0086】
いくつかの実施形態においては、電気的シグナルは、0.1Hz~100Hz、好ましくは、0.1Hz~50Hz、より好ましくは、1Hz~20Hzの周波数を有する。周波数は、有利には、1Hz~10Hzであってよい。5Hz、10Hz、特に、20Hzの周波数が特に好ましいが、範囲内の任意の周波数を選択してもよい。
【0087】
いくつかの実施形態においては、電気的シグナルは、0.01mA~10mA、または0.1mA~10mAなどの、10mAを含むそれ以下の電流を有する。好ましくは、電気的シグナルは、0.01mA~5mA、または0.1mA~5mAなどの、5mA未満の電流を有する。
【0088】
シグナル生成器117を、上記の周波数による間隔で1以上のパルス列を送達するように構成することができる。例えば、10~100Hzの周波数は、所与のパルス列内で、1秒あたり10パルスから1秒あたり100パルスの間のパルス間隔をもたらす。したがって、パルス幅の範囲は、0.01~2msであってよい(荷電平衡二相パルスの場合、パルスの正相と負相の両方を含む)。パルス振幅の範囲は、0.01~10mAの最大振幅であってもよい。神経活動を刺激するためには、より短いパルス幅およびより低い振幅のパルスについて利点が指摘されている。特に、0.2ms~0.5msのパルス幅および0.01mA~5mAのパルス振幅が好ましいが、50μs~1msのパルス幅および0.20mA~0.65mAのパルス振幅を有する波形も有利である。
【0089】
あるいは、電極アレイを用いた膵臓関連交感神経の調節は、以下でさらに説明されるように、膵臓β細胞に向かうより高い程度で自己反応性T細胞に向かう神経活動の調節(例えば、刺激)を引き起こし得る。
【0090】
当業者であれば、神経活動の意図的調節を達成するのに必要な印加される電気的シグナルの電流振幅が、電極の配置および関連する電気生理学的特徴(例えば、電気抵抗)に依存することを理解できる。所与の対象における神経活動の意図的調節を達成するための適切な電流振幅を決定することは、当業者の能力の範囲内にある。
【0091】
電極
上記のように、埋込み可能システムは、少なくとも1つの神経インターフェースエレメントを含み、神経インターフェースエレメントは、好ましくは、電極108である。神経インターフェースは、膵臓関連交感神経を少なくとも部分的に、好ましくは完全に迂回するように構成される。神経インターフェースの配置は、膵臓関連交感神経の生体構造によって一部定義される。特に、位置(幾何)は、電極の取り付けに適している膵臓関連交感神経の長さ、および/または約0.5~10μm(好ましくは、約1μm)であってよい、膵臓関連交感神経の直径によって制限され得る。
【0092】
いくつかの実施形態においては(例えば、
図8)、電極108を、導線107を介して埋込み可能システム116の埋込み可能デバイス106に連結することができる。あるいは、埋込み可能デバイス106を、導線なしに電極108と直接統合することができる。いずれの場合でも、埋込み可能デバイス106は、必要に応じて、全ての出力チャンネル(例えば、電極108、または生理学的センサー111への出力)上に、コンデンサーおよび/またはインデューサーに基づく、DC電流遮断出力回路を含んでもよい。電極108を、長方形、卵形、楕円体、棒、直線ワイヤ、曲線ワイヤ、らせん巻きのワイヤ、バーブ、フック、またはカフからなる群の1つとして形状化することができる。使用時に、膵臓関連交感神経の上、中、または近くに位置する電極108に加えて、隣接する組織に置かれた、より大きい不関電極119(示されていない)があってもよい。
【0093】
好ましくは、電極108は、使用時に、膵臓関連交感神経の上、中、または近くに位置するように構成される少なくとも2つの導電性露出接続部109を含有してもよい。露出接続部109を、使用時に、膵臓関連交換神経の軸に沿って横に配置することができる。この構成では、少なくとも2つの露出接触部のそれぞれの間の距離は、約0.5mm~約5mm、必要に応じて、約1mm~3mm、必要に応じて、約1mm~2mmであってもよい。少なくとも2つの露出接続部109のそれぞれは、他方のものと等しい膵臓関連交換神経と接触する表面積を有してもよい。表面積は、約0.1mm2~約100mm2、必要に応じて、約1mm2~50mm2、必要に応じて、約1mm2~20mm2、必要に応じて、約5mm2~10mm2の範囲であってもよい。
【0094】
いくつかの実施形態においては、本発明における使用のための電極108は、電極アレイである。電極アレイは、公知のように(例えば、[5]、[6]、[7]を参照されたい)、選択的様式で神経を刺激することができる。膵臓関連交感神経の選択的調節は、選択された神経線維を調節する(例えば、刺激する)、かくして、存在する場合、他の膵臓関連自律神経線維と比較して膵臓のリンパ系に分布する(に行きわたっている)膵臓関連交感神経線維を選択的に調節する(例えば、刺激する)のに特に有用である。
【0095】
電極アレイは、貫通型または非貫通型のものであってもよい。好適な電極アレイは、Blackrock MicrosystemsからのICS-96 MultiPort平面アレイであってもよい。1つの可能な構成は、約2,000mm2の表面積、1mmのシャフト長、および0.4mmの電極間空間を有する、90チャンネル:4x10および5x10の分割平面アレイを有する。
【0096】
露出接触部109を、使用時に膵臓関連交換神経に沿って横に隔てることができる非導電性生体適合材料によって絶縁することができる。
【0097】
神経インターフェースエレメントおよびシグナルの他の好適な形態
シグナルは、熱エネルギーを使用してもよく、神経の温度を改変して、神経活動の伝播を刺激することができる。神経の加熱を用いて、神経活動を調節することができる。ある特定のそのような実施形態においては、神経インターフェースは、可視光、赤外線、またはマイクロ波照射を用いる、例えば、レーザーダイオードまたは発光ダイオードを用いる放射電磁気加熱のための小さい埋込み可能または着用可能な変換器またはデバイスである。ある特定のそのような実施形態においては、放射シグナルは、500mW/cm2未満のエネルギー密度を有する。さらに、ある特定の実施形態においては、放射シグナルは、5Hz未満、必要に応じて、1Hzの調節周波数を用いて調節される。ある特定の代替的な実施形態においては、神経インターフェースは、素早く、可逆性の、また空間的に非常に限局的な加熱効果を提供するために使用することができる、電気抵抗エレメントなどの伝導加熱のための小さい埋込み可能または着用可能な変換器またはデバイスである(例えば、参考文献[11]を参照されたい)。ある特定の実施形態においては、シグナルは、神経の温度を最大で5℃上昇させる。
【0098】
シグナルは、機械的シグナルを含んでもよい。ある特定の実施形態においては、機械的シグナルは、圧力シグナルである。ある特定のそのような実施形態においては、神経インターフェースは、神経活動を刺激する、神経に印加される最大250mmHgの圧力を生成する変換器である。
【0099】
ある特定の代替的な実施形態においては、シグナルは、超音波シグナルである。ある特定のそのような実施形態においては、神経インターフェースは、超音波変換器であり、超音波シグナルは、0.5MHzより下、必要に応じて、0.1~0.5MHz、必要に応じて、0.1MHzの周波数を有する。ある特定の実施形態においては、超音波シグナルは、10W/cm2より下、例えば、1.5W/cm2または0.5W/cm2の密度を有する。
【0100】
神経活動を調節するための別の機械的形態のシグナルは、埋め込まれた超音波変換器の代わりに、外部の例えば、着用可能な超音波変換器を用いて都合良く実装することができる超音波を用いる。
【0101】
マイクロプロセッサー
埋込み可能システム116、特に、埋込み可能デバイス106は、プロセッサー、例えば、マイクロプロセッサー113を含んでもよい。マイクロプロセッサー113は、少なくとも1つの神経インターフェースエレメントによる神経(例えば、膵臓関連交感神経)に送達されるシグナルの開始および/または終了を誘発するのを担ってもよい。必要に応じて、マイクロプロセッサー113はまた、シグナルのパラメーターの生成および/または制御を担ってもよい。
【0102】
マイクロプロセッサー113を、所定のシグナル(例えば、上記のもの)が所与の周期性で(または連続的に)、所与の持続時間にわたって(または無期限に)、外部トリガーを用いて、または用いずに、いかなる制御またはフィードバック機構もなしに、神経に送達される、オープンループ様式で動作するように構成することができる。あるいは、マイクロプロセッサー113を、シグナルが制御またはフィードバック機構に基づいて印加される、クローズドループ様式で動作するように構成することができる。本明細書の他の場所に記載されるように、外部トリガーは、シグナルの送達を開始させるユーザーまたはオペレーターによって操作可能な外部コントローラー101であってもよい。
【0103】
埋込み可能システム116、特に、埋込み可能デバイス106のマイクロプロセッサー113を、使用時に、入力とは無関係である予め構成された、および/またはユーザーが選択可能なシグナルを生成するために構築することができる。しかしながら、好ましくは、マイクロプロセッサー113は、外部シグナル、より好ましくは、対象の1つ以上の生理学的パラメーターに属する情報(例えば、データ)に応答する。
【0104】
マイクロプロセッサー113を、ユーザーまたはオペレーター(例えば、医師またはデバイス116が埋め込まれた対象)によって生成されたシグナルの受信時に始動させることができる。その目的のために、埋込み可能システム116は、コントローラー101を含む外部システム118をさらに含むシステムの一部であってもよい。そのようなシステムの例を、
図8を参照して以下で説明する。
【0105】
システム100の外部システム118は、埋込み可能システム116に対して外部であり、対象に対して外部であり、コントローラー101を含む。コントローラー101を、埋込み可能システム116を制御する、および/または外部電力を供給するために使用することができる。この目的のために、コントローラー101は、電力供給ユニット102および/またはプログラミングユニット103を含んでもよい。外部システム118は、以下にさらに説明されるように、送電アンテナ104およびデータ送信アンテナ105をさらに含んでもよい。
【0106】
コントローラー101および/またはマイクロプロセッサー113を、上記シグナルのいずれか1つ以上を、間欠的または連続的に神経に印加するように構成することができる。シグナルの間欠的印加は、(オン-オフ)nパターン(ここで、n>1である)でシグナルを印加することを含む。例えば、シグナルを、少なくとも5日間、必要に応じて、少なくとも7日間にわたって連続的に印加した後、ある期間(例えば、1日、2日、3日、1週間、2週間、1ヶ月間)にわたって停止した後、少なくとも5日間にわたって再度連続的に印加することができる、などである。かくして、シグナルを第1の期間にわたって印加した後、第2の期間にわたって停止した後、第3の期間にわたって再印加し、次いで、第4の期間にわたって停止する、などである。そのような実施形態においては、第1、第2、第3および第4の期間は、逐次的および連続的に実行する。第1、第2、第3および第4の期間の持続時間は、独立に選択される。すなわち、それぞれの期間の持続時間は、他の期間のいずれかと同じか、または異なっていてもよい。ある特定のそのような実施形態においては、第1、第2、第3および第4の期間のそれぞれの持続時間は、1秒(s)~10日(d)、2秒~7日、3秒~4日、5秒~24時間(24h)、30秒~12時間、1分~12時間、5分~8時間、5分~6時間、10分~6時間、10分~4時間、30分~4時間、1時間~4時間の任意の時間であってもよい。ある特定の実施形態においては、第1、第2、第3および第4の期間のそれぞれの持続時間は、5秒、10秒、30秒、60秒、2分、5分、10分、20分、30分、40分、50分、60分、90分、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間、2日、3日、4日、5日、6日、7日である。
【0107】
ある特定の実施形態においては、シグナルは、1日あたり特定の時間量にわたって、コントローラー101および/またはマイクロプロセッサーによって印加される。ある特定のそのような実施形態においては、シグナルは、1日あたり10分、20分、30分、40分、50分、60分、90分、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間にわたって印加される。ある特定のそのような実施形態においては、シグナルは、特定の時間量にわたって連続的に印加される。ある特定の代替的なそのような実施形態においては、シグナルを、1日にわたって不連続的に印加することができるが、但し、合計印加時間は、特定の時間量である。
【0108】
連続的印加は、無期限に、例えば、永続的に継続してもよい。あるいは、連続的印加は、最小限の期間にわたるものであってもよく、例えば、シグナルを、少なくとも5日間、または少なくとも7日間にわたって連続的に印加することができる。
【0109】
神経に印加されるシグナルがコントローラー101によって制御されるにしても、またはシグナルがマイクロプロセッサー113によって直接的に連続的に印加されるにしても、シグナルは一連のパルスであってよいが、これらのパルス間のギャップは、シグナルが連続的に印加されていないことを意味するものではない。
【0110】
ある特定の実施形態においては、シグナルは、対象が特定の状態にある場合にのみ、例えば、対象が覚醒している場合にのみ、対象が睡眠中である場合にのみ、食物の摂取の前および/または後、対象が運動を行う前および/または後などに印加される。
【0111】
神経における神経活動の調節のためのタイミングに関する様々な実施形態は、本発明のデバイス/システム中のコントローラー101を用いて全て達成することができる。
【0112】
埋込み可能デバイスを含むシステムの他の構成要素
上記の電極108およびマイクロプロセッサー113に加えて、埋込み可能システム116は、1つ以上の下記構成要素:埋込み可能送受信機110;生理学的センサー111;電源112;メモリー114;および生理学的データプロセッシングモジュール115を含んでもよい。さらに、またはあるいは、生理学的センサー111;メモリー114;および生理学的データプロセッシングモジュール115は、埋込み可能システムに対して外部のサブシステムの一部であってもよい。必要に応じて、外部サブシステムは、例えば、埋込み可能送受信機110を介して無線で埋込み可能システムと通信することができる。
【0113】
いくつかの実施形態においては、好ましくは、1つ以上の下記構成要素:電源112;メモリー114;および生理学的データプロセッシングモジュール115を、埋込み可能デバイス106中に含有させることができる。
【0114】
電源112は、電極108によって膵臓関連交感神経に送達されるシグナルに電力を提供するための電流源および/または電圧源を含んでもよい。電源112はまた、マイクロプロセッサー113、メモリー114、および埋込み可能送受信機110などの、埋込み可能デバイス106および/または埋込み可能システム116の他の構成要素に電力を提供することもできる。電源112は、バッテリーを含んでもよく、バッテリーは再充電可能であってもよい。
【0115】
埋込み可能デバイスにおいては電力の利用可能性が制限されることが理解され、本発明はこの制約を考慮して考案された。埋込み可能デバイス106および/または埋込み可能システム116に、電磁誘導電力供給または再充電可能電源によって電力を供給することができる。
【0116】
メモリー114は、電力データおよび内部システム116に由来する1つ以上の生理学的パラメーターに関するデータを保存することができる。例えば、メモリー114は、生理学的センサー111によって検出された1つ以上の生理学的パラメーター、および/または生理学的データプロセッシングモジュール115を介して決定された1つ以上の対応する生理学的パラメーターを示す1つ以上のシグナルに関するデータを保存することができる。さらに、またはあるいは、メモリー114は、埋込み可能送受信機110を介して電力データおよび外部システム118に由来する1つ以上の生理学的パラメーターに関するデータを保存することができる。この目的のために、埋込み可能送受信機110は、以下でさらに考察されるように、システム100の通信サブシステムの一部を形成してもよい。
【0117】
生理学的データプロセッシングモジュール115は、生理学的センサー111によって検出された1つ以上の生理学的パラメーターを示す1つ以上のシグナルをプロセッシングして、1つ以上の対応する生理学的パラメーターを決定するように構成される。また、生理学的データプロセッシングモジュール115を、メモリー114中に保存するため、および/または埋込み可能送受信機110を介して外部システムに送信するために、1つ以上の生理学的パラメーターに関するデータのサイズを低下させるために構成することもできる。埋込み可能送受信機110は、1つ以上のアンテナを含んでもよい。埋込み可能送受信機100は、シグナルを体外に、例えば、埋込み可能システム116が1つの部分であるシステム100に送信するために、RF、無線、赤外線などの任意の好適なシグナル伝達プロセスを使用してもよい。
【0118】
あるいは、またはさらに、生理学的データプロセッシングモジュール115を、1つ以上の生理学的パラメーターおよび/または決定された1つ以上の生理学的パラメーターを示すシグナルをプロセッシングし、対象におけるT1Dの進行を決定するように構成することができる。そのような場合、埋込み可能システム116、特に、埋込み可能デバイス106は、以下でさらに説明されるように、1つ以上の生理学的パラメーターおよび対象におけるT1Dの決定された進行に基づく膵臓関連交感神経への印加のためにシグナルパラメーターを較正および調整する能力を含むであろう。
【0119】
生理学的データプロセッシングモジュール115および少なくとも1つの生理学的センサー111は、埋込み可能システム116の一部、埋込み可能デバイス106の一部、または埋込み可能システムに対して外部のものとして、生理学的センサーサブシステムを形成してもよい。
【0120】
生理学的センサー111は、1つ以上の上記生理学的パラメーターのうちの1つを示すシグナルを検出するようにそれぞれ構成された、1つ以上のセンサーを含む。例えば、生理学的センサー111は、電気的センサーを用いて網膜電気活動を検出するための電気的センサーを用いて皮膚電気活動を検出するため;電気的、RF、もしくは光学的(可視光、至芸線)生化学センサーを用いて生体分子濃度を検出するため;侵襲的方法(例えば、膵動脈におけるカテーテルに基づくセンサー)もしくは非侵襲的方法(例えば、超音波イメージング)を用いて膵臓の血流を検出するため;またはそれらの組合せの1つ以上のために構成される。
【0121】
生理学的データプロセッシングモジュール115によって決定される生理学的パラメーターを用いて、マイクロプロセッサー113に、電極108を用いて膵臓関連交感神経に上記の種類のシグナルを送達するように始動させることができる。生理学的センサー111から受信した生理学的パラメーターを示すシグナルの受信時に、生理学的データプロセッサー115は、当業界で公知の技術を用いて計算することによって、対象の生理学的パラメーター、および従ってT1Dの進行を決定することができる。
【0122】
メモリー114は、1つ以上の生理学的パラメーターの正常レベル、すなわち、健康な対象に見出されるレベルに関するデータを保存することができる。データは、埋込み可能システム116が埋め込まれた対象にとって特異的なものであってよく、当業界で公知の様々な試験から収集することができる。生理学的センサー111から受信した、または他に定期的に、もしくは要求時に生理学的センサー111から受信した生理学的パラメーターを示すシグナルの受信時に、生理学的データプロセッサー115は、生理学的センサー111によって検出された生理学的パラメーターを決定し、それと、メモリー114に保存された生理学的パラメーターの正常レベルに関するデータとを比較し、受信したシグナルが、不十分な、または過剰の特定の生理学的パラメーターを示すかどうか、かくして、対象におけるT1Dの進行を示すかどうかを決定することができる。
【0123】
埋込み可能システム116および/または埋込み可能デバイス106を、不十分な、または過剰なレベルの生理学的パラメーターが生理学的データプロセッサー115によって決定された場合およびその時に、生理学的データプロセッサー115が、本明細書の他の場所に記載される様式で、電極108による膵臓関連交感神経へのシグナルの送達を始動するように構成することができる。例えば、生理学的パラメーターのいずれかおよび/もしくはT1Dの悪化、ならびに/またはT1Dの開始を示す生理学的パラメーターが決定された場合、生理学的データプロセッサー115は、本明細書の他の場所に記載されるように、それぞれの生化学物質の分泌を抑制するシグナルの送達を始動することができる。本発明と関連する特定の生理学的パラメーターは、上記されている。1つ以上のこれらの生理学的パラメーターが生理学的データプロセッサー115によって決定された場合、シグナルを、電極108を介して膵臓関連交感神経に印加することができる。
【0124】
埋込み可能システム116および/または埋込み可能デバイス106が生理学的パラメーターに応答する能力に代わる手段として、またはそれに加えて、マイクロプロセッサー113を、ユーザーまたはオペレーター(例えば、医師またはシステム116が埋め込まれた対象)によって生成されたシグナルの受信時に始動させることができる。その目的のために、埋込み可能システム116は、以下でさらに説明されるように、外部システム118およびコントローラー101を含むシステム100の一部であってもよい。
【0125】
埋込み可能デバイスを含むシステム
図8を参照すると、本発明の埋込み可能デバイス106は、いくつかのサブシステム、例えば、埋込み可能システム116と外部システム118とを含む、システム110の一部であってもよい。外部システム118を、ヒトの皮膚および下層組織を通って埋込み可能システム116および/または埋込み可能デバイス106に電力を供給し、それを再プログラミングするために使用することができる。
【0126】
外部サブシステム118は、コントローラー101に加えて、埋込み可能デバイス106に電力を供給するために使用される電源112のバッテリーを無線で再充電するための、電力供給ユニット102;および埋込み可能送受信機110と通信するように構成されたプログラミングユニット103のうちの1つ以上を含んでもよい。プログラミングユニット103と、埋込み可能送受信機110とは、通信サブシステムを形成してもよい。いくつかの実施形態においては、電源供給ユニット102は、プログラミングユニット103と一緒に収納される。他の実施形態においては、それらを別々のデバイス中に収納することができる。
【0127】
外部サブシステム118はまた、送電アンテナ104;およびデータ送信アンテナ105のうちの1つ以上を含んでもよい。送電アンテナ104を、低周波数(例えば、30kHz~10MHz)で電磁場を送信するために構成することができる。データ送信アンテナ105を、埋込み可能デバイス106をプログラミングまたは再プログラミングするためのデータを送信するように構成し、高周波数(例えば、1MHz~10GHz)で電磁場を送信するための送電アンテナ104に加えて用いることができる。皮膚中での温度は、送電アンテナ104の操作中に周囲の組織よりも2℃を超えて上昇しない。埋込み可能送受信機110の少なくとも1つのアンテナを、電源112の再充電可能なバッテリーを充電するために使用することができる送電アンテナ104によって生成された外部電磁場から電力を受信するように構成することができる。
【0128】
送電アンテナ104、データ送信アンテナ105、および埋込み可能送受信機110の少なくとも1つのアンテナは、共振周波数および品質係数(Q)などのある特定の特徴を有する。アンテナの1つの実現は、規定のインダクタンスを有するインダクターを形成するフェライトコアを有する、または有しないワイヤのコイルである。このインダクターを、共振コンデンサーおよび抵抗損失と連結して、共振回路を形成することができる。周波数は、送電アンテナ105によって生成される電磁場のものと一致するように設定される。埋込み可能送受信機110の少なくとも1つのアンテナの第2のアンテナを、外部システム118からの/へのデータ受信および送信のために埋込み可能システム116において使用することができる。1つより多いアンテナを埋込み可能システム116において使用する場合、これらのアンテナを、互いに30度回転させて、送電アンテナ104とのわずかなずれの間により良好な程度の送電効率を達成する。
【0129】
外部システム118は、1つ以上の生理学的パラメーターを示すシグナルを検出するための外部生理学的センサー121(示されていない)を含んでもよい。シグナルを、埋込み可能送受信機110の少なくとも1つのアンテナを介して埋込み可能システム116に伝達することができる。あるいは、またはさらに、シグナルを、外部システム116に伝達した後、埋込み可能送受信機110の少なくとも1つのアンテナを介して埋込み可能システム116に伝達することができる。埋め込まれた生理学的センサー111によって検出された1つ以上の生理学的パラメーターを示すシグナルに関しては、外部センサー121によって検出された1つ以上の生理学的パラメーターを示すシグナルを、生理学的データプロセッサー115によってプロセッシングして、1つ以上の生理学的パラメーターを決定する、および/またはメモリー114中に保存して、クローズドループ様式で埋込み可能システム116を操作することができる。埋め込まれた生理学的センサー111によって決定された1つ以上の生理学的パラメーターに加えて、またはその代わりに、外部センサー121から決定された1つ以上の生理学的パラメーターを使用することができる。
【0130】
本出願によるある実施形態においては、外部生理学的センサー121は、血流を示すシグナルを検出する超音波イメージングシステムである。
【0131】
システム100は、以下の例示的事象:埋込み可能システム116の異常な動作(例えば、過電圧);埋め込まれた生理学的センサー111からの異常な読出し(例えば、2℃を超える温度上昇または電極-組織接触面での過剰に高い、もしくは低い電気抵抗);体外で着用した生理学的センサー121(示されていない)からの異常な読出し;またはユーザーもしくはオペレーター(例えば、医師)によって検出された刺激に対する異常な応答において、膵臓関連交感神経の電気刺激を中止する安全保護特性を含んでもよい。安全保護特性を、コントローラー101を介して実現し、埋込み可能システム116に通信するか、または埋込み可能システム116内で内部的に実現することができる。
【0132】
外部システム118は、ユーザー(例えば、医師または対象)によって押下される際に、コントローラー101およびそれぞれの通信サブシステムを介してシグナルを送達して、電極108によって神経にシグナルを送達するように埋込み可能システム116のマイクロプロセッサー113を始動させる作動装置120(示されていない)を含んでもよい。
【0133】
外部システム118を含むが、特に、埋込み可能システム116を含む本発明のシステム100は、好ましくは、生体安定性かつ生体適合性の材料から作られるか、またはそれでコーティングされる。これは、デバイス/システムが両方とも体組織への曝露に起因する損傷から保護され、また、デバイス/システムが宿主による好ましくない反応(最終的には、拒絶をもたらし得る)を惹起するリスクを最小化する。デバイス/システムを作製する、またはコーティングするために使用される材料は、理想的には、バイオフィルムの形成に抵抗するべきである。好適な材料としては、限定されるものではないが、ポリ(p-キシリレン)ポリマー(パリレンとして知られる)およびポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。
【0134】
本発明の埋込み可能デバイス116は、一般的には、50g未満の重さであろう。
【0135】
一般
用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」ならびに「からなる(consisting)」を包含し、例えば、Xを「含む(comprising)」組成物は、Xだけからなってもよいし、追加の何か、例えば、X+Yを含んでもよい。
【0136】
単語「実質的に」は、「完全に」を排除せず、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まないものであってもよい。必要に応じて、単語「実質的に」を、本発明の定義から省略してもよい。
【0137】
数値xに関する用語「約」は、任意選択であり、例えば、x±10%を意味する。
【0138】
別途指摘しない限り、本明細書に記載のそれぞれの実施形態を、本明細書に記載の別の実施形態と組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0139】
【
図1A】
図1は、マウスにおける膵臓神経の解剖学的、電気生理学的および機能的特徴付けを示す。
図1Aは、エバンスブルー注射によって可視化された膵動脈および血管を示す、膵臓神経の肉眼的解剖の画像を示す(右)。腎臓(Kid)、十二指腸(Duo)、膵臓(Panc)、膵動脈(完全な矢頭)および腹部動脈(丸)、膵静脈(菱形)および神経(空の矢頭)。
【
図1B】
図1Bは、代表マウス(n=7)における膵臓神経の電気刺激後の示された組織におけるCAP記録(左)および振幅(右)を示す。平均+/-s.e.m.。
【
図1C】
図1Cは、td-TomatoTH-Creマウス(n=5)における示された組織の全組織標本試料の落射蛍光画像を示す。
【
図1D】
図1Dおよび
図1Eは、レーザースペックルによって測定される表面膵臓血流に対する膵臓神経の電気刺激の影響を示す。膵臓神経の電気刺激(450μA、10Hz、15sec)の前、間および後の代表的な色分け画像(
図1D)および定量化(
図1E)(n=7)。定量化を、点線で描かれた領域において実施した。
【
図1E】
図1Dおよび
図1Eは、レーザースペックルによって測定される表面膵臓血流に対する膵臓神経の電気刺激の影響を示す。膵臓神経の電気刺激(450μA、10Hz、15sec)の前、間および後の代表的な色分け画像(
図1D)および定量化(
図1E)(n=7)。定量化を、点線で描かれた領域において実施した。
【
図2A】
図2は、膵臓リンパ節(LN)におけるカテコールアミン性神経線維の可視化および電気生理学的特徴付けを示す。
図2Aは、低倍率および高倍率でのAlexa-647コンジュゲート化小麦胚芽凝集素(WGA)の注射後のtdTomatoTH-Creマウスに由来する膵臓LNの全組織標本の共焦点蛍光画像を示す。B細胞中でのTH発現の結果として赤色の蛍光をしめすB細胞濾胞を、矢頭で示す。
【
図2B】
図2Bおよび
図2Cは、膵臓神経の電気刺激(PNES)後のtdTomatoTH-Creマウスの膵臓LNにおける蛍光軸索電気的活動の記録を示す。特に、
図2Bは、FAP(左)およびPNES強度の関数としてのピーク振幅(右)を示す(n=4)。
図2Cは、FAPに対する連続的PNESの影響を示す。代表的なFAP(左)およびPNES周波数の関数としてのピーク振幅減少の定量化(右)(n=4)。
【
図2C】
図2Bおよび
図2Cは、膵臓神経の電気刺激(PNES)後のtdTomatoTH-Creマウスの膵臓LNにおける蛍光軸索電気的活動の記録を示す。特に、
図2Bは、FAP(左)およびPNES強度の関数としてのピーク振幅(右)を示す(n=4)。
図2Cは、FAPに対する連続的PNESの影響を示す。代表的なFAP(左)およびPNES周波数の関数としてのピーク振幅減少の定量化(右)(n=4)。
【
図2D】
図2Dは、PNES(450μA、10Hz)または疑似電気刺激後のNE含量を示す(n=10)。平均+/-s.e.m.。
【
図3A】
図3は、膵臓LNにおける免疫細胞の数および機能に対するPNESの組織特異的影響を示す。
図3Aは、膵臓の流入領域および非流入領域LNにおけるリンパ球数に対するPNES(450μA、10Hz、2mn、3回、3時間間隔)の影響を示す(n=14)。
【
図3B】
図3Bは、流入領域LNおよび脾臓におけるLPS誘導性サイトカインのmRNAレベルに対するPNES(450μA、10Hz、2mn、3回、3時間間隔)の影響を示す(n=8)。
【
図3C】
図3Cは、膵臓自己抗原交差提示に対するPNES(450μA、10Hz、2mn、3回/日)の影響を評価するために用いられた実験プロトコールの略図を示す(左)。PNESおよび疑似電気刺激後のCFSE標識CD8+ OVA特異的T細胞の代表的なFACSプロファイル(n=7)(中央)。プロプラノロールで処置した、または処置していないマウスにおける疑似電気刺激したマウスと比較したT細胞増殖(右)。平均+/-s.e.m.。
【
図4-1】
図4は、NODマウスにおける血糖、β細胞増殖および膵島炎に対するPNESの効果を示す。
図4A~
図4Dは、最近の糖尿病NODマウス(n=10)にマイクロカフ電極(cuff electrode)を埋め込んだことを示す。血糖が200mg/dlに達した時、PNES(左)または疑似電気刺激(右)を、1日3回、4~5日間にわたって印加した(450μA、10Hz、2mn)。PNESおよび疑似電気刺激後の糖尿病NODマウスにおける血糖。PNESおよび疑似電気刺激後、2ヶ月間にわたる代表的なマウス(
図4A)および血糖の上昇(n=10)(
図4B)。
【
図4-2】
図4Cおよび
図4Dは、PNESおよび疑似電気刺激の個々のセッション後、4日間にわたる血糖を示す。非対(
図4C)および対の表示(
図4D)。
【
図4-3】
図4Cおよび
図4Dは、PNESおよび疑似電気刺激の個々のセッション後、4日間にわたる血糖を示す。非対(
図4C)および対の表示(
図4D)。
【
図4-4】
図4Eは、PNESおよび疑似電気刺激後の糖尿病NODマウスにおける短期血糖を示す。
図4Fは、インスリン(赤色)およびBrdU(緑色)染色(左)後の膵臓切片の代表的な共焦点画像(左)、および膵島あたりのBrdU+インスリン+細胞の数(右)を示す(n=6)。
図4Gは、PNESおよび疑似電気刺激の2週後の重篤な、軽度の、および低い免疫細胞浸潤を示す膵島の割合を示す(n=3)。平均+/-s.e.m.。
【
図4-5】
図4Eは、PNESおよび疑似電気刺激後の糖尿病NODマウスにおける短期血糖を示す。
図4Fは、インスリン(赤色)およびBrdU(緑色)染色(左)後の膵臓切片の代表的な共焦点画像(左)、および膵島あたりのBrdU+インスリン+細胞の数(右)を示す(n=6)。
図4Gは、PNESおよび疑似電気刺激の2週後の重篤な、軽度の、および低い免疫細胞浸潤を示す膵島の割合を示す(n=3)。平均+/-s.e.m.。
【
図4-6】
図4Eは、PNESおよび疑似電気刺激後の糖尿病NODマウスにおける短期血糖を示す。
図4Fは、インスリン(赤色)およびBrdU(緑色)染色(左)後の膵臓切片の代表的な共焦点画像(左)、および膵島あたりのBrdU+インスリン+細胞の数(右)を示す(n=6)。
図4Gは、PNESおよび疑似電気刺激の2週後の重篤な、軽度の、および低い免疫細胞浸潤を示す膵島の割合を示す(n=3)。平均+/-s.e.m.。
【
図5】
図5は、PNES(800μA、0.1Hz)後のtdTomatoTH-Creマウスの膵臓LNにおける蛍光軸索電気的活動の記録を示す。培地へのテトロドトキシン(TTX)の添加後のピーク振幅。
【
図6】
図6は、膵臓LN中の骨髄細胞数に対するPNESの影響を示す。PNES(450μA、10Hz、2mn、3回、3時間間隔)後の膵臓流入領域LN中の骨髄細胞数(n=9)。平均+/-s.e.m.。
【
図7】
図7は、非糖尿病(A)および最近の糖尿病(B)NODマウスにおける非空腹時(左パネル)および空腹時(右パネル)の高血糖症に対するPNSの短期的効果を示す。平均+/-s.e.m.。
【
図8】
図8は、本発明に従って膵臓関連交感神経における電気刺激を実施するためのシステムの要素を例示するブロック図である。
【
図9-1】
図9は、NODマウスにおける血糖および膵島炎に対する連続的PNESの影響を示す。(a)実験プロトコールの略図。(b)個々のマウス(n=4匹/群)における連続的PNES後の血糖。(c)NOD-SCIDマウス(n=13匹/群)における糖尿病の発生率。
【
図9-2】(d)マウスあたりの膵島数ならびにPNESの2週後に重篤な、軽度の、および低い免疫細胞浸潤を示す膵島の割合。平均±S.E.M.(n=4匹/群)。(e)PNESの2週後の膵臓LN中の総細胞数(左パネル)ならびにB、CD4
+およびCD8
+T細胞の数(左パネル)。平均±S.E.M.(n=5~6匹/群)。
【
図10】
図10は、NODマウスにおけるPNESの最大1時間後までの血糖に対する影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0140】
実験的研究1
交感神経系(SNS)を含むいくつかの神経経路は、炎症を阻害する[12]。主なSNS神経伝達物質は、α-とβ-の両方のアドレナリン受容体(AR)に結合するノルエピネフリン(NE)およびエピネフリン(E)であり、特に、β2-ARは多くの免疫細胞によって発現される[13]。SNSによる炎症の制御は、炎症疾患を処置するためのこれらの神経の電気的シグナル伝達パターンの調節に基づく生体電子医薬として知られる新しいクラスの処置の展望をもたらす[14]。
【0141】
1型糖尿病(T1D)は、自己反応性免疫細胞によるインスリン産生膵臓β細胞の破壊の結果生じる自己免疫疾患である[1]。他の内臓器官と同様、膵臓は、SNSを含む自律神経系によって支配され、血糖の制御に寄与する[3]。本研究は、T1D患者における疾患進行を阻害するための生体電子医薬の使用のための方法を同定することを目的とする。
【0142】
方法
マウスを、Jackson Laboratory (RIP-OVA high)またはCharles River (NOD、C57/BL6、OT-I)を介して取得した。全てのマウスが、6~12週齢で使用したメスであった。RIP-OVA highトランスジェニックマウス9は、膵島中でOVAを発現し、OT-Iトランスジェニックマウスは、OVAのH2Kb限定(SIINFEKL)エピトープに特異的なTCRを発現する[15]。全ての動物の飼育および実験を、Inserm and European Union Guidelinesに従う条件下で実施した。全ての動物実験プロトコールは、地方および国家の委員会の認可を受けた。
【0143】
急性電気刺激のために(
図1B、1Dおよび2Dを参照されたい)、動物を、ケタミン(75mg/kg)およびキシラジン(60mg/kg)の混合物でi.p.で麻酔し、フック電極を膵臓神経および膵動脈の下に置いた。慢性実験のために(
図3および
図4を参照されたい)、動物をイソフルランで麻酔し、腎臓の隣の右腹部動脈の周囲の領域を露出させた。1mmの長さの100μmスリングマイクロカフ電極を、単離後に膵臓神経上に埋め込んだ(CorTec)。ワイヤを、腹筋上に置き、腹部から出した縫合点によって定位置で維持した。動物が引っ掻くのを避けるために、腹部を包帯で包んだ。外科手術の前後でモルヒネ誘導体を投与した(Buprecare(登録商標)、0.1mg/kg、i.p.、手術前に30分間および0.05mg/kg、s.c.、手術後、および2日後)。
【0144】
フック電極を膵臓神経および膵動脈上に置いた後、無線100システム(Multi Channel System)を用いるCAPの記録のために、白金記録電極を、膵臓神経、膵臓リンパ節(LN)、膵臓組織および肝臓上に置いた。参照を、近隣の組織に入れた。
【0145】
フック電極を膵臓神経および膵動脈上に置いた後、無線記録システム(W8、Multi-Channel Systems)を用いるCAPの記録のために、膵臓神経、膵臓LN、膵臓組織および肝臓上に白金-イリジウム記録電極(Phymep)を置いた。アース線/参照ワイヤを、近隣の組織に入れた。FAPのために、赤外線ビデオカメラ(Axiocam、Zeiss)を装備した正立顕微鏡(Zeiss)および蛍光の下で、含酸素人工脳脊髄液(ACSF)を用いて1ml/分の流量で表面かん流した、室温(20~25℃)の記録チャンバーに入れたtdTomatoTH-Creに由来する外植片上で、記録を実施した。膵臓神経を、MC-刺激原プログラム(Multichannel systems)によって操縦されるSTG 4002刺激装置(Multichannel system)に接続された吸引刺激電極中に導入した。1msの方形パルスおよび10~1500μAの強度を、刺激のために用いた。赤色蛍光軸索の近くに置いた、細胞外溶液で充填された場合、3~6Mの抵抗を有するホウケイ酸塩ガラスキャピラリー(Hilgenberg)から作られたピペットを用いて、記録を行った。pClamp10.0ソフトウェア(Molecular Devices)によって制御されたDigidata 3200インターフェース(Molecular Devices)を介して10kHzでデジタル処理され、3KHzでデジタル濾過された、Axopatch 200B(Axon Instruments)を用いて、シグナルを増幅した。全ての記録を、ファラデーケージ中で実施した。
【0146】
全ての記録を、ファラデーケージ中で実施した。
【0147】
麻酔した動物上での実験について、Master-8(A.M.P.I.)、PlexStim V2.3(Plexon)およびSTG 4002刺激装置(Multichannel system)を、それぞれ、CAP、膵臓血液かん流およびFAP記録のために用いた。意識のある動物上での全ての実験については、マウスを個々のケージに入れ、PlexStim V2.3(Plexon)刺激装置に接続した。特定されない限り、電気刺激の設定は、450μAのパルス振幅、2msのパルス幅(正および負)、10Hzの周波数で2分間の長方形の荷電平衡二相パルスであった。
【0148】
ノルエピネフリンレベルを測定するために、電気刺激の直後に膵臓LNを収獲し、液体窒素中で簡易凍結した。器官をプロセッシングし、NEを製造業者の推奨に従ってELISA(DLD Diagnostika GmbH)によって測定した。
【0149】
フローサイトメトリーのために、単一細胞懸濁液を、抗CD45(クローン30F11)、抗CD3(17A2)、抗CD4(RM4-5)、抗CD8α(53-6.7)、抗CD19(1D3)で染色した。全ての抗体は、BD Biosciencesからのものである。死細胞を、7-AAD染色を用いて排除した。データを、SP6800(Sony)フローサイトメーター上で獲得し、Kaluzaソフトウェアを用いて分析した。
【0150】
RT-PCRおよびQ-PCR。膵臓由来RNAを、Lysing Matrix Dチューブ(FastPrep、MP biomedical)を用いる機械的解離の後に製造業者の指示書(miRNEasy microキット、Quiagen)に従って単離した。RNAの量および品質を、Nanodropを用いて分析し、等量のRNAを用いて、QuantiTect逆転写キット(Quiagen)を用いるRT-PCRを実施した。定量的PCRを、SyberGreen Masterキット(Roche)およびLightCycler 480II(Roche)を用いて実施した。プライマーを、PrimerBank (Harvard University)に従って消化した。mRNAサイトカイン発現を、LightCyclerソフトウェア(Roche)を用いてGAPDHに対して正規化した。
【0151】
尾部から血液ドロップ(<10μl)を採取するFree Style Papillon Vision (Abbott)を用いて、血糖をモニタリングした。
【0152】
レーザースペックルのために、麻酔後、膵臓組織を露出させ、動物を、30~32℃で保持した加熱毛布上に置いた。膵臓を、Moor-FLPIレーザースペックルかん流(LSP)イメージャー(Moor instruments Ltd.)の約30cm下に置いた。スキャンモデルは低密度および25fpsのものであり、時間間隔は1sであり、露出時間は20msであり、10フレームをそれぞれの時点で継続的にスキャンした(10フレームを単一フレームに平均的にプロセッシングして、それぞれの時点での平均膵臓血液かん流を得た)。次いで、膵臓血液かん流画像を保存し、Moor-FLPI-V2.0ソフトウェアのImage Review Programによって分析した。それぞれのLSP画像中の同じ領域と共に目的の丸い領域(ROI)を、膵臓血液かん流を測定するために選択した。
【0153】
ヒストグラム分析において、取り出された膵臓を、10%中性ホルマリン中で24h固定し、アルコールで脱水し、パラフィン中で包埋し、ミクロトームを用いて8μmの厚さに切片化した。次いで、切片をヘマトキシリンおよびエオシンで染色し、膵島炎の等級を光学顕微鏡下で評価した。膵島炎の拡張を、正常、周辺への浸潤、50%未満の膵島領域の浸潤、または50%を超える膵島領域の浸潤のパーセンテージとして決定した。
【0154】
統計分析のために、studentのt検定(
図2D、3C、4B、4Cおよび4Dを参照されたい)またはMann-Whitney検定(
図2D、3A、3Bおよび4F)を実施して、それぞれガウスおよび非ガウス分布データの統計的差異を算出した。
【0155】
結果および考察
C57BL/6マウスの膵臓領域の肉眼的解剖により、膵頭部および十二指腸の一部に血液を供給し、50μm直径の神経様構造と結合した、腹部動脈から分岐する単一の動脈(直径500μm)が示された(
図1Aを参照されたい)。この構造が神経であったことを確認するため、および神経支配された組織を同定するために、フック電極をその上に置き、記録電極を内臓組織の上に置いた。電気刺激を印加し、化合物活動電位(CAP)を、膵臓リンパ節(LN)および膵頭部において記録したが、肝臓においては記録しなかった(
図1B)。この神経がカテコールアミン性であったかどうかを精査するために、チロシンヒドロキシラーゼ(TH)遺伝子プロモーターの下流にtdTomato蛍光タンパク質遺伝子を担持する蛍光リポーターtdTomatoTH-Creトランスジェニックマウスを用いた。膵臓神経様構造は、tdTomatoTH-Creにおいて赤色の蛍光を示したが、それらはカテコールアミン性神経線維を含有することを示していた(
図1C)。SNSが血管収縮を誘導する能力と一致して、高い周波数および振幅の電気刺激(20Hz、1mA)は、膵臓神経に印加した場合、膵臓の血流を減少させた(
図1Dを参照されたい)。赤色蛍光軸索も、膵臓LN髄質帯においても証明されたが、これらの神経が膵臓自体に投射していただけでなく、この組織に流入するLNにも投射していたことをさらに確認する(
図2Aを参照されたい)。膵臓LNに投射するカテコールアミン性神経線維を電気生理学的に特徴付けるために、膵臓神経を、吸引電極中に入れ、このLN内の赤色蛍光線維の場活動電位(FAP)を、微小電極を用いて記録した(
図2Bを参照されたい)。PNES強度が400μAを超えており(
図2Bを参照されたい)、テトロドトキシン(TTX)処理によって阻害された場合(
図5を参照されたい)、FAPは容易に検出された。周波数が10Hzより上であった場合(
図2C)、軸索興奮性の消耗が検出されたが、この神経が脱髄節後線維を含有していたことを示唆している[16]。
【0156】
治療的介入のために末梢神経電気刺激を用いるためには、電気的パラメーターを調整して、治療レベルの神経伝達物質の放出を可能にしながら、オフターゲット効果を最小化する必要がある。そのようなパラメーターを同定するために、異なる振幅および周波数を試験し、膵臓LN中のノルエピネフリン(NE)レベルを増加させながら(
図2Dを参照されたい)、膵臓の血流を減少させなかった(
図1Dを参照されたい)パラメーター(10Hz、450μA)を最終的に同定した。
【0157】
これらの結果に基づいて、これらのパラメーターを、残りの研究のために用いた。
【0158】
次に、膵臓LN中の免疫細胞の数および活性化に対するPNESの影響を精査した。麻酔のために用いられる薬物は生理学、より具体的には、免疫を阻害するため、意識のある動物における実験を可能にする、膵臓神経へのマイクロカフ電極の慢性的埋込みのための最小限に外傷的な手術手順を開発した。疑似刺激されたマウスと比較して、刺激されたマウスは、非流入領域LNではなく、膵臓流入領域LNにおいて(
図3Aを参照されたい)、骨髄細胞型ではなく、より多数のTおよびBリンパ球を示した(
図6を参照されたい)。この後者の結果は、LNからのリンパ球放出におけるβ2-ARの役割と一致する[17]。PNESはまた、脾臓ではなく、膵臓のLNにおける、LPSにより誘導される炎症性サイトカインmRNAレベルも減少させた(
図3Bを参照されたい)。抗原交差提示におけるβ2-ARの役割と一致して[18]、PNESは、膵島β細胞中でOVAを選択的に発現するRIP-OVAトランスジェニックマウスにおける、養子移入されたOVA特異的CD8+ TCRトランスジェニックT細胞の増殖の減少によって示されるように、膵臓の自己抗原交差提示を阻害した(
図3Cを参照されたい)。流入領域LNにおける免疫細胞蓄積と、LPSにより誘導される炎症性サイトカインmRNA産生の両方に対するPNESの効果は、β2-AR-/-において無効化されたが、これは、それらがNEのβ2-ARへの結合によって媒介されたことを示している(
図3Aおよび
図3Bを参照されたい)。β1/β2アドレナリン受容体アンタゴニストであるプロプラノロールを用いたさらなる実験により、PNES自己抗原交差提示の効果がβ-AR依存的であることが示された(
図3C)。
【0159】
T1Dの進行に対するPNESの影響を、3~6ヶ月齢の、膵島炎と自己免疫性糖尿病とを自発的に発症する非肥満糖尿病(NOD)マウスにおいて精査した。メスのNODマウスを、高血糖症について毎日モニタリングし、最近の糖尿病マウスの膵臓神経上にマイクロカフ電極を埋め込んだ(n=16)。外科的回復の後、血糖が200mg/dlに達したらすぐに、3~4日間にわたって1日3回、PNESを印加したか、または印加しなかった。血糖は、疑似電気刺激された動物と比較して、1ヶ月を超えるPNESセッションを受けたマウスにおいてよりゆっくりと増加した(
図4Aおよび
図4Bを参照されたい)。血糖に対するPNESの有益な影響は、セッション開始の2日後には早くも証明された(
図4Cを参照されたい)。4日目に、電気刺激されたマウスの80%が、疑似刺激された動物の10%と比較して血糖の減少を示した(
図4Dを参照されたい)。
【0160】
いくつかの基礎となる機構が、β細胞によるインスリン産生の直接的増加、膵島β細胞増殖の誘導およびβ細胞活性に対する浸潤免疫細胞の阻害効果の低下などの、血糖に対するPNESの有益な影響の原因となり得る。PNESは、最大で1時間にわたって糖尿病または非糖尿病マウスにおける血糖に対する影響を有しなかったが、それがインスリン産生を直接誘導しなかったことを示唆している(
図4Eおよび
図7を参照されたい)。膵臓β細胞増殖に対するPNESの影響を精査するために、マウスは、BrdUを受けながら、マイクロカフ電極を埋め込まれ、5日間にわたってPNESを受けた。BrdU+インスリン分泌細胞の定量化は、PNES群と疑似電気刺激群との間で有意差を示さなかったが、PNESがβ細胞増殖を誘導しなかったことを示唆している(
図4Fを参照されたい)。対照的に、膵島炎は、PNES開始の15日後に分析した場合、疑似刺激したマウスと比較して刺激したマウスにおいて軽減された(
図4Gを参照されたい)。
【0161】
結論
まとめると、本発明者らは、膵臓リンパ系(例えば、LN)に投射するカテコールアミン性神経を同定し、この神経の電気刺激が、オフターゲット効果を最小限にしながら、NODマウスにおけるT1D進行を阻害することを証明した。血糖に対するPNESの有益な影響は、膵臓LNにおける炎症性サイトカインレベルおよびリンパ球の蓄積の減少、抗原交差提示および膵島炎の低減によって示唆されるように、免疫媒介性である可能性があった。膵臓関連交感神経の電気刺激を用いてT1Dの進行を阻害することができるという概念実証を提供することの他に、本研究は、免疫媒介性炎症疾患を処置するための末梢神経の電気的シグナル伝達パターンの調節に基づく生体電子医薬として公知の新しいクラスの処置を支持する。
【0162】
実験的研究2
次に、3~6ヶ月齢の、自己免疫性糖尿病を自発的に発症するNODマウスにおけるT1Dの進行に対するPNESの影響を精査した。糖尿病と診断されたら、NODマウスの膵臓神経上にマイクロカフ電極を埋め込み、1日後に、6週間にわたって1日3回、PNESを印加した(
図9a)。
【0163】
方法
マウス
C57BL/6、NOD、NOD-SCIDおよびOT-112マウスを、Charles Riverから購入した。RIP-mOVA13、tdTomatoTH-Cre 14、15およびADRB2koマウスを、The Jackson Laboratoryから購入し、少なくとも10世代にわたってC57BL/6バックグラウンド上で戻し交配した。別途指摘しない限り、全ての実験を、メスの8~12週齢のマウスを用いて実施した。マウスを、自由裁量で食餌を与えて12時間、明/暗サイクル(7am/7pmで光をオン/オフ)で飼育した。全ての動物の飼育および実験を、Inserm and European Union Guidelinesに従う条件下で実施した。全ての動物実験プロトコールは、地方および国家の委員会の認可を受けた。
【0164】
電極および外科手術
麻酔した動物における研究のために、マウスを、ケタミン(75mg/kg)およびキシラジン(60mg/kg)の混合物の腹腔内注射によって麻酔し、フック電極を膵臓神経の下に置いた。意識のある動物における研究のために、マウスをイソフルランで麻酔し、腎臓の隣の右腹部動脈の周囲の領域を露出させた。1mmの長さの100μmスリングマイクロカフ電極(CorTec)を、膵臓神経上に埋め込んだ。
【0165】
電気刺激
マウスを個々のケージに入れ、PlexStim V2.3(Plexon)またはMAPS(Axonic)刺激装置に接続した。特定されない限り、電気刺激の設定は、450μAのパルス振幅、2msのパルス幅(正および負)、10Hzの周波数で2分間の長方形の荷電平衡二相パルスであった。
【0166】
NOD-SCIDマウスへの養子細胞移入
明白な糖尿病NODマウスに由来する脾細胞を調製し、6週齢のNOD-SCIDマウスに静脈内注入した(5x106個の細胞/マウス)。
【0167】
血糖
尾部から収獲された血液ドロップ(<10μl)上で、Free Style Papillon Vision (Abbott)を用いて、血糖をモニタリングした。連続2日にわたって血糖が250mg/dlを超えた場合、NODおよびNOD-SCIDマウスを糖尿病と考えた。
【0168】
フローサイトメトリー
単一細胞懸濁液を、抗CD45(クローン30F11)、抗CD3(17A2)、抗CD4(RM4-5)、抗CD8α(53-6.7)、抗CD19(1D3)で染色した。全ての抗体を、BD Biosciencesから購入した。死細胞を、7-AAD染色を用いて排除した。データを、SP6800(Sony)フローサイトメーター上で獲得し、Kaluzaソフトウェアを用いて分析した。
【0169】
統計
糖尿病の進行を、Kaplan-Meierの曲線を用いてプロットし、群間の差異を、ログランク検定を用いて見積もった。サンプル分布の正規性を、Kolmogorov-Smirnov検定を用いて評価した。2群間の比較のために、統計的有意性を、必要に応じて、対応のある、または対応のないStudentのt検定またはMann-WhitneyのU検定を用いて評価した。より多くの群間の比較のために、統計的有意性を、一元配置分散分析、次いで、Tukeyのポストホック検定を用いて評価した。全ての統計分析を、GraphPad Prism v.6を用いて実施した。
【0170】
結果および考察
マウスは、外科手術後に正常血糖に戻ったが、これは麻酔剤の抗炎症効果に起因する可能性が高い現象である[19~20]。しかしながら、血糖は、本格的な糖尿病をもたらす疑似刺激されたマウスにおいて再び増加したが、PNES動物においては、それは150mg/mlより下に留まった(
図9b)。PNESは、最大1時間にわたって糖尿病NODマウスにおける血糖に影響しなかったが、それがインスリン分泌に直接影響しなかったことを示唆している(
図10)。
【0171】
PNES媒介性保護の基礎となる機構を精査するために、本発明者らは、NODマウスに由来する糖尿病誘発性T細胞を、免疫不全同系NOD-SCIDレシピエントに導入するT1Dのよく特徴付けられた同期モデルを用いた[21]。全て(13匹中13匹)の疑似刺激されたマウスが、養子細胞移入後4週以内にT1Dを発症したが、PNESレシピエントはわずか55%(13匹中7匹)が発症した(p=0.015、
図9c)。これは、PNESが病原性エフェクターT細胞に対して作用することによってT1Dの進行を阻害したことを示す。
【0172】
別の設定の実験において、マウスを、養子細胞移入の2週後に犠牲にし、膵島炎と、膵臓LN中のリンパ球数との両方について分析した。PNESマウスは、疑似刺激されたマウスよりも2.7倍多い膵島を有していた(84.5±20.3対31.75±3.6、p=0.029)(
図9d)。さらに、非浸潤膵島の割合は、PNESマウスにおいて高かった(55%対17.5%)(
図9d)。さらに、PNESおよび疑似刺激されたマウスは、非流入領域LNにおいて類似する数のリンパ球を示したが、PNESマウスは、流入領域LNにおいては4~5倍多いリンパ球を有しており(29.0±12.0x10
4個対6.0±1.5x10
4個/マウス、p=0.006)、本発明者らがC57BL/6マウスにおいて観察したものと同様の結果であった(
図9e)。
【0173】
結論
これらの結果は、非迷走神経への電気刺激の印加が、T1Dなどの免疫媒介性炎症障害の処置または防止のための治療効果を有し得ることを示している。
【0174】
参考文献
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[21] Christianson, S, et al. (1993). Diabetes, 42:44-55.
本開示は以下の実施形態を包含する。
[1] 対象の膵臓関連交感神経の上または周囲への配置にとって好適な、少なくとも1つの神経インターフェースエレメント、好ましくは、電極と、該少なくとも1つの神経インターフェースエレメントを介して膵臓関連交感神経に印加されるシグナルを生成させるためのシグナル生成器とを含む埋込み可能デバイスまたはシステムであって、シグナルが、膵臓関連交感神経の神経活動を可逆的に調節して、対象における生理学的パラメーターの変化をもたらし、生理学的パラメーターの変化が、血中インスリンレベルの増加、(空腹時)血糖値の低下、糖化ヘモグロビン(HbAlc)レベルの低下、全身的な炎症(例えば、循環サイトカイン、および/もしくはC反応性タンパク質のレベルによって示される)または膵島炎などの、膵臓における局所的な炎症(例えば、C-ペプチド、自己反応性T細胞、および/もしくは自己抗体のレベルによって示される)の低減、膵臓におけるカテコールアミンレベルの増加、膵臓におけるGABAレベルの増加、ならびに膵臓における膵臓β細胞の数の増加からなる群の1つ以上である、埋込み可能デバイスまたはシステム。
[2] 生理学的パラメーターの変化が、血中インスリンレベルの増加、(空腹時)血糖値の低下、糖化ヘモグロビン(HbAlc)レベルの低下、全身的な炎症(例えば、循環サイトカイン、および/もしくはC反応性タンパク質のレベルによって示される)または膵島炎などの、膵臓における局所的な炎症(例えば、C-ペプチド、自己反応性T細胞、および/もしくは自己抗体のレベルによって示される)の低減、ならびに膵臓におけるカテコールアミンレベルの増加からなる群の1つ以上である、実施形態1に記載のデバイスまたはシステム。
[3] 膵臓関連交感神経が、膵臓のリンパ系に分布する膵臓関連交感神経である、実施形態1または2に記載のデバイスまたはシステム。
[4] シグナルが、膵臓関連交感神経の神経活動を刺激する、実施形態1~3のいずれかに記載のデバイスまたはシステム。
[5] 少なくとも1つの神経インターフェースエレメントが、膵臓関連交感神経に取り付けられる、実施形態1~4のいずれかに記載のデバイスまたはシステム。
[6] 少なくとも1つの神経インターフェースエレメントが、少なくとも1つの電極であり、シグナル生成器が、該少なくとも1つの電極を介して膵臓関連交感神経に印加される電気的シグナルを生成するように構成される電圧または電流源である、実施形態1~5のいずれかに記載のデバイスまたはシステム。
[7] 少なくとも1つの電極がカフ電極である、実施形態6に記載のデバイスまたはシステム。
[8] 少なくとも1つの電極が、電極アレイの形態である、実施形態7に記載のデバイスまたはシステム。
[9] シグナルが、膵臓のリンパ系に分布する神経線維の神経活動を選択的に刺激する、実施形態1~8のいずれかに記載のデバイスまたはシステム。
[10] 電気的シグナルが、0.1Hz~100Hz、好ましくは、1Hz~20Hz、より好ましくは1Hz~10Hzの周波数を有する、実施形態6~9のいずれかに記載のデバイスまたはシステム。
[11] 電気的シグナルが、0.01mA~10mA、好ましくは、0.01mA~5mAの電流を有する、実施形態6~10のいずれかに記載のデバイスまたはシステム。
[12] 電気的シグナルが、陰極パルスおよび陽極パルスを含む荷電平衡DCシグナルである、実施形態6~11のいずれかに記載のデバイスまたはシステム。
[13] 1つ以上の生理学的パラメーターを示す1つ以上のシグナルを検出するため;1つ以上のシグナルから、1つ以上の生理学的パラメーターを決定するため;生理学的パラメーターの悪化を示す1つ以上の生理学的パラメーターを決定するため;および少なくとも1つの電極を介して膵臓関連交感神経にシグナルを印加させるための検出器(例えば、生理学的センサーサブシステム)を含む、実施形態1~12のいずれかに記載のデバイスまたはシステム。
[14] 健康な対象における生理学的パラメーターに関するデータを保存するためのメモリーをさらに含み、生理学的パラメーターの悪化を示す1つ以上の生理学的パラメーターの決定が、1つ以上の生理学的パラメーターと、データとを比較することを含む、実施形態13に記載のデバイスまたはシステム。
[15] コントローラーからの制御シグナルを受信し、前記1つ以上の制御シグナルの検出時に、少なくとも1つの電極を介して膵臓関連交感神経に電気的シグナルを印加させるための通信サブシステムを含む、実施形態1~14のいずれかに記載のデバイスまたはシステム。
[16] シグナル生成器が、有限の期間にわたって電気的シグナルを印加するように構成される、実施形態1~15のいずれかに記載のデバイスまたはシステム。
[17] 膵臓関連交感神経における神経活動を可逆的に調節する方法であって、(i)本発明のデバイスまたはシステムを対象に埋め込むこと;(ii)神経インターフェースエレメントを、対象中の膵臓関連交感神経とシグナル伝達接触するように配置すること;および必要に応じて、(iii)デバイスまたはシステムを活性化することを含む、方法。
[18] 1型糖尿病(T1D)を処置するためのものである、実施形態17に記載の方法。
[19] 1型糖尿病(T1D)を防止するためのものである、実施形態17に記載の方法。
[20] GABA、GABA類似体、またはGABA増強剤を対象に投与することを含む、実施形態17~19のいずれかに記載の方法。
[21] 対象において膵臓関連交換神経における神経活動を可逆的に調節することによって、対象におけるT1Dを処置または防止するためのデバイスまたはシステムの使用。
[22] GABA、GABA類似体、またはGABA増強剤を対象に投与することを含む、実施形態21に記載の使用。
[23] GABA増強剤が、ジアゼパム、アルプラゾラム、クロナゼパム、ロラゼパム、またはクロラジアゼポジドなどのベンゾジアゼピン系;フェノバルビタール、ペントバルビタール、ブトバルビタール、アモバルビタール、セコバルビタールまたはチオペンタールなどのバルビツール酸系;バクロフェン;アカンプロセート;プレガバリン;ガバペンチン;チアガビン;ラモトリギン;トピラメート;アロプレグナロンまたはガナキソロンなどの神経活性ステロイド;サティベックスなどのナビキシモルス;およびそれらの組合せからなる群から選択される、実施形態20に記載の方法または実施形態22に記載の使用。
[24] 活動電位が改変された神経においてde novoで生成されるように、荷電粒子が膵臓関連交換神経の神経膜の可逆的脱分極を引き起こす、T1Dを処置または防止する方法における使用のための荷電粒子。
[25] 荷電粒子が、0.1Hz~100Hz、好ましくは、1Hz~20Hz、より好ましくは、1Hz~10Hzの周波数;および0.01mA~10mA、好ましくは、0.01mA~5mAの電流を有する電気的シグナルによって定義される用量レジメンに従って膵臓関連交換神経に投与される、T1Dを処置または防止する方法における使用のための荷電粒子。
[26] 1個以上の電子である、実施形態24または25に記載の使用のための荷電粒子。
[27] 実施形態1~25のいずれかに記載のシステムまたはデバイスの1つ以上の神経インターフェースエレメントが取り付けられた改変された膵臓関連交感神経であって、1つ以上の神経インターフェースエレメントが、神経とシグナル伝達するように接触し、したがって、その神経を、その天然状態にある神経と区別することができ、神経が、T1Dに罹患するか、またはT1Dを発症するリスクがある対象中に位置する、改変された膵臓関連交感神経。
[28] 神経膜が電場によって可逆的に脱分極され、それにより改変された膵臓関連交感神経において活動電位がde novoで生成される、改変された膵臓関連交感神経。
[29] 神経膜によって結合した改変された膵臓関連交感神経であって、正常な状態の神経に沿って活動電位を伝播するために神経の電気的膜電位を変化させる神経膜を渡って移動可能なカリウムおよびナトリウムイオンの分布を含み;膵臓関連交感神経の少なくとも一部が、神経内のカリウムおよびナトリウムイオンの濃度を改変する一時的な外部電場の印加を受け、神経膜の脱分極を引き起こすことによって、破壊された状態で、その部分を渡る活動電位をde novoで一時的に生成し;外部電場が除去されたら、神経がその正常な状態に戻る、改変された膵臓関連交感神経。
[30] 実施形態1~29のいずれかに記載の方法に従って膵臓関連交感神経の神経活動を調節することによって得られる、改変された膵臓関連交感神経。
[31] 膵臓関連交感神経とシグナル伝達するように接触する本発明のデバイスまたはシステムを制御する方法であって、デバイスまたはシステムに制御指示を送信するステップを含み、それに応答してデバイスまたはシステムが膵臓関連交感神経にシグナルを印加する、方法。
[32] 膵臓関連交感神経における神経活動を可逆的に調節する方法を受けている、受けていた、または受けようとしている対象におけるT1Dを処置または防止する方法における使用のためのGABA、GABA類似体、またはGABA増強剤。
[33] GABA増強剤が、ジアゼパム、アルプラゾラム、クロナゼパム、ロラゼパム、またはクロラジアゼポジドなどのベンゾジアゼピン系;フェノバルビタール、ペントバルビタール、ブトバルビタール、アモバルビタール、セコバルビタールまたはチオペンタールなどのバルビツール酸系;バクロフェン;アカンプロセート;プレガバリン;ガバペンチン;チアガビン;ラモトリギン;トピラメート;アロプレグナロンまたはガナキソロンなどの神経活性ステロイド;サティベックスなどのナビキシモルス;およびそれらの組合せからなる群から選択される、実施形態32に記載の使用のためのGABA、GABA類似体、またはGABA増強剤。
[34] 膵臓関連交感神経における神経活動を可逆的に調節する前記方法が、実施形態1~26または31のいずれかに記載のデバイス、システム、方法、使用または荷電粒子を含む、実施形態32または33に記載の使用のためのGABA、GABA類似体、またはGABA増強剤。
[35] 実施形態24、25または26に記載の荷電粒子との同時的使用、別々の使用または逐次的使用のための、実施形態32、33または34のいずれかに記載の使用のためのGABA、GABA類似体、またはGABA増強剤。