(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】フェノール樹脂混合物、硬化性樹脂組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/40 20060101AFI20221018BHJP
【FI】
C08G59/40
(21)【出願番号】P 2022548392
(86)(22)【出願日】2022-03-09
(86)【国際出願番号】 JP2022010360
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2021048212
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 篤彦
(72)【発明者】
【氏名】中西 政隆
(72)【発明者】
【氏名】井上 一真
【審査官】岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-070303(JP,A)
【文献】特開2015-067615(JP,A)
【文献】特開2014-210860(JP,A)
【文献】特開2013-006328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)または下記式(2)で表されるフェノール樹脂(A)と、融点が70~300℃である結晶状のアルキル置換ビフェノール化合物(B)とを含有し、成分(A)と成分(B)の重量比率が95/5~85/15であるフェノール樹脂混合物。
【化1】
(式(1)中、複数存在するR
1、pはそれぞれ独立して存在し、R
1は水素原子、
または炭素数1~
3のアルキル
基を表し、pは0
または1の実数である。nは繰り返し数であり、1~20の実数である。)
【化2】
(式(2)中、複数存在するR
1、pはそれぞれ独立して存在し、R
1は水素原子、
または炭素数1~
3のアルキル
基を表し、pは0
または1の実数である。nは繰り返し数であり、1~20の実数である。)
【請求項2】
20℃において半晶状を示し、かつ水酸基当量が130~200g/eqである請求項1に記載のフェノール樹脂混合物。
【請求項3】
150℃におけるICI溶融粘度(コーンプレート法)が0.001~0.20Pa・sである請求項1または2に記載のフェノール樹脂混合物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のフェノール樹脂混合物とエポキシ樹脂を含有する硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の硬化性樹脂組成物を硬化した硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフェノール樹脂混合物、硬化性樹脂組成物、およびその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体封止材分野において、フェノール樹脂はエポキシ樹脂の硬化剤として使用されている。近年は、その発展に伴い、樹脂組成物の高純度化をはじめ耐湿性、密着性、誘電特性、フィラー(無機または有機充填剤)を高充填させるための低粘度化、成型サイクルを短くするための反応性のアップ等の諸特性の一層の向上が求められている。
【0003】
また、半導体パッケージの形状はその変遷に従い、薄層化、スタック化、システム化、三次元化と複雑になっており、そのワイヤ配線の狭ピッチ化、細線化がますます進んできているため、樹脂組成物の流動性が悪いとワイヤスィープを誘発してしまう。さらに、ワイヤの接続部に負担がかかり悪影響を及ぼすようになってきた。
【0004】
さらに、フリップチップタイプのパッケージにおいて、安価製造方法という側面からアンダーフィルを使用せず、一気に封止してしまうというモールドアンダーフィル(以下、「MUF」という。)という手法が注目されている。当該方法においては、チップとパッケージ基板の非常に狭い隙間を樹脂が通り抜ける必要があるため、フィラーの微細化が重要となっており、一方、このフィラーの微細化により、表面積が大きくなることから、系の粘度が上昇し、ボイド(空隙)発生の原因となる。
【0005】
また、ウエハーレベルパッケージなど再配線層に使用する封止樹脂や、ビルドアップ層に使用される相関絶縁膜等においては層の厚みが薄いことが必要であり、また線膨張率を下げるため、微細フィラーの充填が必要であるため、同様に、樹脂組成物の低粘度化が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】“2008年 STRJ報告 半導体ロードマップ専門委員会 平成20年度報告”、第8章、p1-1、[online]、平成21年3月、JEITA(社)電子情報技術産業協会 半導体技術ロードマップ専門委員会、[平成24年5月30日検索]、<http://strj-jeita.elisasp.net/strj/nenjihoukoku-2008.cfm>
【文献】高倉信之他、松下電工技報 車関連デバイス技術 車載用高温動作IC、74号、日本、2001年5月31日、35-40頁
【特許文献】
【0007】
【文献】日本国特開2003-41096号公報
【文献】日本国特開2013-87137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
低粘度化の手法にはさまざま挙げられるが、一般的にはエポキシ樹脂やフェノール樹脂の低分子量化により低粘度化する手法が用いられている。しかしながら、エポキシ樹脂やフェノール樹脂を低分子量化すると、室温(本願においては例えば20℃を指す。)での形状が流動性を持ちやすくなってしまうため、室温での取り扱いが難しく(液状~水あめ~半固形等)、さらには樹脂組成物とした場合、ベタツキが出てしまうため、貯蔵やハンドリング性が困難となる。
【0009】
具体的には樹脂メーカから組成物メーカへ材料を納入する際に冷凍で輸送しないといけないため、エネルギーの大量使用につながる。また、輸送中の温度上昇でのブロッキング(塊になること)で取り扱いのできないものとなってしまう。また、輸送工程において問題はなくても、組成物メーカにて使用する際には室温に戻さないと使用できないため、その際の結露の発生や、室温に戻した際にブロッキングしてしまう問題、仕込み時の例えばホッパーの入り口で詰まってしまう等の問題が生じ得る。さらに、樹脂組成物を均質に混合するために、ボールミル等で粉砕しようとしても粉砕できず、釜内で固まってしまい、装置を破損するなどの問題がある。また出来上がった組成物にも同様の課題が生じる。
【0010】
こういった課題に対し、結晶性のエポキシ樹脂を用いることが検討されている(特許文献1)。しかしながら、成形時の流動性の低下に限界があること、組成物化したのち、フェノール樹脂と混ざることで結晶性が崩れハンドリング特性を維持するのが難しいなどの課題がある。また、一般に、結晶性エポキシ樹脂を用いる場合、混練機での溶融混練時に結晶性エポキシ樹脂の融点以上で混練しないとエポキシ樹脂が十分に溶融せず均一分散しないので、この溶融混合物を用いたエポキシ樹脂成形材料の成形品は不均一となり、成形品の強度が各部分によって異なるために半導体装置の特性が低下してしまう。しかし、溶融混練時に、この溶融混合物の温度が高いと、混練機内で硬化反応が進行してしまい、流動性の低下、成形時の未充填の原因となるゲル化物の発生等を招く恐れがある。または結晶性の高さから再結晶化を起こすため、加熱混練後でも結晶性が残存し、この残存結晶が成型時になって初めて溶融するため、硬化性が低い、バリやボイドが発生する、得られた半導体装置の表面にしみができやすい等の成形性に劣るおそれがある。
【0011】
一方、フェノール樹脂において結晶性を導入する試みもあるが、その結晶性の高さから局所的に結晶化が進行し、均質な樹脂組成物を得ることが難しい課題を有する。これに対し、特許文献2には、結晶性のフェノール化合物を用いた場合の溶け残りの課題を解決するため、溶融状態の4級ホスホニウム化合物を溶媒とし、その溶媒中に結晶性のフェノール化合物を完全溶解することで、溶け残りの発生しない保存安定性に優れる溶融混合物が得られることを開示している。しかしながら100℃程度での加熱溶融を伴うため、室温への冷却時に安定して均質な樹脂組成物が得られない可能性がある。
【0012】
本発明者らは前記したような実状に鑑み、鋭意検討した結果、20℃において半晶状であり、流動性とハンドリング性を両立させるフェノール樹脂混合物を見出し、本発明を完成させるに至った。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち本発明は、以下の[1]~[5]に関する。
[1]
下記式(1)または下記式(2)で表されるフェノール樹脂(A)と、融点が70~300℃である結晶状のアルキル置換ビフェノール化合物(B)とを含有し、成分(A)と成分(B)の重量比率が95/5~85/15であるフェノール樹脂混合物。
【0014】
【0015】
(式(1)中、複数存在するR1、pはそれぞれ独立して存在し、R1は水素原子、炭素数1~10のアルキル基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、ニトロ基、ニトリル基、アミノ基、または前述と同様の置換基を有しても良いフェニル基を表し、pは0~3の実数である。nは繰り返し数であり、1~20の実数である。)
【0016】
【0017】
(式(2)中、複数存在するR1、pはそれぞれ独立して存在し、R1は水素原子、炭素数1~10のアルキル基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、ニトロ基、ニトリル基、アミノ基、または前述と同様の置換基を有しても良いフェニル基を表し、pは0~3の実数である。nは繰り返し数であり、1~20の実数である。)
[2]
20℃において半晶状を示し、かつ水酸基当量が130~200g/eqである前項[1]に記載のフェノール樹脂混合物。
[3]
150℃におけるICI溶融粘度(コーンプレート法)が0.001~0.20Pa・sである前項[1]または[2]に記載のフェノール樹脂混合物。
[4]
前項[1]から[3]のいずれか一項に記載のフェノール樹脂混合物とエポキシ樹脂を含有する硬化性樹脂組成物。
[5]
前項[4]に記載の硬化性樹脂組成物を硬化した硬化物。
【発明の効果】
【0018】
本発明のフェノール樹脂混合物は非常に高い流動性とハンドリング特性に優れるため、生産性に寄与し、電気電子部品用絶縁材料及び積層板(プリント配線板、ビルドアップ基板など)や炭素繊維強化複合材料(以下、「CFRP」ともいう。)を始めとする各種複合材料、接着剤、塗料等に有用である。特に半導体素子を保護する半導体封止材料として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明のフェノール樹脂混合物は、下記式(1)または下記式(2)で表されるフェノール樹脂(以下、成分(A)とも称する。)と、融点が70~300℃である結晶状のアルキル置換ビフェノール化合物(B)(以下、成分(B)とも称する。)を含有する。
【0020】
【0021】
(式(1)中、複数存在するR1、pはそれぞれ独立して存在し、R1は水素原子、炭素数1~10のアルキル基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、ニトロ基、ニトリル基、アミノ基、または前述と同様の置換基を有しても良いフェニル基を表し、pは0~3の実数である。nは繰り返し数であり、1~20の実数である。)
【0022】
【0023】
(式(2)中、複数存在するR1、pはそれぞれ独立して存在し、R1は水素原子、炭素数1~10のアルキル基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、ニトロ基、ニトリル基、アミノ基、または前述と同様の置換基を有しても良いフェニル基を表し、pは0~3の実数である。nは繰り返し数であり、1~20の実数である。)
【0024】
前記式(1)、式(2)中のR1は水素原子、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましく、水素原子、炭素数1~3のアルキル基であることがさらに好ましく、水素原子であることが特に好ましい。pは0または1の実数であることが好ましく、0であることが特に好ましい。
【0025】
前記式(1)、式(2)中のnの値はフェノール樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、検出器:RI)の測定により求められた数平均分子量の値、あるいは分離したピークの各々の面積比から算出することが出来る。
【0026】
前記式(1)、式(2)中のnの値は通常1~20であり、1.1~20であることが好ましく、1.1~10であることがさらに好ましい。nが1未満の場合、結晶性が強く機械混錬しても均質な樹脂混合物を得ることができない。一方、nが20より大きい場合、溶融粘度が高く、流動性や高フィラー充填の観点から使用が難しい。
【0027】
前記式(1)、式(2)で表されるフェノール樹脂は公然知られた合成方法に基づき合成することもできるが、市場からも容易に入手することができる。例えば、前記式(1)で表されるフェノール樹脂はKAYAHARD GPH-65(日本化薬株式会社製、軟化点65℃)、前記式(2)で表されるフェノール樹脂はMEHC-7840-4S(明和化成株式会社製、軟化点58-65℃)として入手することができる。
【0028】
成分(B)はビフェノール化合物にアルキル基を導入することで成分(A)との相溶性を向上させたものであり、結晶性フェノール化合物の結晶性をある程度維持したまま、成分(A)に均一に半溶融・混合し、結晶成分を均質分散させることにより半晶状のフェノール樹脂混合物を得ることになる。本願において「半晶状」とは、樹脂が濁っていて透明でない状態であり、微結晶が樹脂中に、均一に分散している状態を指す。本願においては結晶状のアルキル置換フェノール樹脂は完全に溶融させず、結晶状態を維持させたまま分散し、均質な半晶状の樹脂組成物とし、有機フィラーのごとく使用することにより、フェノール樹脂混合物の流動性とハンドリング特性を両立させるものである。
言い換えると、有機フィラーとして成分(B)を含有する成分(A)をマトリックスとするフェノール樹脂混合物として用いることができる。
【0029】
したがって本願においては成分(B)の融点以下の温度で混練し、樹脂マトリックス中に均質分散することが重要となる。なお、混練後において、結晶状態を維持させ、均一に分散したフェノール樹脂混合物であるかどうかは、調製後のフェノール樹脂混合物の外観を目視で確認することにより判断することができる。例えば、不均一な樹脂と結晶のかたまりが分散した状態であれば、ビフェノール化合物が均質に分散していないことを表し、単に不透明の樹脂板の状態であれば、均一に分散していると判断できる。
【0030】
成分(B)の融点は通常70~300℃であり、好ましくは100~250℃である。70℃より低い場合、混練時の熱で完全溶融してしまい、結晶性を維持するのが難しい。また300℃より高い場合、硬化・成型時に結晶が溶融せず均一分散しないので、この成型材料は均質な硬化物を作ることが難しい。
なお、融点は、例えば、市販の示差走査熱量計(DSC)を用いて吸熱ピーク温度から求めることができる。
【0031】
また流動性向上のため、成分(B)の分子量は小さいほうが好ましく、好ましくは190~400であり、さらに好ましくは210~350、特に好ましくは240~300である。
また、成分(B)の水酸基当量は、95~200g/eq.であることが好ましく、105~175g/eq.であることがより好ましく、120~150g/eq.であることが特に好ましい。
【0032】
また、成分(B)において、置換されたアルキル基の数としては2~6が好ましい。結晶性の観点から置換されたアルキル基の数は2、4、6の偶数であることが好ましい。置換されたアルキル基として炭素数1~6のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、フェニル基、アリル基が挙げられる。
具体的にはジメチルビフェノール、テトラメチルビフェノール、ジアリルビフェノール、ジエチルビフェノール、テトラエチルビフェノール、ジフェニルビフェノールなどが挙げられる。
本発明においては置換されたアルキル基がメチル基、エチル基の場合、4~6置換タイプのビフェノール化合物が好ましく、フェニル基、アリル基であれば2置換タイプのビフェノール化合物が好ましい。アルキル基が小さいメチル基やエチル基の2置換タイプであるとその反応性が高いため、分子量が小さく初期粘度が低い場合でも、反応性が高くなり、結果的に流動性が落ちてしまうおそれがある。
一方、置換基の大きなフェニル基やアリル基であればその効果は大きく、4置換とすると逆に反応がしづらくなってしまうおそれがある。置換基の総炭素数は2~12が好ましく、特に4~10が好ましい。
【0033】
本発明に使用する成分(B)は市販されているものを用いてもよく、公知の方法で製造したものを用いてもよい。市販品として入手できる具体的な化合物としては、例えば、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’,5,5’-テトラメチルビフェニル(東京化成工業(株)製 融点223-225℃ 分子量242.32 置換基の総炭素数4)、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェノール(ソンウォンインターナショナルジャパン(株)製 融点162℃ 分子量214.26 置換基の総炭素数2)、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジフェニルジフェニル(三光化学(株)製) 融点147.7℃ 分子量338.41 置換基の総炭素数12)、3,3’-ジアリルビフェニル-4,4’-ジオール(三井化学ファイン(株)製 融点76℃ 分子量266.34 置換基の総炭素数6)等が挙げられるが、これらに限られない。
【0034】
本発明のフェノール樹脂混合物は、成分(A)と成分(B)を均一に混合することにより得られる。
ただし、成分(B)の融点以下の温度で混合し、結晶が分散するように混練混合することが好ましい。具体的には結晶状のアルキル置換ビフェール化合物の融点以下の温度で混練を行い、有機フィラーとして使用することが好ましい。この際、均質に結晶を分散させておかないと配合した成分(A)と成分(B)の比率が変わってしまうため、部分的な硬化不良が起こり、好ましくない。
具体的には100℃より低い温度で混錬することが好ましい。100℃を超えると室温への冷却過程で結晶性フェノール樹脂の凝集が進行し、結晶が均質に分散しない。また、加熱溶融した場合、得られたフェノール樹脂混合物のべたつきに影響し、取り出しが困難になる、製造プロセスにおいてブロッキング等を起こし、各々がくっついてしまうことで、正確な重量測定が困難になる、さらには仕込み口への投入が難しくなるなど生産性に問題が生じてしまうおそれがある。したがって、本発明においては融点以下の温度での混練・混合が好ましい。
【0035】
得られたタブレット状、パウダー状、シート状もしくは粒状の混合物においては20℃で保管してもべたつきがないことが特徴となる。
なお、混練・混合においては、押出機、ニーダ、ロール等を用いて充分に混合してフェノール樹脂混合物を得ることができる。
【0036】
本発明のフェノール樹脂混合物は、成分(A)と成分(B)の重量比率が通常95/5~85/15であり、好ましくは90/10~85/15である。成分(A)の重量比が95より大きいと、流動性が悪くなる。一方、成分(A)の重量比が85より小さいと、20℃においてフェノール樹脂混合物の一部が不均一に結晶化してしまう。すなわち、成分(A)と成分(B)の重量比率が95/5~85/15であることにより、高温においては流動性を有し、20℃ではべたつきのない均一な半晶状となることから、流動性とハンドリング性を兼ね備える。
【0037】
本発明のフェノール樹脂混合物の水酸基当量は、好ましくは130~200g/eqであり、さらに好ましくは163~200/eqであり、特に好ましくは186~200g/eqである。水酸基当量が130g/eqより小さい場合、官能基が多量に含まれることから硬化速度が速くなり、十分な流動性を得ることができないおそれがある。一方で、水酸基当量が200g/eqより大きい場合、硬化性が悪く、十分な硬度が得られない可能性がある。
【0038】
本発明の150℃におけるICI溶融粘度(コーンプレート法)は、好ましくは0.001~0.20Pa・sであり、さらに好ましくは0.005~0.15Pa・s、特に好ましくは0.01~0.1Pa・sである。ICI溶融粘度が0.001Pa・sより低い場合、溶融粘度が低すぎるためフィラーの分散状態を維持しづらく、0.20Pa・sより高い場合、十分な量のフィラーを充填することが出来ず、封止材の収縮率が高くなってしまう。
【0039】
本発明の硬化性樹脂組成物はエポキシ樹脂を含有する。
用いることができるエポキシ樹脂の具体例としては、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂などが挙げられる。具体的には、ビスフェノールA、ビスフェノールS、チオジフェノール、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’-ビフェノール、2,2’-ビフェノール、3,3’,5,5’-テトラメチル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジオール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス-(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p-ヒドロキシベンズアルデヒド、o-ヒドロキシベンズアルデヒド、p-ヒドロキシアセトフェノン、o-ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’-ビス(クロルメチル)-1,1’-ビフェニル、4,4’-ビス(メトキシメチル)-1,1’-ビフェニル、1,4-ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、アルコール類から誘導されるグリシジルエーテル化物、脂環式エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂、等シルセスキオキサン系のエポキシ樹脂(鎖状、環状、ラダー状、あるいはそれら少なくとも2種以上の混合構造のシロキサン構造にグリシジル基、および/またはエポキシシクロヘキサン構造を有するエポキシ樹脂)等の固形または液状エポキシ樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ただし、使用するエポキシ樹脂をすべて溶融混合した際の軟化点が40~180℃であることが好ましい。特に好ましくは40~150℃である。
【0040】
本発明の硬化性樹脂組成物には、無機充填剤を含有することができる。無機充填剤としては、結晶シリカ、溶融シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、フォステライト、ステアタイト、スピネル、チタニア、タルク等の粉体またはこれらを球形化したビーズ等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。本発明においては、半導体封止材に使用することを想定する場合には、特性のバランスの観点から結晶シリカ、溶融シリカ、アルミナが好ましい。
これら無機充填剤の含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物100質量%に対して70~96質量%を占める量が用いられることが好ましい。特に70~93質量%であることが好ましい。本発明においては特に流動性が高いため、無機充填剤が少なすぎると無機充填剤と樹脂のバランスがずれ、樹脂組成物の成型体の中で無機充填剤の多い部分と少ない部分が出てしまう等特性面で好ましくない。
また、無機充填剤の含有量が96%を超えると流動性が出せなくなってしまうため好ましくない。
【0041】
本発明の硬化性樹脂組成物において、フェノール樹脂混合物はエポキシ樹脂の硬化剤として作用する。本発明においては硬化剤として、本発明のフェノール樹脂混合物だけでなく、他の硬化剤との併用をしてもかまわない。
使用できる他の硬化剤としては、本発明のフェノール樹脂以外のフェノール系化合物、アミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、カルボン酸系化合物などが挙げられる。フェノール樹脂、フェノール化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、3,3’-ジメチル-4,4’-ビスフェノールA、3,3’-ジメチル-4,4’-ビスフェノールF、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビスフェノールA、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビスフェノールF、ビスフェノールS、フルオレンビスフェノール、テルペンジフェノール、4,4’-ビフェノール、2,2’-ビフェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフタレンジオール、トリス-(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、p-ヒドロキシベンズアルデヒド、o-ヒドロキシベンズアルデヒド、p-ヒドロキシアセトフェノン、o-ヒドロキシアセトフェノン、ジシクロペンタジエン、フルフラール、4,4’-ビス(クロロメチル)-1,1’-ビフェニル、4,4’-ビス(メトキシメチル)-1,1’-ビフェニル、1,4’-ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4’-ビス(メトキシメチル)ベンゼン等との重縮合物及びこれらの変性物、テトラブロモビスフェノールA等のハロゲン化ビスフェノール類、テルペンとフェノール類の縮合物などのポリフェノール類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
好ましいフェノール樹脂としては、フェノールアラルキル樹脂(芳香族アルキレン構造を有する樹脂)が挙げられ、特に好ましくはフェノール、ナフトール、クレゾールから選ばれる少なくとも一種を有する構造であり、そのリンカーとなるアルキレン部が、ベンゼン構造、ビフェニル構造、ナフタレン構造から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする樹脂(具体的にはザイロック、ナフトールザイロック、フェノールビフェニレンノボラック樹脂、クレゾール-ビフェニレンノボラック樹脂、フェノール-ナフタレンノボラック樹脂などが挙げられる。)である。
【0042】
アミン系化合物、アミド系化合物としては、例えば、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンより合成されるポリアミド樹脂などの含窒素化合物が挙げられる。
酸無水物系化合物、カルボン酸系化合物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ブタンテトラカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸無水物、メチルビシクロ[2,2,1]ヘプタン-2,3-ジカルボン酸無水物、シクロヘキサン-1,3,4-トリカルボン酸-3,4-無水物、などの酸無水物;各種アルコール、カルビノール変性シリコーン、と前述の酸無水物との付加反応により得られるカルボン酸樹脂が挙げられる。
その他としては、イミダゾール、トリフルオロボラン-アミン錯体、グアニジン誘導体の化合物などが挙げられる。
上記、他の硬化剤はこれらに限定されるものではない。また、これらは単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。本発明においては特に信頼性の面からフェノール系化合物の使用が好ましい。
【0043】
本発明の硬化性樹脂組成物において、エポキシ樹脂と硬化剤の使用量は、全エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.7~1.2当量が好ましい。エポキシ基1当量に対して、0.7当量に満たない場合、あるいは1.2当量を超える場合、いずれも硬化が不完全となり良好な硬化物性が得られない恐れがある。
【0044】
本発明の硬化性樹脂組成物には、さらに、硬化促進剤を含有することができる。
用い得る硬化促進剤の具体例としては、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾ-ル類、2-(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、テトラブチルアンモニウム塩、トリイソプロピルメチルアンモニウム塩、トリメチルデカニルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩などの4級アンモニウム塩、トリフェニルベンジルフォスフォニウム塩、トリフェニルエチルフォスフォニウム塩、テトラブチルフォスフォニウム塩などの4級ホスホニウム塩が挙げられる。4級塩のカウンターイオンはハロゲン、有機酸イオン、水酸化物イオンなど、特に指定は無いが、特に有機酸イオン、水酸化物イオンが好ましい。オクチル酸スズ等の金属化合物等が挙げられる。硬化促進剤の配合量は、エポキシ樹脂100質量部に対して0.01~5.0質量部が必要に応じ用いられる。
【0045】
更に本発明の硬化性樹脂組成物には、シランカップリング剤、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の離型剤、界面活性剤、染料、顔料、紫外線吸収剤等の種々の配合剤、各種熱硬化性樹脂を添加することができる。
【0046】
さらに本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じてバインダー樹脂を配合することも出来る。バインダー樹脂としてはブチラール系樹脂、アセタール系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ-ナイロン系樹脂、NBR-フェノール系樹脂、エポキシ-NBR系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。バインダー樹脂の配合量は、硬化物の難燃性、耐熱性を損なわない範囲であることが好ましく、樹脂成分100質量部に対して通常0.05~50質量部、好ましくは0.05~20質量部が必要に応じて用いられる。
【0047】
本発明の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて公知のマレイミド系化合物を配合することができる。用いうるマレイミド化合物の具体例としては、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、ポリフェニルメタンマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、2,2’-ビス〔4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、4,4’-ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4’-ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、ビフェニルアラルキル型マレイミドなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。マレイミド系化合物を配合する際は、必要により硬化促進剤を配合するが、前記硬化促進剤や、有機化酸化物、アゾ化合物などのラジカル重合開始剤など使用できる。
【0048】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記各成分を所定の割合で均一に混合することにより得られ、通常130~180℃で30~500秒の範囲で予備硬化し、更に、150~200℃で2~15時間、後硬化することにより充分な硬化反応が進行し、本発明の硬化物が得られる。又、硬化性樹脂組成物の成分を溶剤等に均一に分散または溶解させ、溶媒を除去した後硬化させることもできる。
【0049】
こうして得られる本発明の硬化性樹脂組成物は、耐湿性、耐熱性、高接着性、低誘電率、低誘電正接を有する。従って、本発明の硬化性樹脂組成物は、耐湿性、耐熱性、高接着性、低誘電率、低誘電正接の要求される広範な分野で用いることが出来る。具体的には、絶縁材料、積層板(プリント配線板、BGA用基板、ビルドアップ基板など)、封止材料、レジスト等あらゆる電気・電子部品用材料として有用である。又、成形材料、複合材料の他、塗料材料、接着剤、3Dプリンティング等の分野にも用いることが出来る。特に半導体封止においては、耐ハンダリフロー性が有益なものとなる。
【0050】
半導体装置は本発明の硬化性樹脂組成物で封止されたものを有する。半導体装置としては、例えばDIP(デュアルインラインパッケージ)、QFP(クワッドフラットパッケージ)、BGA(ボールグリッドアレイ)、CSP(チップサイズパッケージ)、SOP(スモールアウトラインパッケージ)、TSOP(シンスモールアウトラインパッケージ)、TQFP(シンクワッドフラットパッケージ)等が挙げられる。
【0051】
本発明の硬化性樹脂組成物の調製方法は特に限定されないが、各成分を溶剤等に分散または溶解させ、均一に混合し、必要に応じて溶剤を留去することで調製してもよいし、あるいはプレポリマー化してもよい。例えば本発明のフェノール樹脂混合物エポキシ樹脂、アミン化合物、マレイミド系化合物、シアネートエステル化合物、フェノール樹脂、酸無水物化合物などの硬化剤及びその他添加剤を、溶剤の存在下または非存在下において加熱することにより追加してプレポリマー化する。各成分の混合またはプレポリマー化は溶剤の非存在下では例えば押出機、ニーダ、ロールなどを用い、溶剤の存在下では攪拌装置つきの反応釜などを使用する。
【0052】
溶剤等を使用しないで均一に混合する手法としては50~100℃の範囲内の温度でニーダ、ロール、プラネタリーミキサー等の装置を用いて練りこむように混合し、均一な硬化性樹脂組成物とする。得られた硬化性樹脂組成物は粉砕後、タブレットマシーン等の成型機で円柱のタブレット状に成型、もしくは顆粒状の紛体、もしくは粉状の成型体とする、もしくはこれら組成物を表面支持体の上で溶融し0.05mm~10mmの厚みのシート状に成型し、硬化性樹脂組成物成型体とすることもできる。得られた成型体は0~20℃でべたつきのない成型体となり、-25~0℃で1週間以上保管しても流動性、硬化性がほとんど低下しない。
得られた成型体についてトランスファー成型機、コンプレッション成型機にて硬化物に成型することができる。
【0053】
本発明の硬化性樹脂組成物に有機溶剤を添加してワニス状の組成物(以下、単にワニスともいう。)とすることもできる。本発明の硬化性樹脂組成物を必要に応じてトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の溶剤に溶解させてワニスとし、ガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させて加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形することにより、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物とすることができる。この際の溶剤は、本発明の硬化性樹脂組成物と該溶剤の混合物中で通常10~70重量%、好ましくは15~70重量%を占める量を用いる。この範囲よりも溶剤量が少ないと、ワニス粘度が高くなり作業性が悪化し、溶剤量が多いと、硬化物にボイドを発生させる原因になる。また液状組成物であれば、そのまま例えば、RTM方式でカーボン繊維を含有する硬化性樹脂硬化物を得ることもできる。
【0054】
本発明の硬化物は各種用途に使用できる。
例えば、接着剤、塗料、コーティング剤、成形材料(シート、フィルム、FRP等を含む)、絶縁材料(プリント基板、電線被覆等を含む)、封止剤の他、他樹脂等への添加剤等が挙げられる。接着剤としては、土木用、建築用、自動車用、一般事務用、医療用の接着剤の他、電子材料用の接着剤が挙げられる。これらのうち電子材料用の接着剤としては、ビルドアップ基板等の多層基板の層間接着剤、ダイボンディング剤、アンダーフィル等の半導体用接着剤、BGA補強用アンダーフィル、異方性導電性フィルム(ACF)、異方性導電性ペースト(ACP)等の実装用接着剤等が挙げられる。
特に本発明においては、半導体の封止材として主に用いられるが、同組成物を基板として使用する手法やモールドアンダーフィル(MUF)として使用することもできる。
【0055】
具体的に現在用いられている封止剤の主な用途としてはコンデンサ、トランジスタ、ダイオード、発光ダイオード、IC、LSIなど用のポッティング、ディッピング、トランスファーモールド封止、QFP、BGA、CSPなどのICパッケージ類実装時の封止(補強用アンダーフィルを含む)などを挙げることができる。
【実施例】
【0056】
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、以下において部は特に断わりのない限り質量部である。尚、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
以下に実施例で用いた各種分析方法について記載する。
ICI溶融粘度:JIS K 7117-2(ISO3219)に準拠
【0057】
[実施例1~4、比較例1~3]
KAYAHARD GPH-65(前記式(1)で表されるフェノール樹脂、日本化薬株式会社製、融点65℃)、MEHC-7800-4S(前記式(2)で表されるフェノール樹脂、明和化成株式会社製、融点58-65℃)、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’,5,5’-テトラメチルビフェニル(略:TMBP、東京化成工業(株)製 融点223-225℃ 分子量242.32 置換基の総炭素数4)を表1に示す割合でミキシングロールにて80℃で15分間混錬混合を行い、フェノール樹脂混合物を調製した。
【0058】
[外観観察]
得られたフェノール樹脂混合物を室温(20℃)にて外観を目視で観察した。
結晶のかたまりがないもの、すなわち成分(B)が結晶状態を維持したまま均一に分散した状態であるものを〇、結晶のかたまりがあるものを×、として評価した。
【0059】
[べた付き感]
得られたタブレットの表面べたつき感を評価した。評価方法としては、得られたタブレットに10秒間指を押し付けることで塗膜のべたつき度合いを評価した。
○・・・べたつきなくさらさらとした表面である。
△・・・べたつきはあるが、指には貼り付かない。
×・・・非常にべたつき、指に貼り付く。
【0060】
【0061】
[実施例5、6、比較例4]
[スパイラルフロー試験]
エポキシ樹脂、フェノール樹脂混合物(実施例3、4および比較例3)、シリカフィラー、硬化促進剤を表2の割合でミキシングロールにて80℃で25分間混練混合を行った。続いて、アルキメデススパイラル金型とトランスファー成型機を用いて、以下の条件でスパイラルフロー試験を行った。
金型:EMMI-1-66に準拠したもの
金型温度:175℃
トランスファー圧力:70kgf/cm2
プレス:5tプレス、ポット径:30mm
注入時間:1秒
成形時間:120秒
【0062】
[ゲルタイム]
表2記載の硬化性樹脂組成物の適量を金属製ヘラで175℃の熱板に置き、金属製ヘラを使ってかき混ぜ、試料に粘着性がなくなり、熱板から剥がれるようになった時または粘着性がなくなった時間を測定した。
【0063】
スパイラルフロー試験ではその値が大きいほど流動性が良いことを示している。ゲルタイムは封止材を一定温度で加熱したとき、流動性を失うまでの時間であり硬化特性に関し、適宜選択できる。
【0064】
【0065】
NC-3000:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、エポキシ当量277g/eq)
MSR-2102:高純度真球状シリカフィラー(株式会社龍森製)
TPP:トリフェニルホスフィン(純正化学株式会社製)
【0066】
表1、2より、本発明のフェノール樹脂混合物は、ハンドリング性、および流動性に優れることが確認できた。
【0067】
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。
なお、本願は、2021年3月23日付で出願された日本国特許出願(特願2021-048212)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
以上のことから、本発明のフェノール樹脂混合物は高い流動性とハンドリング性を有しつつ、生産性および成型性に優れることがわかる。従って、本発明の硬化性樹脂組成物は、電気電子部品用絶縁材料及び積層板(プリント配線板、ビルドアップ基板など)や炭素繊維強化複合材料(以下、「CFRP」ともいう。)を始めとする各種複合材料、接着剤、塗料等に有用である。特に半導体素子を保護する半導体封止材料として有用である。
【要約】
下記式(1)または下記式(2)で表されるフェノール樹脂(A)と、融点が70~300℃である結晶状のアルキル置換ビフェノール化合物(B)とを含有し、成分(A)と成分(B)の重量比率が95/5~85/15であるフェノール樹脂混合物。
【化1】
(式(1)中、複数存在するR
1、pはそれぞれ独立して存在し、R
1は水素原子、炭素数1~10のアルキル基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、ニトロ基、ニトリル基、アミノ基、または前述と同様の置換基を有しても良いフェニル基を表し、pは0~3の実数である。nは繰り返し数であり、1~20の実数である。)
【化2】
(式(2)中、複数存在するR
1、pはそれぞれ独立して存在し、R
1は水素原子、炭素数1~10のアルキル基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、ニトロ基、ニトリル基、アミノ基、または前述と同様の置換基を有しても良いフェニル基を表し、pは0~3の実数である。nは繰り返し数であり、1~20の実数である。)