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  • 特許-画像形成装置及び画像形成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】画像形成装置及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20221018BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
G03G9/097 365
G03G15/20
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017134687
(22)【出願日】2017-07-10
(65)【公開番号】P2019015909
(43)【公開日】2019-01-31
【審査請求日】2020-06-15
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀口 治男
(72)【発明者】
【氏名】高橋 聖二郎
【合議体】
【審判長】松波 由美子
【審判官】井口 猶二
【審判官】小濱 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-49837(JP,A)
【文献】特開昭63-155056(JP,A)
【文献】特開平3-118550(JP,A)
【文献】特開2007-140177(JP,A)
【文献】特開2000-181140(JP,A)
【文献】特開2011-209318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/08-9/097
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂と紫外線吸収剤とを含むトナー粒子を含有するトナーを用いた画像形成方法であって、
前記結着樹脂が、スチレン・アクリル樹脂を含有し、
前記紫外線吸収剤が、180~400nmの波長領域に最大吸収波長を持ち、少なくとも0℃以上の環境下では励起状態から異性化又は結合開裂の構造変化を伴わずに、無輻射失活により失活する化合物であり、
前記紫外線吸収剤が、トリアジン系紫外線吸収剤及びジベンゾイルメタン系紫外線吸収剤から選択される少なくとも1種であり、
前記紫外線吸収剤の含有率が、トナー粒子の総質量に対し、0.1~50質量%の範囲内であり、かつ、
前記トナーを用いて形成されたトナー像を記録媒体上に転写する工程と、
前記記録媒体上に転写された前記トナー像に対して、放射光源から、300~405nmの波長領域にある最大発光波長±20(nm)の光を照射し、前記トナー像を前記紫外線吸収剤からの熱により溶融定着する工程と、
前記記録媒体上に転写された前記トナー像を加圧する工程を有し、かつ、
前記トナー像を加圧する工程が、前記トナー像を前記紫外線吸収剤からの熱により溶融定着する工程後に行われることを特徴とする画像形成方法。
【請求項2】
前記トナーが、着色剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の画像形成方法。
【請求項3】
前記トナーが、離型剤を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成方法。
【請求項4】
前記トナー像を転写する工程では、黒色トナー単色を用いて前記トナー像を前記記録媒体上に転写することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項5】
前記トナー像を転写する工程では、2色以上のトナーを用いて前記トナー像を前記記録媒体上に転写することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項6】
請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の画像形成方法を用いる画像形成装置であって、
前記トナーを用いて形成されるトナー像を記録媒体上に転写する転写部と、
前記記録媒体上に転写された前記トナー像に対して、放射光源から、300~405nmの波長領域にある最大発光波長±20(nm)の光を照射し、前記トナー像を前記紫外線吸収剤からの熱により溶融定着する定着部と、
前記記録媒体上に転写された前記トナー像を加圧する加圧部を有し、かつ、
前記トナー像を加圧する加圧部を、前記放射光源から光を照射する光照射部よりも記録媒体搬送方向下流側に有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及び画像形成方法に関し、より詳しくは、良好な定着性及び高い色再現性を実現可能とする画像形成方法及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現行の定着方法としては熱定着が主流であるが、操作性(warming-up time:WUT)向上や省エネルギー化、対応メディア種拡大のために、熱とは異なる外部刺激で定着するシステムが以前から提案されている。中でも、電子写真プロセスに比較的適合しやすく、加熱による弊害のない光定着システムが注目されている。
【0003】
光定着システムとしては、近赤外線吸収剤をトナーに添加し、赤外線を照射することで光エネルギーを熱エネルギーに変換するものが報告されている(例えば、特許文献1参照。)。
特許文献1では、近赤外光領域の750~1100nmに最大吸収波長を有する赤外線吸収剤を含有するカラートナーが提案されている。しかし、この赤外線吸収剤は、可視光(波長領域:780nm以下)も吸収してしまうことから、トナーの光吸収効率を向上させるために赤外線吸収剤を多く添加すると可視光の吸収量が増加してしまい、定着したトナー像の色再現性が低下するという問題がある。一方で、色再現性をよくするために赤外線吸収剤の添加量を少なくすると十分なエネルギーが得られなくなるため、定着性が悪化してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-38667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、良好な定着性及び高い色再現性を実現可能とする画像形成方法及び画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、結着樹脂と紫外線吸収剤とを含むトナー粒子を含有するトナーを用いて形成されたトナー像を記録媒体上に転写する工程と、記録媒体上に転写されたトナー像に対して、放射光源から、300~405nmの波長領域にある最大発光波長±20(nm)の光を照射し、前記トナー像を溶融定着する工程と、を有することにより、良好な定着性及び高い色再現性を実現可能とする画像形成方法及び画像形成装置を提供できることを見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0008】
1.結着樹脂と紫外線吸収剤とを含むトナー粒子を含有するトナーを用いた画像形成方法であって、
前記結着樹脂が、スチレン・アクリル樹脂を含有し、
前記紫外線吸収剤が、180~400nmの波長領域に最大吸収波長を持ち、少なくとも0℃以上の環境下では励起状態から異性化又は結合開裂の構造変化を伴わずに、無輻射失活により失活する化合物であり、
前記紫外線吸収剤が、トリアジン系紫外線吸収剤及びジベンゾイルメタン系紫外線吸収剤から選択される少なくとも1種であり、
前記紫外線吸収剤の含有率が、トナー粒子の総質量に対し、0.1~50質量%の範囲内であり、かつ、
前記トナーを用いて形成されたトナー像を記録媒体上に転写する工程と、
前記記録媒体上に転写された前記トナー像に対して、放射光源から、300~405nmの波長領域にある最大発光波長±20(nm)の光を照射し、前記トナー像を前記紫外線吸収剤からの熱により溶融定着する工程と、
前記記録媒体上に転写された前記トナー像を加圧する工程を有し、かつ、
前記トナー像を加圧する工程が、前記トナー像を前記紫外線吸収剤からの熱により溶融定着する工程後に行われることを特徴とする画像形成方法。
【0009】
2.前記トナーが、着色剤を含有することを特徴とする第1項に記載の画像形成方法。
【0010】
3.前記トナーが、離型剤を含有することを特徴とする第1項又は第2項に記載の画像形成方法。
【0011】
4.前記トナー像を転写する工程では、黒色トナー単色を用いて前記トナー像を前記記録媒体上に転写することを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
【0012】
5.前記トナー像を転写する工程では、2色以上のトナーを用いて前記トナー像を前記記録媒体上に転写することを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の画像形成方法。
【0016】
.第1項から第項までのいずれか一項に記載の画像形成方法を用いる画像形成装置であって、
前記トナーを用いて形成されるトナー像を記録媒体上に転写する転写部と、
前記記録媒体上に転写された前記トナー像に対して、放射光源から、300~405nmの波長領域にある最大発光波長±20(nm)の光を照射し、前記トナー像を前記紫外線吸収剤からの熱により溶融定着する定着部と、
前記記録媒体上に転写された前記トナー像を加圧する加圧部を有し、かつ、
前記トナー像を加圧する加圧部を、前記放射光源から光を照射する光照射部よりも記録媒体搬送方向下流側に有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明の上記手段により、良好な定着性及び高い色再現性を実現可能とする画像形成方法及び画像形成装置を提供することができる。
【0018】
本発明の効果の発現機構・作用機構については明確になっていないが、以下のように推察している。
【0019】
例えば、特許文献1に示されるように、従来の技術では、トナーに赤外線吸収剤を添加して赤外光を照射することで、トナー像が溶融定着される。この場合、赤外線から得られる熱エネルギーが小さいため、定着性が十分確保できるだけの熱エネルギーを得るには、多くの赤外線吸収剤を添加するか、より短波長側の赤外線吸収剤を添加する必要があるが、上述したように色再現性が低下してしまう。
【0020】
そこで、本出願人は、赤外線に対してより大きなエネルギーが得られる紫外線と、紫外線を多く吸収する紫外線吸収剤に着目した。
本発明における光定着システムは、吸収する波長領域の光が照射された化合物(紫外線吸収剤)が、基底状態から励起状態に遷移し、再び基底状態に戻る無輻射失活時に放出される熱エネルギーにより、周辺の樹脂を軟化・溶融することでトナー像を定着する。
加えて、短波長領域に吸収帯を持つ紫外線吸収剤は、トナーの色相に比較的影響が小さく、加えて大きな熱エネルギーを取り出すことができるため、光熱変換効率及び色相に有利であると考えている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の画像形成装置の一例としての概略構成を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の画像形成方法は、結着樹脂と紫外線吸収剤とを含むトナー粒子を含有するトナーを用いた画像形成方法であって、前記結着樹脂が、スチレン・アクリル樹脂を含有し、前記紫外線吸収剤が、180~400nmの波長領域に最大吸収波長を持ち、少なくとも0℃以上の環境下では励起状態から異性化又は結合開裂の構造変化を伴わずに、無輻射失活により失活する化合物であり、前記紫外線吸収剤が、トリアジン系紫外線吸収剤及びジベンゾイルメタン系紫外線吸収剤から選択される少なくとも1種であり、前記紫外線吸収剤の含有率が、トナー粒子の総質量に対し、0.1~50質量%の範囲内であり、かつ、前記トナーを用いて形成されたトナー像を記録媒体上に転写する工程と、前記記録媒体上に転写された前記トナー像に対して、放射光源から、300~405nmの波長領域にある最大発光波長±20(nm)の光を照射し、前記トナー像を前記紫外線吸収剤からの熱により溶融定着する工程と、前記記録媒体上に転写された前記トナー像を加圧する工程を有し、かつ、前記トナー像を加圧する工程が、前記トナー像を前記紫外線吸収剤からの熱により溶融定着する工程後に行われることを特徴とする。この特徴は、下記各実施態様に係る発明に共通する技術的特徴である。
【0023】
本発明の実施態様としては、トナーが、着色剤を含有することが好ましい。
【0024】
また、低温定着性及び離型性を向上させる観点から、トナーが離型剤を含有することが好ましい。
【0025】
また、トナー像を転写する工程では、黒色トナー単色又は2色以上のトナーを用いてトナー像を記録媒体上に転写することが好ましい。
【0026】
また、紫外線吸収剤が、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤及びジベンゾイルメタン系紫外線吸収剤から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0027】
また、より定着性を向上させる観点から、記録媒体上に転写されたトナー像を加圧する工程を有することが好ましく、当該トナー像を加圧する工程がトナー像を前記紫外線吸収剤からの熱により溶融定着する工程後に行われることがより好ましい。
【0028】
本発明は、上記画像形成方法を用いる画像形成装置であって、トナーを用いて形成されるトナー像を記録媒体上に転写する転写部と、前記記録媒体上に転写された前記トナー像
に対して、放射光源から、300~405nmの波長領域にある最大発光波長±20(nm)の光を照射し、前記トナー像を前記紫外線吸収剤からの熱により溶融定着する定着部と、を有する画像形成装置を提供することができる。
【0029】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、数値範囲を表す「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用している。
【0030】
《画像形成方法》
本発明の画像形成方法は、結着樹脂と紫外線吸収剤とを含むトナー粒子を含有するトナーを用いた画像形成方法であって、前記結着樹脂が、スチレン・アクリル樹脂を含有し、前記紫外線吸収剤が、180~400nmの波長領域に最大吸収波長を持ち、少なくとも0℃以上の環境下では励起状態から異性化又は結合開裂の構造変化を伴わずに、無輻射失活により失活する化合物であり、前記紫外線吸収剤が、トリアジン系紫外線吸収剤及びジベンゾイルメタン系紫外線吸収剤から選択される少なくとも1種であり、前記紫外線吸収剤の含有率が、トナー粒子の総質量に対し、0.1~50質量%の範囲内であり、かつ、前記トナーを用いて形成されたトナー像を記録媒体上に転写する工程と、記録媒体上に転写されたトナー像に対して、放射光源から、300~405nmの波長領域にある最大発光波長±20(nm)の光を照射し、トナー像を前記紫外線吸収剤からの熱により溶融定着する工程と、前記記録媒体上に転写された前記トナー像を加圧する工程を有し、かつ、前記トナー像を加圧する工程が、前記トナー像を前記紫外線吸収剤からの熱により溶融定着する工程後に行われることを特徴とする。
【0031】
好ましくは、本発明の画像形成方法は、電子写真感光体(像担持体)の表面を帯電させる帯電工程と、当該電子写真感光体の表面に光を照射して静電潜像を形成する露光工程と、静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像工程と、トナー像を記録媒体上に転写する転写工程と、記録媒体上に転写されたトナー像に対して、放射光源から、300~405nmの波長領域にある最大発光波長±20(nm)の光を照射し、トナー像を前記紫外線吸収剤からの熱により溶融定着する光照射工程と、電子写真感光体上の残留トナーを除去するクリーニング工程と、を有する。
また、記録媒体上に転写されたトナー像を加圧する加圧工程を有していてもよく、当該加圧工程は光照射工程後に行われることが好ましい。
【0032】
(帯電工程)
本工程では、電子写真感光体を帯電させる。帯電させる方法は、特に限定されず、例えば、接触又は非接触のローラー帯電方式を利用することができる。
【0033】
(露光工程)
本工程では、電子写真感光体(静電潜像担持体)上に静電潜像を形成する。
電子写真感光体としては、特に限定されるものではないが、例えば、公知の有機感光体よりなるドラム状のものが挙げられる。
静電潜像の形成は、後述するように、電子写真感光体の表面を帯電手段により一様に帯電させ、露光手段により電子写真感光体の表面を像様に露光することにより行われる。
露光手段としては、特に限定されず、例えば、感光体の軸方向にアレイ状に発光素子を配列したLEDと結像素子とから構成されるもの又はレーザー光学系などが用いられる。
【0034】
(現像工程)
現像工程は、静電潜像をトナーを含む乾式現像剤により現像してトナー像を形成する工程である。
トナー像の形成は、トナーを含む乾式現像剤を用いて、例えば、マグネットを内蔵し現像剤を保持して回転する現像スリーブ及び当該現像スリーブと感光体との間に直流及び/又は交流バイアス電圧を印加する電圧印加装置を用いて行うことができる。より具体的には、トナーとキャリアとが混合撹拌され、その際の摩擦によりトナーが帯電し、回転するマグネットローラーの表面に保持され、磁気ブラシが形成される。マグネットローラーは、電子写真感光体近傍に配置されているため、マグネットローラーの表面に形成された磁気ブラシを構成するトナーの一部は、電気的な吸引力によって電子写真感光体の表面に移動する。その結果、静電潜像がトナーにより現像されて電子写真感光体の表面にトナー像が形成される。
【0035】
(転写工程)
本工程では、トナー像を記録媒体上に転写する。
トナー像の記録媒体上への転写は、トナー像を記録媒体に剥離帯電することにより行われる。
転写手段としては、例えば、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラーなどを用いることができる。
また、転写工程は、例えば、中間転写体(中間転写体)を用い、中間転写体上にトナー像を1次転写した後、このトナー像を記録媒体上に2次転写する態様の他、電子写真感光体上に形成されたトナー像を直接記録媒体上に転写する態様などによって行うこともできる。
記録媒体としては、特に限定されず、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙又はコート紙などの塗工された印刷用紙、市販されている和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布などの各種を挙げることができる。
【0036】
(定着工程)
(1)光照射工程
本工程では、記録媒体上に転写されたトナー像に対して、放射光源から、300~405nmの波長領域にある最大発光波長±20(nm)の光を照射し、トナー像を溶融定着する。
【0037】
単色放射光源とは、単一周波数又は単一波長で定義できるような特定周波数からの変化幅が極微小な、又は特定波長からの変化幅が極微小な光を放射する光源を指し、例えば、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)やLD(Laser Diode:半導体レーザー)などが挙げられる。本発明においては、発光の最大強度を示す最大発光波長(nm)±20(nm)の波長領域の光を放射するものを単色放射光とする。
照射される単色放射光の最大発光波長は、放射光源から、300~405nmの波長領域にある。最大発光波長が300nmより小さいと、結合の開裂により色再現性が悪くなり、405nmより大きいと、十分なエネルギーが得られないため定着性が不十分となる。
また、最大発光波長は、最大発光波長が300nm以上であれば、結合の開裂によるエネルギーのロスが少なく定着性がよりよくなり、405nm以下であれば、紫外線吸収剤の吸収との重なりが大きく、より多くのエネルギーが得られるため定着性がよりよくなる。
単色放射光の照射量は、好ましくは0.01~100J/cmの範囲内であり、より好ましくは0.05~50J/cmの範囲内である。
【0038】
(2)加圧工程
本工程では、記録媒体上に転写されたトナー像を、記録媒体に定着する。具体的には、例えば、定着ローラーと、当該定着ローラーに定着ニップ部が形成されるよう圧接された状態で設けられた加圧ローラーとにより構成されてなるローラー定着方式のものが挙げられる。
この際、定着ローラーを加熱手段として用いてもよい。光照射により溶融したトナー像が加熱により更に軟化され、記録媒体への定着性をより向上させることができる。定着ローラーの温度としては、30~100℃の範囲内であることが好ましく、40~100℃の範囲内であることが好ましい。
【0039】
(クリーニング工程)
本工程では、現像ローラー、感光体、中間転写体などの現像剤担持体上に、画像形成に使用されなかった又は転写されずに残った液体現像剤を現像剤担持体上から除去する。
クリーニングの方法は、特に限定されないが、先端が感光体に当接して設けられた、感光体表面を擦過するブレードが用いられる方法であることが好ましく、例えば、クリーニングブレードと、このクリーニングブレードより上流側に設けられたブラシローラーとにより構成されるものを用いることができる。
【0040】
《画像形成装置》
本発明の画像形成装置は、上記した画像形成方法を用いる画像形成装置であって、トナーを用いて形成されるトナー像を記録媒体上に転写する転写部と、記録媒体上に転写されたトナー像に対して、放射光源から、300~405nmの波長領域にある最大発光波長±20(nm)の光を照射し、トナー像を前記紫外線吸収剤からの熱により溶融定着する定着部と、を有することを特徴とする。
【0041】
以下、図面を用いて、本発明に適用可能な画像形成装置について説明する。
【0042】
図1に示す画像形成装置1は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるものであり、4組の画像形成ユニット(プロセスカートリッジ)10Y、10M、10C、10Bkと、無端ベルト状の中間転写体ユニット7と、給紙搬送部21と、定着部24とを備えて構成されている。装置本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
なお、図1では、4組の画像形成ユニット(プロセスカートリッジ)10Y、10M、10C、10Bkを備えた画像形成装置を示しているが、画像形成ユニット10Bkのみであってもよいし、4組の画像形成ユニット(プロセスカートリッジ)10Y、10M、10C、10Bkのうち、少なくとも二組の画像形成ユニットを備えたものであってもよい。
【0043】
画像形成ユニット10Yは、イエロー色の画像を形成するものである。画像形成ユニット10Yは、ドラム状の電子写真感光体1Yの周囲に帯電部2Yと露光部3Yと現像部4Yとクリーニング部6Yとが配置されて構成され、1次転写ローラー5Yを更に有する。
【0044】
画像形成ユニット10Mは、マゼンタ色の画像を形成するものである。画像形成ユニット10Mは、ドラム状の電子写真感光体1Mの周囲に帯電部2Mと露光部3Mと現像部4Mとクリーニング部6Mとが配置されて構成され、1次転写ローラー5Mを更に有する。
【0045】
画像形成ユニット10Cは、シアン色の画像を形成するものである。画像形成ユニット10Cは、ドラム状の電子写真感光体1Cの周囲に帯電部2Cと露光部3Cと現像部4Cとクリーニング部6Cとが配置されて構成され、1次転写ローラー5Cを更に有する。
【0046】
画像形成ユニット10Bkは、黒色画像を形成するものである。画像形成ユニット10Bkは、ドラム状の電子写真感光体1Bkの周囲に帯電部2Bkと露光部3Bkと現像部4Bkとクリーニング部6Bkとが配置されて構成され、1次転写ローラー5Bkを更に有する。
【0047】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、電子写真感光体1Y、1M、1C、1Bkに形成されるトナー像の色が異なることを除いては同様に構成されている。そのため、以下では、画像形成ユニット10Yを例に挙げて説明する。
【0048】
本実施形態では、画像形成ユニット10Yにおいて、少なくとも、電子写真感光体1Yと帯電部2Yと現像部4Yとクリーニング部6Yとが一体化されている。
【0049】
帯電部2Yは、電子写真感光体1Yに対して一様な電位を与えて電子写真感光体1Yの表面(例えば、電子写真感光体の保護層の表面)を帯電(例えば、負に帯電)させる。帯電部2Yは、非接触帯電方式によって電子写真感光体1Yの表面を帯電させてもよいが、後述するように接触帯電方式によって電子写真感光体1Yの表面を帯電させることが好ましい。
【0050】
露光部3Yは、帯電部2Yにより一様な電位が与えられた電子写真感光体1Yの表面(例えば、電子写真感光体の保護層の表面)に対して、画像信号(イエロー)に基づいて露光を行い、これにより、イエローの画像に対応する静電潜像を形成する。露光部3Yとしては、電子写真感光体1Yの軸方向に発光素子がアレイ状に配列されて構成されたLEDと結像素子(商品名:セルフォック(登録商標)レンズ)とを備えたもの、又は、レーザー光学系などを用いることができる。
【0051】
現像部4Yは、露光部3Yにより形成された静電潜像を静電潜像現像剤により現像してトナー像を形成する。用いる静電潜像現像剤は特に限定されないが、乾式現像剤であることが好ましい。
【0052】
本実施形態の画像形成装置では、電子写真感光体1Yと帯電部2Yと露光部3Yと現像部4Yとクリーニング部6Yなどがプロセスカートリッジとして一体化されて構成され、このプロセスカートリッジが装置本体Aに対して着脱可能に装着されてもよい。また、帯電部2Y、露光部3Y、現像部4Y、転写又は分離器、及び、クリーニング部6Yのうちの少なくとも一つが電子写真感光体1Yとともに一体に支持されてプロセスカートリッジが構成され、そのプロセスカートリッジが装置本体Aに対して着脱可能な単一画像形成ユニットに構成され、その単一画像形成ユニットが装置本体Aのレールなどの案内手段を用いて装置本体Aに対して着脱可能に装着されてもよい。
【0053】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkと無端ベルト状の中間転写体ユニット7とを有する筐体8は、支持レール82L、82Rにより、装置本体Aから引き出し可能に構成されている。筐体8では、画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、垂直方向に縦列配置されている。無端ベルト状の中間転写体ユニット7は、図1において電子写真感光体1Y、1M、1C、1Bkの左側方に配置されており、ローラー71、72、73、74を巻回して回動可能な無端ベルト状の中間転写体70と、1次転写ローラー5Y、5M、5C、5Bkと、クリーニング部6bとを有する。
【0054】
定着部24は、少なくとも光照射部91を備えて構成される。光照射部91を構成する装置例としては、上述したように、単色放射光源であるLEDやLDが挙げられる。光照射部91から照射される単色放射光の最大発光波長は放射光源から、300~405nmの波長領域であり、単色放射光の照射量は好ましくは0.01~100J/cmの範囲内であり、より好ましくは0.05~50J/cmの範囲内である。
光照射部91に使用される単色放射光源は、一つ又は複数個設置してもよい。
【0055】
定着部24では、記録媒体P上に形成されたトナー像を加圧する加圧部を備えていてもよく、光照射部91よりも記録媒体搬送方向下流側に加圧部を備えていることがより好ましい。
加圧部は、定着ローラー92と加圧ローラー93とから構成され、トナー像が保持された記録媒体Pが供給されると、定着ローラー92と加圧ローラー93とでトナー像を記媒体P上に圧着する。光照射部91で溶融定着されたトナー像を加圧することにより、より定着性を向上させることができる。
また、定着ローラー92は、記録媒体Pが定着ローラー92と加圧ローラー93との間を通過する際に、記録媒体P上のトナー像を加熱することができる。光照射によって軟化したトナー像は、この加熱により更に軟化され、その結果、トナー像の記録媒体Pへの定着性がより向上する。加熱する場合の定着ローラー92の温度は、30~100℃の範囲内が好ましく、40~100℃の範囲内がより好ましい。
【0056】
以下では、図1に示す画像形成装置を用いた画像形成方法について示す。
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkにより形成された各色の画像は、1次転写ローラー5Y、5M、5C、5Bkにより、回動する無端ベルト状の中間転写体70上に逐次転写される。これにより、合成されたカラー画像が形成される。
【0057】
給紙カセット20に収容された記録媒体Pは、給紙搬送部21により給紙され、複数の中間ローラー22A、22B、22C、22Dとレジストローラー23とを経て、2次転写ローラー5bに搬送される。2次転写ローラー5bでは、合成されたカラー画像が記録媒体Pに2次転写され、よって、カラー画像が記録媒体Pに一括に転写される。合成されたカラー画像が記録媒体Pに2次転写されると、無端ベルト状の中間転写体70はその記録媒体Pを曲率分離する。
【0058】
記録媒体Pは、定着部24における光照射部91において、最大発光波長は放射光源から、300~405nmの波長領域ある最大発光波長±20(nm)の光が照射され、
トナー像が記録媒体P上に紫外線吸収剤からの熱により溶融定着され、定着ローラー92及び加圧ローラー93で更にトナー像が記録媒体P上に定着される。
【0059】
定着処理された記録媒体Pは、排紙ローラー25に挟持されて機外の排紙トレイ26に載置される。一方、中間転写体70に付着した静電潜像現像剤(残留トナー)はクリーニング部6bにより除去される。
【0060】
なお、画像形成中、1次転写ローラー5Bkは、常時、電子写真感光体1Bkの表面に当接している。一方、1次転写ローラー5Y、5M、5Cは、カラー画像形成時にのみ、対応する電子写真感光体1Y、1M、1Cの表面に当接する。また、2次転写ローラー5bは、2次転写ローラー5bを記録媒体Pが通過して2次転写が行われる時にのみ、無端ベルト状の中間転写体70の表面に当接する。
【0061】
《静電荷像現像用トナー》
本発明に係る静電荷像現像用トナー(以下、単にトナーともいう。)は、トナー母体粒子又はトナー粒子の集合体であることが好ましい。
ここで、トナー粒子とは、トナー母体粒子に外添剤を添加したものであり、トナー母体粒子をそのままトナー粒子として用いることもできる。
本発明において、トナー粒子は、少なくとも結着樹脂と紫外線吸収剤とを含んで構成されている。
【0062】
〈紫外線吸収剤〉
本発明に係る紫外線吸収剤とは180~400nmの波長領域に吸収波長を持ち、少なくとも0℃以上の環境下では励起状態から異性化や結合開裂等の構造変化を伴わずに、無輻射失活により失活する添加剤のことを指し、当該条件を満たせば有機化合物と無機化合物のいずれでもよく、また、一般的な有機系紫外線吸収剤以外にも光安定剤や酸化防止剤等の添加剤も本発明における紫外線吸収剤を指す。
また、有機系紫外線吸収剤の骨格を有する官能基が高分子鎖に取り込まれた紫外線吸収ポリマーも使用可能である。
紫外線吸収剤は180~400nmに最大吸収波長を持つことが好ましく、有機系紫外線吸収剤と無機系紫外線吸収剤では有機系紫外線吸収剤の方が好ましい。
【0063】
本発明で使用可能な有機系紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、ジフェニルアクリレート系紫外線吸収剤、安息香酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ケイ皮酸系紫外線吸収剤、ジベンゾイルメタン系紫外線吸収剤、β,β-ジフェニルアクリラート系紫外線吸収剤、ベンジリデンショウノウ系紫外線吸収剤、フェニルベンゾイミダゾール系紫外線吸収剤、アントラニル系紫外線吸収剤、イミダゾリン系紫外線吸収剤、ベンザルマロナート系紫外線吸収剤、4,4-ジアリールブタジエン系紫外線吸収剤等の公知のものが挙げられる。その中でも、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ジベンゾイルメタン系紫外線吸収剤が好ましい。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0064】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系化合物よりなる紫外線吸収剤)としては、例えば、オクタベンゾン、2,4-ヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0065】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系化合物よりなる紫外線吸収剤)としては、例えば、2-(2p-クレゾール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-〔5-クロロ(2H)-ベンゾトリアゾール-2-イル〕-4-メチル-6-(tert-ブチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ペンチルフェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール、メチル-3-〔3-t-ブチル-5-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル〕プロピオネート/ポリエチレングリコール(分子量約300)の反応生成物、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-ドデシル-4-メチルフェノール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-エチルヘキシル-3-〔3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェニル〕プロピオネート、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(1-メチル~1-フェニルエチル)-4-(1,1,3,3-テトラメチルプチル)フェノールなどが挙げられる。
【0066】
トリアジン系紫外線吸収剤(トリアジン系化合物よりなる紫外線吸収剤)としては、例えば、2-(4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヒドロキシフェニル、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-〔(ヘキシル)オキシ〕フェノール、2-〔4-〔(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ〕-2-ヒドロキシフェニル〕-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-〔4-〔(2-ヒドロキシ-3-(2′-エチル)ヘキシル)オキシ〕-2-ヒドロキシフェニル〕-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチルオキシフェニル)-6-(2,4-ビス-ブチルオキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-〔1-オクチルオキシカルボニルオトキシ〕フェニル)-4,6-ビス(4-フェニル)-1,3,5-トリアジンなどが挙げられる。
【0067】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤(シアノアクリレート系化合物よりなる紫外線吸収剤)としては、例えば、エチル2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、2′-エチルヘキシル2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレートなどが挙げられる。
【0068】
ジベンゾイルメタン系紫外線吸収剤(ジベンゾイルメタン系化合物よりなる紫外線吸収剤)としては、4-tert-ブチル-4′-メトキシジベンゾイルメタン(例えば、「パルソール1789」、DSM社製)などが挙げられる。
【0069】
無機系紫外線吸収剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄、硫酸バリウム等が挙げられる。無機系紫外線吸収剤の粒径は、1nm~1μmの範囲内であることが好ましい。
【0070】
紫外線吸収剤の含有率は、トナー粒子の全質量(100質量%)に対して、0.1~50質量%の範囲内である。含有率が0.1質量%より小さいと、十分な発熱量(エネルギー)を得ることができず、50質量%より大きいと、定着画像が脆くなってしまう。
紫外線吸収剤の含有率は、0.5~35質量%の範囲内であることが好ましい。含有率が0.5質量%以上であれば、得られる熱エネルギーがより大きくなるため定着性がより向上し、35質量%以下であれば、樹脂比率が大きくなるため定着画像が強靭になり定着性がより向上する。
【0071】
〈結着樹脂〉
本発明のトナー粒子は、結着樹脂を含んでいる。結着樹脂を含むことで、トナーが適切な粘度となり、紙に塗布した際のにじみが抑制されるため、細線再現性やドット再現性が向上する。
【0072】
結着樹脂としては、一般にトナー粒子を構成する結着樹脂として用いられている樹脂を制限なく用いることができる。具体的には、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン・アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、オレフィン樹脂、アミド樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。これら結着樹脂は、単独でも、又は2種以上組み合わせても用いることができる。
これらの中でも、溶融すると低粘度になり、かつ高いシャープメルト性を有するという観点から、結着樹脂は、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン・アクリル樹脂及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、スチレン・アクリル樹脂及びポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0073】
結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、定着性や耐熱保管性などの観点から、35~70℃の範囲内が好ましく、35~60℃の範囲内がより好ましい。ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定(DSC)により測定することができる。
【0074】
なお、結着樹脂を含むトナー粒子は、単層構造であってもよいし、コア・シェル構造であってもよい。コア・シェル構造のコア粒子及びシェル層に用いられる結着樹脂の種類は、特に制限されない。
【0075】
〈着色剤〉
本発明に係るトナー粒子は、着色剤を含んでもよい。着色剤としては、一般に知られている染料及び顔料を用いることができる。
黒色のトナーを得るための着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、鉄・チタン複合酸化物ブラックなどが挙げられる。
カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどが挙げられる。また、磁性体としてはフェライト、マグネタイトなどが挙げられる。
【0076】
イエローのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162などの染料、C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185などの顔料が挙げられる。
【0077】
マゼンタのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122などの染料、C.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222などの顔料が挙げられる。
【0078】
シアンのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95などの染料、C.I.ピグメントブルー1、同7、同15、同15:3、同60、同62、同66、同76などの顔料が挙げられる。
【0079】
各色のトナーを得るための着色剤は、各色について、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0080】
着色剤の含有率は、トナー粒子の総質量(100質量%)に対し、1~30質量%の範囲内であることが好ましく、2~20質量%の範囲内であることがより好ましい。含有率が1質量%以上であれば、十分な着色力を得ることができ、30質量%以下であれば、着色剤がトナーから遊離してキャリアに付着することがなく、帯電性が安定するため、高画質な画像が得られる。
【0081】
〈離型剤〉
本発明に係るトナー粒子は、離型剤を含有してもよい。使用される離型剤は、特に限定されるものではなく、公知の種々のワックスを用いることができる。
ワックスとしては、低分子量ポリプロピレン、ポリエチレン、酸化型の低分子量ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン、パラフィン、合成エステルワックスなどが挙げられる。
特に、低融点及び低粘度であることから、合成エステルワックスを用いることが好ましく、ベヘン酸ベヘニル、グリセリントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネートなどを用いることが特に好ましい。
【0082】
離型剤の含有率は、トナー粒子の総質量(100質量%)に対し、1~30質量%の範囲内であることが好ましく、3~15質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0083】
〈荷電制御剤〉
本発明に係るトナー粒子は、荷電制御剤を含有してもよい。使用される荷電制御剤は、摩擦帯電により正又は負の帯電を与えることのできる物質であり、かつ無色のものであれば特に限定されず、公知の種々の正帯電性の荷電制御剤及び負帯電性の荷電制御剤を用いることができる。
荷電制御剤の含有率は、トナー粒子の総質量(100質量%)に対し、0.01~30質量%の範囲内であることが好ましく、0.1~10質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0084】
〈外添剤〉
トナーの流動性、帯電性、クリーニング性等を改良するために、トナー母体粒子表面に、いわゆる後処理剤である流動化剤、クリーニング助剤等の外添剤を添加してもよい。
外添剤としては、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化チタン粒子などの無機酸化物粒子、ステアリン酸アルミニウム粒子、ステアリン酸亜鉛粒子などの無機ステアリン酸化合物粒子、チタン酸ストロンチウム粒子、チタン酸亜鉛粒子などの無機チタン酸化合物粒子などの無機粒子が挙げられる。
これらは、単独でも、又は2種以上を組み合わせても用いることができる。
これら無機粒子は、シランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって、耐熱保管性や環境安定性の向上のために、表面処理が行われていてもよい。
これら外添剤の添加量は、トナー粒子の総質量(100質量%)に対し、0.05~5質量%の範囲内であることが好ましく、0.1~3質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0085】
〈トナー粒子の平均粒径〉
トナー粒子の平均粒径は、体積基準のメジアン径(D50)で4~10μmの範囲内であることが好ましく、4~7μmの範囲内であることがより好ましい。体積基準のメジアン径(D50)が上記範囲内にあることにより、転写効率が高くなり、ハーフトーンの画質が向上し、細線やドット等の画質が向上する。
トナー粒子の体積基準のメジアン径(D50)は、「コールターカウンター3」(ベックマン・コールター株式会社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステム(ベックマン・コールター株式会社製)を接続した測定装置を用いて測定・算出されるものである。
具体的には、測定試料(トナー)0.02gを、界面活性剤溶液20mL(トナー粒子の分散を目的として、例えば、界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー粒子分散液を調製し、このトナー粒子分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター株式会社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。
ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャー径を50μmにし、測定範囲である1~30μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒子径が体積基準のメジアン径(D50)とされる。
【0086】
〈トナーの製造方法〉
本発明に係るトナーの製造方法は、特に限定されず、公知の方法を採用できるが、乳化重合凝集法や乳化凝集法を好適に採用できる。
【0087】
乳化重合凝集法は、乳化重合法によって製造された結着樹脂の粒子(以下、結着樹脂粒子ともいう。)の分散液を、紫外線吸収剤の粒子(以下、紫外線吸収剤粒子ともいう。)の分散液、着色剤の粒子(以下、着色剤粒子ともいう。)の分散液及びワックスなどの離型剤の分散液と混合し、トナー粒子が所望の粒径となるまで凝集させ、更に結着樹脂粒子間の融着を行うことにより形状制御を行って、トナー粒子を製造する方法である。
【0088】
また、乳化凝集法は、溶媒に溶解した結着樹脂溶液を貧溶媒に滴下して樹脂粒子分散液とし、この樹脂粒子分散液と紫外線吸収剤粒子分散液、着色剤粒子分散液及びワックスなどの離型剤分散液とを混合し、所望のトナー粒子の径となるまで凝集させ、更に結着樹脂粒子間の融着を行うことにより形状制御を行って、トナー粒子を製造する方法である。
本発明のトナーにおいては、どちらの製造方法も適用可能である。
【0089】
以下に、本発明に係るトナーの製造方法として、乳化重合凝集法を用いる場合の一例を示す。
【0090】
(1)水系媒体中に着色剤粒子が分散されてなる分散液を調製する工程
(2)紫外線吸収剤粒子が分散されてなる分散液を調製する工程
(3)水系媒体中に、必要に応じて内添剤を含有した結着樹脂粒子が分散されてなる分散液を調製する工程
(4)乳化重合により、結着樹脂微粒子の分散液を調製する工程
(5)着色剤粒子の分散液と、紫外線吸収剤粒子の分散液と、結着樹脂粒子の分散液とを混合して、着色剤粒子と紫外線吸収剤粒子と結着樹脂粒子とを凝集、会合、融着させてトナー母体粒子を形成する工程
(6)トナー母体粒子の分散系(水系媒体)からトナー母体粒子を濾別し、界面活性剤などを除去する工程
(7)トナー母体粒子を乾燥する工程
(8)トナー母体粒子に外添剤を添加する工程
【0091】
乳化重合凝集法によってトナーを製造する場合においては、乳化重合法によって得られる結着樹脂粒子は、組成の異なる結着樹脂よりなる2層以上の多層構造を有するものであってもよく、このような構成の結着樹脂粒子は、例えば2層構造を有するものは、常法に従った乳化重合処理(第1段重合)によって樹脂粒子の分散液を調製し、この分散液に重合開始剤と重合性単量体とを添加し、この系を重合処理(第2段重合)する手法によって得ることができる。
【0092】
また、乳化重合凝集法によってはコア・シェル構造を有するトナー粒子を得ることもでき、具体的にコア・シェル構造を有するトナー粒子は、まず、コア粒子用の結着樹脂粒子と紫外性吸収剤粒子と着色剤粒子とを凝集、会合、融着させてコア粒子を作製し、次いで、コア粒子の分散液中にシェル層用の結着樹脂粒子を添加してコア粒子表面にシェル層用の結着樹脂粒子を凝集、融着させてコア粒子表面を被覆するシェル層を形成することにより得ることができる。
【0093】
《現像剤》
本発明に係るトナーは、例えば、磁性体を含有させて1成分磁性トナーとして使用する場合、いわゆるキャリアと混合して2成分現像剤として使用する場合、非磁性トナーを単独で使用する場合などが考えられ、いずれも好適に使用することができる。
磁性体としては、例えば、マグネタイト、γ-ヘマタイト、各種フェライトなどを使用することができる。
2成分現像剤を構成するキャリアとしては、鉄、鋼、ニッケル、コバルト、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができる。
キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂等の被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体粉末を分散してなるいわゆる樹脂分散型キャリアを用いることが好ましい。被覆用の樹脂としては、特に限定はないが、例えば、オレフィン樹脂、スチレン樹脂、スチレン・アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、アクリル樹脂、スチレン・アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。
キャリアの体積基準のメジアン径は、20~100μmの範囲内であることが好ましく、25~80μmの範囲内であることがより好ましい。キャリアの体積基準のメジアン径は、代表的には湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパテック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
トナーのキャリアに対する混合量は、トナーとキャリアとの合計質量を100質量%として、2~10質量%の範囲内であることが好ましい。
【実施例
【0094】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0095】
《トナーの作製》
以下のようにして、トナー1~17を作製した。
【0096】
〈トナー1の作製〉
(1)スチレン・アクリル樹脂粒子分散液1の調製
(第1段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム8質量部をイオン交換水3000質量部に溶解させた溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。昇温後、過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた溶液を添加し、再度液温80℃とし、スチレン480質量部、n-ブチルアクリレート250質量部、メタクリル酸68.0質量部及びn-オクチル-3-メルカプトプロピオネート16.0質量部よりなる重合性モノマー溶液を1時間かけて滴下後、80℃にて2時間加熱、撹拌することにより重合を行い、スチレン・アクリル樹脂粒子(1a)を含有するスチレン・アクリル樹脂粒子分散液(1A)を調製した。
【0097】
(第2段重合)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ポリオキシエチレン-2-ドデシルエーテル硫酸ナトリウム7質量部をイオン交換水800質量部に溶解させた溶液を仕込み、98℃に加熱後、上記のスチレン・アクリル樹脂粒子分散液(1A)260質量部とスチレン245質量部、n-ブチルアクリレート120質量部、n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート1.5質量部、離型剤としてパラフィンワックス「HNP-11」(日本精蝋社製)67質量部を90℃にて溶解させた重合性モノマー溶液を添加し、循環経路を有する機械式分散機「CREARMIX」(エム・テクニック社製)により1時間混合分散させ、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。
次いで、この分散液に過硫酸カリウム6質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を82℃にて1時間にわたって加熱撹拌することにより重合を行い、スチレン・アクリル樹脂粒子(1b)を含有するスチレン・アクリル樹脂粒子分散液(1B)を調製した。
【0098】
(第3段重合)
調製したスチレン・アクリル樹脂粒子分散液(1B)に過硫酸カリウム11質量部をイオン交換水400質量部に溶解させた溶液を添加し、82℃の温度条件下に、スチレン435質量部、n-ブチルアクリレート130質量部、メタクリル酸33質量部及びn-オクチル-3-メルカプトプロピオネート8質量部からなる重合性モノマー溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたって加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却しスチレン・アクリル樹脂1を含有するスチレン・アクリル樹脂粒子分散液1を得た。
スチレン・アクリル樹脂粒子分散液1中のスチレン・アクリル樹脂粒子の粒径を「マイクロトラックUPA-150」(日機装株式会社製)を用いて動的光散乱法によって測定したところ、体積基準のメジアン径で120nmであった。また、このスチレン・アクリル樹脂1のガラス転移温度(Tg)を測定したところ、45℃であった。
【0099】
(2)ベンゾフェノン粒子分散液1の調製
ジクロロメタン80質量部と、紫外線吸収剤としてベンゾフェノン(Uvinul3049、BASF社製)20質量部とを50℃で加熱しながら混合撹拌し、ベンゾフェノンを含む液を得た。この液100質量部に、50℃に温めた蒸留水99.5質量部と、20質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液0.5質量部との混合液を添加した。その後、シャフトジェネレーター18Fを備えるホモジナイザー(ハイドルフ社製)により16000rpmで20分間撹拌して乳化させ、ベンゾフェノン乳化液1を得た。
得られたベンゾフェノン乳化液1をセパラブルフラスコへ投入し、窒素を気相中へ送気しながら40℃で90分間加熱撹拌して有機溶媒を除去して、ベンゾフェノン粒子分散液1を得た。
ベンゾフェノン粒子分散液1中のベンゾフェノン粒子の粒径を電気泳動光散乱光度計「ELS-800」(大塚電子株式会社製)を用いて測定したところ、質量平均粒径で145nmであった。
【0100】
(3)イエロー着色剤粒子分散液(Y-1)の調製
n-ドデシル硫酸ナトリウム95質量部をイオン交換水1600質量部に添加した。この溶液を撹拌しながら250質量部のC.I.ピグメントイエロー74を当該溶液に徐々に添加し、次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック株式会社製)を用いて分散処理を行うことにより、イエロー着色剤粒子分散液(Y-1)を調製した。
イエロー着色剤微粒子分散液(Y-1)における着色剤粒子の体積基準のメジアン径は、126nmであった。なお、本実施例において、着色剤粒子の体積基準のメジアン径は、「MICROTRAC UPA-150」(HONEYWELL社製)を用いて測定した。
【0101】
(4)凝集・融着
上記で調製したスチレン・アクリル樹脂粒子分散液1を固形分換算で504質量部、ベンゾフェノン粒子分散液1を固形分換算で98質量部、イオン交換水900質量部及びイエロー着色剤粒子分散液(Y-1)を固形分換算で52質量部を、撹拌装置、温度センサー及び冷却管を装着した反応装置に投入した。容器内の温度を30℃に保持して、5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整した。
次に、塩化マグネシウム・6水和物 2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、10分間かけて滴下した後、昇温を開始し、この系を60分間かけて70℃まで昇温し、70℃を保持したま粒子成長反応を継続した。この状態で「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター株式会社製)にて会合粒子の粒径を測定し、体積基準におけるメジアン径(D50)が6.5μmになった時点で、塩化ナトリウム190質量部をイオン交換水760質量部に溶解した水溶液を添加して粒子成長を停止させた。70℃で1時間撹拌した後、更に昇温を行い、75℃の状態で加熱撹拌することにより、粒子の融着を進行させた。その後、30℃まで冷却することにより、トナー粒子の分散液を得た。
上記で得られたトナー粒子の分散液を遠心分離機で固液分離し、トナー粒子のウェットケーキを形成した。このウェットケーキを、遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで35℃のイオン交換水で洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー(株式会社セイシン企業製)」に移し、水分量が0.5質量%になるまで乾燥して、トナー粒子1を作製した。
乾燥させたトナー粒子1に、疎水性シリカ(数平均1次粒子径=12nm)1質量%及び疎水性チタニア(数平均1次粒子径=20nm)0.3質量%を添加し、ヘンシェルミキサーにより混合することにより、ガラス転移温度(Tg)が45℃、体積基準におけるメジアン径6.4μmのトナー1を作製した。
【0102】
〈トナー2の作製〉
トナー1の作製において、凝集・融着工程でスチレン・アクリル樹脂粒子分散液1の添加量を307質量部、ベンゾフェノン粒子分散液1の添加量を295質量部に変更した以外は同様にして、トナー2を作製した。
【0103】
〈トナー3の作製〉
トナー1の作製において、凝集・融着工程でスチレン・アクリル樹脂粒子分散液1の添加量を601質量部、ベンゾフェノン粒子分散液1の添加量を1.3質量部に変更した以外は同様にして、トナー3を作製した。
【0104】
〈トナー4の作製〉
トナー1の作製において、凝集・融着工程でスチレン・アクリル樹脂粒子分散液1の添加量を406質量部、ベンゾフェノン粒子分散液1の添加量を196質量部に変更した以外は同様にして、トナー4を作製した。
【0105】
〈トナー5の作製〉
トナー1の作製において、凝集・融着工程でスチレン・アクリル樹脂粒子分散液1の添加量を582質量部、ベンゾフェノン粒子分散液1の添加量を20質量部に変更した以外は同様にして、トナー5を作製した。
【0106】
〈トナー6の作製〉
トナー1の作製において、ベンゾフェノン粒子分散液1を下記のようにして調製したベンゾトリアゾール粒子分散液1に変更した以外は同様にして、トナー6を作製した。
【0107】
(ベンゾトリアゾール粒子分散液1の調製)
ジクロロメタン80質量部と、紫外線吸収剤としてベンゾトリアゾール(LA-29、ADEKA社製)20質量部とを50℃で加熱しながら混合撹拌し、ベンゾトリアゾールを含む液を得た。この液100質量部に、50℃に温めた蒸留水99.5質量部と、20質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液0.5質量部との混合液を添加した。その後、シャフトジェネレーター18Fを備えるホモジナイザー(ハイドルフ社製)により16000rpmで20分間撹拌して乳化させ、ベンゾトリアゾール乳化液1を得た。
得られたベンゾトリアゾール乳化液1をセパラブルフラスコへ投入し、窒素を気相中へ送気しながら40℃で90分間加熱撹拌して有機溶媒を除去して、ベンゾトリアゾール粒子分散液1を得た。
ベンゾトリアゾール粒子分散液1中のベンゾトリアゾール粒子の粒径を電気泳動光散乱光度計「ELS-800」(大塚電子株式会社製)を用いて測定したところ、質量平均粒径で150nmであった。
【0108】
〈トナー7の作製〉
トナー1の作製において、ベンゾフェノン粒子分散液1を下記のようにして調製したトリアジン粒子分散液1に変更した以外は同様にして、トナー7を作製した。
【0109】
(トリアジン粒子分散液1の調製)
ジクロロメタン80質量部と、紫外線吸収剤としてトリアジン(LA-F70、ADEKA社製)20質量部とを50℃で加熱しながら混合撹拌し、トリアジンを含む液を得た。この液100質量部に、50℃に温めた蒸留水99.5質量部と、20質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液0.5質量部との混合液を添加した。その後、シャフトジェネレーター18Fを備えるホモジナイザー(ハイドルフ社製)により16000rpmで20分間撹拌して乳化させ、トリアジン乳化液1を得た。
得られたトリアジン乳化液1をセパラブルフラスコへ投入し、窒素を気相中へ送気しながら40℃で90分間加熱撹拌して有機溶媒を除去して、トリアジン粒子分散液1を得た。
トリアジン粒子分散液1中のトリアジン粒子の粒径を電気泳動光散乱光度計「ELS-800」(大塚電子株式会社製)を用いて測定したところ、質量平均粒径で141nmであった。
【0110】
〈トナー8の作製〉
トナー1の作製において、ベンゾフェノン粒子分散液1を下記のようにして調製したシアノアクリレート粒子分散液1に変更した以外は同様にして、トナー8を作製した。
【0111】
(シアノアクリレート粒子分散液1の調製)
ジクロロメタン80質量部と、紫外線吸収剤としてシアノアクリレート(Uvinul3035、BASF社製)20質量部とを50℃で加熱しながら混合撹拌し、シアノアクリレートを含む液を得た。この液100質量部に、50℃に温めた蒸留水99.5質量部と、20質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液0.5質量部との混合液を添加した。その後、シャフトジェネレーター18Fを備えるホモジナイザー(ハイドルフ社製)により16000rpmで20分間撹拌して乳化させ、シアノアクリレート乳化液1を得た。
得られたシアノアクリレート乳化液1をセパラブルフラスコへ投入し、窒素を気相中へ送気しながら40℃で90分間加熱撹拌して有機溶媒を除去して、シアノアクリレート粒子分散液1を得た。
シアノアクリレート粒子分散液1中のシアノアクリレート粒子の粒径を電気泳動光散乱光度計「ELS-800」(大塚電子株式会社製)を用いて測定したところ、質量平均粒径で155nmであった。
【0112】
〈トナー9の作製〉
トナー1の作製において、ベンゾフェノン粒子分散液1を下記のようにして調製したジベンゾイルメタン粒子分散液1に変更した以外は同様にして、トナー9を作製した。
【0113】
(ジベンゾイルメタン粒子分散液1の調製)
ジクロロメタン80質量部と、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン(ロシュ社製)20質量部とを50℃で加熱しながら混合撹拌し、ジベンゾイルメタンを含む液を得た。この液100質量部に、50℃に温めた蒸留水99.5質量部と、20質量%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液0.5質量部との混合液を添加した。その後、シャフトジェネレーター18Fを備えるホモジナイザー(ハイドルフ社製)により16000rpmで20分間撹拌して乳化させ、ジベンゾイルメタン乳化液1を得た。
得られたジベンゾイルメタン乳化液1をセパラブルフラスコへ投入し、窒素を気相中へ送気しながら40℃で90分間加熱撹拌して有機溶媒を除去して、ジベンゾイルメタン粒子分散液1を得た。
ジベンゾイルメタン粒子分散液1中のジベンゾイルメタン粒子の粒径を電気泳動光散乱光度計「ELS-800」(大塚電子株式会社製)を用いて測定したところ、質量平均粒径で151nmであった。
【0114】
〈トナー10の作製〉
トナー1の作製において、ベンゾフェノン粒子分散液1の添加量を49質量部に変更し、ベンゾトリアゾール粒子分散液1を49質量部添加した以外は同様にして、トナー10を作製した。
【0115】
〈トナー11の作製〉
トナー1の作製において、イエロー着色剤粒子分散液(Y-1)を下記のようにして調製したシアン着色剤粒子分散液(Cy-1)に変更した以外は同様にして、トナー11を作製した。
【0116】
(シアン着色剤粒子分散液(Cy-1)の調製)
n-ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に添加した。この溶液を撹拌しながら、銅フタロシアニン(C.I.ピグメントブルー15:3)420質量部を当該溶液に徐々に添加し、次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック株式会社製)を用いて分散処理することにより、シアン着色剤粒子分散液(Cy-1)を調製した。
シアン着色剤粒子分散液(Cy-1)における着色剤粒子の体積基準のメジアン径は、110nmであった。
【0117】
〈トナー12の作製〉
トナー1の作製において、イエロー着色剤分散液(Y-1)を下記のようにして調製したマゼンタ着色剤粒子分散剤(M-1)に変更した以外は同様にして、トナー12を作製した。
【0118】
(マゼンタ着色剤粒子分散剤(M-1)の調製)
n-ドデシル硫酸ナトリウム95質量部をイオン交換水1600質量部に添加した。この溶液を撹拌しながら250質量部のC.I.ピグメントレッド122を当該溶液に徐々に添加し、次いで、撹拌装置「クリアミックス」(エム・テクニック株式会社製)を用いて分散処理を行うことにより、マゼンタ着色剤粒子分散剤(M-1)を調製した。
マゼンタ着色剤粒子分散剤(M-1)における着色剤粒子の体積基準のメジアン径は、115nmであった。
【0119】
〈トナー13の作製〉
トナー1の作製において、イエロー着色剤分散液(Y-1)を下記のようにして調製したブラック着色剤粒子分散剤(Bk-1)に変更した以外は同様にして、トナー13を作製した。
【0120】
(ブラック着色剤粒子分散剤(Bk-1)の調製)
n-ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に添加した。この溶液を撹拌しながら、カーボンブラック「リーガル330R」(キャボット社製)320質量部を当該溶液に徐々に添加し、次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック株式会社製)を用いて分散処理することにより、ブラック着色剤粒子分散液(Bk-1)を調製した。
ブラック着色剤粒子分散液(Bk-1)における着色剤粒子の体積基準のメジアン径は、110nmであった。
【0121】
〈トナー14の作製〉
トナー1の作製において、凝集・融着工程でイエロー着色剤微分散液(Y-1)を添加せず、スチレン・アクリル樹脂粒子分散液1の添加量を556質量部に変更した以外は同様にして、トナー14を作製した。
【0122】
〈トナー15の作製〉
トナー1の作製において、凝集・融着工程でベンゾフェノン粒子分散液1を添加せず、スチレン・アクリル樹脂粒子分散液1の添加量を602質量部に変更した以外は同様にして、トナー15を作製した。
【0123】
〈トナー16の作製〉
トナー1の作製において、凝集・融着工程でスチレン・アクリル樹脂粒子分散液1の添加量を602質量部、ベンゾフェノン粒子分散液1の添加量を0.33質量部に変更した以外は同様にして、トナー16を作製した。
【0124】
〈トナー17の作製〉
トナー1の作製において、凝集・融着工程でスチレン・アクリル樹脂粒子分散液1の添加量を144質量部、ベンゾフェノン粒子分散液1の添加量を458質量部に変更した以外は同様にして、トナー17を作製した。
【0125】
《現像剤の作製》
上記のようにして作製したトナー1~17について、シクロヘキシルメタクリレートとメチルメタクリレートとの共重合樹脂(モノマー質量比=1:1)を被覆した体積平均粒子径30μmのフェライトキャリアを用い、トナー濃度が6質量%となるようにして混合し、現像剤1~16を製造し、以下の評価を行った。混合機は、V型混合機を用いて、30分間混合した。
【0126】
《評価》
作製した各トナー(現像剤)について、定着性及び色再現性の評価を行った。評価結果を表Iに示す。
なお、参考例20~22では、2色のトナーを用いて各評価を行った。
【0127】
〈定着性〉
定着性試験は、上記で得られた現像剤を用いて、常温常湿環境下(温度20℃、湿度50%RH)で行った。一方に現像剤、他方に普通紙(坪量:64g/m)を設置した一対の平行平板(アルミ)電極間に、現像剤を磁力によって摺動させながら配置し、電極間ギャップが0.5mm、DCバイアスとACバイアスとがトナー付着量3g/mとなる条件でトナーを現像させ、紙の表面にトナー層を形成し、各定着装置にて定着した印刷物を用いて行った。この印刷物の1cm角の画像を「JKワイパー(登録商標)」(日本製紙クレシア株式会社製)で10kPaの圧力をかけて10回こすり、画像の定着率で評価した。なお、定着率70%以上を合格とする。ここで、画像の定着率とは、プリント後の画像及びこすった後の画像の濃度を反射濃度計「RD-918」(サカタインクスエンジニアリング株式会社製)で測定し、こすった後のベタ画像の反射濃度をプリント後のベタ画像の反射濃度で除した値を百分率で表した数値である。
【0128】
定着装置としては、図1に示す画像形成装置における定着部24を用いて、表Iに示す各種条件に従い適宜改変して用いた。
参考例1~6、実施例7、参考例8、実施例9、参考例10~14、参考例19~22、及び比較例1~3において、光照射部91から照射される単色放射光の最大発光波長は365nmであり(単色放射光源:発光波長が365nm±20nmの波長領域のLED光源)、照射量は8J/cmである。なお、参考例19では、光照射後に加圧部により加圧した。
参考例15において、照射される単色放射光の最大発光波長は320nmであり(単色放射光源:発光波長が320nm±20nmの波長領域のLED光源)、照射量は8J/cmである。
参考例16において、照射される単色放射光の最大発光波長は385nmであり(単色放射光源:発光波長が385nm±20nmの波長領域のLED光源)、照射量は8J/cmである。
参考例17において、照射される単色放射光の最大発光波長は405nmであり(単色放射光源:発光波長が405nm±20nmの波長領域のLED光源)、照射量は8J/cmである。
参考例18において、照射される単色放射光の最大発光波長は500nmであり(単色放射光源:発光波長が500nm±20nmの波長領域のLED光源)、照射量は8J/cmである。
比較例4では、単色放射光を照射しなかった。
比較例5において、照射される単色放射光の最大発光波長は240nmであり(単色放射光源:発光波長が240nm±20nmの波長領域のLED光源)、照射量は8J/cmである。
比較例6において、照射される単色放射光の最大発光波長は700nmであり(単色放射光源:発光波長が700nm±20nmの波長領域のLED光源)、照射量は8J/cmである。
【0129】
〈色再現性〉
コピー用紙上の単色画像又は混色画像の色再現性を、10人のモニターによる目視評価により下記評価基準に従って評価した。なお、トナー付着量は0.7±0.05(mg/cm)の範囲内で評価した。
【0130】
◎:色再現性が特に優れている(鮮やかな色又は着色剤を含有しないクリアトナーであれば十分な透明感)
○:色再現性に優れている
△:多少の色汚染があるが、実用上問題ないレベルである(若干濁りのある色)
×:色汚染大で画像品質上問題あり(青色に近い、又は濁った青色の印象を受ける。マゼンタ画像の場合は、赤色に近い又は朱色っぽい印象を受ける)
【0131】
【表1】
【0132】
〈まとめ〉
表Iから明らかなように、参考例1~6、実施例7、参考例8、実施例9及び参考例10~22は、比較例1~6と比べて、定着性及び色再現性に優れていることがわかる。
以上から、結着樹脂と紫外線吸収剤とを含むトナー粒子を含有するトナーを用いた画像形成方法であって、前記結着樹脂が、スチレン・アクリル樹脂を含有し、前記紫外線吸収剤が、180~400nmの波長領域に最大吸収波長を持ち、少なくとも0℃以上の環境下では励起状態から異性化又は結合開裂の構造変化を伴わずに、無輻射失活により失活する化合物であり、前記紫外線吸収剤が、トリアジン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤及びジベンゾイルメタン系紫外線吸収剤から選択される少なくとも1種であり、紫外線吸収剤の含有率が、トナー粒子の総質量に対し、0.1~50質量%の範囲内であり、かつ、トナーを用いて形成されたトナー像を記録媒体上に転写する工程と、記録媒体上に転写されたトナー像に対して、放射光源から、300~405nmの波長領域にある最大発光波長±20(nm)の光を照射し、トナー像を前記紫外線吸収剤からの熱により溶融定着する工程と、を有する画像形成方法が、良好な定着性及び高い色再現性を実現することに有用であることが確認できた。
【符号の説明】
【0133】
1 画像形成装置
7 中間転写体ユニット
8 筐体
20 給紙カセット
21 給紙搬送部
22A、22B、22C、22D 中間ローラー
23 レジストローラー
24 定着部
25 排紙ローラー
26 排紙トレイ
70 中間転写体
71、72、73、74 ローラー
91 光照射部
92 定着ローラー
93 加圧ローラー
A 装置本体
5b 2次転写ローラー
6b クリーニング部
82L、82R 支持レール
P 記録媒体
SC 原稿画像読み取り装置
1Y、1M、1C、1Bk 電子写真感光体
2Y、2M、2C、2Bk 帯電部
3Y、3M、3C、3Bk 露光部
4Y、4M、4C、4Bk 現像部
5Y、5M、5C、5Bk 1次転写ローラー
6Y、6M、6C、6Bk クリーニング部
10Y、10M、10C、10Bk 画像形成ユニット
図1