(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】コイル部品及び電子装置
(51)【国際特許分類】
H01F 27/06 20060101AFI20221018BHJP
H01F 27/29 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
H01F27/06 101
H01F27/06 103
H01F27/29 H
(21)【出願番号】P 2017142107
(22)【出願日】2017-07-21
【審査請求日】2020-07-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】林 千春
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3054669(JP,U)
【文献】特開平07-192931(JP,A)
【文献】特開2009-246257(JP,A)
【文献】特開2009-111314(JP,A)
【文献】実開平04-093117(JP,U)
【文献】実開平05-038827(JP,U)
【文献】特開2004-031934(JP,A)
【文献】特開2000-124656(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0137818(US,A1)
【文献】特開2017-162950(JP,A)
【文献】登録実用新案第3213692(JP,U)
【文献】実公昭48-036571(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/06
H01F 27/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟磁性材料からなり、略直方体形状をした外装部と、
前記外装部に内蔵されたコイル導体と、
前記コイル導体の両端部であって、前記外装部の表面のうちの第1面から外部に引き出された1対の端子電極と、
前記外装部の表面のうちの前記第1面と前記第1面に垂直な第2面と前記第2面に平行な第3面とに接着され
、かつ、前記第1面から外部に引き出された前記1対の端子電極を露出させる台座部と、を備え、
前記外装部の前記第2面及び前記第3面は、前記外装部の表面のうちの前記第2面及び前記第3面以外の面よりも面積が大きく、
前記台座部は、前記外装部の前記第2面及び前記第3面の1/3以上の領域で前記第2面及び前記第3面に接着している、コイル部品。
【請求項2】
軟磁性材料からなり、略直方体形状をした外装部と、
前記外装部に内蔵されたコイル導体と、
前記コイル導体の両端部であって、前記外装部の表面のうちの第1面から外部に引き出された1対の端子電極と、
前記外装部の表面のうちの前記第1面と前記第1面に垂直な第2面と前記第2面に平行な第3面とに接着され
、かつ、前記第1面から外部に引き出された前記1対の端子電極を露出させる台座部と、を備え、
前記外装部の前記第1面を構成する4辺のうちの1つの辺が延びる方向を第1方向、前記1つの辺に交差する辺が延びる方向を第2方向、前記第1方向及び前記第2方向に交差する方向を第3方向としたとき、
前記台座部のうちの前記外装部の前記第2面及び前記第3面に対向する部分の前記第3方向の長さは、前記外装部の前記第2面及び前記第3面の前記第3方向の長さの1/2以上である、コイル部品。
【請求項3】
前記1対の端子電極は、前記外装部の前記第1面に略平行となるように折れ曲がって引き出され、
前記台座部は、前記1対の端子電極の前記外装部の前記第1面に略平行な部分よりも大きな切り欠き又は孔を底部に有し、
前記1対の端子電極は、前記台座部の前記切り欠き又は前記孔を介して外部に引き出されている、請求項1または2記載のコイル部品。
【請求項4】
前記台座部は、前記コイル部品を実装する際に半田が固着する1又は複数の金属層を有する、請求項1から3のいずれか一項記載のコイル部品。
【請求項5】
前記1又は複数の金属層は、錫層又は錫合金層を含む、請求項4記載のコイル部品。
【請求項6】
前記台座部は、前記1又は複数の金属層以外は樹脂で形成されている、請求項4または5記載のコイル部品。
【請求項7】
前記1又は複数の金属層が前記台座部から露出する総表面積は、前記外装部の前記第1面の面積の1/2以上である、請求項4から6のいずれか一項記載のコイル部品。
【請求項8】
前記1又は複数の金属層の前記台座部から露出する表面は、前記1対の端子電極の電極面と略同一面を形成する、請求項4から7のいずれか一項記載のコイル部品。
【請求項9】
前記外装部の前記第1面から前記1対の端子電極の電極面までの距離と前記外装部の前記第1面から前記1又は複数の金属層の前記台座部から露出する表面までの距離との差は15μm以下である、請求項4から8のいずれか一項記載のコイル部品。
【請求項10】
前記1対の端子電極は、前記外装部の前記第1面の異なる辺側に向かって前記第1面に略平行となって引き出されている、請求項1から9のいずれか一項記載のコイル部品。
【請求項11】
前記1対の端子電極は、前記外装部の前記第1面の対向する辺側に向かって前記第1面に略平行となって引き出されていて、
前記1対の端子電極が前記第1面に略平行に延びた方向における前記1又は複数の金属層の長さの総和は、前記延びた方向における前記1対の端子電極の長さの2倍以上である、請求項4から9のいずれか一項記載のコイル部品。
【請求項12】
前記1対の端子電極は、前記外装部の前記第1面に略垂直な方向に向かって前記台座部よりも突出して引き出されている、請求項1または2記載のコイル部品。
【請求項13】
前記コイル導体は、前記外装部の前記第1面に略平行な方向にコア軸を有する、請求項1から12のいずれか一項記載のコイル部品。
【請求項14】
前記台座部と前記外装部の前記第1面との間に設けられた接着剤を備え、
前記接着剤は、前記外装部の前記第1面のうちの1/2以上の領域を覆って設けられている、請求項1から13のいずれか一項記載のコイル部品。
【請求項15】
前記外装部の前記第1面を構成する4辺のうちの1つの辺が延びる方向を第1方向、前記1つの辺に交差する辺が延びる方向を第2方向、前記第1方向及び前記第2方向に交差する方向を第3方向としたとき、
前記外装部の前記第1方向の長さLと前記第2方向の長さWと前記第3方向の長さHとの関係は、H>L≧Wである、請求項1から14のいずれか一項記載のコイル部品。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項記載のコイル部品と、
前記コイル部品の前記1対の端子電極が接合された回路基板と、を備える電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マンガン亜鉛フェライトからなる枠コアと、マンガン亜鉛フェライトからなり、枠コア内に設けられた巻芯と、巻芯に巻回された巻線と、を備えるコイル部品が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、コイル部品の直流重畳特性を改善し且つ所望のインダクタンスを得るためには、コイル部品全体の大きさを大きくする必要がある。このため、コイル部品の大型化に伴って、コイル部品全体の重量が重くなり、例えば回路基板に実装した場合において外部からの振動及び衝撃に対する耐久性が低下してしまう。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、振動及び衝撃に対する耐久性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、軟磁性材料からなり、略直方体形状をした外装部と、前記外装部に内蔵されたコイル導体と、前記コイル導体の両端部であって、前記外装部の表面のうちの第1面から外部に引き出された1対の端子電極と、前記外装部の表面のうちの前記第1面と前記第1面に垂直な第2面と前記第2面に平行な第3面とに接着され、かつ、前記第1面から外部に引き出された前記1対の端子電極を露出させる台座部と、を備え、前記外装部の前記第2面及び前記第3面は、前記外装部の表面のうちの前記第2面及び前記第3面以外の面よりも面積が大きく、前記台座部は、前記外装部の前記第2面及び前記第3面の1/3以上の領域で前記第2面及び前記第3面に接着している、コイル部品である。また、本発明は、軟磁性材料からなり、略直方体形状をした外装部と、前記外装部に内蔵されたコイル導体と、前記コイル導体の両端部であって、前記外装部の表面のうちの第1面から外部に引き出された1対の端子電極と、前記外装部の表面のうちの前記第1面と前記第1面に垂直な第2面と前記第2面に平行な第3面とに接着され、かつ、前記第1面から外部に引き出された前記1対の端子電極を露出させる台座部と、を備え、前記外装部の前記第1面を構成する4辺のうちの1つの辺が延びる方向を第1方向、前記1つの辺に交差する辺が延びる方向を第2方向、前記第1方向及び前記第2方向に交差する方向を第3方向としたとき、前記台座部のうちの前記外装部の前記第2面及び前記第3面に対向する部分の前記第3方向の長さは、前記外装部の前記第2面及び前記第3面の前記第3方向の長さの1/2以上である、コイル部品である。
【0007】
上記構成において、前記1対の端子電極は、前記外装部の前記第1面に略平行となるように折れ曲がって引き出され、前記台座部は、前記1対の端子電極の前記外装部の前記第1面に略平行な部分よりも大きな切り欠き又は孔を底部に有し、前記1対の端子電極は、前記台座部の前記切り欠き又は前記孔を介して外部に引き出されている構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記台座部は、前記コイル部品を実装する際に半田が固着する1又は複数の金属層を有する構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記1又は複数の金属層は、錫層又は錫合金層を含む構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記台座部は、前記1又は複数の金属層以外は樹脂で形成されている構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記1又は複数の金属層が前記台座部から露出する総表面積は、前記外装部の前記第1面の面積の1/2以上である構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記1又は複数の金属層の前記台座部から露出する表面は、前記1対の端子電極の電極面と略同一面を形成する構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記外装部の前記第1面から前記1対の端子電極の電極面までの距離と前記外装部の前記第1面から前記1又は複数の金属層の前記台座部から露出する表面までの距離との差は15μm以下である構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記1対の端子電極は、前記外装部の前記第1面の異なる辺側に向かって前記第1面に略平行となって引き出されている構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記1対の端子電極は、前記外装部の前記第1面の対向する辺側に向かって前記第1面に略平行となって引き出されていて、前記1対の端子電極が前記第1面に略平行に延びた方向における前記1又は複数の金属層の長さの総和は、前記延びた方向における前記1対の端子電極の長さの2倍以上である構成とすることができる。
【0016】
上記構成において、前記1対の端子電極は、前記外装部の前記第1面に略垂直な方向に向かって前記台座部よりも突出して引き出されている構成とすることができる。
【0017】
上記構成において、前記コイル導体は、前記外装部の前記第1面に略平行な方向にコア軸を有する構成とすることができる。
【0018】
上記構成において、前記台座部と前記外装部の前記第1面との間に設けられた接着剤を備え、前記接着剤は、前記外装部の前記第1面のうちの1/2以上の領域を覆って設けられている構成とすることができる。
【0020】
上記構成において、前記外装部の前記第1面を構成する4辺のうちの1つの辺が延びる方向を第1方向、前記1つの辺に交差する辺が延びる方向を第2方向、前記第1方向及び前記第2方向に交差する方向を第3方向としたとき、前記外装部の前記第1方向の長さLと前記第2方向の長さWと前記第3方向の長さHとの関係は、H>L≧Wである構成とすることができる。
【0022】
本発明は、上記のいずれかに記載のコイル部品と、前記コイル部品の前記1対の端子電極が接合された回路基板と、を備える電子装置である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、振動及び衝撃に対する耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1(a)及び
図1(b)は、実施例1に係るコイル部品の斜視図である。
【
図2】
図2は、実施例1に係るコイル部品の側面図である。
【
図3】
図3(a)及び
図3(b)は、外装部を形成するコアの斜視図である。
【
図4】
図4(a)及び
図4(b)は、コイル導体の斜視図である。
【
図6】
図6は、台座部の他の例を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、実施例2に係るコイル部品の斜視図である。
【
図8】
図8(a)及び
図8(b)は、実施例3に係るコイル部品の斜視図である。
【
図9】
図9は、実施例3に係るコイル部品の側面図である。
【
図10】
図10は、実施例4に係るコイル部品の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0026】
図1(a)及び
図1(b)は、実施例1に係るコイル部品の斜視図である。
図2は、実施例1に係るコイル部品の側面図である。
図1(a)は、コイル部品100を実装面とは反対側から見た斜視図、
図1(b)は、コイル部品100を実装面側から見た斜視図である。
図2では、外装部10を透視して外装部10に内蔵されたコイル導体40などを図示している。なお、コイル部品100を回路基板に実装したときに、コイル部品100に対して回路基板が鉛直下方向に位置することを前提にして上下方向を規定する。
図1(a)、
図1(b)、及び
図2のように、実施例1のコイル部品100は、外装部10と、コイル導体40と、台座部60と、を備えるインダクタ素子である。
【0027】
外装部10は、2つのコア12が例えば熱硬化性樹脂などの接着剤によって接合され形成されている。外装部10は、略直方体形状をしていて、下面14(実装面)、下面14に対向する上面16、下面14及び上面16に交差し且つ互いに平行な側面18及び側面20、並びに下面14、上面16、側面18、及び側面20に交差し且つ互いに平行な側面22及び側面24を外側表面に有する。なお、略直方体形状とは、完全な直方体形状の場合に限らず、例えば各頂点が丸みを帯びている場合、各稜(各面の境界部)が丸みを帯びている場合、又は各面が曲面を有している場合などを含むものである。
【0028】
外装部10の下面14を構成する4辺のうちの1つの辺が延びる方向を第1方向、この1つの辺に交差する辺が延びる方向を第2方向、第1方向及び第2方向に交差(例えば直交)する方向を第3方向とする。実施例1では、外装部10において、第1方向の長さLは第2方向の長さW以上の長さであり、第3方向の長さHは第1方向の長さLよりも長くなっている。すなわち、H>L≧Wの関係となっている。例えば、第1方向の長さLは10mm~25mm程度、第2方向の長さWは10mm~25mm程度、第3方向の長さHは15mm~25mm程度である。側面18及び側面20は、外装部10の外表面のうちの他の面よりも面積の大きい面となっている。
【0029】
外装部10は、内部に空洞26を有し、下面14に空洞26に連通する開口部28を有する。外装部10は、空洞26内に柱状部30を有する。柱状部30は、下面14及び上面16に略平行に延在している。なお、外装部10の外側表面に例えば厚さが10μm~50μm程度のガラス又は熱硬化性樹脂などの絶縁膜が設けられていてもよい。これにより、絶縁性及び防錆性が向上する。
【0030】
図3(a)及び
図3(b)は、外装部を形成するコアの斜視図である。
図3(a)及び
図3(b)のように、コア12は、円柱形状をした柱状部30と、柱状部30を3方向から囲む3つの壁部34と、柱状部30と壁部34とを連結する連結部32と、を有する。これにより、柱状部30は、連結部32及び壁部34で囲まれた空洞26内に形成されている。連結部32と柱状部30及び壁部34との角度は丸みを帯びた形状に面取りされている。これにより、振動及び衝撃に対する耐久性が向上する。柱状部30と壁部34の高さは略同じになっている。2つのコア12の柱状部30同士が接合し且つ壁部34同士が接合することで、外装部10が形成される。コア12は、例えば結晶質の金属磁性材料、アモルファスの金属磁性材料、又はフェライトなどの磁性材料で形成されている。すなわち、外装部10は軟磁性材料で形成されている。例えば、結晶質の金属磁性材料としては、Fe-Si-Cr、Fe-Si-Al、Fe―Cr-Al、又はFeなどが挙げられる。例えば、アモルファスの金属磁性材料としては、Fe-Nb-B、Fe-Nb-B-Sn、Fe-B、Fe-Si-B、Fe-Si-B-C、Fe-Si-B-P、Fe-Si-B-C-P、又はこれらのナノ結晶を含むものが挙げられる。例えば、フェライトなどの磁性材料としては、Ni-Znフェライトなどが挙げられる。これらの磁性材料を用い、樹脂で磁性材料を固めたもの又は熱処理により焼結されたものがコア12となる。また、2つのコア12は、それぞれ同じ磁性材料であってもよいし、異なる磁性材料であってもよいし、異なる形成方法で形成されたものであってもよい。また、コア12は、樹脂又はガラスなどで表面がコーティングされていてもよい。これにより、環境変化による表面状態の変化や寸法変化などが抑えられ、コア12と台座部60との接着などへの影響も抑えられる。また、コア12に用いる磁性材料は、Fe比の高い材料とすることで高い電流特性を得られる。一方、Fe比の高い材料は、比重も高くなるため、これらを考慮し選択される。一例としては、Fe又はFeを含む合金の磁性材料を用いることで、高い性能のコイル部品を得ることができ、コイル部品の小型化を図ることが可能となる。
【0031】
コイル導体40について、
図1(a)、
図1(b)、及び
図2に加えて、
図4(a)及び
図4(b)を用いて説明する。
図4(a)及び
図4(b)は、コイル導体の斜視図である。
図4(a)は、コイル導体40を上方側から見た斜視図、
図4(b)は、端子電極44及び端子電極46に半田50が形成された状態の斜視図である。コイル導体40は、外装部10の空洞26内であって柱状部30の周囲に配置された螺旋状部42と、螺旋状部42から延びた両端部である端子電極44及び端子電極46と、を有する。螺旋状部42は外装部10の下面14及び上面16に略平行な方向に螺旋状に巻かれた形状になっているため、コイル導体40のコア軸は外装部10の下面14及び上面16に略平行な方向となっている。
【0032】
端子電極44及び端子電極46は、外装部10の下面14から外部に引き出されている。端子電極44及び端子電極46は、外装部10の下面14の対向する辺側に向かって下面14に平行となって引き出されていて、第2方向に延びている。なお、端子電極44及び端子電極46は、外装部10の下面14の対向する辺ではなくて異なる辺側に向かって下面14に平行となって引き出されていて、第2の方向ではなく、第1の方向に向かって延びていてもよい。
【0033】
コイル導体40は、例えば幅が2.0mm~3.2mm程度の平角線コイルであるが、丸線コイルであってもよい。コイル導体40は、絶縁被膜(例えばポリアミドイミド)付きの導線(例えば銅(Cu)線)からなる。端子電極44及び端子電極46では絶縁被膜が剥離されている。端子電極44及び端子電極46は、一例としてはコイル導体40と一体であるが、別の一例としてはコイル導体40とは別体であり、電気的に接合された形態であってもよい。端子電極44及び端子電極46の電極面(下面)48には、コイル部品100を回路基板に実装する際に用いられる半田50が形成される。半田50は、例えばSn-3Ag-0.75Cuの組成からなる半田である。半田50が形成されている面が電極面48となる。電極面48は端子電極44及び端子電極46の実装面である下面に少なくとも形成されていればよいが、端子電極44及び端子電極46の下面と側面に形成されている場合が好ましく、下面と側面と上面に形成されている場合がより好ましい。これにより、コイル部品100を強固に回路基板に実装できる。
【0034】
図2のように、コイル導体40の螺旋状部42と外装部10との間に接着剤90が設けられていて、螺旋状部42は接着剤90によって外装部10に接着されている。接着剤90は、例えば熱硬化性樹脂であり、一例としてイミダゾール系硬化剤を用いたエポキシ樹脂である。接着剤90に熱硬化性樹脂を用いることで、耐熱性及び接着強度を向上させることができる。
【0035】
次に、台座部60について、
図1(a)、
図1(b)、及び
図2に加えて、
図5(a)及び
図5(b)を用いて説明する。
図5(a)及び
図5(b)は、台座部の斜視図である。
図5(a)は、外装部10が接着される側から見た台座部60の斜視図、
図5(b)は、外装部10が接着される側とは反対側から見た台座部60の斜視図である。台座部60は、1組の切り欠き66を有する底部62と、底部62の対向する辺に接続された側部64と、を有する。台座部60の底部62が外装部10の下面14に対向して配置され、側部64が側面18及び側面20に対向して配置されることで、台座部60は外装部10に装着される。外装部10に内蔵されたコイル導体40の両端部である端子電極44及び端子電極46は、台座部60の切り欠き66を介して外部に引き出されている。
【0036】
台座部60の底部62には、側部64側での高さが一段高くなるような段差が形成されている。この段差の部分に接着剤92が埋め込まれることで、台座部60の底部62は外装部10の下面14及び下面14で露出したコイル導体40に接着されている。接着剤92は、例えば熱硬化性樹脂であり、一例としてイミダゾール系硬化剤を用いたエポキシ樹脂である。接着剤92は、外装部10の下面14のうちの1/2以上の領域を覆って設けられている。
【0037】
台座部60の側部64は、外装部10の側面18及び側面20に接着剤94で接着されている。接着剤94は、接着剤92と同じく、例えば熱硬化性樹脂であり、一例としてイミダゾール系硬化剤を用いたエポキシ樹脂である。台座部60の側部64は、外装部10の側面18及び側面20のうちの1/3以上の領域に接着されている。
【0038】
台座部60は、コイル部品100を回路基板に実装する際に半田が固着する1又は複数の金属層68を有する。金属層68は、半田が良好に濡れ広がるように半田濡れ性の高い金属で形成されていて、例えば錫層又は錫合金層を含んで形成されている。金属層68は、一例として、銅又はリン青銅などの銅合金の表面に錫めっきが施されている。台座部60の金属層68以外の部分は、例えば樹脂で形成されている。樹脂としては、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS:Poly Phenylene Sulfide)などの耐熱性の熱可塑性樹脂、又は、エポキシ樹脂、ジアリルフタレート樹脂、及びフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂を用いることができる。
【0039】
1又は複数の金属層68の底部62の下面から露出する表面は、端子電極44及び端子電極46の電極面48と同一面を形成している。また、1又は複数の金属層68の第2方向の長さの総和は、端子電極44及び端子電極46それぞれの第2方向の長さの2倍以上となっている。金属層68は、底部62の中心に対して対称な位置となるように設けられていることが好ましく、また、対称な位置に設けられた金属層68の底部62の下面から露出する表面の面積は互いに等しいことが好ましい。
【0040】
実施例1によれば、
図1(a)及び
図1(b)のように、外装部10の表面のうちの端子電極44及び端子電極46が外部に引き出された下面14と下面14に垂直な側面18と側面18に平行な側面20とに台座部60が接着されている。これにより、例えばコイル部品100を回路基板に実装するときの衝撃及び実装後の振動によって端子電極44及び端子電極46に掛かる機械的応力が台座部60に分散されるようになる。つまり、端子電極44及び端子電極46に掛かる機械的応力が低減される。よって、コイル部品100に加わる振動及び衝撃に対する耐久性を向上させることができる。
【0041】
また、実施例1によれば、
図5(a)及び
図5(b)のように、台座部60は切り欠き66を有する。
図1(a)及び
図1(b)のように、端子電極44及び端子電極46は、台座部60の切り欠き66を介して外部に引き出されている。これにより、コイル部品100が受けた負荷は台座部60で吸収され、端子電極44及び端子電極46への負荷を抑えることができる。つまり、端子電極44及び端子電極46は、台座部60と直接接していない方がよい。これにより台座部60から端子電極44及び端子電極46に直接掛かる負荷を低く抑えられ、端子電極44及び端子電極46に求められる回路基板との電気的な接続を確保することができる。
図6は、台座部の他の例を示す斜視図である。
図6のように、台座部60aは、切り欠きの代わりに底部62を貫通する孔70を有していてもよい。端子電極44及び端子電極46は、台座部60aの孔70を介して外部に引き出されるようになる。この場合でも、振動及び衝撃に対する耐久性を向上させることができる。
【0042】
また、実施例1によれば、
図5(b)のように、台座部60は、コイル部品100を回路基板に実装する際に半田が固着する1又は複数の金属層68を有する。これにより、コイル部品100を回路基板に実装するときの衝撃及び実装後の振動によって端子電極44及び端子電極46に掛かる機械的応力が台座部60に分散され易くなる。よって、振動及び衝撃に対する耐久性を更に向上させることができる。端子電極44及び端子電極46と金属層68とを回路基板に半田で固着させて機械的応力が台座部60に分散され易くするために、金属層68の台座部60から露出する表面は端子電極44及び端子電極46の電極面48と略同一面を形成することが好ましい。なお、略同一面とは、完全な同一面を形成する場合に限られず、製造誤差程度の段差又は端子電極44及び端子電極46と金属層68とが共に回路基板に半田で固着できる程度の段差を有する場合を含むものである。例えば、
図2のように、外装部10の下面14から端子電極44及び端子電極46の電極面48までの距離X1と外装部10の下面14から金属層68の表面までの距離X2との差が15μm以下であれば、端子電極44及び端子電極46と金属層68とを共に回路基板に半田で固着させることができる。半田固着の点から、距離X1と距離X2との差は、10μm以下の場合が好ましく、5μm以下の場合がより好ましい。
【0043】
また、実施例1によれば、
図1(a)及び
図1(b)のように、端子電極44及び端子電極46は、外装部10の下面14の異なる辺側に向かって下面14に略平行となって引き出されている。これにより、端子電極44及び端子電極46それぞれの引き出される方向のいずれの方向から掛かる負荷に対しても、互いに負荷を負担しあい、結果として回路基板への実装状態を確保できる。また、
図1(a)では、端子電極44及び端子電極46の引き出しの方向は、第2方向の互いに外側に向う方向となっている。つまり、端子電極44及び端子電極46それぞれの先端の距離を大きく取ることで、掛かる負荷をより分散させることができ、更に振動及び衝撃に対する耐久性の効果が高められる。なお、略平行とは、完全に平行の場合だけでなく、製造誤差程度の傾き又は回路基板への実装の際に問題とならない程度の傾きを有する場合を含むものである。
【0044】
また、実施例1によれば、
図1(a)及び
図1(b)のように、端子電極44及び端子電極46は、外装部10の下面14の対向する辺側に向かって下面14に略平行となって引き出されている。そして、端子電極44及び端子電極46が外装部10の下面14に略平行に延びた第2方向における1又は複数の金属層68の長さの総和は、第2方向における端子電極44及び端子電極46の長さの2倍以上となっている。これにより、台座部60のうちの回路基板に半田で固着する部分の面積が大きくなるため、台座部60に機械的応力を効果的に分散させることができる。なお、台座部60に機械的応力を効果的に分散させる点から、第2方向における1又は複数の金属層68の長さの総和は第2方向における端子電極44及び端子電極46の長さの2.5倍以上の場合が好ましく、3倍以上の場合がより好ましい。
【0045】
また、実施例1によれば、台座部60は、金属層68以外は樹脂で形成されている。台座部60の金属層68以外の部分が樹脂で形成されていることで、台座部60の外装部10への密着性を向上させることができる。また、台座部60の製造が容易となる。台座部60を形成する樹脂はフィラーを含んでいてもよい。フィラーを含む事で、台座部60の機械的強度を高めることができ、さらに台座部60の線膨張係数を低くすることも可能となる。なお、台座部60は、金属層68以外の部分も金属で形成されていてもよい。台座部60を金属で形成することで、台座部60の機械的強度を高めることができ、さらには金属による磁気的なシールド効果を得ることも可能となる。この場合、台座部60の金属層68以外の部分は、半田の濡れ広がりを抑えるために、金属層68よりも半田濡れ性の低い材料で形成されていることが好ましい。
【0046】
また、実施例1によれば、台座部60と外装部10の下面14との間に設けられた接着剤92は、外装部10の下面14のうちの1/2以上の領域を覆って設けられている。これにより、台座部60を外装部10及びコイル導体40に強固に接着させることができる。台座部60の接着の点から、接着剤92は外装部10の下面14のうちの2/3以上の領域を覆っている場合が好ましく、3/4以上の領域を覆っている場合がより好ましい。
【0047】
また、実施例1によれば、外装部10の側面18及び側面20は、外装部10の表面のうちの他の面よりも面積が大きい面である。そして、台座部60は、外装部10の側面18及び側面20の1/3以上の領域に接着している。これにより、台座部60を外装部10に強固に接着させることができる。台座部60の接着の点から、台座部60は外装部10の側面18及び側面20の1/2以上の領域に接着していることが好ましく、2/3以上の領域に接着していることがより好ましい。
【0048】
また、実施例1によれば、
図1(a)及び
図1(b)のように、外装部10の第1方向の長さL、第2方向の長さW、第3方向の長さHは、H>L≧Wの関係となっている。つまり、外装部10の下面14は面積の小さい面である。したがって、コイル部品100を回路基板に実装する際に回路基板を占有する面積を小さくすることができる。なお、外装部10の第1方向の長さL、第2方向の長さW、第3方向の長さHは、H>L>Wの関係の場合でもよい。
【0049】
また、実施例1によれば、
図2のように、コイル導体40は、外装部10の下面14及び上面16に略平行な方向にコア軸を有する。これにより、コイル部品100を回路基板に実装する際の、回路基板側のランド電極に対する磁束の干渉を気にせずに済むことから、ランド電極の配置を気にしなくて済み、さらにランド電極の面積を大きくすることが可能となり実装強度が向上できる。
【実施例2】
【0050】
図7は、実施例2に係るコイル部品の斜視図である。
図7のように、実施例2のコイル部品200では、台座部60に設けられた1又は複数の金属層68の台座部60の下面から露出する総表面積が、外装部10の下面14の面積の1/2以上となっている。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0051】
実施例2のように、1又は複数の金属層68の台座部60から露出する総表面積が外装部10の下面14の面積の1/2以上となることで、回路基板に半田で固着する台座部60の面積が大きくなるため、機械的応力を台座部60に効果的に分散させることができる。台座部60に機械的応力を効果的に分散させる点から、1又は複数の金属層68の台座部60から露出する総表面積は外装部10の下面14の面積の2/3以上の場合が好ましく、3/4以上の場合がより好ましい。
【実施例3】
【0052】
図8(a)及び
図8(b)は、実施例3に係るコイル部品の斜視図である。
図8(a)及び
図8(b)のように、実施例3のコイル部品300では、台座部60の側部64のうちの側面18及び側面20に対向する部分の第3方向の長さが、外装部10の側面18及び側面20の第3方向の長さの1/2以上となっている。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0053】
実施例3のように、台座部60のうちの外装部10の側面18及び側面20に対向する部分の第3方向の長さが側面18及び側面20の第3方向の長さの1/2以上となることで、台座部60を外装部10に強固に接着させることができる。さらに、コイル部品300の上面側の台座部60に支持されていない部分から受ける力である回転モーメントを小さくすることもできる。台座部60のうちの外装部10の側面18及び側面20に対向する部分の第3方向の長さは側面18及び側面20の第3方向の長さの2/3以上の場合が好ましく、3/4以上の場合がより好ましい。
【0054】
図9は、実施例3に係るコイル部品の側面図である。なお、
図9では、
図2と同様に、外装部10を透視して外装部10に内蔵されたコイル導体40などを図示している。
図9のように、台座部60の底部62の下面から側部64の上面までの距離m1は、底部62の下面からコイル部品300の重心までの距離m2よりも長くなっている。これにより、外装部10の台座部60の側部64の上面と接する部位95が、部位95より上面側に位置するコイル部品300の部分から受ける回転モーメントを小さくできる。また、H>L>W又はH>L≧Wのように重心位置の高いものについては、さらに回転モーメント大きくなることから、このような負荷に対してもより大きな効果が得られる。
【実施例4】
【0055】
図10は、実施例4に係るコイル部品の斜視図である。
図10のように、実施例4のコイル部品400では、端子電極44及び端子電極46は、外装部10の下面14から下面14に略垂直な方向に向かって台座部60よりも突出して引き出されている。その他の構成は、実施例1と同じであるため説明を省略する。
【0056】
端子電極44及び端子電極46は、実施例1のように、外装部10の下面14の異なる辺側に向かって下面14に略平行となって引き出されていてもよいし、実施例4のように、外装部10の下面14に略垂直な方向に向かって台座部60よりも突出して引き出されていてもよい。なお、略垂直とは、完全に垂直の場合だけでなく、製造誤差程度の傾き又は回路基板への実装の際に問題とならない程度の傾きを有する場合を含むものである。
【実施例5】
【0057】
図11は、実施例5に係る電子装置の断面図である。
図11のように、実施例5の電子装置500は、回路基板96の上面に設けられたランド電極97に、実施例1のコイル部品100の端子電極44及び端子電極46が半田98によって接合されている。台座部60の金属層68は、回路基板96の金属層99に半田98によって接合されている。これにより、コイル部品100が回路基板96に実装されている。
【0058】
実施例5によれば、回路基板96のランド電極97にコイル部品100の端子電極44及び端子電極46が接合されている。このため、端子電極44及び端子電極46に機械的応力が掛かることがあるが、実施例1で説明したように、機械的応力が台座部60に分散されるようになるため、端子電極44及び端子電極46に掛かる機械的応力が低減される。よって、振動及び衝撃に対する耐久性を向上させることができる。
【0059】
なお、実施例5では、回路基板96上に実施例1のコイル部品100が実装される場合を例に示したが、実施例2から実施例4のコイル部品が実装される場合でもよい。
【0060】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0061】
10 外装部
12 コア
14 下面
16 上面
18~24 側面
26 空洞
28 開口部
30 柱状部
32 連結部
34 壁部
40 コイル導体
42 螺旋状部
44、46 端子電極
48 電極面
50 半田
60、60a 台座部
62 底部
64 側部
66 切り欠き
68 金属層
70 孔
90~94 接着剤
95 部位
96 回路基板
97 ランド電極
98 半田
99 金属層
100~400 コイル部品
500 電子装置