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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】多発性骨髄腫(MM)の処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20221018BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20221018BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221018BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221018BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
A61K39/395 T
A61K31/573
A61P35/00
A61P43/00 121
C07K16/28 ZNA
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017558542
(86)(22)【出願日】2016-05-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-06-14
(86)【国際出願番号】 EP2016060810
(87)【国際公開番号】W WO2016180958
(87)【国際公開日】2016-11-17
【審査請求日】2019-05-09
【審判番号】
【審判請求日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】15167597.2
(32)【優先日】2015-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】316005432
【氏名又は名称】モルフォシス・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】レクレア,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】エンデル,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルトレ,ステファン
【合議体】
【審判長】岡崎 美穂
【審判官】冨永 みどり
【審判官】馬場 亮人
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-542191(JP,A)
【文献】History of Changes for Study: NCT01421186,ClinicalTrials.gov archive,2015年 3月18日,URL,https://clinicaltrials.gov/ct2/history/NCT01421186?V_9=View
【文献】ソルコート静注液100mg,添付文書,富士製薬工業株式会社,第10版,p.1-4
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
C07K16/00-16/44
C12N15/00-15/90
ClinicalTrials.gov archive
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多発性骨髄腫の治療に用いるための医薬組成物であって、当該医薬組成物が:
(i)CD38に特異的な抗体であって、配列GFTFSSYYMN(配列番号1)またはSYYMN(配列番号2)のHCDR1領域、配列GISGDPSNTYYADSVKG(配列番号3)のHCDR2領域、配列DLPLVYTGFAY(配列番号4)のHCDR3領域、配列SGDNLRHYYVY(配列番号5)のLCDR1領域、配列GDSKRPS(配列番号6)のLCDR2領域、および配列QTYTGGASL(配列番号7)のLCDR3領域を含む抗体からなり、
前記抗体が、16mg/kg以上の用量にて、少なくとも週にわたって、週1回(q1w)投与され、また、デキサメタゾンと組み合わせて投与されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の医薬組成物において、前記抗体が、静脈内に投与されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項3】
請求項1乃至2の何れか1項に記載の医薬組成物において、前記抗体が、2時間の期間にわたって、静脈内に投与されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の医薬組成物において、前記抗体が、配列
【化1】
の可変重鎖、および配列
【化2】
の可変軽鎖を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の医薬組成物において、前記抗体が、IgG1 Fc領域を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の医薬組成物において、デキサメタゾンが、週1回(q1W)、20mgまたは40mgにて投薬されることを特徴とする医薬組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の医薬組成物において、デキサメタゾンが、経口的に投与されることを特徴とする医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含有し、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。前記ASCIIのコピーは、2016年5月4日に作成され、MS231 PCT_SL.txtと名付けられ、8,236バイトのサイズである。
【背景技術】
【0002】
多発性骨髄腫は、増殖指標が低く、かつ生存期間が長い、骨髄における分泌性形質細胞の潜在的な蓄積によって特徴付けられるB細胞悪性腫瘍である。疾患は最終的に、骨および骨髄を攻撃して、多発性の腫瘍および病変が骨格系の至る所で生じる。
【0003】
全ての癌のおおよそ1%、および全ての血液悪性腫瘍の10%強が、多発性骨髄腫(MM)に起因している可能性がある。MMの発生率は、診断時点の年齢の中央値が約61歳である高齢の集団において上昇する。多発性骨髄腫の現在利用可能な療法として、化学療法、幹細胞移植、Thalomid(登録商標)(サリドマイド)、Velcade(登録商標)(ボルテゾミブ)、Aredia(登録商標)(パミドロン酸)、およびZometa(登録商標)(ゾレドロン酸)が挙げられる。化学療法剤、例えばビンクリスチン、BCNU、メルファラン、シクロホスファミド、アドリアマイシン、およびプレドニゾンまたはデキサメタゾンの併用が挙げられる現在の処置プロトコルは、約5%の完全寛解率しかもたらさず、生存期間の中央値は、診断の時点からおおよそ36~48ヵ月である。高用量の化学療法に続く自己由来の骨髄または末梢血単核細胞の移植を利用する最近の進歩により、完全寛解率は上昇し、そして寛解期間は延びた。それでも、全体的な生存期間は僅かにしか長くならず、治癒の証拠は得られなかった。最終的に、MM患者は多くの場合、インターフェロン-アルファ(IFN-a)単独での、またはステロイドと併用した維持療法を受けてさえ、再発する。
【0004】
CD38は、そのような悪性B細胞、形質細胞、および他のリンパ球上で発現される抗原の一例である。CD38に起因する機能として、接着事象およびシグナル伝達事象、ならびに(細胞外)酵素活性における受容体媒介が挙げられる。細胞外酵素として、CD38は、環状ADPリボース(cADPR)およびADPRだけでなく、ニコチンアミドおよびニコチン酸アデニンジヌクレオチドリン酸(NAADP)の形成用の基質として、NAD+を用いる。cADPRおよびNAADPは、Ca2+動員用の第2のメッセンジャとして作用することが示されてきた。NAD+をcADPRに変換することによって、CD38は、細胞外NAD+濃度を調節し、そしてそれ故に、NAD起因性細胞死(NCID)の調節によって細胞の生存を調節する。Ca2+を介したシグナル伝達に加えて、CD38シグナル伝達が、T細胞およびB細胞上の抗原受容体複合体、または他のタイプの受容体複合体、例えばMHC分子とのクロストークを介して起こり、そしてこのようにして、いくつかの細胞反応だけでなく、IgGのスイッチングおよび分泌にも関与する。
【0005】
CD38に特異的な抗体が、国際公開第1999/62526号パンフレット(Mayo Foundation);国際公開第2002/06347号パンフレット(Crucell Holland);米国特許出願公開第2002/164788号明細書(Jonathan Ellis)(その全体が参照によって組み込まれる);国際公開第2005/103083号パンフレット(MorphoSys AG)、米国特許出願第10/588568号明細書(その全体が参照によって組み込まれる)、国際公開第2006/125640号パンフレット(MorphoSys AG)、米国特許出願第11/920830号明細書(その全体が参照によって組み込まれる)、および国際公開第2007/042309号パンフレット(MorphoSys AG)、米国特許出願第12/089806号明細書(その全体が参照によって組み込まれる);国際公開第2006/099875号パンフレット(Genmab)、米国特許出願第11/886932号明細書(その全体が参照によって組み込まれる);ならびに国際公開第08/047242号パンフレット(Sanofi-Aventis)、米国特許出願第12/441466号明細書(その全体が参照によって組み込まれる)に記載されている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、第1に、再発性または難治性の多発性骨髄腫(MM)の患者での、CD38モノクローナル抗体MOR202によるヒト臨床試験において観察される特定の驚くべき発見に関する。
【0007】
患者の更なる研究および処置に適した用量を同定するために、薬物動態データおよび臨床反応の徹底的な評価が揃えられた。驚くべきことに、患者の全奏効率、奏効期間、進行までの時間(TTP)、および/または無増悪生存期間(PFS)と、8mg/kg以上または16mg/kg以上の投薬との間に相関が観察された。
【0008】
驚くべきことに、週1回q1wの16mg/kgの投与を受けた患者の全奏効率が、隔週1回q2wの4mg/kg、もしくは週1回q1wの4mg/kg、および/または隔週1回q2wの8mg/kg、もしくは週1回q1wの8mg/kgを受けた患者に対して、有意に改善することが判明した。
【0009】
したがって、患者の更なる研究および処置に適した用量選択が、そのような発見に基づいて選択され得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、抗体MOR202の可変ドメインのアミノ酸配列を示す。
図2図2は、少なくとも1処置サイクルを受けたコホート5~8の患者について、最良の奏効および処置時間を示す。
図3図3は、少なくとも1処置サイクルを受けたコホート5~8の患者について、Mタンパク質の最良の変化を示す。
図4図4は、再発性/難治性多発性骨髄腫を患う成人対象での、MOR03087(MOR202)の臨床試験における、MOR202用量対全奏効結果を示す。
図5図5は、再発性/難治性多発性骨髄腫を患う成人対象での、MOR03087(MOR202)の臨床試験における、最良の奏効に従うMOR202のトラフレベルを示す。
図6図6は、再発性/難治性多発性骨髄腫を患う成人対象での、MOR03087(MOR202)の臨床試験における、あらゆる注入関連反応を示す。
図7A図7Aは、再発性/難治性多発性骨髄腫を患う成人対象での、MOR03087(MOR202)の臨床試験における、MOR202血清濃度を経時的に示す。
図7B図7Bは、再発性/難治性多発性骨髄腫を患う成人対象での、MOR03087(MOR202)の臨床試験における、MOR202血清濃度を経時的に示す。
図7C図7Cは、再発性/難治性多発性骨髄腫を患う成人対象での、MOR03087(MOR202)の臨床試験における、MOR202血清濃度を経時的に示す。
図7D図7Dは、再発性/難治性多発性骨髄腫を患う成人対象での、MOR03087(MOR202)の臨床試験における、MOR202血清濃度を経時的に示す。
図8図8は、再発性/難治性多発性骨髄腫を患う成人対象における、MOR03087(MOR202)の臨床試験における、特定の投薬レジメンに由来するMOR202の平均トラフレベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
用語「抗体」は、モノクローナル抗体を意味し、あらゆるアイソタイプ、例えば、IgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEが挙げられる。IgG抗体は、2つの同じ重鎖および2つの同じ軽鎖で構成され、これらはジスルフィド結合によって結合される。重鎖および軽鎖はそれぞれ、定常領域および可変領域を含有する。各可変領域は、「相補性決定領域」(「CDR」)または「超可変領域」と呼ばれる3つのセグメントを含有し、これらは主に、抗原のエピトープへの結合を担っている。これらは、CDR1、CDR2、およびCDR3と呼ばれ、N末端から順番に番号が付けられている。CDRの外側の可変領域の、より高度に保存された部分は、「フレームワーク領域」と呼ばれる。「抗体フラグメント」は、Fv、scFv、dsFv、Fab、Fab’ F(ab’)2フラグメント、または他の、それぞれがCDRおよびフレームワーク領域を含有する、少なくとも1つの可変重鎖もしくは可変軽鎖を含有するフラグメントを意味する。
【0012】
「VH」は、抗体または抗体フラグメントの免疫グロブリン重鎖の可変領域を指す。「VL」は、抗体または抗体フラグメントの免疫グロブリン軽鎖の可変領域を指す。
【0013】
「CDR」は、本明細書中で、Chothia et alまたはKabat et alの何れかによって定義される。Chothia C,Lesk AM.(1987)Canonical structures for the hypervariable regions of immunoglobulins.J Mol Biol.,196(4):901-17(その全体が参照によって組み込まれる)参照。Kabat E.A,Wu T.T.,Perry H.M.,Gottesman K.S.and Foeller C.(1991).Sequences of Proteins of Immunological Interest.5th edit.,NIH Publication no.91-3242,US Dept.of Health and Human Services,Washington,DC.参照。
【0014】
用語「CD38」は、CD38として知られているタンパク質を指し、以下の同義語がある:ADP-リボシルシクラーゼ1、cADPrヒドロラーゼ1、環状ADPリボースヒドロラーゼ1、T10。
【0015】
ヒトCD38は、以下のアミノ酸配列を有する。
【0016】
「MOR202」、抗CD38抗体のアミノ酸配列が、図1に示されている。MOR202は、米国特許第8088896号明細書に開示されており、この特許は、参照によってその全体が組み込まれる。「MOR202」および「MOR03087」は、同義語として用いられ、図1に示される抗体を説明する。
【0017】
MOR202可変重ドメインをコードするDNA配列は、以下のものである。
【0018】
MOR202可変軽ドメインをコードするDNA配列は、以下のものである。
【0019】
MOR202は、IgG1 Fc領域を有する。
【0020】
医薬組成物として、活性剤、例えばヒトにおける治療用途用の抗体が挙げられる。医薬組成物は、医薬的に許容可能なキャリアまたは賦形剤を追加的に含んでよい。
【0021】
「多発性骨髄腫」は、形質細胞骨髄腫、骨髄腫症、またはKahler病(Otto Kahlerに因む)としても知られており、抗体の産生を通常担う白血球の一タイプである形質細胞の癌である。多発性骨髄腫において、異常な形質細胞の集まりが骨髄内に蓄積し、これがそこで正常な血球の産生を妨害する。また、多発性骨髄腫の殆どの症例が、異常な抗体パラプロテインの産生を特徴とし、これは腎臓の障害を引き起こす虞がある。また、多くの場合、骨病変および高カルシウム血症(高血中カルシウムレベル)も起きる。
【0022】
多発性骨髄腫は、一般的に関与する骨の血液試験(血清タンパク質電気泳動、無血清カッパ/ラムダ軽鎖アッセイ)、骨髄検査、尿タンパク質電気泳動、およびX線で診断される。
【0023】
Mタンパク質または骨髄腫タンパク質は、典型的には多発性骨髄腫における、形質細胞の異常なクローン増殖によって過剰に産生される異常な免疫グロブリンフラグメントまたは免疫グロブリン軽鎖である。
【0024】
「投与された」または「投与」は、注射可能な形態による、例えば静脈内経路、筋肉内経路、皮内経路、皮下経路、または粘膜経路の、例えば、点鼻薬もしくは吸入用のエーロゾルとして、または摂取可能な溶液、カプセル、もしくは錠剤としての、医薬組成物の送達を指す。
【0025】
本開示に従って投与される抗体は、治療的に有効な量で患者に投与される。「治療的に有効な量」は、所定の疾患または障害、すなわちMMおよびその合併症の臨床症状を治療し、緩和し、または部分的に抑えるのに十分な量を指す。
【0026】
mg/kgは、体重キログラムあたりの抗体ミリグラムを意味する。
【0027】
「Cmax」は、サンプリングインターバル内で観察される抗体の最も高い血漿濃度を指す。
【0028】
「AUC」または「曲線下面積」は、完全なサンプル収集インターバルにわたって台形の公式によって算出される、血漿中濃度-時間の曲線下面積を指す。
【0029】
治療的効果に至る薬物用量はまた、曲線下面積によって測定される患者への総曝露に換算して説明され得る。
【0030】
特定の治療目的に有効な量は、疾患または損傷の重篤度に、そして対象の体重および全身状態によって決まることとなる。適切な投薬量の決定が、ルーチンの実験を用いて、値のマトリックスを構築して、当該マトリックスにおける様々な点を試験することによって達成され得、これらは全て、訓練を受けた医師または臨床科学者の通常の技術の範囲内であることが理解されよう。
【0031】
本開示の抗体は、様々な時点にて投与され得、処置サイクルは、異なる長さを有してよい。抗体は、毎日、隔日、週3回、毎週、または隔週、投与されてよい。抗体はまた、少なくとも4週にわたって、少なくとも5週にわたって、少なくとも6週にわたって、少なくとも7週にわたって、少なくとも8週にわたって、少なくとも9週にわたって、少なくとも10週にわたって、少なくとも11週にわたって、または少なくとも12週にわたって投与されてよい。
【0032】
用語「エピトープ」は、抗体に特異的に結合することができ、またはそうでなければ、分子と相互作用することができる、あらゆるタンパク質決定因子を含む。エピトープ決定因子は一般に、アミノ酸、または炭水化物側鎖もしくは糖側鎖等の分子の化学的に活性な表面グルーピングからなり、特異的な三次元構造特性、および特異的な電荷特性を有し得る。エピトープは、「線状」であっても「立体構造」であってもよい。用語「線状エピトープ」は、タンパク質と、相互作用する分子(例えば抗体)との相互作用点が全て、タンパク質の一次アミノ酸配列(連続的)に沿って線状に出現するエピトープを指す。用語「立体構造エピトープ」は、非連続的なアミノ酸が三次元構造で集合しているエピトープを指す。立体構造エピトープにおいて、相互作用点は、タンパク質上の、互いに分離されているアミノ酸残基の全体にわたって出現する。
【0033】
実施形態
態様は、多発性骨髄腫の処置が必要な対象において多発性骨髄腫を処置する方法であって、対象に、CD38に特異的な抗体の治療的に有効な量を投与することを含み、前記抗体は、配列GFTFSSYYMN(配列番号1)またはSYYMN(配列番号2)のHCDR1領域、配列GISGDPSNTYYADSVKG(配列番号3)のHCDR2領域、配列DLPLVYTGFAY(配列番号4)のHCDR3、配列SGDNLRHYYVY(配列番号5)のLCDR1領域、配列GDSKRPS(配列番号6)のLCDR2領域、および配列QTYTGGASL(配列番号7)のLCDR3領域を含み、前記抗体は、8mg/kg以上の用量にて投与される。
【0034】
態様は、CD38に特異的な抗体の使用を含み、前記抗体は、多発性骨髄腫の処置用の医薬の製造において、配列GFTFSSYYMN(配列番号1)またはSYYMN(配列番号2)のHCDR1領域、配列GISGDPSNTYYADSVKG(配列番号3)のHCDR2領域、配列DLPLVYTGFAY(配列番号4)のHCDR3、配列SGDNLRHYYVY(配列番号5)のLCDR1領域、配列GDSKRPS(配列番号6)のLCDR2領域、および配列QTYTGGASL(配列番号7)のLCDR3領域を含み、前記抗体は、8mg/kg以上の用量にて投与される。
【0035】
特定の実施形態において、本開示は、CD38に特異的な抗体に関し、前記抗体は、多発性骨髄腫の処置に用いられる配列GFTFSSYYMN(配列番号1)またはSYYMN(配列番号2)のHCDR1領域、配列GISGDPSNTYYADSVKG(配列番号3)のHCDR2領域、配列DLPLVYTGFAY(配列番号4)のHCDR3、配列SGDNLRHYYVY(配列番号5)のLCDR1領域、配列GDSKRPS(配列番号6)のLCDR2領域、および配列QTYTGGASL(配列番号7)のLCDR3領域を含み、前記抗体は、8mg/kg以上の用量にて投与される。
【0036】
実施形態において、抗体は、配列GFTFSSYYMN(配列番号1)のHCDR1領域を含む。
【0037】
実施形態において、抗体は、配列SYYMN(配列番号2)のHCDR1領域を含む。
【0038】
実施形態において、多発性骨髄腫は、再発性/難治性である。
【0039】
特定の実施形態において、CD38に特異的な開示される抗体は、16mg/kg以上の用量にて投与される。
【0040】
特定の実施形態において、抗体は、少なくとも8週にわたって、2週毎に1回(q2w)投与される。
【0041】
特定の実施形態において、抗体は、少なくとも8週にわたって、週1回(q1w)投与される。
【0042】
特定の実施形態において、抗体は、静脈内に投与される。
【0043】
特定の実施形態において、抗体は、2時間にわたって、静脈内に投与される。
【0044】
特定の実施形態において、抗体は、配列
の可変重鎖、および配列
の可変軽鎖を含む。
【0045】
特定の実施形態において、抗体は、IgG1 Fc領域を含む。
【0046】
実施形態において、抗体は、デキサメタゾンと組み合わせて投与される。
【0047】
実施形態において、抗体は、デキサメタゾンと組み合わせて投与され、デキサメタゾンは、週1回(q1W)、20mgまたは40mgにて投薬される。
【実施例
【0048】
実施例1:患者の選択
研究は、ヒト抗CD38抗体MOR03087(MOR202)の安全性および予備的な有効性を特徴付けるための、再発性/難治性多発性骨髄腫を患う成人対象における、単剤療法としての、そして再発性/難治性多発性骨髄腫を患う成人対象における、標準的な治療と組み合わせての、非盲検の、マルチセンターでの、服用漸増(3+3設計)研究であった。ClinicalTrials.gov Identifier:NCT01421 186。
【0049】
患者は、以下の基準を満たすならば、当該研究に参加する資格があった:
1.>18歳であった、
2.以下として定義される再発性または難治性の多発性骨髄腫:
【0050】
パートA、BおよびC:
(i)免疫調節剤およびプロテアソーム阻害剤を(一緒に、または異なる療法の一部として)含んだ少なくとも2回の前治療の失敗、(ii)全ての対象は、多発性骨髄腫の最後の前治療の間またはその後に、進行を実証した
【0051】
パートD:
(i)レナリドマイドおよびプロテアソーム阻害剤を含む少なくとも2回の前治療、(ii)全ての対象は、多発性骨髄腫の最後の前治療後の60日の間に、またはその60日以内に、進行を実証した
【0052】
パートE:
(i)少なくとも1回の前治療を受けた、(ii)全ての対象は、多発性骨髄腫の最後の前治療の間またはその後に、進行を実証した
【0053】
更なる包含基準は、以下の通りであった:
1.100mLあたり≧0.5g(≧5g/L)の血清Mタンパク質、および/または24時間あたり≧200mgの尿Mタンパク質の存在
2.絶対的好中球数(ANC)≧1,000/mm3
3.ヘモグロビン≧8g/dL、そして
4.全ての研究に関連した手順、医薬品の使用、および評価を遵守する能力。
【0054】
主な除外基準は、原発性、難治性MM;孤立形質細胞腫または形質細胞性白血病;および以前の同種間幹細胞移植であった。
【0055】
表1Aおよび表1Bは、本研究で処置した患者の患者背景を記載している。
【0056】
実施例2:研究設計
第1の研究結果の測定値は、以下の通りであった:
1.デキサメタゾン(DEX)あり、そしてなしの単剤療法としての、そしてポマリドミド(POM)/DEXおよびレナリドマイド(LEN)/DEXと組み合わせた、MOR202の最大耐容用量(MTD)および/または推奨される用量/スケジュールを同定。
2.有害事象(AE)の発生率および重篤度によって安全性を評価。
3.MOR202の免疫原性を評価。
【0057】
第2の結果の測定値は、以下の通りであった:
1.POM/DEXおよびLEN/DEXなし、そしてありのMOR202の薬物動態(PK)を評価。
2.全奏効率、奏効期間、進行までの時間、および無増悪生存期間を同定。
【0058】
患者を、以下のコホートに割り当てた:
【0059】
処置サイクルは28日であった。最初のMOR03087用量は、パートAにおいて0.01mg/kg、パートBおよびパートCにおいて4mg/kg、そしてパートDおよびパートEにおいて8mg/kgであった;全てのパートにおいて、MOR03087用量は、最大16mg/kgまで漸増した。パートAにおいて、患者は、MOR03087の静脈内注入を隔週で受け、サイクルの1日目および15日目に投与した。パートBからパートEにおいて、患者は、MOR03087の静脈内注入を毎週受け、サイクルの1日目、8日目、15日目、および22日目に投与した。
【0060】
全てのパートにおいて、MOR03087の負荷用量を、サイクル1の4日目に投与した。
【0061】
可能であれば、デキサメタゾンを患者に経口投与した;28日サイクルの1日目、8日目、15日目、および22日目に40mg(≦75歳)または20mg(>75歳)。更なる用量を、サイクル1の4日目に投与した。
【0062】
関連するコホートについて、28日サイクルの1~21日目に4mgのポマリドミドを患者に経口投与した。
【0063】
関連するコホートについて、28日サイクルの1~21日目に25mgのレナリドミドを患者に経口投与した。
【0064】
全てのパートついて、疾患進行まで、または第1の処置後最大2年まで、患者を処置することにする。
【0065】
実施例3:研究の完了
免疫調節薬物およびプロテアソーム阻害剤を含む2回の前治療が失敗したrrMM患者において、パートA~パートCを行った。
【0066】
処置の期間は、以下の通りであった:
パートA(コホート1~6)の患者を、最大で2サイクルについてだけ(2×28日)処置した。その後のコホートの患者を、疾患進行(PD)まで、最大2年間、処置した/することにする。
【0067】
MOR202の投与経路は、2時間の静脈内(IV)注入であった。
【0068】
前投薬は、可能であれば、解熱剤、ヒスタミンH1受容体遮断薬であった。
【0069】
パートA~パートEの完了直後、確証コホート(それぞれ≧6人の患者)について、MTDを確認するように計画し、かつ/またはデキサメタゾン(q1wまたはq2w)あり、そしてなしの単剤療法としての、そしてPOM/DEXおよびLEN/DEX(q1w)と組み合わせた、MOR202の用量/スケジュールを推奨する。
【0070】
2015年4月13日現在、42人の患者を処置した;コホート1~4、および5~8において、それぞれ14人および28人の患者。
【0071】
2015年10月26日現在、合計52人の患者を処置し、これらの患者の17人を、臨床的に関連する用量レジメンで処置した。
【0072】
実施例4:毒性評価
42人(100%)の患者が、原因に拘りなく、処置中に有害事象(AE)を経験した。
【0073】
18人(42.9%)の患者の処置を中止し、3人(7.1%)の患者は、疑わしい因果関係のためであった。
【0074】
処置に関連する死亡はなかった。
【0075】
MOR202の最大耐容用量(MTD)にはまだ到達していなかった。
【0076】
表2は、最も頻繁に報告されたAEを示している。
【0077】
注入耐性
2時間のIV注入が、全ての患者において実行可能であった。注入関連反応(IRR)が、DEXなしのMOR202を受けた13人(31%)の患者において、主に第1の注入中に起こった。
【0078】
全てのIRRは、1人の患者(悪性度3)以外、悪性度1~2であった。
【0079】
IRRは、DEXを受けた患者において起こらなかった。IRRを図6に示す。
【0080】
実施例5:施した処置および奏効の評価
図2は、2015年4月13日現在の奏効を示す。図3は、現在までのMタンパク質の変化を示す。
【0081】
全ての患者の全奏効率、奏効期間、進行までの時間、および無増悪生存期間を評価することにする。
【0082】
実施例6:薬物動態
図7A図7Dは、MOR202血清濃度を経時的に示している。4mg/kgをq2wで処置した殆どの患者において、ドミナント標的媒介性シンク作用(dominant target-mediated sink effect)が観察されて、低い、または少しも検出可能でない血清トラフレベルの原因となった。図7Aおよび図7C参照。対照的に、≧4mg/kgをq1wで処置した患者は、一定した、または僅かに増大したトラフレベルを示した。図7Bおよび図7D参照。
【0083】
図7Aおよび図7Cにおける8mg/kgおよび16mg/kgのq2wでのデータは、用量漸増が、これらのより高い用量レベルにて、完全な標的飽和に至ることを示している。
【0084】
MOR202(4mg/kg、q1w)のモデル化血清濃度を、測定した患者のデータと比較することによって、2~3週の終末消失半減期が推定された。
【0085】
1人の患者のみ(0.15mg/kg q2w)、一過性の抗MOR202抗体反応を示した。
【0086】
PKデータは、8および16mg/kgをq1w受けた患者の大部分における完全な標的占有の可能性を示している。
【0087】
驚くべきことに、隔週1回q2w、および/または週1回q1wの8mg/kgの投与を受けた患者の全奏効率、奏効期間、進行までの時間、および/または無増悪生存期間が、隔週1回q2wの4mg/kgまたは週1回q1wの4mg/kgを受けた患者に対して、有意に改善することが判明した。
【0088】
驚くべきことに、隔週1回q2w、および/または週1回q1wの16mg/kgの投与を受けた患者の全奏効率、奏効期間、進行までの時間、および/または無増悪生存期間が、隔週1回q2wの4mg/kg、もしくは週1回q1wの4mg/kg、および/または隔週1回q2wの8mg/kg、もしくは週1回q1wの8mg/kgを受けた患者に対して、有意に改善することが判明した。
【0089】
図4は、多発性骨髄腫の処置において、週1回q1wの16mg/kgのMOR202投薬の優れた全奏効率を示している。図5は、MOR202の最小トラフレベルと臨床反応との直接的な関係を支持しており、トラフレベルが高いほど、臨床反応は良好になる。図8は、MOR202用量と、投薬の頻度と、トラフレベルとの直接的な関係を支持しており、より高トラフレベルは、より高い用量に関連したことを示している。
【0090】
要約すると、驚くべきことに、週1回q1wの16mg/kgの投与を受けた患者の全奏効率が、隔週1回q2wの4mg/kg、もしくは週1回q1wの4mg/kg、および/または隔週1回q2wの8mg/kg、もしくは週1回q1wの8mg/kgを受けた患者に対して、有意に改善することが判明した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
【配列表】
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