(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】ゴム補強用芳香族ポリアミド短繊維集束体およびゴム組成物
(51)【国際特許分類】
D06M 15/693 20060101AFI20221018BHJP
D06M 15/41 20060101ALI20221018BHJP
D06M 15/55 20060101ALI20221018BHJP
D06M 15/564 20060101ALI20221018BHJP
C08J 5/06 20060101ALI20221018BHJP
D06M 101/36 20060101ALN20221018BHJP
【FI】
D06M15/693
D06M15/41
D06M15/55
D06M15/564
C08J5/06 CEQ
D06M101:36
(21)【出願番号】P 2018033351
(22)【出願日】2018-02-27
【審査請求日】2020-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】岡村 脩平
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-183315(JP,A)
【文献】国際公開第2015/159795(WO,A1)
【文献】特開2012-207326(JP,A)
【文献】特開2013-167040(JP,A)
【文献】特開2005-194668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00-15/715
C08J 5/04- 5/10
F16G 1/00-17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単繊維繊度が0.2~0.8dtexであり、その長さが0.3~12mmである芳香族ポリアミド短繊維を10本~5万本集束した
短繊維集束体であって、当該短繊維
集束体の幅[mm]/厚み[mm]が
6.36以上であることを満たす扁平形状である
短繊維集束体の表面に、
レゾルシン・ホルマリン・ラテックスとイソシアネート化合物とエポキシ化合物を含有する集束剤を含有する集束剤が付着しており、
各単繊維に対するエポキシ化合物およびイソシアネート化合物の固形分付着量が単繊維の重量を基準として、0.05~5.0重量%であることを特徴とする、ゴム補強用芳香族ポリアミド短繊維集束体。
【請求項2】
請求項
1に記載のゴム補強用芳香族ポリアミド繊維集束体を未加硫ゴム中に、5~25重量%配合し混練り加硫した短繊維補強ゴム。
【請求項3】
JIS K6251のダンベル状3号形を用いた方法にて引張試験を実施した5%伸長時の応力が7MPa以上、10%伸長時の応力が13MPa以上であることを特徴とする請求項
2に記載の短繊維補強ゴム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム補強用芳香族ポリアミド短繊維集束体に関するものである。また、本発明により得られる芳香族ポリアミド短繊維集束体は、ゴム資材の補強材料として、タイヤ、ベルト、ホース、その他の広範囲の分野に利用される。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴムベルト等の力学特性を向上させるため、加硫可能なゴムにセルロース、ビニロン、ナイロン、ポリエステルなどの短繊維が配合されてきた。特に、これらの短繊維のうち芳香族ポリアミド(アラミド)短繊維は機械的特性、耐疲労性、耐熱性および化学的性質に優れているためゴム補強用短繊維として広く使用されている。しかしながら、芳香族ポリアミド短繊維は比較的表面が不活性であるためにゴムとの接着力が低い。また、ゴム配合時の分散性が悪いため、ゴムの混練時に繊維を均一に投入できないという問題があった。またマルチフィラメントの状態での集束性が乏しいために、短繊維にカットする際に短繊維が飛散しやすく、かつファイバーボールを形成しやすいという問題があった。そのため、芳香族ポリアミド繊維の優れた特性を十分に発揮することができなかった。
【0003】
このような問題を解決するために、特許文献1では短繊維の長さや切断方法を変更することによって分散性に優れた芳香族ポリアミド繊維の集束体を得る方法が開示されている。しかしながら、芳香族ポリアミド繊維の特性を十分に発揮し、ゴム製品としての性能を向上させるためには、さらなる改良の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく誠意検討を進めた結果、ゴム製品のモジュラスや耐摩耗性向上に有効なゴム補強用芳香族ポリアミド短繊維集束体を提供するに至った。すなわち、本発明は以下のようになる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のゴム補強用芳香族ポリアミド短繊維集束体は、単繊維繊度が0.1~1.5dtexであり、その長さが0.3~12mmである芳香族ポリアミド短繊維を10本~5万本集束した集束体であって、当該短繊維の幅[mm]/厚み[mm]が2.5以上であることを満たす扁平形状であることを特徴とする。
【0007】
さらには、芳香族ポリアミド短繊維の表面に、レゾルシン・ホルマリン・ラテックスとイソシアネート化合物とを含有する集束剤とを含有する集束剤が付着しており、集束剤の短繊維重量に対する固形分付着量が5~10重量%であり、イソシアネート化合物の添加量が、レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス樹脂の全重量あたり、0.5~40重量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、分散性や接着性に優れかつゴム製品のモジュラスや耐摩耗性向上に有効なゴム補強用芳香族ポリアミド短繊維集束体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0010】
本発明の芳香族ポリアミド短繊維集束体とは、芳香族ポリアミド繊維からなる短繊維が集束した集束体である。集束体としては、芳香族ポリアミド短繊維を10本~5万本集束したものであることが好ましい。さらには、100本~1万本、より好ましくは1200本~5000本の繊維束である。
【0011】
本発明の芳香族ポリアミド短繊維集束体は、芳香族ポリアミド繊維からなる短繊維が集束した集合体である。集束体は、幅[mm]/厚み[mm]の値が2.5より大きい扁平形状となることが好ましく、より好ましくは3より大きい範囲である。また、当該形状は処理剤を付着させる際に、各種ガイドで開繊しながら処理剤を含む溶液に浸漬し、浸漬後の連続繊維束を絞りロールで圧縮し円形状から扁平形状に成形した後、処理剤を乾燥・硬化させることで扁平形状が得られる。扁平形状とすることで、繊維束を構成する単繊維間内部まで処理剤が含浸しやすくなり、強固な集束性と、ゴム接着性を有する短繊維を得ることができる。
【0012】
また、扁平形状とすることで、繊維束の各繊維は外圧に対して離間しやすくなる。これは、扁平形状であるため、混練り時に発生する扁平形状の幅方向(長手方向)に加わる外力が、薄さ方向(厚さ方向)には分散しにくく、繊維が幅方向に圧縮されるように応力を受けて歪むことで繊維束から分散(剥離)しやすいためであると推測される。円形または楕円形の場合、外力が分散されるため分散が進まず、繊維塊として残存しやすくなると推測される。すなわち、本発明の集束体は、ゴム中に混練する際の外力(剪断力等)により均一に分散し、補強材として有効な働きを有するものである。
【0013】
本発明の芳香族ポリアミド短繊維集束体を構成する各繊維の単繊維繊度としては、0.1~1.5dtexであることが好ましい。さらには0.2dtex~1.0dtexの範囲であることが好ましい。繊度が細すぎる場合には、断糸や毛羽が発生するために、良好な品質の繊維を安定して生産することが困難になるだけでなく、コストも高くなる傾向にある。一方、繊度が大きすぎる場合は、単位断面積あたりのゴムと短繊維との接触面積(表面積)が小さくなるため、ゴムの変形応力に対して拮抗するゴムと短繊維の接着力が不十分となり、ゴムの変形時に短繊維の一部、或いは大部分が破断せずに引き抜かれた状態になるため、繊維の特性を十分に生かし切ることができず、十分な補強物性が得られないと考えられている。
【0014】
また、本発明の芳香族ポリアミド短繊維集束体の各短繊維の繊維長としては、0.3~12mmであることが好ましく、さらには0.3~3.5mmであることが好ましい。繊維長が短すぎる場合には、複数本の単繊維が集束した、良好な短繊維集束体を得る事が困難となり取扱性、作業性が困難となる傾向にある。また逆に繊維長が長すぎる場合には、補強対象のマトリックスと混合する際に単繊維同士が絡み合い、分散不良となりやすい傾向にある。
【0015】
本発明の芳香族ポリアミド短繊維集束体とは、芳香族ポリアミド繊維からなる短繊維が集束した集束体である。ここで芳香族ポリアミド繊維とは、ポリアミドを構成する繰返し単位の80モル%以上好ましくは90モル%以上が、芳香族ホモポリアミド、または、芳香族コポリアミドからなる繊維である。ここで繊維となる芳香族基は同一、または相異なる芳香族基からなるものでも構わない。また、芳香族基の水素原子は、ハロゲン原子、低級アルキル基、フェニル基で置換されていても良い。具体的には、パラ型芳香族ポリアミド繊維であるポリパラフェニレンテレフタルアミド繊維(例えば、テイジンアラミドB.V.製、「トワロン」)や、共重合型の芳香族ポリアミド繊維であるコポリパラフェニレン・3,4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維(例えば、帝人株式会社製、「テクノーラ」)、メタ型芳香族ポリアミド繊維であるポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維(例えば、帝人株式会社製、「コーネックス」)等が例示される。
【0016】
また、本発明の集束体としては、このような芳香族ポリアミド繊維の中でも特にパラ型芳香族ポリアミド繊維であることが、耐熱性および強度に優れており好ましい。ここでパラ型芳香族ポリアミド繊維とは、芳香族ポリアミドの延鎖結合が共軸または平行で、かつ、反対方向に向いているポリアミドからなる繊維である。
【0017】
具体的には、共重合型のパラ型芳香族ポリアミド繊維であるコポリパラフェニレン・3,4’-オキシジフェニレン・テレフタルアミド繊維(例えば、帝人株式会社製、「テクノーラ」)は、耐屈曲疲労性に優れることから、ゴムとの混練時に強いせん断応力下で混練されても損傷することがないため、ゴムのモジュラスや耐摩耗性向上に非常に有効であることから好ましい。
【0018】
本発明の芳香族ポリアミド短繊維集束体は、ゴムラテックスを含有する樹脂被膜によって集束されていることが好ましい。その際の樹脂被膜の固形分付着量は5~10重量%であることが好ましい。これら樹脂被膜は、単繊維表面を活性化させゴムとの接着力を向上させることが可能であり、さらに、靱性のある皮膜で集束することで、ゴムとの混練工程まで集束体形状を維持することを可能とし、混練工程前に単繊維がばらけることでファイバーボールが形成されることを抑制できる。
【0019】
さらに、芳香族ポリアミド短繊維集束体は、レゾルシン・ホルマリン・ラテックスを含有する樹脂被膜によって集束されていることが好ましい。レゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂としては、レゾルシンとホルムアルデヒドのモル比が1:0.6~1:8の範囲にあるものが好ましく、1:0.8~1:6の範囲にあるものがさらに好ましい。ホルムアルデヒドの量が少なすぎる場合、レゾルシン・ホルマリンの縮合物の架橋密度が低下すると共に分子量の低下を招くため、樹脂層の凝集力が低下し、接着性の低下や耐屈曲疲労性の低下する傾向があり好ましくない。他方、ホルムアルデヒドの量が多すぎる場合、レゾルシン・ホルマリン縮合物の架橋密度が上昇し、硬化するため、被着体のゴムとの共加硫時にレゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂とゴムとの相溶化が阻害され接着性が低下する傾向があり好ましくない。
【0020】
レゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂におけるレゾルシン・ホルマリンとゴムラテックスとの配合比率は、固形分重量比として、レゾルシン・ホルマリン:ゴムラテックスが、好ましくは1:3~1:16の範囲、さらに好ましくは1:4~1:10である。ゴムラテックスの比率が少なすぎる場合、ゴムとの共加硫成分が少なくなりすぎるため接着力が低下する傾向があり好ましくない。他方、ゴムラテックスの比率が多すぎる場合、接着剤皮膜として充分な強度を得ることができないため、集束性が低下する傾向があり好ましくない。
【0021】
本発明のレゾルシンは、予めオリゴマー化したレゾルシン-ホルマリン初期縮合物やクロロフェノールとレゾルシンをホルマリンとオリゴマー化した多核クロロフェノール系レゾルシン-ホルマリン初期縮合物を、単独または組み合わせて用いてもよい。
【0022】
ゴムラテックスとしては、例えば、水素添加アクリロニトリルーブタジエンゴムラテックス、アクリロニトリル-ブタジエンラテックス、イソプレンゴムラテックス、ウレタンゴムラテックス、スチレン-ブタジエンゴムラテックス、ビニルピリジン-スチレン-ブタジエンゴムラテックス、クロロプレンゴムラテックス、ブタジエンゴムラテックス、クロロスルホン化ポリエチレンラテックスを例示することができ、これらを単独または併用して使用することができる。特に各種樹脂との親和性が高く、また樹脂層の強度を高めることができることから、ゴムラテックスとして、ビニルピリジン-スチレン-ブタジエンゴムラテックス共重合体を用いることが好ましい。
【0023】
更にレゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂に、架橋剤として、イソシアネート化合物を併用することが好ましい。なかでも、処理剤の経時安定性がよく、レゾルシン・ホルマリン・ラテックスとの相互作用が良好なことから、ブロックドイソシアネート化合物が好ましい。このブロックドイソシアネート化合物として、ジメチルピラゾールブロック、メチルエチルケトンオキシムブロック、カプロラクタムブロックのブロックドイソシアネートを例示することができる。これらは単独または組み合わせて用いてもよい。
【0024】
イソシアネート化合物の添加量は、レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス樹脂の全重量あたり、0.5~40重量%が好ましく、さらには10~30重量%であることが好ましい。添加量を増やすと通常は接着力が向上するが、添加量が多すぎると接着剤のゴムに対する相容性が低下し、ゴムとの接着力が低下する傾向があり好ましくない。
【0025】
また、本発明の目的を阻害しない範囲で、集束剤に平滑剤、乳化剤、制電剤、難燃剤、耐光剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防錆剤、抗菌剤、顔料、シランカップリング剤、無機系微粒子などの機能剤を包含してもよく、また、繊維製造工程で付与する工程処理剤(油剤など)を除去することは必須とされない。
【0026】
芳香族ポリアミド短繊維に、上記のような集束剤を付与する方法としては、混合水溶液処理剤として該処理剤溶液を満たした液浴に浸漬する方法、走行する糸に集束剤水溶液を付与した駆動ローラーを接触させる方法等が挙げられる。また、処理剤の固形分付着量を調整するために、圧接ローラーによる絞り、スクレバーによるかき落とし、空気吹きつけによる吹き飛ばし、吸引、ビーターなどの手段を適時用いることができる。
【0027】
上記の集束剤は繊維への付着後に、100℃~250℃の温度で60~300秒間の乾燥、熱処理を行うことで接着層を形成することができる。芳香族ポリアミド繊維に接着層を形成させるためには、100~180℃の温度で60~240秒間の乾燥させ、次いで200~245℃の温度で60~240秒間の熱処理を行うことが好ましいが、集束剤水溶液の固形分付着量に応じて適宜調整した上で条件は設定することができる。
【0028】
また、本発明の芳香族ポリアミド短繊維集束体は、繊維の強度を向上させるためにも、一旦長繊維として製造した後に短繊維にカットすることが好ましい。カットの方法としては、芳香族ポリアミド繊維集束体の切断が可能ないずれのカッターを用いてカットしてもよく、具体的にはロータリーカッター、ギロチンカッター等を用いてカットすればよい。カットの時期としては、繊維に集束剤を付与、乾燥した後であることが作業性や品質の均一化のためには好ましい。
【0029】
また、短繊維混練ゴム(ゴムシート)は、集束体の分散性の確保およびゴム組成物としての性能を向上するためにも、短繊維集束体を未加硫ゴム中へ配合する際に、短繊維集束体をゴムポリマー当たり5~25重量%となるように配合することが好ましい。
【0030】
また、短繊維混練ゴム(ゴムシート)は、ゴム組成物の性能の指標である、JIS K6251のダンベル状3号形を用いた方法にて引張試験を実施した5%伸長時の応力が7MPa以上、10%伸長時の応力が13MPa以上であることが好ましい。
【0031】
また、本発明に使用する芳香族ポリアミド繊維は、ゴムラテックスを含有する集束剤の内層で、各単繊維の一部、或いは全体がエポキシ化合物によって予め処理されていても構わない。これにより、各単繊維とゴムラテックスを含有する集束剤の親和性が向上し、より集束性が向上する。
【0032】
各単繊維に対するエポキシ化合物やイソシアネート化合物の固形分付着量は、単繊維の重量を基準として、好ましくは0.05~5.0重量%、さらに好ましくは0.2~2.0重量%である。表面処理に用いるエポキシ化合物としては、具体的には、エチレングリコール、グリセロール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール等の多価アルコールとエピクロルヒドリンの如きハロゲン含有エポキシドとの反応生成物、レゾルシン、ピス(4-ヒドロキシフェニル)ジメチルメタン、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、レゾルシン・ホルムアルデヒド樹脂等の多価フェノールと前記ハロゲン含有エポキシドとの反応生成物、過酢酸または過酸化水素等で不飽和化合物を酸化して得られるポリエポキシド化合物、すなわち3,4-エポキシシクロヘキセンエポキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ビス(3、4-エポキシ-6-メチル-シクロヘキシルメチル)アジベートを挙げることができる。これらのうち、多価アルコールとエピクロルヒドリンとの反応生成物が好ましく、多価アルコールのポリグリシジルエーテル化合物のようなポリエポキシド化合物と硬化剤により生成される化合物も好ましい。
【0033】
ポリエポキシド化合物を用いる場合には、乳化剤、例えばアルキルベンゼンスルフォン酸ソーダ、ジオクチルスルフォサクシネートナトリウム塩を用いて、乳化液としてもよい。また、ポリエポキシド化合物には、アミン系やイミダゾール系の硬化剤、ポリイソシアネートとオキシム、フェノール、カプロラクタムなどのブロック化剤との付加化合物であるブロックドポリイソシアネート、エチレンイミンとの反応化合物であるエチレン尿素を併用してもよい。
【0034】
ポリエポキシ化合物を用いる場合、ポリエポキシド化合物の重量をA重量部とし、硬化剤、ブロックドポリイソシアネートおよびエチレン尿素の重量をB重量部としたときの両者の関係が、0.05≦(A)/〔(A)+(B)〕≦0.9の条件を満たすことが好ましい。この範囲であると、特に良好な接着性を得ることができる。
【0035】
芳香族ポリアミド繊維にエポキシ化合物で表面処理する場合、例えば、エポキシ化合物を含む溶液をパラ型芳香族ポリアミド繊維の製糸工程で油剤と混合して繊維の単糸に付着させる、或いは芳香族ポリアミド繊維の製糸後、製糸工程とは別の工程で処理剤を繊維の単繊維に付着させ、付着後100~250℃の温度で10~120秒間熱処理することで、表面処理することができる。
【0036】
このような本発明の芳香族ポリアミド短繊維集束体は、扁平形状であるため処理剤が含浸しやすく、かつ混練り工程前まで繊維束状態を保つため、製造時の取扱性が良好で、ゴム等との混練り工程等にて複合する事により、組成物中で繊維が均一に分散・配置されることによって、機械的強度および耐摩耗性に優れた芳香族ポリアミド繊維強化ゴム組成物を提供する事ができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例で用いた評価方法は下記の通りである。
【0038】
(1)繊維長
得られた芳香族ポリアミド短繊維集束体から無作為に50本の集束体を選び、目盛付きの顕微鏡にて各集束体の繊維長を測定し、その平均値を繊維長とした。
【0039】
(2)短繊維集束体の幅
得られた芳香族ポリアミド短繊維集束体から無作為に50本の集束体を選び、目盛付きの顕微鏡にて各集束体の幅を測定し、その平均値を幅とした。
【0040】
(3)短繊維集束体の厚み
得られた芳香族ポリアミド短繊維集束体から無作為に50本の集束体を選び、(株)テクロック製の定圧厚さ測定器(JIS K6328準拠)にて各集束体の厚さを測定し、その平均値を厚みとした。
【0041】
(4)短繊維集束体の嵩密度
短繊維束を1000mlメスシリンダーに100g採取し、このメスシリンダーを30mmの高さから落下させることを10回繰り返して、そのメスシリンダーの短繊維束の体積Vとその重量W(g)から下記式を用いて算出した。嵩密度(g/l)=W/V
【0042】
(5)短繊維混練ゴムの5%応力、10%応力
短繊維集束体を表1に示すエチレンプロピレンジエンゴムを主成分とする未加硫ゴム中に、短繊維集束体をエチレンプロピレンジエンゴムポリマー当たり10重量%となるように配合し、MS加圧型ニーダー(DS3-10MHHS守山製作所株式会社製)にて80℃以下の温度で8分間混練した。その後、オープンロール(関西ロール(株)製 9インチテストロール)にて0.6~0.7mm厚さにシート出しを行った。その後、シートを積層し、150℃で30分間、1MPaの条件でプレス加硫により2mm厚の短繊維混練ゴム(ゴムシート)を作成した。
得られた短繊維混練ゴム(ゴムシート)について、短繊維の配向方向にサンプルを切り出し、JIS K6251のダンベル状3号形を用いた方法にて引張試験を実施し、5%伸長時と10%伸長時の応力を測定した。
【0043】
【0044】
(6)短繊維混練ゴムの摩耗量
短繊維混練ゴム(ゴムシート)の表面を320番のサンドペーパーで摩擦し、耐摩耗性の指標とした。具体的には、オリエンテック株式会社の摩擦摩耗試験機を用い、サンドペーパーを取り付けた金属板に、(5)の短繊維混練ゴムの短繊維配向方向の断面がサンドペーパーに当たるように、0.19MPaの荷重を負荷した状態で100rpmの速度で回転摩耗させ、10分間経過後の摩耗量を重量変化から求め比較する方法を用いた。摩耗量が少ないほど、耐摩耗性に優れることを示す。
【0045】
(7)短繊維混練ゴムの繊維塊の数
2mm厚みの短繊維混練ゴム(ゴムシート)を短繊維配向の垂直方向に裁断機でカットし、50cm長の断面をデジタルマイクロスコープで観察し、単繊維同士が絡まり合って0.5mm以上の塊として観察される繊維塊の数を測定した。繊維塊が少ないほど、分散性に優れることを示す。
【0046】
[実施例1]
デナコールEX-313(グリセロールポリグリシジルエーテル、ナガセケムテックス(株)製)17.5gと、界面活性剤としてのネオコールSW-30(ジオクチルスルフォサクシネートナトリウム塩、第一工業製薬(株)製)14.5gと、ピペラジン4gと、水656.2gとを混合し、固形分濃度3.7重量%のエポキシ溶液を調製した。
【0047】
また、レゾルシン/ホルマリン(R/F)のモル比が1/0.6であるレゾルシン-ホルマリン初期縮合物(スミカノール700S、住友化学(株)製、濃度65重量%)19.8gを、水154.5gに10%苛性ソーダ水5.0gと20%アンモニア水19.9gを加えたアルカリ水溶液に溶解し、これにビニルピリジン-スチレン-ブタジエンゴムラテックス(ニポール2518FS,日本ゼオン(株)製、濃度40重量%)415gと水368.9gを添加した。この液に、37%ホルマリン水16.8g、およびメチルエチルケトンオキシムブロックジフェニルメタンジイソシアネート(DM6400,明成化学工業(株)製、濃度42%)を添加し、20℃で48時間熟成して、固形分濃度20重量%のレゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂を含む水分散体(レゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂処理剤)を調製した。
【0048】
総繊度1670dtex(単繊維繊度0.8dtex、短繊維の集束本数2000本)のフィラメントを有するコポリパラフェニレン・3、4’-オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人(株)テクノーラ)を開繊した状態で、上記のエポキシ溶液を表面処理し、絞りロールで圧縮乾燥後、上記のレゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂処理剤中に浸漬処理した後、130℃で2分間乾燥し、引き続き235℃で1分間熱処理をした。得られたコポリパラフェニレン・3、4’-オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人(株)テクノーラ)繊維束の集束剤の固形分付着量を表2に示す。その後、この繊維束をギロチンカッターで3mmの繊維長にカットしゴム補強用芳香族ポリアミド短繊維集束体を得た。
【0049】
得られた短繊維集束体を表1に示すエチレンプロピレンジエンゴムを主成分とする未加硫ゴム中に、短繊維集束体をエチレンプロピレンジエンゴムポリマー当たり10重量%となるように配合し、MS加圧型ニーダー(DS3-10MHHS守山製作所株式会社製)にて80℃以下の温度で8分間混練した。その後、オープンロール(関西ロール(株)製 9インチテストロール)にて0.6~0.7mm厚さにシート出しを行った。その後、シートを積層し、150℃で30分間、1MPaの条件でプレス加硫により2mm厚の短繊維混練ゴム(ゴムシート)を作成し、その評価結果を表2に示す。
【0050】
[実施例2]
レゾルシン・ホルマリン・ラテックス樹脂処理剤を固形分濃度10重量%となるように調整し、処理した以外は実施例1と同様にゴム補強用芳香族ポリアミド短繊維集束体および短繊維混練ゴム(ゴムシート)を得た。得られた短繊維混練ゴム(ゴムシート)の評価結果を表2に示す。
【0051】
[参考例1]
エポキシ溶液の表面処理後の絞りロールでの圧縮力を調整し、扁平度合いを変更した以外は実施例2と同様にゴム補強用芳香族ポリアミド短繊維集束体および短繊維混練ゴム(ゴムシート)を得た。得られた短繊維混練ゴム(ゴムシート)の評価結果を表2に示す。
【0052】
[比較例1]
総繊度1670dtex(単繊維繊度1.7dtex、短繊維の集束本数1000本)のフィラメントを有するコポリパラフェニレン・3、4’-オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人(株)テクノーラ)を用いた以外は実施例1と同様にゴム補強用芳香族ポリアミド短繊維集束体および短繊維混練ゴム(ゴムシート)を得た。得られた短繊維混練ゴム(ゴムシート)の評価結果を表2に示す。
【0053】
[比較例2]
エポキシ溶液の表面処理後に絞りロールでの※圧縮力を調整し、略楕円形状に変更した以外は実施例2と同様にゴム補強用芳香族ポリアミド短繊維集束体および短繊維混練ゴム(ゴムシート)を得た。得られた短繊維混練ゴム(ゴムシート)の評価結果を表2に示す。
【0054】
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の芳香族ポリアミド短繊維集束体は、ゴムに添加することにより芳香族ポリアミド繊維強化ゴム組成物を得ることができ、モジュラスを始めとする機械的強度、耐摩耗性に優れ、伝動ベルトや、ゴムホース、タイヤやゴムロール等の用途に好適に使用できる。