IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフトの特許一覧

<>
  • 特許-対象物の黒色構成を維持する方法 図1
  • 特許-対象物の黒色構成を維持する方法 図2
  • 特許-対象物の黒色構成を維持する方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】対象物の黒色構成を維持する方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/54 20060101AFI20221018BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20221018BHJP
   B41J 2/525 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
H04N1/54
G06T1/00 510
B41J2/525
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018052413
(22)【出願日】2018-03-20
(65)【公開番号】P2018160894
(43)【公開日】2018-10-11
【審査請求日】2020-12-16
(31)【優先権主張番号】10 2017 204 684.8
(32)【優先日】2017-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390009232
【氏名又は名称】ハイデルベルガー ドルツクマシーネン アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】Heidelberger Druckmaschinen AG
【住所又は居所原語表記】Kurfuersten-Anlage 52-60, D-69115 Heidelberg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ-イェンス クラッベンヘフト
(72)【発明者】
【氏名】ベアント シュトリッツェル
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ヴァインホルツ
【審査官】野口 俊明
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-015545(JP,A)
【文献】特開2014-060593(JP,A)
【文献】特開2006-082339(JP,A)
【文献】特開2013-063543(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/54
G06T 1/00
B41J 2/525
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
計算機(6)による印刷プロセスの前段階のカラーマネージメントにおいて使用するために、画像データ(10)において特色を有する領域(9)の上に重ねて印刷されるように位置付けされている少なくとも1つの対象物(8,11)の黒色構成を維持する方法であって、前記特色を有する領域(9)および前記少なくとも1つの対象物(8,11)は、前記カラーマネージメントにおいて、前記印刷プロセスのプロセスカラーの組み合わせに変換され、次に前記プロセスカラーの組み合わせが使用される方法において、
前記印刷プロセスの前記プロセスカラーへの色変換は、2段階で行われ、第1の段階では、前記プロセスカラーへの色変換が、前記特色を維持しながら実行され、その後、前記特色を有する領域(9)上に、前記少なくとも1つの対象物(8,11)の重畳印刷が存在するか否かが検査され、存在する場合には、前記少なくとも1つの対象物(8,11)の黒成分が除去され、次に第2の段階では、前記特色が前記プロセスカラーに変換され、これに続いて、前記少なくとも1つの対象物(8,11)の前記黒成分が最大化される、
方法。
【請求項2】
最後に行われる、前記少なくとも1つの対象物(8,11)の前記黒成分の前記最大化は、前記プロセスカラーへの前記特色の色変換時に生じた前記黒成分を最大の黒値によって上書きすることによって行われる、
請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記最後に行われる、前記少なくとも1つの対象物(8,11)の前記黒成分の前記最大化は、最大の黒値を加えることによって行われ、ここで前記プロセスカラーへの前記特色の色変換時に黒成分は、計算されない、
請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記印刷プロセスの出力色空間を規定する、前記印刷プロセスのプロセスカラーは、自由選択的に少なくとも1つの付加的なプロセスカラーが足されたCMYKを含んでいる、
請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記特色上に、前記少なくとも1つの対象物(8,11)の重畳印刷が存在するか否かの前記検査は、前記少なくとも1つの対象物(8,11)の重畳印刷部分(13)の色値の検査によって行われ、これに対する条件は、CMYが0と同じである一方、Kが0ではない、ということである、
請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの対象物(8,11)によって覆われていない、前記特色を有する領域(9)は、前記色変換の第2の段階において、前記黒成分に影響を与えることなく、前記プロセスカラーに変換される、
請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの対象物(8,11)が重ねて印刷され得る異なる特色を有する複数の領域が存在する場合、前記プロセスカラーへの前記色変換の前記第2の段階が各特色に対して、前記印刷プロセスのプロセスカラーの各組み合わせにおいて実行される、
請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの対象物(8,11)は、線状の対象物、特にバーコードであり、前記線状の対象物は、前記プロセスカラーにおいて、CMYが0に等しく、Kが最大に等しいという組み合わせによって規定されている、
請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記プロセスカラーKに対する、前記少なくとも1つの対象物(8,11)の前記最大の黒値は、90と100との間にある、
請求項2または3記載の方法。
【請求項10】
前記印刷プロセスは、インクジェット印刷機によって実行されるインクジェット印刷プロセスである、
請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷像において、付加的な色の上に重ねて印刷されるように位置付けさている対象物の黒色構成を維持する方法に関する。
【0002】
本発明は、デジタル印刷の技術分野に属する。
【背景技術】
【0003】
印刷産業において、多色印刷は、従来のオフセット印刷であるか、デジタルインクジェット印刷であるかに係わらず、複数の印刷色の重畳印刷、すなわち、いわゆる複数の色分解版によって実現される。すなわち、各色分解版は、印刷プロセスにおいて使用される印刷色に相応する。すなわちCMYKによる印刷プロセス、すなわち4色印刷では、4つの色分解版が作成され、これらの色分解版はそれぞれ、結果として生じる印刷像での相応する色の成分を含んでいる。CMYKに対して付加的に、しばしば他の印刷色、いわゆる付加的な色が使用される。これらの付加的な色は、結果として生じる印刷像において、従来のCMYKプロセス色空間においては得ることができない色値が得られるべき場合に必要とされる。これらの付加的な色はこの場合、印刷において、付加的な色分解版として、結果として生じる印刷像に加えられる。CMYKの4つの標準色のうちの1つを、4色印刷プロセスにおいて、付加的な色によって置き換えることも可能である。
【0004】
付加的な色の使用はここでしばしば、印刷されるべき像において、特別な色値が実現されるべき場合に必要とされる。以降で特色値と称されるこのような特別な色値は、例えば、Pantone(パントン)インクの色カタログからの色値である。これらの特別な色値は、例えば、特定の会社のロゴの構成成分であり、この会社のロゴは、この特別な色値によって、高い認知度を保証する。特別な色値を有する特色は、ここで色カタログにおいて、特別なLAB値によって特徴付けされている。印刷プロセスにおいては、次に、このような特色を、プロセス色空間に相応に変換することが必要である。すなわち、特色の色値をできるだけ合目的に再現することができる、場合によっては必要な付加的な色が加えられた使用可能なプロセスカラーCMYKの組み合わせが求められなければならない。これは通常、印刷プロセスの前段階において実行される色空間変換によって得られる。ここでは、例えばRGB色空間で存在する、印刷タスクからのデジタルで存在する印刷像データが、入力プロファイルを用いて、いわゆるXYZ色空間に変換される。LAB色空間はここで、XYZ色空間の特別な表現である。このXYZ色空間またはLAB色空間において、得られるべき印刷像の標準化された色値再現が可能である。ここで、印刷像のできるだけ色に忠実な再現のために、相応するプロセスカラーの組み合わせを求めるために、XYZ色空間もしくはLAB色空間と付加的な色が足されたCMYK伴うプロセス色空間との間で、相応する色空間変換が実行されなければならない。これは、相応する、上述した特色を使用する場合にも当てはまる。
【0005】
ここで、デジタルの形態の、作成されるべき印刷像において、前段階において、黒色の対象物が特色の上に位置付けされている場合、このプロセスにおいて問題が発生し得る。この黒色の対象物は、例えばバーコードであってよい。このバーコードは通常、100%に近い黒における、極めて高い黒値で表示される。なぜならバーコードは、複数の幅の狭い黒色の線から成るからである。これらの線は、確実なデータ伝送のために、直接的な像周辺に対して相応に高いコントラストを有していなければならない。このような場合に、特色上の黒色の対象物を備えるこのような印刷像が、上述した色空間変換によって、付加的な色が足されたプロセス色空間CMYKに変換されると、プロセスカラーの色組成は、所望の結果に相応しなくなってしまう。
【0006】
オリジナルの画像では、黒色の対象物に対する黒値は約100%であり、ここでは相応に、特色に相当する残りの色値は0である。黒色の対象物によって覆われていない、隣接する面では、黒値は、プロセス色空間に変換された特色から生じる。特色の色値と、黒に対する色値との組み合わせの際には、プロセス色空間への色変換によって、黒色の対象物の箇所での黒に対する値が、約100%よりも低い値で求められる。
【0007】
色値は、該当する箇所で依然として極めて暗いので、これは、標準的な印刷像においては通常は問題ではないが、特定の黒色の対象物、例えば、極めて高いコントラストを備えた、極めて繊細な線を有しているバーコードの場合には、例えば網目スクリーン作用によって、または見当ズレによって、問題が生じてしまうことがある。このような対象物では、黒に対する、100%を格段に下回る値は、バーコードの明確な検出をもはや保証することができない。このような低減された黒値を有するバーコードは、多くの場合、もはや機械によって読み出し不可能である。
【0008】
根底にある問題は、相応する色空間変換を伴う上述した印刷プロセスにしたがって、特色の上の黒に対する、結果として生じる混合色が次のように求められてしまう、ということである。すなわち、黒も、特色も、XYZ色空間もしくはLAB色空間に変換され、次にこの色空間において混合色が特定されるように求められてしまう、ということである。その後、この混合色が、場合によっては付加的な色が足されたCMYKのプロセス色空間に変換されると、黒はもはや相応する100%の値を有していなくなってしまう。
【0009】
対象物が特色と相互作用せずに、通常の印刷色とのみ相互作用する場合にのみ、目下の従来技術においては、対象物のこのような黒色構成を維持することが可能である。従来技術から既知の、特色上に黒色の対象物をこのように重畳することを可能にする唯一の手法は、黒色の対象物を、プロセス色空間における特色において切り抜き、次に、この黒色の対象物を、印刷されていない、切り抜かれた領域上に、黒色の色分解版によって載せることである。しかしここで、黒色の色分解版から、特色を置き換える別の色分解版への極めて僅かな見当ズレも発生してはいけない。なぜなら、見当ズレが発生する場合には縞が生じ得るからである。すなわち、黒色の色分解版の僅かなズレによって、切り抜かれた黒色の対象物の幅の狭い領域が印刷されずに残り、これに相応して、例えば白色の印刷基材の場合には認識可能な状態のまま残り、印刷像がこれによって著しく阻害される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって本発明の課題は、印刷の質に悪影響を与えることなく、黒色の像対象物を特色の上に印刷する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の課題の解決策は、計算機による印刷プロセスの前段階のカラーマネージメントにおいて使用するために、印刷像において特色の上に重ねて印刷されるように位置付けされている少なくとも1つの対象物の黒色構成を維持する本発明の方法である。ここで、特色および少なくとも1つの対象物は、カラーマネージメントにおいて、印刷プロセスのプロセスカラーの組み合わせに変換され、次に、プロセスカラーのこの組み合わせが、印刷機において印刷像の作成のために使用される。本発明の方法は、印刷プロセスのプロセスカラーへの色変換は2段階で行われ、ここで第1の段階では、プロセスカラーへの色変換が実行され、かつ特色が維持され、その後、特色上に、少なくとも1つの対象物の重畳印刷が存在するか否かが検査され、そうである場合には少なくとも1つの対象物の黒成分が除去され、次に第2の段階において、特色がプロセスカラーに変換され、これに続いて、少なくとも1つの対象物の黒成分が最大化される、ということを特徴とする。ここで本発明の方法は、3つのメインステップから成る。従来技術においては、XYZ色空間もしくはLAB色空間への、特色を伴う黒値の色変換がすぐに実行され、次に混合色が特定され、この混合色が次にプロセス色空間に移行されるが、その代わりに、本発明では、XYZ色空間もしくはLAB色空間への変換後にはじめて、XYZ色空間もしくはLAB色空間から、場合によって生じる付加的な色が足されたプロセス色空間CMYKへの色変換が実行される。ここで、特色の領域が、一緒に変換されることはない。すなわち、CMYKプロセス色空間における中間像が生じ、これは付加的に特色の箇所において、さらに、相応する特色値を、オリジナルのXYZ色空間もしくはLAB色空間において有している。次にこの中間像から、計算機において、CMYは0であるが、K、すなわち黒と特色は0よりも大きい全体的な領域が抽出される。さらなるステップでは、この領域に対して、対象物の黒成分が除去され、したがって特色の値だけが依然として残る。ここでこの領域に対して、場合によっては付加的な色が足されたプロセスカラーCMYKによるプロセス色空間への色変換が実行される。次に最後のステップにおいて、結果として生じたプロセスカラー組み合わせにおいて、黒値が最大に設定される。重要な相違は、これらの方法が、黒色の対象物が特色上に位置付けされている領域に対してのみ使用されるということである。特色だけが印刷されるべき領域、すなわち、黒色の対象物によって覆われていない領域は、本発明では、従来技術から公知の色空間変換方法によって、プロセス色空間に移行される。このように、本発明に相応に、特色上に黒が重ねて印刷された領域において黒成分を最大化することによって、必要な最大の黒値が、印刷像内の、影響を受けやすい黒色の対象物、例えばバーコードに対して存在する、ということが保証される。
【0012】
この方法の有利な発展形態は、属する従属請求項ならびに図面が付属する説明から明らかである。
【0013】
有利な発展形態では、最後に行われる、少なくとも1つの対象物の黒成分の最大化が、プロセスカラーへの特色の色変換時に生じた黒成分を最大の黒値によって上書きすることによって行われる。ここで黒成分の最大化は、プロセスカラーへの特色の色変換の際に生じた黒成分を相応する最大の黒値によって上書きすることによって行われてよい。この場合には、結果として生じる色値のある程度の色ズレが甘受される。なぜなら、黒成分は、プロセスカラーの組み合わせの元来の計算の際に役割を担っているからである。しかしこれは、上述した理由から、甘受される。
【0014】
別の有利な発展形態では、最後に行われる、少なくとも1つの対象物の黒成分の最大化は、最大の黒値を加えることによって行われる。ここではプロセスカラーへの特色の色変換時に黒成分は計算されない。黒成分の最大化を実行する別の手法は、黒成分が全く計算されないように、プロセス色空間への特色の色空間変換を重畳印刷領域に対して実行することである。黒成分はいずれにせよ最大化されるので、特色に対する固有の黒成分自体を計算する必要もない。この手法は、黒成分の簡素な上書きよりも正確な色再現が可能であるという利点を有している。
【0015】
別の有利な発展形態では、印刷プロセスの出力色空間を規定する印刷プロセスのプロセスカラーは、自由選択的に少なくとも1つの付加的なプロセスカラーが足されたCMYKを含んでいる。ここで有利な出力色空間は、CMYK色空間である。付加的に、さらに自由選択的に少なくとも1つの付加的なプロセスカラー、例えばオレンジ、緑または紫の形態の付加的なプロセスカラーが使用されてよい。しばしば、純粋なCMYKプロセスカラーは、全ての可能な特色の色値を相応に、色に忠実に再現するのには十分ではないので、これが必要である。
【0016】
別の有利な発展形態では、特色上に、少なくとも1つの対象物の重畳印刷が存在するか否かの検査は、少なくとも1つの対象物の色値の検査によって行われる。ここでこれに対する条件は、CMYが0と同じである一方、Kが最大であり、かつ特色が0よりも大きくなくてはならない、ということである。この検査は、特色以外の印刷像の全ての色値がCMYKに変換される第1のステップの後、CMYが0であり、Kが0よりも大きく、かつ特色が0よりも大きい領域が印刷像内に生じているか否かが検査されることで実行される。
【0017】
別の有利な発展形態では、少なくとも1つの対象物によって覆われていない、特色を備える印刷像の領域は、色変換の第2の段階において、黒成分に影響を与えることなく、プロセスカラーに変換される。特色が0よりも大きく、かつKが0である領域に対しては、プロセス色空間への特色値の標準的な変換が実行され、特色もKも0より大きい領域に対しては、本発明の方法が使用される。
【0018】
別の有利な発展形態では、1つの印刷像に対して、少なくとも1つの対象物が重ねて印刷され得る異なる特色を備える複数の領域が存在する場合、プロセスカラーへの色変換の第2段階が各特色に対して、印刷プロセスのプロセスカラーの各組み合わせにおいて実行される。異なる特色を伴う領域が存在することが可能である。1つの印刷像において複数の特色が使用されることは希であるが、そうである場合には、本発明の方法は、各特色に対して、プロセスカラーの相応のプロセスカラーの相応の組み合わせにおいて、本発明に相応して実施される。ここで、同一の対象物が異なる特色の上に印刷されているか否か、または異なる黒色の対象物が異なる特色領域上に印刷されているか否かは、重要でない。同一の対象物が特色の異なる領域上に印刷されている場合、当然ながら、2つの異なる像対象物への相応する分断が実行されなければならず、ここで1つの像対象物は、重ねて印刷されている対象物の一部分が足された特色1から成り、第2の像対象物は、重ねて印刷されている黒色の対象物の残りの部分が足された特色2から成る。同様のことが、2つよりも多い、異なる特色領域が存在する場合に当てはまる。
【0019】
別の有利な発展形態では、少なくとも1つの対象物は線状の対象物、特にバーコードであり、この線状の対象物は、プロセスカラーにおいて、CMYが0に等しく、Kが最大に等しいという組み合わせによって規定されている。ここで本発明の方法の適用領域は、黒値が最大に等しく、残りの色成分が相応に0に等しい、線状の黒色の対象物にとって重要である。このような対象物は、多くの場合、CMYK色空間で表され、ここでこの場合には相応にCMYは0であり、Kは最大である。この場合には、印刷プロセスに相応する色変換過程において、XYZ色空間もしくはLAB色空間への相応する黒色のCMYKオブジェクトの第1の色空間変換が実行され、次に、第2のステップにおいて、本発明と相応に、相応するプロセス色空間への変換が実行される。これはここで通常、相応するCMYK色空間でもある。
【0020】
別の有利な発展形態では、プロセスカラーKに対する、少なくとも1つの対象物の最大の黒値は、90と100との間にある。本発明の方法によって、結果として生じるCMYK印刷像において得られるべき最大の黒値は、90から100%までの領域にある。
【0021】
別の有利な発展形態では、印刷プロセスは、インクジェット印刷機によって実行されるインクジェット印刷プロセスである。本発明の方法は基本的にオフセット印刷においても使用可能ではあるが、有利な使用領域はデジタル印刷であり、ここでは特にインクジェット印刷である。
【0022】
本発明それ自体ならびに本発明の構造的かつ/または機能的に有利な発展形態を以降で、属する図面を参照して、少なくとも1つの有利な実施例に基づいて詳細に説明する。図面では相応する要素にはそれぞれ同じ参照符号が付けられている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】インクジェット印刷機の例
図2】特色上のバーコードの、問題を有する重畳印刷の図
図3】本発明の方法の概略図
【発明を実施するための形態】
【0024】
有利な実施形態の適用領域はインクジェット印刷機7である。この種の印刷機7の構造の例が図1に示されている。印刷過程は制御計算機6によって監視される。ここで枚葉紙もしくは印刷基材2は、フィーダ1から、搬送方向において、搬送胴を介して印刷ユニット4および印刷ヘッド5へ搬送される。ここで印刷ヘッド5は、印刷ノズルの1つまたは複数の列から成る。これらの胴は、1つまたは複数の駆動部によって駆動される。次に、印刷ヘッド5内の印刷ノズルを介して、インクが枚葉紙2上に塗布され、印刷像が作成される。枚葉紙2は、さらに搬送され、乾燥され、渡り胴を介して、デリバリ3にさらに搬送される。
【0025】
図3において、本発明の方法のフローに関して、例に基づいて詳細に説明する。この方法は、計算機6上で動作されるAdobe PDF Printengineを使用して実現される。処理されるべきPDFファイルは、ここで、バーコード8の形態で規定され、色値C=M=Y=0、K=100%を有するCMYKオブジェクトとして、Pantone 142 PC9の100%の特色の上に重ねて印刷される。これは、Lab:78.6-13.15-61.49のLab値で規定されている。
【0026】
図示の実施例では、インクジェット印刷機7において、プロセスカラーCMYKならびに付加的な色、オレンジおよび緑の6色で印刷が行われる。これは、結果として生じる2つの対象物8、9となる。すなわち、第1の対象物は、特色Pantone 142 PC9の領域であり、第2の対象物は、特色9がバーコード8によって重畳印刷されるべき領域である。図2では、この例が、第1の図において概略的に示される。
【0027】
これまでの、従来技術から公知の1段階方式の方法では、この実施例は以下のように経過する。2つの対象物8、9が、XYZ色空間に変換され、混合色が特定され、出力プロファイルによって、出力色空間に変換される。結果は以下のようになる。
Pantone 142 PC12:→C=6,M=5,Y=63,G=0;O=21,K=0
Pantone 142 PC上の黒13:→C=67,M=68,Y=83,G=2;O=17,K=85
【0028】
良く見て取れるように、黒値は、バーコード11の対象物に対して、出力色空間において、特色の上の重畳印刷の領域13では85であり、約100の最大値にはない。これは、属する図2においても、第2の図に相応に示されている。
【0029】
本発明の方法では、第1の段階において、画像データ10は出力色空間に変換される。しかし特色9を有する領域およびバーコード8のCMYK色は、変更されない、すなわち、変換されない。すなわち、第1の色空間変換後、出力色空間における印刷像15が得られる。ここで、特色9を有する領域と、特色上に位置付けされ、依然として入力色空間の形態の黒色の対象物8の領域と、が存在する。
【0030】
カラーマネージメントの第2の段階では、PDF Printengineのインタフェースによって、Direct Color Adjustementsが実現される。すなわち、ここでは、第1の色空間変換の値が、本発明と相応に、特色の残りの領域8、9に関して、バーコードによる重畳印刷を伴っても、伴わなくても、整合される。第2の段階では、カラーマネージメントは、例えばスペクトルカラーマネージメントに基づいて実行される。
【0031】
インタフェースでは、上述した実施例の場合には、値
Pantone 142 PC9: Pantone 142 PC
Pantone 142 PC上の黒9: Pantone 142 PC,K=100,C=M=Y=0
が得られる。
【0032】
2つの対象物8、9を有するこの領域から、次に、計算機6によって、バーコード8の重畳印刷部分が、条件C=M=Y=0およびK!=0(K≠0)に基づいて識別され、別個にされる。Pantone 142 PCだけから成るエリアを備えた領域9は第2の段階において、変更されずに、出力プロファイルによって、出力色空間に変換される。次に、この領域に対して相応に、領域12が出力色空間におけるプロセスカラーにおいて得られる。
【0033】
バーコードの重畳印刷領域13に対して、色空間変換は本発明では次のように実現される。すなわち、値の計算が、スペクトルカラーマネージメントで、K=0の値で実行される。この結果、次に、Kに対するオリジナルの値が再び記入される。
【0034】
結果は、
Pantone 142 PC12→C=5,M=3,Y=60,G=0;O=33,K=0
Pantone 142 PC上の黒13→C=5,M=3,Y=60,G=0;O=33,K=100
となる。
【0035】
良く見て取れるように、Kに対する、結果として生じる黒値は、バーコードの重畳印刷部分13において、100で最大である。これによって、結果として生じた印刷像14におけるバーコード11の自動的な評価が問題なく行われる。
【符号の説明】
【0036】
1 フィーダ
2 印刷基材
3 デリバリ
4 インクジェット印刷ユニット
5 インクジェット印刷ヘッド
6 計算機
7 インクジェット印刷機
8 入力色空間における黒色の対象物「バーコード」
9 入力色空間における特色「Pantone 142 PC」の領域
10 入力色空間における前段階の印刷像
11 出力色空間における黒色の対象物「バーコード」
12 出力色空間における特色「Pantone 142 PC」の領域
13 出力色空間における特色上の黒の重畳印刷の領域
14 出力色空間におけるプロセス印刷像
15 第1の色空間変換後の印刷像
図1
図2
図3