IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キリンホールディングス株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】食品および酸味改善剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/68 20060101AFI20221018BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20221018BHJP
【FI】
A23L2/00 D
A23L27/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018107599
(22)【出願日】2018-06-05
(65)【公開番号】P2019208436
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000253503
【氏名又は名称】キリンホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100155631
【弁理士】
【氏名又は名称】榎 保孝
(74)【代理人】
【識別番号】100137497
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 未知子
(74)【代理人】
【識別番号】100207907
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 桃子
(74)【代理人】
【識別番号】100217294
【弁理士】
【氏名又は名称】内山 尚和
(72)【発明者】
【氏名】金谷 知華
(72)【発明者】
【氏名】足海 洋史
(72)【発明者】
【氏名】水谷 麻衣
(72)【発明者】
【氏名】川地 康治
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-061510(JP,A)
【文献】特開2017-086013(JP,A)
【文献】特開平07-075536(JP,A)
【文献】特開2017-063742(JP,A)
【文献】特開2019-030265(JP,A)
【文献】特開2016-054720(JP,A)
【文献】特開2008-182973(JP,A)
【文献】特開昭60-203174(JP,A)
【文献】果汁入り清涼飲料の糖酸化と嗜好性, 東洋食品工業短大・東洋食品研究所研究報告書, 1994, vol.20, p.83-88
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機酸およびα-モノグルコシルルチンを含有し、pH2.8~4.4の範囲においてクエン酸相当酸度が0.1~1%である飲料であって、前記α-モノグルコシルルチンを0.0225~0.32質量%の濃度で含有する飲料(但し、甘蔗由来のエキスを含有する飲料および甘草抽出物を含有する飲料を除く)
【請求項2】
α-モノグルコシルルチンを有効成分として含有する、飲料における有機酸由来の酸味を改善する酸味改善剤であって、前記飲料はpH2.8~4.4の範囲においてクエン酸相当酸度が0.1~1%であり、前記飲料においてα-モノグルコシルルチンを0.0225~0.32質量%の濃度で含有させるために用いられる剤(但し、甘蔗由来のエキスまたは甘草抽出物をα-モノグルコシルルチンとともに含有する剤を除く)
【請求項3】
pH2.8~4.4の範囲においてクエン酸相当酸度が0.1~1%である飲料において、α-モノグルコシルルチンを0.0225~0.32質量%の濃度で含有させることを含む、有機酸を含有する飲料において有機酸由来の酸味を改善する方法(但し、甘蔗由来のエキスまたは甘草抽出物をα-モノグルコシルルチンとともに含有させる方法を除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品および有機酸由来の酸味を改善する酸味改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
クエン酸に代表される有機酸には、例えば、血行改善、疲労回復等の健康機能性がある。有機酸を有効成分とする食品は健康食品として、例えば清涼飲料の分野において市場を拡大している。しかしながら有機酸をその効果が期待できる濃度で使用した場合、有機酸由来の異味、特に過剰に酸味が強い酸性食品となる。そのため、有機酸由来の酸味を低減し、摂取し易くするため技術の提案が従来よりなされている。
【0003】
例えば、特許文献1では、コハク酸ナトリウム又はフマル酸ナトリウムを、また特許文献2では炭酸水素ナトリウムを、それぞれクエン酸とともに清涼飲料水に特定量配合することで、クエン酸が高濃度に含まれていても、そのクエン酸に由来する酸味を緩和できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-261395号公報
【文献】特開2008-182973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、配合成分による食品の味覚への影響とともに、その効果はまだ満足できるものではなく、さらなる改善が求められている。したがって、本発明は、高濃度の有機酸を含有する酸性食品であるにも関わらず、有機酸由来の酸味が低減されて飲みやすい食品、有機酸由来の酸味を改善する酸味改善剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ケルセチン配糖体が、高濃度の有機酸を含有する食品における有機酸由来の酸味を改善する作用を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は以下の発明を提供する。
[1]有機酸およびケルセチン配糖体を含有し、pH2.0~7.0の範囲においてクエン酸相当酸度が0.1~1%である食品。
[2]ケルセチン配糖体がα-モノグルコシルルチンである[1]に記載の食品。
[3]ケルセチン配糖体を有効成分として含有する、有機酸由来の酸味を改善する酸味改善剤。
[4]ケルセチン配糖体がα-モノグルコシルルチンである[3]に記載の酸味改善剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明の食品は、ケルセチン配糖体を含有することにより、有機酸を多く含む食品であっても、有機酸由来の酸味が低減されて、健康機能性を有する上に嗜好性が高いものである。また、本発明の酸味改善剤は、ケルセチン配糖体を有効成分として含有することにより、有機酸由来の酸味を効果的に低減できる。有機酸を含有する食品に本発明の酸味改善剤を用いることにより、有機酸由来の酸味を低減して嗜好性を向上し、優れた健康機能性と嗜好性とを兼ね備えたものとすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の食品は、有機酸およびケルセチン配糖体を含有し、pH2.0~7.0の範囲においてクエン酸相当酸度が0.1~1%であることを特徴とする。また、本発明の酸味改善剤は、ケルセチン配糖体を有効成分として含有する、有機酸由来の酸味を改善することを特徴とする。本発明の酸味改善剤は、有機酸を含有する食品に用いることが好ましく、特に飲料に用いることが好ましい。
【0010】
<有機酸>
本発明における有機酸としては、例えば、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸およびグルコン酸等が挙げられ、これらの中でも、クエン酸が好ましい。有機酸は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0011】
有機酸は、市販されているものを入手し、使用することができるが、有機酸を含有する他の原材料(例えば、調味料)を使用することで有機酸の合計含有量を調整することもできる。
【0012】
本発明の食品における有機酸の含有量は、クエン酸相当酸度が0.1~1%であり、好ましくは0.2~0.8%、より好ましくは0.4~0.6%である。クエン酸相当酸度を0.1%以上とすることにより、有機酸の健康機能性における効果を期待できる。クエン酸相当酸度を1%以下とすることにより、有機酸由来の酸味の低減効果を有効に発揮することができる。
【0013】
本発明の酸味改善剤を用いる食品における有機酸の含有量は特に制限されないが、クエン酸相当酸度が0.1~1%であることが好ましく、より好ましくは0.2~0.8%、さらに好ましくは0.4~0.6%である。
【0014】
クエン酸相当酸度の測定は、滴定法により測定する電位差自動滴定装置AT-610(京都電子工業株式会社)を用い、クエン酸酸度メソッドにて測定する。手順としては200mLプラスチックビーカに、滴定量が10~11mlになるように試料を量りとり、純水で約160mlに希釈する。0.1mol/L 水酸化ナトリウム溶液を用いて滴定を行い、以下計算式でクエン酸相当酸度を算出する。
クエン酸相当酸度(クエン酸w/w%)=EP1×F×Cl×K1/Size
・EPl:滴定量(mL)
・F:滴定液のファクター(1.0042)
・Cl:濃度換算係数(6.4mg/mL)(0.1mo1/L NaOH溶液1mL≡6.4mg クエン酸)
・Kl:単位換算係数(0.1)
・Size:試料採取量(g)
【0015】
本発明の食品又は本発明の酸味改善剤を用いる食品における有機酸の含有量は、公知のガスクロマトグラフィー法により測定することができる。
【0016】
<ケルセチン配糖体>
本発明において、「ケルセチン配糖体」は、ポリフェノールの一種であるケルセチンの配糖体を示し、これは下式(I)で表される。
【0017】
【化1】
【0018】
式(I)中、(X)nは糖鎖を表し、nは1以上の整数である。
【0019】
ここで、ケルセチンにグリコシド結合で結合するXで表される糖鎖を構成する糖としては、例えば、グルコース、ラムノース、ガラクトース、グルクロン酸等が挙げられ、特にグルコースおよびラムノースが好ましい。また、nは1以上であれば特に制限されないが、好ましくは1~16、さらに好ましくは1~8である。nが2以上であるとき、X部分は1種類の糖鎖からなっていてもよく、複数の糖鎖からなっていてもよい。
【0020】
ケルセチン配糖体には、既存のケルセチン配糖体を酵素などで処理して糖転移させたものも含まれる。ケルセチン配糖体としては、具体的には例えば、ルチン、グルコシルルチン、クエルシトリン、イソクエルシトリンが挙げられ、これらの中でもルチンが好ましい。
【0021】
本発明の一態様においては、ケルセチン配糖体に包含される一の化合物を単独で用いてもよいし、複数の化合物を混合して用いてもよい。ケルセチン配糖体の由来については特に制限されず、例えば、ケルセチンまたはケルセチン配糖体を多く含む植物として、ソバ、エンジュ、ケッパー、リンゴ、茶、タマネギ、ブドウ、ブロッコリー、モロヘイヤ、ラズベリー、コケモモ、クランベリー、オプンティア、葉菜類、柑橘類等が挙げられる。
【0022】
また、ケルセチン配糖体は、天然由来の抽出物を、濃縮、精製糖の操作によってケルセチン配糖体濃度を高めたもの、例えば、ケルセチン配糖体含有抽出物の、濃縮物または精製物を用いることができる。濃縮方法または精製方法は、従来公知の方法を用いることができる。
【0023】
本発明の一態様においては、ケルセチン配糖体として、α-グルコシルルチンを用いることが好ましい。α-グルコシルルチンは、「酵素処理ルチン」(「糖転移ルチン」と呼ばれることもある。)として知られている製品に主成分として含まれている化合物であって、下式(II)で表される構造を有する化合物、すなわちルチンが有するルチノース残基中のグルコース残基に、α1→4結合により1または複数(2~20程度)のグルコースが結合した化合物である。
【0024】
本明細書において、α-グルコシルルチンのうち、グルコースが1つだけ結合したものを「α-モノグルコシルルチン」と称し、グルコースが2つ以上結合したものを「α-ポリグルコシルルチン」と称する。
【0025】
つまり、下式(II)において、α-グルコシルルチンは一般的にnが1~20の化合物であり、α-モノグルコシルルチンはnが1の化合物であり、α-ポリグルコシルルチンは一般的にnが2~20の化合物である。
【0026】
【化2】
【0027】
α-モノグルコシルルチンであっても、本発明の食品または酸味改善剤による作用効果およびα-グルコシルルチンについての一般的な作用効果は問題なく発揮され、α-モノグルコシルルチンの分子量はα-ポリグルコシルルチンの分子量よりも小さいため、単位質量あたりの分子数はα-モノグルコシルルチンの方が多くなり、作用効果の上で有利であると考えられる。したがって、α-グルコシルルチンの一部または全部は、α-モノグルコシルルチンであることが好ましい。
【0028】
酵素処理ルチンは、α-グルコシル糖化合物(サイクロデキストリン、澱粉部分分解物など)の共存下で、ルチンに糖転移酵素(サイクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ(CGTase、EC2.4.1.19)など、ルチンにグルコースを付加する機能を有する酵素)を作用させることにより得られる生成物(以下、第1酵素処理ルチンとも略す)である。
【0029】
第1酵素処理ルチンは、結合したグルコースの個数が異なる様々なα-グルコシルルチン、すなわちα-モノグルコシルルチンおよびそれ以外のα-グルコシルルチンからなる集合体と、未反応物であるルチンとを含有する組成物である。必要に応じて、例えば多孔性合成吸着材と適切な溶出液を用いて、第1酵素処理ルチンを精製することにより、糖供与体およびその他の不純物を除去し、さらにルチンの含有量を減らし、α-グルコシルルチンの純度を高めた第1酵素処理ルチン(α-グルコシルルチン精製物)が得られる。
【0030】
また、第1酵素処理ルチンを、α-1,4-グルコシド結合をグルコース単位で切断するグルコアミラーゼ活性を有する酵素、たとえばグルコアミラーゼ(EC3.2.1.3)で処理し、複数のグルコースが付加されたα-グルコシルルチンにおいて、ルチン自体の(ルチノース残基中の)グルコース残基に直接付加されたグルコース残基を1つだけ残してそれ以外のグルコース残基を切断することにより、α-モノグルコシルルチンを多く含有する酵素処理ルチン(以下、第2酵素処理ルチンとも略す。)を得ることができる。この酵素処理によって、ケルセチン骨格に直接結合しているルチノース残基中のグルコース残基が、ケルセチン骨格から切断されることはない。
【0031】
α-グルコシルルチンは、例えば東洋精糖社製の商品名「αGルチンPS」、商品名「αGルチンP」、商品名「αGルチンH」などに主成分として含まれている。これら商品は、α-モノグルコシルルチンを10~90重量%含有する組成物である。
【0032】
前記組成物は、(i)上述した第1酵素処理ルチンを調製する、(ii)第1酵素処理ルチンを、グルコアミラーゼ活性を有する酵素で処理し、α-グルコシルルチンをほとんど全てα-モノグルコシルルチンに変換する、という手順により製造することができる。
【0033】
本発明の食品におけるケルセチン配糖体の含有量は、有機酸由来の酸味改善の観点から、好ましくは0.01質量%以上であり、以下順に、より好ましくは0.03質量%以上、0.05質量%以上、0.08質量%以上、0.10質量%以上、0.15質量%以上、0.20質量%以上である。上限は特に制限されないが、ケルセチン配糖体の量が多すぎるとケルセチン配糖体由来の異味が問題となる場合があるため、0.43質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.40質量%以下である。
【0034】
具体的には例えば、ケルセチン配糖体がα-モノグルコシルルチンである場合、本発明の食品における含有量は、好ましくは0.0075質量%以上であり、以下順に、より好ましくは0.0225質量%以上、0.0375質量%以上、0.06質量%以上、0.075質量%以上、0.1125質量%以上、0.15質量%以上である。上限は特に制限されないが、α-モノグルコシルルチン由来の異味の発現を抑制する点から、0.32質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.30質量%以下である。
【0035】
本発明の酸味改善剤は、食品の総重量に対し、ケルセチン配糖体の終濃度が0.01質量%以上となるように配合することが好ましく、以下順に、より好ましくは0.03質量%以上、0.05質量%以上、0.08質量%以上、0.10質量%以上、0.15質量%以上、0.20質量%以上である。上限は特に制限されないが、ケルセチン配糖体の量が多すぎるとケルセチン配糖体由来の異味が問題となる場合があるため、0.43質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.40質量%以下である。
【0036】
具体的には例えば、ケルセチン配糖体がα-モノグルコシルルチンである場合、本発明の酸味改善剤は、食品の総重量に対し、α-モノグルコシルルチンの終濃度が、好ましくは0.0075質量%以上となるように配合することが好ましく、以下順に、0.0225質量%以上、0.0375質量%以上、0.06質量%以上、0.075質量%以上、0.1125質量%以上、0.15質量%以上となるように配合することがより好ましい。上限は特に制限されないが、α-モノグルコシルルチン由来の異味の発現を抑制する点から、0.32質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.30質量%以下である。
【0037】
なお、本発明の食品又は本発明の酸味改善剤を用いる食品に含まれるα-モノグルコシルルチン等のケルセチン配糖体の成分は、HPLCのクロマトグラムによって確認することができ、各成分の含有量、または特定の成分の純度はクロマトグラムのピーク面積から算出することができる。
【0038】
本発明の食品における有機酸とケルセチン配糖体の配合割合は、有機酸濃度に対して、ケルセチン配糖体濃度の比が好ましくは0.01~8、より好ましくは0.03~4、さらに好ましくは0.06~2である。0.01以上とすることにより、ケルセチン配糖体による有機酸由来の酸味改善効果が得られ易く、8以下とすることにより、ケルセチン配糖体由来の異味の発現を防ぐことができる。
【0039】
本発明の酸味改善剤は、食品に含まれる有機酸濃度に対して、ケルセチン配糖体濃度の比が好ましくは0.01~8となるように配合することが好ましく、より好ましくは0.03~4、さらに好ましくは0.06~2となるように配合することが好ましい。0.01以上とすることにより、ケルセチン配糖体による有機酸由来の酸味改善効果が得られ易く、8以下とすることにより、ケルセチン配糖体由来の異味の発現を防ぐことができる。
【0040】
本発明の食品または本発明の酸味改善剤を用いる食品は、pHが2.0~7.0であり、好ましくは2.4~5.7、より好ましくは2.8~4.4である。本発明の食品または本発明の酸味改善剤を用いる食品には、有機酸以外にも他の酸性物質を含有してもよい。有機酸の抗疲労効果などの効果をより発揮させる為及び食品等の香味設計を容易にする観点から、他の酸性物質の含有量は、0.01重量%以下とすることが好ましい。
【0041】
本発明の食品または本発明の酸味改善剤を用いる食品としては、ジュース、清涼飲料、乳飲料、茶飲料、ゼリー飲料、粉末飲料、機能性飲料、栄養補助飲料及びノンアルコールビール等の各種飲料並びにビール及び発泡酒等のアルコール飲料などの飲料;サプリメント類;ゼリー、ヨーグルト及びプリンなどの各種菓子類;スープ、味噌汁及びお吸い物などの液状飲食品;ドレッシングなどの調味料などが挙げられる。これらの中でも特に飲料が好ましい。
【0042】
本発明の食品および本発明の酸味改善剤を用いる食品の原料は、例えば、各種生薬類、ビタミン類、アミノ酸類、カフェイン、ロイヤルゼリー、高麗ニンジンエキス、ポリフェノール類、食物繊維などの生理機能が期待できる各種素材を、本発明の効果が発揮できる範囲であれば添加できる。また、例えば、果汁や野菜汁、更には茶抽出液なども添加できる。
【0043】
本発明の食品または本発明の酸味改善剤を用いる食品は、例えば、有機酸の健康機能を有する嗜好性酸性食品として提供することができる。本発明の食品および本発明の酸味改善剤を用いた食品は、有機酸とともに、ケルセチン配糖体を含有していることから、ケルセチン配糖体による血流改善作用等の健康機能も奏することができる。また、該食品に、更に別の健康機能成分を配合して、複数の健康機能を有する嗜好性食品として、提供することもできる。
【0044】
本発明の食品および本発明の酸味改善剤を用いる食品においては、他に、通常の容器詰め食品に使用するような甘味料、香料、着色料などを用いることができる。使用する香料としては、有機酸の香味との相性の点で、レモン、グレープフルーツ、ゆず、オレンジなどの柑橘系香料が好ましい。
【0045】
また甘味料は、果糖ブドウ糖液糖やショ糖などの通常の甘味料のほか、アセスルファムK、スクラロース、アスパルテーム、ステビアなどの高甘味度甘味料を使用することができる。高甘味度甘味料を使用した、固形分濃度が比較的低い、例えば、0~5°Bxの食品の場合には、有機酸由来の酸味をより感じやすくなるので、ケルセチン配糖体の添加、含有量を最適条件の範囲として、有機酸由来の酸味の低減効果を高めることが好ましい。
【0046】
本発明の食品または本発明の酸味改善剤を用いる食品は、容器詰めして調製することができる。例えば、原料調合後、長期保存のために必要な加熱殺菌を行った上で、常法に従い、PETボトルや缶などの容器に充填して、長期保存が可能である容器詰め食品にできる。容器詰め食品は、賞味期間内は、本発明の効果が持続して過剰な酸味などの異味が低減されているほか、香味の変化も少なく、また外観の面でも沈殿や濁りが発生せず、安定していることから、長期保存が可能な容器詰め食品としても有用である。
【0047】
容器詰め食品の製造方法としては、例えば、有機酸含有食品原料に、所定量のケルセチン配糖体を添加し、有機酸含有食品中の有機酸濃度がpH2.0~7.0の範囲においてクエン酸相当酸度が0.1~1%である原料を調製し、該原料を所定の製造条件で処理した後、容器詰めすることによって製造することができる。該食品の製造は、本願発明で特定する、所定の原料の配合の点を除いて、その製造方法において、特に変わるところはない。
【実施例
【0048】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0049】
[実施例1]
(試験用飲料の調製)
pHはいずれも3.6とし、クエン酸相当酸度が0.2%、0.4%、0.6%、0.8%または1%となる濃度でクエン酸をイオン交換水に添加したクエン酸緩衝液に、ケルセチン配糖体[東洋精糖社製αGルチンPS(商品名)、α-モノグルコシルルチン含有率75%]を0.06質量%、0.08質量%、0.16質量%または0.40質量%を添加して飲料調合液を得た。得られた調合液を飲料試作用のガラス瓶に充填した後、パストライザーで殺菌し、試験用飲料とした。
【0050】
(官能評価)
訓練を受けたパネリストを選定し、これらのパネリストに調製した試験飲料を提示して、「酸味」について評価した。パネリストの人数は、ケルセチン配糖体の添加量が0.08質量%および0.16質量%の場合については5人、ケルセチン配糖体の添加量が0.06質量%および0.40質量%の場合については3人とした。また、評価は、それぞれの(-)をコントロールとして表1に示す評価基準により5段階評価とした。結果を表2に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
表2に示すように、pH3.6において、クエン酸相当酸度が0.2~1%相当の緩衝液において生じる酸味を、ケルセチン配糖体を0.06~0.40質量%添加することで改善できることがわかった。
【0054】
[実施例2]
(試験用飲料の調製)
クエン酸相当酸度が0.4%となる濃度でクエン酸をイオン交換水に添加した、pHが異なる(pH2.8、pH3.2、pH3.6、pH4.0、pH4.4)クエン酸緩衝液に、ケルセチン配糖体[東洋精糖社製αGルチンPS(商品名)、α-モノグルコシルルチン含有率75%]を0.06質量%、0.08質量%、0.16質量%または0.40質量%を添加して飲料調合液を得た。得られた調合液を飲料試作用のガラス瓶に充填した後、パストライザーで殺菌し、試験用飲料とした。
【0055】
(官能評価)
訓練を受けたパネリストを選定し、これらのパネリストに調製した試験飲料を提示して、実施例1と同様にして「酸味」について評価した。パネリストの人数は、ケルセチン配糖体の添加量が0.08質量%および0.16質量%の場合については6人、ケルセチン配糖体の添加量が0.06質量%および0.40質量%の場合については3人とした。結果を表3に示す。
【0056】
【表3】
【0057】
表3に示すように、pH2.8~pH4.4の範囲においてクエン酸相当酸度が0.4%である緩衝液で生じる酸味を、ケルセチン配糖体を0.06~0.40質量%添加することで改善できることがわかった。
【0058】
上記に示す結果から、ケルセチン配糖体を有効成分として、有機酸を含有する食品における有機酸由来の酸味を効果的に改善できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の食品によれば、有機酸を多く含む食品であっても、有機酸由来の酸味が低減されて、健康機能を有する嗜好性の高い有機酸高含有食品を提供することができる。また、本発明の酸味改善剤によれば、有機酸を多く含む食品であっても、有機酸由来の酸味が低減されて、健康機能を有する嗜好性の高い有機酸高含有食品を提供することができる。