(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】シャロートレンチアイソレーション用の水性シリカスラリー組成物とその使用方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20221018BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20221018BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20221018BHJP
C01B 33/18 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
H01L21/304 622B
H01L21/304 622X
B24B37/00 H
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
C01B33/18 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018113295
(22)【出願日】2018-06-14
【審査請求日】2021-05-31
(32)【優先日】2017-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504089426
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ シーエムピー ホウルディングス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ユリア・コジューフ
(72)【発明者】
【氏名】デビッド・モズリー
(72)【発明者】
【氏名】ナレシュ・クマール・ペンタ
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ヴァン・ハネヘム
(72)【発明者】
【氏名】カンチャーラ-アルン・ケイ・レディ
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-020294(JP,A)
【文献】国際公開第2017/074800(WO,A1)
【文献】特開平11-060232(JP,A)
【文献】特開2017-063173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 37/00
C09K 3/14
C01B 33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン性窒素原子を含む、複数の細長い、又は屈曲した、又は結節状のコロイダルシリカ粒子の分散体、及び
組成物の総重量の0.001から0.5重量%のジアリルジメチルアンモニウム塩のカチオン性コポリマーを含む水性ケミカルメカニカルプラナリゼーション研磨(CMP研磨)組成物であって、該組成物は1から4.5のpHを有し、さらに該細長い、又は屈曲した、又は結節状のコロイダルシリカ粒子の分散体の量が、該組成物の総重量の0.5から30重量%の範囲であ
り、
さらに該該細長い、又は屈曲した、又は結節状のコロイダルシリカ粒子の分散体の量が、該組成物中のコロイダルシリカ粒子の全固形物重量の80から99.9重量%の範囲である、水性ケミカルメカニカルプラナリゼーション研磨(CMP研磨)組成物。
【請求項2】
前記細長い、又は屈曲した、又は結節状のコロイダルシリカ粒子の分散体が、平均粒子における最長寸法の、最長寸法に直角な寸法に対する比であるアスペクト比1.8:1から3:1を有する、請求項1記載の水性CMP研磨組成物。
【請求項3】
前記ジアリルジメチルアンモニウム塩のカチオン性コポリマーの量が10から500ppmである、請求項1記載の水性CMP研磨組成物。
【請求項4】
前記ジアリルジメチルアンモニウム塩のカチオン性コポリマーが、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)と二酸化硫黄のコポリマーを含む、請求項1記載の水性CMP研磨組成物。
【請求項5】
前記ジアリルジメチルアンモニウム塩と二酸化硫黄のカチオン性コポリマーが、45から55モル%のジアリルジメチルアンモニウム塩と、45から55モル%の二酸化硫黄のコポリマーを含む、請求項
4記載の水性CMP研磨組成物。
【請求項6】
前記ジアリルジメチルアンモニウム塩と二酸化硫黄のカチオン性コポリマーが、1,000から15,000の重量平均分子量を有する、請求項
4記載の水性CMP研磨組成物。
【請求項7】
前記組成物が2.5から4.3のpHを有する、請求項1記載の水性CMP研磨組成物。
【請求項8】
基板をCMP研磨パッドと水性CMP研磨組成物で研磨することを含む、請求項1記載の水性CMP研磨組成物を使用する方法
であって、該基板が二酸化ケイ素と窒化ケイ素の両方を含み、研磨により酸化物対窒化物の除去率の比が3:1から25:1となる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2017年6月16日に出願した現在審議中の米国特許出願第15/625,075号の一部継続出願である。
【0002】
本発明は、カチオン性窒素原子を含む、複数の球状コロイダルシリカ粒子、又は細長い、又は屈曲した、又は結節状のコロイダルシリカ粒子又はそれらの混合物の、ひとつ以上の分散体、及びジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)などのジアリルジメチルアンモニウム塩と二酸化硫黄のコポリマーを含む、pHが1から4.5である水性ケミカルメカニカルプラナリゼーション(CMP)研磨組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体加工のフロントエンドライン(FEOL)においては、シャロートレンチアイソレーション(STI)が、トランジスタ形成前などの集積回路製作におけるゲート形成にとり非常に重要である。STIでは、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)又は二酸化ケイ素などの絶縁体が、例えばトレンチや、窒化ケイ素(SiN)バリヤによって集積回路の残りの部分から分離される分離領域などの、シリコンウェーハに形成される開口部に過剰に堆積する。その後CMP処理を用いて過剰な絶縁体を除去し、その結果シリコンウェーハに絶縁体の既定のパターンをはめ込んだ構造が作られる。STI用CMPでは、分離領域から余分な二酸化ケイ素を除去して平坦化することにより、トレンチを二酸化ケイ素で埋めた同一平面を製作する必要がある。STIでは、窒化ケイ素の膜表面から二酸化ケイ素や酸化物を取り除き、その後下流処理において窒化物のハードマスクを除去できるようにしなければならない。許容される酸化物対窒化物の除去速度の比率が、下層のシリコン活性領域への損傷を防止し、過剰研磨のマージンを提供して全てのパターン密度に酸化物が存在しないようにするために必要である。更に、あらゆるトレンチにおいて酸化物のディッシングを避けて、完成したゲートにおける閾値電圧の低下による漏れを防止しなければならない。
【0004】
現在、CMP研磨パッドを用いて基板を研磨する水性ケミカルメカニカルプラナリゼーションポリッシング(CMP研磨)組成物の使用者は、セリアを含有するCMP研磨組成物の使用を避けることを望んでいる。セリアスラリーは、窒化ケイ素よりも二酸化ケイ素に対して高い選択性を示し、窒化ケイ素の露出時にトレンチ領域の酸化物の除去を避けるが、高価であり、除去速度(RR)と処理の安定性に問題があり、研磨中に欠陥を引き起こしがちである。シリカスラリー配合物はより低価格で欠陥の無い解決策を提供するが、現在に至るまで満足な酸化物のディッシング制御を行うことができておらず、またSTI用途に使用する酸化物対窒化物の選択性が不十分であった。
【0005】
米国特許第9,303,188B2号でGrumbineらは、タングステン層を有する基板を研磨するための、水性液体キャリア、カチオン帯電したコロイダルシリカ砥粒、及び液体キャリア溶液内のポリカチオン性アミン化合物から構成される、ケミカルメカニカル研磨組成物を開示している。この組成物には、ポリアミン類から選択されるアミン系ポリマー、及びジアリルジメチルアンモニウムクロリド等のアミン官能基を含有するポリマーが含まれる。これらの組成物は、許容可能な酸化物ディッシング制御を示しておらず、STI用途に使用する酸化物対窒化物の選択性が不十分である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者等は、許容可能な酸化物ディッシング制御と、STI用途に使用する酸化物対窒化物の選択性を可能にするシリカスラリー並びに、そのスラリーの使用方法を提供するという問題を解決すべく努力を重ねてきた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1.本発明によれば、水性ケミカルメカニカルプラナリゼーションポリッシング(CMP研磨)組成物は、カチオン性窒素原子を含む、例えば、平均的な粒子の、粒子の最大長の、最大長と垂直方向である直径に対するアスペクト比が1.8:1から3:1である、複数の細長い、屈曲した、若しくは結節状のコロイダルシリカ粒子、又はその球状シリカ粒子との混合物の分散体、並びに、0.001から0.5重量%、すなわち、好ましくは、10から500ppmの、例えばジアリルジメチルアンモニウムハライド(DADMAC)と二酸化硫黄のコポリマーのような、ジアリルジメチルアンモニウム塩、好ましくは、ハロゲン化物塩のカチオン性コポリマーを含み、その組成物は1から4.5、好ましくは2.5から4.3のpHを有し、さらに、分散系の細長い、屈曲した、若しくは結節状のコロイダルシリカ粒子の量は組成物全体の重量をベースにして、0.5から30重量%、又は、好ましくは、1から25重量%、又は、より好ましくは、1から20重量%である。
【0008】
2.上記項目1に記載した水性CMP研磨組成物によれば、細長い、又は屈曲した、又は結節状のコロイダルシリカ粒子の分散体の量は、組成物中の固形物の総重量の80から99.9重量%、好ましくは95から99.9重量%である。
【0009】
3.上記項目1又は2のいずれかに記載した水性CMP研磨組成物によれば、コロイダルシリカ粒子の分散体における重量平均粒径(CPS)、すなわち混合物におけるそのような粒径の加重平均は10nmから200nm、好ましくは25nmから80nmである。
【0010】
4.上記項目1、2、3のいずれかに記載した水性CMP研磨組成物によれば、ジアリルジメチルアンモニウム塩、好ましくはハロゲン化物塩と二酸化硫黄のカチオン性コポリマーは、45から55モル%、好ましくは48から52モル%のジアリルジメチルアンモニウム塩と、45から55モル%、好ましくは48から52モル%の二酸化硫黄のコポリマーを含む。
【0011】
5.上記項目1、2、3、4のいずれかに記載した水性CMP研磨組成物によれば、ジアリルジメチルアンモニウム塩、好ましくはハロゲン化物塩と二酸化硫黄のカチオン性コポリマーは、1,000から15,000、好ましくは2,000から12,000の重量平均分子量を有する。
【0012】
6.本発明の他の別の局面によれば、上記水性CMP組成物を用いる方法は、CMP研磨パッドと上記項目1から5のいずれかに記載した水性CMP研磨組成物を用いて基板を研磨することを含む。
【0013】
7.上記項目6に記載した本発明の方法によれば、基板は二酸化ケイ素又はオルトケイ酸テトラエチル(TEOS)と、SiN又はSi3N4又はその混合物としての窒化ケイ素の両方を含み、研磨により酸化物対窒化物の除去率の比率は少なくとも3:1、例えば3:1から25:1、好ましくは例えば8:1から18:1、少なくとも8:1となる。
【0014】
8.上記項目6又は7のいずれかに記載した、本発明の基板研磨の方法によれば、研磨によるダウンフォースは6.9kPa(1psi)から41.5kPa(6psi)、好ましくは12kPa(1.8psi)から36kPa(5.2psi)の範囲である。
【0015】
9.上記項目6、7、又は8のいずれかに記載した、本発明の基板研磨の方法によれば、CMP研磨組成物は、細長い、又は屈曲した、又は結節状のコロイダルシリカ粒子の分散体を総固形分の0.5から5重量%、好ましくは1から3重量%含む。CMP研磨組成物は濃縮物として保存、出荷し、その後基板を研磨する際に水で希釈することができる。
【0016】
別段指示されない限り、気温と圧力条件は周囲温度及び標準圧力である。記載した範囲は全てしきい値を含みかつ組み合わせが可能である。
【0017】
別段指示されない限り、括弧を含む語句は、代替的に、括弧が存在しない場合の完全な語及び括弧を有しないその語、並びに各選択の組み合わせをいう。
【0018】
全ての範囲はしきい値を含みかつ組み合わせが可能である。例えば、用語「50~3000cPの範囲又は100cP以上」は、50~100cP、50~3000cP及び100~3000cPそれぞれを含む。
【0019】
本明細書の中で使用される用語「ASTM」とは、ASTM International, West Conshohocken, PA の刊行物をいう。
【0020】
本明細書の中で使用される用語「コロイド的に安定」とは、所定の時間が経過した後及び所定の温度において、所定の組成がゲル化又は凝結せず、目視検査において透明のままであることをいう。
【0021】
本明細書の中で使用する用語「硬塩基」とは、NaOH、KOH、又はCa(OH)2などのアルカリ(アルカリ土類)金属水酸化物を含む金属水酸化物をいう。
【0022】
本明細書で使用する場合、用語「ISO」という用語は、Geneva, CH のInternational Organization for Standardization による出版物をいう。
【0023】
本明細書の中で使用する用語「粒径(CPS)」とは、CPS Instruments(オランダ)のディスク遠心システムにより測定した組成物の重量平均粒径を意味する。粒子は溶媒中で遠心力によりサイズ毎に分離され、光学的光散乱を用いて定量化される。
【0024】
本明細書の中で使用される用語「ショアD硬度」とは、ASTM D2240-15 (2015)「Standard Test Method for Rubber Property―Durometer Hardness」に従って計測される所定の材料の2秒間の硬度である。硬度は、Dプローブを備えたRex Hybrid硬度試験機(Rex Gauge Company, Inc., Buffalo Grove, IL)で計測した。6つの試料を積み重ね、硬度計測ごとに入れ替えた。試験した各パッドは50%の相対湿度、23℃の状態に5日間置くことにより調整してからASTM D2240-15 (2015)に概説する方法を用いて試験を行い、硬度試験の繰り返し精度を向上させた。本発明において、研磨層又はパッドのポリウレタン反応生成物のショアD硬度は、その反応生成物のショアD硬度を含む。
【0025】
本明細書の中で使用される用語「シリカ固体粒子」又は「シリカ固体」とは、所定の組成における球状コロイダルシリカ粒子の総量に、伸長した、又は曲げた、又は結節状のコロイダルシリカ粒子の総量を加算した量を意味し、これらの粒子の処理に用いるあらゆるものを含む。
【0026】
本明細書の中で使用される用語「固体」とは、物理的状態に関わらず使用状態において揮発しない、水あるいはアンモニア以外のあらゆる物質を意味する。従って、使用条件において揮発しない液状シラン又は添加剤は「固体」と考えられる。
【0027】
本明細書の中で使用される用語「強酸」とは、2以下のpKaを有する、硫酸や硝酸のような無機酸などのプロトン酸をいう。
【0028】
本明細書の中で使用される用語「使用条件」とは、所定の組成を使用する気温及び気圧を意味し、使用中又は使用の結果生じる気温や気圧の上昇を含む。
【0029】
本明細書の中で使用される用語「重量分率シリカ」とは、組成物の総重量を100%とした場合のシリカの総重量%の分率を意味する。従って30重量%のシリカは重量分率0.3と同じである。
【0030】
本明細書で使用される用語「加重平均」とは、異なる組成(例えば、球状コロイダルシリカ粒子の分散体及び細長いコロイダルシリカの分散体)から得られる二つ以上の測定値(例えば、平均粒径、又は分子量)の平均を意味し、その各測定値に、固形重量分率の合計値が1(1.00)になるように、それぞれの固形重量分率を乗じたものを合計したものとなる。
【0031】
本明細書の中で使用される「重量%」とは重量百分率を表す。
【0032】
本明細書の中で使用される用語「細長い、又は屈曲した、又は結節状のコロイダルシリカ粒子」とは、平均的な粒子で、透過型電子顕微鏡解析(TEM)等の普通の当業者が知る方法により測定した、又は粒子分散体の製造業者が報告するような、粒子の最長寸法の、直径に対する、すなわち最長寸法に対して直角な長さに対するアスペクト比が1.8:1から3:1である、コロイダルシリカ粒子をいう。
【0033】
発明者らは驚いたことに、カチオン電荷を有し、ハロゲン化物塩やアンモニウム塩などのジアリルジメチルアンモニウム塩と二酸化硫黄のカチオン性共重合体の組成物の総重量の0.5重量%までを占める、細長い、又は屈曲した、又は結節状の分散系の水性CMP研磨組成物が、シャロートレンチアイソレーション(STI)処理を行ったシリコンウェーハなどの基盤の平坦化又は研磨に特に適していることを見出した。ブランケットシリコンウェーハの圧力応答特性が、これらのスラリーがPrestonの式が適用されない方法で酸化ケイ素を研磨することを明らかにした:すなわち酸化物の除去率はダウンフォースが弱い時にごくわずかであり、「ターンオン」圧力より高い圧力において、ダウンフォースが増大するに従って上昇する。このようなPrestonの式が適用されない、酸化物RR(y軸)対ダウンフォース(x軸)曲線のx切片はゼロではない。本発明の水性CMP研磨組成物は、二酸化ケイ素のCMP研磨を満足のいく除去率で可能にし、ブランケット及びパターンウェーハの両方において窒化ケイ素よりも酸化ケイ素に、許容できる選択性を提供する。最も重要な点は、本組成物は他のシリカスラリーに比べて、トレンチ酸化物損及び経時的ディッシングの改善を可能にすることである。
【0034】
本発明によれば、適切なコロイダルシリカ組成物は、従来のゾルゲル重合作用により、又は水ガラスの懸濁重合により作られるシリカの分散体を含んで、球状コロイダルシリカ粒子を含むことができる分布系や混合物内に、複数の細長い、又は屈曲した、又は結節状のコロイダルシリカ粒子を生み出すことができる。
【0035】
細長い、又は屈曲した、又は結節状のコロイダルシリカ粒子の適切な分散体は、テトラエトキシシラン(TEOS)又はテトラメトキシシラン(TMOS)などの前駆体から公知の方法で作られるシラノールの加水分解縮合による懸濁重合から作られる。細長い、又は屈曲した、又は結節状のコロイダルシリカ粒子を形成するプロセスは知られており、例えばHiguchiらの米国特許第8,529,787に記述がある。加水分解縮合は、アルキルアンモニウム水酸化物等の塩基性触媒、エトキシプロピルアミン(EOPA)などのアルコキシアルキルアミン類、アルキルアミン類、又はKOH、好ましくは水酸化テトラメチルアンモニウム等の存在下で、水性懸濁液中で前駆体を反応させる工程を含む。加水分解縮合工程では、ひとつ以上のカチオン性窒素原子を、細長い、又は屈曲した、又は結節状のコロイダルシリカ粒子に組み込むことができる。好ましくは、当該細長い、又は屈曲した、又は結節状のコロイダルシリカ粒子はpHが4以下でカチオン性を示す。
【0036】
屈曲したあるいは結節状のコロイダルシリカの適切な分散体は、Fuso Chemical Co., Ltd., Osaka, JP (Fuso) から、商品名HL-2, HL-3, HL-4, PL-2, PL-3又はBS-2及びBS-3スラリーとして入手することができる。FusoのHL及びBS シリーズの粒子は、pH4以下でカチオン電荷を付与するひとつ以上の窒素原子を含む。
【0037】
本発明の水性CMP研磨組成物のコロイドの安定性を保証するため、上記組成物は1から4.5の範囲、また好ましくは2.5から4の範囲のpHを有する。上記組成物は、望ましいpH範囲を超えるとその安定性を失う傾向にある。
【0038】
本発明のカチオン性ジアリルジメチルアンモニウム塩と二酸化硫黄のコポリマーは、選択性と研磨中のディッシングの防止の助けとなる。カチオン性コポリマーの量は、組成物の総重量に対して最大0.5重量%までの範囲である。カチオン性コポリマーの量が多すぎると、絶縁体又は基板のシリカ表面を不動態化してしまう恐れがある。
【0039】
本発明のカチオン性コポリマーは、水等の極性溶剤中で、塩酸やグリコール酸などの酸、及び過硫酸アンモニウムなどのラジカル重合開始剤の存在下又は非存在下で、付加重合により作成することができる。このような重合方法は例えば、Yusukeらの米国特許第9,006,383B2に詳細が記載されている。
【0040】
本発明の水性CMP研磨組成物は、例えば硝酸などの無機酸や、クエン酸等の有機酸等のpH調整剤を含むことができる。
【0041】
本発明の水性CMP研磨組成物は、ポリアミン類等の他のカチオン性添加剤を、総固形物量の1重量%まで含むことができる。
【0042】
適切な添加剤はまた、例えばN,N,N,N′,N′, N′-ヘキサブチル-1,4-ブタンジアンモニウムジヒドロキシド98重量%(Sachem, Austin, TX)などの第四級アンモニウム化合物及びジ四級アンモニウム化合物、及び例えばN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン98%(Gelest Inc., Morrisville, PA)又は(N,N-ジエチルアミノメチル)トリエトキシシラン98% (Gelest Inc.)などのカチオン性アミノシランを含むことができる。
【0043】
好ましくは、本水性CMP研磨組成物は主に、本発明のジアリルジメチルアンモニウム塩とカチオン性砥粒のコポリマーから成り、研磨成分やコポリマーと更に相互作用するような物質は含まない。このような組成物は好ましくは、シリカと相互作用するジ四級アンモニウム化合物を含まず、またコポリマーと相互作用するアニオン性化合物や非イオン界面活性剤を含まない。本水性CMP研磨組成物は、水又は水と混和する他の液体で希釈することができる。
【0044】
望ましくは、本発明のCMP研磨は、本発明のCMP研磨組成物を用いSTI処理で行い、好ましくは窒化ケイ素が実質的に除去されないように、またトレンチ内の絶縁体又は二酸化ケイ素に過剰なエロージョンやディッシングを起こすことなく二酸化ケイ素が適切に平坦化されるように行う。
【0045】
使用時には、ウェーハ基板のSTI処理は、窒化ケイ素層で覆ったシリコン基板を準備することを含む。フォトリソグラフィに引き続き、窒化ケイ素のオーバーレイ層を含む基板上にトレンチをエッチングし、例えば二酸化ケイ素などの絶縁体をその上に過剰に沈蒸着される。その後基板は平坦化に供されて、窒化ケイ素の表面層が露出するが、実質的に除去せずに、トレンチ内に残留する絶縁体又は酸化ケイ素が、窒化ケイ素の端部とほぼ同じ高さになるようにする。
【0046】
実施例:下記の実施例は本発明の様々な特徴を示す。
【0047】
下に示す実施例では、別段指示されない限り、温度及び圧力条件は周囲温度又は室温、標準圧力である。
【0048】
下記の表Aに列挙した物質を含む下記の物質を、下記の実施例で使用した。
【0049】
【0050】
Diquat(登録商標)添加物:N,N,N,N′,N′, N′-ヘキサブチル‐1,4-ブタンジアンモニウムジヒドロキシド98重量%(Sachem, Austin, TX);
スラリーG:pH2.39で24重量%の固形調合物で、スラリーAの固形物を20重量%、スラリーBの固形物の4重量%、Diquat(登録商標)添加剤の0.2重量%、及びHNO3を0.112重量%含む。使用時点(6%、4倍希釈)ではpHは最大3であった;
コポリマー1は、DADMACと二酸化硫黄の1:1のコポリマーで、製造業者(PAS-A-1, Nitto Boseke Co. Ltd, Fukushima, JP)の報告によれば重量平均分子量(MW)(ポリエチレングリコール標準試薬を用いたGPC)5,000を有する;
ポリマー2は、重量平均分子量(MW,GPC)8,500を有する、DADMACのホモポリマーである(Nitto Boseke Co.);
スラリーE:セリアスラリー、pH5.2、ポリアクリル酸分散剤、希釈していない0.75重量%のセリア固形物、1:3の希釈を使用;
スラリーF:スラリーCの2重量%の固形組成物/重量平均分子量1800の67ppmポリ(アクリル酸)(PAA)/クエン酸/pH3.3;また
スラリーCはpH4.5未満で正に帯電している。
【0051】
実施例で用いた種々のコロイダルシリカ粒子を、上記表Aに列挙する。
【0052】
下記の実施例では、次の略号を使用した。
POU:使用時点、RR:除去率
【0053】
下記の実施例では、次の試験方法を使用した:
【0054】
POUのpH:使用時点のpH(POUのpH)は、指定された濃度の組成物を、指定された固形分になるよう水で希釈した後の除去率試験中に測定したpHであった。
【0055】
CMP後(SP2xp)欠陥数:4枚のTEOSウェーハを各スラリーの欠陥モニター用ウェーハとして使用した。各欠陥ウェーハは、3psi、93/87rpm、及びスラリー流量150mL/分で60秒間研磨した。研磨の後ウェーハをSurfscan(登録商標)SP2xp計測ツール(KLA-Tencor, Milpitas, CA)で走査し、CMP後欠陥ウェーハマップを取得し、その後100のランダム欠陥の走査顕微鏡による自動評価を行った。ワイドオープンチャネル設定(すなわち欠陥サイズの限界無し)のKlarity Defectソフトウェア(KLA-Tencor, Milpitas, CA)を使用して、各ウェーハのCMP後の総欠陥数を抽出した。欠陥数はできる限り少なくあるべきである。
【0056】
HF(フッ化水素酸)後欠陥数:CMP後欠陥分析の後、ウェーハはM3307-2949 Veeco(登録商標)HF クリーナ (Veeco, Horsham, PA)を使用して、1.92重量%のHF溶液に、所定の基板の200Aを除去するに充分な時間、暴露した。ウェーハはSurfscan SP2xp (KLA-Tencor)上で再度走査し、HF後欠陥ウェーハマップを取得した後、100のランダム欠陥の走査顕微鏡による自動評価を行った。
【0057】
除去速度:除去率試験では、Mirra(登録商標)(200mm)研磨機、又は“Mirra RR” (Applied Materials, Santa Clara, CA) 研磨装置をIC1010(登録商標)又は他の指定されたCMP研磨パッド(The Dow Chemical Company, Midland, MI (Dow))と共に使用し、指定のフィーチャ%(ウェーハの全体領域に対するウェーハの活性領域又は高領域の割合に対応)を有するSTIパターンウェーハ基板を、MITマスク(SKW-3 wafers, SKW, Inc. Santa Clara, CA)を用い、下記の表1に規定するCMP研磨組成物を使用して、20.7kPa(3psi)のダウンフォース、スラリー流量150mL/分、93rpmのプラテン速度、及び87rpmのキャリア速度で研磨した。研磨中、パッドはKinik(登録商標)AD3CS-211250-1FNコンディショニングディスク(Kinik Company, Taiwan)を使用して、3.17kg(7Lbf)の圧力で100%インサイチューでコンディショニングを用いて調整した。
【0058】
マルチステップCMP研磨-P1(第一段階)及びP2(以降の段階):CMP研磨は第一段階すなわちP1処理で、余分な高濃度プラズマ酸化(HDP)膜を除去するように行った。膜はVP6000(登録商標)ポリウレタンCMP研磨パッド(Dow, Shore D(2秒)硬度:53)とスラリーEを用い、研磨のダウンフォース20.7kPa(3psi)、プラテン速度93rpmで研磨した。ウェーハの中央ダイ上のパターン密度(PD)が50%のフィーチャで完全な平坦化が達成された時点で、P1研磨を停止した。この時点で、50%フィーチャ上にはHDP膜が500Åまで残留していた。しかし10%や20%PDのフィーチャなど、より小さなフィーチャでは、HDP膜は完全に除去され、下の窒化物膜が露出していた。PDが50%を超えるフィーチャには依然として、窒化物膜上に相当な絶縁体膜が存在した。P2に移行する前に、OnTrak DSS-200 SynergyTM ツール(Lam Research, Fremont, CA)上でSP100清浄薬(TMAH含有)を使用して、パターンを形成したウェーハを清浄にし、ウェーハからセリア粒子を除去した。P2研磨は、1010(登録商標)溝デザイン(Dow)のIC(登録商標)ポリウレタン研磨パッド(Dow, Shore D(2秒)硬度:70)及び指示されたスラリー組成物を用い、研磨のダウンフォース20.7kPa(3psi)及びプラテン速度93rpmで行った。50%パターン密度フィーチャでは、研磨終止点はHDPが無くなって窒化物膜が露出した時と定めた。トレンチ酸化物損は、各段階の研磨事象に対し50%のパターン密度フィーチャで監視した。100%のパターン密度フィーチャでのHDP酸化物の除去も測定した。過剰研磨は、50%パターン密度のフィーチャ上に窒化ケイ素が露出した後、100%フィーチャ上で除去されたHDP膜の量であると規定される。選択性は、100%フィーチャにおける窒化ケイ素除去率の、HDP酸化物除去率に対する割合として算出した。絶縁体膜の厚さと除去率は全て、研磨の前後にKLA-Tencor(登録商標)FX200 計測ツール (KLA Tencor, Milpitas, CA)を用い、エッジ3mmを除いて49ポイントの渦巻走査を行って膜厚を測定することにより算出した。研磨の更なる詳細を下表Bに示す。
【0059】
【0060】
指示された時間間隔で、又は指示された過剰研磨量となるまで、研磨を継続した。下表3、4、5のそれぞれにおいて、「性能基準A」はトレンチ酸化物損(Å)である:許容できるトレンチ酸化物損は500Åの過剰研磨量において250Å未満、好ましくは500Åの過剰研磨量において215Å未満である。「性能基準B」はSiN損(Å)である:許容できるSiN損は500Åの過剰研磨量において200Å未満、好ましくは 500Åの過剰研磨量において150Å未満である。「性能基準C」はディッシング(Å)である:許容できるディッシングは、500Åの過剰研磨量において200Å未満、好ましくは 500Åの過剰研磨量において175Å未満である。
【0061】
特に他の指定がなければ、研磨した基板は、ブランケットウェーハ研究に使用された再利用のテトラエトキシシリケート(TEOS)ウェーハ(TENR)を用いた。
【0062】
【0063】
[実施例1]
実施例1-欠陥数:下表2において、基板はオルトケイ酸塩テトラエチル(TEOS)からの酸化物ウェーハであった。指示されたスラリーを用いて、60秒間研磨を行った。
【0064】
【0065】
上の表2に示すように、CMP研磨後の欠陥数は、セリアスラリー(スラリーE)又は本発明のカチオン性コポリマーを含まないスラリー4を用いて、同様の方法で研磨した同様のウェーハの欠陥数に比較して、飛躍的に減少した。
【0066】
[実施例2]
実施例2-パターンウェーハ研磨性能:下表3において、基板は50%のPDフィーチャを有するSTIウェーハであった。研磨は指示されたスラリーを用いて複数の段階を踏んで行った。
【0067】
【0068】
上記の表3に示すように、本発明のスラリー組成物のトレンチ酸化物損A,SiN損B、及びディッシングCは、比較例2Aにおける単に細長カチオン性シリカスラリーCに比較して、時間の経過とともに飛躍的に改善している。
【0069】
[実施例3]
実施例3-フィーチャウェーハにおけるより高い性能:下表4では、基板は50%PDフィーチャを有するSTIウェーハであった。研磨は指定されたスラリーを用いて複数の段階を踏んで行った。
【0070】
【0071】
上の表4に示すように、軽微な過剰研磨では、本発明のスラリー組成物のトレンチ酸化物損A、SiN損B、及びディッシングCは、許容できる。
【0072】
[実施例4]
実施例4-種々のパッドを用いた研磨:下表5では、スラリー2を用いて異なる2種のパッドで研磨を行った。基板は50%のPDフィーチャを有するSTIウェーハであった。研磨は指定されたスラリーを用いて、複数の段階を踏んで行った。
【0073】
【0074】
上の表5に示すように、軽微な過剰研磨では、本発明のスラリー組成物2のトレンチ酸化物損A、SiN損B、及びディッシングCは、IC1010(登録商標)パッド (Dow) を用いた場合全て許容でき、例4Bのわずかにより柔らかいパッドでは、ディッシングCが改善している。
【0075】
[比較例5]
DADMACホモポリマー添加剤(ポリマー2)を用いたこと以外は実施例2、3、4と同様の研磨を行った。
【0076】
【0077】
上の表6に示すように、DADMACホモポリマーは、DADMACコポリマーを有する本発明の組成物に匹敵する研磨性能を提供しているとは言えない。結果を上記の表2、3、4と比較のこと。