(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池用電極、及びリチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20221018BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/62 Z
(21)【出願番号】P 2018117325
(22)【出願日】2018-06-20
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】小関 和徳
【審査官】村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-152106(JP,A)
【文献】特開2015-043257(JP,A)
【文献】特開2012-238545(JP,A)
【文献】国際公開第2018/051667(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極活物質層と、前記電極活物質層の表面上に設けられる絶縁層とを備え、
前記絶縁層が絶縁性微粒子及び絶縁層用バインダーを含み、
前記電極活物質層が電極活物質及びカーボンナノチューブを含
み、
前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブを含むリチウムイオン二次電池用電極。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブの長さの平均値が10μm以下である請求項
1に記載のリチウムイオン二次電池用電極。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブの直径に対する長さの比(長さ/直径)の平均値が500以上である請求項1
又は2に記載のリチウムイオン二次電池用電極。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブの含有量が、前記電極活物質層全量基準で、0.05~0.15質量%である請求項1~
3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用電極。
【請求項5】
前記電極活物質層がカーボンブラックを更に含む請求項1~
4のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用電極。
【請求項6】
前記カーボンブラックのDBP給油量が50~700ml/100gである請求項
5に記載のリチウムイオン二次電池用電極。
【請求項7】
前記カーボンブラックの含有量が、前記電極活物質層全量基準で、0.5~5.0質量%である請求項
5又は
6に記載のリチウムイオン二次電池用電極。
【請求項8】
前記電極活物質層において、前記電極活物質の平均粒子径が0.2~15μmである請求項1~
7のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用電極。
【請求項9】
電極活物質層と、前記電極活物質層の表面上に設けられる絶縁層とを備え、
前記絶縁層が絶縁性微粒子及び絶縁層用バインダーを含み、
前記電極活物質層が電極活物質及びカーボンナノチューブを含むリチウムイオン二次電池用電極を正極として備えたリチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁層を備えるリチウムイオン二次電池用電極、及びリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、電力貯蔵用の大型定置用電源、電気自動車用等の電源として利用されており、近年では電池の小型化及び薄型化の研究が進展している。リチウムイオン二次電池は、金属箔の表面に電極活物質層を形成した両電極と、両電極の間に配置されるセパレータを備えるものが一般的である。セパレータは、両電極間の短絡防止や電解液を保持する役割を果たす。
従来、リチウムイオン二次電池は、例えば、セパレータが収縮したときでも、良好な短絡抑制機能を持たせるために、電極活物質層の表面に多孔質の絶縁層を設けることが検討されている。絶縁層は、例えば、特許文献1に開示されるように、絶縁性微粒子、バインダー及び溶媒を含む絶縁層用スラリーを、電極活物質層の上に塗布し、乾燥することで形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のリチウムイオン二次電池では、使用している間に絶縁層の絶縁性が低下する場合があり、絶縁層の絶縁信頼性を更に向上させる必要がある。
そこで、本発明は、絶縁層の絶縁信頼性を更に向上させたリチウムイオン二次電池用電極を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討の結果、従来のリチウムイオン二次電池では、電極活物質や導電助剤が電極形成時に絶縁層に移行することにより絶縁層の絶縁信頼性が低下することを突き止めた。そして、導電助剤の一部もしくは全部としてカーボンナノチューブを用いることにより電極活物質や導電助剤が絶縁層に移行することを抑制できることを見出し、以下の本発明を完成させた。本発明の要旨は、以下の[1]~[10]である。
[1]電極活物質層と、前記電極活物質層の表面上に設けられる絶縁層とを備え、前記絶縁層が絶縁性微粒子及び絶縁層用バインダーを含み、前記電極活物質層が電極活物質及びカーボンナノチューブを含むリチウムイオン二次電池用電極。
[2]前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブを含む上記[1]に記載のリチウムイオン二次電池用電極。
[3]前記カーボンナノチューブの長さの平均値が10μm以下である上記[1]又は[2]に記載のリチウムイオン二次電池用電極。
[4]前記カーボンナノチューブの直径に対する長さの比(長さ/直径)の平均値が500以上である上記[1]~[3]のいずれか1つに記載のリチウムイオン二次電池用電極。
[5]前記カーボンナノチューブの含有量が、前記電極活物質層全量基準で、0.05~0.15質量%である上記[1]~[4]のいずれか1つに記載のリチウムイオン二次電池用電極。
[6]前記電極活物質層がカーボンブラックを更に含む上記[1]~[5]のいずれか1つに記載のリチウムイオン二次電池用電極。
[7]前記カーボンブラックのDBP給油量が50~700ml/100gである上記[6]に記載のリチウムイオン二次電池用電極。
[8]前記カーボンブラックの含有量が、前記電極活物質層全量基準で、0.5~5.0質量%である上記[6]又は[7]に記載のリチウムイオン二次電池用電極。
[9]前記電極活物質層において、前記電極活物質の平均粒子径が0.2~15μmである上記[1]~[8]のいずれか1つに記載のリチウムイオン二次電池用電極。
[10]上記[1]~[9]のいずれか1つに記載の電極を正極として備えたリチウムイオン二次電池。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、絶縁層の絶縁信頼性を更に向上させたリチウムイオン二次電池用電極、及びその電極を正極として備えたリチウムイオン二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明のリチウムイオン二次電池用電極の一実施形態を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、本発明のリチウムイオン二次電池用電極の他の一実施形態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<リチウムイオン二次電池用電極>
以下、本発明のリチウムイオン二次電池用電極について詳細に説明する。
本発明のリチウムイオン二次電池用電極は、電極活物質層と、電極活物質層の表面上に設けられる絶縁層とを備える。例えば、
図1に示す本発明の一実施形態のリチウムイオン二次電池用電極10のように、リチウムイオン二次電池用電極10は、電極活物質層11と、電極活物質層11の表面上に設けられる絶縁層12とを備える。また、リチウムイオン二次電池用電極10において、電極活物質層11は、通常、電極集電体13の上に積層される。
また、
図2に示す本発明の他の一実施形態のリチウムイオン二次電池用電極10のように、電極活物質層11は、電極集電体13の両表面に積層されてもよい。その場合、絶縁層12は各電極活物質層11の表面上に設けられる。絶縁層12をリチウムイオン二次電池用電極10の両面に設けると、負極及び正極を複数積層して多層構造とした場合でも、各正極と各負極の間の短絡を有効に防止できる。
【0009】
本発明において、リチウムイオン二次電池用電極は、負極又は陽極のいずれでもよいが、絶縁層の絶縁信頼性をより向上させることができるという観点から正極であることが好ましい。
【0010】
[絶縁層]
絶縁層は、絶縁性微粒子及び絶縁層用バインダーを含む。絶縁層は、例えば、絶縁性微粒子が絶縁層用バインダーによって結着されている多孔質構造を有する。
【0011】
(絶縁性微粒子)
絶縁性微粒子は、絶縁性を有する粒子であれば特に限定されず、有機粒子、無機粒子の何れであってもよい。具体的な有機粒子としては、例えば、架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋スチレン-アクリル酸共重合体、架橋アクリロニトリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸リチウム)、ポリアセタール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等の有機化合物から構成される粒子が挙げられる。無機粒子としては、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ、ベーマイト、チタニア、ジルコニア、窒化ホウ素、酸化亜鉛、二酸化スズ、酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化タンタル(Ta2O5)、フッ化カリウム、フッ化リチウム、クレイ、ゼオライト、炭酸カルシウム等の無機化合物から構成される粒子が挙げられる。また、無機粒子は、ニオブ-タンタル複合酸化物、マグネシウム-タンタル複合酸化物等の複合酸化物から構成される粒子であってもよい。
絶縁性微粒子として、上記粒子を1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、絶縁性微粒子は、無機化合物及び有機化合物の両方を含む微粒子であってもよい。例えば、絶縁性微粒子は、有機化合物からなる粒子の表面に無機酸化物をコーティングした無機有機複合粒子であってもよい。
これらの中では、無機粒子が好ましく、中でもアルミナ粒子及びベーマイト粒子がより好ましい。
【0012】
絶縁性微粒子の平均粒子径は、絶縁層の厚さよりも小さければ特に限定されず、例えば0.001~1μm、好ましくは0.05~0.8μm、より好ましくは0.1~0.6μmである。絶縁層の平均粒子径をこれら範囲内にすることで、空隙率を上記範囲内に調整しやすくなる。
なお、平均粒子径は、レーザー回折・散乱法によって求めた絶縁性微粒子の粒度分布において、体積積算が50%での粒径(D50)を意味する。
また、平均粒子径が上記範囲内の1種の絶縁性粒子を単独で使用してもよいし、平均粒子径の異なる2種以上の絶縁性微粒子を混合して使用してもよい。
【0013】
絶縁層中の絶縁性微粒子の含有量は、絶縁層全量基準で、15~95質量%が好ましく、より好ましくは40~90質量%、更に好ましくは60~85質量%である。絶縁性微粒子の含有量が上記範囲内であると、絶縁層は均一な多孔質構造を有することができ、更に適切な絶縁性が絶縁層に付与される。
【0014】
(絶縁層用バインダー)
絶縁層用バインダーは、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素含有樹脂、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアクリロニトリル(PAN)、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリ(メタ)アクリル酸、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、及びポリビニルアルコール等が挙げられる。絶縁層用バインダーとして、これら樹脂を、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、絶縁層用バインダーとして、カルボキシメチルセルロース等を、ナトリウム塩等の塩の態様で使用してもよい。
【0015】
絶縁層中の絶縁層用バインダーの含有量は、絶縁層全量基準で、好ましくは5~50質量%、より好ましくは10~45質量%、更に好ましくは15~40質量%である。上記範囲内であると、均一な多孔質構造を絶縁層に形成でき、かつ適切な絶縁性を絶縁層に付与できる。
絶縁層は、本発明の効果を損なわない範囲内において、絶縁性微粒子及び絶縁層用バインダー以外の任意成分を含んでもよい。ただし、絶縁層の総質量のうち、絶縁性微粒子及び絶縁層用バインダーの総含有量は、85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
【0016】
絶縁層の厚さは、1~10μmが好ましい。絶縁層の厚さが10μm以下であると、絶縁層による抵抗上昇が抑制されてサイクル特性が向上する。また、絶縁層の厚さが1μm以上であると、電極活物質層に対する絶縁層による被覆率が上昇して、短絡抑制効果が向上する。これらのサイクル特性及び短絡抑制効果の観点から、絶縁層の厚さは、1.5~8.5μmがより好ましく、3~7μmが更に好ましい。
【0017】
絶縁層は、上記のように、多孔質構造を有するが、その空隙率は、50~90%が好ましい。空隙率が90%以下であると、電極活物質層に対する絶縁層による被覆率が上昇して、短絡抑制効果が向上する。空隙率が50%以上であると、絶縁層による抵抗上昇が抑制されてサイクル特性が向上する。これらの短絡抑制効果及びサイクル特性の観点から、絶縁層の空隙率は、60~85%がより好ましく、70~80%が更に好ましい。
【0018】
[電極活物質層]
電極活物質層は電極活物質及びカーボンナノチューブを含む。電極活物質層は、電極用バインダーを更に含んでもよい。
また、電極が正極である場合、電極活物質は正極活物質となり、電極活物質層は正極活物質層となる。一方、電極が負極である場合、電極活物質は負極活物質となり、電極活物質層は負極活物質層となる。
【0019】
電極活物質層の厚さは、特に限定されないが、電極集電体の片面当たり10~100μmが好ましく、20~80μmがより好ましい。
【0020】
(カーボンナノチューブ)
カーボンナノチューブは、直径がナノメートルオーダーであるチューブ状の物質である。カーボンナノチューブは炭素元素で構成されており、ベンゼン環が平面上に広がったシートを円筒状に丸めた構造を有している。
電極活物質層は、導電助剤の一部として、もしくは全部としてカーボンナノチューブを含む。これにより、電極活物質や導電助剤が絶縁層に移行することを抑制できる。そして、絶縁層の絶縁性の低下が抑制され、絶縁層の絶縁信頼性が向上する。
【0021】
以下の理由は本発明を限定しないが、導電助剤の一部として、もしくは全部としてカーボンナノチューブを含むことにより、電極活物質や導電助剤が絶縁層に移行することを抑制できるのは以下の理由であると考えられる。カーボンナノチューブは、非常に細長く、しなやかな材料である。このため、カーボンナノチューブは、電極活物質と絡んだり、他のカーボンナノチューブと絡んだり、カーボンナノチューブ以外の他の導電助剤(例えば、カーボンブラック)と絡んだりすることが予想される。そして、これにより、電極形成時に電極活物質層中の電極活物質や導電助剤が絶縁層に移行することを抑制できると考えられる。
【0022】
カーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブ及び多層カーボンナノチューブに大別される。単層カーボンナノチューブは、単層のシートを円筒状に丸めた構造を有しているものであり、多層カーボンナノチューブは、複数のカーボンナノチューブが同軸で重なっているものある。
単層カーボンナノチューブは多層カーボンナノチューブに比べてしなやかであるので、電極活物質層中のカーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブを含むことが好ましい。これにより、カーボンナノチューブは、電極活物質、他のカーボンナノチューブ、カーボンナノチューブ以外の他の導電助剤等とより確実に絡み合うことができる。そして、これにより、電極形成時に電極活物質層中の電極活物質や導電助剤が絶縁層に移行することをより確実に抑制することができる。
【0023】
電極活物質層中のカーボンナノチューブにおける単層カーボンナノチューブの含有量は、カーボンナノチューブ全量基準で、好ましくは60~100質量%であり、より好ましくは70~100質量%である。カーボンナノチューブにおける単層カーボンナノチューブの含有量が60~100質量%であると、絶縁層の絶縁信頼性を更に向上させることができる。
【0024】
カーボンナノチューブの製造方法としては、例えば、アーク放電法、レーザー蒸発法(レーザーアブレーション法)、化学気相成長法(CVD法)等が挙げられる。量産性に優れているという観点、及びカーボンナノチューブ中の単層カーボンナノチューブの含有量を高くできるという観点から、好ましいカーボンナノチューブの製造方法はCVD法である。
【0025】
電極活物質層へのカーボンナノチューブの分散を容易にするという観点及び絶縁層の絶縁信頼性を更に向上させるという観点から、カーボンナノチューブの長さの平均値は、例えば60μm以下、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは0.5~10μmであり、更に好ましくは1~8μmである。
なお、カーボンナノチューブの長さの平均値は、例えば、以下のようにして測定することができる。マイカ劈開面上に分散液を少量滴下して乾燥させ、その表面をAFM(atomic force microscope:原子間力顕微鏡)を利用して長さを測定し、30個以上のカーボンナノチューブの平均値を計算することによってカーボンナノチューブの長さの平均値を得ることができる。
【0026】
カーボンナノチューブをより絡み合いやすいものにして、絶縁層の絶縁信頼性を更に向上させるという観点から、カーボンナノチューブの直径に対する長さの比(長さ/直径)の平均値は、例えば100以上であり、好ましくは500以上であり、より好ましくは600~10000であり、更に好ましくは1000~7000である。なお、カーボンナノチューブの直径の平均値は、例えば、以下のようにして測定することができる。30個のカーボンナノチューブに対して、TEM(Transmission Electron Microscopy:透過電子顕微鏡)を利用して直径を測定し、これらの平均値を計算して、カーボンナノチューブの直径の平均値を得ることができる。そして、カーボンナノチューブの長さの平均値をカーボンナノチューブの直径の平均値で割り算して、カーボンナノチューブの直径に対する長さの比(長さ/直径)の平均値を算出することができる。
【0027】
絶縁層の絶縁信頼性を更に向上させるという観点から、電極活物質層におけるカーボンナノチューブの含有量は、電極活物質層全量基準で、例えば0.05~3質量%であり、好ましくは0.05~0.15質量%であり、より好ましくは0.07~0.13質量%である。
【0028】
(カーボンナノチューブ以外の導電助剤)
電極活物質層は、カーボンナノチューブ以外の導電助剤を含んでもよい。カーボンナノチューブ以外の導電助剤は、通常、電極活物質よりも導電性が高い材料が使用される。電極活物質層に高い導電性を付与できるという観点及びカーボンナノチューブと同じカーボン材料であり、カーボンナノチューブに捕捉されやすいという観点から、カーボンナノチューブ以外の導電助剤は、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックには、例えば、サーマルブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、ガスファーネスブラック、オイルファーネスブラック及びケッチェンブラック等が挙げられる。導電助剤として、これらのカーボンブラックを1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのカーボンブラックの中で、ファーネスブラック及びアセチレンブラックの少なくとも1種のカーボンブラックがより好ましい。
【0029】
電極活物質層がカーボンブラックを含む場合、電極活物質層に高い導電性を付与できるという観点及びカーボンナノチューブによる捕捉可能なカーボンブラックの量という観点から、カーボンブラックの含有量は、電極活物質層全量基準で、好ましくは0.5~5.0質量%であり、より好ましくは1.0~3.0質量%である。
また、カーボンブラックがカーボンナノチューブに絡まれやすくなるという観点から、カーボンブラックのフストラクチャー(アグリゲート)が発達している方が好ましい。
カーボンブラックの個々のアグリゲート間の空隙率がストラクチャーと正の相関があり、DBP(可塑剤の一種でDi-Butyl Phthalateの略)吸収量(ml/100g)で以てストラクチャーを間接的に評価が可能である。
具体的には、JIS K 6217(ゴム用カーボンブラックの基本性能の試験法)によって測定することができる。
カーボンブラックのDBP給油量(ml/100g)は、好ましくは50~700であり、より好ましくは100~550である。
【0030】
導電助剤は、本発明の効果を損なわない範囲内において、カーボンナノチューブ及びカーボンブラック以外の他の導電助剤を含んでもよい。ただし、導電助剤の総質量のうち、カーボンナノチューブ及びカーボンブラックの総含有量は、85質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましい。
【0031】
(電極用バインダー)
電極活物質層は、例えば、電極活物質及び導電助剤が電極用バインダーによって結着されている構造を有する。電極用バインダーの具体例としては、絶縁層用バインダーとして使用可能な樹脂として例示された上述の樹脂が挙げられる。電極用バインダーとして、上述の樹脂を1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
(電極活物質の平均粒子径及び含有量)
カーボンナノチューブとの絡み合いやすさの観点、リチウムの拡散経路を確保するという観点及び電極活物質の電子伝導率を向上させるという観点から、電極活物質の平均粒子径は、例えば0.2μm以上、好ましくは0.2~15μmであり、より好ましくは0.5~15μmであり、更に好ましくは1~15μmである。
なお、電極活物質が正極活物質である場合、電極活物質の平均粒子径は、例えば7μm以上、好ましくは8~15μmである。
一方、電極活物質が負極活物質である場合、電極活物質の平均粒子径は、好ましくは1~25μmであり、より好ましくは5~20μmである。
なお、電極活物質の場合も、平均粒子径は、レーザー回折法によって求めた電極活物質の粒度分布において、体積積算が50%での粒径(D50)を意味する。
電極活物質層における電極活物質の含有量は、電極活物質層全量基準で、好ましくは50~98.5質量%であり、より好ましくは60~98質量%である。
【0033】
(正極活物質)
上述したように、電極が正極である場合、電極活物質は正極活物質となり、電極活物質層は正極活物質層となる。
正極活物質層に使用される正極活物質としては、例えば、金属酸リチウム化合物が挙げられる。金属酸リチウム化合物としては、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMn2O4)等が例示できる。また、正極活物質として、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO4)等を使用してもよい。更に、正極活物質として、リチウム以外の金属を複数使用したものを使用してもよく、三元系と呼ばれるNCM(ニッケルコバルトマンガン)系酸化物、NCA(ニッケルコバルトアルミニウム系)系酸化物等を使用してもよい。正極活物質として、これらの物質を1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、正極活物質層がカーボンナノチューブを含むことにより、正極活物質層の表面積が大きくなり、リチウムイオン二次電池の容量が大きくなる。更に、正極にフレキシビリティが付与される。
【0034】
(負極活物質)
上述したように、電極が負極である場合、電極活物質は負極活物質となり、電極活物質層は負極活物質層となる。
負極活物質層に使用される負極活物質としては、グラファイト、ハードカーボン等の炭素材料、スズ化合物とシリコンと炭素の複合体、リチウム等が挙げられるが、これら中では炭素材料が好ましく、グラファイトがより好ましい。負極活物質として、上記物質を1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、負極活物質層がカーボンナノチューブを含むことにより、負極の強度が増加し、リチウムイオン二次電池のサイクル特性が向上し、電力量が増大する。
【0035】
(任意成分)
電極活物質層は、本発明の効果を損なわない範囲内において、電極活物質、導電助剤、及び電極用バインダー以外の任意成分を含んでもよい。ただし、電極活物質層の総質量のうち、電極活物質、導電助剤及び電極用バインダーの総含有量は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。
【0036】
(電極集電体)
電極集電体を構成する材料としては、例えば、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性を有する金属が挙げられる。これらの中では、電極集電体が正極集電体の場合、アルミニウム、チタン、ニッケル及びステンレス鋼が好ましく、アルミニウムがより好ましい。また、電極集電体が負極集電体の場合、銅、チタン、ニッケル及びステンレス鋼が好ましく、銅がより好ましい。電極集電体は、一般的に金属箔からなり、その厚さは、特に限定されないが、1~50μmが好ましい。
【0037】
<リチウムイオン二次電池用電極の製造方法>
次に、本発明のリチウムイオン二次電池用電極を製造するための製造方法の一実施形態について詳細に説明する。なお、本発明のリチウムイオン二次電池用電極は、下記の製造方法で製造されたものに限定されない。
本発明のリチウムイオン二次電池用電極の製造方法の一実施形態では、例えば、まず、電極活物質層を形成し、その電極活物質層の表面上に、絶縁層用組成物を塗布して絶縁層を形成する。
【0038】
(電極活物質層の形成)
電極活物質層の形成においては、まず、電極活物質と、カーボンナノチューブと、電極用バインダーと、溶媒とを含む電極活物質層用組成物を用意する。なお、電極活物質層用組成物は、必要に応じて配合されるカーボンブラック等のその他成分を含んでもよい。電極活物質、カーボンナノチューブ、カーボンブラック、電極用バインダー等は上記で説明したとおりである。電極活物質層用組成物はスラリーの形態である。
【0039】
電極活物質層用組成物に使用する溶媒には、例えば、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、トルエン、イソプロピルアルコール、N-メチルピロリドン(NMP)、エタノール、水等が挙げられる。中でも、N-メチルピロリドン(NMP)及び水が好ましい。これらの溶媒を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
電極活物質層用組成物の固形分濃度は、好ましくは5~75質量%、より好ましくは20~65質量%である。
【0040】
電極活物質層は、上記電極活物質層用組成物を使用して公知の方法で形成すればよく、例えば、上記電極活物質層用組成物を電極集電体の上に塗布し、乾燥することによって形成することができる。
また、電極活物質層は、電極活物質層用組成物を、電極集電体以外の基材上に塗布し、乾燥することにより形成してもよい。電極集電体以外の基材としては、公知の剥離シートが挙げられる。基材の上に形成した電極活物質層は、好ましくは電極活物質層の上に絶縁層を形成した後、基材から剥がされ、電極集電体の上に転写されてもよい。
電極集電体又は基材の上に形成した電極活物質層は、好ましくは加圧プレスする。加圧プレスすることで、電極密度を高めることが可能になる。加圧プレスは、ロールプレス等により行うことができる。
【0041】
(絶縁層の形成)
絶縁層の形成に使用する絶縁層用組成物は、絶縁性微粒子と、絶縁層用バインダーと、溶媒とを含む。なお、絶縁層用組成物は、必要に応じて配合されるその他の任意成分を含んでいてもよい。絶縁性微粒子、絶縁層用バインダー等の詳細は上記で説明したとおりである。絶縁層用組成物はスラリーの形態である。
絶縁層用組成物に使用する溶媒には、例えば、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、トルエン、イソプロピルアルコール、N-メチルピロリドン(NMP)、エタノール、水等が挙げられる。中でも、N-メチルピロリドン(NMP)及び水が好ましい。これらの溶媒を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
絶縁層用組成物の固形分濃度は、好ましくは5~75質量%、より好ましくは15~50質量%である。また、絶縁層用組成物の粘度は、好ましくは1000~3000mPa・s、より好ましくは1700~2300mPa・sである。粘度及び固形分粘度を上記範囲内とすることで、所定の厚さを有する絶縁層を形成しやすくなる。なお、粘度とは、B型粘度計で60rpm、25℃の条件で測定した粘度である。
【0043】
絶縁層は、絶縁層用組成物を、電極集電体の上に塗布して乾燥することによって形成することができる。絶縁層用組成物を電極活物質層の表面に塗布する方法は特に限定されず、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ドクターブレード法、バーコート法、グラビアコート法、スクリーン印刷法等が挙げられる。これらの中では、絶縁層用組成物を薄くかつ均一に塗布できるという観点から、バーコート法又はグラビアコート法が好ましい。
また、乾燥温度は、上記溶媒を除去できれば特に限定されないが、例えば40~120℃、好ましくは50~90℃である。また、乾燥時間は、特に限定されないが、例えば、30秒~10分間である。
【0044】
<リチウムイオン二次電池>
本発明のリチウムイオン二次電池は、上述の絶縁層を有するリチウムイオン二次電池用電極を正極として備える。例えば、本発明のリチウムイオン二次電池は、互いに対向するように配置された正極及び負極を備えるようにしてもよい。そして、正極が、上述の絶縁層を有するリチウムイオン二次電池用電極となる。この正極においては、例えば、負極に対向する面に絶縁層が設けられる。
【0045】
本発明のリチウムイオン二次電池は、好ましくは正極及び負極の間に配置されるセパレータを更に備える。セパレータが設けられることで、正極及び負極の間の短絡がより一層効果的に防止される。また、セパレータは、後述する電解質を保持してもよい。正極又は負極に設けられる絶縁層は、セパレータに接触していてもよいし、接触していなくてもよいが、接触することが好ましい。
セパレータとしては、多孔性の高分子膜、不織布、ガラスファイバー等が挙げられ、これらの中では多孔性の高分子膜が好ましい。多孔性の高分子膜としては、オレフィン系多孔質フィルムが例示される。セパレータは、リチウムイオン二次電池駆動時の発熱により加熱されて熱収縮等することがある。しかし、そのような熱収縮時でも、上記絶縁層が設けられることで短絡の発生が抑制される。
また、本発明のリチウムイオン二次電池では、セパレータが省略されてもよい。セパレータが省略されても、負極又は正極の少なくともいずれか一方に設けられた絶縁層により、負極と正極の間の絶縁性を確保することができる。
【0046】
本発明のリチウムイオン二次電池は、負極及び正極がそれぞれ複数積層された多層構造であってもよい。この場合、負極及び正極は、積層方向に沿って交互に設けられてもよい。また、セパレータが使用される場合、セパレータは各負極と各正極の間に配置されてもよい。
本発明のリチウムイオン二次電池において、上記した負極及び正極、又は負極、正極、及びセパレータは、例えば、バッテリーセル内に収納される。バッテリーセルは、角型、円筒型、ラミネート型等のいずれでもよい。
【0047】
本発明のリチウムイオン二次電池は電解質を備えてもよい。電解質は特に限定されず、リチウムイオン二次電池で使用される公知の電解質を使用できる。電解質としては、例えば電解液を使用することができる。
電解液としては、有機溶媒と、電解質塩とを含む電解液が例示できる。有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトン、スルホラン、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、テトロヒドラフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジオキソラン、メチルアセテート等の極性溶媒、又はこれら溶媒の2種類以上の混合物が挙げられる。電解質塩としては、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiCF6、LiCF3CO2、LiPF6SO3、LiN(SO3CF3)2、Li(SO2CF2CF3)2、LiN(COCF3)2及びLiN(COCF2CF3)2、リチウムビスオキサレートボラート(LiB(C2O4)2等のリチウムを含む塩等が挙げられる。また、電解質として、有機酸リチウム塩-三フッ化ホウ素錯体、LiBH4等の錯体水素化物等の錯体も使用することができる。電解質として、これらの塩及び錯体を、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
また、電解質は、上記電解液に高分子化合物を加えて形成されるゲル状電解質であってもよい。高分子化合物としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系ポリマー、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等のポリアクリル系ポリマーが挙げられる。なお、ゲル状電解質はセパレータとしての機能を有するので、電解質としてゲル状電解質を使用する場合、セパレータを設けなくてもよい。
【0048】
電解質は、負極及び正極間に配置されればよく、例えば、電解質は、上記した負極及び正極、又は負極、正極、及びセパレータが内部に収納されたバッテリーセル内に充填される。また、電解質は、例えば、負極又は正極上に塗布されて負極及び正極間に配置されてもよい。
【実施例】
【0049】
以下に実施例を用いて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0050】
得られたリチウムイオン二次電池は、以下の評価方法により評価した。
(絶縁層の絶縁信頼性試験)
正極電極上に絶縁層を形成させた後、日置電機株式会社製、「超絶縁計 SM7120」を用いて絶縁層の体積抵抗を測定電圧0.1Vにて測定を10点実施し、その平均値を絶縁信頼性として以下のように分類した。
A・・・104Ω/cm3以上
B・・・103Ω/cm3以上104Ω/cm3未満
C・・・10Ω/cm3超103Ω/cm3未満
D・・・10Ω/cm3以下
【0051】
[実施例1~5及び比較例1のリチウムイオン二次電池の作製方法]
(正極の作製)
表1に示す正極活物質、導電助剤及び電極用バインダーを、溶媒としてのN-メチルピロリドン(NMP)と混合し、固形分濃度60質量%に調整した正極活物質層用スラリーを作製した。この正極活物質層用スラリーを、正極集電体としての厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に塗布し、予備乾燥後、120℃で真空乾燥した。その後、400kN/mの線圧でローラにより加圧プレスし、更に電極寸法の100mm×200mm角に打ち抜いて、両面に正極活物質層を有する正極を作製した。該寸法のうち、正極活物質が塗布された面積は100mm×180mmであった。なお、両面に形成された正極活物質層の厚さは、片面あたり50μmであった。
【0052】
(負極の作製)
負極活物質としてグラファイト(平均粒子径10μm)100質量部と、電極用バインダーとしてカルボキシメチルセルロース(CMC)のナトリウム塩を1.5質量部と、その他のバインダーとしてスチレンブタジエンゴム(SBR)1.5質量部と、溶媒として水とを混合し、固形分50質量%に調整した負極活物質層用スラリーを得た。この負極活物質層用スラリーを、負極集電体としての厚さ12μmの銅箔の両面に塗布して100℃で真空乾燥した。その後、両面に負極活物質層用スラリーを塗布した負極集電体を、300kN/mの線圧でローラにより加圧プレスし、更に電極寸法の110mm×210mm角に打ち抜いて、両面に負極活物質層を有する負極を作製した。該寸法のうち、負極活物質が塗布された面積は110mm×190mmであった。なお、両面に形成された負極活物質層の厚さは、片面あたり50μmであった。
【0053】
(電解液の調製)
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)を3:7の体積比(EC:DEC)で混合した溶媒に、電解質塩としてLiPF6を1モル/リットルとなるように溶解して、電解液を調製した。
【0054】
(絶縁層の形成)
絶縁性微粒子としてアルミナ粒子(日本軽金属株式会社製、製品名:AHP200、平均粒子径0.4μm)を用意した。これを、ポリフッ化ビニリデン溶液(株式会社クレハ製、製品名:L#1710、10質量%溶液、溶媒:NMP)に、中程度の剪断力を加えながら、固形分基準で、アルミナ粒子100質量部、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)22質量部となるように混合して分散させてスラリーを得た。
このスラリーにNMPを、固形分濃度が30質量%となるように更に加え、撹拌機で30分間穏やかに撹拌し、絶縁層用スラリーを作製した。絶縁層用スラリーの粘度は2000mPa・sであった。なお、粘度は、B型粘度計で60rpm、25℃の条件で測定したものである。
絶縁層用スラリーを、バーコーターで、正極の各正極活物質層の表面に塗布し、その塗膜を60℃で10分間乾燥することによって、各正極活物質層の表面に絶縁層をそれぞれ形成し、次いで反対側を同様に塗工し両面に絶縁層を有する正極を作製した。なお、各正極活物質層の表面に形成された絶縁層の厚さは4μmであった。
【0055】
(リチウムイオン二次電池の製造)
上記で得た絶縁層を有する正極9枚と、負極10枚と、セパレータ18枚を積層して積層体を得た。ここで、負極と正極は交互に配置して、各負極と正極の間にセパレータを配置した。また、セパレータとしては、ポリエチレン製多孔質フィルムを用いた。
各正極の正極集電体の露出部の端部を纏めて超音波融着で接合するとともに、外部に突出する端子用タブを接合した。同様に、各負極の負極集電体の露出部の端部を纏めて超音波融着で接合するとともに、外部に突出する端子用タブを接合した。
次いで、アルミラミネートフィルムで上記積層体を挟み、端子用タブを外部に突出させ、三辺をラミネート加工によって封止した。封止せずに残した一辺から、上記で得た電解液を注入し、真空封止することによってラミネート型の電池を製造した。
【0056】
[リチウムイオン二次電池の評価結果]
実施例1~5及び比較例1のリチウムイオン二次電池における絶縁層の絶縁信頼性試験の評価結果を以下の表1に示す。
【0057】
【0058】
なお、正極の作製に用いた正極活物質、導電助剤及び電極用バインダーは以下のとおりである。
(正極活物質)
・NCA:NCA系(ニッケルコバルトアルミニウム系)酸化物(平均粒子径:13.3μm又は7.7μm)
(導電助剤)
<カーボンナノチューブ>
・A:単層カーボンナノチューブ、直径:1.8nm、長さ:5μm、単層カーボンナノチューブ含有量:74±1.5質量%以上
・B:多層カーボンナノチューブ、直径:150nm、長さ:15μm
・C:多層カーボンナノチューブ、直径:2.5nm、長さ:30μm
・D:多層カーボンナノチューブ、直径:7.5nm、長さ:60μm
・E:多層カーボンナノチューブ、直径:15.0nm、長さ:9μm
<カーボンブラック>
・A:DBP給油量:150ml/100g
・B:DBP給油量:495ml/100g
(電極用バインダー)
・PVdF:ポリフッ化ビニリデン
【0059】
以上の実施例1~5に示すように、電極活物質層がカーボンナノチューブを含むことで、実施例1~5のリチウムイオン二次電池における絶縁層の絶縁信頼性が優れていた。また、実施例1に示すように、カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブを含むことにより、実施例1のリチウムイオン二次電池における絶縁層の絶縁信頼性が更に優れていた。それに対して、比較例1では、電極活物質層がカーボンナノチューブを含まないため、絶縁層の絶縁信頼性が不十分であった。
【符号の説明】
【0060】
10 リチウムイオン二次電池用電極
11 電極活物質層
12 絶縁層
13 電極集電体