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  • 特許-レンズユニットおよびカメラモジュール 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】レンズユニットおよびカメラモジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20221018BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20221018BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20221018BHJP
【FI】
G02B7/02 A
G02B7/02 Z
G03B15/00 V
G03B17/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018121370
(22)【出願日】2018-06-26
(65)【公開番号】P2020003584
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100206612
【弁理士】
【氏名又は名称】新田 修博
(74)【代理人】
【識別番号】100209749
【弁理士】
【氏名又は名称】栗林 和輝
(72)【発明者】
【氏名】杉目 孝行
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 章
(72)【発明者】
【氏名】馬場 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】篠原 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】中山 修
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-114833(JP,A)
【文献】特開2017-181734(JP,A)
【文献】特開2016-218139(JP,A)
【文献】特開2018-054797(JP,A)
【文献】特開2018-054798(JP,A)
【文献】特開2012-163875(JP,A)
【文献】特開2017-219571(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02-7/16
G03B 15/00
G03B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンズが当該レンズの光軸に沿って並べられて成るレンズ群と、このレンズ群を収容する鏡筒とを有し、前記鏡筒内に収容される前記レンズ群の最も物体側に位置されるレンズは、その物体側表面が物体側へ向けて突出する湾曲面として形成されるとともに、前記物体側表面の外周部位に形成される平面部と、この平面部と前記物体側表面の他の部位との間に形成されるエッジ部とを有するレンズユニットであって、
前記エッジ部を露出させないように、前記エッジ部の全体を覆って保護するエッジ保護部を有し、
前記エッジ保護部は、最も物体側に位置される前記レンズに接着固定されるカバー部材によって形成されることを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
複数のレンズが当該レンズの光軸に沿って並べられて成るレンズ群と、このレンズ群を収容する鏡筒とを有し、前記鏡筒内に収容される前記レンズ群の最も物体側に位置されるレンズは、その物体側表面が物体側へ向けて突出する湾曲面として形成されるとともに、前記物体側表面の外周部位に形成される平面部と、この平面部と前記物体側表面の他の部位との間に形成されるエッジ部とを有するレンズユニットであって、
前記エッジ部を露出させないように、前記エッジ部の全体を覆って保護するエッジ保護部を有し、
前記エッジ保護部は、前記鏡筒に着脱自在に取り付けられて最も物体側に位置される前記レンズを前記鏡筒に対して固定するキャップ部材によって形成されることを特徴とするレンズユニット。
【請求項3】
最も物体側に位置される前記レンズがガラスレンズであることを特徴とする請求項1または2に記載のレンズユニット。
【請求項4】
請求項1からのいずれか一項に記載のレンズユニットを備えることを特徴とするカメラモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車等の車両に搭載される車載カメラを構成するレンズユニットおよびカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車に車載カメラを搭載し、駐車をサポートしたり、画像認識により衝突防止を図ったりすることが行なわれており、さらにそれを自動運転に応用する試みもなされている。また、このような車載カメラ等のカメラモジュールは、一般に、複数のレンズが光軸に沿って並べられて成るレンズ群と、このレンズ群を収容保持する鏡筒と、レンズ群の少なくとも一個所のレンズ間に配置される絞り部材とを有するレンズユニットを備える(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図7には、従来のレンズユニット100の一例が示されている。図示のように、このレンズユニット100は、円筒状の鏡筒(バレル)120と、鏡筒120の内側収容空間S内に配置される複数のレンズ、例えば、最も物体側に位置される第1のレンズ130、第2~第4のレンズ140,150,160、および、最も像側(結像側)に位置される第5のレンズ150とを備える。鏡筒120に固定されて支持される複数のレンズ130,140,150,160,170は、それぞれの光軸を一致させた状態で配置されており、1つの光軸Oに沿って並べられることにより、フィルタ250を介したパッケージセンサ(撮像素子;図示せず)による撮像に用いられる一群のレンズ群Lを構成している。
【0004】
そして、鏡筒120は、その内側収容空間S内にレンズ群Lが組み込まれて収容保持された状態で、その物体側の端部(図7において上端部)のカシメ部123が径方向内側にカシメられることにより、レンズ群Lの最も物体側に位置される第1のレンズ130をこのカシメ部123で鏡筒120の物体側端部に固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-231993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このようなレンズユニット100が車両に搭載される車載カメラを構成する場合には、車両走行中に飛び石等の異物が第1のレンズ130の表面(物体側の面)に衝突する場合がある。その場合、状況によっては、飛び石が衝突するレンズ130の部位だけでなく、その衝突部位を起点にレンズ130全体が大きく破損し得る。そのような現象は、特に、カシメ部123を含むレンズ130の周辺部が飛び石等の衝突を受けた際に生じ、図8の(a)(b)に示されるように衝突部位を起点に縦横に大きく亀裂が入ってレンズ全体が激しく破損する。このような激しい破損は、外観を著しく損なうだけでなく、レンズユニット100のビューやセンシングの機能を著しく損ない、走行中にこのような事象が起こると車両の安全性能を失うことになる。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、飛び石等の衝突物によって最も物体側に位置されるレンズが全体的に破損することを防止できるレンズユニットおよびカメラモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、複数のレンズが当該レンズの光軸に沿って並べられて成るレンズ群と、このレンズ群を収容する鏡筒とを有し、前記鏡筒内に収容される前記レンズ群の最も物体側に位置されるレンズは、その物体側表面が物体側へ向けて突出する湾曲面として形成されるとともに、前記物体側表面の外周部位に形成される平面部と、この平面部と前記物体側表面の他の部位との間に形成されるエッジ部とを有するレンズユニットであって、
前記エッジ部を露出させないように覆って保護するエッジ保護部を有することを特徴とする。
【0009】
本発明者らは、レンズの周辺部が飛び石等の衝突を受けた際に衝突部位を起点に縦横に大きく亀裂が入ってレンズ全体が激しく破損する原因について鋭意研究し、車両走行中を想定した飛び石衝突試験を重ねて、レンズに縦横に延びる大きな亀裂を生じさせる根源がレンズの平面部を形成するエッジ部であることを知見した。そして、本発明者らは、更に、例えば1個当たり直径が3.5~5mm程度、重量0.3~0.5gの鉄球の破片を複数個、レンズの特に周辺部に所定の速度で衝突させて、エッジ部を露出させないように覆って保護した場合とそうでない場合とでレンズの損傷具合を比較した結果、エッジ部を露出させた場合には、前述した図8に示されるように衝突部位を起点に縦横に大きく亀裂が入ってレンズ全体が激しく破損するが、エッジ部を露出させないように覆って保護した場合には、図4に示されるように、レンズの破損が衝突部位付近にとどまるという試験結果を得たものであり、それに基づき、エッジ部を露出させないように覆って保護するエッジ保護部をレンズユニットに設ける本発明に至ったものである。
【0010】
上記構成のレンズユニットによれば、縦横に延びる大きな亀裂を最も物体側に位置されるレンズに生じさせる根源であるエッジ部を露出させないように覆って保護するエッジ保護部を設けたため、飛び石等の衝突物に対する耐衝撃性が向上し、図4からも明らかなように、飛び石等の衝突物によって前記レンズが全体的に破損することを防止できる。
【0011】
最も物体側に位置されるレンズの前記平面部は、特に樹脂製の鏡筒の物体側端部をカシメて変形させることによって特にガラス製の前記レンズを固定する際に安定したカシメが行なえるようにカシメ部を圧接させるために利用され、したがって、この平面部を前記レンズの凸状に湾曲した物体側表面の外周部位に形成する際に必然的に生じる前記エッジ部がエッジ保護部によって保護されて衝突物によるレンズの全体的破損が防止されることは、樹脂製の鏡筒と最も物体側に位置されるガラス製のレンズとの組み合わせにおいて特に有益である。
【0012】
また、上記構成において、平面部を有する最も物体側に位置されるレンズは、狭角レンズまたは広角レンズのいずれとして使用されてもよいが、いずれの場合においても、エッジ部を保護するエッジ保護部は、使用される前記レンズの所要の画角(レンズの物体側表面の露出開口寸法)に影響を及ぼさないようにその寸法が設定されなければならない。特に、エッジ保護部が樹脂鏡筒の前記カシメ部によって形成される場合には、カシメ部のカシメ量、カシメ角、カシメ長さに配慮して、レンズの所要の画角が確保されるようにしなければならない。また、これに関連して、最も物体側に位置されるレンズが狭角レンズである狭角レンズユニットとしてレンズユニットが構成され、最も物体側に位置されるレンズの物体側表面の曲率半径が大きくなって平坦に近づくようになると、曲率半径が小さい物体側表面と同じ傾斜角度の平面部をカットして形成する際にエッジ部が鋭い角度で立ち上がるため、カシメ部を大きく曲げなければならなくなり(カシメ量が大きくなり)、レンズとカシメ部との間に隙間が生じ易くなることから、エッジ保護部としてのカシメ部の寸法管理は更に重要となる。
【0013】
また、前記カシメ部によりエッジ保護部を形成することによってエッジ部を含めてレンズの平面部全体を露出しないように覆うと、従来から平面部に施されていた遮光のためのブラスト処理が不要になるため、レンズユニットの製造工程数を削減できる。
【0014】
また、上記構成において、エッジ保護部は、最も物体側に位置されるレンズに接着固定されるカバー部材によって形成されてもよく、あるいは、鏡筒に着脱自在に取り付けられて最も物体側に位置されるレンズを鏡筒に対して固定するキャップ部材によって形成されてもよい。このようにエッジ保護部を鏡筒のカシメ部とは別体の部材によって構成すれば、光学性能に影響を及ぼし易いエッジ保護部の所要の寸法精度を容易に確保できる。
【0015】
また、本発明は、上記構成のレンズユニットを備えるカメラモジュールも提供する。このような構成のカメラモジュールによっても前述したレンズユニットの作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のレンズユニットによれば、縦横に延びる大きな亀裂を最も物体側に位置されるレンズに生じさせる根源であるエッジ部を露出させないように覆って保護するエッジ保護部を設けたため、飛び石等の衝突物に対する耐衝撃性が向上し、飛び石等の衝突物によって前記レンズが全体的に破損することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施の形態に係るレンズユニットの概略断面図である。
図2図1のレンズユニットのエッジ保護部の要部拡大断面図である。
図3図1のレンズユニットを有する本発明の一実施の形態に係るカメラモジュールの概略断面図である。
図4】異なる2つの機種のレンズユニットにおいてレンズのエッジ部をエッジ保護部によって保護した状態で行なわれた飛び石衝突試験の試験結果を示す写真である。
図5】エッジ保護部の第1の変形例を示す要部拡大断面図である。
図6】エッジ保護部の第2の変形例を示す要部拡大断面図である。
図7】従来のレンズユニットの概略断面図である。
図8】異なる2つの機種のレンズユニットにおいてレンズのエッジ部をエッジ保護部によって保護しない状態で行なわれた飛び石衝突試験の試験結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
なお、以下で説明される本実施の形態のレンズユニットは、特に車載カメラ等のカメラモジュール用のものであり、例えば、自動車の外表面側に固定して設置され、配線は自動車内に引き込まれてディスプレイやその他の装置に接続される。また、図4および図8を除く全ての図においてレンズについてはハッチングを省略している。
【0019】
図1は、本発明の一実施の形態に係るレンズユニットを示している。図示のように、本実施の形態のレンズユニット11は、円筒状の鏡筒(バレル)12と、鏡筒12の段付きの内側収容空間S内に配置される複数(例えば、5つ)のレンズ13,14,15,16,17と、2つの絞り部材22a,22bとを備えている。このレンズユニット11を備える車載カメラは、レンズユニット11と、図示しないイメージセンサを有する基板と、当該基板を自動車等の車両に設置する図示しない設置部材とを備えるものである。
【0020】
鏡筒12に固定されて支持されている複数のレンズ13,14,15,16,17は、それぞれの光軸を一致させた状態に配置されており、1つの光軸Oに沿って各レンズ13,14,15,16,17が並べられた状態となって、撮像に用いられる1群のレンズ群Lを構成している。なお、これらのレンズの表面には、必要に応じて、反射防止膜、親水膜、撥水膜等が設けられる。
【0021】
2つの絞り部材22a,22bのうちの物体側から1番目の絞り部材22aは、物体側から2番目のレンズ14と3番目のレンズ15との間に配置されている。物体側から2番目の絞り部材22bは、物体側から3番目のレンズ15と4番目のレンズ16との間に配置されている。絞り部材22a,22bは透過光量を制限し、明るさの指標となるF値を決定する「開口絞り」またはゴーストの原因となる光線や収差の原因となる光線を遮光する「遮光絞り」である。
【0022】
鏡筒12の物体側の端部(図1において上端部)には、当該端部を径方向内側にカシメてなるカシメ部23が設けられており、このカシメ部23によってレンズ群Lの最も物体側に位置されるレンズ13が鏡筒12の物体側の端部に固定されている。なお、本実施の形態において、鏡筒12は樹脂製であり、最も物体側に位置されるレンズ13はガラスレンズであり、その他のレンズは樹脂レンズであるが、これに限らない。
【0023】
また、鏡筒12の像側(結像側)の端部(図1において下端部)には、レンズ17よりも径の小さい開口部を有する内側フランジ部24が設けられている。この内側フランジ部24とカシメ部23とにより、鏡筒12内にレンズ群Lを構成する複数のレンズ13、14、15、16,17と絞り部材22a,22bとが保持されている。
【0024】
最も物体側に位置するレンズ13の外周面には、当該レンズ13の像側部分に径が小さくなった縮径部が設けられ、当該縮径部にシール部材としてのOリング26が設けられ、レンズ13の外周面と鏡筒12の内周面との間を、鏡筒12の物体側端部で封止した状態となっている。これにより、レンズユニット11の物体側の端部から鏡筒12内に水や塵埃等の微粒子が浸入するのを防止している。なお、鏡筒12の内部には物体側において円筒状の内壁12bが設けられ、この内壁12bと外壁12aとの間に環状体27が設けられ、この環状体27にOリング26が密接している。なお、環状体27は任意であり、鏡筒12と一体としてもよい。
【0025】
鏡筒12は、その内径が物体側から像側に向かって段階的に小さくなっている。これに対応して、レンズ13,14,15,16,17は、物体側から像側に向かうにつれて、外径が小さくなっている。基本的に、レンズ13,14,15,16,17それぞれの外径と、鏡筒12の各レンズ13,14,15,16,17が支持される部分それぞれの内径とは略等しくなっている。なお、鏡筒12の外周面には、鏡筒12を車載カメラに設置する際に用いられる外側フランジ部25が鏡筒12の外周面に鍔状に設けられている。
【0026】
また、カシメ部23によって鏡筒12の物体側の端部に固定されるレンズ群Lの最も物体側に位置される前述したレンズ13は、図1に明確に示されるように、その物体側表面13cが物体側へ向けて突出する湾曲面として形成されるとともに、図2に明確に示されるように、物体側表面13cの外周部位に形成される平面部13aと、この平面部13aと物体側表面13cの球面あるいは非球面で構成される他の部位との間に形成されるエッジ部13bとを有する。この場合、平面部13aは、鏡筒12の物体側端部のカシメ部23をカシメて変形させることによって最も物体側に位置されるレンズ13を固定する際に安定したカシメが行なえるようにカシメ部23を圧接させるために利用される。このように平面部13aとカシメ部23が面で圧接されることにより、強力な防水機能が担保されている。
【0027】
また、このような構成のレンズユニット11は、最も物体側に位置されるレンズ13のエッジ部13bを露出させないように覆って保護するエッジ保護部23aを有する。特に、本実施の形態では、このエッジ保護部23aがカシメ部23によって形成される。
【0028】
このようなエッジ保護部23aを備えるレンズユニット11において、平面部13aを有する最も物体側に位置されるレンズ13は、狭角レンズまたは広角レンズのいずれとして使用されてもよいが、いずれの場合においても、エッジ保護部23aは、使用されるレンズ13の所要の画角(レンズ13の物体側表面13cの露出開口寸法L;図1参照)に影響を及ぼさないようにその寸法が設定されなければならない。特に、本実施の形態のようにエッジ保護部23aが樹脂鏡筒12のカシメ部23によって形成される場合には、カシメ部23のカシメ量、カシメ角、カシメ長さに配慮して、レンズ13の所要の画角が確保されるようにしなければならない。
【0029】
また、図3は、図1のレンズユニット11を有する本実施の形態のカメラモジュール300の概略断面図である。図示のように、カメラモジュール300は、フィルタ100が装着されたレンズユニット11を含んで構成されている。
【0030】
カメラモジュール300は、外装部品である上ケース(カメラケース)301と、レンズユニット11を保持するマウント(台座)302とを備えている。また、カメラモジュール300は、シール部材303およびパッケージセンサ(撮像素子)304を備えている。
【0031】
上ケース301は、レンズユニット11の物体側の端部を露出させるとともに他の部分を覆う部材である。マウント302は、上ケース301の内部に配置されており、レンズユニット11の雄ねじ11aと螺合する雌ねじ302aを有する。シール部材303は、上ケース301の内面とレンズユニット11の鏡筒12の外周面12aとの間に介挿された部材であり、上ケース301の内部の気密性を保持するための部材である。
【0032】
パッケージセンサ304は、マウント302の内部に配置されており、かつ、レンズユニット11により形成される物体の像を受光する位置に配置されている。また、パッケージセンサ304は、CCDやCMOS等を備えており、レンズユニット11を通じて集光されて到達する光を電気信号に変換する。変換された電気信号は、カメラにより撮影された画像データの構成要素であるアナログデータやデジタルデータに変換される。
【0033】
以上説明したように、本実施の形態のレンズユニットによれば、縦横に延びる大きな亀裂を最も物体側に位置されるレンズ13に生じさせる根源であるエッジ部13bを露出させないように覆って保護するエッジ保護部23aを設けたため、飛び石等の衝突物に対する耐衝撃性が向上し、飛び石等の衝突物によってレンズ13が全体的に破損することを防止できる。このことは、エッジ部をエッジ保護部23aにより保護した状態での飛び石衝突損傷具合を示す図4とエッジ部をエッジ保護部23aにより保護しない状態での飛び石衝突損傷具合を示す図8とを比較すれば明らかである。
【0034】
また、本実施の形態のように遮光性を有するカシメ部23によりエッジ保護部23aを形成することによってエッジ部13bを含めてレンズ13の平面部13a全体を露出しないように覆うと、従来から平面部13aに施されていた遮光のためのブラスト処理が不要になるため、レンズユニット11の製造工程数を削減できる。
【0035】
図5は、エッジ保護部の第1の変形例を示している。図示のように、この変形例において、レンズ13のエッジ部13bを露出させないように覆って保護するエッジ保護部は、最も物体側に位置されるレンズ13の外周に接着固定されるリング状のカバー部材50によって形成されている。この場合、カバー部材50は、エッジ部13bを完全に覆うようにその一部がレンズ13の物体側表面13cの外周部上に位置されるとともにその一部がカシメ部23の上端平面部23b上に位置されており、レンズ13およびカシメ部23との間に充填される接着剤52によってレンズ13とカシメ部23とに対して固定される。なお、このカバー部材50は遮光性のある樹脂製であることが好ましいが、それに限られず、例えば金属製でもよい。
【0036】
図6は、エッジ保護部の第2の変形例を示している。図示のように、この変形例において、レンズ13のエッジ部13bを露出させないように覆って保護するエッジ保護部は、鏡筒12に着脱自在に取り付けられて最も物体側に位置されるレンズ13を鏡筒12に対して固定するキャップ部材60によって形成されている。この場合、キャップ部材60は、その下端部内周面に形成される雌ネジ60cが鏡筒12の物体側端部の外周面に形成される雄ネジ12cに螺合されることによって鏡筒12に着脱自在に取り付けられており、レンズ13の平面部13aに圧接されてレンズ13を鏡筒12に対して固定する押圧固定部60aと、レンズ13のエッジ部13bを露出させないように覆って保護する保護部60bとを有している。
【0037】
第1および第2の変形例のようにエッジ保護部を鏡筒12のカシメ部23とは別体の部材50,60によって構成すれば、光学性能に影響を及ぼし易いエッジ保護部の所要の寸法精度を容易に確保できる。
【0038】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、本発明において、レンズ、鏡筒などの形状は、前述した実施の形態に限定されない。また、最も物体側に位置されるレンズのエッジ部を露出させないように覆って保護するエッジ保護部は、カシメ部23、カバー部材50、および、キャップ部材60によって形成されている必要はなく、レンズのエッジ部を覆って保護できればどのような形態のものであっても構わない。
【符号の説明】
【0039】
11 レンズユニット
12 鏡筒
13,14,15,16,17 レンズ
13a 平面部
13b エッジ部
13c 物体側表面
23 カシメ部
23a エッジ保護部
50 カバー部材
60 キャップ部材
300 カメラモジュール
O 光軸
L レンズ群
S 内側収容空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8