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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】変圧器の製造方法、組立用テンプレート
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/04 20060101AFI20221018BHJP
   H01F 29/02 20060101ALI20221018BHJP
   H01F 41/00 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
H01F41/04 A
H01F29/02 E
H01F41/00 B
H01F41/04 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018151723
(22)【出願日】2018-08-10
(65)【公開番号】P2020027868
(43)【公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】513296958
【氏名又は名称】東芝産業機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】池田 翔大
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-147261(JP,A)
【文献】実公昭58-002021(JP,Y1)
【文献】特開昭57-126115(JP,A)
【文献】特開昭57-133612(JP,A)
【文献】特開平09-092550(JP,A)
【文献】特開2000-182836(JP,A)
【文献】特開平07-057950(JP,A)
【文献】特開平08-124752(JP,A)
【文献】特開昭54-063227(JP,A)
【文献】中国実用新案第204596606(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/00-27/02、29/00-29/04
H01F 41/00、41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変圧器本体と、前記変圧器本体に組み付けられる木組みユニットとを備えた変圧器を製造するための製造方法であって、
鉄心と巻線とを組み付けて前記変圧器本体を組み立てる本体組み立て工程と、
前記本体組み立て工程とは別工程で実施され、タップ切替器を木枠に組み付けるとともに、前記変圧器本体の口出し線に接続されるリード線を配設して前記木組みユニットを組み立てるユニット組み立て工程と、を含み、
前記ユニット組み立て工程では、前記口出し線に設けられる端子の位置を示す識別子が記載されている組立用テンプレートを用い、前記木組みユニットを前記変圧器本体に組み付ける前の段階で、前記リード線の端子の位置を前記口出し線に設けられる端子の位置に位置決めすることを特徴とする変圧器の製造方法。
【請求項2】
前記本体組み立て工程では、前記口出し線の端部に圧着端子が圧着されており、
前記ユニット組み立て工程では、前記リード線の端部に圧着端子が圧着されており、
前記本体組み立て工程および前記ユニット組み立て工程の後に、前記変圧器本体と前記木組みユニットとを組み付けるとともに、前記口出し線側の圧着端子と前記リード線側の圧着端子とを締結する接続工程を含むことを特徴とする請求項1記載の変圧器の製造方法。
【請求項3】
前記ユニット組み立て工程では、組み立てた状態のままで前記木組みユニットを搬送可能な組立搬送台車を用いて、当該組立搬送台車上で前記木枠への前記タップ切替器の組み付け、および前記リード線の配線が行われ、
前記組立用テンプレートは、前記組立搬送台車の上面に着脱可能に固定されるとともに、高さ方向の位置が調整可能になっていることを特徴とする請求項1または2記載の変圧器の製造方法。
【請求項4】
鉄心および当該鉄心に巻回された巻線を収容する変圧器本体と、前記変圧器本体に組み付けられるものであって、タップ切替器が組み付けられる木枠に前記変圧器本体の口出し線に接続されるリード線を配設して構成されている木組みユニットとを有する変圧器を組み立てる際に用いる組立用テンプレートであって、
前記変圧器本体の前記口出し線の端部に圧着される圧着端子の位置を示す識別子が記載されたプレートを有し、前記木組みユニットを組み立てた状態のまま搬送可能な組立搬送台車に着脱可能に固定されるとともに、前記プレートの高さ方向の位置を調整可能になっていることを特徴とする組立用テンプレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、変圧器の製造方法、変圧器を組み立てる際に用いる組立用テンプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タンク内にタップ切替器を収容した変圧器が知られている。このような変圧器では、タップ切替器は、例えば木枠に組み付けられ、その木枠ごとタンク内に収容されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-147261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、特許文献1のようにタップ切替器を木枠に組み付けて木組みユニットを製造する工程(以下、ユニット組み立て工程と称する)と、変圧器本体を組み立てる工程(以下、本体組み立て工程と称する)とを別工程で実施することにより、作業効率を大きく改善することができると考えられる。
【0005】
ところで、ユニット組み立て工程と本体組み立て工程とを別工程で実施する場合には、変圧器本体に木組みユニットを組み付けた後、変圧器本体側の口出し線とタップ切替器側のリード線とを接続する工程(以下、接続工程と称する)が必要になる。
【0006】
しかしながら、比較的大きな電流を流す変圧器の場合、口出し線やリード線は、比較的太く且つ剛性が高く曲げにくいものが用いられる。また、変圧器本体は、例えば大型のものであれば2メートルを超える高さになることがある。
【0007】
そのため、接続工程では、曲げ難い口出し線やリード線を木組みユニットの周囲を移動しながら配設する作業が必要になり、また、リード線を口出し線の位置に合わせて切断した後に圧着端子を圧着する作業も必要になる。その結果、変圧器本体よりも上方に設置された作業場所で作業する時間が長くなり、作業者の安全性を確保することが重要になる。また、単に作業時間が長いというだけでなく、木組みユニットの周囲に安全な足場を設置するなど、実際の作業以外に要する時間も長くなりがちであった。
【0008】
そこで、高所での作業時間を短縮できるとともに変圧器を組み立てる際の安全性を向上させることができる変圧器の製造方法、および、変圧器を組み立てる際に用いる組立用テンプレートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の変圧器の製造方法は、変圧器本体と、変圧器本体に組み付けられる木組みユニットとを備えた変圧器を製造するための製造方法であって、鉄心と巻線とを組み付けて変圧器本体を組み立てる本体組み立て工程と、本体組み立て工程とは別工程で実施され、タップ切替器を木枠に組み付けるとともに、変圧器本体の口出し線に接続されるリード線を配設して木組みユニットを組み立てるユニット組み立て工程と、を含み、ユニット組み立て工程では、口出し線に設けられる端子の位置を示す識別子が記載されているテンプレートを用い、木組みユニットを変圧器本体に組み付ける前の段階で、リード線の端子の位置を口出し線に設けられる端子の位置に位置決めすることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の変圧器の構成例を模式的に示す図
図2】タップ切替器の構成の一例を模式的に示す図
図3】変圧器の製造工程の一部を模式的に示す図
図4】木組みユニットの構成の一例を模式的に示す図
図5】テンプレートの構成の一例を模式的に示す図
図6】固定具の構成の一例を模式的に示す図
図7】組立搬送台車の構成の一例を模式的に示す図
図8】組立搬送台車の上面の配置態様の一例を模式的に示す図
図9】テンプレートの他の構成例を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、静止誘導機器としての例えば変圧器1に取り付けられている。変圧器1は、タンク2、鉄心3および巻線4を有する変圧器本体5、タップ切替器6が組み付けられている木組みユニット7等を備えている。この変圧器1は、タンク2内が絶縁油(図示省略)で充填されたいわゆる油入変圧器であり、変圧器本体5やタップ切替器6を絶縁油中に浸した状態で収容している。また、タンク2の外面には、タップ位置を切り替えるためのハンドル8が設けられている。
【0012】
変圧器本体5を構成する鉄心3は、周知のように例えば薄板状の電磁鋼板を積層することにより構成されている。本実施形態では、鉄心3として3本の脚部を有する三脚鉄心を採用している。この鉄心3の各脚部には、それぞれ巻線4がそれぞれ設けられている。これら3つの巻線4は、それぞれU相、V相およびW相の三相に対応したものである。
【0013】
各相の巻線4は、タンク2の例えば上部に設けられている高圧側用と低圧側用のブッシング9にそれぞれ接続されている。このとき、各相の巻線4の一部は、口出し線10として引き出され、リード線11を介して接続されるタップ切替器6を経由して接続される。なお、図1では、説明の簡略化のために、ブッシング9に接続されるリード線11の図示を省略している。
【0014】
タップ切替器6は、図2に示すように、各相に対応して6個ずつのタップ端子6aがそれぞれ設けられている端子板6b、各相のいずれか2つのタップ端子6a間を電気的に接続する3つの可動接触子6cが設けられているスライド板6dを有している。各相の6個のタップ端子6aを左方側つまりは歯車6eとは逆側から順に1番~6番とすると、端子板6bには、各相の1番から6番までのタップ端子6aが、互いに所定の距離で等間隔に配置されている。また、各層のタップ端子6aは、他相の同じ番号のタップ端子6aまでの距離が等しくなるように配置されており、3つの可動接触子6cは、互いの間隔が等しく配置されている。なお、歯車6eの回転軸にはシャフト6fが取り付けられ、そのシャフト6fの先端にハンドル8が接続される。
【0015】
そのため、U相に対応する可動接触子6cが1番目と2番目のタップ端子6a間を電気的に接続する位置にある場合、V相に対応する可動接触子6cも1番目と2番目のタップ端子6a間を電気的に接続する位置にあり、W相に対応する可動接触子6cも1番目と2番目のタップ端子6a間を電気的に接続する位置にあることになる。なお、図示は省略するが、タップ端子6aは端子板6bを貫通しており、端子板6bの背面側つまりはスライド板6d側に突出している部位において可動接触子6cによって電気的に接続される構造となっている。ただし、本実施形態で示すタップ端子6aの数やタップ位置の数は一例であり、これに限定されるものではない。
【0016】
このタップ切替器6は、木枠12に組み付けられ、リード線11とともに木組みユニット7を構成している。また、木組みユニット7は、組み立てられた後、変圧器本体5の上部に配置されているベース13に組み付けられる。
【0017】
次に、上記した変圧器1の製造工程について説明する。
本実施形態では、図3に実施例として示すように、変圧器本体5を組み立てる本体組み立て工程(S1)と、木組みユニット7を製造するユニット組み立て工程(S2)とを別工程で並行して実施した後、変圧器本体5と木組みユニット7とを組み付ける接続工程(S3)を実施している。なお、図3はモデル図であり、各工程(S1~S3)の枠の長さは必ずしも実際の工程の長短を示すものではない。
【0018】
このように本体組み立て工程(S1)とユニット組み立て工程(S2)とを別工程で実施した後に接続工程(S3)を実施することにより、単純計算で考えた場合、図3に比較例として示すように各工程(S1~S3)を直列で順次実施する場合と比べて、接続工程(S3)が完了するまでの期間を短縮することが可能になる
【0019】
ただし、比較的大きな電流を流す変圧器1の場合、口出し線10やリード線11は、比較的太く且つ剛性が高く曲げにくいものが用いられる。また、変圧器本体5は、例えば大型のものであれば2メートルを超える高さになることがある。そのため、単純に本体組み立て工程(S1)とユニット組み立て工程(S2)とを別工程で実施した場合には、接続工程(S3)において、比較的高い作業場所で、変圧器本体5に木組みユニット7を組み付け、リード線11の端部が口出し線10に接続できるように配設および切断して圧着端子を圧着し、口出し線10とボルト等で接続する作業が必要になる。
【0020】
その場合、安全性の確保は最優先で行われるものの、口出し線10やリード線11は曲げづらく木枠12の前後や左右で作業する必要があること、また、口出し線10とリード線11の端部の位置を合わせる切断作業や圧着端子の圧着作業等を高所で行う必要があること、さらには、木組みユニット7の周囲に安全な足場を設置する必要があるなど、実際の作業以外にも時間を要することになる。
【0021】
そこで、本実施形態では、以下のようにして、高所での作業時間を短縮することにより変圧器1を組み立てる際の安全性を向上させている。なお、本体組み立て工程については従来と同様の手法で鉄心3と巻線4との組み付け等を行っているため、説明は省略する。また、木組みユニット7に配設されるリード線11は、変圧器本体5からの口出し線10に接続されるものと、ブッシング9に接続されるものとが含まれている。
【0022】
本実施形態のユニット組み立て工程(S2)では、図4に平面視として示すように、複数の梁で構成された木枠12にタップ切替器6を組み付けるとともに、木枠12を利用して複数のリード線11を配設する。このとき、口出し線10に設けられる端子の位置を示す識別子14cが記載されているテンプレート14を用いることにより、木組みユニット7を変圧器本体5に組み付ける前の段階で、リード線11の端部の位置を決定するとともに、位置決めしたリード線11の端部に圧着端子を圧着している。
【0023】
具体的には、正面視として示すように木枠12の下端から所定の距離(L1)であって、且つ、側面視として示すように木枠12の前端の梁とツラ位置となるように、口出し線10に設けられる端子の位置を示す識別子14cが記載されているテンプレート14を配置する。このテンプレート14は、図5に正面視として示すように、木製のプレート14aを有している。
【0024】
このプレート14aの表面には、圧着端子の穴の位置を示す貫通孔14bが形成されており、各貫通孔14bに対して、その貫通孔14bが例えばU相、V相あるいはW相のどの相に対応するものなのかを示す識別子14cである「U」、「V」および「W」の文字、および、どのタップ位置に対応するのかを示す識別子14cである「1」、「2」、「3」、「4」、「5」、「6」の文字が記載されている。ただし、貫通孔14bの代わりに、圧着端子の穴の位置を示す識別子14cとして、例えば丸記号等を表記する構成とすることもできる。
【0025】
また、平面視として示すように、プレート14aの上面には、ブッシング9と接続するリード線11の端部の位置を示す貫通孔14bと、どの相に対応するかを示す識別子14cとしての「U」、「V」および「W」の文字が記載されている。なお、テンプレート14の構成は一例である。
【0026】
このプレート14aは、図6に示すように、L字状のフレーム15aと、フレーム15aの下部に設けられ、スイッチによって磁性がオン/オフする磁石ユニット15bとを有する固定具15に取り付けられている。フレーム15aの取り付け面には、縦長の孔部15cが上下方向に並んで複数形成されており、プレート14aの上下方向の取り付け位置を調整可能になっている。
【0027】
そして、このテンプレート14は、図4に側面視として示すように、金属製の筐体16aを有する組立搬送台車16の上面の所定の位置に、磁力によって固定される。つまり、テンプレート14は、変圧器本体5の口出し線10の端部に圧着される圧着端子の位置を示す識別子14cが記載されたプレート14aを有し、木組みユニット7を組み立てた状態のまま搬送可能な組立搬送台車16の上面に着脱可能に固定されるとともに、プレート14aの高さ方向の位置を調整可能になっている。なお、図4では配置位置を示すために木組みユニット7の図示左右の両側にそれぞれテンプレート14を示しているが、テンプレート14は必要な側に設ければよい。また、図4の側面視では、説明の簡略化のために、リード線11の図示を省略している。
【0028】
このようなテンプレート14を用いることにより、木組みユニット7と変圧器本体5とを組み付けなくても、つまりは、接続工程(S3)の前の段階で、リード線11の配設、リード線11の端部の位置つまりは圧着端子の位置の決定、および圧着端子の圧着を行うことができる。これにより、接続工程(S3)では、それらの作業を行う必要がなく、接続工程(S3)における作業時間を削減することができる。また、リード線11を配設するために木組みユニット7の周囲を移動しながら作業する必要がなくなる。
【0029】
また、本実施形態のユニット組み立て工程(S2)では、木枠12の組み立て、タップ切替器6の配置、リード線11の配設および圧着端子の圧着などの木組みユニット7を組み立てる作業を、組立搬送台車16上で行っている。この組立搬送台車16は、図7に組み立て時として示すように、金属製で直方体状に形成されている筐体16a、筐体16aの下部の4隅に設けられている車輪16bおよびアジャスタ16c、筐体16aの上面に設けられている上端が水平になっている金属製の骨組み16d、および上端が水平になっているT字状の支え板16e等を備えている。これら骨組み16dおよび支え板16eは、木組みユニット7を支持する支持面を形成する構造部材に相当する。
【0030】
この組立搬送台車16は、アジャスタ16cを下げることで床面に固定され、骨組み16d上および支え板16eの上で木枠12を組み立て、その木枠12にタップ切替器6を組み付け、リード線11を配設することにより、破線にて仮想的に示す木組みユニット7を組み立て可能になっている。このとき、骨組み16dおよび支え板16eの上端が、木組みユニット7を支える支持面となる。そして、床から支持面までの高さ(H1)は、1メートル程度に設定されている。
【0031】
そのため、支持面に支持された状態の木組みユニット7は、概ね成人男性の胸の辺りの位置になり、その状態で、木枠12の組み立てやリード線11の配設が可能になる。換言すると、作業者は、床面に立った状態、つまりは、確固とした足場が存在しており、落下の危険性が無い状態で木組みユニット7を組み立てることが可能になる。また、作業者は、腰を曲げたりすることなく作業することが可能になる。つまり、支持面の床面からの高さ(H1)は、木組みユニット7を支持面に載置した状態において、木組みユニットの上端が成人の平均的な頭部の位置よりも下方、より好ましくは、胸部の位置よりも下方に設定されている。なお、平均的な頭部の位置や胸部の位置は、例えば総務省統計局の統計データ等を利用して得ることができる。
【0032】
このため、後工程となる接続工程(S3)では、木枠12の組み立てやリード線11の配設の作業を行う必要がなく、接続工程(S3)に要する作業時間を削減することができるとともに、多くの移動が必要になる作業を高所で行うことも不要になる。また、骨組み16dの上端を木組みユニット7の支持面とすることにより、作業者は、骨組み16dの間からもリード線11等を把持したり曲げたりすることが可能となり、配設し難いリード線11を配設する際の使い勝手を向上させることができる。
【0033】
そして、木組みユニット7の組み立てが完了した場合には、ハッチングにて模式的に示す梱包材17で組立搬送台車16ごと木組みユニット7を全体梱包し、アジャスタ16cを上げることで車輪16bによって移動可能となる。つまり、組立搬送台車16は、木組みユニット7の組み立てと、組み立て後の搬送とを行うことが可能になる。
【0034】
また、組立搬送台車16は、支持面が筐体16aの上面から所定の高さ(H2)となるように、骨組み16d上および支え板16eが設けられている。このとき、骨組み16d上および支え板16eは、図8に平面視として示すように、所定の奥行き(D1)を有する筐体16aの長手方向において、外縁から所定の距離(D2)だけ離間した位置に設けられているこのため、図示上下方向となる筐体16aの前後の部位にスペースができる。
【0035】
このスペースには、テンプレート14が載置および固定される。そして、上記したように、テンプレート14は、上下方向の位置が調整可能になっている。そのため、リード線11の端子の位置決めを行うためのテンプレート14を所望の位置に設置することが可能となり、様々な大きさの変圧器本体5に対応することができる。なお、骨組み16dおよび支え板16eの形状や数および配置は一例であり、他の形状や異なる数あるいは他の配置とすることができる。
【0036】
以上説明した実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
変圧器1の製造方法は、鉄心3と巻線4とを組み付けて変圧器本体5を組み立てる本体組み立て工程(S1)と、本体組み立て工程(S1)とは別工程で実施され、タップ切替器6を木枠12に組み付けるとともに、変圧器本体5の口出し線10に接続されるリード線11を配設して木組みユニット7を組み立てるユニット組み立て工程(S2)と、を含んでいる。そして、ユニット組み立て工程(S2)では、ユニット組み立て工程(S2)では、口出し線10に設けられる端子の位置を示す識別子14cが記載されているテンプレート14を用い、木組みユニット7を変圧器本体5に組み付ける前の段階で、リード線11の端子の位置を口出し線10に設けられる端子の位置に位置決めする。
【0037】
これにより、木組みユニット7を単独で組み立てる際にリード線11の端子の位置を決定することが可能になるため、木組みユニット7を変圧器本体5に組み付けた後つまりは変圧器本体5よりも上方の高所において固くて曲がりにくいリード線11を配設する作業が不要となる。
【0038】
また、仮に木組みユニット7を変圧器本体5に組み付けた後でリード線11を配設しようとすると、変圧器本体5よりも上方となる木組みユニット7の周囲にしっかりとした足場を設置する必要があるが、上記した製造方法によれば、木組みユニット7の周囲全体に足場を設置する必要もなくなる。したがって、高所での作業時間を短縮できるとともに変圧器1を組み立てる際の安全性を向上させることができる。
【0039】
また、変圧器1の製造方法は、本体組み立て工程(S1)では、口出し線10の端部に圧着端子が圧着されており、ユニット組み立て工程(S2)では、リード線11の端部に圧着端子が圧着されており、本体組み立て工程(S1)およびユニット組み立て工程(S2)の後に、変圧器本体5と木組みユニット7とを組み付けるとともに、口出し線10側の圧着端子とリード線11側の圧着端子とを締結する接続工程(S3)を含む。
【0040】
これにより、木組みユニット7をベース13に組み付けた後は圧着端子をボルト締めすればよいことから、高所で行う必要がある作業そのものを簡素化することができる。したがって、高所での作業時間をさらに短縮できるとともに変圧器1を組み立てる際の安全性をさらに向上させることができる。
【0041】
また、変圧器1の製造方法は、ユニット組み立て工程(S2)では、組み立てた状態のままで木組みユニット7を搬送可能な組立搬送台車16を用いて、当該搬送台車上で木枠12へのタップ切替器6の組み付け、およびリード線11の配線が行われ、テンプレート14は、組立搬送台車16の上面に着脱可能に固定されるとともに、高さ方向の位置が調整可能になっている。これにより、様々な仕様の変圧器1に対応することができるようになるとともに、組み立てた木組みユニット7の搬送を容易に行うことができ、木組みユニット7を単独で搬送する場合に比べて損傷するおそれも低減することができる。
【0042】
このとき、組立搬送台車の支持面の床面からの高さ(H1)は、木組みユニット7を支持面に載置した状態において、木組みユニットの上端が成人の平均的な頭部の位置よりも下方、より好ましくは、胸部の位置よりも下方に設定されている。これにより、作業者は、床面に立った状態、つまりは、確固とした足場が存在しており、落下の危険性が無い状態で木組みユニット7を組み立てることが可能になる。また、作業者は、腰を曲げたりすることなく作業することが可能になり、作業者の肉体的な負担を軽減することができる。
【0043】
また、変圧器1を組み立てる際に用いるテンプレート14は、変圧器本体5の口出し線10の端部に圧着される圧着端子の位置を示す識別子14cが記載されたプレート14aを有し、木組みユニット7を組み立てた状態のまま搬送可能な組立搬送台車16に着脱可能に固定されるとともに、プレート14aの高さ方向の位置を調整可能になっている。これにより、様々な仕様の変圧器1に対応することができる。
【0044】
また、テンプレート14は、図9に示すように、1相に対応する大きさとし、例えば3相分を組立搬送台車16に固定する構成とすることもできる。これにより、仕様が異なる変圧器1に対して柔軟に対応することができる。勿論、汎用品あるいは生産量が多い変圧器1については、実施形態のように3相分が一体となったテンプレート14を用いることができる。
【0045】
また、テンプレート14に設ける貫通孔14bを上下一列に配置することもできる。また、実施形態では磁力によりテンプレート14を組立搬送台車16に固定する構成を示したが、組立搬送台車16の上面に幾つかのねじ穴を設け、ねじやボルトにより固定する構成とすることもできる。
また、実施形態では組立搬送台車6上で木組みユニット7を組み立てる例を示したが、木組みユニット7は、作業台上で組み立てることもできる。その場合であっても、テンプレート14を使うことにより、リード線11の端部の位置を、変圧器本体5に組み付けることなく位置決めすることができる。
【0046】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0047】
図面中、1は変圧器、2はタンク、3は鉄心、4は巻線、5は変圧器本体、6はタップ切替器、7は木組みユニット、10は口出し線、11はリード線、12は木枠、14はテンプレート(組立用テンプレート)、14cは識別子、16は組立搬送台車を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9