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  • 特許-密封装置 図1
  • 特許-密封装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】密封装置
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/3204 20160101AFI20221018BHJP
【FI】
F16J15/3204 101
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018159412
(22)【出願日】2018-08-28
(65)【公開番号】P2020034047
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(74)【代理人】
【識別番号】100125335
【弁理士】
【氏名又は名称】矢代 仁
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 裕
【審査官】山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-136057(JP,U)
【文献】特開2012-067854(JP,A)
【文献】特開2000-329236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/3204-15/3236
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機に設けられるシフトロッドと、前記シフトロッドが配置されたハウジングの軸孔の内面との間に配置され、前記ハウジングの内部のオイルを密封する密封装置であって、
前記ハウジングに取り付けられる取付け部と、
前記取付け部よりも径方向内側に配置されて、前記シフトロッドの周面に摺動可能に接触するシールリップと、
前記取付け部よりも径方向内側、かつ前記シールリップよりも大気側に配置されて、前記シフトロッドの前記外周面に摺動可能に接触するダストリップと、
前記取付け部よりも径方向内側に配置されて、前記取付け部と前記シールリップと前記ダストリップを連結するフランジ部と
を有し、
前記ダストリップは、前記フランジ部の内端から大気側に向けて延びて、前記外周面に接触しないよう前記シフトロッドの周囲に配置される円筒部と、前記円筒部から大気側かつ径方向内側に延びて前記外周面に接触するテーパ部とを有し、
前記シールリップが前記シフトロッドの前記外周面に接触する部分と、前記ダストリップの前記テーパ部が前記シフトロッドの前記外周面に接触する部分との間の距離は、前記シフトロッドの往復移動のストロークよりも長い
ことを特徴とする密封装置。
【請求項2】
前記ダストリップの前記円筒部と前記テーパ部は、前記ハウジングに接触せず、前記シフトロッドに向かう押圧力が前記ハウジングから前記円筒部と前記テーパ部に与えられないことを特徴とする請求項1に記載の密封装置。
【請求項3】
前記シフトロッドの往復移動方向において、前記円筒部の長さが前記テーパ部の長さより大きい
ことを特徴とする請求項2に記載の密封装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車またはその他の機械の変速機に設けられるシフトロッドの密封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シフトロッドの密封装置としては、特許文献1に記載されたオイルシールが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実公昭62-3578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の密封装置には、オイルの漏出を低減させる機能と異物の侵入を低減させる機能の向上が要求され、取扱いの容易さも要求される。さらに密封装置が設けられるハウジングの形状の設計の自由度を確保することが要求される。
【0005】
そこで、本発明は、オイルの漏出と異物の侵入を低減させる性能が高く、取扱いが容易で、密封装置が設けられるハウジングの形状の設計の自由度を確保することが可能な密封装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様に係る密封装置は、変速機に設けられるシフトロッドと、前記シフトロッドが配置されたハウジングの軸孔の内面との間に配置され、前記ハウジングの内部のオイルを密封する密封装置であって、前記ハウジングに取り付けられる取付け部と、前記取付け部よりも径方向内側に配置されて、前記シフトロッドの前記外周面に摺動可能に接触するシールリップと、前記取付け部よりも径方向内側、かつ前記シールリップよりも大気側に配置されて、前記シフトロッドの前記外周面に摺動可能に接触するダストリップと、前記取付け部よりも径方向内側に配置されて、前記取付け部と前記シールリップと前記ダストリップを連結するフランジ部とを有する。前記ダストリップは、前記フランジ部の内端から大気側に向けて延びて、前記外周面に接触しないよう前記シフトロッドの周囲に配置される円筒部と、前記円筒部から大気側かつ径方向内側に延びて前記外周面に接触するテーパ部とを有する。前記シールリップが前記シフトロッドの前記外周面に接触する部分と、前記ダストリップの前記テーパ部が前記シフトロッドの前記外周面に接触する部分との間の距離は、前記シフトロッドの往復移動のストロークよりも長い。
【0007】
この態様においては、シールリップがシフトロッドの外周面に接触する部分と、ダストリップのテーパ部がシフトロッドの外周面に接触する部分との間の距離が、シフトロッドの往復移動のストロークよりも長いため、シールリップを通過して漏出したオイルがシフトロッドの移動に伴って、ダストリップのテーパ部がシフトロッドの外周面に接触する部分に到達することが抑制され、さらにオイルがダストリップから大気側に漏出するおそれが低減される。また、大気側からダストリップを通過した異物がシフトロッドの移動に伴って、シールリップがシフトロッドの外周面に接触する部分に到達することが抑制される。また、この態様においては、取付け部とシールリップとダストリップがフランジ部によって連結されており、部品点数が最小限化され、密封装置の取扱いが容易である。ダストリップは、フランジ部の内端から大気側に向けて延びる円筒部と、円筒部から大気側かつ径方向内側に延びて外周面に接触するテーパ部とを有するので、取付け部から延びる場合に比べて、ハウジングまたはその付属物の大気側の形状を自由に設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る密封装置の部分断面図である。
図2】比較例に係る密封装置の部分断面図である。
図3】他の比較例に係る密封装置の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る実施の形態を説明する。
【0010】
図1に示すように、この実施形態に係る密封装置1は、自動車またはその他の機械の変速機に設けられるシフトロッド2と、シフトロッドが配置されたハウジング4の軸孔6の内面との間に配置される。ハウジング4の内部にはギアオイルが配置され、密封装置1は、ハウジング4の内部のオイルを密封する。
【0011】
シフトロッド2は円柱状であり、軸孔6は断面円形であり、密封装置1は円筒状であるが、図1においては、それらの左半分のみが示されている。
【0012】
密封装置1は、弾性環1Aと、弾性環1Aに埋設されて弾性環1Aを補強する補強環1Bを有する。弾性環1Aは、弾性材料、例えばエラストマーから形成されている。補強環1Bは、剛性材料、例えば金属から形成されている。
【0013】
密封装置1は、取付け部8、シールリップ10、ダストリップ12、およびフランジ部14を有する。
【0014】
取付け部8は、ハウジング4に取り付けられる円筒状の部分である。図示の例では、取付け部8は、軸孔6に締まり嵌め方式で嵌め入れられる(すなわち圧入される)。但し、他の取付け方式を使用してもよい。取付け部8は、弾性環1Aとその径方向内側に配置された補強環1Bを有する。
【0015】
シールリップ10とダストリップ12は、弾性材料のみで構成されており、取付け部8よりも径方向内側に配置されて、シフトロッド2の外周面に摺動可能に接触する。図1は、密封装置1がシフトロッド2の周囲に配置されていない状態を表しており(シフトロッド2は仮想線で示されている)、シールリップ10およびダストリップ12の変形を表していない。
【0016】
フランジ部14は、取付け部8よりも径方向内側に配置されて、取付け部8とシールリップ10とダストリップ12を連結する。フランジ部14は、弾性環1Aと補強環1Bを有する。
【0017】
シールリップ10は、ハウジング4の内部空間と大気側とを隔てて、内部空間内のギアオイルを封止する。すなわち、シールリップ10は、潤滑剤の流出を阻止する役割を担う。シールリップ10は、フランジ部14よりもオイル側に配置され、取付け部8と径方向において重なっている。シールリップ10は、内部空間側に配置されたオイル側傾斜面10Aと、大気側に配置された大気側傾斜面10Bと、オイル側傾斜面10Aと大気側傾斜面10Bの間の境界にあって周方向に延びるリップエッジ10Cを有する。オイル側傾斜面10Aは、円錐台の側面の形状を有し、リップエッジ10Cから離れるほどシフトロッド2から離れるよう傾斜する。大気側傾斜面10Bも、円錐台の側面の形状を有し、リップエッジ10Cから離れるほどシフトロッド2から離れるよう傾斜する。
【0018】
密封装置1がシフトロッド2の周囲に配備されると、リップエッジ10Cを中心とするシールリップ10の環状の部分10Dがシフトロッド2の外周面に接触させられる。
【0019】
シールリップ10の外側には、シールリップ10を径方向内側に圧縮するガータースプリング20が巻かれている。但し、ガータースプリング20は必ずしも不可欠ではない。
【0020】
ダストリップ12は、フランジ部14よりも大気側に配置されている。ダストリップ12は、円筒部16とテーパ部18とを有する。円筒部16は、フランジ部14の内端15から大気側に向けて延びて、シフトロッド2の外周面に接触しないようシフトロッド2の周囲に配置される。テーパ部18は、円筒部16から大気側かつ径方向内側に延びる。密封装置1がシフトロッド2の周囲に配備されると、ダストリップ12のテーパ部18の先端側の環状の部分18Aがシフトロッド2の外周面に接触させられる。ダストリップ12は、大気側からハウジング4の内部空間への異物(水(泥水または塩水を含む)およびダストを含む)の流入を阻止する役割を担う。
【0021】
この実施形態において、シールリップ10がシフトロッド2の外周面に接触する部分10Dと、ダストリップ12のテーパ部18がシフトロッド2の外周面に接触する部分18Aとの間の距離Lは、シフトロッド2の往復移動のストロークStよりも長い。したがって、シールリップ10を通過して漏出したオイルがシフトロッド2の移動に伴って、ダストリップ12の部分18Aに到達することが抑制され、さらにオイルがダストリップ12から大気側に漏出するおそれが低減される。すなわち、部分10Dに存在するオイルがシフトロッド2に付着したままシフトロッド2の移動により、ストロークStの長さを移動したとしても、ダストリップ12の部分18Aに到達するおそれが少ない。
【0022】
また、逆に大気側からダストリップ12を通過した異物がシフトロッド2の移動に伴って、シールリップ10がシフトロッド2の外周面に接触する部分10Dに到達することが抑制される。すなわち、部分18Dに存在する異物がシフトロッド2に付着したままシフトロッド2の移動により、ストロークStの長さを移動したとしても、シールリップ10の部分10Dに到達するおそれが少ない。
【0023】
図2は、比較例に係る密封装置21を示す。この比較例では、円錐台形状のダストリップ22が設けられている。ダストリップ22は、フランジ部14の内端15から大気側かつ径方向内側に延びる。密封装置21がシフトロッド2の周囲に配備されると、ダストリップ22の先端側の環状の部分22Aがシフトロッド2の外周面に接触させられる。
【0024】
比較例では、シールリップ10がシフトロッド2の外周面に接触する部分10Dと、ダストリップ22がシフトロッド2の外周面に接触する部分22Aとの間の距離L2は、シフトロッド2の往復移動のストロークStよりも短い。したがって、シールリップ10を通過して漏出したオイルがシフトロッド2の移動に伴って、ダストリップ22の部分22Aに通過して大気側に漏出するおそれが大きい。また、逆に大気側からダストリップ12を通過した異物がシフトロッド2の移動に伴って、シールリップ10を通過し、オイルの空間に侵入するおそれも大きい。
【0025】
また、この実施形態においては、取付け部8とシールリップ10とダストリップ12がフランジ部14によって連結されており、密封装置1は一体の部品を構成する。したがって、部品点数が最小限化され、密封装置1の取扱いが容易である。
【0026】
さらに、実施形態に係るダストリップ12は、フランジ部14の内端15から大気側に向けて延びる円筒部16と、円筒部16から大気側かつ径方向内側に延びて外周面に接触するテーパ部18とを有するので、ハウジング4またはその付属物の大気側の形状を自由に設計することができる。例えば、ハウジング4の軸孔6の大気側の部分に段差を形成してもよい。
【0027】
図3は、比較例に係る密封装置31を示す。この比較例では、シールリップ10がシフトロッド2の外周面に接触する部分10Dと、ダストリップ12のテーパ部18がシフトロッド2の外周面に接触する部分18Aとの間の距離Lは、シフトロッド2の往復移動のストロークStよりも長い。しかし、ダストリップ12は、取付け部8から延びている。したがって、ハウジング4またはその付属物の大気側の形状を自由に設計することができない。
【0028】
変形例
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記の説明は本発明を限定するものではなく、本発明の技術的範囲において、構成要素の削除、追加、置換を含む様々な変形例が考えられる。
【0029】
例えば、ダストリップ12の円筒部16を補強環1Bと一体の補強環または補強環1Bと別体の補強環で補強してもよい。また、ダストリップ12の円筒部16の周囲にガータースプリングを配置してもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 密封装置
2 シフトロッド
4 ハウジング
6 軸孔
8 取付け部
10 シールリップ
12 ダストリップ
14 フランジ部
15 内端
16 円筒部
18 テーパ部
図1
図2
図3