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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】コネクタシール構造およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20221018BHJP
   H01R 43/20 20060101ALI20221018BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20221018BHJP
【FI】
H01R13/52 301H
H01R43/20
H05K5/02 L
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018181279
(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公開番号】P2020053253
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 佑介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雄大
(72)【発明者】
【氏名】北見 明朗
(72)【発明者】
【氏名】馬場 隆介
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-103382(JP,A)
【文献】特開2006-112963(JP,A)
【文献】特開2007-235013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40-13/533
H01R 43/027-43/28
H05K 5/00-5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンタクトおよびコネクタハウジングを有し、機器に設けられるコネクタと、
前記機器の筐体を構成し、前記コネクタハウジングが配置される切欠が形成された第1筐体部材と、
前記筐体を構成し、前記切欠に配置された前記コネクタハウジングを前記第1筐体部材との間に挟む第2筐体部材と、
前記切欠に沿って前記第1筐体部材および前記コネクタハウジングの間に配置される弾性シール部材と、
前記第2筐体部材と、前記コネクタハウジングの一部を少なくとも含む充填領域との間に充填されている充填シールと、を備え
前記弾性シール部材には、前記コネクタハウジングの周方向の一部において欠損した形状が与えられており、
前記弾性シール部材と、前記弾性シール部材が欠損した箇所に配置される前記充填シールとが環状に組み合わせられることにより、前記コネクタハウジングの全周に亘り前記コネクタハウジングと前記筐体との間が封止されている、
ことを特徴とするコネクタシール構造。
【請求項2】
前記弾性シール部材は、U字状であり、かつ、
前記コネクタハウジングに形成された保持溝に配置されている、
請求項1に記載のコネクタシール構造。
【請求項3】
前記弾性シール部材の端部と前記充填シールとが接触している、
請求項1または2に記載のコネクタシール構造。
【請求項4】
前記コネクタハウジングは、
前記第1筐体部材および前記コネクタハウジングの間に配置された前記弾性シール部材の端部を係止する端部係止部を有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のコネクタシール構造。
【請求項5】
前記端部係止部に形成された接触用切欠に露出した前記弾性シール部材の前記端部と前記充填シールとが接触している、
請求項4に記載のコネクタシール構造。
【請求項6】
前記第1筐体部材は、前記コンタクトが接続される基板を収容するケースであり、
前記第2筐体部材は、前記ケースに設けられて前記基板を覆うカバーである、
請求項1から5のいずれか一項に記載のコネクタシール構造。
【請求項7】
コンタクトおよびコネクタハウジングを有するコネクタの前記コネクタハウジングの周方向の一部において欠損した形状が与えられている弾性シール部材を、機器の筐体を構成する第1筐体部材に形成された切欠に沿って配置するステップと、
前記筐体を構成する第2筐体部材と、前記コネクタハウジングの一部を少なくとも含む充填領域との間に充填される液状のシール材を、前記充填領域および前記第2筐体部材の少なくとも一方に供給するステップと、
前記第1筐体部材に前記第2筐体部材を取り付けることで、前記弾性シール部材と、前記液状のシールから形成されて前記弾性シール部材が欠損した箇所に配置される充填シールとが環状に組み合わせられることとなって、前記コネクタハウジングの全周に亘り、前記コネクタハウジングと前記筐体との間が封止されるステップと、を含む、
ことを特徴とするコネクタシール構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体とコネクタとの間を封止するシール構造およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カバー部材の切欠から引き出される電線束の周りに装着され、カバー部材と、カバー部材が設けられる機器筐体との間を閉塞するゴム製のブッシュが知られている(特許文献1)。このブッシュは、電線束に装着されるU字状の枠を有しており、その枠の外周部の溝にカバー部材の切欠の周縁を受容する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-146811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、カバー部材と組み付けられたブッシュのU字状の枠の平坦な両端部が、筐体の壁に配置される。そのため、ブッシュの枠の両端部と筐体の壁との間が十分に封止されていないため、それらの間の隙間を通じて、カバー部材の内側の端子台に向けて外部から水が浸入する可能性がある。
そこで、本発明は、筐体の切欠に配置される部材としてのコネクタの周囲を十分に封止可能なシール構造およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のコネクタシール構造は、コンタクトおよびコネクタハウジングを有し、機器に設けられるコネクタと、機器の筐体を構成し、コネクタハウジングが配置される切欠が形成された第1筐体部材と、筐体を構成し、切欠に配置されたコネクタハウジングを第1筐体部材との間に挟む第2筐体部材と、切欠に沿って第1筐体部材およびコネクタハウジングの間に配置される弾性シール部材と、第2筐体部材と、コネクタハウジングの一部を少なくとも含む充填領域との間に充填されている充填シールと、を備えることを特徴とする。
【0006】
本発明のコネクタシール構造において、弾性シール部材は、U字状であり、かつ、コネクタハウジングに形成された保持溝に配置されていることが好ましい。
【0007】
本発明のコネクタシール構造において、弾性シール部材の端部と充填シールとが接触していることが好ましい。
【0008】
本発明のコネクタシール構造において、コネクタハウジングは、第1筐体部材およびコネクタハウジングの間に配置された弾性シール部材の端部を係止する端部係止部を有することが好ましい。
【0009】
本発明のコネクタシール構造において、端部係止部に形成された接触用切欠に露出した弾性シール部材の端部と充填シールとが接触していることが好ましい。
【0010】
本発明のコネクタシール構造において、第1筐体部材は、コンタクトが接続される基板を収容するケースであり、第2筐体部材は、ケースに設けられて基板を覆うカバーであることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、コネクタシール構造を製造する方法であって、機器の筐体を構成する第1筐体部材に形成された切欠に沿って、第1筐体部材と、コンタクトおよびコネクタハウジングを有するコネクタのコネクタハウジングとの間を封止する弾性シール部材を配置するステップと、筐体を構成する第2筐体部材と、コネクタハウジングの一部を少なくとも含む充填領域との間に充填される液状のシール材を、充填領域および第2筐体部材の少なくとも一方に供給するステップと、第1筐体部材に第2筐体部材を取り付けるステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第1筐体部材の切欠に沿って配置される弾性シール部材と、コネクタハウジングにおいて弾性シールが配置されていない部位を少なくとも含む充填領域と第2筐体部材との間に液状の状態で充填される充填シールとにより、コネクタハウジングの全周に亘り、筐体とコネクタハウジングとの間を十分に封止することができる。
本発明の弾性シール部材は、第2筐体部材に対応する部位を有していないため、弾性シール部材から第2筐体部材に対して過大な反力が発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態に係るコネクタシール構造を示す正面図である。
図2図1に示すコネクタシール構造の分解斜視図である。充填シールの図示を省略している。
図3図2に示す電気コネクタおよび弾性シール部材を示す斜視図である。
図4図3のIV矢印の向きから見た電気コネクタの側面図である。
図5】コネクタハウジングの充填シール配置部、弾性シール部材の端部、およびケースの上端部を模式的に示す平面図である。
図6】(a)および(b)は、図1に示すコネクタシール構造を製造する手順を示す図である。
図7】(a)および(b)は、図6(b)に続いて、コネクタシール構造を製造する手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
〔コネクタシール構造〕
図1および図2に示す本実施形態のコネクタシール構造1は、機器の筐体10と、筐体10に装着される電気コネクタ20との間を封止(シール)する。
【0015】
筐体10は、例えば自動車に搭載される電子機器が備える回路基板13(図2)や図示しない回路素子等を収容する。コネクタシール構造1は、筐体10の外部から内部への水の浸入を防止する。筐体10は、第1筐体部材としてのケース11および第2筐体部材としてのカバー12を含んで構成されている。
【0016】
コネクタシール構造1は、ケース11と、カバー12と、電気コネクタ20と、これら三者の間を封止する部材としての弾性シール部材24(図2図3)および充填シール14(図1)とを備えている。充填シール14は、液状のシール材が硬化したものである。「液状」は、流動性を有するものが広く該当する。「液状」には、ペースト状等の半固体状も含まれるものとする。
【0017】
本明細書において、「上」および「下」は、図1における上方および下方に従うものとする。
また、本明細書では、電気コネクタ20において図示しない相手コネクタが嵌合される側が「前」であり、その逆側が「後」であるものとする。
【0018】
以下、コネクタシール構造1の各構成要素について説明する。
〔筐体〕
筐体10(図1および図2)は、回路基板13を収容するケース11と、ケース11に取り付けられて回路基板13を覆うカバー12とを備えている。ケース11およびカバー12はそれぞれ、樹脂材料あるいは金属材料等から構成することができる。
【0019】
(ケース)
ケース11は、図示しない底部と、底部から立ち上がる側壁11Aとを有する箱の形態に構成されている。
ケース11の内側に配置される回路基板13(図2)は、ケース11の底部に形成された図示しないボスに固定される。
【0020】
ケース11の側壁11Aには、コネクタハウジング22が配置される切欠11U(図2)が形成されている。切欠11Uにおいて、コネクタハウジング22が側壁11Aを厚さ方向に貫通する。
【0021】
切欠11Uは、コネクタハウジング22の長手方向の寸法に対応する幅で、かつコネクタハウジング22の短手方向の寸法に対応する深さで、側壁11Aの上端部11Bから下方に向けて窪んでいる。ケース11の正面視において(図1)、この切欠11Uは、上方へ開放されたU字状に、かつ左右対称に形成されている。
弾性シール部材24と接触する切欠11Uの内周部には、弾性シール部材24が安定して密着するために溝が形成されていてもよい。
【0022】
切欠11Uは、図2に示すように、回路基板13と平行な直線状の底部周縁101と、底部周縁101から側壁11Aの上端部11Bにむけて立ち上がる一対の側部周縁102とを有している。底部周縁101と一対の側部周縁102とは、湾曲したコーナー部103を介して繋がっている。
一対の側部周縁102の間の寸法は、下方から上方に向かうにつれて増加している。そのため、切欠11Uに上方からコネクタ20を挿入し易く、挿入過程において、コネクタハウジング22に設けられた弾性シール部材24と切欠11Uの内周部との間の摩擦抵抗を抑えることができる。
【0023】
(カバー)
カバー12(図1および図2)は、切欠11Uに配置されたコネクタハウジング22の上端部(充填シール配置部202)と、充填シール配置部202からほぼ面一に連続するケース11の上端部11Bと、回路基板13とを覆うように板状に形成されている。カバー12は、ケース11との間にコネクタハウジング22を挟み込んだ状態で図示しないねじでケース11に固定される。
【0024】
〔電気コネクタ〕
電気コネクタ20(以下、コネクタ20)は、図1図3に示すように、回路基板13に接続される複数の雄型のコンタクト21と、それらのコンタクト21を保持するコネクタハウジング22とを有している。
コネクタ20は、雌型コンタクトおよび電線を有した図示しない相手コネクタと嵌合される。
【0025】
(コンタクト)
各コンタクト21は、導電性を有する材料から構成されている。各コンタクト21の後端部21B(図3)は、前端21A(図2)側に対して上方に屈曲し、回路基板13に接続される。
本実施形態では、複数のコンタクト21が2つのコンタクト群G1,G2に区分されている。
【0026】
(コネクタハウジング)
コネクタハウジング22(図1図4)は、絶縁性の樹脂材料から構成されている。コネクタハウジング22は、基部220と、基部220の内側に位置する筒状のフード221と、基部220の後側に位置する包囲部222(図4)とを備えている。
基部220は、複数のコンタクト21の中間部を保持する。
フード221は、基部220の前側で、コンタクト群G1,G2をそれぞれ包囲する。フード221の内側で、コンタクト21と、図示しない相手コネクタの雌型コンタクトとが接続される。
包囲部222は、基部220の後側で複数のコンタクト21の後端部21Bを包囲する。
包囲部222(図4)には、回路基板13(図2)に固定される固定部222Aが設けられている。
【0027】
基部220は、図3に示すように、フード221の周りに、弾性シール保持部201と、充填シール配置部202とを有している。
弾性シール保持部201は、ケース11の切欠11U(図2)の形状に倣って側面視U字状に形成されている。
充填シール配置部202は、切欠11Uの幅方向に延在している。この充填シール配置部202は、切欠11Uの幅方向両側でケース11の側壁11Aの上端面と連続する。
基部220における弾性シール保持部201とフード221との間には、図示しない相手コネクタのハウジングの一部が配置される凹部204が形成されている。フード221の内面と、相手コネクタのハウジングとの間は、図示しないシール部材により止水される。
【0028】
弾性シール保持部201(図3および図4)は、前後方向に間隔をおいて配置される一対の枠板201Aと、それらの枠板201Aの間に形成される保持溝201Bとを有している。
【0029】
一対の枠板201Aの間隔は、ケース11の側壁11A(図2)の板厚に対応している。側壁11Aの両面に枠板201Aが配置されると、保持溝201Bに配置された弾性シール部材24が切欠11U(図2)の内周部に沿って位置決めされる。
【0030】
弾性シール部材24が配置される保持溝201Bは、充填シール配置部202の一端部から、基部220の底部220Aを経て、充填シール配置部202の他端部まで連続した空間である。この保持溝201Bの内側で弾性シール部材24が弾性変形する。
【0031】
充填シール配置部202(図3および図5)は、切欠11U(図2)の幅の全体に亘り延在し、前方の枠板201Aの上端と後方の枠板201Aの上端とに連なっている。
充填シール配置部202には、充填シール14(図1)に用いられる液状のシール材を受け入れる溝202Aが切欠11Uの幅方向に沿って形成されている。溝202Aの位置を除いて充填シール配置部202は平坦に形成されている。
【0032】
充填シール配置部202の両端には、図3および図4に示すように、弾性シール部材24の端部24Aを係止する端部係止部203が連設されていることが好ましい。端部係止部203は、弾性シール保持部201と切欠11Uの内周部との間に押圧された弾性シール部材24の端部24Aが、切欠11Uから上方へ変位することを規制する。
この端部係止部203に下方から弾性シール部材24の端部24Aが突き当てられると、端部係止部203に形成されている接触用切欠203Aから端部24Aの一部が露出する。
【0033】
図5に示すように、コネクタハウジング22の一対の枠板201A(図3)における端部係止部203よりも外周側の部分201Dの間に、ケース11の側壁11Aの上端部11Bが配置される。このとき、上端部11Bと充填シール配置部202との間に、接触用切欠203Aから露出した弾性シール部材24の端部24Aの一部(凸部24E)が位置している。
【0034】
〔弾性シール部材〕
弾性シール部材24(図3)は、例えばシリコーンゴム等のゴム系の樹脂材料を用いて、ケース11の切欠11Uの形状に倣い全体としてU字状に成形された弾性体である。弾性シール部材24は、予め形状が付与された成形体の状態でコネクタハウジング22の弾性シール保持部201により保持される。本実施形態では、図2に示すように弾性シール保持部201に弾性シール部材24が装着された状態で、コネクタ20がケース11の切欠11Uに挿入される。
【0035】
弾性シール部材24は、図3および図4に示すように、切欠11U(図2)の内周部に密着する外周部24Dと、外周部24Dの内側から前後方向両側に突出した内周鍔部24Bとを有している。
【0036】
また、弾性シール部材24は、図3に示すように、切欠11Uの底部周縁101(図2)に対応する底部241と、切欠11Uの側部周縁102(図2)に対応する側部242とを有している。
各側部242の上端が、上述した端部係止部203に係止される弾性シール部材24の端部24Aに相当する。コネクタハウジング22に弾性シール部材24が装着されると、弾性シール部材24の両方の端部24Aの間に、コネクタハウジング22の上端部である充填シール配置部202が露出する。
端部24Aには、端部係止部203に下方から突き当てられる突当て部24Cと、突当て部24Cよりも上方へ突出した凸部24Eとが存在している。
【0037】
コネクタ20、ケース11、およびカバー12を図1に示すように組み立てると、弾性シール部材24は、弾性シール保持部201と切欠11Uの内周部との間に圧縮されて弾性変形し、弾性シール保持部201と切欠11Uの内周部とに密着する。この弾性シール部材24により、コネクタハウジング22とケース11との間が封止される。
【0038】
弾性シール部材24は、コネクタ20に装着された状態で切欠11Uに挿入される際における切欠11Uの内周部との摩擦により、および弾性シール保持部201と切欠11Uの内周部との間に押圧されることにより、伸長するように弾性変形する。
弾性シール部材24には、コネクタハウジング22およびケース11に対する位置ずれを防ぐために溝や突起等が形成されている。それらの説明は省略する。
【0039】
〔充填シール〕
充填シール14(図1)は、ケース11、カバー12、およびコネクタ20が組み立てられた状態において、これら三者の間に充填されて硬化している。充填シール14は、流動性を有する液状のシール材(液状ガスケットとも呼ばれる)が、充填シール配置部202を含む充填領域R1とカバー12との間に充填された状態で硬化したものである。
充填シール14は、例えば、シリコーンゴム等の樹脂材料から構成されている。充填シール14は、接触する部材の形状に倣い、部材間の段差等の微細な隙間にも充填される。充填シール14は、部材の表面に接着されることが好ましい。
【0040】
充填領域R1(図5)は、コネクタハウジング22において弾性シール部材24が配置されていない部位である充填シール配置部202と、弾性シール部材24の両方の端部24Aと、ケース11の上端部11Bにおける切欠11Uの近傍とを含んでいる。本実施形態の充填領域R1は、弾性シール部材24の両方の端部24Aを互いに結ぶ方向(切欠11Uの幅方向)に、充填シール配置部202およびケース11の上端部11Bに亘り延在している。
【0041】
充填シール14は、充填領域R1とカバー12の裏面との間にほぼ均一の厚さに形成されている。充填シール14の厚さは、例えば、0.02mm~1.3mm程度である。
【0042】
〔コネクタシール構造を製造する方法〕
次に、ケース11、コネクタ20、およびカバー12を組み立ててコネクタシール構造1を得る手順の一例について説明する。
まず、図6(a)に示すように、回路基板13に取り付けられ、弾性シール部材24(図2)が装着されている状態のコネクタ20をケース11の切欠11Uに上方から挿入する(コネクタ挿入ステップS1)。
このとき弾性シール部材24が伸長しても、端部係止部203により弾性シール部材24の端部24Aが上方から押さえられて係止される。
【0043】
なお、コネクタ20に弾性シール部材24が装着されていない場合には、ステップS1に際して、切欠11Uの内周部とコネクタハウジング22との間に弾性シール部材24を挟み込む。
【0044】
次いで、図6(b)に示すように、少なくとも、充填領域R1に対応するカバー12の裏側の領域に、液状のシール材14´を供給する(液状シール材供給ステップS2)。例えば、ペースト状のシール材の入った容器141から液状シール材14´を一直線状に押し出す等の適宜な方法により、カバー12の所定領域に液状シール材14´を塗布する。例えば、約10mmの幅でカバー12の全周に亘る領域(充填領域R1に対応する領域を含む)に、液状シール材14´を塗布することができる。
ここでは、液状シール材の塗布の作業性等の観点から、カバー12に液状シール材14´を供給しているが、カバー12ではなく充填領域R1に液状シール材14´を供給したり、カバー12と充填領域R1との両方に液状シール材14´を供給したりするようにしてもよい。
【0045】
続いて、図7(a)に示すように、ケース11の上端部11Bおよびコネクタハウジング22の上端部(充填シール配置部202)にカバー12を配置する。そうすると、ケース11と、カバー12と、ケース11およびカバー12に挟まれたコネクタ20とが一体に組み立てられる。これらが組み立てられることで、充填シール配置部202、弾性シール部材24の端部24A、および上端部11Bからなるほぼ平坦な充填領域R1と、平坦なカバー12の裏面との間の全体に液状シール材14´が拡がり充填される(組立および充填ステップS3)。
液状シール材14´は、充填シール配置部202の溝202A(図3)や、充填シール配置部202、弾性シール部材24の端部24A、および上端部11Bの僅かな段差に起因した空隙にも行き渡る。
【0046】
カバー12がケース11に設けられていない状態では充填シール配置部202が上端部11Bよりも上方に突出している場合もあり得る。その場合でも、充填シール配置部202は、ケース11に設けられたカバー12により液状シール材14´を介して押さえられることで、上端部11Bとほぼ面一に配置される。そして、充填シール配置部202と上端部11Bとの間に位置決めされつつ露出した弾性シール部材24の端部24A(凸部24E)も、上端部11Bおよび充填シール配置部202とほぼ面一に位置することとなる。
【0047】
ここで、上端部11Bおよび充填シール配置部202から凸部24E(図3図4)が僅かに突出するように弾性シール部材24の寸法および形状が設定されていると好ましい。そうすると、部材の寸法公差や組立公差により凸部24Eが充填シール配置部202および上端部11Bよりも下方に位置することを避けることができる。その結果、凸部24Eと、充填シール配置部202および上端部11Bとが理想的には面一の構成を実現することができる。
【0048】
図7(b)に示すように、充填領域R1とカバー12との間に充填された液状シール材14´は、薄くて均一な厚さに硬化する(硬化ステップS4)。常温で所定の時間をおくことにより、あるいは、必要に応じて加熱することにより、液状シール材14´を硬化させることができる。液状シール材14´が光硬化性樹脂から構成され、カバー12またはケース11が透光性を有している場合には、適合する波長の光(例えば紫外線)を照射することで、液状シール材14´を硬化させることができる。
液状シール材14´の硬化により得られた充填シール14は、カバー12の裏側と、ケース11の上端部11Bと、充填シール配置部202と、弾性シール部材24の端部24Aとに密着する。充填シール14の一部が充填シール配置部202の溝202A(図3)に配置されているため、充填シール14の位置ずれを防ぐことができる。
【0049】
弾性シール部材24の端部24A(凸部24E)が上端部11Bや充填シール配置部202とほぼ面一に配置されていると好ましい。そうすると、ケース11へのカバー12の組み付けの際等に、凸部24Eにせん断方向の負荷が加わって凸部24Eが損傷することを避けることができる。その上、上端部11Bおよび充填シール配置部202に対して凸部24Eの頂面の位置が低い場合に凸部24Eの位置で充填シール14が厚くなることを避けることもできる。充填シール14は、厚いよりも薄い方が、筐体10内の空気の熱膨張や衝撃等に起因した外力に対して変形し難い。弾性シール部材24の端部24Aが上端部11Bや充填シール配置部202とほぼ面一に配置されることで、充填領域R1の全体に亘り充填シール14が薄く形成されていることが好ましい。そうすると、充填シール14の変形を避け、充填シール14が部材に密着した状態を保つことができる。
【0050】
以上で述べた手順により、コネクタシール構造1を得ることができる。
【0051】
〔本実施形態による作用効果〕
本実施形態のコネクタシール構造1においては、U字状の弾性シール部材24と、液状の状態で充填される充填シール14とが環状に組み合わせられる。そうすると、カバー12を変形させることなく、切欠11Uに配置されたコネクタハウジング22の全周に亘り、コネクタハウジング22と筐体10との間の防水を十分に図ることができる。U字状の弾性シール部材24は、カバー12に対応する範囲において欠損している。そのため、カバー12をケース11に組み付けても、弾性シール部材24からカバー12に対して過大な反力が発生しない。これは、切欠11Uに配置されるコネクタハウジング22の外周部に環状の弾性シールを与えた場合には弾性シールの上端部からカバー12に上向きの反力が発生するのとは異なる。
本実施形態によれば、環状の弾性シールを用いる場合とは異なり、カバー12の変形を避けるために弾性シールの弾性力を小さくしたり、カバー12の剛性を上げたりする必要がない。
【0052】
さらに、U字状の弾性シール部材24が配置されていないコネクタハウジング22の部位(充填シール配置部202)と、ケース11の上端部11Bとの段差を最小限に抑え、段差近傍の空隙を減らすことができるので、防水性能の確保および液状シール材の塗布作業の容易性の点で有利である。環状の弾性シールを用いる場合は、ケースの上端部11Bに対して弾性シールの上端部が突出するため大きな段差と空隙が生じてしまう。
【0053】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
充填領域R1には、ケース11の上端部11Bや弾性シール部材24の端部24Aが必ずしも含まれている必要はなく、少なくとも充填シール配置部202が含まれていれば足りる。
例えば、弾性シール部材24の両方の端部24Aがカバー12の裏側に密着しており、両方の端部24A間に位置する充填シール配置部202のみからなる充填領域R1とカバー12との間に充填シール14が充填された構成が許容される。
あるいは、充填シール配置部202および弾性シール部材24の両方の端部24Aからなる充填領域R1と、カバー12との間に充填シール14が充填された構成も許容される。
上記いずれの構成であっても、環状に組み合わせられた弾性シール部材24および充填シール14により、コネクタハウジング22の全周に亘り十分に防水しつつ、弾性シール部材24からカバー12への反力を抑えてカバー12の変形を防止することができる。
【0054】
カバー12に対する弾性シール部材24の反力をより十分に抑える観点からは、弾性シール部材24の端部24Aの上端がカバー12に直接接触しておらず、端部24Aの上端とカバー12との間に充填シール14が介在している上記実施形態が好ましい。このとき、弾性シール部材24の端部24Aの上端と充填シール14とが直接接触している。
上記実施形態では、充填シール14が、充填シール配置部202に加えて、弾性シール部材24の端部24Aにも配置される。その場合には、充填シール14に用いられる液状シール材が、端部24A、上端部11B、および充填シール配置部202の相互の境界の間隙に入り込み、間隙が閉塞される。そのため、防水性のより十分な確保に寄与できる。
【0055】
本発明においては、弾性シール部材24の端部24Aの上端が充填シール14に直接接触していない構成も許容される。例えば、端部係止部203に、端部24Aを露出させる接触用切欠203A(図3)が存在していないため、端部24Aと充填シール14とが端部係止部203により隔てられている場合である。その場合も、端部24Aと充填シール14とが端部係止部203に密着している限りにおいて、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0056】
1 コネクタシール構造
10 筐体
11 ケース(第1筐体部材)
11A 側壁
11B 上端部
11U 切欠
12 カバー(第2筐体部材)
13 回路基板(基板)
14 充填シール
20 電気コネクタ
21 コンタクト
21A 前端
21B 後端部
22 コネクタハウジング
24 弾性シール部材
24A 端部
24B 内周鍔部
24C 突当て部
24D 外周部
24E 凸部
101 底部周縁
102 側部周縁
103 コーナー部
141 容器
201 弾性シール保持部
201A 枠板
201B 保持溝
201D 部分
202 充填シール配置部(弾性シール部材から露出した部位)
202A 溝
203 端部係止部
203A 接触用切欠
204 凹部
220 基部
220A 底部
221 フード
222 包囲部
222A 固定部
241 底部
242 側部
R1 充填領域
S1 コネクタ挿入ステップ
S2 液状シール材供給ステップ
S3 組立および充填ステップ
S4 硬化ステップ
G1,G2 コンタクト群
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7