(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】車載用バッテリ
(51)【国際特許分類】
H01M 50/262 20210101AFI20221018BHJP
H01M 50/242 20210101ALI20221018BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20221018BHJP
H01M 50/291 20210101ALI20221018BHJP
H01M 50/264 20210101ALI20221018BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20221018BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20221018BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20221018BHJP
H01M 10/6554 20140101ALI20221018BHJP
H01M 10/657 20140101ALI20221018BHJP
H01M 10/658 20140101ALI20221018BHJP
【FI】
H01M50/262 S
H01M50/242
H01M50/204 401H
H01M50/291
H01M50/264
H01M50/249
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6554
H01M10/657
H01M10/658
(21)【出願番号】P 2018181776
(22)【出願日】2018-09-27
【審査請求日】2021-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【氏名又は名称】大竹 雅久
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 律夫
(72)【発明者】
【氏名】成毛 俊昭
(72)【発明者】
【氏名】上田 逸央
(72)【発明者】
【氏名】竹岸 孝之
(72)【発明者】
【氏名】大熊 伴哉
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-012441(JP,A)
【文献】特開2010-015788(JP,A)
【文献】特開2016-122572(JP,A)
【文献】特開2017-222314(JP,A)
【文献】特開2017-152187(JP,A)
【文献】国際公開第2016/027377(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20 -50/298
H01M 10/613-10/658
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に複数の電池セルを有する電池モジュールと、
複数のパネルが結合されることで形成され、前記電池モジュールが収納される収納ケースと、
前記電池モジュールの下方に配設された温調手段と、
前記温調手段の下方に配置されたシート状の断熱部材と、
前記パネルの下方で、前記断熱部材を上方に向かって凸状に成型した凸状部と、を具備し、
前記パネルは、エンドプレートと、バインドバーと、を有し、
前記バインドバーは、下側曲折部を有し、
前記凸状部の少なくとも一部は、前記電池モジュールの下方側に配置され、
前記下側曲折部と、前記凸状部とが重畳する部分は、前記電池モジュールの側方側に配設されることを特徴とする車載用バッテリ。
【請求項2】
前記電池モジュール、前記収納ケース、前記温調手段および前記断熱部材は、車両の底面近傍に配設されることを特徴とする請求項1に記載の車載用バッテリ。
【請求項3】
前記凸状部は前記断熱部材の両端部に形成され、
前記凸状部は、前記電池セルが配列する方向に沿って伸びる前記パネルの下方に配置されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車載用バッテリ。
【請求項4】
前記凸状部は、前記電池モジュールの長手方向に沿って延在していることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の車載用バッテリ。
【請求項5】
前記断熱部材の前記凸状部が形成されていない部分を肉抜きにすることを特徴とする請求項1から請求項4の何れかに記載の車載用バッテリ。
【請求項6】
車体の骨格部分が形成されていない領域に於いて、前記断熱部材に前記凸状部を形成することを特徴とする請求項1から請求項5の何れかに記載の車載用バッテリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用バッテリに関し、特に、車両の底部近傍に配置される車載用バッテリに関する。
【背景技術】
【0002】
近年に於いては、自動車全体に対して電気自動車やハイブリッド自動車の占める割合が大きくなっており、電気自動車等では電力で回転するモータで車両が駆動されることから、高い蓄電機能を有する車載用バッテリが搭載される。
【0003】
車載用バッテリは、収納ケースに電池モジュールが収納されている。ここで、電池モジュールは、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の複数の電池セルが配列されて構成されている。
【0004】
車載用バッテリの構成の一例が特許文献1に記載されている。ここでは、多数の電池セルから電池積層体が形成され、電池積層体の上面および側面が緩衝部材および被覆部材により覆われ、電池積層体の下面は断熱部材で覆われている。また、断熱部材の上面には電池積層体を冷却するための流体が流通する冷却パイプが配置されている。係る構成とすることで、電池積層体を密封し、温度差に起因した結露を防止し、意図しない導通や腐食を回避することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した構成の車載用バッテリでは、車両走行時に衝撃が作用した際には、その衝撃に対する対策が必ずしも十分ではない課題があった。
【0007】
例えば、電気自動車等では、連続走行距離を延伸させるために、大量の車載用バッテリを車両に搭載する必要があり、そのために車両の車体底部近傍に複数の車載用バッテリが並べて配置されることがある。
【0008】
一方、比較的大きな凹凸が存在する未舗装道路を車両が走行した場合、道路の突部が車両の底面に衝突する事象が発生することがある。この場合、その衝突に対する対策を何ら施さないと、車両底部に配置された車載用バッテリに大きな衝撃が作用し、車載用バッテリが破損してしまう恐れがある。
【0009】
ここで、車載用バッテリを保護するために、車両底面の全域を電池保護用の鋼板で覆えば、車載用バッテリを保護することができる。しかしながら、係る構成では電池保護用の鋼板を備えることで車重が大幅に増加してしまい、一回の充電で走行することができる連続走行距離が短くなってしまう恐れがある。
【0010】
また、車両の他の部位に車載用バッテリを配置した場合であっても、衝突事故が発生した際に、その衝突に対する対策を施さなければ、車載用バッテリが破損してしまう恐れが大きい。
【0011】
本発明は、このような問題点を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、衝撃から電池モジュールを保護することができる車載用バッテリを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の車載用バッテリは、内部に複数の電池セルを有する電池モジュールと、複数のパネルが結合されることで形成され、前記電池モジュールが収納される収納ケースと、前記電池モジュールの下方に配設された温調手段と、前記温調手段の下方に配置されたシート状の断熱部材と、前記パネルの下方で、前記断熱部材を上方に向かって凸状に成型した凸状部と、を具備し、前記パネルは、エンドプレートと、バインドバーと、を有し、前記バインドバーは、下側曲折部を有し、前記凸状部の少なくとも一部は、前記電池モジュールの下方側に配置され、前記下側曲折部と、前記凸状部とが重畳する部分は、前記電池モジュールの側方側に配設されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の車載用バッテリでは、前記電池モジュール、前記収納ケース、前記温調手段および前記断熱部材は、車両の底面近傍に配設されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の車載用バッテリでは、前記凸状部は前記断熱部材の両端部に形成され、前記凸状部は、前記電池セルが配列する方向に沿って伸びる前記パネルの下方に配置されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の車載用バッテリでは、前記凸状部は、前記電池モジュールの長手方向に沿って延在していることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の車載用バッテリでは、前記断熱部材の前記凸状部が形成されていない部分を肉抜きにすることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の車載用バッテリでは、車体の骨格部分が形成されていない領域に於いて、前記断熱部材に前記凸状部を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の車載用バッテリは、内部に複数の電池セルを有する電池モジュールと、複数のパネルが結合されることで形成され、前記電池モジュールが収納される収納ケースと、前記電池モジュールの下方に配設された温調手段と、前記温調手段の下方に配置されたシート状の断熱部材と、前記パネルの下方で、前記断熱部材を上方に向かって凸状に成型した凸状部と、を具備し、前記パネルは、エンドプレートと、バインドバーと、を有し、前記バインドバーは、下側曲折部を有し、前記凸状部の少なくとも一部は、前記電池モジュールの下方側に配置され、前記下側曲折部と、前記凸状部とが重畳する部分は、前記電池モジュールの側方側に配設されることを特徴とする。これにより、本発明の車載用バッテリによれば、断熱部材の凸状部と収納ケースのパネルとを上下方向で一致させることで、車両走行時における電池モジュールの破損を抑止することができる。具体的には、車両走行時に於いて下方から衝撃が作用した場合、電池モジュールの下方に配設された断熱部材に凸状部を設け、この凸状部をパネルと重畳させている。これにより、作用した衝撃は、断熱部材の凸状部を経由してパネルに伝達されて吸収されるので、電池モジュールが衝撃で破損してしまうことを防止することができる。
【0019】
また、本発明の車載用バッテリでは、前記電池モジュール、前記収納ケース、前記温調手段および前記断熱部材は、車両の底面近傍に配設されることを特徴とする。これにより、本発明の車載用バッテリによれば、車両が走行する際に車体の下面に玉石による衝撃入力があったとしても、その衝撃入力は上記した断熱部材の凸状部およびパネルで吸収されるので、電池モジュールが破損してしまうことを防止できる。
【0020】
また、本発明の車載用バッテリでは、前記凸状部は前記断熱部材の両端部に形成され、前記凸状部は、前記電池セルが配列する方向に沿って伸びる前記パネルの下方に配置されることを特徴とする。これにより、本発明の車載用バッテリによれば、断熱部材の両端部に凸状部を形成しているので、下方から作用する衝撃をより効率的にパネルに伝達させ、衝撃をより効果的に吸収することができる。
【0021】
また、本発明の車載用バッテリでは、前記凸状部は、前記電池モジュールの長手方向に沿って延在していることを特徴とする。これにより、本発明の車載用バッテリによれば、長い凸状部で電池モジュールを保護することができ、電池モジュールに作用する衝撃を緩和する効果を顕著にすることができる。
【0022】
また、本発明の車載用バッテリでは、前記断熱部材の前記凸状部が形成されていない部分を肉抜きにすることを特徴とする。これにより、本発明の車載用バッテリによれば、衝撃吸収に寄与しない部分の断熱部材を除去することで、断熱部材の軽量化を図ることができる。
【0023】
また、本発明の車載用バッテリでは、車体の骨格部分が形成されていない領域に於いて、前記断熱部材に前記凸状部を形成することを特徴とする。これにより、本発明の車載用バッテリによれば、骨格部分が形成されている領域では、骨格部分により電池モジュールを保護し、骨格部分が形成されていない領域で凸状部により電池モジュールを保護することで、断熱部材の形状の簡素化および軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】(A)は本発明の実施の形態に係る車載用バッテリを備えた車両を示す斜視図であり、(B)は電池配置領域を示す平面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る車載用バッテリを示す図であり、(A)は斜視図であり、(B)は分解斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る車載用バッテリを示す断面図である。
【
図4】本発明の他の形態に係る車載用バッテリを示す断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る車載用バッテリを示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は断面図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る車載用バッテリを示す図であり、(A)はストロークと荷重との関係を示すグラフであり、(B)はストロークとセル入力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係る車載用バッテリ20を図面に基づき詳細に説明する。以下の説明に於いて、前方は車両10の進行方向であり、後方は前方の反対方向であり、左右とは車両10を前方から見た場合を示している。更に、以下の説明では、同一の部材には原則的に同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。
【0026】
図1を参照して、本実施形態に係る車載用バッテリ20を備えた車両10を説明する。
図1(A)は車両10の車体11を下方から見た斜視図であり、
図1(B)は電池配置領域13を示す平面図である。
【0027】
図1(A)および
図1(B)を参照して、車両10は、車体11と、車両10の車両底面12の近傍に配設された車載用バッテリ20と、車載用バッテリ20から供給される電力により駆動されるモータと、モータの駆動力で回転するタイヤとを有している。ここでは、モータおよびタイヤは図示していない。車両10としては、モータの駆動力で駆動される電気自動車、モータまたはエンジンの駆動力で駆動されるハイブリッド自動車等を採用することができる。
【0028】
図1(A)に示すように、電池配置領域13は、車両底面12の近傍に規定されている。このようにすることで、より多くの車載用バッテリ20を車両10に配置することができ、車載用バッテリ20から供給される電力で駆動される車両10の連続走行距離を伸ばすことができる。
【0029】
図1(B)を参照して、電池配置領域13には、行列状に複数の車載用バッテリ20が配置されている。各々の車載用バッテリ20は、前後方向に沿う長手方向を有する略直方体形状を呈している。また、車載用バッテリ20の下方には、左右方向に伸びる骨格部分32が形成されている。
【0030】
図2を参照して、車載用バッテリ20の構造を詳述する。
図2(A)は車載用バッテリ20を前側上方から見た斜視図であり、
図2(B)は車載用バッテリ20の分解斜視図である。
【0031】
図2(A)および
図2(B)を参照して、車載用バッテリ20は、電池モジュール21と、収納ケース22と、カバー27と、温調プレート28と、断熱部材29と、を有する。
【0032】
電池モジュール21は、前後方向に沿って積層された複数の電池セル26から構成されている。
【0033】
収納ケース22は、エンドプレート24およびバインドバー25から成るパネル23から構成され、電池モジュール21を、前方、後方、左方および右方から囲んでいる。
【0034】
バインドバー25は、板状に成形された樹脂または鋼板等から成り、電池モジュール21の右側面および左側面を覆う部材である。バインドバー25の上端部および下端部は、内側に向かって略直角に曲折加工されている。後述するように、バインドバー25は、車両10が走行する際に、路面から車両10の底面に与えられる衝撃が伝達する部材でもある。
【0035】
エンドプレート24は、板状に成形された樹脂または鋼板等から成り、電池モジュール21の前側面および後側面を覆う部材である。エンドプレート24の左右方向に於ける端部は、バインドバー25の前後方向に於ける端部と接続している。
【0036】
カバー27は、板状に成形された樹脂または鋼板等から成り、電池モジュール21を上方から覆う部材である。カバー27の左方側辺および右方側辺は、バインドバー25の上面により支えられている。
【0037】
温調プレート28は、電池モジュール21の下面の近傍に載置された温調手段である。温調プレート28の内部には、水などの媒体が流通するパイプが配置されている。温調プレート28を電池モジュール21の下方に配置することで、電池モジュール21の充放電時に於ける効率を向上することができる。即ち、電池モジュール21の温度が適正温度帯域よりも高ければ、温調プレート28に冷却媒体を流通させて電池モジュール21を冷却し、電池モジュール21の温度を適正温度帯域とする。一方、電池モジュール21の温度が適正温度帯域よりも低ければ、温調プレート28に加熱媒体を流通させて電池モジュール21を昇温し、電池モジュール21の温度を適正温度帯域とする。このようにすることで、電池モジュール21の温度を適正温度帯域とし、電池モジュール21が充放電を行う際の効率を向上することができる。
【0038】
断熱部材29は、温調プレート28の下方に配置された板状の部材であり、例えば発泡ポリエチレン等の発泡合成樹脂から成る。断熱部材29を温調プレート28の下方に配置することで、温調プレート28と外部とを断熱することができ、温調プレート28の温調効果を増大することができる。ここでは、車載用バッテリ20に個別の断熱部材29が形成されているが、後述するように、複数の車載用バッテリ20に対して1つの断熱部材29が形成されても良い。
【0039】
凸状部30は、断熱部材29の左右方向に於ける両端部近傍を上方に向かって突出させた部位である、凸状部30は、断熱部材29の前端部から後端部まで連続して形成されている。前後方向に於いて、凸状部30の長さは、電池モジュール21の長さと略等しい。凸状部30は、車両10の走行時に下方から入力する衝撃が電池モジュール21に及ぶことを抑制するための部位であり、係る事項については後述する。
【0040】
図3を参照して、車載用バッテリ20の断面構成を説明する。
図3は、
図1(B)の切断面線A-Aに於ける断面図である。
【0041】
この図を参照して、バインドバー25の上端部を内側に向かって略直角に曲折させることで上側曲折部34が形成されている。また、バインドバー25の下端部を内側に向かって略直角に曲折させることで下側曲折部35が形成されている。バインドバー25が上側曲折部34および下側曲折部35を有することで、バインドバー25の機械的強度が高められている。
【0042】
上記したように、断熱部材29を部分的に上方に向かって突出させることで凸状部30が形成されている。凸状部30の断面形状は例えば矩形であり、凸状部30の上面は平坦に形成されている。
【0043】
バッテリーガード33は、断熱部材29の下方に配置された鋼板などからなる板状材料であり、断熱部材29を下方から被覆している。
【0044】
本実施形態では、上下方向に於いて、断熱部材29の凸状部30は、バインドバー25の下側曲折部35と、少なくとも部分的に重なり合う位置に配置されている。凸状部30と下側曲折部35とは、部分的に重畳しても良いし、凸状部30の全てが下側曲折部35の下方に配置されても良い。凸状部30の全てが下側曲折部35の下方に配置されることで、凸状部30を介してバインドバー25に伝達される入力を大きくすることができ、電池モジュール21を保護する効果を大きくすることができる。また、凸状部30の上面は下側曲折部35の下面に当接させても良いし、両者の間に僅かに間隙が形成されても良い。
【0045】
このようにすることで、路面の凹凸が大きい悪路を車両10が走行した際に、路面に存在する石などが車両10の底部に衝突することで、車載用バッテリ20に下方からの衝撃があったとしても、電池モジュール21をその入力から保護することができる。具体的には、道路からの下方からの衝撃が車両10に作用すると、その衝撃は、バッテリーガード33、断熱部材29および温調プレート28を経由して、カバー27に入力しようとする。本実施形態では、断熱部材29の凸状部30を、バインドバー25の上側曲折部34に当接させている。このようにすることで、この衝撃は、バッテリーガード33、断熱部材29、凸状部30、下側曲折部35(バインドバー25)の順番で伝導し、更に、ここでは図示しないバインドバー25を支持する車体11に伝導する。よって、入力する衝撃が直接的に電池モジュール21に作用することがないので、上記した衝撃により電池モジュール21が破損することを防止できる。
【0046】
図4を参照して、断熱部材29の他の形態を説明する。
図4は、
図3と同じ切断面線に於ける車載用バッテリ20の断面図である。
【0047】
ここでは、電池モジュール21の下方に於いて、凸状部30が形成されていない部分の断熱部材29に、下面から肉抜き部31を設定している。即ち、電池モジュール21の下方に於いては、凸状部30が形成される部分を除外して、断熱部材29の大部分に肉抜き部31が形成されている。ここで、肉抜き部31が形成された領域に於いても、断熱部材29は、温調プレート28から発生する熱が外部に放出されることを抑制できる厚みを残している。肉抜き部31は、
図1(B)に示した全ての車載用バッテリ20に対して形成することができる。このようにすることで、肉抜き部31が設定された部分で、断熱部材29の薄型化を図り、断熱部材29および車両10を軽量化し、車両10の連続走行距離を伸ばすことができる。
【0048】
図5を参照して、断熱部材29の凸状部30の他の形態を説明する。
図5(A)は電池配置領域13を示す平面図であり、
図5(B)は
図5(A)の切断面線B-Bに於ける断面図である。
【0049】
図5(B)を参照して、電池モジュール21の下方には、電池モジュール21を外部と断熱する断熱部材29が形成されている。また、各電池モジュール21の下方に於いて、断熱部材29を部分的に上方に向かって隆起させることで凸状部30が形成されている。更に、断熱部材29の下方には、車体11のフレームの一部である骨格部分32が配置されている。骨格部分32は、
図5(A)に示すように、左右方向に沿って伸びている。本実施形態は、下方からの衝撃が電池モジュール21に及ぶことを抑制するために、電池モジュール21の下方に凸状部30を形成している。しかしながら、骨格部分32が形成された部分では、電池モジュール21の下方であっても、断熱部材29には、凸状部30を形成していない。即ち、電池モジュール21の下方であって且つ骨格部分32が配置された部分の断熱部材29を、非突出領域36としている。骨格部分32が形成された領域では、下方からの入力を骨格部分32が受け止めるので、断熱部材29に凸状部30を形成せずとも、電池モジュール21が保護される。非突出領域36は、
図5(A)に示す全ての車載用バッテリ20に設定することができる。断熱部材29に非突出領域36を設定することにより、凸状部30が形成される部分を少なくし、断熱部材29および車両10を軽量化することで車両10の連続走行距離を延長することができる。
【0050】
図6を参照して、上記した車載用バッテリ20による効果を説明する。
図6(A)は、車両10の車両底面12に作用する衝撃によるストロークと、車両底面12に作用する荷重との関係を示したグラフである。
図6(B)は、車両10の車両底面12に作用する衝撃によるストロークと、電池モジュール21の電池セル26に入力する荷重との関係を示したグラフである。これらのグラフでは、
図3に示した凸状部30を形成した本実施形態の場合を実線で示し、凸状部30を形成しない比較例を点線で示している。
【0051】
図6(A)を参照して、車両底面12に下方から入力する衝撃によるストロークが大きくなるに伴い、車両底面12に作用する荷重も大きくなる。ストロークと荷重とは正比例の関係にある。このような現象は、凸状部30かある場合でも、凸状部30が無い場合でも同様である。
【0052】
図6(B)を参照して、点線で示す凸状部30を有しない比較例の場合は、ストロークが10mmに至るまでは電池セル26への入力は殆ど発生しないが、ストロークが10mmを超えたら、ストロークの増加に伴い電池セル26の入力が正比例的に大きくなる。よって、凸状部30を有しない比較例の場合は、車両底面12に下方から作用する衝撃が大きくなると、電池セル26に作用する衝撃も大きくなり、その衝撃により電池セル26が破損してしまう恐れがある。
【0053】
一方、本実施形態では、計測の範囲内に於いては、ストロークが増加しても、電池セル26への入力が大きくなることがない。この理由は、
図3に示したように、車両10に下方からの衝撃が作用しても、その衝撃は、断熱部材29、凸状部30、下側曲折部35、バインドバー25を経由して、車両10の車体11の側に伝導し、電池モジュール21(電池セル26)に衝撃が直接的に作用しないからからである。
【0054】
よって、本実施形態によれば、
図3に示したように、断熱部材29に凸状部30を形成し、バインドバー25の下側曲折部35と凸状部30とを重畳させるという簡素な構成で、効果的に電池モジュール21を衝撃から守ることができる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更が可能である。
【符号の説明】
【0056】
10 車両
11 車体
12 車両底面
13 電池配置領域
20 車載用バッテリ
21 電池モジュール
22 収納ケース
23 パネル
24 エンドプレート
25 バインドバー
26 電池セル
27 カバー
28 温調プレート
29 断熱部材
30 凸状部
31 肉抜き部
32 骨格部分
33 バッテリーガード
34 上側曲折部
35 下側曲折部
36 非突出領域