(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】ポリシロキサンをベースとする硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 83/04 20060101AFI20221018BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20221018BHJP
C08L 75/08 20060101ALI20221018BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20221018BHJP
C08K 5/544 20060101ALI20221018BHJP
C08K 5/5415 20060101ALI20221018BHJP
C08G 18/50 20060101ALI20221018BHJP
C09D 5/16 20060101ALI20221018BHJP
C09D 183/04 20060101ALI20221018BHJP
C09D 171/00 20060101ALI20221018BHJP
C09D 175/08 20060101ALI20221018BHJP
C09D 183/06 20060101ALI20221018BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20221018BHJP
【FI】
C08L83/04
C08L71/02
C08L75/08
C08L63/00 A
C08K5/544
C08K5/5415
C08G18/50 096
C09D5/16
C09D183/04
C09D171/00
C09D175/08
C09D183/06
C09D7/63
(21)【出願番号】P 2018185045
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-04-01
(32)【優先日】2017-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル フィーデル
(72)【発明者】
【氏名】トアステン マロチョフ
(72)【発明者】
【氏名】ドレーン エンゲル
(72)【発明者】
【氏名】フランク シューベアト
(72)【発明者】
【氏名】アンケ レーヴィン
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-510079(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00-83/16
C08L 71/02
C08L 75/08
C08L 63/00
C08K 5/544
C08K 5/5415
C08G 18/50
C09D 5/16
C09D 183/04
C09D 171/00
C09D 175/08
C09D 183/06
C09D 7/63
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 成分Aとして、少なくとも1種のポリシロキサンを含有し、
- 成分Bとして、
式(I)による少なくとも1種のシリル基含有ポリエーテルおよび/または
式(I)によるシリル基含有ポリエーテルと1種もしくは複数種のイソシアナート含有化合物との反応生成物を含有し、
【化1】
[式中、
aは、1~100、好ましくは1~10、特に好ましくは2~5であり、
bは、1~500、好ましくは1~400、特に好ましくは1~300であり、
cは、0~500、好ましくは1~400、特に好ましくは1~300であり、
fは、0~2であり、
gは、1~3であるが、
ただし、g+fは、3であるものとし、
hは、1~10、好ましくは1~6、特に好ましくは1~3であり、
nは、1~10、好ましくは1~5、特に好ましくは1~3であるが、
ただし、添え字a、bおよびcを有する部分は、分子鎖において自由に順序変更が可能であるように分布しており、かつa、bおよびcの合計は、>3であるものとし、
R
1
は、ヘテロ原子としてO、Sおよび/またはNを含みうる飽和または不飽和の直鎖状または分岐状の有機炭化水素基であり、好ましくは、前記炭化水素基は、1~400個の炭素原子、好ましくは1~200個の炭素原子、特に好ましくは1~20個の炭素原子を含み、
R
1*
は、水素であるか、またはヘテロ原子としてO、Sおよび/もしくはNを含みうる飽和もしくは不飽和の直鎖状もしくは分岐状の有機炭化水素基であり、好ましくは、前記炭化水素基は、1~400個の炭素原子、好ましくは1~200個の炭素原子、特に好ましくは1~20個の炭素原子を含み、
R
2
は、互いに独立して、1~8個の炭素原子、好ましくは1~5個の炭素原子を有するアルキル基であり、
R
3
は、互いに独立して、1~8個の炭素原子、好ましくは1~5個の炭素原子を有するアルキル基であり、
R
4
は、互いに独立して、水素基、または1~20個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、または1~20個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状もしくは環状のクロロアルキル基であり、
R
5
は、互いに独立して、水素基、または1~20個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、または1~20個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状もしくは環状のクロロアルキル基、またはアリール基、またはアルカリール基である]
ここで、R
1*
は、好ましくは水素である、
かつ
- 成分Cとして、少なくとも1種の触媒を含有する、
硬化性組成物。
【請求項2】
前記シリル基含有ポリエーテルは、種々の繰返し単位を有し、該繰返し単位は、1つもしくは複数のアルキレンオキシド、グリシジルエーテル、二酸化炭素、環状無水物、イソシアナート、カプロラクトンもしくは環状カーボナートまたはそれらの混合物との反応によって製造されることを特徴とする、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記シリル基含有ポリエーテルは、1つもしくは複数の末端アルコキシシリル基および/または1つもしくは複数の側鎖アルコキシシリル基を有することを特徴とする、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記シリル基含有ポリエーテルは、>5:1、特に好ましくは>8:1、極めて特に好ましくは>10:1、特に11:1~20:1の、b対aの繰返し単位比を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリシロキサンは、直鎖状のもしくは1箇所もしくは複数箇所が分岐したSi-OH官能性ポリシロキサンであるか、または直鎖状のもしくは1箇所もしくは複数箇所が分岐したSiOR
3官能性ポリシロキサンであることを特徴とする、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリシロキサンは、アルコキシポリシロキサンであることを特徴とする、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリシロキサンは、少なくとも1つのエポキシ官能基および/またはアルコキシ官能基を有することを特徴とする、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
さらなる成分として、少なくとも1種のエポキシ官能性化合物と少なくとも1種のアミノ官能性化合物とを有することを特徴とする、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
エポキシ官能基対アミノ官能基の化学量論比は、5:0.1~0.1:5の範囲にあり、好ましくは1:1.5であり、特に好ましくは1:1であることを特徴とする、請求項8記載の組成物。
【請求項10】
前記エポキシ官能性化合物は、エポキシ官能性シランもしくはエポキシ官能性シロキサン、もしくは芳香族グリシジルエーテルもしくは脂肪族グリシジルエーテル、またはそれらの縮合物もしくは混合物であることを特徴とする、請求項8記載の組成物。
【請求項11】
前記アミノ官能性化合物は、アミノ官能性アルコキシシランであり、好ましくはアミノ官能性ジアルコキシシランまたはアミノ官能性トリアルコキシシランであることを特徴とする、請求項8記載の組成物。
【請求項12】
式(II)
R
6
dSi(OR
7)
e 式(II)
[式中、
0≦d≦2であり、0≦e≦4であり、かつd+e=4であり、
R
6は、互いに独立して、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、または1~8個の炭素原子を有するシクロアルキル基、または6~20個の炭素原子を有する芳香族基であり、
R
7は、互いに独立して、1~8個の炭素原子を有するアルキル基であり、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基またはイソプロピル基である]
による架橋剤を少なくとも1種有することを特徴とする、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
前記触媒は、例えば有機スズ触媒、チタナートもしくはジルコナート、アルミニウム、鉄、カルシウム、マグネシウム、亜鉛もしくはビスマスの有機金属化合物、ルイス酸もしくは有機酸/有機塩基、直鎖状もしくは分岐状もしくは環状のアミジン、グアニジンもしくはアミンまたはそれらの混合物といった、加水分解-縮合機序を促進する作用を示す触媒の群から選択されることを特徴とする、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
可塑剤、充填材、定着剤、レオロジー添加剤、安定剤、触媒、溶媒および乾燥剤、特に化学的水分乾燥剤の群から選択されるさらなる添加物質が含まれていることを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物100重量%を基準として、
成分Aを、1重量%~85重量%、好ましくは5重量%~75重量%、特に好ましくは20重量%~60重量%含有し、
成分Bを、1重量%~50重量%、好ましくは10重量%~40重量%、特に好ましくは15重量%~35重量%含有し、
成分Cを、0.01重量%~5重量%、好ましくは0.05重量%~3重量%、特に好ましくは0.1重量%~2重量%含有する、
請求項1から14までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項16】
少なくとも1種のエポキシ官能性化合物と少なくとも1種のアミノ官能性化合物とからなる成分Dを、全組成物を基準として0.1重量%~40重量%、好ましくは10.0重量%~35重量%、特に好ましくは20.0重量%~30.0重量%含有することを特徴とする、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
前記成分Dは、全組成物を基準として30重量%~95重量%、好ましくは40重量%~90重量%、特に好ましくは65重量%~85重量%のエポキシ官能性化合物と、全組成物を基準として0.1重量%~50重量%、好ましくは5重量%~40重量%、特に好ましくは10重量%~30重量%のアミノ官能性化合物とから構成されることを特徴とする、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
請求項1から17までのいずれか1項記載の硬化性組成物を含有する、塗装材、ラッカーおよびペイント。
【請求項19】
塗装材、ラッカーおよびペイントを製造するための、好ましくはバイオファウリングを防止または低減させるための、
請求項1から17までのいずれか1項記載の硬化性組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシロキサンをベースとする硬化性組成物、その製造方法およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの適用分野において、多種多様な汚れの付着を防止または少なくとも低減する表面塗装材が求められている。
【0003】
特に、例えば海水および/または淡水に曝されている船舶船体、ブイ、漁網、冷却用の引込管および排出管、海上掘削設備または水タンクといった永続的な水しぶきに曝される構造物では、生物の付着や増殖(バイオファウリング)によってかなりの経済的損失が生じる。船舶の場合には、例えば摩擦の増大とそれに伴う燃料消費量の増加によってこうした経済的損失が生じる。また静的構造物の場合には、波や流れに対する抵抗が増大することによって表面が機械的損傷も受け、これによってメンテナンスサイクルが短くなり、ひいては耐用寿命も短くなる。
【0004】
外装塗料の場合にも、微生物/藻類の繁茂を防止または遅延させる塗装材が求められている。
【0005】
従来技術から、表面が自己研磨特性を示す表面塗装材が知られている。自己研磨特性は、特に分解性ポリマー塗装材の使用により達成可能である。この分解性ポリマーコーティングは、その連続的な分解挙動によって表面を常に更新する。こうしたポリマー特性によって、多種多様な付着汚れをこうした表面とともに剥がし落とすことができ、こうして表面が汚れのない状態に保たれる。こうした作用を、落書き防止塗装材、氷結防止塗装材、イージー・トゥー・クリーン塗装材およびアンチダートピックアップ塗装材だけでなく、バイオファウリングの防止にも利用することができる。
【0006】
防汚コーティングの分野では、水と接触すると分解するポリマーが知られている。主に、アクリラートエステル/シリル化アクリラートが使用されている。特別な物質クラスの1つとして、ポリ(エステル)が挙げられる。この場合、モノマーの選択、ポリマー構成およびモル重量によって分解特性が決定づけられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術から、バインダー系のポリマーが、モノマーセグメント中にカルボン酸基を有するポリマーのトリアルキルスズ誘導体である繁茂防止塗料組成物が知られている。この組成物によって塗装材塗膜が形成され、この塗膜が海水中で徐々に溶解することで、有機スズ化合物の放出によって生物繁茂物の付着が妨げられる。しかし、有機スズ化合物は神経毒性が高いことが背景となり、海洋汚染の問題により、近年こうした組成物の使用は法的規制を受けるようになった。
【0008】
したがって、微生物/藻類の付着を防止できる塗装材によって生物繁茂を防止または遅延させるべく、こうした塗装材の製造に適したバインダー系が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
驚くべきことに、
- 成分Aとして、少なくとも1種のポリシロキサンを含有し、
- 成分Bとして、少なくとも1種のシリル基含有ポリエーテルおよび/またはシリル基含有ポリエーテルと1種もしくは複数種のイソシアナート含有化合物との反応生成物を含有し、かつ
- 成分Cとして、少なくとも1種の触媒を含有する
硬化性組成物を使用することによって、こうした特性を示す塗装材を製造できることが判明した。
【発明の効果】
【0010】
驚くべきことに、本発明による組成物を使用した場合、親水性成分と疎水性成分とを組み合わせることによって、両親媒特性を示す表面を有するとともにそれによって生物繁茂物に抗し得る塗装材を製造できることが判明し得た。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において化学(経験)式を用いる場合、記載した添え字は絶対数だけでなく平均値を表す場合もある。
【0012】
高分子化合物に関して、添え字は、好ましくは平均値を表す。
【0013】
特に明記しない限り、パーセンテージは、重量%で示すデータである。
【0014】
以下に測定値を示す場合、特に明記しない限り、これらの測定は、標準条件(25℃および1013ミリバール)で実施したものである。
【0015】
以下に平均値を示す場合、特に明記しない限り、これは重量平均である。
【0016】
好ましくは、本発明による組成物は、種々の繰返し単位を有するシリル基含有ポリエーテルを有する。これらの繰返し単位は、1つもしくは複数のアルキレンオキシド、グリシジルエーテル、二酸化炭素、環状無水物、イソシアナート、カプロラクトンもしくは環状カーボナートまたはそれらの混合物との反応によって製造される。
【0017】
これらの繰返し単位は、好ましくは、ランダムな分布および/またはブロック状の分布および/または勾配に沿った分布を示すことができる。
【0018】
好ましくは、シリル基含有ポリエーテルは、1つもしくは複数の末端アルコキシシリル基および/または1つもしくは複数の側鎖アルコキシシリル基を有する。
【0019】
好ましくは、成分Bは、式(I):
【化1】
[式中、
aは、1~100、好ましくは1~10、特に好ましくは2~5であり、
bは、1~500、好ましくは1~400、特に好ましくは1~300であり、
cは、0~500、好ましくは1~400、特に好ましくは1~300であり、
fは、0~2であり、
gは、1~3であるが、
ただし、g+fは、3であるものとし、
hは、1~10、好ましくは1~6、特に好ましくは1~3であり、
nは、1~10、好ましくは1~5、特に好ましくは1~3であるが、
ただし、添え字a、bおよびcを有する部分は、分子鎖において自由に順序変更が可能であるように分布しており、かつa、bおよびcの合計は、>3であるものとし、
R
1は、ヘテロ原子としてO、Sおよび/またはNを含みうる飽和または不飽和の直鎖状または分岐状の有機炭化水素基であり、好ましくは、前記炭化水素基は、1~400個の炭素原子、好ましくは1~200個の炭素原子、特に好ましくは1~20個の炭素原子を含み、
R
1*は、水素であるか、またはヘテロ原子としてO、Sおよび/もしくはNを含みうる飽和もしくは不飽和の直鎖状もしくは分岐状の有機炭化水素基であり、好ましくは、前記炭化水素基は、1~400個の炭素原子、好ましくは1~200個の炭素原子、特に好ましくは1~20個の炭素原子を含み、
R
2は、互いに独立して、1~8個の炭素原子、好ましくは1~5個の炭素原子を有するアルキル基であり、
R
3は、互いに独立して、1~8個の炭素原子、好ましくは1~5個の炭素原子を有するアルキル基であり、
R
4は、互いに独立して、水素基、または1~20個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、または1~20個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状もしくは環状のクロロアルキル基であり、
R
5は、互いに独立して、水素基、または1~20個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、または1~20個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状もしくは環状のクロロアルキル基、またはアリール基、またはアルカリール基である]
によるシリル基含有ポリエーテルおよび/または式(I)によるシリル基含有ポリエーテルと1種もしくは複数種のイソシアナート含有化合物との反応生成物であり、ここで、R
1*は、好ましくは水素である。
【0020】
シリル基含有ポリエーテルは、欧州特許第2093244号明細書(EP 2093244 B1)、欧州特許第2289972号明細書(EP 2289972 B1)または欧州特許出願公開第2289961号明細書(EP 2289961 A1)に記載の方法により製造される。
【0021】
シリル基含有ポリエーテルをどのようにすれば製造できるかは、当業者に十分に知られている。
【0022】
添え字a、bおよびcは、好ましい繰返し単位を表す。例えば、二酸化炭素、環状無水物、イソシアナート、カプロラクトンもしくは環状カーボナートまたはそれらの混合物との反応によって生じるさらなる繰返し単位d、e、fなども同様に考えられる。
【0023】
好ましい成分Bの製造には、例えばDYNASYLAN(登録商標)GLYMOまたはDYNASYLAN(登録商標)GLYEO(Evonik Degussa GmbHの商標)なる商品名で入手可能である3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランまたは3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランのような有機アルコキシシラン化合物が使用される。イソシアナト官能性アルコキシシラン化合物も使用可能であり、例えば3-イソシアナトプロピルトリメトキシシランを、Geniosil(登録商標)GF 40(Wacker Chemie社)またはSilquest(登録商標)A-Link 35、Silquest* Y-5187(Momentive社)または3-イソシアナトプロピルトリエトキシシランVESTANAT(登録商標)EP-IPMS(Evonik Industries AG社)、KBE-9007(ShinEtsu社)またはSilquest(登録商標)A-1310/A-Link 25(Momentive社)なる商品名で入手することができる。これらは、繰返し単位(a)である。
【0024】
繰返し単位(b)および/または(c)の製造には、概して、当業者に知られているいずれのアルキレンオキシドを使用してもよい。好ましくは例えば、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、1,2-エポキシ-2-メチルプロパン(イソブチレンオキシド)、エピクロロヒドリン、2,3-エポキシ-1-プロパノール、1,2-エポキシブタン(ブチレンオキシド、以下、BOとも略記)、2,3-エポキシブタン、2,3-ジメチル-2,3-エポキシブタン、1,2-エポキシペンタン、1,2-エポキシ-3-メチルペンタン、1,2-エポキシヘキサン、1,2-エポキシシクロヘキサン、1,2-エポキシヘプタン、1,2-エポキシオクタン、1,2-エポキシノナン、1,2-エポキシデカン、1,2-エポキシウンデカン、1,2-エポキシドデカン、スチレンオキシド(以下、SOとも略記)、1,2-エポキシシクロペンタン、1,2-エポキシシクロヘキサン、ビニルシクロヘキセンオキシド、(2,3-エポキシプロピル)ベンゼン、ビニルオキシラン、3-フェノキシ-1,2-エポキシプロパン、2,3-エポキシメチルエーテル、2,3-エポキシエチルエーテル、2,3-エポキシイソプロピルエーテル、(3,4-エポキシブチル)ステアラート、4,5-エポキシペンチルアセタート、2,3-エポキシプロパンメタクリラート、2,3-エポキシプロパンアクリラート、グリシジルブチラート、メチルグリシダート、エチル-2,3-エポキシブタノアート、4-(トリメチルシリル)ブタン-1,2-エポキシド、4-(トリエチルシリル)ブタン-1,2-エポキシド、3-(パーフルオロメチル)-1,2-エポキシプロパン、3-(パーフルオロエチル)-1,2-エポキシプロパン、3-(パーフルオロブチル)-1,2-エポキシプロパン、3-(パーフルオロヘキシル)-1,2-エポキシプロパン、4-(2,3-エポキシプロピル)モルホリン、1-(オキシラン-2-イルメチル)ピロリジン-2-オンが使用される。
【0025】
上記アルキレンオキシドはいずれも、単独で使用することも、任意に混合して使用することもできる。エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドを使用することが特に好ましい。好ましくは、成分Bは、繰返し単位(b)を、繰返し単位(a)および/または(c)よりも高い割合で有する。
【0026】
好ましくは、シリル基含有ポリエーテルについて、b対aの繰返し単位比は、>5:1、特に好ましくは>8:1、極めて特に好ましくは>10:1であり、特にb対aの比は11:1~20:1である。水和後の繰返し単位(b)の割合が高いと、ヒドロゲルの形成が生じかつ/または促進されるものと考えられる。それによって基材表面(船舶船体、ブイ、漁網など)が「マスク」され、こうした基材表面が微生物によって表面と認識されなくなるものと推測される。
【0027】
好ましくは、シリル基含有ポリエーテルの製造方法は、シリル基含有ポリエーテルのNCO値が<0.1重量%となるように行われる。
【0028】
好ましくは、イソシアナート含有化合物は、一官能性、二官能性および/または三官能性イソシアナートであり、これらは、メチルイソシアナート、エチルイソシアナート、プロピルイソシアナート、ブチルイソシアナート、さらなる直鎖状もしくは分岐状または環状のC4~C20アルキルモノイソシアナート、特にラウリルイソシアナート、ステアリルイソシアナート、トルエン-2,4-ジイソシアナート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアナートまたはメチレンジフェニルジイソシアナート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDI)、2,2,4-トリメチルヘキサン-1,6-ジイソシアナート(TMDI)、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアナート(PMDI)、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、4,4’-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(H12MDI)、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、トリフェニルメタントリイソシアナート、ベンゼン-1,3,5-トリイソシアナートおよびトルエン-2,4,6-トリイソシアナートの群から選択される。
【0029】
シリル基含有ポリエーテルのウレタン化は、米国特許第9,035,011号明細書(US 9,035,011)(欧州特許第2636696号明細書(EP 2636696))または米国特許第8,993,706号明細書(US 8,993,706)、米国特許第9,441,145号明細書(US 9,441,145)(欧州特許第2289972号明細書(EP 2289972))により当業者に知られている。
【0030】
好ましくは、ポリシロキサンは、直鎖状のもしくは1箇所もしくは複数箇所が分岐したSi-OH官能性ポリシロキサンであるか、または直鎖状のもしくは1箇所もしくは複数箇所が分岐したSiOR3官能性ポリシロキサンである。
【0031】
ヒドロキシ官能性シロキサンは、特にEvonik IndustriesよりPolymer OHなる商品名で入手可能であるが、例えばDow CorningにてDOW CORNING(登録商標)3-3602、XIAMETER(登録商標)OHX-4081、DOW CORNING(登録商標)5-0299、XIAMETER(登録商標)OHX-4000 POLYMER 2000CS、XIAMETER(登録商標)OHX-4081、XIAMETER(登録商標)PMX-0156 SILANOL FLUIDなる製品名でも入手可能である。
【0032】
アルコキシ官能性メチルシロキサンオリゴマーまたはアルコキシ官能性メチル/フェニルシロキサンオリゴマーは、ShinEtsu社にて入手可能であり、これは例えば、KC-89S、KR-500、X 40-9225、X 40-9246、X 40-9250、KR-401N、X-40-9227、KR-510、KR-9218、KR-213である。例えばエポキシ官能基のようなさらなる官能基を有するハイブリッド体も入手可能であり、これは例えば、X-41-1053、X-41-1059A、X-24-9590、KR-516である。
【0033】
メトキシ官能性メチルシロキサンおよびメトキシ官能性メチル/フェニルシロキサンは、Dow CorningよりDow Corning(登録商標)US-CF 2403 Resin、US-CF 2405 Resin、3037 Intermediate、3074 Intermediate、RSN-5314 Intermediateなる商品名で入手可能である。シラノール官能性メチル/フェニル樹脂は、RSN-0409 HS Resin、RSN-0431 HS Resin、RSN-0804 Resin、RSN-0805 Resin、RSN-0806 Resin、RSN-0808 Resin、RSN-0840 Resinなる商品名で販売されている。
【0034】
エポキシ官能性シロキサンは、特にEvonik IndustriesよりTEGOMER(登録商標)E-Si 2330なる商品名で、またはShinEtsuよりKF-105、X22-163 a、X22-163 b、X22-163 c、X22-169 As、X22-169 Bなる商品名で、またはDow Corning TorayよりAY 42-119、BY 16-760、BY 16-839、BY 16-869、BY 16-870、BY 16-877なる商品名で入手可能である。エポキシ化合物は、特にMomentive/HexionよりEpon、Eponex、Epalloyなる商品名で、またはIpox Chemicalsよりipox ER、ipox CLおよびipox RDの商品名で市販されている。
【0035】
アルコキシ官能性メチル/フェニルシリコーン樹脂およびアルコキシ官能性メチルシリコーン樹脂は、対応するシラノールに部分的に加水分解された形態でも供給され、これらはWacker ChemieよりSILRES(登録商標)なる商品名で市販されており、例えばREN 50、REN 60、REN 80、KX、HK 46、MSE 100またはSY 300、IC 836、REN 168、SY 409、IC 232、SY 231、IC 368、IC 678である。
【0036】
こうしたシリコーン樹脂の製造は、長い間文献から知られており(これに関しては、W.Noll-Chemie und Technologie der Silicone,Wiley-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA, Weinheim, 1960を参照のこと)、独国特許第3412648号明細書(DE 3412648)にも記載されている。
【0037】
ポリシロキサンは、好ましくはアルコキシポリシロキサンである。
【0038】
さらなる成分として、前記組成物は、好ましくは、少なくとも1種のエポキシ官能性化合物と少なくとも1種のアミノ官能性化合物とを含有する。
【0039】
好ましくは、エポキシ官能性化合物は、エポキシ官能性シランもしくはエポキシ官能性シロキサン、もしくは芳香族グリシジルエーテルもしくは脂肪族グリシジルエーテル、またはそれらの縮合物もしくは混合物である。
【0040】
好ましいエポキシ官能性化合物は、エピクロロヒドリンから誘導されたグリシジルエーテル、グリシジルエステルおよびグリシジルアミンであり、より好ましいのは、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ノボラックのグリシジルエーテル(エポキシノボラック樹脂)、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、t-ブチルグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、テトラグリシジルメチレンジアニリン、トリグリシジルアミノフェノール、1,6-ヘキサンジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメチルジグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリトリトールテトラグリシジルエーテル、臭素化グリシジルエーテル、例えばテトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌラート、アリルグリシジルエーテル、ポリ(アルキレングリコール)ジグリシジルエーテル、ならびに不飽和炭化水素および不飽和脂肪または脂肪酸のエポキシ化合物である。同様に好ましいのは、オリゴマー状およびポリマー状のエポキシ化合物であって、エポキシ基含有ポリオレフィン、エポキシ基含有シロキサン、または好ましくはOH官能性化合物によるジグリシジルエーテルからの連鎖延長によって形成されるエポキシ化合物から選択されるものである。1分子あたり2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物が特に好ましい。
【0041】
好ましくは、アミノ官能性化合物は、アミノ官能性アルコキシシランであり、好ましくはアミノ官能性ジアルコキシシランまたはアミノ官能性トリアルコキシシランである。こうしたアミノ官能性ジアルコキシシランまたはアミノ官能性トリアルコキシシランは市販されており、例えばDynasylan(登録商標)(Evonik Industries AG社)、Silquest(登録商標)(Momentive社)、KBE903、KBM903、KBM603、KBE603、KBM602(ShinEtsu社)、Geniosil(登録商標)(Wacker Chemie社)またはZ-6011、AZ-720、Z-6610、Z-6015、Z-6020Z、Z-6094、Z-6021、1-6436Z-6023、AY43-009(Dow Corning社)なる商品名で市販されている。
【0042】
好ましくは、エポキシ官能基対アミノ官能基の化学量論比は、5:0.1~0.1:5の範囲にあり、好ましくは1:1.5であり、特に好ましくは1:1である。
【0043】
好ましくは、本発明による組成物は、式(II)
R6
dSi(OR7)e 式(II)
[式中、
0≦d≦2であり、0≦e≦4であり、かつd+e=4であり、
R6は、互いに独立して、1~8個の炭素原子を有するアルキル基、または1~8個の炭素原子を有するシクロアルキル基、または6~20個の炭素原子を有する芳香族基であり、
R7は、互いに独立して、1~8個の炭素原子を有するアルキル基であり、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基またはイソプロピル基である]
による架橋剤を少なくとも1種有する。
【0044】
アルキル基は、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基およびt-ブチル基であってよい。芳香族部分は、例えばフェニル部分であってもよい。好ましい置換基Rは、メチル、またはフェニル、またはメチルとフェニルとの混合体であり、その際、Ph:Me比は、0:1~1:0の範囲であってよい。
【0045】
好ましくは、触媒は、例えば有機スズ触媒、チタナートもしくはジルコナート、アルミニウム、鉄、カルシウム、マグネシウム、亜鉛もしくはビスマスの有機金属化合物、ルイス酸もしくは有機酸/有機塩基、直鎖状もしくは環状のアミジン、グアニジンもしくはアミンまたはそれらの混合物といった、加水分解-縮合機序を促進する作用を示す触媒の群から選択される。
【0046】
好ましい触媒は、当業者に知られているアルコキシシランのための加水分解/縮合触媒である。好ましくは、硬化触媒として、有機スズ化合物、例えばジブチルスズジラウラート、ジブチルスズジアセチルアセトナート、ジブチルスズジアセタート、ジブチルスズジオクトアートまたはジオクチルスズジラウラート、ジオクチルスズジアセチルアセトナート、ジオクチルスズジケタノアート、ジオクチルスタノキサン、ジオクチルスズジカルボキシラート、ジオクチルスズオキシドが使用され、好ましくは、ジオクチルスズジアセチルアセトナート、ジオクチルスズジラウラート、ジオクチルスズジケタノアート、ジオクチルスタノキサン、ジオクチルスズジカルボキシラート、ジオクチルスズオキシドが使用され、特に好ましくは、ジオクチルスズジアセチルアセトナートおよびジオクチルスズジラウラートが使用される。さらに、亜鉛塩、例えばオクタン酸亜鉛、亜鉛アセチルアセトナートおよび2-エチルカプロン酸亜鉛、またはテトラアルキルアンモニウム化合物、例えばN,N,N-トリメチル-N-2-ヒドロキシプロピルアンモニウムヒドロキシド、N,N,N-トリメチル-N-2-ヒドロキシプロピルアンモニウム-2-エチルヘキサノアートまたはコリン-2-エチルヘキサノアートを使用することもできる。オクタン酸亜鉛(2-エチルヘキサン酸亜鉛)およびテトラアルキルアンモニウム化合物の使用が好ましく、オクタン酸亜鉛の使用が特に好ましい。さらに好ましいのは、ビスマス触媒、例えばTIB Kat(TIB Mannheim)またはBorchi(登録商標)触媒、チタン酸塩、例えばチタン(IV)イソプロポキシド、鉄(III)化合物、例えば鉄(III)アセチルアセトナート、アルミニウム化合物、例えばアルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリ-s-ブトキシドおよび他のアルコキシド、例えばアルミニウムアセチルアセトナート、カルシウム化合物、例えばエチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウムもしくはカルシウムジアセチルアセトナート、またはさらにはアミン、例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ-5-エン、N,N-ビス-(N,N-ジメチル-2-アミノエチル)メチルアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルフェニルアミン、N-エチルモルホリンなどである。有機または無機のブレンステッド酸、例えば酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸または塩化ベンゾイル、塩酸、リン酸、そのモノエステルおよび/またはジエステル、例えばリン酸ブチル、リン酸(イソ)プロピル、リン酸ジブチルなども触媒として好ましい。さらに好ましいのは、グアニジン基含有有機化合物およびグアニジン基含有有機ケイ素化合物である。当然のことながら、複数の触媒の組合せ物を使用することも可能である。さらに、国際公開第2005/100482号(WO 2005/100482)に記載されているように、光潜在性塩基を触媒として使用することも可能である。
【0047】
硬化触媒は、成分(A)と化合物(b1)と任意のアルコキシシラン化合物との合計重量を基準として、0.1重量%~5.0重量%、好ましくは0.2重量%~4.0重量%、特に好ましくは0.5重量%~3重量%の量で使用される。
【0048】
好ましくは、本発明による組成物は、可塑剤、充填材、溶媒、定着剤、レオロジー添加剤、安定剤、触媒、溶媒および乾燥剤、特に化学的水分乾燥剤の群から選択されるさらなる添加物質を含有する。
【0049】
本発明による硬化性混合物が、例えば配合成分によって導入されるかまたはその後に詰替え処理もしくは貯蔵によって導入される水や湿分を結合させるための乾燥剤を含む場合、有利となり得る。乾燥剤として、本発明による硬化性混合物において、原則として従来技術から知られているいずれの乾燥剤を使用してもよい。化学的乾燥剤として好ましいのは、ビニルトリメトキシシラン(Dynasylan(登録商標)VTMO、EvonikまたはGeniosil(登録商標)XL 10、Wacker)、ビニルトリエトキシシラン(Dynasylan(登録商標)VTEO、EvonikまたはGeniosil(登録商標)GF 56、Wacker)、N-トリメトキシシリルメチル-O-メチルカルバマート(Geniosil(登録商標)XL 63、Wacker)、N-ジメトキシ(メチル)シリルメチル-O-メチルカルバマート、N-メチル[3-(トリメトキシシリル)-プロピル]カルバマート(Geniosil(登録商標)GF 60、Wacker)、ビニルジメトキシメチルシラン(Geniosil(登録商標)XL 12、Wacker)、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン(Geniosil(登録商標)GF 58、Wacker)、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミン(Dynasylan(登録商標)1122、Evonik)、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン(Dynasylan(登録商標)1124)、N-ジメトキシ(メチル)シリルメチル-O-メチルカルバマート(Geniosil(登録商標)XL 65、Wacker)もしくはオリゴマービニルシラン、例えばDynasylan(登録商標)6490およびDynasylan(登録商標)6498(共にEvonikより入手可能)の単独物またはそれらの混合物である。より好ましいのは、ビニルトリメトキシシラン(Dynasylan(登録商標)VTMO、EvonikまたはGeniosil(登録商標)XL 10、Wacker AG)、ビニルトリエトキシシラン(Dynasylan(登録商標)VTEO、EvonikまたはGeniosil(登録商標)GF 56、Wacker)から選択される乾燥剤である。さらに、化学的乾燥に加えてまたはこれに代えて、例えば好ましくはゼオライト、モレキュラーシーブ、無水硫酸ナトリウムまたは無水硫酸マグネシウムといった物理的乾燥剤を使用する場合に有利となり得る。
【0050】
本発明による硬化性組成物中の乾燥剤の割合は、アルコキシシリル基含有ポリマーの使用量を基準として、好ましくは0重量%超~5重量%、好ましくは0.2重量%~3重量%である。
【0051】
溶媒の使用が有用である場合もある。その際溶媒は、例えば未架橋バインダーの粘度を低下させる役割や、表面への吸着を促進する役割を果たし得る。溶媒としては、原則としていずれの溶媒および溶媒混合物も考慮される。その際、適切な溶媒の選択は、脂肪族および芳香族置換基を有するアルカン、アルケン、アルキン、ベンゼンおよび芳香族化合物、カルボン酸エステル、直鎖状および環状エーテルの群から行うことができ、また高圧の場合には、二酸化炭素、ハロゲン化脂肪族または芳香族炭化水素、ケトンまたはアルデヒド、ラクトン(γ-ブチロラクトン)、ラクタム(例えばN-メチル-2-ピロリドン)、ニトリル、ニトロ化合物、第3級カルボン酸アミド(ジメチルホルムアミド)、尿素誘導体、例えばテトラメチル尿素またはジメチルプロピレン尿素(DMPU)、スルホキシド、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホン、例えばスルホラン、炭酸エステル、例えばジメチルカーボナートまたはエチレンカーボナートの群から行うこともできる。例えば水、メタノール、エタノール、n-イソプロパノール、イソプロパノールならびに他のアルコール、第一級アミン、第二級アミン、カルボン酸およびそのエステル、ならびに無水物、第一級アミド、第二級アミド、例えばホルムアミドといったプロトン性溶媒も挙げられる。例えばt-ブチルメチルエーテルなどのエーテル、例えば酢酸エチルまたは酢酸n-ブチル、酢酸t-ブチルまたは炭酸ジエチルなどのエステル、ならびに例えばエタノール、およびプロパノールおよびブタノールの種々の位置異性体などのアルコールといった、コーティング用途の分野で許容される溶媒が好ましい。さらに、例えばベンゼン、トルエンまたはナフサ留分などの芳香族および/または脂肪族溶媒が好ましい溶媒である。
【0052】
必要に応じて、本発明による硬化性混合物は、補助架橋剤、難燃剤、脱気剤、アミン-エポキシ反応のための硬化促進剤、抗菌剤および防腐剤、染料、着色剤および顔料、凍結防止剤、殺菌剤および/または反応性希釈剤ならびに錯化剤、噴霧助剤、湿潤剤、香料、光保護剤、ラジカル捕捉剤、UV吸収剤および安定剤、特に熱的ならびに/または化学的負荷ならびに/または紫外光および可視光による負荷に対する安定剤を含む群から選択される1種または複数種の物質をさらに含有することができる。
【0053】
UV安定剤は、好ましくはヒンダードフェノール系またはベンゾトリアゾール系の公知の製品である。光安定剤として、例えばいわゆるHALSアミンを使用することができる。安定剤として、当業者に知られている例えばTinuvin(登録商標)安定剤(BASF)の製品または製品組合せ物を使用することができ、例えば、Tinuvin(登録商標)1130、Tinuvin(登録商標)292を使用することも、さらにはTinuvin(登録商標)400、好ましくはTinuvin(登録商標)1130をTinuvin(登録商標)292と組み合わせて使用することもできる。その使用量は、必要とされる安定化の程度によって決まる。
【0054】
塗装材系における着色には、特に例えば金属酸化物やスピネル顔料などの無機顔料が適している。防食性を向上させるためには、さらに例えばリン酸亜鉛などの典型的な防食顔料が使用される。
【0055】
充填材として、好ましくは、沈降または粉砕チョーク、無機炭酸塩全般、沈降または粉砕ケイ酸塩、沈降法または高熱法シリカ、ガラス粉、中空ガラスビーズ(いわゆるバブル)、金属酸化物、例えばTiO2、Al2O3、天然または沈降硫酸バリウム、石英粉、砂、アルミニウム三水和物、タルク、マイカ、クリストバライト粉、強化繊維、例えばガラス繊維または炭素繊維、長繊維または短繊維ウォラストナイト、コルク、カーボンブラックまたはグラファイトが使用される。疎水化充填材製品は、比較的水の浸入が少なく配合物の貯蔵安定性が向上することから、疎水化充填材を使用することが有利な場合がある。
【0056】
好ましくは、本発明による組成物は、該組成物100重量%を基準として、
成分Aを、1重量%~85重量%、好ましくは5重量%~75重量%、特に好ましくは20重量%~60重量%含有し、
成分Bを、1重量%~50重量%、好ましくは10重量%~40重量%、特に好ましくは15重量%~35重量%含有し、
成分Cを、0.01重量%~5重量%、好ましくは0.05重量%~3重量%、特に好ましくは0.1重量%~2重量%含有する。
【0057】
好ましくは、本発明による組成物は、少なくとも1種のエポキシ官能性化合物と少なくとも1種のアミノ官能性化合物とからなる成分Dを、全組成物を基準として0.1重量%~40重量%、好ましくは10.0重量%~35重量%、特に好ましくは20.0重量%~30.0重量%含有することができる。
【0058】
好ましくは、成分Dは、全組成物を基準として30重量%~95重量%、好ましくは40重量%~90重量%、特に好ましくは65重量%~85重量%のエポキシ官能性化合物と、全組成物を基準として0.1重量%~50重量%、好ましくは5重量%~40重量%、特に好ましくは10重量%~30重量%のアミノ官能性化合物とから構成される。
【0059】
好ましくは、成分Dは、アミノ官能性化合物よりもエポキシ官能性化合物をより多く含む。
【0060】
好ましくは、本発明による組成物の含水量は、<1000ppm、好ましくは<200ppm、特に好ましくは<50ppmである。
【0061】
乾燥剤の添加により、0ppmまでの含水量を達成することが可能である。
【0062】
有利には、本発明による組成物は、特に一成分系において組成物の貯蔵安定性を高めるのに十分な量の乾燥剤を含む。
【0063】
貯蔵場所、貯蔵様式およびさらなる添加物質の有無に応じて、当業者は乾燥剤の十分な量を決定することができる。
【0064】
本発明による組成物を二成分系として提供することも考えられる。この場合、成分Aおよび成分Bと成分Cとが別個に提供される。本発明による組成物の提供を、各塗装材の既存の製造プロセスに適合させることができる。
【0065】
二成分系のもう1つの変形形態は、本発明の組成物において成分Dを存在させることである。この場合、エポキシ官能性化合物分と成分Aおよび成分Bとが一緒に提供されるが、成分Cはこれとは別個に提供されることが望ましく、また、成分Dのアミン官能性化合物も、必要に応じてそれ以外の成分とは別個に提供されることが望ましい。
【0066】
本組成物のさらなる変形形態が可能であることは、当業者には自明である。本組成物を、製造および使用時の処理の状況にその都度適合させることができる。
【0067】
本発明のもう1つの対象は、本発明による硬化性組成物を含有する塗装材、ラッカーおよびペイントである。
【0068】
もう1つの発明は、塗装材、ラッカーおよびペイントを製造するための、好ましくはバイオファウリングを防止または低減させるための、本硬化性組成物の使用である。
【0069】
基材に塗布された本発明による塗装材系は、空中湿分の侵入下に、触媒作用による加水分解-縮合架橋によって硬化する。この場合、高温での強制乾燥と、それに付随して生じるオーブン内に十分な水分を導入して行う加水分解-縮合による化学架橋との組合せは、互いに相容れないものではなく、これは被覆すべき基材に大きく依存している。
【実施例】
【0070】
本発明によるこれらの対象につき以下に例示的に説明するが、これは、本発明をこれらの例示的な実施形態に限定することを意図するものではない。
【0071】
方法:
乾燥時間の測定
バインダーにおける触媒の触媒活性の評価には、乾燥時間測定機器(Drying Recorder)を用いた乾燥時間の測定が適している。この種の試験方法は、ASTM D5895に記載されている。この試験方法と同様に、BK3型Drying Recorder(The Mickle Laboratory Engineering Co. Ltd., Goose Green, Gomshall, Guildford, Surrey GU5 9LJ., U.K.)を用いて乾燥時間の測定を行った。その際、バーコータ(Erichsen 360型、湿潤塗膜厚100μm)を用いてバインダー被膜を標準ガラス片(30×2.5cm×2mm)に塗布した。これらの標準ガラス片は、アセトン、次いでエタノール/脱塩水混合物で、ダスト、汚れおよび油状付着物を予め取り除いておいたものである。その後、反対側のレバーを使用して、スライドを左方向へ開始位置に移動させた。次に、スクライブ測定用の針を開いて試料ガラス板上へと下げた。試験期間を24時間に設定し、測定を開始した。24時間後、48時間での値を測定できるようにするため、必要に応じて針を出発地点に戻した。試験期間の終了後、スクライブ測定用の針を折り上げて畳み、ガラス板を評価のために取り出した。乾燥し始めた時点と、完全に乾燥しきった時点とを、付属のタイムスケールにより読み取った。
【0072】
不活性な作業様式
「不活性」条件下とは、装置内のガス空間が、不活性ガス、例えば窒素またはアルゴンで満たされていることと理解される。これは装置のフラッディングにより達成され、その際、場合によって、その後に不活性ガスを弱く流すことによって、持続的な不活性化が保証される。
【0073】
塗布
バインダー組成物の塗布は、概して吹付け塗布によって行われるが、例えば刷毛塗り、ローラ塗り、流し塗り、浸漬塗り、拭い処理による塗布および流延塗布といった他の塗布技術によって行うこともできる。基材としては、例えば鋼、鋳鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、鋳造アルミニウムまたは溶融亜鉛メッキ鋼のような金属下地が適している。密着性を向上させるために、基材をサンドブラストまたはサンディングによって粗面化させることができる。ガラスやプラスチックといった非金属基材や、セラミック、石材、コンクリートなどの無機基材を使用することもできる。
【0074】
次いで、基材に塗布された本発明によるバインダー組成物は、空中湿分の侵入下に、触媒作用による加水分解-縮合架橋によって硬化する。この場合、高温での強制乾燥と、それに付随して生じるオーブン内に十分な水分を導入して行う加水分解-縮合による化学架橋との組合せは、互いに相容れないものではない。
【0075】
触媒を添加する加水分解-縮合塗装材系のもう1つの利点は、周囲の空中湿分の水分が存在するまで硬化が起こらないため、密閉容器の場合にはポットライフの問題の影響を受けないという点にある。従来の純粋に物理的に乾燥する例えばシリコーン樹脂ベースの塗装材系は、完全な機械的および化学的安定性を達成するために最初に250℃の材料温度で少なくとも30分間熱処理する必要があるが、これとは対照的に、ここではオーブン乾燥のエネルギーを完全に削減することができる。
【0076】
粘度
粘度を、ギャップ幅1mmのプレート/プレート配置でのAnton ParrのMCR301レオメーターを用いて、25℃でせん断速度に応じて求めた。上方の板の直径は、40mmであった。せん断速度10s-1での粘度を読み取った。これを、表2および表3に示す。多分散度および平均モル重量を求めるためのGPC測定を、以下の測定条件で行った:カラム組合せSDV 1000/10000Å(長さ65cm)、温度30℃、移動相としてTHFを使用、流量1ml/分、試料濃度10g/l、RI検出器、ポリプロピレングリコール標準物質(6000g/モル)に対する評価。
【0077】
NCO含有率
DIN EN ISO 11909により、ジブチルアミンとの反応後に、0.1M塩酸を用いた逆滴定によってNCO含有率をパーセントで求めた。
【0078】
他の条件
本発明の範囲でデータを%で示す場合、特に明記しない限り、これらのデータは重量%で示したものである。組成物の場合、特に明記しない限り、%で示したデータは、全組成物全体を基準としたものである。以下に平均値を示す場合、特に明記しない限り、これは数平均である。以下に測定値を示す場合、特に明記しない限り、これらの測定値は、圧力101325Pa、温度23℃および周囲の相対大気湿度約40%で測定したものである。
【0079】
材料および機器:
・ガラス板、メーカー:Glaeserei Glaenzer、寸法:90×150×5mm、
・PVC板、材料番号:4364002858、KVG Kunststoff Betriebs GmbH、
・300μmバーコータ、メーカー:Simex、
・300μmキューブコータ、メーカー:TQC GmbH、
・Dispermat、VMA Getzmann、テフロンディスク付属、
・ガラス製の広口フラスコ。
【0080】
使用した化学物質および原材料:
成分A(ポリシロキサン)
4種のポリシロキサンを使用した。
【0081】
【0082】
成分B(シリル基含有ポリエーテルとの反応生成物)
3種の成分B1~B3を使用したが、ただし、B1およびB2は、繰返し単位(b)を有しない。
【0083】
B1は、欧州特許第1093482号明細書(EP 1093482)(米国特許第6,884,852号明細書(US 6,884,852))に記載の方法によって製造された、末端にトリメトキシシリル基を有するポリウレタンであり、該ポリウレタンの粘度は、35,000mPa・sである。
【0084】
B2の製造
5リットルのオートクレーブに、平均モル重量2000g/モルのポリプロピレングリコール400gを装入し、これを、(全バッチを基準として)150ppmのヘキサシアノコバルト酸亜鉛複合金属シアン化物触媒と混合した。不活性化のために、反応器に3バールまで窒素を注入し、次に減圧して標準圧力とした。この操作をさらに2回繰り返した。撹拌しながら反応器の内容物を130℃に加熱し、そして排気して約20ミリバールとすることで、易揮発性成分を除去した。30分後、排気した反応器にプロピレンオキシド80gを計量供給することにより、触媒を活性化させた。内圧が上昇し、最初に約0.8バールとなった。約6分後に反応が開始したが、このことは、反応器内圧の低下により察知された。次いで、約180分以内で、90~110℃で、プロピレンオキシド2352gとDynasylan(登録商標)GLYEO(Evonik社)166.8gとの混合物を連続的に供給した。1時間にわたって後反応させた後、<100ミリバールで脱臭することにより、未反応アルキレンオキシドの残留物を除去した。次いで、Irganox(登録商標)1135(BASF社)500ppmを15分間かけて撹拌しながら混入した。1分子あたり平均で3モルのトリエトキシシリル基と2個のOH基とを有する、多分散度Mw/Mnが2.3の無色の粘性プレポリマー(25℃で16,500mPa・s)が得られた。このプレポリマーにおけるEOの重量割合は、0%であった。
【0085】
60℃でイソホロンジイソシアナート97.7gを加え、これを5分間撹拌し、TIB Kat 216(ジオクチルスズジラウラート)0.08gを添加した。これを45分間撹拌し、温度を調整して80℃とし、一般式C4H9O[CH2CH(CH3)O]5.6Hのポリエーテル216gを加えた。次いで、これをさらに3時間撹拌した。
【0086】
完成した生成物B2は、25℃での粘度が67,000mPa・sであり、多分散度Mw/Mnは5.2であった。NCO含有率は、<0.1%であった。
【0087】
B3の製造
5リットルのオートクレーブに、平均モル重量2000g/モルのポリプロピレングリコール400gを装入し、これを、(全バッチを基準として)150ppmのヘキサシアノコバルト酸亜鉛複合金属シアン化物触媒と混合した。不活性化のために、反応器に3バールまで窒素を注入し、次に減圧して標準圧力とした。この操作をさらに2回繰り返した。撹拌しながら反応器の内容物を130℃に加熱し、そして排気して約20ミリバールとすることで、易揮発性成分を除去した。30分後、排気した反応器にプロピレンオキシド80gを計量供給することにより、触媒を活性化させた。内圧が上昇し、最初に約0.8バールとなった。約6分後に反応が開始したが、このことは、反応器内圧の低下により察知された。次いで、約180分以内で、90~110℃で、プロピレンオキシド1847gと、エチレンオキシド449gと、Dynasylan(登録商標)GLYEO(Evonik社)222.4gとの混合物を連続的に供給した。1時間にわたって後反応させた後、<100ミリバールで脱臭することにより、未反応アルキレンオキシドの残留物を除去した。次いで、Irganox(登録商標)1135(BASF社)500ppmを15分間かけて撹拌しながら混入した。1分子あたり平均で4モルのトリエトキシシリル基と2個のOH基とを有する、多分散度Mw/Mnが2.5の無色の粘性プレポリマー(25℃で14,000mPa・s)が得られた。このプレポリマーにおけるEOの重量割合は、15.0%であった。
【0088】
60℃でイソホロンジイソシアナート107gを加え、これを5分間撹拌し、TIB Kat 216(ジオクチルスズジラウラート)0.08gを加えた。これを45分間撹拌し、温度を調整して80℃とし、一般式C4H9O[CH2CH(CH3)O]5.6Hのポリエーテル224gを加えた。次いで、これをさらに3時間撹拌した。
【0089】
完成した生成物B3は、25℃での粘度が56,000mPa・sであり、多分散度Mw/Mnは5.0であった。NCO含有率は、<0.1%であった。
【0090】
成分C(触媒)
触媒として、TIB Mannheim社のCAS登録番号68299-15-0の製品TibKat 318(DBTL)を使用した。
【0091】
成分D
エポキシ官能性化合物およびアミノ官能性化合物は、市販品である。
【0092】
【0093】
溶媒
キシレン、異性体混合物(Aldrich社、CAS登録番号1330-20-7)
イソプロパノール(Aldrich社、品番59300-M)。
【0094】
1. 組成物の製造、ならびに塗装材の品質、乾燥特性および防汚特性を調べるための塗布
本発明による組成物Z1~Z12および比較組成物VZ1~VZ36を、以下の表3~6のデータにしたがって製造した。
【0095】
窒素で不活性化した広口フラスコ(250ml)に成分Aを装入し、これを成分Bで覆った。次いで、テフロンディスクを備えたDispermat(VMA Getzmann)を用いて2000rpmで2分間均質化を行った。次に、まず、エポキシ官能性成分D1またはD2をこれに加え、均質化し、さらに算出量のアミノ官能性触媒D3を加えた。2000rpmで2分間の均質化を繰り返した後、触媒Cを加え、これを再び均質化した。硬化性組成物が成分Dを含有しない場合には、成分Cを成分Bの直後に加え、同様に均質化を行った。Dispermatにおける混合操作をいずれも、組成物へのガスの導入ができるだけ最小限に抑えられるように行った。不活性ガスブランケットによって、バインダー相の上方のガス容積を確保した。
【0096】
5分間の短時間にわたって静置させた後、塗膜特性を評価するために、本発明の組成物および比較組成物を、300μmバーコータ(300μmバーコータ、Simex社)を用いて、室温でイソプロパノールで清浄化したガラス板(Glaeserei Glaenzer社、寸法:90×150×5mm)に塗布し、室温で乾燥させた。乾燥時間を測定するために、これらの組成物を、バーコータ(Erichsen社360型、湿潤塗膜厚100μm)を用いて標準ガラス片(30×2.5cm×2mm)に塗布した。さらに、密着性をより良好にするために市販のプライマーで予め前処理しておいたPVC板(PVC-Platten、200×400×5mm、品番:4364002858、KVG Kunststoff Betriebs GmbH)を、吹付け塗布により被覆した。キシレン(異性体混合物)で希釈することによって必要な吹付け粘度を得た。最後に、この目的のために設けられた乾燥キャビネット内で、室温で24時間乾燥させた。
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
目視による塗装材の評価:
1=非常に良好で均一な塗布、欠陥なし、透明、
2=良好で均一な塗布、おおむね欠陥なし、透明ないし混濁、
3=不良、不均一な塗布、欠陥多数。
【0103】
3. 防汚特性の測定
バイオファウリングを防止する効果について組成物を試験するために、上記1.で製造した組成物をPVC板に上記と同様に塗布し、静的曝露実験のために北海(ホークジール/ノルダーナイ)に輸送した。
【0104】
その際、寸法20×40cmの被覆済みPVC試験板(本発明による塗装材B1~B12、比較塗装材VB1~VB36)の曝露を、2015年の3月から10月までの期間にわたって水面下20cmの深さで実施した。2ヵ月ごとに試験板を目視で検査し、繁茂に関して評価した。さらに、市販のゴム製スキージ(窓用ゴム製リップ)を用いて、試験板の下方範囲において10cmの帯状領域を圧力をかけずに右から左に1回、次に左から右に1回拭き取って、繁茂を除去できたか否かを確認した。
【0105】
以下に示す等級により、全体的な評価を行った:
0=繁茂なし、
1=繁茂は最小限度であり、非常に容易に除去できる、
2=わずかな繁茂が認められ、非常に容易に除去できる、
3=中程度の繁茂が認められ、明らかな残留物が存在している、
4=強度の繁茂が認められ、多くの残留物が存在している、
5=非常に強度の繁茂が認められ、除去不可能である。
【0106】
【0107】
【0108】
本発明による組成物B1~B12を含有する塗装材は、8ヵ月後に最小限度ないしわずかな繁茂しか示さず、これは除去が非常に容易であった。