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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-10-17
(45)【発行日】2022-10-25
(54)【発明の名称】架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/06 20060101AFI20221018BHJP
【FI】
C08J9/06 CES
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018185672
(22)【出願日】2018-09-28
(65)【公開番号】P2020055913
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】宇野 拓明
(72)【発明者】
【氏名】杉江 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】三上 洋輝
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-204154(JP,A)
【文献】特開2017-066404(JP,A)
【文献】国際公開第2015/046526(WO,A1)
【文献】特開2006-169405(JP,A)
【文献】特開2015-187232(JP,A)
【文献】特開2007-231064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00- 9/42
B29C44/00-44/60
67/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アゾジカルボンアミドを含むポリオレフィン系樹脂組成物を架橋及び発泡してなる架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体であって、
厚みが1.5~10mmのシートであり、
架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体から10cm×10cmに切り出した試料片を100℃で30分間加熱して揮発物を揮発させ、得られた前記揮発物を40℃で4分維持した後に毎分10℃の速度で300℃にまで昇温させ、300℃で10分間維持した加熱脱着ガスクロマトグラフ質量分析法において、抽出イオンクロマトグラム値の10~15分の強度ピークが170,000以下である架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項2】
密度が0.02~0.2g/cmである、請求項1に記載された架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項3】
厚みが2~4mmのシートである、請求項1又は2に記載された架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項4】
前記ポリオレフィン系樹脂組成物に含まれる樹脂の50質量%以上がポリプロピレン系樹脂である、請求項1~3のいずれか1項に記載された架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【請求項5】
シートであり、前記強度ピーク/シートの厚み(mm)が65,000以下である、請求項1~のいずれか1項に記載された架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォギングが抑制される架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
天井材、ドア、インスツルメントパネル等の自動車用内装材には、架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を二次加工したものが広く使用されている。架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体の製造には、一般的にアゾジカルボンアミド等の熱分解型発泡剤が発泡剤として使用される。熱分解型発泡剤は、発泡後に微量の分解残渣物を樹脂中に残存させるが、その分解残渣物の一部は昇華性を有するため、フォギングの原因となることがある。フォギングとは、内装材として用いられる樹脂材料や樹脂発泡体から発生する微量の昇華物がフロントガラス等の内面に付着して曇りを生じさせる現象である。
【0003】
従来、アゾジカルボンアミドを原因とするフォギングを防止するため、アゾジカルボンアミドとともに、塩基性マグネシウム化合物及び塩基性カルシウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種が配合された発泡剤組成物が検討されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、特許文献1の発泡剤組成物により形成されるポリオレフィン系樹脂発泡体には、巨大気泡が発生し、発泡体の外観が悪化しやすい。そのため、例えば、特許文献2では、アゾジカルボンアミドとともに、平均粒径が0.1~15μmである塩基性マグネシウムをポリオレフィン系樹脂組成物に配合することが検討されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3532791号公報
【文献】国際公開第2016/158701号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に記載されているような特定の塩基性化合物が配合されていなくても、フォギングが抑制される架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体が求められていたが、そのような架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体は提供されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者らは、特定の特別な添加剤が配合されていなくても、フォギングが抑制される架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体について更に検討した。その結果、加熱脱着ガスクロマトグラフ質量分析法により測定される特定の強度ピークが一定の値以下である架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体が、フォギングが抑制される発泡体であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は、以下の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を提供する。
[1]ポリオレフィン系樹脂組成物を架橋及び発泡してなる架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体であって、加熱脱着ガスクロマトグラフ質量分析法の抽出イオンクロマトグラム値の10~15分の強度ピークが200,000以下である架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
[2]密度が0.02~0.2g/cmである、[1]に記載された架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
[3]厚みが2~4mmのシートである、[1]又は[2]に記載された架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
[4]前記ポリオレフィン系樹脂組成物に含まれる樹脂の50質量%以上がポリプロピレン系樹脂である、[1]~[3]のいずれかに記載された架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
[5]前記ポリオレフィン系樹脂組成物がアゾジカルボンアミドを含む、[1]~[4]のいずれかに記載された架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
[6]シートであり、前記強度ピーク/シートの厚み(mm)が65,000以下である、[1]~[5]のいずれかに記載された架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、フォギングが抑制される架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について実施形態を用いてより詳細に説明する。
本発明の架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体(以下、単に「発泡体」ということがある。)は、ポリオレフィン系樹脂を含むポリオレフィン系樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ということがある。)を架橋及び発泡してなるものである。以下、樹脂組成物に含有される各成分について詳細に説明する。
【0009】
ポリオレフィン系樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等のポリオレフィン系樹脂を含む。
【0010】
ポリプロピレン系樹脂の具体例は、プロピレンの単独重合体であるホモポリプロピレン、プロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体である。プロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体の具体例は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、ランダムブロック共重合体であるが、ランダム共重合体(すなわち、ランダムポリプロピレン)が好ましい。
プロピレン以外のα-オレフィンの具体例は、炭素数2のエチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテンなどの炭素数4~10程度のα-オレフィンである。これらの中で、成形性及び耐熱性の観点から、エチレンが好ましい。なお、共重合体において、これらα-オレフィンは単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
また、ポリプロピレン系樹脂は、1種単独で使用されてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0011】
ランダムポリプロピレンは、好ましくはプロピレン50質量%以上100質量%未満と、プロピレン以外のα-オレフィン50質量%以下とを共重合させて得られる。ここで、共重合体を構成する全モノマー成分に対して、プロピレンが80~99.9質量%、プロピレン以外のα-オレフィンが0.1~20質量%であることがより好ましく、プロピレンが90~99.5質量%、プロピレン以外のα-オレフィンが0.5~10質量%であることが更に好ましく、プロピレンが95~99質量%、プロピレン以外のα-オレフィンが1~5質量%であることが特に好ましい。
【0012】
ポリエチレン系樹脂の具体例は、低密度ポリエチレン系樹脂、中密度ポリエチレン系樹脂、高密度ポリエチレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂である。これらの中で、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(LLDPE)が好ましい。
直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂は、密度が0.910g/cm以上0.950g/cm未満のポリエチレンであり、好ましくは密度が0.910~0.930g/cmのものである。発泡体は、密度が低い直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂を含有することで、樹脂組成物を発泡体に加工する際の加工性、発泡体を成形体に成形する際の成形性等が良好になりやすい。なお、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂の密度はJISK7112に準拠して測定される。
直鎖状低密度ポリエチレンは、通常、エチレンを主成分(全モノマーの50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上)とした、エチレンと少量のα-オレフィンの共重合体である。ここで、α-オレフィンの具体例は、炭素数3~12、好ましくは炭素数4~10のものであり、具体的には、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテンなどである。なお、共重合体において、これらα-オレフィンは単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
また、ポリエチレン系樹脂は、1種単独で使用されてもよいし、2種以上のものが併用されてもよい。
【0013】
組成物は、前記ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、又はこれらの混合物を含有していてもよいが、前記ポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂以外のポリオレフィン系樹脂成分を含んでいてもよい。
そのような樹脂成分の具体例は、エチレン-プロピレン-ゴム(EPR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アルキルアクリレ-ト共重合体、これらに無水マレイン酸を共重合した変性共重合体、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー等である。
また、樹脂組成物が含む樹脂は、ポリオレフィン系樹脂単独で構成されてもよいが、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂成分を含んでもよい。
ポリオレフィン系樹脂は、樹脂組成物に含有される樹脂全量に対して、通常70質量%以上含有され、好ましくは80~100質量%、より好ましくは90~100質量%含有される。
【0014】
樹脂組成物が含有する樹脂は、前記ポリプロピレン系樹脂を、樹脂組成物に含有される樹脂全量基準で、好ましくは50質量%以上含有し、より好ましくは55~90質量%含有する。
樹脂組成物に含まれる樹脂の主成分がポリプロピレン系樹脂であると、樹脂組成物を架橋及び発泡して得られる発泡体の機械的強度、耐熱性等を良好にできる。また、ポリプロピレン系樹脂を主成分とすると、樹脂組成物の発泡時に高温加熱が必要となり、発泡剤から不純物が発生して、その不純物がフォギングの原因となる。本発明では、製造条件等を適宜調整することで、後述する抽出イオンクロマトグラム値の10~15分の強度ピークを200,000以下とすることにより、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする場合であっても、フォギングを抑制できる。
【0015】
樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂として前記ポリプロピレン系樹脂に加えて、好ましくは前記ポリエチレン系樹脂を含有する。この場合、ポリエチレン系樹脂の好ましい含有割合は、樹脂組成物に含有される樹脂全量に対して、1~50質量%であり、より好ましい当該含有割合は10~45質量%である。
樹脂組成物は、ポリプロピレン樹脂に加えてポリエチレン系樹脂を含有することで、機械的強度、耐熱性等が向上しつつ、加工性、成形性も良好になる。
【0016】
樹脂組成物を発泡させる方法としては、化学的発泡法がある。化学的発泡法は、樹脂組成物に添加した発泡剤により生じたガスにより気泡を形成させる方法である。発泡剤としては、熱分解型発泡剤が使用され、例えば、分解温度が160~270℃程度の有機系熱分解型発泡剤又は無機系熱分解型発泡剤が用いられる。
【0017】
有機系熱分解型発泡剤の具体例は、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸金属塩(アゾジカルボン酸バリウム等)、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、ヒドラゾジカルボンアミド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、トルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジン誘導体、トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド化合物等である。
無機系熱分解型発泡剤の具体例は、酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、無水クエン酸モノソーダ等である。
これらの中でも、微細な気泡を得る観点、及び経済性、安全面の観点から、有機系熱分解型発泡剤が好ましく、アゾ化合物、ニトロソ化合物がより好ましく、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物が更に好ましく、アゾジカルボンアミドが特に好ましい。
これらの発泡剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
樹脂組成物中における有機系熱分解型発泡剤の配合量は、樹脂組成物中の樹脂100質量部に対して2~20質量部が好ましく、3~12質量部がより好ましい。有機系熱分解型発泡剤の配合量がこの範囲内であると、発泡性ポリオレフィン樹脂シートの発泡性が向上し、所望する発泡倍率を有する架橋ポリオレフィン樹脂発泡シートが得られる。
【0018】
樹脂組成物は、前記オレフィン系樹脂及び発泡剤以外にも添加剤を含有していてもよい。樹脂組成物に含有される好ましい添加剤として、架橋助剤及び酸化防止剤が挙げられる。これらは、両方とも含有されていてもよいし、一方のみが含有されていてもよい。
【0019】
架橋助剤として、多官能モノマーを使用できる。多官能モノマーの具体例は、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等の3官能(メタ)アクリレート系化合物、トリメリット酸トリアリルエステル、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸トリアリルエステル、トリアリルイソシアヌレート等の1分子中に3個の官能基を持つ化合物、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9-ノナンジオールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート等の2官能(メタ)アクリレート系化合物、ジビニルベンゼン等の1分子中に2個の官能基を持つ化合物、フタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、エチルビニルベンゼン、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等である。架橋助剤は、単独で又は2以上を組み合わせて使用できる。これらの中では、3官能(メタ)アクリレート系化合物がより好ましい。
架橋助剤を樹脂組成物に添加することによって、少ない電離性放射線量で樹脂組成物を架橋できる。そのため、電離性放射線の照射に伴う各樹脂分子の切断、劣化を防止できる。
架橋助剤の好ましい含有量は、樹脂組成物中の樹脂100質量部に対して0.2~10質量部であり、より好ましい当該含有量は0.5~7質量部であり、更に好ましい当該含有量は1~5質量部である。架橋助剤の含有量が0.2質量部以上であると樹脂組成物を発泡する際、所望する架橋度に調整しやすくなる。また、10質量部以下であると樹脂性組成物に付与する架橋度の制御が容易となる。
【0020】
酸化防止剤の具体例は、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等である。これらの中で、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤が好ましく、フェノール系酸化防止剤とイオウ系酸化防止剤との併用がより好ましい。
フェノール系酸化防止剤の具体例は、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、テトラキス[メチレン-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等である。これらのフェノール系酸化防止剤は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
イオウ系酸化防止剤の具体例は、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)等である。これらの硫黄系酸化防止剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されてもよい。
酸化防止剤の好ましい含有量は、樹脂組成物中の樹脂100質量部に対して0.1~10質量部であり、より好ましい当該含有量は0.2~5質量部である。
【0021】
樹脂組成物は、必要に応じて、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛等の分解温度調整剤、難燃剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、充填剤、顔料等の上記以外の添加剤を含有してもよい。
【0022】
本発明の発泡体の、加熱脱着ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)法の抽出イオンクロマトグラム値の10~15分の強度ピークは200,000以下である。好ましい前記強度ピークは190,000以下であり、より好ましい前記強度ピークは180,000以下であり、更に好ましい前記強度ピークは170,000以下である。前記強度ピークが200,000より大きいと、発泡体がフォギングを起こしやすくなる。
前記強度ピークを200,000以下とする方法は特に限定されないが、例えば、発泡体の厚みを薄くすることで強度ピークを低くできる。また、発泡体が厚い場合には、後述するように、発泡体に対して所定の加熱処理を行うことで、前記強度ピークを低くできる。
【0023】
本発明の発泡体の密度(見かけ密度)は、特に限定されない。発泡体の柔軟性と強度をバランスよく良好にするために、好ましい前記密度は0.02~0.20g/cmであり、より好ましい前記密度は0.03~0.15g/cmである。また、発泡体の密度が上記のように小さくなる、すなわち発泡倍率が大きくなると、発泡剤の使用量が増え、発泡体にフォギングが発生しやすくなるが、本発明では、上記のように強度ピークを低くすることで発泡体のフォギングを抑制できる。
【0024】
本発明の発泡体の架橋度は、特に限定されないが、機械強度、柔軟性、成形性をバランスよく良好にするために、好ましい前記架橋度は30~60%であり、より好ましい前記架橋度は32~55%である。なお、発泡体の架橋度の測定方法は、後述する実施例に記載されるとおりである。
【0025】
本発明の発泡体の一実施形態はシートであり、その厚みは、特に限定されないが、自動車用内装材に適切に成形できるよう、好ましい前記厚みは0.5~10mmであり、より好ましい前記厚みは1~8mmであり、更に好ましい前記厚みは2~4mmである。
【0026】
発泡体シートの前記強度ピーク/シートの厚み(mm)の好ましい値は65,000以下であり、より好ましい前記値は60,000以下、更に好ましくは50,000以下である。前記値が十分に小さいと、発泡体のフォギングが抑えられる。
【0027】
本発明の一実施形態に係る発泡体の製造方法は、好ましくは、以下の工程(1)~(3)を有する。
工程(1):樹脂、熱分解型発泡剤及び必要に応じて配合されるその他添加剤を押出機に供給して、熱分解型発泡剤の分解温度未満の温度で溶融、混練した後、樹脂組成物を押出機から押出してシート状等の所定形状の樹脂組成物を得る工程
工程(2):前記所定形状の樹脂組成物に電離性放射線を照射して架橋する工程
工程(3):架橋された樹脂組成物を、熱分解型発泡剤の分解温度以上に加熱して発泡させ、発泡体を得る工程
【0028】
前記製造方法で使用される押出機の具体例は、単軸押出機、二軸押出機等である。また、押出機内部の樹脂組成物の温度は、好ましくは130~195℃であり、より好ましくは160~195℃である。
工程(2)において使用される電離性放射線の具体例は、α線、β線、γ線、電子線等であるが、電子線が好ましい。電離性放射線の照射量は、所望の架橋度を得ることができればよいが、0.1~10Mradが好ましく、0.2~5Mradがより好ましい。電離性放射線の照射量は、オレフィン系樹脂、発泡剤及びその他の添加剤等の影響があるため、通常は架橋度を測定しながら照射量を調整する。
工程(3)において、樹脂組成物を加熱発泡させる温度は、通常200~290℃、好ましくは220~280℃である。樹脂組成物を加熱発泡させる時間は通常1~30分間、好ましくは1~10分間である。
また、工程(3)において、発泡体は、発泡後、又は発泡されつつMD方向又はCD方向の何れか一方又は双方に延伸されてもよい。
【0029】
樹脂組成物を架橋及び発泡して得られた架橋ポリオレフィン系樹脂発泡体は、発泡後に熱処理されることが好ましい。前記熱処理の加熱温度は、好ましくは50~120℃であり、より好ましくは60~110℃であり、更に好ましくは70~100℃である。前記熱処理の加熱時間は、好ましくは1~350時間であり、より好ましくは20~300時間であり、更に好ましくは50~250時間である。前記熱処理温度と前記熱処理時間を前記のとおりにすると、後述する加熱脱着ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)法の抽出イオンクロマトグラム値の10~15分の強度ピークを小さくできる。
なお、以上説明した製造方法は、本発明の発泡体の製造方法の一実施形態であり、本発明の発泡体は他の製造方法で製造されてもよい。
【0030】
本発明の発泡体は、発泡体単体で使用されてもよいが、好ましくは、異種材料と重ね合わせて公知の方法で成形され、積層体とされる。前記成形方法の具体例は、真空成形、圧縮成形、スタンピング成形等である。これらの中では真空成形が好ましい。また、真空成形には雄引真空成形、雌引真空成形があるが、好ましい真空成型は雌引真空成形である。異種材料の具体例は、樹脂シート、熱可塑性エラストマーシート、布帛等のシート状のものである。
成形体は、各種用途に使用可能であるが、好ましくは、自動車の天井材、ドア、インスツルメントパネル等の自動車用内装材として使用される。
【実施例
【0031】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0032】
発泡体の評価方法は以下のとおりである。
(1)架橋度
発泡体から約100mgの試験片を採取し、試験片の質量A(mg)を精秤した。次に、この試験片を120℃のキシレン30ml中に浸漬して24時間放置した後、200メッシュの金網で濾過して金網上の不溶解分を採取、真空乾燥し、不溶解分の質量B(mg)を精秤した。得られた値から、下記式により架橋度(質量%)を算出した。
架橋度(質量%)=100×(B/A)
(2)密度
発泡体の密度(見かけ密度)をJIS K 7222に準拠して測定した。
(3)発泡体の厚み
発泡体の厚みをダイヤルゲージで計測した。
(4)フォギング評価
フォギング評価は、ISO6452に準拠した設備で、発泡体を100℃×20時間養生後、ヘーズを測定して行った。なお、ヘーズは日本電色工業社製NDH-300Aを用いて測定した。ヘーズが15%以下であるものを合格とした。
(5)加熱脱着GC/MS
発泡体から10cm×10cmに切り出した試料片を100℃で30分間加熱して揮発物を揮発させ、得られた揮発物を以下の条件で熱脱着GC/MS分析し、抽出イオンクロマトグラム値の10~15分の強度ピークを測定した。なお、試料片の厚みは発泡体の厚みと同一であった。
熱脱着装置:島津製作所製TD-20
サンプル量:約5mg精秤
加熱:100℃、30分(25ml/分)
二次脱着:300℃、5分
GC/MS装置:島津製作所製GCMS-TQ
カラム:シグマアルドリッチジャパン社製SLB-5MS(微極性)0.25mm×30m×0.25μm
GC昇温:40℃(4分)→10℃/分→300℃(10分)
He流量:1.25ml/分、スプリット比1:30
イオン化電圧:70eV
MS測定範囲:35~600amu
MS温度:イオン源200℃、インターフェイス230℃
【0033】
実施例1~5、比較例1~2
各実施例、比較例において、表1に示す各成分を、表1に示した部数で単軸押出機に投入し、樹脂組成物を190℃にて溶融混練して押出し、表1に示す厚みのシート状の樹脂組成物を得た。このシート状の樹脂組成物の両面に加速電圧800kVで電子線を1Mradの照射量で照射することによりシート状の樹脂組成物を架橋した。その後、架橋した樹脂組成物を熱風オーブンによって250℃で5分間加熱し、その加熱により発泡させて、実施例2~5については表1に示す時間、熱風オーブンによって80℃で更に加熱して、表1に示す厚みの発泡シート(発泡体)とした。各実施例、比較例の発泡体の評価結果を表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】
表1における樹脂及び添加剤は以下のとおりである。
ランダムPP:エチレン-プロピレンランダム共重合体(日本ポリプロ社製EG7F、MFR=1.3g/10分、エチレン量=3質量%)
LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレン(ダウケミカル日本社製5220G、密度=0.915g/cm3
架橋助剤:トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)
【0036】
実施例1~5の前記強度ピークが200,000以下である発泡体のフォギングは抑制されていた。いっぽうで、比較例1~2の前記強度ピークが200,000より大きい発泡体については、フォギングを十分に抑制できなかった。